(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230207BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230207BHJP
【FI】
C02F1/00 V
G06T7/60 200G
(21)【出願番号】P 2019093176
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅人
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 博幸
(72)【発明者】
【氏名】高田 圭
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
(72)【発明者】
【氏名】三好 太郎
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-129765(JP,A)
【文献】特開平01-317596(JP,A)
【文献】特開2011-145867(JP,A)
【文献】特開2010-215170(JP,A)
【文献】特開2019-162603(JP,A)
【文献】特開2018-103129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0136732(US,A1)
【文献】米国特許第4374730(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
C02F 3/12
C02F 3/28- 3/34
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理装置であって、
前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得手段と、
前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化手段と、
前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出手段と、
前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記情報は前記対象画像を構成する画素の各々が有する輝度に関する情報であることを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記検出手段が前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出したとき、前記排水が前記隔壁を越流していないと判別し、前記検出手段が前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出しないとき、前記排水が前記隔壁を越流していると判別することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記エッジが抽出された対象画像に基づいて2値画像を取得し、前記2値画像から直線又は曲線を検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、前記直線又は前記曲線を構成する点の数に応じて検出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記直線又は前記曲線を構成する点の数が予め設定されている閾値を越えているとき、前記直線又は前記曲線を検出し、前記直線又は前記曲線を構成する点の数が予め設定されている閾値以下のとき、前記直線又は前記曲線を検出しないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記検出手段は前記直線又は前記曲線を検出するとともに、前記検出された直線又は曲線が予め設定されている位置条件を充足するか否かを判別し、前記検出された直線又は曲線が前記位置条件を充足しないとき、前記直線又は前記曲線を検出した結果を破棄することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記対象画像及び前記対象画像に関連する情報からなる学習データを学習する学習手段と、
前記学習データを学習した後に前記対象画像が新たに入力されたとき、前記学習データを学習した結果及び前記新たに入力された対象画像に基づいて、前記新たに入力された対象画像は前記排水が前記隔壁を越流している画像であるか否かを判別する判別手段と、をさらに備える請求項1乃至7のいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項9】
排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理方法であって、
前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化ステップと、
前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出ステップと、を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記情報処理方法は、
前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化ステップと、
前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出ステップと、
前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出ステップと、を有することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関し、特に、水処理に用いられる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排水を生物処理するための生物処理槽と、生物処理槽に浸漬され且つ生物処理された排水から固形物を除去するための膜分離装置と、膜分離装置の下部に設置され且つ膜分離装置に対して空気等の気体を供給する散気管とを備える排水処理装置が知られている。生物処理槽における排水の生物処理は、例えば、微生物を含む有機汚泥(活性汚泥)によって排水が処理される活性汚泥法に基づいて実行される。
【0003】
具体的に、排水が活性汚泥法に基づいて処理されるとき、まず、酸素存在下(好気状態)でアンモニアを亜硝酸や硝酸に変換する硝化反応が実行される。次いで、硝化反応によってアンモニアから変換された亜硝酸や硝酸を窒素に変換する脱窒反応が実行される。脱窒反応は酸素存在下(好気状態)で行われる硝化反応と異なり、無酸素状態で行う必要がある。脱窒反応は硝化反応が行われる生物処理槽と異なる生物処理槽で行われてもよいが、排水処理装置の省スペース化を実現するために、単一の生物処理槽内で硝化反応及び脱窒反応が行われる排水処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図8は従来の排水処理装置80を概略的に示す図である。
図8の排水処理装置80は、好気状態での硝化反応及び無酸素状態での脱窒反応を行う生物処理槽81と、排水を生物処理槽81に供給するための原水槽82とを備え、生物処理槽81は、生物処理槽81内を複数の区画に仕切るための仕切板83を有する。生物処理槽81は、仕切板83で囲まれる内部領域84と、仕切板83及び生物処理槽81の内壁で囲まれる外部領域85とに仕切られ、内部領域84は膜分離装置86及び散気管87を有する。また、生物処理槽81は、原水槽82からの排水の供給を開始するための指標である排水供給開始水位LWL(Low water level)と、原水槽82からの排水の供給を停止するための指標である排水供給停止水位HWL(High water level)とを有する。排水は、その水位が仕切板83の上端部より高い位置(以下、「越流位置」という。)と、仕切板83の上端部より低い位置(以下、「非越流位置」という。)との間を往来するように生物処理槽81内において増減する。
【0005】
図9は、
図8における生物処理槽81内の排水の水位が越流位置又は非越流位置のときの生物処理槽81内の様子を概略的に示す図であり、
図9(a)は生物処理槽81内の排水の水位が越流位置にあるときの様子を示す概略図であり、
図9(b)は生物処理槽81内の排水の水位が非越流位置にあるときの様子を示す概略図である。
【0006】
排水の水位が越流位置にあるとき(
図9(a))、散気管87から膜分離装置86に対して供給される空気により、排水が仕切板83の上端を越流し、仕切板83の周囲を循環する循環流91が形成される(越流状態)。内部領域84にある硝酸は循環流91によって外部領域85に移動し、内部領域84の空気の大半は外部領域85に移動することなく生物処理槽81の外部に放出される。すなわち、循環流91が形成されると、内部領域84では酸素存在下でアンモニアを亜硝酸や硝酸に変換する硝化反応が進行し、外部領域85では循環流91によって内部領域84から移動した亜硝酸や硝酸を窒素に変換する脱窒反応が進行する。
【0007】
一方、排水の水位が非越流位置にあるとき(
図9(b))、内部領域84と外部領域85との間で排水の流通が分断されるため、散気管87が膜分離装置86に空気を供給しても、仕切板83の周囲を循環する循環流91は形成されない(分断状態)。すなわち、内部領域84では酸素存在下でアンモニアを亜硝酸や硝酸に変換する硝化反応が進行し、外部領域85では排水の流通が分断される前に内部領域84から移動した亜硝酸や硝酸を窒素に変換する脱窒反応が進行する。
【0008】
ところで、排水が仕切板83の上端を越流したか否かを判別するために、排水の水位を検出するセンサ、例えば、フロート式レベルスイッチや電極式レベルスイッチが用いられている。フロート式レベルスイッチは、マグネットを有し且つ排水の水位に応じて変動するフロートと、フロートが有するマグネットによって作動するリードスイッチとを備え、フロートが予め設定された水位に設置されているリードスイッチに近接してリードスイッチが作動したときに信号を出力する。また、電極式レベルスイッチは、2つの電極を有し、各電極がいずれも排水に接触しているときにのみ各電極の間を電流が流れる。したがって、電極式レベルスイッチは、一方の電極の先端を予め設定された排水の水位に設置するとともに、他方の電極の先端を排水に浸漬し、一方の電極の先端が排水に接触したときに各電極の間を流れる電流に基づいて信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、例えば、越流状態が過度に長く続くと、過剰な空気が内部領域84から外部領域85に移動し、外部領域85において無酸素状態で進行する脱窒反応を阻害するという問題が生じる。また、分断状態が過度に長く続くと、内部領域84で硝化反応が進行し、アンモニアから変換された亜硝酸や硝酸が外部領域85に移動せず、その結果、亜硝酸や硝酸が処理されないという問題が生じる。したがって、越流状態及び分断状態のそれぞれの時間を管理して適切な排水処理を実行する必要がある。ところが、生物処理槽81の汚泥濃度は高く、排水が極めて汚いため、上述した従来の排水の水位を検出するセンサでは、排水が仕切板83の上端を越流したか否かを正確に判別することができず、その結果、越流状態及び分断状態のそれぞれの時間を管理することができない。
【0011】
すなわち、一方の領域の流体が一方の領域に隣接する他方の領域に移動するとき、一方の領域と他方の領域とを分断する分断壁を越流しているか否かを簡単且つ確実に判別することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、一方の領域の流体が一方の領域に隣接する他方の領域に移動するとき、一方の領域と他方の領域とを分断する分断壁を越流しているか否かを簡単且つ確実に判別することができる情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の情報処理装置は、排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理装置であって、前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得手段と、前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化手段と、前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出手段と、前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の情報処理方法は、排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理方法であって、前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得ステップと、前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化ステップと、前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出ステップと、前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、排水が存在する第1の領域及び前記第1の領域以外の第2の領域の間に配設される隔壁を前記排水が越流しているか否かを判別する情報処理方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記情報処理方法は、前記隔壁の上端部を含む対象画像を取得する画像取得ステップと、前記取得した対象画像を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を施す平滑化ステップと、前記平滑化処理が施された対象画像からエッジを抽出する抽出ステップと、前記抽出されたエッジを直線又は曲線として検出する検出ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一方の領域の流体が一方の領域に隣接する他方の領域に移動するとき、一方の領域と他方の領域とを分断する分断壁を越流しているか否かを簡単且つ確実に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1における情報処理装置に接続されている撮像装置が撮像する被写体としての排水処理装置を説明するために用いられる図であり、
図2(a)は排水処理装置を概略的に示す正面図であり、
図2(b)は排水処理装置を構成する生物処理槽を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図2における撮像装置が仕切板上端部の周辺を撮像したときの画像データを示す図であり、
図3(a)は内部領域の排水が仕切板上端部を越流していないときの非越流時画像データを示す図であり、
図3(b)は内部領域の排水が仕切板上端部を越流しているときの越流時画像データを示す図である。
【
図4】
図3(a)の非越流時画像データに含まれる仕切板上端部を検出する検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のS405において取得された2値画像を示す画像図である。
【
図6】
図4のS406の直線検出処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図6の直線検出処理を説明するために用いられる概念図であり、
図5の2値画像の色調を反転させた画像図である。
【
図8】従来の排水処理装置を概略的に示す図である。
【
図9】
図8における生物処理槽内の排水の水位が越流位置又は非越流位置のときの生物処理槽内の様子を概略的に示す図であり、
図9(a)は生物処理槽内の排水の水位が越流位置にあるときの様子を示す概略図であり、
図9(b)は生物処理槽内の排水の水位が非越流位置にあるときの様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置10の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0020】
図1の情報処理装置10は、CPU11(画像取得手段、平滑化手段、抽出手段、検出手段)、RAM12、ROM13、HDD14、及びデータ入力部15を備え、これらは内部バス16を介して互いに接続されている。また、データ入力部15には、カメラ等の撮像装置17が接続されている。CPU11は、ROM13又はHDD14に格納されたプログラムをCPU11のワークメモリであるRAM12に展開して実行する。また、撮像装置17は被写体を撮像して画像データを生成し、生成された画像データはデータ入力部15から入力されてHDD14に格納される。
【0021】
HDD14はその他の各種データ、例えば、後述の
図4の検出処理のS405において検出された被写体のエッジのうち不要なエッジを除去する際に用いられる2つの閾値や後述の
図6の検出処理のS606において直線を構成するか否かを判別する際に用いられる閾値を格納する。なお、撮像装置17は各種データを格納するHDD等の記憶媒体を備えてもよく、取得した画像データは撮像装置17が有する記憶媒体に格納されてもよい。
【0022】
撮像装置17は撮像指示受付部(シャッター)、対物レンズ、撮像素子、アナログ信号処理部、及び画像処理部を備え、撮影指示受付部が撮像の指示を受け付けたとき、被写体を所定の構図で撮像する。具体的に、撮影指示受付部が撮像の指示を受け付けたとき、対物レンズは光束を集光し、撮像素子は対物レンズを通過した光束を光電変換してアナログ画像信号に変換し、アナログ信号処理部に出力する。アナログ信号処理部は入力されたアナログ画像信号に対して相関ダブルサンプリング処理、ゲイン調整処理、A/D変換処理等の信号処理を施し、アナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。画像処理部はデジタル画像信号に対してホワイトバランス調整、補間、輪郭強調、ガンマ補正、階調変換等の画像処理を施して画像データを生成する。
【0023】
図2は、
図1における情報処理装置10に接続されている撮像装置17が撮像する被写体としての排水処理装置20を説明するために用いられる図であり、
図2(a)は排水処理装置20を概略的に示す正面図であり、
図2(b)は排水処理装置20を構成する生物処理槽21を概略的に示す平面図である。
【0024】
図2において、排水処理装置20は排水を生物処理するための生物処理槽21と、生物処理槽21で処理すべき原水を貯留する原水貯留槽22とを備え、原水はポンプPによって原水貯留槽22から生物処理槽21に供給される。また、生物処理槽21は生物処理が施された原水から固形物質を分離する膜分離装置23と、生物処理槽21の底部21a及び膜分離装置23の間に位置し且つ膜分離装置23に空気を供給する散気管24と、膜分離装置23及び散気管24を囲む仕切板25(隔壁)とを備え、仕切板25は生物処理槽21を、膜分離装置23及び散気管24が存在する内部領域26(第1の領域)と、内部領域26以外の領域であって膜分離装置23及び散気管24が存在しない外部領域27(第2の領域)とに分割する。
【0025】
膜分離装置23はポンプPに接続され、ポンプPが駆動すると、生物処理が施された原水は膜分離装置23によってろ過されて生物処理槽21の槽外に排出される。膜分離装置23は排水をろ過するため、膜分離装置23の膜面には排水中の固形物質が付着し、次第に膜分離装置23は目詰まりして排水が濾過されないという問題が生じるが、散気管24は膜分離装置23の膜面に空気を曝気するので、排水中の固形物質が膜分離装置23の膜面に付着しにくく、その問題が生じることを防止している。仕切板25は生物処理槽21の底部21a側に位置する一端(以下、「仕切板下端部25a」という。)と、他端(以下、「仕切板上端部25b」という。)を有し、仕切板下端部25aは生物処理槽21の底部21aと離間している。
【0026】
排水はその水位が仕切板上端部25bより高い排水供給停止水位HWLと、仕切板上端部25bより低い排水供給開始水位LWLとの間を往来する。排水が仕切板上端部25bを越えるとともに、散気管24から膜分離装置23に空気が供給されているとき、排水は内部領域26から仕切板上端部25bを越流して外部領域27に移動し、その後、外部領域27及び仕切板下端部25aを順次通過して内部領域26に戻る。これにより、仕切板25の周囲を循環する循環流が形成される。循環流が形成されているとき、内部領域26には散気管24が曝気した空気が存在する。
【0027】
ところが、その空気のほとんどは排水の水面から生物処理槽21の外部へ放出されるので、外部領域27にはほとんど空気が存在せず、特に、仕切板下端部25a周辺には空気が存在しない。したがって、循環流が形成されているとき、内部領域26では硝化反応が進行し、硝化反応によって生成された亜硝酸や硝酸が循環流に乗じて外部領域27に移動するとともに、外部領域27ではその亜硝酸や硝酸に基づく脱窒反応が進行する。
【0028】
一方、散気管24から膜分離装置23に空気が供給されているときであっても排水が仕切板上端部25bを越えていないとき、仕切板25の周囲を循環する循環流は形成されない。したがって、循環流が形成されていないとき、散気管24が曝気した空気が存在する内部領域26では、硝化反応が進行し、外部領域27では循環流が形成されていたときに内部領域26から外部領域27に移動した亜硝酸や硝酸に基づく脱窒反応が進行する。
【0029】
撮像装置17は所定の位置に固定され、被写体として排水処理装置20を撮像する。撮像装置17が撮像する構図は循環流が形成されていないときに決定され、決定された構図には仕切板上端部25bが含まれる。撮像装置17は撮像する構図が決定された後に固定される。その後、撮像装置17は循環流が形成されているか否かに関わらず、仕切板上端部25bの周辺の変化を撮像し、例えば、後述の非越流時画像データ31及び越流時画像データ32等の画像データ(対象画像)を取得する。
【0030】
循環流が形成されていないとき、撮像装置17が仕切板上端部25bの周辺を撮像すると、仕切板上端部25bは露出しているので、仕切板上端部25b及び排水処理装置20中の排水を含む非越流時画像データ31(
図3(a))が画像処理部によって生成される。一方、循環流が形成されているとき、撮像装置17が仕切板上端部25bの周辺を撮像すると、排水処理装置20が処理する排水の濁度は極めて高く仕切板上端部25bは排水に埋没しているので、仕切板上端部25bを覆う排水を含む越流時画像データ32(
図3(b))が画像処理部によって生成される。
【0031】
図4は、
図3(a)の非越流時画像データ31に含まれる仕切板上端部25bを検出する検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
図4において、まず、CPU11は画像処理部が生成した非越流時画像データ31からカラー情報を破棄してグレースケールの非越流時画像データ31を得る(S401,画像取得ステップ)。次いで、CPU11はS401で得られたグレースケールの非越流時画像データ31を構成する画素の各々が有する情報を調整する平滑化処理を実行する(S402,平滑化ステップ)。本実施の形態において、平滑化処理はグレースケールの非越流時画像データ31に所定のフィルタ、例えば、ガウシアンフィルタを用いることによって実行され、平滑化処理がグレースケールの非越流時画像データ31に施されたとき、例えば、グレースケールの非越流時画像データ31を構成する各画素の輝度値のうち高周波領域の輝度がノイズとして除去され、各画素の輝度値のばらつきが抑制される。これにより、平滑化処理が施されたグレースケールの非越流時画像データ31が、平滑化処理が施されていないグレースケールの非越流時画像データ31よりも暈された画像データとして得られ、その結果、後述のS403において検出されるべきでない被写体のエッジは予め除去される。
【0033】
続いて、CPU11はS402で得られた平滑化データに平滑化処理で用いたフィルタとは異なるフィルタ、例えば、ソーベルフィルタを用いて平滑化データを構成する画素の各々が有する輝度情報を微分する。そうすると、平滑化データが有する輝度の勾配等が算出される。CPU11は算出された輝度の勾配等から被写体のエッジを検出し(S403,抽出ステップ)、検出されたエッジを細線化する(S404)。その後、CPU11は細線化されたエッジのうち、予め設定され且つHDD14に格納されている2つの閾値、具体的に、確実にエッジであることを示す閾値及びエッジである可能性が高いことを示す閾値に応じて不要なエッジを除去した2値画像50を取得する(S405)。
【0034】
図5は、
図4のS405において取得された2値画像50を示す画像図である。
図5の2値画像50には被写体のエッジが表示され、非越流時画像データ31と比較することにより、仕切板上端部25bに対応する部分も被写体のエッジとして表示されていることが認識される。なお、2値画像50において、仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジは複数の画素によって構成され、本実施の形態では、直線を示すことを前提とする。
【0035】
図4に戻り、CPU11は
図4のS405で取得された2値画像50から仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジを直線として検出する直線検出処理を実行し(S406,検出ステップ)、本処理を終了する。
【0036】
図6は、
図4のS406の直線検出処理の手順を示すフローチャートである。また、
図7は、
図6の直線検出処理を説明するために用いられる概念図であり、
図5の2値画像50の色調を反転させた画像図である。
【0037】
図6において、まず、CPU11は2値画像50から直線を検出するためにX軸及びX軸に直交するY軸からなる2次元の座標軸、並びに、座標軸の原点OをX軸及びY軸の交点に設定する(S601,
図7)。次いで、CPU11は2値画像50に含まれる被写体のエッジを構成する画素の各々のX座標及びY座標を決定する(S602)。続いて、CPU11は決定された各画素の各々のX座標及びY座標を、原点O´、角度θ、及び距離rからなる新しい二次元の座標軸に変換する(S603)。
【0038】
具体的に、被写体には、被写体のエッジを構成する画素としてX座標及びY座標がX1及びY1を示す画素(以下、「第1の画素」という。)と、X座標及びY座標がX2及びY2を示す第1の画素以外の画素(以下、「第2の画素」という。)とがあり、第1の画素を新しい二次元の座標軸で示す場合、まず、第2の画素を示すX座標及びY座標を通る任意の直線Lを決定する。直線LはX座標及びY座標がX2及びY2を通っていればよい。次いで、直線Lに直交し且つ原点Oを通る直線Mが設定され、直線L及び直線Mの交点Aが決定される。角度θは交点A、原点O、及びX軸からなる角度であり、距離rは原点O及び直線Lの距離である。これにより、X座標、Y座標、角度θ、及び距離rには下記式1に示す関係があるので、S603の処理は式1を用いて実行され、例えば、横軸をθ軸、縦軸をr軸とする新たな二次元の座標軸に複数のグラフ(不図示)が作成される。
【0039】
【0040】
そうすると、複数のグラフが一点に集中する特徴点が抽出される(S604)。すなわち、特徴点は複数の点によって構成され、直線Lのうち被写体のエッジに近似する直線Nは特徴点を構成する複数の点によって構成されている。続いて、CPU11は特徴点を構成する点の数を算出し(S605)、算出された点の数がHDDに予め設定されている閾値を越えているか否かを判別する(S606)。ここで、閾値は、例えば、仕切板上端部25bの一辺の長さを構成する点の数の60%以上に設定される。S606の判別の結果、算出された点の数が予め設定されている閾値を越えているとき、CPU11は2値画像50から直線Nを検出し(S607)、算出された点の数が予め設定されている閾値以下のとき、CPU11は2値画像50から直線Nを検出しない(S608)。その後、本処理は終了する。
【0041】
ところで、生物処理槽21内の排水は極めて汚く、透明性はないので、排水が仕切板上端部25bを越流しているとき、仕切板上端部25bは越流時画像データ32に現れない。したがって、CPU11は越流時画像データ32に基づいて検出処理(
図4)を実行しても、仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジを示す直線Nは検出されない。そのため、CPU11は直線検出処理を実行し、直線Nを検出したとき(S607)、排水が仕切板上端部25bを越流していないと判別し、直線Nを検出しないとき(S608)、排水が仕切板上端部25bを越流していると判別する。
【0042】
本実施の形態によれば、CPU11はグレースケールの非越流時画像データ31に対して平滑化処理を施して平滑化データを取得し(S402)、その後、平滑化データに含まれる被写体のエッジを検出し(S403)、不要なエッジを除去した2値画像50を取得する(S405)。次いで、CPU11は2値画像50から複数の特徴点からなる直線Nを検出し、検出された直線Nが予め設定された閾値を越える特徴点の数からなるとき(S606でYES)、直線Nを仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジを示す直線として検出する。一方、越流時画像データ32から仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジは検出されない。そのため、仕切板上端部25bに対応する直線Nも検出されない。
【0043】
すなわち、CPU11は、排水が仕切板上端部25bを越流していないとき、仕切板上端部25bを直線Nとして検出し、排水が仕切板上端部25bを越流しているとき、仕切板上端部25bを直線Nとして検出しないので、内部領域26の排水が外部領域27に移動するとき、内部領域26と外部領域27とを分断する仕切板25を越流しているか否か、換言すると、一方の領域の流体が一方の領域に隣接する他方の領域に移動するとき、一方の領域と他方の領域とを分断する分断壁を越流しているか否かを簡単且つ確実に判別することができる。
【0044】
本実施の形態では、仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジが検出されたとき、そのエッジは直線を示すことを前提に情報処理装置10の構成及び機能を説明したが、情報処理装置10は仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジが検出され、そのエッジが曲線を示すとき、その曲線を検出するとともに、曲線が検出されたときに排水が仕切板上端部25bを越流していないと判別してもよい。
【0045】
また、直線Nは複数の点によって構成され、直線Nを構成する点の数がHDD14に予め設定されている閾値を越えているか否かを判別し(S606)、直線Nを構成する点の数が閾値を越えているとき、直線Nが検出される(S607)。これにより、閾値以下の点の数で構成され、仕切板上端部25bよりも短い直線は直線Nとして検出されないので、仕切板上端部25bを高い確度で検出することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、非越流時画像データ31から直線Nを検出しているが、非越流時画像データ31は複数の画素によって構成されているため、非越流時画像データ31から得られた2値画像50における仕切板上端部25bの位置情報は当該2値画像50を構成する画素によって特定可能である。したがって、例えば、非越流時画像データ31から得られる2値画像50において直線Nが表示される範囲を示す位置条件、すなわち、直線Nが表示される画素範囲が予めHDD14に格納されているとき、CPU11は直線Nを検出した後、検出された直線Nが位置条件を充足するか否かを判別してもよい。
【0047】
CPU11は、検出された直線Nが位置条件を充足すると判別したとき、直線Nを検出した結果を維持し、検出された直線Nが位置条件を充足しないと判別したとき、直線Nを検出した結果を破棄する。これにより、検出された直線のうち位置条件を充足しない直線は仕切板上端部25bに対応する被写体のエッジを示す直線Nとは検出されずノイズとして扱われるので、仕切板上端部25bを極めて高い確度で検出することができる。
【0048】
本実施の形態に係る情報処理装置10は、例えば、非越流時画像データ31から直線Nを検出するために用いられた2値画像50と、直線Nを構成する点の数及び/又は直線Nの位置を特定する位置情報等の非越流時画像データ31に関連する情報とからなる非越流時学習データを学習するとともに、越流時画像データ32と、直線Nは検出されないことを示す情報とからなる越流時学習データを学習する学習機能を備えてもよい。
【0049】
情報処理装置10は越流時学習データ及び非越流時学習データの学習を深層学習に基づいて行う。深層学習には、例えば、多段階の演算処理により対象画像の特徴をシステムが自動抽出して学習した後に新たに判別すべき対象を高精度に認識するCNN(Convolutional Neural Network)モデルが用いられる。
【0050】
非越流時学習データの学習が進むと、例えば、非越流時画像データ31が新たに入力されたとき、CPU11は新たに入力された非越流時画像データ31に基づいて新たな2値画像を取得する。次いで、CPU11は新たに取得した2値画像から直線Nを検出することなく2値画像50に直線Nが含まれると判別し、その後、新たに入力された画像データは非越流時画像データ31であるとともに、排水は仕切板上端部25bを越流していないことを出力する。
【0051】
一方、越流時学習データの学習が進むと、例えば、越流時画像データ32が新たに入力されたとき、CPU11は新たに入力された越流時画像データ32に基づいて新たな2値画像を取得することなく、又は、もし新たに入力された非越流時画像データ32に基づいて新たな2値画像を取得したとしても、その2値画像に直線Nが含まれないと判別し、その後、新たに入力された画像データは越流時画像データ32であり、排水は仕切板上端部を越流していることを出力する。
【0052】
すなわち、CPU11は排水が仕切板上端部を越流しているか否かを自動的に判別する。これにより、越流状態又は分断状態が正確に判別されるので、越流状態及び分断状態のそれぞれの時間を管理して適切な排水処理を実行することができる。
【0053】
本発明は、上述の実施の形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク若しくは各種記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理において、そのプログラム、及び該プログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は本発明を構成し、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよく、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
10 情報処理装置
11 CPU
25 仕切板
25b 仕切板上端部
26 内部領域
27 外部領域