(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 7/04 20060101AFI20230207BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20230207BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20230207BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20230207BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20230207BHJP
C10G 2/00 20060101ALI20230207BHJP
C10G 35/04 20060101ALI20230207BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230207BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230207BHJP
【FI】
C07C7/04
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C1/12
C10G2/00
C10G35/04
B01D53/22
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021120306
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2022-01-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/化学品へのCO2利用技術開発/CO2を原料としたパラキシレン製造に関する技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願」
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】広畑 修
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 有理愛
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-533425(JP,A)
【文献】特表2017-511813(JP,A)
【文献】特表2020-535966(JP,A)
【文献】特開2019-205969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10G
B01D
C07B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素もしくは一酸化炭素またはその両方と水素とを含む原料混合ガスから芳香族化合物の混合物を製造する工程Aと、化石資源系もしくはバイオマス系炭化水素からなる原料から芳香族化合物の混合物を製造する工程Bと、工程Aで製造された芳香族化合物の混合物と工程Bで製造された芳香族化合物の混合物を合わせる工程Cと、工程Cで合わせた芳香族化合物の混合物から所望の芳香族化合物を分離精製する工程Dとを含むことを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程Aが、前記原料混合ガスを高温高圧下で反応触媒に接触させることにより反応させて芳香族化合物を含む生成ガス混合物を取得する反応工程と、該反応工程で得られた生成ガス混合物を冷却することにより高沸点成分を凝縮させて水溶性成分を含む水相と芳香族化合物の混合物を含む油相と未反応ガスを含む気相とに分離する分離工程と、該分離工程で分離された気相の少なくとも一部を原料混合ガスに混合する循環工程とを含み、該分離工程で分離された油相を前記工程Bで製造された芳香族化合物の混合物と合わせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分離工程において、生成ガス混合物を冷却して得られた気液混合物を、まず液相と気相とに分離し、次いで分離された液相を比重差を利用した分離法で油相と水相とに分離する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記循環工程において、循環する気相の一部をパージし、パージしたガスから分離回収した水素を原料混合ガスに混合する、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記循環工程においてパージしたガスから水素を分離回収する方法として、圧力スイング吸着(Pressure Swing Adsorption)または水素分離膜を用いた膜分離を行う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記循環工程において、循環する気相の一部をパージし、パージしたガスを前記工程Bまたは工程Dにおける加熱炉の燃料の一部として用いる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記工程Bまたは工程Dにおいて、加熱炉の燃焼ガスから二酸化炭素を分離回収し、回収した二酸化炭素を前記工程Aにおける原料混合ガスに混合する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応工程で用いられる反応触媒が、クロム、亜鉛および銅から選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含む第1の触媒とZSM-5系ゼオライトを含む第2の触媒との混合物を含む混合触媒である、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応工程において、原料混合ガスを反応温度250~600℃、反応圧力1~10MPaGで反応触媒に接触させる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記原料混合ガスと前記生成ガス混合物とを熱交換させた後、該原料混合ガスを反応工程に移送する、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程Bが、重質ナフサを接触改質する工程を含み、該接触改質工程で発生した余剰水素を前記工程Aにおける原料混合ガスを構成する水素の少なくとも一部として用いる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程Bが、軽質ナフサ、LPG又はオレフィンを芳香族化する工程を含み、該芳香族化工程で発生した余剰水素を前記工程Aにおける原料混合ガスを構成する水素の少なくとも一部として用いる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスまたは原子力により発生した電力を用いて水を電気分解することで生成された水素を、前記工程Aにおける原料混合ガスを構成する水素の少なくとも一部として用いる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
火力発電所もしくは加熱炉の燃焼排ガスから分離された二酸化炭素、アンモニア製造装置、エチレングリコール製造装置もしくは水素製造装置において分離された二酸化炭素、石炭、バイオマスもしくはゴミのガス化炉の生成ガスから分離された二酸化炭素、製鉄所の高炉から分離された二酸化炭素、または大気中の空気から分離した二酸化炭素を、前記工程Aにおける原料混合ガスを構成する二酸化炭素の少なくとも一部として用いる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ガス化炉により生成された合成ガス、製鉄所の高炉から排出されるオフガス、水素製造装置において分離されたオフガス、水と二酸化炭素の共電解により生成された合成ガス、または水素と二酸化炭素の逆シフト反応により生成された合成ガスを、前記工程Aにおける原料混合ガスの少なくとも一部として用いる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン及びキシレン(以下、それらの誘導体をも含めて「BTX」と総称する)に代表される芳香族化合物は石油化学工業の基礎原料として大量に使用される重要な化学物質である。当初、BTXは石炭を乾留する際に発生するタールを蒸留して得られる粗軽油から分離精製されていた(石炭系BTX)が、現在ではその殆どがナフサを原料として製造される石油系BTXに置き換えられている。石油系BTXには、ナフサを熱分解してオレフィンを製造する際に副生する分解油からBTXを分離精製する分解油系BTXと、重質ナフサの接触改質により得られる改質油からBTXを分離精製して得られる改質油系BTXとがあり、また軽質ナフサやLPGやオレフィンから製造される合成系BTXもある。これらの方法はいずれも化石資源(石炭、石油、天然ガス等、特に石油)由来の炭化水素(以下「化石資源系炭化水素」という)を原料としていることから、将来的には資源の枯渇が危惧され持続可能性に難点がある。このため、化石資源を用いずに化石資源系炭化水素(特にナフサ)とほぼ同等な炭化水素を製造する研究もされてきており、その成果として再生可能なバイオマス資源からナフサやLPGと同等な炭化水素(以下「バイオマス系炭化水素」という)を製造する技術も開発されている。
【0003】
一方、化石資源系炭化水素(あるいはバイオマス系炭化水素)を原料として用いずに芳香族化合物を製造する方法として、一酸化炭素と水素からなる所謂合成ガスを原料として用いることによりBTX(特にそれから分離精製されるパラキシレン)を製造する方法(に用いる触媒)が提案されている(特許文献1)。この方法は、合成ガスをZnCr2O4スピネル構造の触媒等によりメタノールに変換し、次いでメタノールをH-ZSM-5ゼオライト(水素型のZSM-5ゼオライト)の水素原子の一部又は全部を亜鉛等の金属原子で置換(ドープ)したものの外表面をシリカライト-1で被覆した触媒等によりパラキシレンを含むBTX混合物に変換するものである。これらの触媒を混合して用いることで一酸化炭素と水素から一段の反応操作でパラキシレンを合成することも提案されている。
【0004】
また、原料として一酸化炭素と水素の混合ガスの代わりに二酸化炭素と水素の混合ガスを用いてもパラキシレンを一段で合成できること(とそれに用いるための触媒)が教示されている(特許文献2)。特許文献2の方法は、メタノール合成触媒として上記スピネル触媒ではなく酸化クロムからなる触媒を用い、パラキシレン合成触媒としては上記と同じくH-ZSM-5ゼオライト(但し亜鉛等によるドープは行わない)にシリカライト-1を被覆したものを用い、これらのメタノール合成触媒とパラキシレン合成触媒とを混合して用いることで二酸化炭素と水素から一段の反応操作でパラキシレンを合成するものである。この方法は、化石資源を消費しないだけでなく、二酸化炭素を原料として用いる点で、二酸化炭素排出量の削減にも寄与すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2020-535966号公報
【文献】特開2019-205969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載された方法は、ナフサやLPGなどの化石資源系(あるいはバイオマス系)炭化水素からなる原料を用いずに、一酸化炭素又は二酸化炭素と水素との混合ガスから芳香族化合物であるBTXを高収率で合成することができることから、化石(特に石油)資源の枯渇が懸念される将来に向けては有力な方法であるといえる。しかしながら、一般的にエネルギー準位の高いナフサやLPGなどの炭化水素を原料とする方法と比べて、エネルギー準位の低い二酸化炭素を原料とする方法は、製造コストの面で有利とはいえない。従って、こうした二酸化炭素(あるいは二酸化炭素から電解還元や逆シフト反応により製造した一酸化炭素)を原料とする方法は、既設のプラントを一部利用したり、既設のプラントと組み合わせたフローでBTX及びそれらから誘導される化学製品を製造するプラントにすることで、全体的なコストの削減を図ったり、二酸化炭素排出量の削減を図ることができることが望ましい。本発明は、そのような目的に適う方法を提供するという課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二酸化炭素もしくは一酸化炭素またはその両方と水素とを含む原料混合ガスから芳香族化合物の混合物を製造する工程Aと、化石資源系あるいはバイオマス系炭化水素からなる原料から芳香族化合物の混合物を製造する工程Bと、工程Aで製造された芳香族化合物の混合物と工程Bで製造された芳香族化合物の混合物を合わせる工程Cと、工程Cで合わせた芳香族化合物の混合物から所望の芳香族化合物を分離精製する工程Dとを含むことを特徴とする芳香族化合物の製造方法を提供し、それにより上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、工程B及び工程Dを実施する設備として既設のプラントを利用することにより、工程A及び工程Cを実施する設備のみを追加(し、必要ならば既設の設備を調整)するだけで、全工程を実施できるハイブリッドプラント(既設のBTXプラントと二酸化炭素もしくは一酸化炭素またはその両方と水素とを含む原料混合ガスからBTXを製造するプラントが融合したものなので、こう呼ぶことにする)とすることができ、また、工程A又は工程Bで生じた余剰原料や排出物を互いに利用しあうことで物質やエネルギーの無駄を削減することが可能となり、低コストで芳香族化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の方法を実施するのに適した装置構成の一例を示す。
【
図2】本発明の方法の実施例を実施するのに用いた装置構成を示す。
【
図3】本発明の方法の比較例を実施するのに用いた装置構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、二酸化炭素もしくは一酸化炭素またはその両方と水素とを含む原料混合ガスから芳香族化合物の混合物を製造する工程Aと、化石資源系あるいはバイオマス系炭化水素からなる原料から芳香族化合物の混合物を製造する工程Bと、工程Aで製造された芳香族化合物の混合物と工程Bで製造された芳香族化合物の混合物を合わせる工程Cと、工程Cで合わせた芳香族化合物の混合物から所望の芳香族化合物を分離精製する工程Dとを含む。
【0011】
<工程A>
工程Aでは、二酸化炭素もしくは一酸化炭素またはその両方と水素とを含む原料混合ガスから芳香族化合物の混合物を製造する。一酸化炭素と水素との混合ガス(所謂合成ガス)を原料として芳香族化合物を含む生成物を製造する場合には、式(1)に示すように一酸化炭素の水素化によりメタノールやジメチルエーテルが生成し、こうして生成したメタノールやジメチルエーテルが式(2)に示すように低級オレフィンを経由して各種芳香族化合物の混合物を生成するとされている。
2CO+2H2 ⇒ 2CH3OH (⇔ CH3OCH3+H2O) (1)
CH3OCH3 ⇒ C2H4、C3H6等 ⇒ 各種芳香族化合物 (2)
【0012】
この場合、式(1)のメタノール合成反応を進行させるための触媒としては、特許文献1に記載されるように、亜鉛(または銅)とクロムの複合酸化物からなるスピネル構造の触媒を好適に用いることができ、式(2)の反応を進行させて芳香族化合物の混合物を合成するための触媒としては、Zn/H-ZSM-5ゼオライト(亜鉛をドープした水素型のZSM-5ゼオライト)を好適に用いることができる。このとき、Zn/H-ZSM-5ゼオライトの外表面をケイ素を含む化合物(好ましくはシリカライト-1のようにZSM-5ゼオライトと同じ格子構造をもち酸点を有しないもの)で被覆すれば、BTXの中でも特に需要が大きいパラキシレンの生成割合を高めることができる。なお、これらの触媒を混合して用いれば、式(1)の反応と式(2)の反応が連続ないし並行して進行するため、1段の反応器で芳香族化合物を含む生成物を製造できる。
【0013】
一方、二酸化炭素と水素との混合ガスを原料として芳香族化合物を含む生成物を製造する場合には、メタノールやジメチルエーテルを生成する反応が式(3)に示すように進行する。
CO2+3H2 ⇒ CH3OH+H2O
(⇔ CH3OCH3+2H2O) (3)
すなわち、メタノールやジメチルエーテルが生成される際に副生される水の量が多くなるため、特許文献2に記載されるように、式(3)の反応を進行させる触媒として上記亜鉛(または銅)とクロムの複合酸化物からなる触媒ではなく(亜鉛または銅を含まない)酸化クロムからなる触媒を用い、式(2)の反応を進行させる触媒として亜鉛ドープを行わない水素型のH-ZSM-5を用いる方が芳香族化合物の収率を上げることができる。
【0014】
すなわち、本発明の工程Aにおいては、原料混合ガス中の二酸化炭素と一酸化炭素の存在比率やそれ以外の成分の含有量に応じて、クロム、亜鉛および銅から適宜選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含む触媒と、適宜亜鉛等でドープしたH-ZSM-5ゼオライト(パラキシレンの生成比率を高めたい場合にはシリカライト-1のようなケイ素を含む化合物で被覆する)を含む触媒とを組み合わせて混合して用いればよい。本明細書では、水素型あるいは各種イオンでドープ(イオン交換)した水素型のZSM-5ゼオライトを、包括的にZSM-5系ゼオライトとよぶ。
【0015】
なお、後述するように、本発明では、工程Aで得られた芳香族化合物の混合物を含む生成物を気液分離にかけて、分離された油相(芳香族化合物の大部分を含む)のみを工程Bで得られた芳香族化合物の混合物と合わせることが好ましく、気液分離で分離された気相(未反応の二酸化炭素や一酸化炭素や水素を含む)は反応器の入口側に戻されることが好ましい。その場合には、上に述べた二酸化炭素と一酸化炭素の比率やそれ以外の成分の含有量は反応器入口における(原料ガスと戻された気相成分とを合わせた)ものを考慮すべきである。
【0016】
工程Aにおいて、原料混合ガスの少なくとも一部として二酸化炭素を用いる場合には、火力発電所や各種加熱炉などの二酸化炭素を発生する燃料を燃焼させる装置からの排ガスから分離された二酸化炭素、アンモニア製造装置やエチレングリコール製造装置や水素製造装置において分離された二酸化炭素、石炭やバイオマスやゴミのガス化炉の生成ガスから分離された二酸化炭素、製鉄所の高炉から分離された二酸化炭素、大気中の空気から分離した二酸化炭素などを利用することができる。このようにすると、大気中への二酸化炭素の放出量の削減につながるため好ましい。
【0017】
一方、原料混合ガスを構成する水素としては、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーや原子力により発生した電力を用いて水を電気分解することで生成される水素を用いることが好ましい。あるいは、後に述べる工程Bにおいて余剰水素が発生する場合には、そうした余剰水素を工程Aの原料混合ガスの一部として用いることができる。あるいは、ガス化炉により生成された合成ガス、製鉄所の高炉から排出されるオフガス、水素製造装置において分離されたオフガス、水と二酸化炭素の共電解により生成された合成ガス、水素と二酸化炭素の逆シフト反応により生成された合成ガスなどを、原料混合ガスとして用いてもよい。
【0018】
反応器の形式は、原料混合ガス(気体)と反応触媒(固体)との気固接触操作が可能で所望の温度・圧力を維持できるもの(充填床、移動床、流動床など)であれば特に限定されないが、接触効率がよくチャネリングを生じにくく触媒粒子の機械的損傷も少ない点で充填床が好ましい。触媒充填量やガス流速は適宜設定できるが、充填床形式の場合、空間速度(SV)が空塔基準で100~10000/hr程度になるように触媒充填量及びガス流速を設定するのがよい。また、反応温度は250℃~600℃程度、反応圧力は1~10MPaG程度に設定することが好ましい。
【0019】
反応器から取り出されたガス状の反応生成物は、これを冷却して芳香族化合物を含む高沸点成分を凝縮させた後、気液分離することにより気相と液相とに分離し、液相はさらに反応で生成した水やアルコールなどの水溶性成分を含む水相と水と混和しない芳香族化合物等を含む油相とに分けることが好ましい。すなわち、冷却された反応生成物は、気液分離器の底から順に下層をなす水相と中層をなす油相と上層をなす気相とに分かれるため、各相の流体をそれぞれの層が形成されている位置から装置外部へ抜き出せばよい。あるいは、気液混合物をまず気相と液相とに分けた後、液相を遠心分離や沈降分離などの比重差を利用した分離法で油相と水相とに分離してもよい。
【0020】
反応生成物を水相と油相と気相とに分けて気液分離器から取り出したときは、BTXを含む芳香族化合物はほぼ全てが油相に含まれてくる。従って、後段の工程Cでは、油相のみを工程Bで製造された芳香族化合物の混合物と合わせればよい。一方、気相は未反応ガスである二酸化炭素、一酸化炭素および水素を含むため、これを反応器の前段である加熱器の入口側に戻して反応器に循環させることが好ましい。しかしながら、気相にはこれらの未反応ガス以外に、副生物である炭素数1~4の低級アルカン(主にメタン)が含まれており、こうした低級アルカンは反応器内での芳香族化合物合成反応には殆ど与らないため、循環路内にこれらの低級アルカンが次第に蓄積してくる。そこで、循環路内のガスの一部は外部にパージする必要がある。循環量全体の1~20体積%程度をパージすれば循環路内のガス中の低級アルカン濃度を40体積%未満に維持できる。なお、水相は利用価値のある成分をあまり含まないため、排水処理装置で処理した後、外部へ放出するのが好ましい。
【0021】
循環路からパージされたガスは、未反応の二酸化炭素、一酸化炭素および水素、ならびに副生した低級アルカンを含むため、加熱用の燃料ガスとして用いることができる。ただし、原料ガスとして必要な水素の節減のため、このパージガスに含まれる水素は、膜分離や吸着分離(Pressure Swing Adsorption等)などにより分離し、パージガスから水素のみを回収してリサイクルすることが好ましい。また、水素に加え、二酸化炭素や一酸化炭素をパージガスから回収してもよい。適切な膜を用いて膜分離を行えば、これらのガスをパージガスから分離回収することができる。
【0022】
反応器の入口側で行う原料混合ガスの加熱と、反応器の出口側で行う生成ガス混合物の冷却は、生成ガス混合物の冷却で回収された熱を原料混合ガスの加熱に用いるようにすれば、加熱や冷却に必要なエネルギーを節約することができるため好ましい。また、熱交換だけでは十分な生成ガス混合物の冷却が望めない場合には、熱交換操作である程度温度が低下した生成ガス混合物を更に冷却するようにしてもよい。
【0023】
<工程B>
工程Bでは、化石資源系あるいはバイオマス系炭化水素からなる原料から芳香族化合物の混合物を製造する。例えば、ナフサやLPGなどを原料として用いる分解油系BTX製造プロセス、改質油系BTX製造プロセス、合成系BTX製造プロセスにより芳香族化合物の混合物を製造する。
【0024】
分解油系BTX製造プロセスは、ナフサを熱分解してオレフィンを製造する際に副生する分解油中に含まれるBTXを蒸留等により分離して取り出すものである。分解油中には不飽和化合物や硫黄化合物が含まれているため、水素化処理を施してから分離操作を行うことが好ましい。
【0025】
改質油系BTX製造プロセスは、重質ナフサの接触改質により重質ナフサに含まれるパラフィンやナフテンを環化及び脱水素することで芳香族化するものである。接触改質プロセスでは、高オクタン価ガソリン基材とともにBTXが製造される。改質油系BTX製造プロセスには反応塔の形式および触媒再生方式の異なる各種のプロセスがあり、用いる触媒にも各種のものがあるが、本発明の工程Bで改質油系BTX製造プロセスを行う場合、これらの何れのプロセスあるいは触媒を採用して実施してもよい。
【0026】
合成系BTX製造プロセスは、軽質ナフサやLPGやオレフィンを芳香族化してBTXとすることにより芳香族化合物の混合物を製造するものであり、軽質ナフサを原料とするプロセス、C4/C5オレフィンを原料とするプロセス、LPG又は軽質ナフサを原料とするプロセスなど、各種のものがあるが、本発明の工程Bで合成系プロセスを行う場合、これらの何れのプロセスを採用して実施してもよい。
【0027】
ところで、改質油系BTX製造プロセスにおける接触改質や、合成系BTX製造プロセスでは、余剰水素が発生する。こうした余剰水素は、従来は製油所内の灯油・軽油の脱硫等に使われているが、それでも余剰分があり加熱用の燃料ガス等として用いられる。また、今後、脱炭素化の流れからバイオ燃料の普及やEV化などにより、石油由来の灯油・軽油の需要は減り、脱硫用の水素の需要も減るためさらに接触改質で副生した水素が余る方向になる。本発明では、工程Bで発生した余剰水素を、工程Aで原料混合ガスの一部として用いることができることから、余剰水素の有効利用が可能である。
【0028】
<工程C>
工程Cでは、工程Aで製造された芳香族化合物の混合物と、工程Bで製造された芳香族化合物の混合物を合わせる。工程Aは一酸化炭素または二酸化炭素と水素という混合ガス原料から芳香族化合物を製造するものであり、工程BはナフサやLPGといった炭化水素原料から芳香族化合物を製造するものであるが、それらの製造物はいずれもBTXを含む芳香族化合物の混合物であるから、基本的に同じ精製工程で分離精製することができる。従って、工程Bとそれに続く精製工程を実施するプラントが既存のプラントとして存在する場合には、その精製工程を利用して工程Aの製造物を工程Bの製造物と一緒に分離精製することができる。
【0029】
工程Cにおいて、工程Aの製造物と工程Bの製造物を合わせる装置の形式は、特に限定されない。1つの混合タンクの中に、工程Aの製造物の流れと工程Bの製造物の流れを流入させてタンク内で混合してもよいし、工程Aの製造物の流れと工程Bの製造物の流れを単に合流させて合流後に両者が混合するような機構を設けてもよい。
【0030】
工程Bで改質油系BTX製造プロセスを採用した場合には、生成混合物中に含まれるキシレン類ないし炭素数9以上の重質芳香族の割合が大きいので、工程Aの製造物と合わせる前または合わせた後に、これらを先ず分離することが好ましい。また、工程Bで分解油系BTX製造プロセス(あるいは、それを含む改質油系BTX製造プロセス)を採用した場合には、生成混合物中に炭素数6~7程度の軽質パラフィンが多く含まれるので、工程Aの製造物と合わせる前または合わせた後に、これらを分離することが好ましい。一方、工程Bで合成系BTX製造プロセスのみを採用した場合には、重質芳香族や軽質パラフィンの含有量は少ないので、この限りではない。
【0031】
<工程D>
工程Dでは、工程Cで合わせた芳香族化合物の混合物から所望の芳香族化合物を分離精製する。工程Cで合わせた混合物はベンゼン、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン及びパラキシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼンなどといった各種芳香族化合物を含むため、これを個々の目的化合物に分離して精製する必要がある。具体的には、得られた混合物は、先ず蒸留操作によりキシレン類(オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン)やエチルベンゼンより沸点が低いベンゼンやトルエンなどを低沸点留分として、またキシレン類やエチルベンゼンより沸点が高いトリメチルベンゼンなどを高沸点留分として分離することが好ましい。
【0032】
低沸点留分及び高沸点留分を分離除去した後に残るキシレン類(オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン)及びエチルベンゼンの沸点は互いに近いので、蒸留操作のみでこれらを分離するのは非効率的である。そこで、これらの混合物をキシレン留分として取得し、次いで、この混合物をゼオライトで吸着分離することが好ましい。ゼオライトはパラキシレンの分子サイズを有する細孔を有するため、パラキシレンをよく吸着する一方、オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼンは殆ど吸着せず、モレキュラーシーブとして機能する。すなわち、パラキシレン以外の成分(オルトキシレン、メタキシレン、エチルベンゼンとその他の不純物)はゼオライトに吸着されずに吸着塔を通過するため、ゼオライトを用いてこの混合物の吸着と脱着を繰り返すことにより、パラキシレンを濃縮精製することができる。具体的には、吸着剤(ゼオライト)を詰めた吸着塔にキシレン混合物を流しパラキシレンのみを吸着させ、そのパラキシレンを含む吸着剤に脱着剤を接触させてパラキシレンを脱着させ、脱着剤とパラキシレンの混合物を蒸留塔にて分離することで、高濃度のパラキシレンを得ることができる。
【0033】
低沸点留分は、芳香族抽出分離により軽質パラフィンを除いた後、蒸留操作によりベンゼンをトルエン(及び少量のキシレン類)から分離精製することができる。なお、トルエンは、脱アルキル化を行ってベンゼンに変換したり、不均化(トランスアルキル化)を行ってベンゼンとキシレン類に変換することもできる。一方、高沸点留分として分離された重質芳香族は高オクタン価ガソリン用の添加物として利用できるが、その中のトリメチルベンゼンは、トルエンに混ぜて不均化処理を行うことにより、一部をパラキシレンを含むキシレン混合物に変換した後、精製工程の入口側に戻すことができる。具体的には、トルエンやトリメチルベンゼンを含む混合物を加熱し、ゼオライト触媒を詰めた反応器に通すことで不均化処理を行う。
【0034】
また必要に応じて、キシレンの異性化処理を行ってもよい。精製工程で高純度パラキシレンを取得した後に残るオルトキシレンおよびメタキシレンは、異性化処理を行って一部をパラキシレンに変換した後、精製工程の入口側に戻すことができる。具体的には、パラキシレンを分離した後のオルトキシレンおよびメタキシレンの混合物を加熱し、ゼオライト触媒を詰めた反応器に通すことで異性化処理を行う。
【実施例】
【0035】
実施例1
図1は、工程Aが、水素と一酸化炭素と二酸化炭素とを含む原料混合ガス10から芳香族化合物の混合物を製造する工程からなり、工程Bが、重質ナフサ20を接触改質することにより芳香族化合物の混合物を製造する工程(改質油系BTX製造プロセス)と、ナフサからオレフィンを製造する際に発生する熱分解残油30から芳香族化合物を分離する工程(分解油系BTX製造プロセス)と、軽質ナフサやLPG40を芳香族化して芳香族化合物の混合物を製造する工程(合成系BTX製造プロセス)のいずれか一つまたは複数の組み合わせとからなる、本発明の芳香族化合物の製造方法のプロセスフローの一例を示す。
【0036】
(工程A)
図1において、水素と一酸化炭素と二酸化炭素を含む原料混合ガス10は、加熱されて芳香族化合物合成のための反応器11に導入される。反応器11内にはクロム、亜鉛および銅から選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含む触媒とZSM-5系ゼオライトを含む触媒とが混合充填されて混合触媒層を形成しており、原料混合ガスは反応器11内で250℃~600℃および1~10MPaGの高温高圧雰囲気下に混合触媒と接触することにより反応して各種芳香族化合物を含む生成ガス混合物になる。得られた生成ガス混合物は、常温付近まで冷却されて気液液分離器12に導入され、凝縮した高沸点成分を含む生成ガス混合物は気液液分離器12内で水溶性成分を含む水相(下層)と芳香族化合物の混合物を含む油相(中層)と未反応ガスを含む気相(上層)の3層に分離される。
【0037】
3層のうち、芳香族化合物の混合物を含む中層を形成する油相は、気液液分離器12から抜き出された後、工程Bで製造された芳香族化合物の混合物と合わせられ(工程C)、その後、各種芳香族化合物製品に分離精製される(工程D)。
【0038】
上層を形成する気相は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素などの未反応ガスや副生成物である低級アルカンを含むため、気液液分離器12から抜き出された後、循環ガスとして反応器11の入口側の原料混合ガスの流れに混合され、再び加熱されて芳香族化合物合成反応に供されることになる。なお、循環ガスの一部は低級アルカン等の蓄積を防止するために系外にパージされ、燃料ガスとして近くの加熱炉の熱源などに有効利用される。
【0039】
下層を形成する水相は、気液液分離器12から抜き出された後、水溶性有機物などを除去するために廃水処理装置に送られて処理された後、系外に排出される。
【0040】
(工程B)
図1において、重質ナフサ20は、水素化精製処理21により硫黄成分等が除去された後、改質触媒を充填したリフォーマー22内に導入され、500℃、0.4MPaG程度の高温下に接触改質されて各種芳香族化合物を含む混合物(リフォーメート)に変換される。また、ナフサ分解残油30は、水素化精製処理31により硫黄成分等が除去され、各種芳香族化合物を含む混合物としてリフォーメートに合わせられる(工程C)。また、軽質ナフサやLPG40は、芳香族合成プロセス41により、触媒の存在下に500℃、0.5MPaG程度の高温下で芳香族化され、各種芳香族化合物を含む混合物となる。
【0041】
(工程C)
図1において、工程Aで気液液分離器12の中層から引き抜かれた油相と、工程Bで重質ナフサ20の水素化精製21と接触改質22により得られた生成物(リフォーメート)やナフサ分解残油30の水素化精製により得られた生成物は、何れもベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)を含む芳香族化合物の混合物なので、これらを合わせた後、リフォーメートスプリッター51で一旦炭素数7以下のベンゼンやトルエンを含む軽質成分と炭素数8以上のキシレンやエチルベンゼンを含む重質成分とに分けられ、その後、軽質成分は芳香族抽出分離器52でベンゼンやトルエンと沸点の近いパラフィンが分離除去される。
【0042】
一方、工程Bで軽質ナフサやLPGから芳香族化された生成物は、主としてベンゼン及びトルエンからなり、それ以外には多少のキシレン類を含む他、ベンゼンやトルエンと沸点の近いパラフィン類は殆ど含まないので、芳香族抽出分離器52でそれらが除去された後の軽質成分の流れに合流される。
【0043】
(工程D)
工程Cで合わせられた芳香族化合物の混合物は、その後、常法に従って、蒸留・吸着・抽出等の操作により、個々の芳香族化合物に分離される。
図1では、リフォーメートスプリッター51で分離された炭素数7以下の軽質成分は、芳香族抽出分離器52で軽質パラフィンが分離除去された後、蒸留塔(ベンゼン塔、トルエン塔)53でベンゼンとトルエンと少量含まれるキシレン等とに分けられる。ベンゼンとトルエンの生成比率に比べて、両者の需要の比率はベンゼンが大きいので、生成したトルエンの一部を脱アルキル54してベンゼンに変換したり、ベンゼンとキシレンとに不均化55したりして、生成量の比率を需要に見合うように調整することができる。
【0044】
一方、リフォーメートスプリッター51で分離された、またはトルエン塔で分離された炭素数8以上の化合物は蒸留塔(キシレン塔)56でキシレンと炭素数9以上の重質芳香族化合物とに分けられる。オルト、メタ、パラの3種のキシレンは沸点が近いため、これらを蒸留で分離することは困難である。従って、これら3種の混合物のうち最も需要の大きいパラキシレンは吸着57により分離される。また、残った2種のキシレンは、キシレン異性化処理58によりパラキシレンに変換することもできる。なお、キシレンから分離された重質芳香族化合物は、重質芳香族塔59で炭素数8の成分が一部不均化処理55に供される他、オクタン価を上げるためのガソリン添加物等として用いられる。
【0045】
図1において、水素化精製した重質ナフサ20の接触改質22により芳香族化合物の混合物(リフォーメート)を製造したり、軽質ナフサやLPG40から合成系芳香族製造プロセス41により芳香族化合物の混合物を製造する過程では、余剰の水素が発生するが、これは水素と一酸化炭素と二酸化炭素10から芳香族化合物を合成するための原料として用いられる。これにより余剰水素を有効に活用することができる。
【0046】
実施例2
図2は、工程Aが、水素と二酸化炭素とを含む原料混合ガスから芳香族化合物の混合物を製造する工程からなり、工程Bが、重質ナフサを接触改質することにより芳香族化合物の混合物を製造する工程(改質油系BTX製造プロセス)のみからなる場合の、本発明の芳香族化合物の製造方法のプロセス構成の一例を示す。
【0047】
(工程A)
図2において、水素と二酸化炭素を含む原料混合ガス110は、加熱されて芳香族化合物合成のための反応器111に導入される。反応器111内にはクロム、亜鉛および銅から選択される少なくとも1種の金属の酸化物を含む触媒とシリカライト-1で表面被覆されたZSM-5系ゼオライトを含む触媒とが混合充填されて混合触媒層を形成しており、原料混合ガスは反応器111内で250℃~600℃および1~10MPaGの高温高圧雰囲気下に混合触媒と接触することにより反応して各種芳香族化合物を含む生成ガス混合物になる。得られた生成ガス混合物は、常温付近まで冷却されて気液液分離器(不図示)に導入され、凝縮した高沸点成分を含む生成ガス混合物は水溶性成分を含む水相(下層)と芳香族化合物の混合物を含む油相(中層)と未反応ガスを含む気相(上層)の3層に分離される。
【0048】
3層のうち、芳香族化合物の混合物を含む中層を形成する油相は、工程Bで製造された芳香族化合物の混合物と合わせられ(工程C)、その後、各種芳香族化合物製品に分離精製される(工程D)。一方、上層を形成する気相は、循環ガスとして反応器111の入口側の原料混合ガスの流れに混合され、一部はパージガスとして系外にパージされる。また、下層を形成する水相は、廃水処理装置に送られて処理された後、系外に排出される。
【0049】
(工程B)
図2において、予め硫黄分が除去された重質ナフサ120は、改質触媒を充填したリフォーマー121内で接触改質されて各種芳香族化合物を含む混合物(リフォーメート)に変換される。
【0050】
(工程C及びD)
図2において、工程Aで気液液分離器の中層から引き抜かれた油相と、工程Bで重質ナフサの接触改質22により得られた生成物(リフォーメート)は、工程Cでこれらを合わせた後、工程Dで分離、異性化、不均化等の精製処理122を受けて、個々の芳香族化合物に分離される。
【0051】
(余剰水素の活用)
図2において、工程Bの重質ナフサの接触改質121により芳香族化合物の混合物(リフォーメート)を製造する過程で発生した水素は、重質ナフサの前処理などにも用いられるが、一部は使いきれずに余剰水素となるので、これは工程Aにおいて水素と二酸化炭素から芳香族化合物を合成するための原料として用いられる。これにより余剰水素を有効に活用することができる。
【0052】
(燃焼排ガスからの二酸化炭素の回収と利用)
工程Bや工程Dにおける各加熱炉からの燃焼排ガスに含まれる二酸化炭素は、アミン吸収等による吸収分離112により回収し、これを工程Aにおいて水素と二酸化炭素から芳香族化合物を合成するための原料として用いることができる。
【0053】
(物質収支)
図2において、物質の流れを示す線に菱形で囲って付記した数字は、当該ストリームの番号を示す。表1は、実施例2における各ストリームの質量流量と各成分の質量分率をまとめた物質収支例である。
【0054】
【0055】
比較例
図3は、
図2から工程A(水素及び二酸化炭素からの芳香族化合物を合成する工程)と工程C(工程Aで得られた芳香族化合物と工程Bで得られた芳香族化合物とを合わせる工程)を除いた場合である比較例を示す。すなわち、
図3に示す比較例は、実施例2の工程B及び工程Dのみからなるプロセス構成である。この比較例では、工程Aが存在しないため、工程Bで発生する余剰水素や、各工程の加熱炉で発生する排ガスから回収した二酸化炭素の工程Aでの原料としての利用はできない。
【0056】
(物質収支)
図3において、物質の流れを示す線に菱形で囲って付記した数字は、当該ストリームの番号を示す。表2は、この比較例における各ストリームの質量流量と各成分の質量分率をまとめた物質収支例である。
【0057】
【符号の説明】
【0058】
10 原料混合ガス(H2/CO/CO2)
11 芳香族化合物合成反応器
12 気液液分離器
20 重質ナフサ(改質油系芳香族製造原料)
21 水素化精製装置
22 接触改質装置
30 ナフサ分解残油(分解油系芳香族製造原料)
31 水素化精製装置
40 LPG/軽質ナフサ(芳香族合成プロセス原料)
41 芳香族合成反応装置
51 リフォーメートスプリッター
52 芳香族抽出分離装置
53 蒸留装置(ベンゼン塔/トルエン塔)
54 脱アルキル反応装置
55 不均化反応装置
56 蒸留装置(キシレン塔)
57 吸着装置(パラキシレン分離塔)
58 キシレン異性化反応装置
59 蒸留装置(重質芳香族塔)
110 原料混合ガス
111 芳香族化合物合成反応装置(気液液分離及び気相循環を含む)
112 二酸化炭素分離回収装置
120 ナフサ(脱硫処理済み)
121 接触改質装置
122 精製(分離・異性化・不均化)装置