(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】光学フィルタおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20230208BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230208BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230208BHJP
C09B 23/10 20060101ALI20230208BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20230208BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230208BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/26
G02B5/28
C09B23/10
C09B57/00 X
B32B7/023
H01L27/146
(21)【出願番号】P 2019569189
(86)(22)【出願日】2019-01-30
(86)【国際出願番号】 JP2019003227
(87)【国際公開番号】W WO2019151344
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2018018608
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】保高 弘樹
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/158819(WO,A1)
【文献】特開2007-163644(JP,A)
【文献】特開2008-088426(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133099(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/135359(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/119683(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/26
G02B 5/28
C09B 23/10
C09B 57/00
B32B 7/023
H01L 27/146
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i-1)~(i-3)を満足する近赤外線吸収色素(A)と
、前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する透明樹脂
とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ。
(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ
max(A)DCMが850~1100nmの波長領域にある。
(i-2)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ
max(A)DCMにおける吸光度をABS
λmax(A)DCM、波長400nmにおける吸光度をABS
400(A)DCM、波長550nmにおける吸光度をABS
550(A)DCMとしたときに、下記式(1)および(2)を満足する。
ABS
400(A)DCM/ABS
λmax(A)DCM<0.10 …(1)
ABS
550(A)DCM/ABS
λmax(A)DCM<0.04 …(2)
(i-3)前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ
max(A)TRが850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λ
max(A)TRにおける吸光度をABS
λmax(A)TR、波長400nmにおける吸光度をABS
400(A)TR、波長550nmにおける吸光度をABS
550(A)TRとしたときに、下記式(3)および(4)を満足する。
ABS
400(A)TR/ABS
λmax(A)TR<0.15 …(3)
ABS
550(A)TR/ABS
λmax(A)TR<0.10 …(4)
【請求項2】
前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。
(i-4)下式(5)および(6)を満足する。
ABS
400(A)TR/ABS
λmax(A)TR-ABS
400(A)DCM/ABS
λmax(A)DCM<0.10 …(5)
ABS
550(A)TR/ABS
λmax(A)TR-ABS
550(A)DCM/ABS
λmax(A)DCM<0.08 …(6)
【請求項3】
前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。
(i-4)下式(5)および(6)を満足する。
ABS
400(A)TR
/ABS
λmax(A)TR
-ABS
400(A)DCM
/ABS
λmax(A)DCM
<0.06 …(5)
ABS
550(A)TR
/ABS
λmax(A)TR
-ABS
550(A)DCM
/ABS
λmax(A)DCM
<0.08 …(6)
【請求項4】
前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ACi)~(ACiv)のいずれかで表されるシアニン系化合物を含む請求項1
~3のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【化1】
【化2】
ただし、式(ACi)~(ACiv)中の記号は以下のとおりである。
R
101~R
107、R
121~R
127、R
141およびR
151は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR
112R
113基、-NHSO
2R
114基、-NHCOR
115基、-SR
116基、-SO
2R
117基、-OSO
2R
118基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。R
102~R
107およびR
122~R
127は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。
R
142とR
143は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Dを形成していてもよい。R
145とR
144は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Eを形成していてもよい。ただし、芳香環Dと芳香環Eは両方が形成されることはない。
R
109~R
111、R
129~R
131、R
146~R
148、およびR
152~R
154はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-NR
112R
113基、炭素数3~14のシクロアルキル基、または炭素数6~14のアリール基である。
R
109とR
111、R
129とR
131、R
146とR
148、およびR
152とR
154は、互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。環を形成する場合、環に結合する水素原子は炭素数1~6のアルキル基に置換されていてもよく、環の構成原子の2つがメチレン基で架橋されていてもよい。
R
112~R
118は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
各式に含まれる複数のR
101~R
107、R
121~R
127、R
141~R
145、R
151、D、及びEは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
X
-は一価のアニオンを示す。
【請求項5】
前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ACi1)~(ACii2)のいずれかで表されるシアニン色素を含む請求項1
~3のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【化3】
ただし、式(ACi1)~(ACii2)中の記号は以下のとおりである。
R
101~R
107およびR
121~R
127は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR
112R
113基、-NHSO
2R
114基、-NHCOR
115基、-SR
116基、-SO
2R
117基、-OSO
2R
118基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。R
102~R
107およびR
122~R
127は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。
R
130aは、水素原子、メチル基またはフェニル基である。
R
130bは、水素原子、メチル基、フェニル基またはジフェニルアミノ基である。
R
112~R
118は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
各式に含まれる複数のR
101~R
107、およびR
121~R
127は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
X
-は一価のアニオンを示す。
【請求項6】
前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ASi)または(ASii)で表されるスクアリリウム色素を含む請求項1
~5のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【化4】
ただし、式(ASi)および(ASii)中の記号は以下のとおりである。
R
161は、炭素数3~20の分岐アルキル基、または炭素数13~20の直鎖アルキル基である。
Y
3はC-R
179またはNである。
R
162~R
167およびR
171~R
179は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR
112R
113基、-NHSO
2R
114基、-NHCOR
115基、-SR
116基、-SO
2R
117基、-OSO
2R
118基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
R
112~R
118は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
各式に含まれる複数のR
161~R
167、R
171~R
178およびY
3は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【請求項7】
前記透明樹脂は、主鎖にエステル結合、カーボネート結合およびイミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を有する樹脂を含む請求項1~
6のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項8】
前記透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂およびアクリルイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~
7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記吸収層は、さらに、前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において最大吸収波長λ
max(D)TRが650~750nmの波長領域にあり、下式(I)~(III)のいずれかで示される近赤外線吸収色素(D)を含む請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【化5】
ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。
R
24およびR
26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR
27R
28(R
27およびR
28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R
29(R
29は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基または、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基)、-NHR
30、または、-SO
2-R
30(R
30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R
41、R
42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【化6】
R
21とR
22、R
22とR
25、およびR
21とR
23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。
複素環Aが形成される場合のR
21とR
22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
複素環Bが形成される場合のR
22とR
25、および複素環Cが形成される場合のR
21とR
23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X
1-Y
1-および-X
2-Y
2-(窒素に結合する側がX
1およびX
2)として、X
1およびX
2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y
1およびY
2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X
1およびX
2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y
1およびY
2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【化7】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR
38R
39(R
38およびR
39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R
31~R
36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R
37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
R
27、R
28、R
29、R
31~R
37、複素環を形成していない場合のR
21~R
23、およびR
25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R
31とR
36、R
31とR
37は直接結合してもよい。
複素環を形成していない場合の、R
21およびR
22は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。複素環を形成していない場合の、R
23およびR
25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【化8】
ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、
R
1とR
2、R
2とR
3、およびR
1と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【化9】
ただし、式(III)中の記号は以下のとおりである。
R
51は、それぞれ独立にハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、
R
52~R
58は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
R
52とR
53は、互いに連結して、炭素数5~15の飽和または不飽和の炭化水素環B2を形成していてもよく、炭化水素環B2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよく、
R
54とR
55は、互いに連結してベンゼン環A2を形成していてもよく、ベンゼン環A2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよい。
【請求項10】
前記吸収層は入射角0度の分光透過率曲線において下記(ii-1)~(ii-3)を満足し、前記反射層は下記(iii-1)を満足し、前記光学フィルタは下記(iv-1)を満足する請求項
9記載の光学フィルタ。
(ii-1)透過率が20%を示す波長の短波長側の波長が655~675nmの波長領域にある。
(ii-2)波長435~630nmの光の平均透過率が65%以上である。
(ii-3)波長850~1100nmの光の平均透過率が70%以下である。
(iii-1)入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.2%以下である。
(iv-1)波長615~725nmにおいて、入射角0度および入射角30度の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値が2%/nm以下である。
【請求項11】
前記近赤外線吸収色素(A)は、最大吸収波長λ
max(A)TRが異なる少なくとも2種を含む請求項1~
10のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項記載の光学フィルタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視波長領域の光を透過し、近赤外波長領域の光を遮断する光学フィルタおよび該光学フィルタを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し近赤外域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。該光学フィルタとしては、近赤外吸収剤を含む吸収層と、近赤外光を遮断する誘電体多層膜からなる反射層とを備えた近赤外カットフィルタが知られている。つまり、誘電体多層膜そのものは、入射角によって分光透過率曲線が変化するため、反射層と吸収層の両方を含む近赤外カットフィルタは、吸収層の吸収特性により入射角依存性が抑制された分光透過率曲線が得られる。
【0003】
近年、このような撮像装置を搭載した各種機器において、波長850~1100nmのレーザ光を用いる光学部品がともに搭載されることが多くなっている。そのため、近赤外カットフィルタにおいて、可視光の透過率の低下を抑制しつつ、波長850~1100nmの長波長の近赤外光を十分にカットする特性が求められるようになった。
【0004】
近赤外カットフィルタにおいては、従来から、比較的長波長域に吸収を示す吸収剤を用いる技術が多く知られている。具体的には、スクアリリウム色素とシアニン色素、フタロシアニン色素等を組み合わせる(例えば、特許文献1、2を参照)、ジインモニウム色素、金属ジチオラート錯体、無機微粒子等を用いる(例えば、特許文献3、4、5を参照)等の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2013/054864号
【文献】国際公開第2016/158461号
【文献】国際公開第2017/094672号
【文献】国際公開第2014/168189号
【文献】国際公開第2014/168190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれの近赤外カットフィルタにおいても、可視光の高い透過性と波長850~1100nmの長波長域における高い遮蔽性を両立できるものはない。
【0007】
本発明は、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光学フィルタは、下記(i-1)~(i-3)を満足する近赤外線吸収色素(A)と、前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有することを特徴とする。
(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)DCMが850~1100nmの波長領域にある。
(i-2)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)DCMにおける吸光度をABSλmax(A)DCM、波長400nmにおける吸光度をABS400(A)DCM、波長550nmにおける吸光度をABS550(A)DCMとしたときに、下記式(1)および(2)を満足する。
ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.10 …(1)
ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.04 …(2)
(i-3)前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λmax(A)TRにおける吸光度をABSλmax(A)TR、波長400nmにおける吸光度をABS400(A)TR、波長550nmにおける吸光度をABS550(A)TRとしたときに、下記式(3)および(4)を満足する。
ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR<0.15 …(3)
ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR<0.10 …(4)
【0009】
本発明はまた、本発明の光学フィルタを備えた撮像装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタが得られる。さらに、本発明によれば、該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(I)で示される化合物を化合物(I)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(I)からなる色素を色素(I)ともいい、他の色素についても同様である。例えば、後述の式(ACi)で示される化合物を化合物(ACi)といい、該化合物からなる色素を色素(ACi)ともいう。また、例えば、式(1x)で表される基を基(1x)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0013】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その波長領域全体において透過率が90%を下回らないことをいい、同様に透過率が例えば1%以下とは、その波長領域全体において透過率が1%を超えないことをいう。特定の波長域における平均透過率は、該波長域の1nm毎の透過率の相加平均である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
本明細書において、ある一般式に同じ記号で表される置換基が複数ある場合、それら複数の置換基は互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0014】
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、下記(i-1)~(i-3)を満足するNIR色素である色素(A)と透明樹脂を含有する吸収層と、反射層とを有する。
【0015】
(i-1)色素(A)は、ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)DCMが850~1100nmの波長領域にある。
【0016】
(i-2)色素(A)は、ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)DCMにおける吸光度をABSλmax(A)DCM、波長400nmにおける吸光度をABS400(A)DCM、波長550nmにおける吸光度をABS550(A)DCMとしたときに、下記式(1)および(2)を満足する。
ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.10 …(1)
ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.04 …(2)
【0017】
(i-3)色素(A)は、上記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λmax(A)TRにおける吸光度をABSλmax(A)TR、波長400nmにおける吸光度をABS400(A)TR、波長550nmにおける吸光度をABS550(A)TRとしたときに、下記式(3)および(4)を満足する。
ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR<0.15 …(3)
ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR<0.10 …(4)
【0018】
本フィルタは、吸収層が(i-1)~(i-3)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有することで、近赤外光の長波長域の遮光性に優れるとともに、可視光の透過率が高い。
【0019】
色素(A)は、さらに以下の(i-4)の特性を有することが好ましい。
(i-4)色素(A)は、下式(5)および(6)を満足する。
ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.10 …(5)
ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCM<0.08 …(6)
【0020】
なお、色素(A)を、ジクロロメタンに溶解させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線は、色素(A)の添加量を、最大吸収波長λmax(A)DCMでの吸光度が1となるように、すなわち、光の透過率が10%になるように調整した際の吸光度曲線である。同様に、色素(A)を、透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線は、色素(A)の添加量を、最大吸収波長λmax(A)TRでの吸光度が1となるように、すなわち、光の透過率が10%になるように調整した際の吸光度曲線である。
【0021】
色素(A)は、さらに以下の(i-5)の特性を有することが好ましい。(i-5)色素(A)は、上記透明樹脂に含有させたときの質量吸光係数が1000/(cm・質量%)以上である。
なお、質量吸光係数は、波長350~1200nmの範囲における最大吸収波長での光の内部透過率T[%](=実測透過率[%]/(100-実測反射率[%])×100[%])を算出し、-log10(T/100)によって計算できる。以下、特に断りのない限り、色素の「質量吸光係数」は、上記方法により計算された質量吸光係数である。
【0022】
本フィルタは、透明基板をさらに有してもよい。この場合、吸収層および反射層は、透明基板の主面上に設けられる。本フィルタは、吸収層と反射層を、透明基板の同一主面上に有してもよく、異なる主面上に有してもよい。吸収層と反射層を同一主面上に有する場合、これらの積層順は特に限定されない。
【0023】
本フィルタは、また他の機能層を有してもよい。他の機能層としては、例えば可視光の透過率損失を抑制する反射防止層が挙げられる。特に、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層と空気との界面で反射による可視光透過率損失が発生するため、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。
【0024】
次に、図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。
図1は、吸収層11の一方の主面上に反射層12を備えた光学フィルタ10Aの構成例である。光学フィルタ10Aにおいて、吸収層11は、色素(A)と透明樹脂とを含有する層で構成できる。なお、「吸収層11の一方の主面(上)に、反射層12を備える」とは、吸収層11に接触して反射層12が備わる場合に限らず、吸収層11と反射層12との間に、別の機能層が備わる場合も含み、以下の構成も同様である。
【0025】
図2は、透明基板と吸収層と反射層を有する実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。光学フィルタ10Bは、透明基板13と透明基板13の一方の主面上に配置された吸収層11と透明基板13の他方の主面上に設けられた反射層12を有する。光学フィルタ10Bにおいて、吸収層11は、色素(A)と透明樹脂とを含有する層で構成できる。
【0026】
図3は、吸収層11を備え、吸収層11の両主面上に、反射層12aおよび12bをそれぞれ備えた光学フィルタ10Cの構成例である。
図4は、透明基板13の一方の主面に吸収層11を備え、透明基板13の他方の主面上および吸収層11の主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Dの構成例である。
図5は、透明基板13の両主面に吸収層11aおよび11bを備え、さらに吸収層11aおよび11bの主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Eの構成例である。
【0027】
図3、
図4および
図5において、組み合わせる2層の反射層12a、12bは、同一でも異なってもよい。例えば、反射層12a、12bは、紫外光および近赤外光を反射し、可視光を透過する特性を有し、反射層12aが、紫外光と第1の近赤外域の光を反射し、反射層12bが、紫外光と第2の近赤外域の光を反射する構成でもよい。
【0028】
また、
図4において、2層の吸収層11aと11bは、同一でも異なってもよい。吸収層11aと11bが異なる場合、例えば、吸収層11aと11bが、各々、近赤外線吸収層と紫外線吸収層の組合せでもよく、紫外線吸収層と近赤外線吸収層の組合せでもよい。
【0029】
図6は、
図2に示す光学フィルタ10Bの吸収層11の主面上に反射防止層14を備えた光学フィルタ10Fの構成例である。反射層が設けられず、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。なお、反射防止層は、吸収層の最表面だけでなく、吸収層の側面全体も覆う構成でもよい。その場合、吸収層の防湿の効果を高められる。
【0030】
以下、吸収層、反射層、透明基板および反射防止層について説明する。
(吸収層)
吸収層は、上記(i-1)~(i-3)の特性を有する、好ましくはさらに上記(i-4)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有する。
【0031】
吸収層は、典型的には、透明樹脂中に色素(A)が均一に溶解または分散した層または(樹脂)基板である。吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で色素(A)以外にその他のNIR色素を含有してもよい。さらに、吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲でNIR色素以外の色素、特にはUV色素を含有してもよい。
【0032】
その他のNIR色素としては、下記(v-1)および(v-2)の要件を満たす色素(D)を含有することが好ましい。
(v-1)色素(D)は、上記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において最大吸収波長λmax(D)TRが650~750nmの波長領域にある。
(v-2)色素(D)は、後述の式(I)~(III)のいずれかで示される。
【0033】
さらに、色素(D)は、下記(v-3)の要件を満たすことが好ましい。
(v-3)色素(D)は、上記透明樹脂に最大吸収波長λmax(D)TRの透過率が10%となる濃度で含有させて測定される分光透過率曲線において、400~500nmの波長領域の光の平均透過率が85%以上である。
【0034】
また、色素(D)の上記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの内部透過率の分光透過率曲線において、λmax(D)TRに吸収の頂点を有する吸収ピーク(以下、「λmax(D)TRの吸収ピーク」という)は、可視光側の傾きが急峻である、すなわち、可視光側の傾きにおいて透過率70%から透過率20%までの波長が、60nm以下が好ましく、さらに50nm以下が好ましい。
【0035】
[色素(A)]
色素(A)は、(i-1)において、最大吸収波長λmax(A)DCMが850~1100nmの波長領域にある。最大吸収波長λmax(A)DCMは、860~1000nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0036】
色素(A)は、(i-2)において、式(1)および式(2)を満足する。式(1)において、「ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCM」は、ABSλmax(A)DCMに対するABS400(A)DCMの比の値を示す。すなわち、ABSλmax(A)DCMを1としたときのABS400(A)DCMの値を示す。以下の(2)~(4)の式においても同様である。式(1)によれば、ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.10未満である。ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.08以下が好ましく、0.04以下がより好ましい。
【0037】
式(2)によれば、ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.04未満である。ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.03以下が好ましく、0.02以下がより好ましい。
【0038】
色素(A)は、(i-3)において、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にある。最大吸収波長λmax(A)TRは、860~1000nmの波長領域にあるのが好ましい。さらに色素(A)は、(i-3)において、式(3)および式(4)を満足する。式(3)によれば、ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TRは0.15未満である。ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TRは0.12以下が好ましく、0.09以下がより好ましい。
【0039】
式(4)によれば、ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TRは0.10未満である。ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TRは0.08以下が好ましく、0.06以下がより好ましい。
【0040】
色素(A)は、好ましくは、(i-4)において、式(5)および式(6)を満足する。式(5)によれば、ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.10未満であり、0.08以下が好ましく、0.06以下がより好ましい。式(6)によれば、ABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCMは0.08未満であり、0.06以下が好ましく、0.04以下がより好ましい。
【0041】
色素(A)において、上記(i-1)~(i-3)を満足することで、色素(A)は、ジクロロメタン中においても透明樹脂中においても最大吸収波長が大きく、かつ可視光の透過率が高いシャープな分光特性を有すると言える。一般的には、最大吸収波長の大きい色素では会合の寄与もあり、ジクロロメタン中での可視光の高透過率とシャープな分光を透明樹脂中では再現しづらいことが知られている。色素(A)は、上記(i-1)~(i-3)を満足することで、最大吸収波長が大きくかつジクロロメタン中の可視光の透過率が高い吸光特性を有しながら、該吸光特性を透明樹脂中でも維持できるという特徴を示す。
【0042】
さらに、色素(A)は、(i-4)を満足することで、ジクロロメタン中の色素(A)の吸光特性を、光学フィルタで使用する際の透明樹脂中でより再現性よく維持できる。
【0043】
色素(A)は、(i-5)において、質量吸光係数が1000/(cm・質量%)以上である。質量吸光係数は1500/(cm・質量%)以上が好ましい。
【0044】
色素(A)としては、(i-1)~(i-3)の要件を満たす限り、分子構造は特に制限されない。具体的には、シアニン色素、クロコニウム色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、ジイモニウム色素およびジケトピロロピロール色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が挙げられ、可視光高透過性の観点からシアニン色素およびスクアリリウム色素が特に好ましい。
【0045】
色素(A)であるシアニン色素としては、下記式(ACi)~(ACiv)のいずれかで表されるシアニン色素が好ましい。
【0046】
【0047】
【0048】
ただし、式(ACi)~(ACiv)中の記号は以下のとおりである。
R101~R107、R121~R127、R141およびR151は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR112R113基、-NHSO2R114基、-NHCOR115基、-SR116基、-SO2R117基、-OSO2R118基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
【0049】
R102~R107およびR122~R127は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。式(ACi)については、特に、R105およびR106が連結して、骨格のベンゼン環の一部(C=C)と共に芳香環を形成した構造が好ましい。また、式(ACii)については、特に、R125およびR126が連結して、骨格のベンゼン環の一部(C=C)と共に芳香環を形成した構造が好ましい。
【0050】
R142とR143は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Dを形成していてもよい。R145とR144は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Eを形成していてもよい。ただし、芳香環Dと芳香環Eは両方が形成されることはない。
【0051】
R109~R111、R129~R131、R146~R148、およびR152~R154はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-NR112R113基、炭素数3~14のシクロアルキル基、または炭素数6~14のアリール基である。
【0052】
R109とR111、R129とR131、R146とR148、およびR152とR154は、互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。環を形成する場合、環に結合する水素原子は炭素数1~6のアルキル基に置換されていてもよく、環の構成原子の2つがメチレン基で架橋されていてもよい。
【0053】
R112~R118は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
各式に含まれる複数のR101~R107、R121~R127、R141~R145、R151、D、及びEは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
X-は一価のアニオンを示す。
【0054】
上記において、アルキル基およびアルコキシ基のアルキル基は直鎖であってもよく、分岐構造や飽和環構造を含んでもよい。アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0055】
X-としては、I-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、式(X1)、および(X2)で示されるアニオン等が挙げられ、好ましくは、BF4
-、PF6
-およびアニオン(X1)である。
【0056】
【0057】
色素(ACi)としては、下式(ACi1)で示される、式(ACi)におけるR109~R111が水素原子の化合物が、透明樹脂中での高い可視透過性維持の観点から好ましい。
【0058】
【0059】
式(ACi1)におけるR101~R107およびX-は好ましい態様を含めて上記式(ACi)~(ACiv)において説明したのと同様である。R101としては、透明樹脂や、透明基板上に吸収層を形成する際に用いる溶媒(以下、「ホスト溶媒」ともいう)への溶解性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数4~20のアルキル基であることがより好ましい。R102~R107は、それぞれ独立して、水素原子、-NR112R113基、-NHSO2R114基、-NHCOR115基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、もしくは員数が3~14の複素環基が好ましく、水素原子、もしくは炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。この場合の、R112~R115は、上記式(ACi)~(ACiv)において説明したのと同様にできる。
【0060】
色素(ACii)としては、下式(ACii1)で示される、式(ACii)におけるR129とR131が結合して6員環を形成した化合物、および下式(ACii2)で示される、式(ACii)におけるR129とR131が結合して5員環を形成した化合物が、透明樹脂中での高い可視透過性維持の観点から好ましい。
【0061】
【0062】
式(ACii1)、(ACii2)におけるR121~R127およびX-は好ましい態様を含めて上記式(ACi)~(ACiv)において説明したのと同様である。式(ACii1)において、R130aは、水素原子、フェニル基、またはメチル基であり、好ましくはフェニル基である。式(ACii2)において、R130bは、水素原子、フェニル基、メチル基、またはジフェニルアミノ基であり、好ましくはフェニル基またはジフェニルアミノ基である。
【0063】
R121としては、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数4~20のアルキル基であることがより好ましい。R122~R127は、それぞれ独立して、水素原子、ジメチルアミノ基、-NHSO2R114基、-NHCOR115基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、もしくは員数が3~14の複素環基が好ましく、水素原子もしくは炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。この場合の、R112~R115は、上記式(ACi)~(ACiv)において説明したのと同様にできる。
【0064】
色素(ACiii)として、具体的には、下式(ACiii1)で示される、式(ACiii)において芳香環Dおよび芳香環Eのいずれも有しない化合物、下式(ACiii2)で示される、式(ACiii)において芳香環Eのみを有する化合物、および下式(ACiii3)で示される、式(ACiii)において芳香環Dのみを有する化合物が挙げられる。
【0065】
【0066】
式(ACiii1)、(ACiii2)、(ACiii3)におけるR141、R146~R148およびX-は好ましい態様を含めて上記式(ACi)~(ACiv)において説明したのと同様である。R141としては、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、さらに、合成容易性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数2~5のアルキル基であることがより好ましい。R147は、水素原子、メチル基、またはフェニル基が好ましく、水素原子またはフェニル基がより好ましい。
【0067】
R146およびR148は、いずれも水素原子であるか、またはR146とR148が結合してこれらが結合する主鎖(メチン鎖)とともに5員環または6員環を形成しているのが好ましい。環を形成する場合、環に結合する水素原子は炭素数1~6のアルキル基に置換されていてもよく、環の構成原子の2つがメチレン基で架橋されていてもよい。R146とR148が結合して主鎖とともに6員環を形成した、後述の-(CH2)3-で示される構成がより好ましい。
【0068】
色素(ACiv)において、R151としては、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、さらに合成容易性の観点から、直鎖もしくは分岐構造を有する炭素数2~5のアルキル基であることがより好ましい。R153は、水素原子、メチル基、またはフェニル基が好ましく、水素原子またはフェニル基がより好ましい。
【0069】
R152およびR154は、いずれも水素原子であるか、またはR152とR154が結合してこれらが結合する主鎖(メチン鎖)とともに5員環または6員環を形成しているのが好ましい。環を形成する場合、環に結合する水素原子は炭素数1~6のアルキル基に置換されていてもよく、環の構成原子の2つがメチレン基で架橋されていてもよい。R152とR154が結合して主鎖とともに6員環を形成した、後述の-(CH2)3-で示される構成がより好ましい。
【0070】
式(ACi1)、式(ACii1)、式(ACii2)、式(ACiii1)、式(ACiii2)、式(ACiii3)、および式(ACiv)でそれぞれ示される化合物としては、より具体的には、それぞれ、各骨格に結合する原子または基が、以下の表1~7に示される化合物が挙げられる。表1に示す全ての化合物において、R101~R107は式の左右で全て同一である。表2、表3に示す全ての化合物において、R121~R127は式の左右で同一である。表4~6に示す全ての化合物において、R141は式の左右で同一である。表7に示す全ての化合物において、R151は式の左右で同一である。表1~7中、-CnH2n+1(nは3以上の整数)で示されるアルキル基は、直鎖のアルキル基を、-Phはフェニル基をそれぞれ示す。なお、表1~7には左右対称の化合物のみを列挙したが、本願発明はこれに限られず、左右非対称の化合物であってもよい。左右非対称の化合物は樹脂への溶解性が向上する利点を有する。
【0071】
表4~6においてR146とR148が結合してメチン鎖の3個の炭素原子(C-C=C)とともに6員環を形成した場合のR146とR148を-(CH2)3-と示す。他の環や、環の水素原子が置換されている場合についても、上記記載に準じて記載する。表7のR152とR154についても同様である。表4~表7において、R146とR148およびR152とR154の欄に記載した「NOR」は以下の2価の基を示す。
【0072】
【0073】
表1~表7には、X-を示さないが、いずれの化合物においてもX-はBF4
-、PF6
-またはアニオンX1である。色素(ACi1-1)においてX-が、BF4
-の場合を色素(ACi1-1B)、PF6
-の場合を色素(ACi1-1P)、アニオン(X1)の場合を色素(ACi1-1X1)と示す。表1~表7に示す他の色素においても同様である。
【0074】
【0075】
色素(ACi1)としては、これらの中でも、色素(ACi1-1B)、色素(ACi1-1P)、色素(ACi1-1X1)、色素(ACi1-2B)、色素(ACi1-2P)、色素(ACi1-14B)、色素(ACi1-15B)等が好ましい。
【0076】
【0077】
色素(ACii1)としては、これらの中でも、色素(ACii1-1B)、色素(ACii1-1P)、色素(ACii1-7B)、色素(ACii1-7P)等が好ましい。
【0078】
【0079】
色素(ACii2)としては、これらの中でも、色素(ACii2-1B)、色素(ACii2-1P)、色素(ACii2-2B)、色素(ACii2-2P)、色素(ACii2-11B)、色素(ACii2-11P)、色素(ACii2-12B)、色素(ACii2-12P)等が好ましい。
【0080】
【0081】
色素(ACiii1)としては、これらの中でも、色素(ACiii1-1B)、色素(ACiii1-1P)、色素(ACiii1-2B)、色素(ACiii1-2P)、色素(ACiii1-3B)、色素(ACiii1-3P)、色素(ACiii1-7B)、色素(ACiii1-7P)、色素(ACiii1-9B)、色素(ACiii1-9P)、色素(ACiii1-12B)、色素(ACiii1-12P)、色素(ACiii1-17B)、色素(ACiii1-17P)色素(ACiii1-19B)、色素(ACiii1-19P)等が好ましい。
【0082】
【0083】
色素(ACiii2)としては、これらの中でも、色素(ACiii2-1B)、色素(ACiii2-1P)、色素(ACiii2-2B)、色素(ACiii2-2P)、色素(ACiii2-3B)、色素(ACiii2-3P)、色素(ACiii2-7B)、色素(ACiii2-7P)、色素(ACiii2-9B)、色素(ACiii2-9P)、色素(ACiii2-12B)、色素(ACiii2-12P)、色素(ACiii2-17B)、色素(ACiii2-17P)色素(ACiii2-19B)、色素(ACiii2-19P)等が好ましい。
【0084】
【0085】
色素(ACiii3)としては、これらの中でも、色素(ACiii3-1B)、色素(ACiii3-1P)、色素(ACiii3-2B)、色素(ACiii3-2P)、色素(ACiii3-3B)、色素(ACiii3-3P)、色素(ACiii3-7B)、色素(ACiii3-7P)、色素(ACiii3-9B)、色素(ACiii3-9P)、色素(ACiii3-12B)、色素(ACiii3-12P)、色素(ACiii3-17B)、色素(ACiii3-17P)色素(ACiii3-19B)、色素(ACiii3-19P)等が好ましい。
【0086】
【0087】
色素(ACiv)としては、これらの中でも、色素(ACiv-1B)、色素(ACiv-1P)、色素(ACiv-2B)、色素(ACiv-2P)、色素(ACiv-3B)、色素(ACiv-3P)、色素(ACiv-7B)、色素(ACiv-7P)、色素(ACiv-9B)、色素(ACiv-9P)、色素(ACiv-12B)、色素(ACiv-12P)、色素(ACiv-17B)、色素(ACiv-17P)、色素(ACiv-19B)、色素(ACiv-19P)、色素(ACiv-26B)、色素(ACiv-26P)等が好ましい。
【0088】
なお、色素(ACi)、色素(ACii)および色素(ACiv)は、例えば、J. Heterocyclic Chem. , 42(2005), 959に記載された方法で製造可能である。色素(ACiii)はUKRAINSKII KHIMICHESKII ZHURNAL, 44(8), 838, (1978)に記載された方法で製造可能である。
【0089】
また、色素(ACi1-1B)、色素(ACi1-2B)、および色素(ACii2-2B)は、それぞれ、市販品であるFew Chemicals社製の商品名、S0772、S2437、およびS2007を使用できる。色素(ACiii1-9B)、色素(ACiii2-9B)および色素(ACiii3-9B)は、それぞれ、市販品であるSpectrum Info.社製の商品名、S1379、S1984、およびS1985を使用できる。
【0090】
色素(A)であるスクアリリウム色素としては、下記式(ASi)または(ASii)で表されるスクアリリウム色素が好ましい。
【0091】
【0092】
ただし、式(ASi)および(ASii)中の記号は以下のとおりである。
R161は、炭素数3~20の分岐アルキル基、または炭素数13~20の直鎖アルキル基である。R161は、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、炭素数8~20の分岐アルキル基が好ましく、炭素数16~20の直鎖アルキル基がより好ましい。R161は、透明樹脂中での高透過率維持の観点から炭素数8~20の分岐アルキル基がより好ましい。
【0093】
Y3はC-R179またはNである。
R162~R167およびR171~R179は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR112R113基、-NHSO2R114基、-NHCOR115基、-SR116基、-SO2R117基、-OSO2R118基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。
【0094】
員数が3~14の複素環基としては、ヘテロ原子として、N、OおよびSから選ばれる少なくとも1種を含む複素環基が挙げられる。R171は、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、炭素数8~20の直鎖アルキル基および炭素数8~20の分岐アルキル基が好ましい。R171は、透明樹脂中での高透過率維持の観点から炭素数16~20の分岐アルキル基がより好ましい。R162~R167およびR172~R178は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、-NHSO2R114基、または-NHCOR115基が好ましく、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、または-NHCOR115基がより好ましい。R179は、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。
各式に含まれる複数のR161~R167、R171~R178およびY3は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0095】
R112~R118は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0096】
R112~R118は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、炭素数1~16のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。
【0097】
上記において、特に断りのないアルキル基およびアルコキシ基のアルキル基は直鎖であってもよく、分岐構造や飽和環構造を含んでもよい。アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0098】
式(ASi)および式(ASii)でそれぞれ示される化合物としては、より具体的には、それぞれ、各骨格に結合する原子または基が、以下の表8、9に示される化合物が挙げられる。表8に示す全ての化合物において、R161~R167は式の左右で全て同一である。表9に示す全ての化合物において、R171~R178およびY3は式の左右で同一である。表8、9中、-C4H9等のアルキル基は全て直鎖のアルキル基である。なお、表8、9には左右対称の化合物のみを列挙したが、本願発明はこれに限られず、左右非対称の化合物であってもよい。左右非対称の化合物は樹脂への溶解性が向上する利点を有する。
【0099】
【0100】
色素(ASi)のとしては、色素(ASi-1)、色素(ASi-2)、色素(ASi-3)、色素(ASi-19)、色素(ASi-22)、色素(ASi-24)、色素(ASi-25)、色素(ASi-28)、色素(ASi-31)等が好ましく、色素(ASi-1)、色素(ASi-19)、色素(ASi-22)、色素(ASi-25)、色素(ASi-31)等がより好ましい。左右非対称の色素(ASi)として、左右の組合せがASi-19と、ASi-24、ASi-25、およびASi-28のいずれかの組合せである色素、ASi-22とASi-24およびASi-31のいずれかの組み合わせである色素、ASi-24とASi-25およびASi-28のいずれかの組み合わせである色素などが好ましい。
【0101】
【0102】
色素(ASii)としては、これらの中でも、色素(ASii-1)~色素(ASii-8)、色素(ASii-10)、色素(ASii-15)~色素(ASii-17)等が好ましく、色素(ASii-8)、色素(ASii-15)~色素(ASii-17)等がより好ましい。
【0103】
なお、色素(ASi)および色素(ASii)は、例えば、 European Journal of Medical Chemistry, 54 647, (2012)、さらに色素(ASii)については、Org. Lett. 18, 5232 (2016)に記載された方法でスクアリリウム環の両側に導入する化合物を製造し、該化合物を、例えば、Organic Letters, 8, 111, (2006)に記載された方法でスクアリン酸の対角線上の2箇所に導入することで製造可能である。
【0104】
吸収層は、色素(A)の1種を単独で含有してもよく、2種以上を組み合わせて含有してもよい。2種以上を含有する場合、各色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TRが異なることが好ましい。2種以上の色素(A)における最大吸収波長λmax(A)TRの差は、例えば、50~300nmの範囲が好ましく、50~150nmがより好ましい。なお、色素(A)が2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物が色素(A)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、色素(A)の性質を有すればよい。
【0105】
色素(A)の好ましい2種以上の組み合わせとしては、例えば、色素(A)のうち比較的短波長側に最大吸収波長を有する色素(A)を色素Sとし、比較的長波長側に最大吸収波長を有する色素(A)を色素Lとし、色素Sと色素Lの最大吸収波長の間に最大吸収波長を有する色素(A)を色素Mとして、色素S、色素Mおよび色素Lから2種以上を選択して組み合わせるのが好ましい。
【0106】
具体的には、色素Sと色素Mの組み合わせ、色素Sと色素Lの組み合わせ、色素Mと色素Lの組み合わせ、色素Sと色素Mと色素Lの組み合わせが挙げられる。なお、色素Sの最大吸収波長λmax(A)TRは、850~900nmの波長領域にあるのが好ましく、860~890nmの波長領域にあるのがより好ましい。色素Mの最大吸収波長λmax(A)TRは、900~1000nmの波長領域にあるのが好ましく、930~980nmの波長領域にあるのがより好ましい。色素Lの最大吸収波長λmax(A)TRは、1000~1100nmの波長領域にあるのが好ましく、1000~1050nmの波長領域にあるのがより好ましい。
【0107】
[色素(D)]
色素(D)は、(v-1)および(v-2)の要件を満たす、すなわち、最大吸収波長λmax(D)TRが650~750nmの波長領域にある、下式(I)~(III)のいずれかで示されるスクアリリウム色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素である。色素(D)は、さらに上記(v-3)の要件を満たすことが好ましい。
【0108】
上記スクアリリウム色素からなる色素(D)は、上記吸光度曲線において、可視光の吸収が少なく、λmax(D)TRの吸収ピークが可視光側で急峻な傾きを有するとともに、保存安定性および光に対する安定性が高い。
【0109】
また、色素(D)は、透明樹脂に含有させたときの質量吸光係数が、1000/(cm・質量%)以上が好ましく、1500/(cm・質量%)以上がより好ましい。
【0110】
【0111】
ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。
R24およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR27R28(R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29(R29は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基または、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基)、-NHR30、または、-SO2-R30(R30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R41、R42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0112】
【0113】
R21とR22、R22とR25、およびR21とR23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。
複素環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
【0114】
複素環Bが形成される場合のR22とR25、および複素環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-および-X2-Y2-(窒素に結合する側がX1およびX2)として、X1およびX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1およびY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X1およびX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1およびY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0115】
【0116】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR38R39(R38およびR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R31~R36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
【0117】
R27、R28、R29、R31~R37、複素環を形成していない場合のR21~R23、およびR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
複素環を形成していない場合の、R21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。複素環を形成していない場合の、R23およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0118】
【0119】
ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有し、かつ置換されていてもよい、5員環または6員環であり、
R1とR2、R2とR3、およびR1と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0120】
【0121】
ただし、式(III)中の記号は以下のとおりである。
R51は、それぞれ独立にハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、
R52~R58は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
R52とR53は、互いに連結して、炭素数5~15の飽和または不飽和の炭化水素環B2を形成していてもよく、炭化水素環B2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよく、
R54とR55は、互いに連結してベンゼン環A2を形成していてもよく、ベンゼン環A2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよい。
【0122】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-4)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0123】
【0124】
ただし、式(I-1)~式(I-4)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0125】
化合物(I-1)~(I-4)のうちでも、色素(A)としては、吸収層の可視光透過率を高くできる観点から化合物(I-1)~(I-3)が好ましく、化合物(I-1)が特に好ましい。
【0126】
化合物(I-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。この場合、R31~R36としては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。なお、-Y1-X1-として、具体的には、式(11-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
【0127】
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(11-3)
-C(CH3)2-C(CH3)(nC3H7)- …(11-4)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0128】
また、化合物(I-1)において、R21は、溶解性、耐熱性、さらに分光透過率曲線における可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、独立して、式(4-1)または(4-2)で示される基がより好ましい。
【0129】
【0130】
式(4-1)および式(4-2)中、R71~R75は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0131】
化合物(I-1)において、R24は-NR27R28が好ましい。-NR27R28としては、ホスト溶媒や透明樹脂への溶解性の観点から、-NH-C(=O)-R29が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-C(=O)-R29の化合物を式(I-11)に示す。
【0132】
【0133】
化合物(I-11)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0134】
化合物(I-11)において、R29としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基、または置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基が好ましい。置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0135】
R29としては、フッ素原子で置換されてもよい直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基、および炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18の、末端に炭素数1~6のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基を有するアルアリール基から選ばれる基が好ましい。
【0136】
R29としては、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5~25の炭化水素基である基も好ましく使用できる。このようなR29としては、例えば、下記式(1a)、(1b)、(2a)~(2e)、(3a)~(3e)で示される基が挙げられる。
【0137】
【0138】
【0139】
化合物(I-11)としては、より具体的に、以下の表10に示す化合物が挙げられる。なお、表10において、基(11-1)を(11-1)と示す。他の基についても同様である。以下の他の表においても基の表示は同様である。また、表10に示す化合物は、いずれもスクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。以下の他の表に示すスクアリリウム色素においても同様である。
【0140】
【0141】
化合物(I-1)において、R24は、可視光の透過率、特に波長430~550nmの光の透過率を高める観点から、-NH-SO2-R30が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-SO2-R30の化合物を式(I-12)に示す。
【0142】
【0143】
化合物(I-12)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0144】
化合物(I-12)において、R30は耐光性の点から、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基、または不飽和の環構造を有する炭素数6~16の炭化水素基が好ましい。不飽和の環構造としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フラン、ベンゾフラン等が挙げられる。R30は、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基がより好ましい。なお、R30を示す各基において、水素原子の一部または全部がハロゲン原子、特にはフッ素原子に置換されていてもよい。なお、本フィルタが透明基板を含む構成の場合、水素原子のフッ素原子へ置換は、色素(I-12)を含有する吸収層と透明基板との密着性が落ちない程度とする。
【0145】
不飽和の環構造を有するR30として具体的には、下記式(P1)~(P8)で示される基が挙げられる。
【0146】
【0147】
化合物(I-12)としては、より具体的に、以下の表11に示す化合物が挙げられる。
【0148】
【0149】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0150】
【0151】
ただし、式(II-1)、式(II-2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R3~R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0152】
ただし、式(II-3)中、R1、R4、およびR9~R12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を示す。
【0153】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR1およびR2は、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数7~15のアルキル基がより好ましく、R1とR2の少なくとも一方が、炭素数7~15の分岐鎖を有するアルキル基がさらに好ましく、R1とR2の両方が炭素数8~15の分岐鎖を有するアルキル基が特に好ましい。
【0154】
R3は、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。R4は、可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、またはハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。化合物(II-1)におけるR5および化合物(II-2)におけるR6は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。
【0155】
化合物(II-1)および化合物(II-2)としては、より具体的に、それぞれ以下の表12および表13に示す化合物が挙げられる。表12および表13において、-C8H17、-C4H9、-C6H13は、直鎖のオクチル基、ブチル基、ヘキシル基をそれぞれ示す。
【0156】
【0157】
【0158】
化合物(II-3)におけるR1は、透明樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、エチル基、またはイソプロピル基が特に好ましい。
【0159】
R4は、可視光透過性、合成容易性の観点から、水素原子、またはハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。R7およびR8は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。
【0160】
R9~R12は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。-CR9R10-CR11R12-として、上記基(11-1)~(11-3)または、以下の式(11-5)で示される2価の有機基が挙げられる。
-C(CH3)(CH2-CH(CH3)2)-CH(CH3)-…(11-5)
【0161】
化合物(II-3)としては、より具体的に、以下の表14に示す化合物が挙げられる。
【0162】
【0163】
化合物(III)としては、例えば、式(III-1)または式(III-2)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0164】
【0165】
ただし、(III-1)、(III-2)中、R52~R62は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0166】
化合物(III-1)、化合物(III-2)中、R52、R53は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、またはメチル基がより好ましい。R58は、水素原子、ハロゲン原子、またはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、合成容易性の観点から、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。R56、R57、R59~R62は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~6のアルキル基が好ましく、合成容易性の観点から、水素原子がより好ましい。化合物(III-1)、化合物(III-2)としては、より具体的に、以下の表15、表16にそれぞれ示す化合物が挙げられる。
【0167】
【0168】
【0169】
色素(D)は、1種の化合物からなってもよく、2種以上の化合物からなってもよい。2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物が色素(D)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、色素(D)の性質を有すればよい。
【0170】
化合物(I)~(III)は、それぞれ公知の方法で、製造できる。化合物(I)について、化合物(I-11)は、例えば、米国特許第5,543,086号明細書に記載された方法で製造できる。化合物(I-12)は、例えば、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号明細書に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号明細書に記載された方法で製造可能である。
【0171】
UV色素は、具体例に、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、またはメロシアニン系の色素が好ましい。また、UV色素は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0172】
透明樹脂は、色素(A)との関係において(i-3)を満足する、好ましくはさらに(i-4)を満足する透明樹脂が用いられる。
【0173】
透明樹脂は、色素(A)の種類に応じて、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂等から選ばれる1種以上が使用される。
【0174】
透明樹脂は、主鎖にエステル結合、カーボネート結合およびイミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を有する樹脂を含むことが好ましい。主鎖にこれらの結合を有する透明樹脂は、色素を混ぜた際の可視高透過率の維持と樹脂自体の耐熱性が優れている点で優位である。
【0175】
透明樹脂は、これらのなかでも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびアクリルイミド樹脂が好ましい。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。色素(A)が色素(ACi)~色素(ACiv)、色素(ASi)または色素(ASii)である場合、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびアクリルイミド樹脂が好ましい。
【0176】
透明樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、ポリエステル樹脂として、OKP4HT、OKP4、B-OKP2、OKP-850(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製、商品名)、バイロン(登録商標)103(東洋紡(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0177】
ポリカーボネート樹脂として、LeXan(登録商標)ML9103(sabic社製、商品名)、EP5000(三菱ガス化学(株)製、商品名)、SP3810(帝人(株)製、商品名)、SP1516(帝人(株)製、商品名)、TS2020(帝人(株)製、商品名)、xylex(登録商標)7507(sabic社製、商品名)等が挙げられる。
【0178】
ポリイミド樹脂として、ネオプリム(登録商標)C-3650(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、JL-20(新日本理化製、商品名)、FPC-0220(三菱ガス化学(株)製、商品名)(これらのポリイミド樹脂には、シリカが含まれていてもよい)等が挙げられる。アクリルイミド樹脂として、PLEXIMID8817(ダイセルエボニック社製、商品名)等が挙げられる。
【0179】
透明樹脂は、透明性、および色素(A)、さらには色素(D)の溶解性、ならびに耐熱性の観点からは、ガラス転移点(Tg)が高い、例えば、Tgが140℃以上の樹脂が好ましい。
【0180】
吸収層は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を有してもよい。
【0181】
吸収層は、(i-1)~(i-3)の特性を有する色素(A)と透明樹脂を含有し、さらに色素(D)を含有する場合、入射角0度の分光透過率曲線において以下の(ii-1)~(ii-3)を満たすことが好ましい。
【0182】
(ii-1)吸収層は、透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λABSHT20-0°が655~675nmの波長領域にある。
(ii-2)吸収層は、波長435~630nmの光の平均透過率TAB435-630ave0°が65%以上である。
(ii-3)吸収層は、波長850~1100nmの光の平均透過率TAB850-1100ave0°が70%以下である。
【0183】
(ii-1)における波長λABSHT20-0°は、655~670nmの波長領域にあるのが好ましく、655~665nmの波長領域にあるのがより好ましい。なお、例えば、本フィルタが透明基板を有し、該透明基板が近赤外線吸収ガラスである場合には、近赤外線吸収ガラスの吸収に合わせて、波長λABSHT20-0°は、上記好ましい範囲から+5~20nm程度に調整される。すなわち、この場合の波長λABSHT20-0°は、660~675nmの波長領域にあるのが好ましく、665~675nmの波長領域にあるのがより好ましい。
【0184】
(ii-2)における平均透過率TAB435-630ave0°は、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。(ii-3)における平均透過率TAB850-1100ave0°は、60%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。
【0185】
吸収層において色素(A)の含有量は、本フィルタの設計に応じて本フィルタの効果を発揮できるように適宜設定される。吸収層において色素(A)の含有量は、可視光の透過率を確保しつつ、近赤外光、特に、長波長域の近赤外光を遮光する観点から、透明樹脂100質量部に対して1~15質量部が好ましく、溶解性の観点から1~8質量部がより好ましい。
【0186】
色素(A)において、色素S、色素Mおよび色素Lから選ばれる2種以上を用いる場合、各色素の含有量は、色素(A)全体の合計含有量を上記範囲とした上で、透明樹脂100質量部に対して1~15質量部が好ましく、溶解性の観点から2~13質量部がより好ましい。
【0187】
吸収層が色素(A)と色素(D)を含有する場合、その含有量は、それぞれ、本フィルタの設計に応じて、吸収層が(ii-1)~(ii-3)の特性を満足するように適宜選択される。
【0188】
この場合、吸収層における色素(A)の含有量は上記と同様であり、色素(D)の含有量は、可視光の透過率を確保しつつ、色素(D)の特性を発揮できる観点から、透明樹脂100質量部に対して1~15質量部が好ましく、溶解性の観点から3~14質量部がより好ましい。さらに色素(A)と色素(D)の合計含有量は、透明樹脂100質量部に対して2~30質量部が好ましく、溶解性の観点から5~27質量部がより好ましい。
【0189】
本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい。
【0190】
吸収層は、例えば、色素(A)と、好ましくは色素(A)および色素(D)と、透明樹脂または透明樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに含まれる透明基板でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0191】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が透明樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0192】
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、本フィルタが透明基板を含む場合、このフィルムを透明基板上に貼着してもよい。
【0193】
吸収層は、本フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。吸収層が色素(A)、色素(D)およびUV色素を含む場合を例とすれば、一方の層を、色素(A)および色素(D)と透明樹脂を含む近赤外吸収層とし、もう一方の層を、UV色素と透明樹脂を含む近紫外吸収層としてもよい。他の例として、一方の層を色素(D)と透明樹脂を含む第1の近赤外吸収層とし、もう一方の層を、色素(A)とUV色素と透明樹脂を含む第2の近赤外吸収層としてもよい。また、吸収層は、それ自体が基板(樹脂基板)として機能するものでもよい。
【0194】
(透明基板)
本フィルタに透明基板を用いる場合、透明基板は、略400~700nmの可視光を透過すれば、構成する材料は特に制限されず、近赤外光や近紫外光を吸収する材料でもよい。例えば、ガラスや結晶等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0195】
透明基板に使用できるガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
【0196】
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
【0197】
透明基板として使用できる透明樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0198】
また、透明基板に使用できる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の複屈折性結晶が挙げられる。透明基板の光学特性は、上記吸収層、反射層等と積層して得られる光学フィルタとして、前述した光学特性を有するとよい。結晶材料としてはサファイアが好ましい。
【0199】
透明基板は、光学フィルタとしての光学特性、機械特性等の長期にわたる信頼性に係る形状安定性の観点、フィルタ製造時のハンドリング性等から、無機材料が好ましく、特にガラス、およびサファイアが好ましい。
【0200】
透明基板の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、またはフィルム状でもよく、その厚さは、例えば、0.03~5mmが好ましく、薄型化の観点からは、0.03~0.5mmがより好ましい。加工性の観点から言えば、ガラスからなる板厚0.05~0.5mmの透明基板が好ましい。
【0201】
(反射層)
反射層は、誘電体多層膜からなり、特定の波長域の光を遮蔽する機能を有する。反射層としては、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するものが挙げられる。反射層は、近赤外光を反射する反射領域を有することが好ましい。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。反射層は、上記特性に限らず、所定の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
【0202】
反射層が近赤外光を反射する反射領域を有する場合、反射層は具体的には、以下の(iii-1)を満足することが好ましい。
(iii-1)反射層は、入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率TRE850-1100ave0°が0.2%以下である。
平均透過率TRE850-1100ave0°は0.15%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましい。
【0203】
反射層が近赤外光を反射する反射領域を有する場合、吸収層と反射層は以下の関係を有することが好ましい。
【0204】
吸収層において入射角0度の光に対して透過率が20%を示す短波長側の波長λABSHT20-0°と、反射層において入射角0度の光に対して透過率が20%を示す短波長側の波長λRESHT20-0°との関係が(iii-2)を満足することが好ましい。
(iii-2)λABSHT20-0°+30nm≦λRESHT20-0°≦790nm
【0205】
反射層は、さらに(iii-3)を満足することが好ましい。
(iii-3)反射層は、λRESHT20-0°からλRESHT20-0°+300nmまでの波長領域の光における平均透過率が10%以下である。
【0206】
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa2O5、TiO2、Nb2O5が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiO2が好ましい。
【0207】
一方、低屈折率膜は、好ましくは、屈折率1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO2、SiOxNy等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiO2が好ましい。
【0208】
さらに、反射層は、透過域と遮光域の境界波長領域で透過率が急峻に変化することが好ましい。この目的のためには、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数は、15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。また、誘電体多層膜の膜厚は、2~10μmが好ましい。
【0209】
誘電体多層膜の合計積層数や膜厚が上記範囲内であれば、反射層は小型化の要件を満たし、高い生産性を維持しながら入射角依存性を抑制できる。また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0210】
反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数の反射層で構成される。
【0211】
例として、2層の反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯および近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。また、例えば、本フィルタが透明基板を有する場合に、2層以上の反射層を設ける際には、全てを透明基板の一方の主面上に設けてもよく、各反射層を、透明基板を挟んでその両主面上に設けてもよい。
【0212】
(反射防止層)
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体膜を交互に積層して得られる。
【0213】
本フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium TIN Oxides)、ATO(Antimony―doped TIN Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
【0214】
本フィルタは、反射層と、色素(A)を含有する吸収層を有することで、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。
【0215】
本フィルタは、吸収層が色素(A)を含有したときに、以下の(iv-2)~(iv-5)を満足することが好ましい。
(iv-2)本フィルタは、入射角0度において波長850~1100nmの光の平均透過率T850-1100ave0°が0.2%以下である。好ましくは0.15%以下、より好ましくは、0.10%以下である。
(iv-3)本フィルタは、入射角0度において波長435~630nmの光の平均透過率T435-630ave0°が65%以上である。好ましくは70%以上、より好ましくは、75%以上である。
【0216】
(iv-4)本フィルタは、入射角30度において波長850~1100nmの光の平均透過率T850-1100ave30°が2%以下である。好ましくは1%以下、より好ましくは、0.05%以下である。
(iv-5)本フィルタは、入射角30度において波長850~1100nmの光の最大透過率T850-1100max30°が5%以下である。好ましくは3%以下、より好ましくは、2%以下である。
【0217】
本フィルタは、吸収層がさらに色素(D)を含有する場合、以下の(iv-1)の光学特性を満足することが好ましい。
(iv-1)本フィルタは、波長615~725nmにおいて、入射角0度および入射角30度の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値が2%/nm以下である。好ましくは1.5%/nm以下、より好ましくは、1.0%/nm以下である。
【0218】
本フィルタは、可視光の透過性が良好であり、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。本フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置とレーザ光を用いる光学部品をともに有する機器において、撮像装置用の光学フィルタの用途に有用である。本フィルタを用いた撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本フィルタとを備える。本フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【実施例】
【0219】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。まず、実施例の吸収層に用いる色素(A)および色素(D)の合成例および特性を説明する。次いで、光学フィルタの実施例について説明する。
【0220】
[試験例1~54:色素の合成、評価および吸収層の作製、評価]
(色素の合成、評価)
実施例用の色素(A)のうち、色素(ACi1-1B)、色素(ACi1-2B)、色素(ACii2-2B)、色素(ACiii2-9B)および色素(ACiii3-9B)については、それぞれ、市販品であるFew Chemicals社製の商品名、S0772、S2437およびS2007、およびSpectrum info社製の商品名S1984およびS1985を準備した。
【0221】
また、色素(A)として、色素(ACii1-1P)、色素(ACii1-1B)、色素(ACii2-1P)、色素(ACii2-1B)、色素(ACiii1-2P)、色素(ACiii2-2P)、色素(ACiv-2P)、色素(ACiv-26P)、色素(ASi-1)、色素(ASi-2)および色素(ASii-2)を、以下の方法で合成した。
【0222】
さらに、色素(D)として、色素(I-12-24)を常法により合成した。
また、比較例用の色素として、TXEX910B(日本触媒社製、フタロシアニン色素)、特開2014-25016号明細書に記載の方法で合成した、以下の式に示すDim01(ジイモニウム色素)を準備した。なお、これらの色素の光学特性の評価には、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、U-4150形)を用い、以下の光学特性(分光透過率曲線)の評価にも同様に、U-4150を用いた。
【0223】
【0224】
(1)色素(ACii1-1P)の製造
以下に示す反応経路にしたがい、色素(ACii1-1P)を合成した。
【0225】
【0226】
<ステップ1>
1Lナスフラスコにベンゾ[cd]インドール-2(1H)-オン(16g、94mmol)とヨウ化カリウム(4g、24mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(2g、16mmol)を入れ、スルホラン(250mL)に溶解させて、70℃で2時間撹拌させた。上記懸濁液に1-ブロモブタン(35g、255mmol)、水酸化カリウム(15g、260mmol)を添加し、70℃で19時間撹拌させた。反応終了後、ヘキサン:酢酸エチル=4:1を混合した有機溶媒で抽出作業を行い、溶媒を除去した後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)にて黄色の油状物質を生成物(1)(20.3g、収率96%)として単離した。
【0227】
<ステップ2>
300mLナスフラスコにステップ1で得られた生成物(1)(5g、22mmol)を入れ、50mLのテトラヒドロフランに溶解させた。窒素雰囲気化、0℃にて100mLの1M臭化メチルマグネシウムを滴下し、室温に昇温した後、12時間撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて原料が消失していることを確認した後、反応液を氷水200mLを入れたビーカーにゆっくり注いだ後、60%ヘキサフルオロリン酸水溶液を50g添加し、室温にて1時間撹拌した。ジクロロメタンで抽出した後、無水硫酸マグネシウムにて水溶媒を除去し、有機溶媒を除去した。その後、ジクロロメタンに少量溶解させ、酢酸エチルを用いて再沈作業を行い、黄緑色固体を生成物(2)(6.85g、収率86%)として得た。
【0228】
<ステップ3>
300mLナスフラスコにステップ2で得られた生成物(2)(3g、8.3mmol)と、J. Heterocyclic Chem., 42, 959, (2005)を参考に合成したシアニン中間体1(1.59g、4mmol)を入れ、ピリジン90mLに溶解させ、150℃で3時間撹拌させた。反応終了後、トルエンで共沸させながらピリジンを除去し、得られた固体をヘキサンで洗浄した。その後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1)にて単離し、溶媒除去し、ジクロロメタンに少量溶解させ、ヘキサンを用いて再沈作業を複数回行い、黒色の固体(1.0g、収率34%)として、色素(ACii1-1P)を得た。
【0229】
(2)色素(ACii1-1B)の製造
色素(ACii1-1P)の製造において、ステップ2で60%ヘキサフルオロリン酸水溶液の代わりに、42%テトラフルオロホウ酸水溶液を用いたこと以外は、色素(ACii1-1P)と同様にして色素(ACii1-1B)を得た。
【0230】
(3)色素(ACii2-1P)の製造
色素(ACii1-1P)の製造において、ステップ3でシアニン中間体1の代わりにシアニン中間体2を用いたこと以外は色素(ACii1-1P)と同様にして、以下に示す反応経路にしたがい、色素(ACii2-1P)を得た。
【0231】
【0232】
(4)色素(ACii2-1B)の製造
色素(ACii1-1B)の製造において、ステップ3でシアニン中間体1の代わりにシアニン中間体2を用いたこと以外は色素(ACii1-1B)と同様な方法で色素(ACii2-1B)を得た。
【0233】
(5)色素(ACiii1-2P)の製造
以下に示す反応経路にしたがい、色素(ACiii1-2P)を合成した。
【0234】
【0235】
<ステップ1(塩化)>
1Lナスフラスコに2,3,3-トリメチルインドリン(50g、314mmol)とヨードエタン(100g、993mmol)を加え、95℃で48時間撹拌した。得られたピンク色の固体をテトラヒドロフラン溶液で洗浄し、固体の生成物(3)(70g、収率70%)を得た。
【0236】
<ステップ2(塩交換)>
1Lナスフラスコにステップ1で得られた生成物(3)(20g、64mmol)とメタノール(100mL)、アセトン(100mL)を入れ、80℃で撹拌した。別に用意した500mLのナスフラスコにヘキサフルオロリン酸カリウム(16g、87mmol)、水(100mL)、アセトン(100mL)入れ、ヘキサフルオロリン酸カリウムが溶解するまで室温で2時間程度撹拌した。溶解したヘキサフルオロリン酸カリウム溶液を生成物(3)が入ったナスフラスコに注ぎいれ、80℃で14時間撹拌した。TLCで原料が消失したことを確認した後、メタノール、アセトンの溶媒を除去し、ジクロロメタンで抽出を行った。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1000:40)にて単離し、溶媒除去し、ヘキサン洗浄後、白色固体の生成物(4)(21g、収率96%)を得た。
【0237】
<ステップ3>
Chem. A European Journal, 22(4), 1266, (2016)およびJ. Org. Chem., 70(21), 8575, (2005)、UKRAINSKII KHIMICHESKII ZHURNAL, 44(8), 838, (1978)を参考にしてシアニン中間体3(11g、5ステップ13%)を得た。
【0238】
<ステップ4>
300mLナスフラスコにステップ2で得られた生成物(4)(5.12g、15mmol)とステップ3で得られたシアニン中間体3(3g、7mmol)を加え、ピリジン160mLに溶解させて、140℃で1時間撹拌させた。反応終了後、トルエンで共沸させながらピリジンを除去した。その後、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1)にて単離し、溶媒除去し、ジクロロメタンに少量溶解させ、ヘキサンを用いて再沈作業を複数回行い、赤褐色固体(0.18g、収率4%)として色素(ACiii1-2P)を得た。
【0239】
(6)色素(ACiii2-2P)の製造
色素(ACiii1-2P)の製造において、原料を2,3,3-トリメチルインドリンの代わりに、2,3,3-トリメチル-4,5-ベンゾ-3H-インドールを用いたこと以外、色素(ACiii1-2P)の合成方法と同様にして、色素(ACiii2-2P)を得た。
【0240】
(7)色素(ACiv-2P)の製造
以下に示す反応経路にしたがい、色素(ACiv-2P)を合成した。
【0241】
【0242】
<ステップ1>
1Lナスフラスコにレピジン(53g、370mmol)とヨードエタン(100g、641mmol)を加え、50℃で15時間撹拌した。得られた固体をヘキサンで洗浄し、固体の生成物(5)(100g、収率90%)を得た。
【0243】
<ステップ2>
1Lナスフラスコにステップ1で得られた生成物(5)(20g、66.8mmol)とメタノール(100mL)、アセトン(100mL)を入れ、80℃で撹拌した。別に用意した500mLのナスフラスコにヘキサフルオロリン酸カリウム(16g、87mmol)、水(100mL)、アセトン(100mL)入れ、ヘキサフルオロリン酸カリウムが溶解するまで室温で2時間程度撹拌した。溶解したヘキサフルオロリン酸カリウム溶液を生成物(5)が入ったナスフラスコに注ぎいれ、80℃で14時間撹拌した。TLCで原料が消失したことを確認した後、メタノール、アセトンの溶媒を除去し、ジクロロメタンで抽出を行った。フラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1000:40)にて単離し、溶媒除去し、ヘキサン洗浄後、白色固体の生成物(6)(20g、収率94%)を得た。
【0244】
<ステップ3>
ステップ2で得られた生成物(6)を用いて、色素(ACii1-1P)の合成方法に記載したステップ3と同様にして色素(ACiv-2P)を得た。
【0245】
(8)色素(ACiv-26P)の製造
色素(ACiv-2P)の製造において、シアニン中間体1の代わりに、シアニン中間体2を用いたこと以外は、色素(ACiv-2P)の合成方法と同様にして色素(ACiv-26P)を得た。
【0246】
(9)色素(ASi-1)の製造
以下に示す反応経路にしたがい、色素(ASi-1)を合成した。すなわち、European Journal of Medical Chemistry, 54, 647, (2012)を参考にして作製した生成物(10)(6.5mmol)とスクアリン酸(3.4mmol)を500mLナスフラスコにいれ、トルエン(330mL)と1-ブタノール(110mL)に溶解させ、キノリン(8mmol)添加し、150℃で4時間撹拌させた。なお、生成物(10)は、2-メチル-ベンゾ[c,d]インドールの1位の水素がRに置換された化合物のヨウ素塩であり、Rは-CH2-CH(C2H5)(C4H9)である。
【0247】
反応終了後、溶媒を除去し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)にて単離し、溶媒除去し、ヘキサン洗浄後、赤褐色固体である色素(ASi-1)(0.5g、収率25%)を得た。
【0248】
【0249】
(10)色素(ASi-2)の製造
色素(ASi-1)の製造において、生成物(10)を、生成物(10)中のRが-CH2-CH(C8H17)(C6H13)に置き換わったベンゾ[c,d]インドール化合物のヨウ素塩に変更した以外は、色素(ASi-1)の合成方法と同様にして色素(ASi-2)を得た。
【0250】
(11)色素(ASii-2)の製造
以下に示す反応経路にしたがい、色素(ASii-2)を合成した。
【0251】
【0252】
<ステップ1>
1Lナスフラスコに5-メチルイサチン(25g、155mmol)と1-ブタノール(180mL)を入れ、0℃でヒドラジン1水和物(9.3g、186mmol)を滴下した。その後35℃で30分撹拌後、80℃に昇温し、4時間撹拌した。さらにトリエチルアミン(15.7g、155mmol)を緩やかに添加し、100℃で11時間撹拌した。pH6程度になるまで濃硫酸を加え、室温まで冷却し、溶媒除去後、抽出作業を行い、得られた固体をヘキサンで洗浄し、茶褐色の固体である生成物(7)(22g、収率96%)を得た。
【0253】
<ステップ2>
Org. Lett., 18, 5232, (2016)を参考にして、1Lの3つ口フラスコにステップ1で得られた生成物(7)(22g、149mmol)と2-ブロモベンズアルデヒド(16g、90mmol)、炭酸セシウム(86g、26mmol)、ジメチルスルホキシド(700mL)を入れ、真空脱気、窒素置換を複数回行った後、120℃で7時間撹拌し、その後室温まで冷却した。その後、抽出作業を行い、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:8)にて単離し、溶媒除去後、黄色固体の生成物(8)(8g、収率38%)を得た。
【0254】
<ステップ3>
ステップ2で得られた生成物(8)から、European Journal of Medical Chemistry, 54, 647, (2012)に記載の方法を参考にして、生成物(9)を得た。なお、生成物(9)におけるRは、-CH2-CH(C8H17)(C6H13)である。色素(ASi-2)の製造において、1-ドデシル-2-メチル-ベンゾ[c,d]インドールのヨウ素塩を生成物(9)に変更した以外は、色素(ASi-2)の合成方法と同様にして色素(ASii-2)を得た。
【0255】
上記各色素をジクロロメタンに溶解して波長350~1200nmの光吸収スペクトルを測定して吸光度曲線から、最大吸収波長λmax(A)DCMを求めた。さらに、ジクロロメタン中の色素濃度を、最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率が10%になるように調整した吸光度曲線から、ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCMおよびABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCMを求めた。結果を表17に示す。表中、「DCM中ABS400/λmax」は、ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCMを示し、「DCM中ABS550/λmax」はABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCMを示す。また、「ASi-xx/ASi-yy」は、上記式(ASi)において、左側のR161~R167が色素略号ASi-xxの化合物と同一であり、右側のR161~R167が色素略号ASi-yyの化合物と同一である化合物を意味する。
【0256】
【0257】
(吸収層の作製)
上記で得られた色素と透明樹脂を用いて吸収層を作製し光学特性を評価した。試験例1~12、15~24、27~34、37~44が本フィルタに係る試験例であり、試験例13、14、25、26、35、36、45~54が比較試験例である。透明樹脂として、以下の市販品を用いた。
【0258】
<透明樹脂>
透明樹脂(R1);ネオプリム(登録商標)C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名、ポリイミド樹脂)
透明樹脂(R2);OKP-850(大阪ガスケミカル(株)製、商品名、ポリエステル樹脂)
透明樹脂(R3);SP3810(帝人(株)製、商品名、ポリカーボネート樹脂)
透明樹脂(R4);PLEXIMID8817(ダイセルエボニック社製、商品名、アクリルイミド樹脂)
比較例用透明樹脂(Rcf);BR1122(三菱レイヨン(株)製、商品名、アクリル樹脂)
【0259】
色素と、透明樹脂(R1)、シクロヘキサノンを十分に撹拌し、均一に溶解した。得られた溶液をガラス板(D263;SCHOTT製、商品名)上に塗布し、乾燥して膜厚1μmの吸収層を得た。色素の添加量(色素濃度)は、膜厚1μmにおいて最大吸収波長λmax(A)TRでの光の透過率が10%になるように調整した。波長350~1200nmの吸収層付きガラス板の吸光度曲線とガラス板の吸光度曲線を用いて、吸収層の吸光度曲線を得た。
【0260】
吸収層の吸光度曲線から最大吸収波長λmax(A)TR、ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR(表中、「樹脂中ABS400/λmax」)およびABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR(表中、「樹脂中ABS550/λmax」)を求めた。また、ABS400(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS400(A)DCM/ABSλmax(A)DCM(表中、「ABS400/λmaxの差」)、およびABS550(A)TR/ABSλmax(A)TR-ABS550(A)DCM/ABSλmax(A)DCM(表中、「ABS550/λmaxの差」)を求めた。さらに、質量吸光係数/(cm・質量%)を求めた。結果を表18に示す。表中の色素濃度は、膜厚1μmで、上記λmax(A)TRでの光の透過率が10%になるように調整した際の、透明樹脂(R1)100質量部に対する質量部である。
【0261】
【0262】
上記において透明樹脂(R1)を透明樹脂(R2)~透明樹脂(R4)、または比較例用透明樹脂(Rcf)に代えて同様の評価を行った。結果を透明樹脂(R2)については表19に、透明樹脂(R3)については表20に、透明樹脂(R4)については表21に、比較例用透明樹脂(Rcf)については表22に示す。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
表18~表22から色素(ACi)~(ACiv)、色素(ASi)または色素(ASii)と、これらと組み合わせて好適な透明樹脂を用いれば、(i-1)~(i-3)の要件を満たすことが明らかである。さらには、これらのうちでも好ましい組み合わせにおいて、(i-4)の要件を満たすことが明らかである。
【0268】
[例1~12:光学フィルタの製造・評価]
(光学フィルタの製造)
図6に示す光学フィルタ10Fと同様の構成の光学フィルタを以下の方法で製造した。
【0269】
各例において、透明基板として、表23、24で示すとおり、CuO含有フツリン酸ガラス(旭硝子社製、商品名:NF-50GX)からなる厚さ0.21mmのガラス基板または、厚さ0.2mmのガラス基板(D263;SCHOTT製、商品名)を用いた。
【0270】
反射層としては、各例において以下のとおり形成した誘電体多層膜を用いた。誘電体多層膜は、ガラス基板の一方の主面に、蒸着法により、TiO2膜とSiO2膜を交互に合計42層積層して形成した。反射層の構成は、誘電体多層膜の積層数、TiO2膜の膜厚およびSiO2膜の膜厚をパラメータとしてシミュレーションし、入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.03%となる設計とした。
【0271】
また、ガラス基板の反射層が形成されたのと反対側の主面上に、表23および表24に示す透明樹脂と、色素(A)の1種類または2種類(表中第1の色素(A)および第2の色素(A))と、色素(D)(色素(I-12-24))を組み合わせて、厚さ約1.0μmの吸収層を形成した。なお、表23、24中の色素含有量は、透明樹脂100質量部に対する色素の質量部である。
【0272】
この後、吸収層の表面に、蒸着法により、TiO2膜とSiO2膜を交互に7層積層して反射防止層を形成し、例1~12の光学フィルタ(NIRフィルタ)を得た。例1~11が実施例であり、例12が比較例である。
【0273】
(評価)
得られた例1~例12の光学フィルタの吸収層について入射角0度の分光透過率曲線を求めた。表23、24に、該分光透過率曲線から得られた、透過率が20%を示す波長の短波長側の波長λABSHT20-0°、波長435~630nmの光の平均透過率TAB435-630ave0°および、波長850~1100nmの光の平均透過率TAB850-1100ave0°を示す。
【0274】
また、得られた例1~例12の光学フィルタについて入射角0度と30度の分光透過率曲線を求めた。表23、24に、該分光透過率曲線から得られた、波長615~725nmにおいて、入射角0度および入射角30度の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値(表中、「波長615~725nmの差分」)を示す。また、入射角0度における波長850~1100nmの光の平均透過率T850-1100ave0°、波長435~630nmの光の平均透過率T435-630ave0°、入射角30度における波長850~1100nmの光の平均透過率T850-1100ave30°、波長850~1100nmの光の最大透過率T850-1100max30°を示す。
【0275】
【0276】
【0277】
表23、24から、例1~11の光学フィルタは、吸収層が(ii-1)~(ii-3)を満足し、光学フィルタが、(iv-1)~(iv-5)を満足することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0278】
本発明の光学フィルタは、可視光の透過性が良好であり、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。したがって、撮像装置とレーザ光を用いる光学部品をともに有する機器における撮像装置用の光学フィルタの用途に有用である。
【0279】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2018年2月5日出願の日本特許出願2018-018608に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0280】
10A,10B,10C,10D,10E,10F…光学フィルタ、11,11a,11b…吸収層、12,12a,12b…反射層、13…透明基板、14…反射防止層。