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特許7221575食用植物の具材を含有する液状調味料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】食用植物の具材を含有する液状調味料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20230207BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20230207BHJP
【FI】
A23L27/10 C
A23L23/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022546975
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2021032353
(87)【国際公開番号】W WO2022050364
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2020147547
(32)【優先日】2020-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】門馬 大介
(72)【発明者】
【氏名】田中 竣悟
(72)【発明者】
【氏名】井原 淳一郎
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106820067(CN,A)
【文献】国際公開第2020/089681(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/103031(WO,A1)
【文献】特開2019-71851(JP,A)
【文献】特開2015-23803(JP,A)
【文献】特開2010-124696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用植物の具材を含有する液状調味料であって、次の(1)~(5)を全て充足する液状調味料。
(1)1メッシュオンの食用植物具材画分Aが10質量%以上である。
(2)1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材画分Bが10質量%以上80質量%以下である。
(3)具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量が1ppb以上15000ppb以下である。
(4)具材画分Bにおけるジメチルジスルフィド(DMDS)の湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上1000ppb以下である。
(5)具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量比が1.0超である。
【請求項2】
具材画分BにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量に対する、具材画分AにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量の質量比が1.0未満である、請求項1に記載の液状調味料。
【請求項3】
具材画分Bにおけるジメチルトリスルフィド(DMTS)の湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上3000ppb以下である、請求項1又は2に記載の液状調味料。
【請求項4】
具材画分Aを一次元GC/MS分析によって分離した成分を、パルス式炎光光度検出(PFPD)法を用いて測定した場合に、保持時間8~11分においてm/z=45、79、及び94が共に検出されるPFPDピーク面積αに対する、保持時間13~18分においてm/z=61及び90が共に検出されるPFPDピーク面積βの比(β/α)が、0.1以上1000未満である、請求項1~3の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項5】
画分Bにおける油脂分含有量が2質量%以上である、請求項1~4の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項6】
画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、野菜類、穀類、きのこ類、及び果実類から選択される1又は2以上の食用植物を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項7】
画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、ナス科植物及び/又はネギ科植物を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項8】
画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、トマト、ナス、ペコロス、コーン、シメジ、及びエリンギから選択される1又は2以上の食用植物を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項9】
画分A及び画分Bにおける食用植物が、同一分類の食用植物を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項10】
画分A及び画分Bにおける食用植物が、同一種類の食用植物を含む、請求項1~8の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項11】
液状調味料をボストウィック粘度計で測定した場合における流下距離(測定時間30秒、測定温度80℃)が28cm以下である、請求項1~10の何れか一項に記載の液状調味料。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項に記載の液状調味料を製造する方法であって、下記段階(i)及び(ii)を含む方法。
(i)食用植物の具材を含有する液状混合物であって、
(1)1メッシュオンの食用植物具材画分Aを10質量%以上含有し、
(2)1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材画分Bを10質量%以上80質量%以下含有し、
(3)具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量が1ppb以上15000ppb以下であり、
(4)具材画分BにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上1000ppb以下であり、
(5)具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量比が1.0超である
液状混合物を調製する段階。
(ii)前記液状混合物を80℃以上で5分以上加熱する段階。
【請求項13】
段階(ii)において、具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量割合が、加熱前後で10%以上低下するまで加熱処理を行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
段階(ii)において、具材画分Aを一次元GC/MS分析によって分離した成分を、パルス式炎光光度検出(PFPD)法を用いて測定した場合に、保持時間8~11分においてm/z=45、79、及び94が共に検出されるPFPDピーク面積αに対する、保持時間13~18分においてm/z=61及び90が共に検出されるPFPDピーク面積βの比(β/α)が、加熱前後で1.0倍以上に増加するまで加熱処理を行う、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
段階(ii)において、具材画分BにおけるDMDS含有量に対する、具材画分AにおけるDMDS含有量の質量割合が、加熱前後で10%以上低下するまで加熱処理を行う、請求項12~14の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用植物の具材を含有する液状調味料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的水分含有率の高い芋類、かぼちゃ等の野菜、リンゴ等の果実や、原料から水分が浸出しやすいそれらの冷凍品を、穀物又は粒状無機物と共にローストすることで作物を乾燥する工程で発生しやすいオフフレーバーの生成を抑制する技術が知られていた(特許文献1)。
【0003】
また、イソブチルアンゲレートを有効成分として含有するオフフレーバー抑制剤によって、大豆、牛乳、果実類、野菜類等のオフフレーバーを抑制する技術が知られていた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-053915号公報
【文献】特開2020-110139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1の技術においては、ローストが必要なため、液状調味料中の具材に適用できる技術ではなかった。
【0006】
また、特許文献2の技術においては、イソブチルアンゲレートの香味が付与される他、生成メカニズムの異なる食用植物具材におけるオフフレーバー生成に適用できる技術ではなかった。
【0007】
よって、本発明の課題は、サイズの異なる食用植物具材におけるオフフレーバー生成が抑制されると共に、長期保存が可能である液状調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、1メッシュオンの食用植物具材画分Aと、1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材画分Bとの質量比率を所定範囲内に調整すると共に、具材画分Aにおけるヘキサナール含有量、具材画分Bにおけるジメチルジスルフィド(DMDS)含有量、及び、具材画分Bにおけるヘキサナール含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナール含有量の割合をそれぞれ所定範囲内に調整することによって、各食用植物具材画分のオフフレーバー生成が抑制されると共に、長期保存が可能である液状調味料を得ることが可能となり、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は例えば以下の項に記載の態様を提供するものである。
[項1]食用植物の具材を含有する液状調味料であって、次の(1)~(5)を全て充足する液状調味料。
(1)1メッシュオンの食用植物具材画分Aが10質量%以上である。
(2)1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材画分Bが10質量%以上80質量%以下である。
(3)具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量が1ppb以上15000ppb以下である。
(4)具材画分Bにおけるジメチルジスルフィド(DMDS)の湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上1000ppb以下である。
(5)具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量比が1.0超である。
[項2]具材画分BにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量に対する、具材画分AにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量の質量比が1.0未満である、項1に記載の液状調味料。
[項3]具材画分Bにおけるジメチルトリスルフィド(DMTS)の湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上3000ppb以下である、項1又は2に記載の液状調味料。
[項4]具材画分Aを一次元GC/MS分析によって分離した成分を、パルス式炎光光度検出(PFPD)法を用いて測定した場合に、保持時間8~11分においてm/z=45、79、及び94が共に検出されるPFPDピーク面積αに対する、保持時間13~18分においてm/z=61及び90が共に検出されるPFPDピーク面積βの比(β/α)が、0.1以上1000未満である、項1~3の何れか一項に記載の液状調味料。
[項5]画分Bにおける油脂分含有量が2質量%以上である、項1~4の何れか一項に記載の液状調味料。
[項6]画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、野菜類、穀類、きのこ類、及び果実類から選択される1又は2以上の食用植物を含む、項1~5の何れか一項に記載の液状調味料。
[項7]画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、ナス科植物及び/又はネギ科植物を含む、項1~6の何れか一項に記載の液状調味料。
[項8]画分A及び/又は画分Bにおける食用植物が、トマト、ナス、ペコロス、コーン、シメジ、及びエリンギから選択される1又は2以上の食用植物を含む、項1~7の何れか一項に記載の液状調味料。
[項9]画分A及び画分Bにおける食用植物が、同一分類の食用植物を含む、項1~8の何れか一項に記載の液状調味料。
[項10]画分A及び画分Bにおける食用植物が、同一種類の食用植物を含む、項1~8の何れか一項に記載の液状調味料。
[項11]液状調味料をボストウィック粘度計で測定した場合における流下距離(測定時間30秒、測定温度80℃)が28cm以下である、項1~10の何れか一項に記載の液状調味料。
[項12]項1~11の何れか1項に記載の液状調味料を製造する方法であって、下記段階(i)及び(ii)を含む方法。
(i)食用植物の具材を含有する液状混合物であって、
(1)1メッシュオンの食用植物具材画分Aを10質量%以上含有し、
(2)1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材画分Bを10質量%以上80質量%以下含有し、
(3)具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量が1ppb以上15000ppb以下であり、
(4)具材画分BにおけるDMDS湿潤質量基準含有量が0.01ppb以上1000ppb以下であり、
(5)具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量比が1.0超である
液状混合物を調製する段階。
(ii)前記液状混合物を80℃以上で5分以上加熱する段階。
[項13]段階(ii)において、具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量割合が、加熱前後で10%以上低下するまで加熱処理を行う、項12に記載の方法。
[項14]段階(ii)において、具材画分Aを一次元GC/MS分析によって分離した成分を、パルス式炎光光度検出(PFPD)法を用いて測定した場合に、保持時間8~11分においてm/z=45、79、及び94が共に検出されるPFPDピーク面積αに対する、保持時間13~18分においてm/z=61及び90が共に検出されるPFPDピーク面積βの比(β/α)が、加熱前後で1.0倍以上に増加するまで加熱処理を行う、項12又は13に記載の方法。
[項15]段階(ii)において、具材画分BにおけるDMDS含有量に対する、具材画分AにおけるDMDS含有量の質量割合が、加熱前後で10%以上低下するまで加熱処理を行う、項12~14の何れか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サイズの異なる食用植物具材におけるオフフレーバー生成が抑制されると共に、長期保存が可能である液状調味料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0012】
[食用植物具材含有液状調味料]
本発明の一態様は、食用植物の具材を含有する液状調味料であって、後述の各要件を充足する液状調味料(これを適宜「本発明の食用植物具材含有液状調味料」或いは単に「本発明の液状調味料」と称する。)に関する。
【0013】
・特定メッシュオン及び/又は特定メッシュパス画分:
本発明の液状調味料は、篩分画によって得られる特定メッシュオン及び/又は特定メッシュパスの具材画分によって特徴づけられる。本発明において、「メッシュオン」とは、特定サイズの篩上にとどまる具材画分を指し、「メッシュパス」とは、特定サイズの篩を通過する具材画分を指す。各画分含有量は、液状調味料を目開きの異なる篩によって分画することによって測定する。例えば、「1メッシュオン」とは、1メッシュの篩上にとどまる具材画分を意味し、「1メッシュパス200メッシュオン」とは、1メッシュの篩を通過し200メッシュの篩上にとどまる具材画分を意味する。本発明における「メッシュ」とは金網・篩・フィルター等の目の密度を表す単位であり、1インチあたりの網目の数を表す。すなわち、例えば「1メッシュオン(パス)」とは、目開き2.50センチメートルの篩上にとどまる(通過する)具材画分を意味し、「200メッシュオン(パス)」とは目開き75マイクロメートルの篩上にとどまる(通過する)具材画分を意味する。
【0014】
具体的には、メッシュオン/メッシュパス判断時の針金の太さと目の間隔は、U.S.A. Standard Testing Sieves ASTM Specifications E 11-04Jにて規定されている数値(例えば1メッシュは、同文献中のNominal Dimensions, Permissible Variation for Wire Cloth of Standard Testing Sieves (U.S.A.) Standard Seriesにおける「Alternative」に規定された「1.00」と対応する。200メッシュは同箇所における「No.200」と対応し、)またはそれに準じた数値を採用する。
【0015】
また、本発明においては、液状調味料における画分A、画分Bの含有量を測定する場合には、湿状態の具材質量を測定する。より具体的には、測定したい具材含有液状調味料サンプル(20℃)100gを、1メッシュ、200メッシュの順番に上から重ねた篩上に薄く均等に広げて、10分間放置後の各篩上の残分質量を液状調味料全体における質量を分母として質量パーセントで表した値を計測することで、本発明の液状調味料中における画分A及び/又は画分Bの含有割合を湿潤質量基準割合として測定することができる。
【0016】
また、本発明において、特定メッシュオン及び/又は特定メッシュパスの具材「画分」とは、特定メッシュオン及び/又は特定メッシュパスの性質について挙動を一にする液状調味料の部分組成物を意味する。斯かる「画分」は、通常は1種又は2種以上の具材と1種又は2種以上の媒体から構成される。ここで留意すべきは、特定メッシュオンの具材「画分」には、特定メッシュオンのサイズを有する具材のみならず、特定メッシュパスのサイズを有する具材も含まれうるという点である(例えば、後述の1メッシュオンの具材画分(画分A)には、1メッシュオンのサイズの食用植物具材のみならず、1メッシュパスのサイズの食用植物具材が含まれる可能性があり、1メッシュパス200メッシュオンの具材画分(画分B)には、1メッシュパス200メッシュオンの食用植物具材のみならず、200メッシュパスのサイズの食用植物具材が含まれる可能性がある。)。これは、特定メッシュパスのサイズを有する具材であっても、併存する他の具材及び媒体との組合せや液体調味料の性状等によっては、当該特定メッシュの篩を通過せずその篩上に残る可能性があることに起因する。このように特定メッシュパスのサイズを有する具材を含む画分であっても、前記の手順で液体調味料を篩分画した場合に挙動を一にし、特定メッシュの篩上にとどまる画分であれば、特定メッシュオンの画分に該当する。
【0017】
・具材画分A:
本発明の液状調味料は、1メッシュオンの具材画分(「具材画分A」又は「画分A」と称する場合もある。)の含有率が所定下限値以上である。具体的に、斯かる画分に含まれる1メッシュオンの比較的大型の食用植物具材は、特有のオフフレーバーを奏しやすい(サイズが大きく熱対流が起こりにくいため、嫌気条件下での成分反応によって特有の反応が起こっている可能性がある)。従って、本発明の液状調味料は、斯かる1メッシュオンの具材を含む具材画分Aを所定量含有する調味料について特に顕著な課題である、斯かるオフフレーバーを抑制することができるため、本発明は有用である。
【0018】
具体的に、本発明の液状調味料における具材画分Aの含有率は、湿潤質量基準割合で通常10質量%以上である。中でも15質量%以上、更には20質量%以上、とりわけ25質量%以上、又は30質量%以上、又は35質量%以上、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の液状調味料における具材画分Aの含有率の上限は、特に制限されないが、通常90質量%以下、中でも80質量%以下である。
【0019】
また、後述する通り画分Aには具材と液性媒体とが含まれうるが、具材含有量が湿潤質量基準割合で画分A全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、画分A全体の実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
【0020】
なお、本発明において、各画分における具材含有量を測定する場合は、得られた画分に対して15000rpmで1分間の遠心分離を行い、分離した液性媒体を充分に取り除いた残分重量を量ることでその含有量を測定することができる。
【0021】
なお、本発明の液状調味料における具材画分Aに含まれる具材サイズの上限は、特に制限されないが、サイズが大きすぎる具材は嚥下が困難であることから、喫食しやすさの観点から、通常0.2メッシュ(目開き12.15cm、線径5.5mm)パス以下であることが好ましい。
【0022】
・具材画分B:
本発明の液状調味料はさらに、具材画分Aとは異なる、1メッシュパス200メッシュオンの具材画分(これを適宜「具材画分B」又は「画分B」と称する場合もある。)の含有率が所定範囲以内である。具体的に、斯かる1メッシュパス200メッシュオンという中程度のサイズの食用植物の具材は、具材画分Aの具材とは異なる特有のオフフレーバーを奏しやすい(サイズが比較的小さく熱対流が起こりやすいことで、酸化反応によって画分Aの具材とは異なる反応が起こっている可能性がある。)。従って、本発明の液状調味料は、斯かる1メッシュパス200メッシュオンの具材を含む具材画分Bを所定量含有する調味料について特に顕著な課題である、斯かるオフフレーバーを抑制することができるため、本発明は有用である。
【0023】
具体的に、本発明の液状調味料における具材画分Bの含有率の下限は、湿潤質量基準割合で通常10質量%以上である。中でも12質量%以上、更には15質量%以上、とりわけ20質量%以上、又は25質量%以上、又は30質量%以上、特に40質量%以上であることが好ましい。一方、本発明の液状調味料における具材画分Bの含有率の上限は、通常80質量%以下である。中でも75質量%以下、更には70質量%以下、とりわけ65質量%以下、又は60質量%以下、又は55質量%以下、特に50質量%以下であることが好ましい。
【0024】
また、後述する通り画分Bには具材と液性媒体とが含まれうるが、具材含有量が湿潤質量基準割合で画分B全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、画分B全体の実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。
【0025】
・画分C:
本発明の液状調味料はさらに、具材画分A及びBとは異なる、200メッシュパスの画分(これを適宜「画分C」と称する場合もある。)も含有してもよい。但し、斯かる画分Cが多過ぎると、液状調味料が水っぽい品質となる場合があるため、本発明の液状調味料は、当該画分Cの含有量が所定値以下であることが好ましく、液性媒体の大部分または全てが画分AまたはBに含有されることが好ましい。
【0026】
具体的には、本発明の液状調味料における画分Cの含有率は、湿潤質量基準割合で通常30質量%以下、中でも25質量%以下、更には20質量%以下、とりわけ15質量%以下、又は10質量%以下、又は8質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。一方、画分Cの含有率の下限は、制限されるものではないが、通常0質量%以上、中でも1質量%以上、特に2質量%以上であることが好ましい。
【0027】
また、後述する通り画分Cには具材と液性媒体とが含まれうるが、具材含有量が湿潤質量基準割合で画分C全体の通常50質量%以下、中でも30質量%以下、更には10質量%以下であることが好ましく、画分C全体の実質的に0質量%であることが特に好ましい。下限は特に制限されないが、通常0質量%以上である。
【0028】
・各画分の媒体:
具材画分A及び具材画分B各々、具材と液性媒体(適宜「媒体」という場合もある。)とから構成され、画分Cは通常、媒体(及び極めて微細な具材)から構成される。これらの各画分に含まれる媒体の組み合わせも任意である。即ち、これらの画分の媒体は、それぞれ互いに同一の媒体であってもよく、異なる媒体であってもよい。また、各画分が1種の媒体のみを含んでいてもよく、2種以上の媒体を任意の組み合わせ及び比率で含んでいてもよい。各媒体の種類も制限されず、水等の水性媒体、水混和性の有機溶媒、水非混和性・親油性の有機媒体、液性油脂等の種々の媒体中から、任意に選択することができる。また、具材を構成する食用植物に含まれる液体が、各画分に媒体として含まれていてもよく、逆に液性媒体が具材に浸入することで各画分に具材の一部として含まれてもよい。また、各画分内及び/又は複数画分間で、水相と油相のように相分離を生じていてもよい。なお、特に具材画分Bは所定値以上の油脂分含量を有していることが好ましいが、これについては後述する。
【0029】
・画分A中油脂質量基準ヘキサナール含有量:
本発明の液状調味料は、具材画分Aに油脂質量基準割合で特定量のヘキサナール(CAS.No.66-25-1、hexanal)を含有する。本発明において、「油脂質量基準割合」(単に「油脂質量基準」または「油脂質量換算」と称する場合もある。)とは、組成物や各画分の油脂分含量を分母、各対象成分や対象物の含有量を分子として算出される、各成分等の油脂に対する含有割合を表し、相対的に油脂分含量が少なく当該成分含量が多い組成物において高い値が得られる。例えば、油脂含油量が1質量%の組成物で、湿潤質量換算で1ppbのヘキサナールを含有する組成物におけるヘキサナールの油脂質量基準含有量は、100ppbである。また、本発明において特に指定がない場合、「ヘキサナール含有量」とは油脂質量基準の含有量を表す。
【0030】
具体的には、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の下限が、通常1ppb以上である。中でも5ppb以上、更には10ppb以上、とりわけ15ppb以上、又は20ppb以上、又は30ppb以上、又は40ppb以上、又は50ppb以上、又は100ppb以上、又は300ppb以上、特に500ppb以上であることが好ましい。一方、ヘキサナールが濃すぎるとその香りが目立ちすぎる場合があるため、上限としては通常15000ppb以下、中でも10000ppb以下、更には8000ppb以下、とりわけ7000ppb以下、又は6000ppb以下、又は5000ppb以下、又は4000ppb以下、又は3000ppb以下、特に2000ppb以下であることが好ましい。その原理は定かではないが、油脂分が画分Aにおける非水溶性成分であるヘキサナールを保持し、流出を防いでいる可能性がある。
【0031】
また、制限されるものではないが、本発明の液状調味料は、具材画分Aにおけるヘキサナール乾燥質量基準含有量の下限が、通常1ppb以上で、中でも5ppb以上、更には10ppb以上、とりわけ15ppb以上、又は20ppb以上、又は30ppb以上、又は40ppb以上、又は50ppb以上、又は100ppb以上、又は300ppb以上、特に500ppb以上であることが好ましい。一方、ヘキサナールが濃すぎるとその香りが目立ちすぎる場合があるため、上限としては通常15000ppb以下、中でも10000ppb以下、更には8000ppb以下、とりわけ7000ppb以下、又は6000ppb以下、又は5000ppb以下、又は4000ppb以下、又は3000ppb以下、特に2000ppb以下であることが好ましい。本発明において「乾燥質量基準(または乾燥質量換算)」とは組成物や各画分の水分を含まない乾燥質量(上記の場合、不溶性食物繊維局在部位の乾燥質量)を分母、各対象成分や対象物の含有量(上記の場合、不溶性食物繊維の乾燥質量)を分子として算出される、各成分等の含有割合を表す。
【0032】
・画分B中DMDS湿潤質量基準含有量:
本発明の液状調味料は、具材画分Bに特定量のジメチルジスルフィド(CAS.No.624-92-0、dimethyl disulfide、別名DMDS)を含有する。これにより、サイズが小さく熱対流が起こりやすい画分B中の比較的サイズの小さい具材による特有のオフフレーバーの生成を抑制できるため好ましい。具体的には、画分Bに含有されるDMDS湿潤質量基準含量が0.01ppb以上である。中でも0.05ppb以上、更には0.1ppb以上、とりわけ0.5ppb以上、又は1.0ppb以上、又は1.2ppb以上、又は1.5ppb以上、又は1.8ppb以上、又は2.0ppb以上、又は2.2ppb以上、特に2.5ppb以上であることが好ましい。一方、DMDSが濃すぎるとその香りが目立ちすぎる場合があるため上限としては通常1000ppb以下、中でも900ppb以下、更には800ppb以下、とりわけ700ppb以下、又は600ppb以下、又は500ppb以下、又は400ppb以下であることが好ましい。また、本発明において特に指定がない場合、「DMDS含有量」とは湿潤質量基準の含有量を表す。
【0033】
画分A中ヘキサナール/画分B中ヘキサナール比:
本発明の液状調味料は、具材画分Bにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量に対する、具材画分Aにおけるヘキサナールの油脂質量基準含有量の質量比(これを適宜「画分A中ヘキサナール/画分B中ヘキサナール比」という。)が、所定割合超となるように両成分が含有されることが好ましい。このことで、画分Aで生成されたオフフレーバー成分が一部画分Bに流出した場合であっても、有効にオフフレーバーを抑制できるため好ましい。具体的には、画分A中ヘキサナール/画分B中ヘキサナール比の下限が、通常1.0超である。中でも1.2超、更には1.5、とりわけ2.0超、又は2.5超、又は3.0超、又は4.0超、又は5.0超、又は6.0超、又は7.0超、又は8.0超、又は9.0超、又は10.0超、又は30.0超、特に60.0超であることが好ましい。一方、画分A中ヘキサナール/画分B中ヘキサナールの上限は特に限定されないが、例えば通常100.0以下、中でも90.0以下、又は80.0以下、又は70.0以下とすることができる。
【0034】
・画分A中DMDS/画分B中DMDS比:
本発明の液状調味料は、画分BにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量に対する、画分AにおけるDMDSの湿潤質量基準含有量の質量比(これを適宜「画分A中DMDS/画分B中DMDS比」という。)が一定割合未満となるように、当該成分が含有されていることが好ましい。これにより、画分Bで生成されたオフフレーバー成分が一部画分Aに流出した場合であっても、特有のオフフレーバーの生成を抑制できるため好ましい。具体的には、画分A中DMDS/画分B中DMDS比が、通常1.0未満、中でも0.95未満、更には0.90未満、とりわけ0.85未満、又は0.80未満、特に0.75未満であることが好ましい。一方、下限は特に限定されないが、例えば通常0.01以上、中でも0.02以上、又は0.03以上、又は0.04以上、特に0.05以上とすることができる。
【0035】
・画分B中DMTS湿潤質量基準含有量:
さらに、本発明の液状調味料は、具材画分Bに一定量以上のジメチルトリスルフィド(CAS.No.3658-80-8、dimethyl trisulfide、別名DMTS)を含有すると、さらに画分Bにおけるオフフレーバー生成を抑制できるため好ましい。具体的には、画分Bに含有されるDMTSの湿潤質量基準含有量が、通常0.01ppb以上、中でも0.05ppb以上、更には0.1ppb以上、とりわけ0.5ppb以上、又は1.0ppb以上、又は1.2ppb以上、又は1.5ppb以上、又は1.8ppb以上、又は2.0ppb以上、又は2.2ppb以上、特に2.5ppb以上であることが好ましい。一方、DMTSが濃すぎるとその香りが目立ちすぎる場合があるため、上限としては通常3000ppb以下、中でも2000ppb以下、更には1500ppb以下、とりわけ1200ppb以下、又は1000ppb以下、又は900ppb以下、又は800ppb以下、又は700ppb以下、又は600ppb以下、又は500ppb以下、又は300ppb以下であることが好ましい。また、本発明において特に指定がない場合、「DMTS含有量」とは湿潤質量基準の含有量を表す。
【0036】
PFPDピーク面積比β/α:
本発明の液状調味料は、画分Aにおいて一次元GC/MS分析によって分離した成分を、後述のパルス式炎光光度検出(PFPD)法を用いて測定した場合における、保持時間8~11分においてm/z=45、79、94が共に有意に検出される保持時間におけるPFPDピーク面積α(DMDS保持時間に対応するPFPDピーク)に対する、保持時間13~18分においてm/z=61、90が共に有意に検出される保持時間におけるPFPDピーク面積β(画分A中の食用植物に由来する成分と思われるが、詳細は不明である)のピーク面積比(これを適宜「PFPDピーク面積比β/α」、「ピーク面積比β/α」、又は「β/α」とも称する場合がある。)が一定範囲に調整されることで、DMDSの香りがマスキングされ、より嗜好性の高い具材となるため好ましい。具体的には、ピーク面積比β/αの下限は、通常0.01以上、中でも0.05以上、更には0.1以上、とりわけ0.3以上、又は0.5以上、又は0.8以上、又は1.0以上、又は1.5以上、又は2.0以上、又は3.0以上、又は4.0以上、又は5.0以上、特に6.0以上が好ましい。一方、ピーク面積比β/αの上限としては、通常1000未満、中でも800未満、とりわけ600未満、更には400未満、又は200未満、又は100未満、又は50未満であることが好ましい。
【0037】
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法:
本発明において、各具材画分A、Bにおけるヘキサナールの含有量の測定は、定法に従い、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法(これを適宜「SPME-GC-MS」、「SPME」と称する。)によって行うことができる。
【0038】
固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法は、測定試料をSPME(Solid Phase Micro Extraction)法(ファイバーを気相に露出して、揮発性成分を吸着剤に捕集する静的な抽出方法)によって吸着させた後、ガスクロマトグラフ質量分析(GS/MS)法によって測定を行う方法である。具体的な手順としては、例えば、試料を10mL平底のバイアルに少量(1g)計り取った後に密閉し、試料中における揮発成分の性質に応じた吸着樹脂(SPMEファイバー)で吸着した後、加熱脱着システムを用いて処理することでガスクロマトグラフィー分析装置に導入し分析を行うことができる。また、試料中の成分含有量を測定するためには、試料と任意の含有量に希釈した標準品試料とを分析し、両試料の確認イオンピーク面積値を把握し、その値を比較することで、試料中の当該成分含有量を測定することができる。
【0039】
上記分析後、試料の一部を質量分析計にかけてマススペクトルを求め、ヘキサナールの関連イオン(m/z=56、57、72)で各成分の保持時間の確認を行う。質量分析計(MS)としては、四重極型の7000C Mass Selective Detector(agilent社製)を用いる。イオン化法、イオン化電圧は、イオン化法:EI+、イオン化電圧:70eVの条件で行い、結果はスキャンモードで取り込み、ヘキサナールに特徴的なイオン(m/z=56、57、72)を関連イオンとして用いて同定を行うことで質量スペクトル解析を行うことができ、標準品においてこれら関連イオンが全て検出される保持時間を特定することで、ヘキサナールの保持時間を特定することができる。なお、測定アプリケーションソフトウェアとしては、例えばUnknowns Analysis(MassHnter Workstation Software Quantitative Analysis、バージョン:B.09.00、ビルド:9.0.647.0、agilent社製)を使用する。
【0040】
具体的には、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ質量分析は以下の条件で行う。
【0041】
<固相マイクロ抽出条件>
・SPMEファイバー StableFlex 50/30μm,DVB/Carboxen/PDMS(SUPELCO社製)
・揮発性成分抽出装置
PAL3 RSI120(CTC Analytics社製)
予備加熱:80℃、15分
攪拌速度:300rpm
揮発性成分抽出:80℃、20分
脱着時間:10分
【0042】
<ガスクロマトグラフ条件>
・測定機器:Agilent 7980B GC System (Agilent Technologies社製)
・GCカラム:DB-WAX (Agilent Technologies社製) 長さ30m,口径0.25mm,膜厚0.25μm
・キャリア:Heガス、ガス流量1.0mL/分(コンスタントフロー)
・温度条件:[40℃(3分)]-[10℃/分]-[250℃(10分)]
【0043】
<質量分析条件>
・測定機器:Agilent 7000C GC/MS Triple Quad(Agilent Technologies社製)
・イオン化方式:EI(イオン化電圧70eV)
・スキャン質量:m/z 29.0~350.0
【0044】
・DHS-GC/MS分析法:
本発明において、各具材画分A、Bにおけるヘキサナール、DMDS、DMTS等の各成分の含有量の測定は、定法に従い、ダイナミックヘッドスペース-ガスクロマトグラフ質量分析(これを適宜「DHS-GC/MS」とする。)法及びパルス式炎光光度検出(PFPD)法によって行うことができる。
【0045】
具体的には、前述の手法で得られた各具材画分A、Bのサンプルを、例えば小型ヒスコトロン(マイクロテックニチオン社製ホモジナイザーNS-310E3)等を用いて粥状の性状となるまで処理(通常は10000rpmで15秒程度)した後、DHS-GC/MS法及びPFPD法による分析に供する。
【0046】
DHS-GC/MS法は、測定試料をDHS(ダイナミックヘッドスペース)法(気相の揮発性成分を不活性ガスで強制的にパージを行い、揮発性成分を吸着剤に捕集する動的な抽出方法)によって揮発させた後、ガスクロマトグラフ質量分析(GS/MS)法によって測定を行う方法である。また、他成分についても、同様の手法で分析をする。具体的な手順としては、例えば、試料を10mL平底のバイアルに少量(1g)計り取った後に密閉し、窒素ガスパージによって揮発させた試料を分析成分の性質に応じた吸着樹脂(Tenaxカラム)で吸着した後、加熱脱着システムを用いて処理することでガスクロマトグラフィー分析装置に導入し分析を行うことができる。また、試料中の成分含有量を測定するためには、試料と任意含有量に希釈した標準品試料とを分析し、両試料の確認イオンピーク面積又はPFPDピーク面積の積分結果を把握し、その値を比較することで、試料中の当該成分含有量を測定することができる。
【0047】
上記分析後、試料の一部を質量分析計にかけてマススペクトルを求め、各成分の関連イオン(DMDS:m/z=45、79、94、ヘキサナール:m/z=56、57、72、DMTS:m/z=79、111、126)で各成分の保持時間の確認を行う。質量分析計(MS)としては、四重極型の5977B Mass Selective Detector(Agilent社製)を用いる。イオン化法、イオン化電圧は、イオン化法:EI+、イオン化電圧:70eVの条件で行い、結果はスキャンモードで取り込み、各成分に特徴的なイオン(DMDS:m/z=45、79、94、ヘキサナール:m/z=56、57、72、DMTS:m/z=79、111、126)を関連イオンとして用いて同定を行うことで質量スペクトル解析を行うことができ、標準品においてこれら関連イオンが全て検出される保持時間を特定することで、ヘキサナール、DMDS、及びDMTSの保持時間を特定することができる。
尚、本発明における「m/z」とは、各成分のm/z中心値における-0.3~+0.7の範囲において検出された値をいう。例えば、m/z=45は44.7~45.7において検出されたイオンピークの累積値を表す。
【0048】
具体的には、DHS-GC/MS分析は以下の条件で行う。なお、本分析に関しては、後述する二次元GC/MS分析との対比で、「一次元GC/MS分析」と称する場合がある。
【0049】
[GC/MS条件]
(ダイナミックヘッドスペース(dynamic headspace:DHS)注入法)
・装置:Agilent社製7890B(GC)、5977B(MS)
Gester社製MultiPurpose Sampler(auto-sampler)
・吸着樹脂:TENAX
・インキュベーション温度:80℃
・窒素ガスパージ量:60mL
・窒素ガスパージ流量:10mL/分
・TDU:[30℃]-[210℃/分]-[240℃(3分)]
・CIS:[10℃]-[12℃/秒]-[240℃]
(ライナー充填剤:TENAX)
・カラム:Gester社製DB-WAX(長さ:30m×内径:250μm×膜厚:0.25μm)
・カラム温度:[40℃(3分)]-[5℃/分]-[240℃(7分)]
・キャリアガス:He
・トランスファーライン:250℃
・イオン源温度:230℃
・スキャンパラメータ:m/z=28.7~300
・スプリット:なし
【0050】
・パルス式炎光光度検出(PFPD)法:
また、試料の一部をパルス式炎光光度検出(PFPD)法に供し、サンプル中の硫黄化合物を分析することで、サンプル中のごく低含有量の含硫化合物(DMDS、DMTS等)を検出することができる。PFPD法による分析は、パルス式炎光光度検出器により行うことができる。一般的なパルス式炎光光度検出器であれば、任意のものを使用可能であるが、例としてはOI Analytical 5380 Pulsed Flame Photometric Detector(OI Analytical社製)を挙げることができる。試料の分析は、Sモード(硫黄に最適化した条件)にて行うことができる。
【0051】
上記の条件にて、既知含有量のDMDS(CAS.No.624-92-0、東京化成工業社製、製品コード:D0714)及びDMTS(CAS.No.3658-80-8、富士フイルム和光純薬工業社製、製品コード:327-41221)の各標品を、水で適当な濃度に希釈したものを試料に添加して分析に供する。パルス式炎光光度検出器は物質を還元水素炎中で燃焼させ、その際発生する394nmの特定波長の光を検出することで硫黄化合物のみを選択的に検出することができ、極微量の硫黄成分をも検出することができる。また、その高い選択性を利用して、極微量の硫黄化合物の検出に使用することができる。このパルス式炎光光度検出器による高感度硫黄成分検出能と質量分析計のマススペクトルパターンに基づく定性的な分析(測定サンプルと標品における関連イオン((DMDS:m/z=45、79、94、ヘキサナール:m/z=56、57、72、DMTS:m/z=79、111、126)分布の比較によって、関連イオンが共に有意に検出される保持時間を、各成分の保持時間として認定する。)と匂いかぎ分析による香気特徴による判別を組み合わせることで、保持時間分9.5分付近のピークをDMDS、保持時間分11.5分付近のピークをヘキサナール、18.5分付近のピークをDMTSと判定することができる。
【0052】
上記の条件にて、含有量既知のDMDS、ヘキサナール(CAS.No.66-25-1、東京化成工業社製、製品コード:H0133)、DMTSの標品を蒸留水で適当な含有量に希釈したものと試料とを分析に供する。質量分析計のマススペクトルパターンに基づく分析によって、測定条件によって多少のずれはあるものの、標準品保持時間との比較によって、ターゲット成分と思しきピークの保持時間付近(例えば、保持時間8~11分付近をDMDS、保持時間8~13分付近をヘキサナール、保持時間16~24分付近をDMTS)における、それらの希釈標品と試料との確認イオン((DMDS:m/z=94、ヘキサナール:m/z=72、DMTS:m/z=126)量やPFPDのピーク面積積分結果の比較によって、試料中の成分の定量を行うことができる。
【0053】
更に、上記の条件で一次元GC/MS分析を行い、ターゲット成分と思しきピークの保持時間付近(例えば、保持時間8~11分付近をDMDS、保持時間8~13分付近をヘキサナール、保持時間16~24分付近をDMTS)をハートカットして異なる性質のカラムで二次元ガスクロマトグラフィーを実施することによって、より精緻に当該成分含有量の定量を行うことができるため、特に好ましい。具体的には二次元ガスクロマトグラフィー分析は以下のような条件で行うことができる。なお、当該二次元GC/MS分析における保持時間は、カラム昇温開始時点を0分として算出するため、一次元GC/MS分析時とは異なる値となるが、標準品との分析結果比較によってその保持時間を把握することができる。
【0054】
[二次元GC/MS条件]
・CTS:[-150℃]-[10℃/秒]-[250℃]
・カラム:Gester社製DB-5(長さ:10m×内径:180μm×膜厚:0.4μm)
・カラム温度:[40℃(0分)]-[40℃/分]-[240℃(15分)]
・キャリアガス:He
【0055】
・ヘキサナール、DMDS、DMTSの由来:
尚、本発明におけるDMDSとしては、本発明の液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものであってもよく、当該食材とは別に添加されるものであってもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよく、それらが組み合わさった合計量が所定の含有量及び/又は割合となっていればよい。当該成分を食材とは別に添加する場合、DMDSが組成物に含有された状態であっても、精製抽出された高純度の試薬の状態であってもよい。尚、ヘキサナールやDMTSについても同様である。
【0056】
・画分B中の粒子径:
本発明の液状調味料は、擾乱前後の画分Bに含まれる微粒子複合体及び微粒子の粒子径に関する各種パラメータ、即ちモード粒子径、最大粒子径、及び粒子径のd50が、以下の特定の要件を満たすことが好ましい。即ち、本発明の液状調味料は、擾乱を加えない状態(即ち超音波処理を行う前の状態)では、多数の微粒子複合体を含有するのに対し、擾乱を加えた状態(即ち超音波処理を行った後の状態)では、その微粒子複合体の一部又は全部が崩壊して単独の微粒子となるので、擾乱前と擾乱後では、モード粒子径だけでなく、最大粒子径、及び粒子径のd50等、粒子径に関する各種パラメータが大きく変化する。画分Bに含まれる微粒子複合体及び微粒子の特性を測定するに際しては、前述の方法で得られた画分Bをそのまま測定サンプルとして用い、後述するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することで、それらの特性を把握することができる。
【0057】
本発明の画分Bにおける擾乱後(即ち超音波処理後)の微粒子複合体のモード粒子径(モード径)は、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的には、画分Bの擾乱後のモード粒子径は、通常1000μm以下、中でも900μm以下、更には800μm以下、とりわけ700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、中でも1.0μm以上、更には3.0μm以上、とりわけ5.0μm以上、とりわけ6.0μm以上、特に7.0μm以上であることが好ましい。また、後述する不溶性食物繊維局在部位(特にトマトの種及び/又は皮)の微細化処理物を画分Bに含有させる場合、硬質組織である当該部位を十分に微細化して所定範囲とすることで、口あたりが良くなるため好ましい。
【0058】
本発明の画分Bにおける擾乱前(即ち超音波処理前)の微粒子複合体のモード粒子径(モード径)も、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、本発明の液状調味料の擾乱前、即ち擾乱前のモード粒子径は、離水しにくい品質となり、摂食性の改善効果が維持されること、商業的に流通させることが可能となる観点から、通常900μm以下、更には800μm以下、とりわけ700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常5μm以上、中でも10μm以上、更には12μm以上であることが好ましい。
【0059】
本発明において「モード粒子径」とは、測定対象物をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定して得られたチャンネル毎の粒子径分布について、粒子頻度%がもっとも大きいチャンネルの粒子径を表す。全く同じ粒子頻度%のチャンネルが複数存在する場合には、その中で最も粒子径の小さいチャンネルの粒子径を採用する。粒子径分布が正規分布であればその値はメジアン径と一致するが、粒子径分布に偏りがある場合、特に粒子径分布のピークが複数ある場合には大きく数値が異なる。レーザー回折式粒度分布測定装置によるサンプルの粒子径分布の測定は、例えば以下の方法で実施することができる。
【0060】
本発明の画分Bにおける擾乱前の微粒子複合体の最大粒子径は、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、本発明の液状調味料の擾乱前(即ち超音波処理前)の最大粒子径は、食材の組織が破壊されて好ましくない風味が付与されることを防ぐことが可能になる観点から、通常30μm以上、更には100μm以上、更には200μm以上、中でも300μm以上、中でも400μm以上、中でも500μm以上、中でも600μm以上、中でも700μm以上、中でも800μm以上、中でも900μm以上であることが好ましい。一方、画分Bの擾乱前の最大粒子径は、限定されるものではないが、通常2000μm以下、中でも1800μm以下であることが好ましい。擾乱前の最大粒子径を前記上限以下とすることにより、工業上の生産性という理由から便利である。特に後述する食用植物における不溶性食物繊維局在部位(特にトマトの種及び/又は皮)の粉砕物を画分Bに含有させる場合、硬質組織である当該部位を十分に微細化しても一部大きめの組織が残存するため、画分Bにおける擾乱前の微粒子複合体の最大粒子径は上述する値以上となる場合がある。そのような場合であっても、前述する画分Bにおける擾乱後の微粒子複合体のモード径や、後述する画分Bにおける擾乱後の粒子径のd50が所定範囲内となるように調整されることで食感の良い液状調味料となるため好ましい。
【0061】
本発明の画分Bにおける擾乱後の微粒子複合体の最大粒子径も、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、本発明の液状調味料の擾乱後(即ち超音波処理後)の最大粒子径は、食材の組織が破壊されて好ましく無い風味が付与されにくいという観点から、通常30μm以上、更には100μm以上、更には200μm以上、中でも300μm以上、中でも400μm以上、中でも500μm以上、中でも600μm以上、中でも700μm以上、中でも800μm以上、中でも900μm以上であることが好ましい。一方、画分Bの擾乱後の最大粒子径は、限定されるものではないが、通常1900μm以下、中でも1700μm以下であることが好ましい。擾乱後の最大粒子径を前記上限以下とすることにより、工業上の生産性という理由から便利である。
【0062】
以上のモード粒子径及び最大粒子径に加えて、本発明における画分Bの擾乱前後の微粒子複合体の粒子径のd50(50%積算径、メジアン粒子径、メジアン径)も、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、本発明における画分Bの擾乱前(即ち超音波処理前)の粒子径のd50は、通常1000μm以下、中でも900μm以下、更には800μm以下、とりわけ700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常5μm以上、中でも10μm以上であることが好ましい。また、後述する不溶性食物繊維局在部位(特にトマトの種及び/又は皮)の微細化処理物を画分Bに含有させる場合、硬質組織である当該部位を十分に微細化して所定範囲とすることで、口あたりが良くなるため好ましい。
【0063】
一方、本発明における画分Bの擾乱後の粒子径のd50は、通常900μm以下、中でも800μm以下、更には700μm以下、とりわけ600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、更には7μm以上であることが好ましい。なお、粒子径のd50は、粒子径分布をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側の粒子頻度%の累積値の割合と、小さい側の粒子頻度%の累積値の割合との比が、50:50となる粒子径として定義される。粒子径のd50は、例えば後述するレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0064】
なお、本発明における「粒子径」とは、特に指定が無い限り全て体積基準で測定されたものを表す。また、本発明における「粒子」とは、特に指定が無い限り単独の微粒子のみならず、それらが凝集してなる微粒子複合体も含みうる概念である。
【0065】
本発明の粒子径に関する各種パラメータの測定条件は、制限されるものではないが、以下の条件とすることができる。まず、測定時の溶媒は、粒子構造に影響を与え難いものとしてエタノールを用いることが好ましい。測定に使用されるレーザー回折式粒度分布測定装置としては、制限されるものではないが、例えばマイクロトラック・ベル株式会社のMicrotrac MT3300 EXIIシステムを使用することができる。測定アプリケーションソフトウェアとしては、制限されるものではないが、例えばDMS2(Data Management System version2、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することができる。前記の測定装置及びソフトウェアを使用する場合、測定に際しては、同ソフトウェアの洗浄ボタンを押下して洗浄を実施したのち、同ソフトウェアのSetzeroボタンを押下してゼロ合わせを実施し、サンプルローディングでサンプルの濃度が適正範囲内に入るまでサンプルを直接投入すればよい。擾乱前のサンプル、即ち超音波処理を行なわないサンプルは、サンプル投入後のサンプルローディング2回以内にその濃度を適正範囲内に調整した後、直ちに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とすればよい。一方、擾乱後のサンプル、即ち超音波処理を行ったサンプルを測定する場合は、擾乱前のサンプルを測定機内を循環する測定溶媒(エタノール)中に投入し、サンプルローディングにて濃度を適正範囲内に調整した後、同ソフトの超音波処理ボタンを押下して超音波処理を行う。その後、3回の脱泡処理を行った上で、再度サンプルローディング処理を行い、濃度が依然として適正範囲であることを確認した後、速やかに流速60%で10秒の測定時間でレーザー回折した結果を測定値とすることができる。測定時のパラメータとしては、例えば分布表示:体積、粒子屈折率:1.60、溶媒屈折率:1.36、測定上限(μm)=2000.00μm、測定下限(μm)=0.021μmとすることができる。
【0066】
尚、本発明では特に断り無き限り、微粒子複合体を解砕させる外部からの擾乱の典型的な例として、超音波処理を想定するものとする。本発明において「超音波処理」とは、特に指定が無い限り、測定サンプルに対して周波数40kHzの超音波を出力40Wにて3分間印加する処理を表す。
【0067】
また、本発明において各種の粒子径を求める際には、チャンネル(CH)毎の粒子径分布を測定した上で、後述の表2に記載した測定チャンネル毎の粒子径を規格として用いて求めることが好ましい。具体的には、後記の表2の各チャンネルに規定された粒子径以下で、且つ数字が一つ大きいチャンネルに規定された粒子径(測定範囲の最大チャンネルにおいては、測定下限粒子径)よりも大きい粒子の頻度を、後記の表2のチャンネル毎に測定し、測定範囲内の全チャンネルの合計頻度を分母として、各チャンネルの粒子頻度%を求めることができる(これを「○○チャンネルの粒子頻度%」とも称する)。例えば、1チャンネルの粒子頻度%は、2000.00μm以下かつ1826.00μmより大きい粒子の頻度%を表す。特に、最大粒子径については、後記の表2の132チャンネルのそれぞれにおける粒子頻度%を測定して得られた結果について、粒子頻度%が認められたチャンネルのうち、最も粒子径が大きいチャンネルの粒子径として求めることができる。言い換えれば、本発明において各種の粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する場合、その好ましい測定条件としては、測定溶媒としてエタノールを用い、測定上限2000.00μm、測定下限0.021μmの対象について、サンプル投入後速やかに粒子径を測定するということになる。
【0068】
【表1】
【0069】
・組成物中粒子の比表面積:
本発明の液状調味料における画分Bは、前記の各種要件に加えて、擾乱を加える前後(即ち超音波処理前後)の画分B中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積[m2/mL]が、以下の要件を満たすことが好ましい。即ち、本発明の液状調味料は、擾乱を加えない状態(即ち超音波処理を行う前の状態)では、多数の微粒子複合体を含有し、擾乱を加えた状態(即ち超音波処理を行った後の状態)でもその構造が保持されるため、擾乱前と擾乱後では、その単位体積当り比表面積[m2/mL]が大きく変化しないことが好ましい。
【0070】
即ち、擾乱を加える前(即ち超音波処理前)の画分B中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積(γB)は、通常1.00m2/mL以下、中でも0.90m2/mL以下、中でも0.80m2/mL以下であるのが好ましい。当該比表面積(γB)が前記上限以下であれば、微粒子が十分に複合体を形成し、本発明の保存安定性の向上効果が充分に奏されるので好ましい。なお、当該比表面積(γB)の下限は限定されないが、通常0.01m2/mL以上、中でも0.02m2/mL以上、中でも0.03m2/mL以上とすることが好ましい。
【0071】
また、擾乱を加えた後(即ち超音波処理後)の画分B中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積(γA)は、通常1.00m2/mL以下、中でも0.90m2/mL以下、中でも0.80m2/mL以下であるのが好ましい。当該比表面積(γB)が前記上限以下であれば、微粒子が十分に複合体を形成し、本発明の保存安定性の向上効果が充分に奏されるので好ましい。なお、当該比表面積(γB)の下限は限定されないが、通常0.01m2/mL以上、中でも0.02m2/mL以上、中でも0.03m2/mL以上とすることが好ましい。
【0072】
また、擾乱を加える前後(即ち超音波処理前後)の画分B中の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積[m2/mL]の比、即ち(γB/γA:(超音波処理前の単位体積当り比表面積)/(超音波処理後の単位体積当り比表面積))が、所定範囲を満たすことが好ましい。具体的に、(γB/γA)の値の上限は、限定されないが、通常2.00以上、中でも1.50以下、更には1.20以下、又は1.10以下、又は1.05以下、特に1.00以下が好ましい。その下限は、特に制限されないが通常0.80以上、中でも0.85以上、更には0.90以上、とりわけ0.95以上であることが好ましい。γB/γAが前記範囲であることにより、食物繊維同士が適度に複合体化されており、本発明の効果が適切に発現されるため好ましい。
【0073】
本発明において、「単位体積当り比表面積」[m2/mL]とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定する、粒子を球状と仮定した場合の単位体積(1mL)当り比表面積を表す。なお、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積[m2/mL]は、粒子の成分や表面構造等を反映した測定値(透過法や気体吸着法等で求められる体積あたり、質量あたり比表面積)とは異なる測定メカニズムに基づく数値である。また、粒子を球状と仮定した場合の単位体積あたりの比表面積は、粒子1個当りの表面積をai、粒子径をdiとした場合に、測定チャンネルごとの粒子径(di)に粒子一個当たりの表面積(ai)を掛け合わせたものを積算し、粒子一個当たりの表面積(ai)の積算値で割返した面積平均径を算出し(Σ(ai・di)/Σ(ai))、更に6/(面積平均径)を算出すること(6×Σ(ai)/Σ(ai・di))によって求められる。
【0074】
・画分B中の油脂分含量:
本発明の液状調味料は、画分Bに油脂分が一定以上含有されることで、画分Aのオフフレーバー生成を抑制できるため好ましい。その原理は不明であるが、油脂分が画分Aの具材の酸化反応等を抑制している可能性がある。具体的に、画分Bにおける油脂分含有量は、通常2質量%以上、中でも5質量%以上、更には8質量%以上、とりわけ10質量%以上、又は12質量%以上、又は15質量%以上、又は18質量%以上、又は20質量%以上、特に25質量%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常90質量%以下、中でも80質量%以下とすることができる。
【0075】
画分Bにおける油脂分としては、本発明の液状調味料の原料となる食用植物等の食材に含まれるものであってもよく、当該食材とは別に添加されるものであってもよく、本発明の液状調味料の製造に伴い生じるものであってもよく、それらが組み合わさった合計量が所定の含有量となっていればよい。食材とは別に油を添加する場合、添加される油は植物油脂であることが好ましく、液体状の植物油脂であることがより好ましい。また、植物油脂が精製された植物油脂であることがより好ましい。具体的には、サラダ油、オリーブオイル、サフラワー油、キャノーラ油、ごま油、コーン油、しそ油、大豆油、ベニバナ油、菜種油、パーム油、綿実油、えごま油、落花生油、香味油、ひまわり油、やし油、米油(米糠油)、とうもろこし油、中鎖脂肪酸トリグリセリドなどが例示される。
【0076】
また、画分Bにおける油脂分含量のうち、当該液状調味料の原料となる食用植物等とは別に添加される油脂(特に精製油脂)に由来する割合が乾燥質量換算で30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが通常100質量%以下である。さらに、画分Bにおける油脂分含量のうち、液体状油脂(特に精製液体状油脂)の割合が乾燥質量換算で30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0077】
画分Bにおける油脂分含量の測定方法としては、前述の方法で採取した画分Bサンプルの脂質量を測定すればよく、定法を用いることができる。例としては、「食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)」及び「日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル」に記載の方法に準じた方法が挙げられる。具体的には、クロロホルム・メタノール混液抽出法又はソックスレー抽出法等が挙げられる。
【0078】
・画分Bの粘度:
本発明の液状調味料は、画分Bにおける粘度が一定以上に調整されることで、オフフレーバーの生成を抑制するDMDS等が画分Bに均一に広がり、本発明の効果がより高まるため好ましい。具体的には、画分Bにおける粘度(測定温度20℃)が10mPa・s以上である。中でも20mPa・s以上、更には30mPa・s以上、とりわけ40mPa・s以上、又は50mPa・s以上、又は60mPa・s以上、又70mPa・s以上、又は80mPa・s以上、又は90mPa・s以上、又は100mPa・s以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常10000mPa・s以下、又は6000mPa・s以下、3000mPa・s以下である。
【0079】
なお、本発明において、単に「粘度(測定温度20℃)」と記載する場合は、回転粘度計による測定値を表し、B型粘度計(例えば東機産業社製の「B-II」)を用いて定法に従って測定することができる。測定に際しては、測定上限値に留意して、適切な回転速度(6rpm~60rpm)、ローター(No.1~No.4)を用いて20℃に調整したサンプルの測定値を取得し、使用したローターと回転数に応じた換算乗数を測定値に乗算することで、「粘度(測定温度20℃)」の値を測定することができる。測定に際しては、測定サンプルの粘度予想値がローターと回転速度から導かれる測定上限値のフルスケール近くになるような組合せを選択するが、粘度が全く不明の場合は、最高粘度域の測定設定(No.4のロータ、回転速度6rpm)から始め、順次低粘度域設定に変えていくことで、粘度を測定することができる。例えば、No.3ローター、回転速度60rpmでは上限値2000mPa・sまで測定することができ、測定値に換算乗数である20を乗算することで「粘度(測定温度20℃)」の数値を測定することができる。
【0080】
・調味料のボストウィック粘度:
本発明の液状調味料は、ボストウィック粘度計で測定した場合における流下距離が一定以上に調整されることで画分Aと画分B間で相互にオフフレーバー成分が流出することを抑制できるため好ましい。具体的には、液状調味料のボストウィック粘度計で測定した場合における流下距離(測定時間30秒、測定温度20℃)が28cm以下である。中でも22cm以下、更には15cm以下であるのが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0.1cm以上、中でも1.0cm以上である。なお、本発明における、ボストウィック粘度はボストウィック粘度計(本発明においては、トラフ長28.0cmで、ボストウィック粘度すなわちサンプルのトラフ内における流下距離が最大28.0cmのものを用いる)を用いて測定することができる。具体的にはKO式ボストウィック粘度計(深谷鉄工所社製)を用いて測定した。測定時には装置の水準器を用いて水平に設置し、ゲートを閉じた後リザーバーに20℃に温度調整したサンプルを満量まで充填し、ゲートを開くためにトリガーを押し下げると同時に時間を計測し、30秒経過時点でのトラフ内の材料の流下距離を測定する。
【0081】
・不溶性食物繊維局在部位
また、画分Bに食用植物における不溶性食物繊維局在部位を含有させることで、画分Bの粘性が向上し、前述する粘度(20℃)やボストウィック粘度が所定の値に調整されるため好ましい。具体的には、画分B全体の合計質量に対する不溶性食物繊維局在部位の割合の下限としては、湿潤質量基準割合で0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以上、さらには0.3質量%以上が好ましい。一方、上限は通常限定されないが、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらには5質量%以下としてもよい。
【0082】
画分Bにおける不溶性食物繊維局在部位は、不溶性食物繊維局在部位を単独で含有させても良く、不溶性食物繊維局在部位を含む不溶性食物繊維含有食材の状態で含有させても良いが、同一種類の食材における不溶性食物繊維局在部位とそれ以外の部位を共に含有することが好ましく、同一個体の食材における不溶性食物繊維局在部位とそれ以外の部位を共に含有することが特に好ましい。同一種類または同一個体の食材における不溶性食物繊維局在部位を含む不溶性食物繊維含有食材は、食材中の不溶性食物繊維局在部位とそれ以外の部位を別個に含有させてもよいし、不溶性食物繊維局在部位を含んだ状態の食材を含有させてもよい。
【0083】
本発明における不溶性食物繊維局在部位とは、食材の可食部よりも、相対的に高い不溶性食物繊維含有割合を有する部位を表し、乾燥状態において、より好ましくは可食部の1.1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.4倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは1.6倍以上、さらに好ましくは1.7倍以上、さらに好ましくは1.8倍以上、さらに好ましくは1.9倍以上、最も好ましくは2.0倍以上の不溶性食物繊維含有割合を有する部位を表す。例えば、トマトにおいて可食部(果肉部等)における不溶性食物繊維含有割合よりも相対的に高い不溶性食物繊維含有割合を有する種子及び/又は皮が不溶性食物繊維局在部位に該当する。
【0084】
また、本発明における不溶性食物繊維局在部位は、食材の「可食部」の一部(例えば穀類、豆類、種実類、野菜類の種子又は皮部。特に野菜類の種子又は皮部)であっても「非可食部(例えばコーンの芯部、豆類の鞘部)」であってもよいが、不溶性食物繊維局在部位が「可食部」の一部であることが好ましく、野菜類の皮部及び/又は種子部又は豆類の搾汁残さであることがより好ましく、トマト(ミニトマトを含む)の皮部及び/又は種子部または大豆の搾汁残さ(おから)であることが特に好ましい。
【0085】
尚、不溶性食物繊維局在部位の代表的な例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の各種食材の「廃棄部位」が挙げられる(一例を表1に示す)。ただし、これら「非可食部」以外の「可食部」についても、不溶性食物繊維局在部位は上記の穀類、豆類、種実類、野菜類の皮部や種子部、野菜類の茎葉部の特に硬く厚い部分等にも認められる。
【0086】
本発明において、食材の「非可食部」とは、食材の通常飲食に適さない部分や、通常の食習慣では廃棄される部分を表し、「可食部」とは、食材全体から廃棄部位(非可食部)を除いた部分を表す。尚、本発明に使用される食材、すなわち不溶性食物繊維含有食材及び/又はその他の(不溶性食物繊維を含有しない)食材における、非可食部の部位や比率は、その食品や食品の加工品を取り扱う当業者であれば、当然に理解することが可能である。例としては、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に記載の「廃棄部位」及び「廃棄率」を参照し、これらをそれぞれ非可食部の部位及び比率として扱うことができる。尚、食材における非可食部の部位や比率から、可食部の部位や比率についても理解することができる。
【0087】
また、不溶性食物繊維局在部位における乾燥質量換算での不溶性食物繊維含有割合は、通常8質量%超、さらに好ましくは9質量%超、さらに好ましくは10質量%超、さらに好ましくは11質量%超、さらに好ましくは12質量%超、さらに好ましくは13質量%超、さらに好ましくは14質量%超、さらに好ましくは15質量%超、さらに好ましくは16質量%超、さらに好ましくは17質量%超、さらに好ましくは18質量%超、さらに好ましくは19質量%超、さらに好ましくは20質量%超であることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常50質量%以下、又は40質量%以下、中でも30質量%以下である。
【0088】
また、不溶性食物繊維局在部位を含有させる際は、微細化処理物の状態で含有させることで、粘性向上効果が奏されるため、より好ましい。その原理は不明であるが、不溶性食物繊維が複合体化して粘性を発現している可能性がある。
【0089】
不溶性食物繊維局在部位の微細化処理に際しては、不溶性食物繊維局在部位を単独で微細化処理を施しても良く、不溶性食物繊維局在部位を含む不溶性食物繊維含有食材の状態で微細化処理を施しても良いが、破砕が困難な不溶性食物繊維局在部位をそれ以外の部位と分離して微細化処理を施すことが好ましい。
【0090】
また、同一種類の食材における不溶性食物繊維局在部位の微細化処理物とそれ以外の部位を共に含有することが好ましい。また、不溶性食物繊維局在部位の微細化処理物は、食材から不溶性食物繊維局在部位を分離した後に微細化処理を施したものを画分Bに含有させても良いし、不溶性食物繊維局在部位を含む不溶性食物繊維含有食材の状態で微細化処理を施したものを画分Bに含有させても良い。
【0091】
本発明における微細化処理の条件として用いられる粉砕処理の手段は特に限定されない。粉砕時の温度も制限されず、高温粉砕、常温粉砕、低温粉砕の何れであってもよい。粉砕時の圧力も制限されず、高圧粉砕、常圧粉砕、低圧粉砕の何れであってもよい。斯かる粉砕処理のための装置の例としては、ブレンダー、ミキサー、ミル機、混練機、粉砕機、解砕機、磨砕機等の機器類が挙げられるが、これらの何れであってもよい。その装置としては、例えば乾式ビーズミル、ボールミル(転動式、振動式等)等の媒体攪拌ミル、ジェットミル、高速回転型衝撃式ミル(ピンミル等)、ロールミル、ハンマーミル等を用いることができる。
【0092】
不溶性食物繊維局在部位の微細化処理に際しては、擾乱後の微粒子複合体のモード径が、所定の範囲内に調整されるまで処理することが好ましい。具体的には、擾乱後のモード粒子径は、通常1000μm以下、中でも900μm以下、更には800μm以下、とりわけ700μm以下、又は600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常0.3μm以上、中でも1.0μm以上、更には3.0μm以上、とりわけ5.0μm以上、とりわけ6.0μm以上、特に7.0μm以上であることが好ましい。
【0093】
また、不溶性食物繊維局在部位の微細化処理に際しては、擾乱後の微粒子複合体の粒子径のd50が、所定の範囲内に調整されることが好ましい。具体的に、擾乱後の粒子径のd50は、通常900μm以下、中でも800μm以下、更には700μm以下、とりわけ600μm以下、又は500μm以下、又は400μm以下、又は300μm以下、又は200μm以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、通常1μm以上、中でも5μm以上、更には7μm以上であることが好ましい。
【0094】
また、不溶性食物繊維局在部位の微細化処理に際しては、擾乱を加える前後(即ち超音波処理前後)の粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積が、以下の要件を満たすことが好ましい。即ち、本発明における不溶性食物繊維局在部位の微細化処理物は、擾乱を加えない状態(即ち超音波処理を行う前の状態)では、多数の微粒子複合体を含有し、擾乱を加えた状態(即ち超音波処理を行った後の状態)でもその構造が保持されるため、擾乱前と擾乱後では、その単位体積当り比表面積[m2/mL]が大きく変化しないことで、食物繊維同士が強固に複合体化されており、粘性向上効果が適切に発現されるため好ましい。即ち((超音波処理前の単位体積当り比表面積[m2/mL])/(超音波処理後の単位体積当り比表面積[m2/mL]))が、所定範囲を満たすことが好ましい。具体的に、当該割合の上限は、限定されないが、通常2.00以下、中でも1.50以下、更には1.20以下、又は1.10以下、又は1.05以下、特に1.00以下が好ましい。その下限は特に限定されないが、通常0.80以上、中でも0.85以上、更には0.90以上、とりわけ0.95以上であることが好ましい。
【0095】
なお、擾乱を加える前後の不溶性食物繊維局在部位の微細化処理物における粒子(微粒子及び微粒子複合体)の単位体積当り比表面積は、通常0.01[m2/mL]以上、中でも0.02[m2/mL]以上、中でも0.03[m2/mL]以上とすることが好ましい。上限は特に制限されないが、通常1.00[m2/mL]以下、中でも0.90[m2/mL]以下、中でも0.80[m2/mL]以下であるのが好ましい。
【0096】
・食用植物:
本発明の液状調味料は、食用植物を含有する。本発明における「食用植物」とは、その可食部及び/又は非可食部を含有する、ヒトの飲食に供される植物を指す。本発明における食用植物としては、ヒトの飲食に供されるものであれば何ら制限されるものではないが、野菜類、穀類、きのこ類、果実類、イモ類、藻類、種実類、豆類等が挙げられるが、野菜類、穀類、きのこ類、果実類に対して特に有用である。具体的には、たとえば、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年」(厚生労働省が定めている食品成分表、特に第236頁表1参照)に記載された分類のうち、野菜類、穀類、きのこ類、果実類、イモ類、藻類、種実類、豆類等を参照することで、いかなる食品が食用植物に該当するかを理解することができる。これらの食用植物は1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。また、これらの食用植物はそのまま用いてもよく、各種の処理(例えば乾燥、加熱、灰汁抜き、皮むき、種実抜き、追熟、塩蔵、果皮加工等)を加えてから使用してもよい。また、食材は、非可食部と合わせた植物全体の状態でその分類や具体的な種類(名称)を判断することができる。
【0097】
本発明の液状調味料は、1種の食用植物のみを含有していてもよく、2種以上の食用植物を含有していてもよい。本発明の液状調味料が2種以上の食用植物を含有する場合、それらの食用植物の組み合わせ及び比率は任意である。即ち、それらは2種以上の食用植物は、同一の分類に属する食用植物であってもよく、異なる2種以上の分類に属する食用植物であってもよい。具材画分A及び具材画分Bは各々独立に、1種の食用植物のみを含有していてもよく、2種以上の食用植物を含有していてもよい。具材画分A及び/又は具材画分Bが各々2種以上の食用植物を含有する場合、それらの食用植物の組み合わせ及び比率は任意である。
【0098】
また、本発明の液状調味料中の各食用植物や、各具材画分中の各食用植物は、具材として存在していてもよく、媒体として存在していてもよく、具材と媒体の両方として存在していてもよい。また、具材画分Aと具材画分Bとは、それぞれ異なる1種又は2種以上の食用植物のみから構成されていてもよく、それぞれ異なる1種又は2種以上の食用植物に加えて、共通の1種又は2種以上の食用植物を含んでいてもよく、全て共通の1種又は2種以上の食用植物のみから構成されていてもよい。なお、具材画分Aと具材画分Bとは、少なくとも同一分類に属する食用植物を含むことが好ましく、また、同一種類の食用植物を含むことがより好ましい。
【0099】
以下、本発明の液状調味料やその各具材画分に含まれる食用植物の具体例を説明するが、食用植物はこれらの具体例に限定されるものではなく、任意のものを使用することが可能である。
【0100】
野菜類に分類される食用植物の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、ダイコン、ニンジン、ルタバガ、パースニップ、カブ、ブラック・サルシファイ、レンコン、ビート(好適にはビーツ(ビートルート):ビートの根を食用とするために改良された品種)、クワイ、エシャロット、ニンニク、ラッキョウ、ユリネ、ケール、タマネギ(特にペコロス)、アスパラガス、ウド、キャベツ、レタス、ホウレンソウ、ハクサイ、アブラナ、コマツナ、チンゲンサイ、ニラ、ネギ、ノザワナ、フキ、フダンソウ(不断草、スイスチャード)、ミズナ、トマト(トマトの一種であるミニトマトを含む)、ナス、カボチャ、ピーマン、キュウリ、ミョウガ、カリフラワー、ブロッコリー、食用菊、ニガウリ、オクラ、アーティチョーク、ズッキーニ、てんさい、タイガーナッツ、ショウガ、シソ、ワサビ、パプリカ、ハーブ類(クレソン、コリアンダー、クウシンサイ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉、ステビア)、ワラビ、ゼンマイ、タケノコ等が挙げられる。中でも、ナス科植物(トマト、ナス)、ネギ科植物(タマネギ(特にペコロス))、カボチャを使用することが好ましい。なお、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0101】
具材画分Aに、前述の野菜類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分A全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分A全体の通常100質量%以下である。また、具材画分Bに、前述の野菜類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合についても、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分B全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分B全体の通常100質量%以下である。なお、画分Aと画分Bとにそれぞれ、同一又は異なる1種又は2種以上の野菜類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の野菜類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0102】
なお、一態様によれば、野菜類としてはナス科植物が好ましく、トマト類が好ましい。トマト類としては、トマト及び/又はトマトの一種であるミニトマトが挙げられる。一態様によれば、トマト類としてはミニトマト(一般にミニトマトと称される果実の大きさが5g~30g程のトマトであればどのようなものでもよいが、例えばアイコ、キャロルパッション、キャロル10、キャロルクイーン、イエローキャロル、キャロルロゼ、ミニキャロル、イエローアイコ、オレンジキャロル、キャロル7、キャロルスター、キャロルムーン、メイクスイーツ(サカタのタネ製)、甘っこ(丸種製)、アンジェレ(全農製)、コロコロ(シンジェンタ製)、サングレープ108、サンチェリーピュア(トキタ種苗製)、ジュエルトマト(中原採種場製)、フルーツルビーEX(日本デルモンテ製)、レッドペア、千果99、CF千果、TY千恵(タキイ種苗製)、CF小鈴(みかど協和製)、TY百果繚乱(ナント種苗製)等が挙げられる)が好ましい。一態様によれば、画分A及び画分Bにともに上記の割合でナス科植物を含むことが好ましい。一態様によれば、画分A及び画分Bにともに上記の割合でトマト類(例えばトマト及び/又はミニトマト)を含むことが好ましい。一態様によれば、画分Aにミニトマトを上記の割合で含むことが好ましい。
【0103】
穀類に分類される食用植物の種類の例としては、これらに限定されるものではないが、コーン(未熟なコーンであるスイートコーンやスイートコーンよりさらに未熟なコーンであるヤングコーンを含む)、コメ、コムギ、オオムギ、モロコシ、エンバク、ライコムギ、ライムギ、ソバ、フォニオ、キノア、ひえ、アワ、きび、ジャイアントコーン、サトウキビ、アマランサス等が挙げられる。中でも、コーン(未熟なコーンであるスイートコーンやヤングコーンを含む)が好ましい。なお、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0104】
また、具材画分Aに、前述の穀類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分A全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分A全体の通常100質量%以下である。また、具材画分Bに前述の穀類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合についても、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分B全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分B全体の通常100質量%以下である。なお、画分Aと画分Bとにそれぞれ、同一又は異なる1種又は2種以上の穀類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の穀類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0105】
前記キノコ類に分類される食用植物の種類としては、エノキタケ、キクラゲ、クロアワビタケ、シイタケ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ホンシメジ、タモギタケ、ナメコ、ヌメリスギタケ、ヒラタケ、エリンギ、マイタケ、マッシュルーム、マツタケ、ヤナギマツタケ等を好適に用いることができる。中でも、シメジ又はエリンギが好ましい。なお、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0106】
具材画分Aに前述のキノコ類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分A全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、画分A全体の実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。また、具材画分Bに前述のキノコ類に分類される食用植物が1以上含まれる場合についても、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分B全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分B全体の通常100質量%以下である。なお、画分Aと画分Bとにそれぞれ、同一又は異なる1種又は2種以上のキノコ類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上のキノコ類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0107】
前記果実類に分類される食用植物としては、アケビ、アセロラ、アテモヤ、アボカド、アンズ、イチゴ、イチジク、イヨカン、ウメ、ウンシュウミカン、オリーブ、オレンジ、カキ、カボス、カリン、キウイフルーツ、キワノ、キンカン、グァバ、グズベリー、グミ、グレープフルーツ、ココナッツ、ゴレンシ、サクランボ、ザクロ、サンポウカン、シイクワシャー、スイカ、スダチ、スモモ、プルーン、ダイダイ、タンゴール、タンゼロ、チャリモヤ、ドリアン、ハッサク、パッションフルーツ、バナナ、パパイア、ピタヤ、ヒュウガナツ、ビワ、ブドウ、ブルーベリー、ブンタン、ホワイトサポテ、ポンカン、マクワウリ、マルメロ、マンゴー、マンゴスチン、メロン、モモ、ネクタリン、ヤマモモ、ユズ、ライチー、ライム、ラズベリー、ゴールデンベリー、デーツ(ナツメヤシの実)、リュウガン、リンゴ、レモン等を好適に用いることができる。なお、上記の各食材は、その可食部と非可食部の区別を問わず使用できる。
【0108】
また、具材画分Aに前述の果実類に分類される食用植物が1種類以上含まれる場合、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分A全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、画分A全体の実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、通常100質量%以下である。また、具材画分Bに前述の果実類に分類される食用植物が1以上含まれる場合についても、その合計含有量は湿潤質量基準割合で、画分B全体の通常50質量%以上、中でも70質量%以上、更には90質量%以上であることが好ましく、実質的に100質量%であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、画分B全体の通常100質量%以下である。なお、画分Aと画分Bとにそれぞれ、同一又は異なる1種又は2種以上の果実類が上記の割合で含有されることが好ましく、同一の1種又は2種以上の果実類が上記の割合で含有されることが好ましい。
【0109】
本発明における画分A及び画分Bにおける食用植物は、これに限定されるものではないが、オフフレーバーの生成を抑制し、食用植物特有の香りや旨味を際立たせるといった観点から、同一分類(野菜類、穀類、きのこ類、果実類、イモ類、藻類、種実類、豆類等)の食用植物を含むのが好ましい。
【0110】
なお、本発明において、「湿潤質量基準割合」(単に「湿潤質量基準」と称する場合もある。)とは、組成物や各画分の水分を含んだ湿潤質量を分母、各対象成分や対象物の含有量を分子として算出される、各成分等の含有割合を表す。
【0111】
・調味料、食品添加物等:
本発明の液状調味料は、任意の1又は2以上の調味料、食品添加物等を含んでいてもよい。調味料、食品添加物等の例としては、醤油、味噌、アルコール類、糖類(例えばブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、糖アルコール(例えばキシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、人工甘味料(例えばスクラロース、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK等)、ミネラル(例えばカルシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの塩類等)、香料、pH調整剤(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)、シクロデキストリン、酸化防止剤(例えばビタミンE、ビタミンC、茶抽出物、生コーヒー豆抽出物、クロロゲン酸、香辛料抽出物、カフェ酸、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、ルチン、ケルセチン、ヤマモモ抽出物、ゴマ抽出物等)、乳化剤(例としてはグリセリン脂肪酸エステル、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リノシール酸エステル、キラヤ抽出物、ダイズサポニン、チャ種子サポニン、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等)、着色料、増粘安定剤等が挙げられる。
【0112】
但し、昨今の自然志向の高まりからは、本発明の液状調味料は、いわゆる乳化剤、着色料、増粘安定剤(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)の「表示のための食品添加物物質名表」に「着色料」、「増粘安定剤」、「乳化剤」として記載されているもの)から選ばれる何れか1つを含有しないことが好ましく、何れか2つを含有しないことがより好ましく、3つ全てを含有しないことが更に好ましい。更には、本発明の液状調味料は、食品添加物(例えば、食品添加物表示ポケットブック(平成23年版)中の「表示のための食品添加物物質名表」に記載されている物質を食品添加物用途に用いたもの)の含有量が調味液全体の1質量%以下であることが望ましく、食品添加物を実質的に含有しないか、全く含有しないことがとりわけ望ましい。
【0113】
また、食品そのものの甘みが感じられやすくなるという観点からは、本発明の液状調味料は、食品原料に含有された状態ではない精製された糖類(ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)の含有量が調味液全体の1質量%以下であることが望ましく、食品原料に含有された状態ではない精製された糖類を実質的に含有しないか、全く含有しないことがとりわけ望ましい。
【0114】
[食用植物具材含有液状調味料の製造方法]
本発明の調味料は、該液状調味料中の各画分における上記の特定成分を、最終的な液状調味料において所定範囲になるように含有させる以外は、通常の液状調味料の製造方法に従って製造すればよい。例えば、原料のうち、固体原料を水や酢などの液体原料に攪拌混合した後、次いで残りの液体原料を添加し、混合機で混合しながら固体原料を溶解させ、その後、加熱滅菌処理をして冷却し、容器に充填することにより製造できる。
【0115】
中でも、本発明の液状調味料は、以下に説明する段階(i)及び(ii)を少なくとも含む特定の製造方法(これを適宜「本発明の製造方法」と称する。)で製造することが好ましい。
(i)食用植物の具材を含有する液状混合物を調製する段階。
(ii)前記液状混合物を80℃以上で5分以上加熱する段階。
【0116】
・段階(i):液状混合物の調製
本段階(i)では、本発明の液状調味料の元となる液状混合物を調製する。液状混合物は、基本的には本発明の液状調味料の組成、物性、その他の詳細について先に詳述した内容をそのまま採用して、これを調製することができる。但し、これらのパラメータのうちの一部については、後段の段階(ii)の加熱処理によって変化する可能性がある。例えば、前記の「画分A中ヘキサナール油脂質量基準含有量/画分B中ヘキサナール油脂質量基準含有量比」及び「画分A中DMDS湿潤質量基準含有量/画分B中DMDS湿潤質量基準含有量比」については、後述のように加熱によって低下する傾向があり、前記の「ピーク面積比β/α」については、後述のように加熱によって増加する傾向がある。よって、これらの値については、後述する各パラメータの変化率及び変化差分の好適範囲を考慮して、加熱前の状態であらかじめそれら割合を適宜調整するか、加熱後にそれら割合を適宜調整するか、加熱前後に共に適宜調整を行うことが好ましい。
【0117】
なお、液状混合物の調製時には、画分Aの食用植物具材と、画分Bの食用植物具材と、各画分の媒体とを個別に調製し、これらを混合すればよい。或いは、画分A及び/又は画分Bの具材と各画分の媒体とを共に構成する1種の食用植物、或いは2種以上の食用植物の混合物に対して、切削・粉砕・圧潰・加熱等の処理を加えてそのサイズを調節することにより、所望サイズの具材を含む画分A及び/又は画分Bを形成してもよい。更には、これらの手法を適宜組み合わせてもよい。
【0118】
・段階(ii):液状混合物の加熱
本段階(ii)では、前記段階(i)で調製された液状混合物に対して、加熱処理を行う。加熱処理における加熱温度(加熱時の最高温度)は制限されるものではないが、通常60℃以上、中でも70℃以上、更には80℃以上とすることが好ましい。加熱温度が前記下限よりも低いと、殺菌が十分ではない品質となる場合がある。なお、態様によっては、加熱温度の下限をこれよりも高く、例えば90℃以上、又は100℃以上、又は110℃以上、又は120℃以上としてもよい。加熱温度の上限も制限されるものではないが、通常200℃以下、中でも190℃以下、更には180℃以下、更には170℃以下、更には160℃以下、更には150℃以下とすることが好ましい。加熱温度が前記上限よりも高いと、組成物に加熱臭が付与された品質となる場合がある。なお、態様によっては、加熱温度の上限をこれよりも低く、例えば140℃以下、又は130℃以下、又は125℃以下としてもよい。
【0119】
加熱処理における加熱時間(前記加熱温度の好適範囲に維持される時間)も制限されるものではないが、通常1分以上、中でも3分以上、更には5分以上、又は7分以上、又は10分以上とすることが好ましい。加熱時間が前記下限よりも短いと、殺菌が十分ではない品質となる場合がある。なお、態様によっては、加熱時間の下限をこれよりも長く、例えば15分以上、又は20分以上としてもよい。加熱時間の上限も制限されるものではないが、通常10時間未満、中でも5時間未満、更には3時間未満、又は1時間未満とすることが好ましい。加熱時間が前記上限よりも短いと、組成物に加熱臭が付与された品質となる場合がある。なお、態様によっては、加熱時間の上限をこれよりも短く、例えば50分未満、又は40分未満、又は30分未満としてもよい。
【0120】
なお、加熱処理中、前記加熱温度の好適範囲に維持される連続時間が、前記加熱時間の好適範囲を満たしていてもよいが、加熱処理中、前記加熱温度の好適範囲よりも低い温度が介在していても、前記加熱温度の好適範囲を断続的に満たす時間帯が存在しており、斯かる時間帯の合計が前記加熱時間の好適範囲を満たしていてもよい。また、前記加熱温度の好適範囲を満たす時間帯の合計が前記加熱時間の好適範囲を満たさなくとも、前記加熱温度に近い範囲の温度で長時間に亘って保持されることにより、前記加熱時間の好適範囲を満たしているのと同様の効果が得られる場合もある。特に、前記の液状混合物を、通常80℃以上、中でも90℃以上、更には100℃以上、又は110℃以上、特に120℃以上に保持した状態で、10分間以上加熱することが好ましい。
【0121】
加熱処理における圧力も制限されるものではないが、通常は常圧又は加圧下である。加熱処理におけるその他の条件も制限されず、適宜選択すればよい。殺菌方法の具体例としては、ジャケットタンク、蛇管タンク、プレートヒーターなどの熱交換器を用いる方法や、蒸気を混入したりする方法や、高温高圧条件下でのレトルト殺菌等を挙げることができる。
【0122】
なお、前記の画分A中ヘキサナール油脂質量基準含有量/画分B中ヘキサナール油脂質量基準含有量比は、加熱処理によって低下する傾向にあるが、当該比が加熱前後で一定割合以上低下するように(すなわち、「(加熱前における当該比-加熱後における当該比)/加熱前における当該比」で定義される低下率が一定以上の数値となるように)、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該低下率が通常10%以上、中でも20%以上、更には30%以上、とりわけ40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、特に90%以上となるように、加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該低下率の上限としては、限定されるものではないが、通常100%未満、又は97%未満であることが好ましい。
【0123】
また、前記の画分A中ヘキサナール油脂質量基準含有量/画分B中ヘキサナール油脂質量基準含有量比の加熱前後における低下差分(すなわち、「加熱前における当該比-加熱後における当該比」で定義される低下差分)が一定以上の数値となるように、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該低下差分が通常0.1以上、中でも0.3以上、更には0.5以上、とりわけ0.7以上、又は1.0以上、又は2.0以上、又は3.0以上、又は4.0以上、又は5.0以上、又は6.0以上、特に7.0以上となるように、加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該低下差分の上限としては、限定されるものではないが、通常100未満、中でも70未満、とりわけ60未満、更には50未満、又は40未満、又は30未満、又は20未満であることが好ましい。
【0124】
また、前記の画分A中DMDS湿潤質量基準含有量/画分B中DMDS湿潤質量基準含有量比も、加熱処理によって低下する傾向にあるが、当該比が加熱前後で一定割合以上低下するように(すなわち、「(加熱前における当該比-加熱後における当該比)/加熱前における当該比」で定義される低下率が一定以上の数値となるように)、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該低下率が通常10%以上、中でも20%以上、更には30%以上、とりわけ40%以上、又は50%以上、又は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、特に90%以上低下するまで加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該低下率の上限としては、限定されるものではないが、通常100%未満、又は97%未満であることが好ましい。
【0125】
また、前記の画分A中DMDS湿潤質量基準含有量/画分B中DMDS湿潤質量基準含有量比の加熱前後における低下差分(すなわち「加熱前における当該比-加熱後における当該比」)が一定以上の数値となるまで、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該低下差分が通常0.1以上、中でも0.3以上、更には0.5以上、とりわけ0.7以上、又は1.0以上、又は2.0以上、又は3.0以上、又は4.0以上、又は5.0以上、又は6.0以上、特に7.0以上となるように、加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該低下差分の上限としては、限定されるものではないが、通常100未満、中でも70未満、とりわけ60未満、更には50未満、又は40未満、又は30未満、又は20未満であることが好ましい。
【0126】
また、前記のピーク面積比β/αは、加熱処理によって増加する傾向にあるが、当該比が加熱前後で一定割合以上増加するように(すなわち、「(加熱後における当該比-加熱前における当該比)/加熱前における当該比」で定義される増加率が一定以上の数値となるように)、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該増加率が通常1.0以上、中でも2.0以上、更には3.0以上、とりわけ4.0以上、又は5.0以上、又は6.0以上、又は7.0以上、又は9.0以上、又は11.0以上、又は13.0以上、又は15.0以上、特に18.0以上に増加するまで加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該増加率の上限としては、限定されるものではないが、通常100未満、中でも90未満、とりわけ80未満、更には70未満、又は60未満、又は50未満、又は40未満であることが好ましい。
【0127】
また、前記のピーク面積比β/αの加熱前後における増加差分(すなわち「加熱後における当該比-加熱前における当該比」)が一定以上の数値となるまで、液状混合物の加熱処理を行うことが好ましい。具体的には、当該増加差分が通常0.1以上、中でも0.3以上、更には0.5以上、とりわけ0.7以上、又は1.0以上、又は2.0以上、又は3.0以上、又は4.0以上、又は5.0以上、又は6.0以上、特に7.0以上となるように、加熱処理を行うことが好ましい。一方、当該増加差分の上限としては、限定されるものではないが、通常100未満、中でも70未満、とりわけ60未満、更には50未満、又は40未満、又は30未満、又は20未満であることが好ましい。
【0128】
・その他の処理:
本発明の調味料の製造時には、上記の各処理の他に、任意の処理を加えてもよい。斯かる任意の処理としては、容器充填処理、殺菌処理、攪拌処理、乳化処理、混練処理、ストレーナー処理、ろ過処理、発酵処理、スチーム処理、活性炭処理等が挙げられる。
【0129】
本発明の調味料を容器に充填する場合、その詳細は任意である。但し、例えば本発明の調味料をドライグロサリー製品とする場合は、容器内の微生物汚染を防止するために、容器を無菌状態にした後に同じく無菌状態の中身液を充填するアセプティック充填、加熱滅菌後の中身液を高温状態で容器に充填し、中身液の熱で容器内の微生物を制御するホットパック充填、中身液充填後の容器をパストライザーやレトルト釜で加熱して容器内の微生物を制御する充填後殺菌等の方法により充填が行われるが、特にレトルト殺菌のように容器内の中身液を高温殺菌しても、劣化臭が発生しにくいため好ましい。
【0130】
本発明の調味料を充填する容器には、あらゆる容器が使用できる。例えば、製造からの賞味期限が4ヶ月よりも長いロングライフ常温(本発明において20℃)保存容器、一部又は全部に樹脂を使用した容器、開栓後に容器開口部を密封して複数回に亘って使用することができる非使い切り容器、中身液が漏出しない程度の再密封可能なキャップや栓などの機構を持つ再密封可能な容器など、中身の液状調味料が劣化しやすい容器であっても使用できる。
【0131】
また、本発明の調味料の保存の方法も限定されず、常温保存であって冷蔵保存であってもよい。特に常温で流通し長期(本発明において4か月以上、より好ましくは6か月以上)保存可能なドライグロサリー製品として提供しても、中身液の劣化が進みにくいため好ましい。特に常温における賞味期限が4か月よりも長いロングライフ常温保存液状調味料とすることが好ましい。
【0132】
[その他]
以上説明した本発明の液状調味料の使用方法・喫食方法は特に制限されない。一例としては、調味料として用い、他の食品と一緒に喫食することができる。本発明の液状調味料と組み合わせて喫食される食品としては、これらに限定されるものではないが、未調理又は調理済の肉類、魚介類、食用植物類(例えば野菜類、穀物類、果実類)等の各種の食材、又はこれらの食材の1種又は2種以上を用いた各種の加工食品等が挙げられる。本発明の液状調味料と組み合わせて喫食される加工食品の一例としては、各種の食用植物(例えば豆類)を用いた麺(例えばパスタ、ラーメン、うどん、そうめん・ひやむぎ、そば等)が挙げられる。この場合、本発明の液状調味料をスープ・つゆとして用い、麺と組み合わせて喫食すればよい。組み合わせる態様も限定されず、本発明の液状調味料に麺を浸漬して食してもよく、本発明の液状調味料を麺にかけて喫食してもよい。また、当然ながら加熱処理等の調理を適宜加えてから喫食してもよい。或いは、本発明の液状調味料は、他の食品と組み合わせず、単独で(そのまま或いは水等の媒体で希釈して)例えばスープ等の形態として喫食してもよい。
【実施例
【0133】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
[液状調味料試料の調製]
各試験例及び比較例の液状調味料試料を以下の手順で調製した。野菜類としてトマト(トマトの一種であるミニトマト「アンジェレ」)、ナス、及びペコロスを、穀類としてコーン(コーンの一種であるヤングコーン)を、キノコ類としてシメジをそれぞれ用いた。トマト(ミニトマト)、ペコロス、及びコーン(ヤングコーン)は、目開き10センチメートルの篩を通過しないものは通過する程度の大きさに調整してそのまま画分Aの具材として用い、ナス及びシメジは、1メッシュ(目開き2.54センチメートル)を通過しない程度の大きさにカットして画分Aの具材として用いた(上限として目開き10センチメートルの篩を通過する大きさに調整した)。野菜類としてトマト(トマトの一種であるミニトマト「アンジェレ」と、トマト「桃太郎」とを用いた)、ナス、及びペコロスを、穀類としてコーンを、キノコ類としてシメジを、何れも1メッシュパス200メッシュオンとなるように破砕し、画分Bの具材として用いた。また、トマト及びミニトマトの不溶性食物繊維局在部位(皮部または種子部)を、ピンミルを用いてモード径が200μmとなるまで破砕し、不溶性食物繊維局在部位微細化処理物として用い、大豆の不溶性食物繊維局在部位(搾汁残さであるおから)をハンマーミルを用いてモード径が10μmとなるまで破砕し、不溶性食物繊維局在部位微細化処理物として用いた(表中の配合割合は湿潤質量基準割合)。これらの具材を、後記の表中に示した画分Bにおける油脂分含有量が表中の値となるように配合された液状油脂(オリーブオイル)とともに混合し、各試験例及び比較例の液状混合物を得た。
【0135】
次に、各試験例及び比較例の液状混合物を120℃10分間加熱殺菌した後、後記表中の加工条件が「濃度調整」と記載されたものについては、画分A及び画分B中の各成分濃度を測定した上で、ヘキサナール(CAS.No.66-25-1、東京化成工業社製、製品コード:H0133)、DMDS(CAS.No.624-92-0、東京化成工業社製、製品コード:D0714)、及び/又はDMTS(CAS.No.3658-80-8、富士フイルム和光純薬工業社製、製品コード:327-41221)を水で適当な濃度に希釈した溶液に画分A及び/又は画分Bを浸漬したり、或いは画分A及び/又は画分Bを水で希釈したりして、画分A及び画分B中の各成分割合が最終的に後記表中に記載された数値に調整された各試験例及び比較例の液状調味料を得た。一方、試験例2~5については、表中に記載された条件で濃度調整された試験例1の液状調味料を更に加熱することで、画分A及び画分B中の各成分濃度を表中に記載された数値に調整された各試験例の液状調味料を得た。
【0136】
[各画分の分画・採取]
各試験例及び比較例の液状調味料試料100g(20℃)を、1メッシュ、200メッシュの順番に上から重ねた篩上に薄く均等に広げて、10分間放置後の各篩上の残分を画分A(1メッシュオン)、画分B(1メッシュパス200メッシュオン)として採取し、湿質量を計測した。
【0137】
[各成分濃度の測定]
・DHS-GC/MS法による分析:
各試験例及び比較例の液状調味料の画分A及び画分Bを各々すりつぶした試料と、含有量既知のDMDS、ヘキサナール、及びDMTSの各標品を蒸留水で適当な含有量に希釈したものとを、10mL平底のバイアルに少量(1g)計り取った後に密閉し、DHS-GC/MS方による分析に供した。各成分の関連イオン(DMDS:m/z=45、79、94、ヘキサナール:m/z=56、57、72、DMTS:m/z=79、111、126)で各成分の保持時間の確認を行い、それらの希釈標品と試料との確認イオン((DMDS:m/z=94、ヘキサナール:m/z=72、DMTS:m/z=126)量の比較によって、試料中の成分の定量を行った。具体的なDHS-GC/MS分析の条件は以下の方法で行った。
【0138】
[GC/MS条件]
(ダイナミックヘッドスペース(dynamic headspace:DHS)注入法)
・装置:Agilent社製7890B(GC)、5977B(MS)
Gester社製MultiPurpose Sampler(auto-sampler)
・吸着樹脂:TENAX
・インキュベーション温度:80℃
・窒素ガスパージ量:60mL
・窒素ガスパージ流量:10mL/分
・TDU:[30℃]-[210℃/分]-[240℃(3分)]
・CIS:[10℃]-[12℃/秒]-[240℃]
(ライナー充填剤:TENAX)
・カラム:Gester社製DB-WAX(30m×250μm×0.25μm)
・カラム温度:[40℃(3分)]-[5℃/分]-[240℃(7分)]
・キャリアガス:He
・トランスファーライン:250℃
・イオン源温度:230℃
・スキャンパラメータ:m/z=28.7~300
・スプリット:なし
【0139】
・PFPD法による分析
各試験例及び比較例の液状調味料の画分A及び画分Bの各試料の一部をパルス式炎光光度検出器にかけ、サンプル中の硫黄化合物を分析することで、サンプル中の含硫化合物(DMDS等)を検出した。パルス式炎光光度検出器としては、OI Analytical 5380 Pulsed Flame Photometric Detector(OI Analytical社製)を用いた。試料の分析はSモード(硫黄に最適化した条件)にて行った。上記条件で、画分Aにおいて一次元GC/MS分析によって分離した成分を、パルス式炎光光度検出器を用いて測定した場合における、保持時間8~11分においてm/z=45、79、及び94が共に検出されるPFPDピーク面積α(DMDS保持時間に対応するPFPDピーク)に対する、保持時間13~18分においてm/z=61及び90が共に検出されるPFPDピーク面積β(画分A中の食用植物に由来する成分と思われるが、詳細は不明である)の比(PFPDピーク面積比β/α)を測定した。
【0140】
・ボストウィック粘度の測定:
各試験例及び比較例の液状調味料試料のボストウィック粘度は、KO式ボストウィック粘度計(深谷鉄工所社製、トラフ長28.0cm)を用いて測定した。具体的には、装置の水準器を用いて水平に設置し、ゲートを閉じた後リザーバーに20℃に温度調整した試料を満量まで充填し、ゲートを開くためにトリガーを押し下げると同時に時間を計測し、30秒経過時点でのトラフ内の材料の流下距離を測定した。
【0141】
[液状調味料試料の官能評価]
各試験例及び比較例の液状調味料試料について、以下の手順によりその官能評価を実施した。
【0142】
・「画分A劣化臭」、「画分B劣化臭」、及び「総合評価」の評価手順:
各試験例及び比較例の液状調味料試料について、品質を評価する官能試験を、訓練された官能検査員のべ10名によって行った。供試試料として、既報(業界の動向 「賞味期限延長」技術の考え方、JAS情報,503,2-5(2011))を参考に、40℃にて30日間保存することによって、20℃にて120日間の保存に相当する劣化度合いを再現した試料を調製した。当該40℃・30日間保存試料における画分A及び画分Bの香味を、4℃保存した試料と比較することで、「画分A劣化臭」、「画分B劣化臭」の官能検査を行った。また、当該40℃・30日間保存試料をそのまま喫食することで、「総合評価」の官能検査を行った。
【0143】
・「画分A劣化臭」の評価基準:
40℃・30日間保存試料の画分Aにおける劣化臭を、4℃保存試料における画分Aと比較して、下記の5段階で評価した。
5:劣化臭が感じられず、好ましい。
4:劣化臭がほとんど感じられず、好ましい。
3:劣化臭がわずかに感じられるが、好ましい。
2:劣化臭がやや強く感じられ、好ましくない。
1:劣化臭が強く感じられ、好ましくない。
【0144】
・「画分B劣化臭」の評価基準:
40℃・30日間保存試料の画分Bにおける劣化臭を、4℃保存試料における画分Bと比較して、下記の5段階で評価した。
5:劣化臭が感じられず、好ましい。
4:劣化臭がほとんど感じられず、好ましい。
3:劣化臭がわずかに感じられるが、好ましい。
2:劣化臭がやや強く感じられ、好ましくない。
1:劣化臭が強く感じられ、好ましくない。
【0145】
・「総合評価」の評価基準:
40℃・30日間保存試料の喫食時風味を下記の5段階で評価した。
5:画分Aと画分Bの香味バランスが非常に良く、好ましい。
4:画分Aと画分Bの香味バランスが良く、好ましい。
3:画分Aと画分Bの香味バランスがやや良く、好ましい。
2:画分Aと画分Bの香味バランスがやや悪く、好ましくない。
1:画分Aと画分Bの香味バランスが悪く、好ましくない。
【0146】
・官能評価の実施手順:
前記の各官能試験の評価項目である「画分A劣化臭」、「画分B劣化臭」、及び「総合評価」について、官能検査員に対して下記A)~C)の識別訓練を実施した上で、特に成績が優秀で、商品開発経験があり、食品の味や食感といった品質についての知識が豊富で、各官能検査項目に関して絶対評価を行うことが可能な検査員を選抜した。
【0147】
A)五味(甘味:砂糖の味、酸味:酒石酸の味、旨み:グルタミン酸ナトリウムの味、塩味:塩化ナトリウムの味、苦味:カフェインの味)について、各成分の閾値に近い濃度の水溶液を各1つずつ作製し、これに蒸留水2つを加えた計7つのサンプルから、それぞれの味のサンプルを正確に識別する味質識別試験。
B)濃度がわずかに異なる5種類の食塩水溶液、酢酸水溶液の濃度差を正確に識別する濃度差識別試験。
C)メーカーA社醤油2つにメーカーB社醤油1つの計3つのサンプルからB社醤油を正確に識別する3点識別試験。
【0148】
また、前記の何れの評価項目でも、事前に検査員全員で標準サンプルの評価を行い、評価基準の各スコアについて標準化を行った上で、のべ10名によって客観性のある官能検査を行った。各評価項目の評価は、各項目の5段階の評点の中から、各検査員が自らの評価と最も近い数字をどれか一つ選択する方式で評価した。評価結果の集計は、のべ10名のスコアの算術平均値から算出し、小数第1位を四捨五入して最終評点とした。
【0149】
[組成物試料の解析・評価結果]
各試験例及び比較例の液状調味料の組成、製造条件、物性、及び評価結果を以下の表2~4にまとめて示す。
【0150】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】
【0151】
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】
【0152】
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の液状調味料は、サイズの異なる食用植物具材におけるオフフレーバー生成が抑制されると共に、長期保存が可能であり、パスタソース等の食品分野で簡便に幅広く使用することができ、極めて高い有用性を有する。