IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 古河電気工業株式会社の特許一覧 ▶ 古河AS株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図1
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図2
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図3
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図4
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図5
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図6
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図7
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図8
  • 特許-レーダ装置およびレーダ装置の補正方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】レーダ装置およびレーダ装置の補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20230208BHJP
【FI】
G01S7/40 130
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018070137
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019179011
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】北村 智和
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057334(JP,A)
【文献】特開2010-210483(JP,A)
【文献】特開2000-258527(JP,A)
【文献】米国特許第05964822(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 -13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、物標を検出するレーダ装置において、
前記物標に対して信号を送信し、反射信号に基づいて前記物標の方位角を検出する検出手段と、
前記移動体が存在する第1位置における前記物標と前記移動体の位置関係と、該第1位置とは異なる位置であり、前記移動体が存在する第2位置における前記物標と前記移動体の位置関係と、前記第1位置と前記第2位置との位置関係から前記第1位置における前記物標の方位角を算出する算出手段と、
前記第1位置において前記検出手段によって検出された前記物標の方位角と、前記算出手段によって算出された方位角とが異なる場合には、前記検出手段が検出する方位角を補正する補正手段と、
を有することを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記第2位置に前記移動体が存在する場合の前記移動体と前記物標との間の距離dと、前記第1位置と前記第2位置との間の距離Dに基づいて、前記物標の方位角を算出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記移動体の位置情報をGPSセンサから取得する位置情報取得手段を有し、
前記算出手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記第1位置および前記第2位置における位置情報に基づいて前記物標の方位角を算出することを特徴とする請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
磁気方位センサから方位情報を取得する方位情報取得手段を有し、
前記算出手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記第1位置および前記第2位置における位置情報と、前記方位情報取得手段によって取得された方位情報とに基づいて前記物標の方位角を算出することを特徴とする請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
移動体に搭載され、物標を検出するレーダ装置の補正方法において、
前記物標に対して信号を送信し、反射信号に基づいて前記物標の方位角を検出する検出ステップと、
前記移動体が存在する第1位置における前記物標と前記移動体の位置関係と、該第1位置とは異なる位置であり、前記移動体が存在する第2位置における前記物標と前記移動体の位置関係と、前記第1位置と前記第2位置との位置関係から前記第1位置における前記物標の方位角を算出する算出ステップと、
前記第1位置において前記検出ステップによって検出された前記物標の方位角と、前記算出ステップによって算出された方位角とが異なる場合には、前記検出ステップが検出する方位角を補正する補正ステップと、
を有することを特徴とするレーダ装置の補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置およびレーダ装置の補正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、検知した前方の相対速度と自車速度による前方路側の角度を計算しビーム中心を補正する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、後方の検知した物体の相対速度と観測角度と自社速度から角度を計算し、ヒストグラムによりズレを補正し角度を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-209414号公報
【文献】特開2016-211992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に示す技術では、対象物の形状や材質等に起因して、相対速度を誤認識する場合があり、そのような場合には、補正値がずれを生じるという問題点がある。
【0006】
また、取り付け角度を補正する場合、機械的に補正することから、ずれを生じる場合があるという問題点がある。
【0007】
本発明は、簡易な構成で角度補正を確実に行うことが可能なレーダ装置およびレーダ装置の補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、移動体に搭載され、物標を検出するレーダ装置において、前記物標に対して信号を送信し、反射信号に基づいて前記物標の方位角を検出する検出手段と、前記移動体が第1位置に存在する場合と、前記第1位置とは異なる第2位置に存在する場合における前記物標と前記移動体の位置関係から前記第1位置における前記物標の方位角を算出する算出手段と、前記第1位置において前記検出手段によって検出された前記物標の方位角と、前記算出手段によって算出された方位角とが異なる場合には、前記検出手段が検出する方位角を補正する補正手段と、を有する。
このような構成によれば、簡易な構成で角度補正を確実に行うことができる。
【0009】
また、本発明は、前記算出手段は、前記第2位置において前記物標との間の距離dと、前記第1位置と前記第2位置の間の距離Dに基づいて、前記物標の方位角を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、簡単な計算によって角度補正を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、前記移動体の位置情報をGPSセンサから取得する位置情報取得手段を有し、前記算出手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記第1位置および前記第2位置における位置情報に基づいて前記物標の方位角を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、移動体が複雑な経路を移動した場合でも、角度補正を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、磁気方位センサから方位情報を取得する方位情報取得手段を有し、
前記算出手段は、前記位置情報取得手段によって取得された前記第1位置および前記第2位置における位置情報と、前記方位情報取得手段によって取得された方位情報とに基づいて前記物標の方位角を算出することを特徴とする。
このような構成によれば、移動体が回転した場合でも、角度補正を行うことができる。
【0012】
また、本発明は、移動体に搭載され、物標を検出するレーダ装置の補正方法において、前記物標に対して信号を送信し、反射信号に基づいて前記物標の方位角を検出する検出ステップと、前記移動体が第1位置に存在する場合と、前記第1位置とは異なる第2位置に存在する場合における前記物標と前記移動体の位置関係から前記第1位置における前記物標の方位角を算出する算出ステップと、前記第1位置において前記検出ステップによって検出された前記物標の方位角と、前記算出ステップによって算出された方位角とが異なる場合には、前記検出ステップが検出する方位角を補正する補正ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、簡易な構成で角度補正を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で角度補正を確実に行うことが可能なレーダ装置およびレーダ装置の補正方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
図2図1に示す制御・処理部の詳細な構成例を示す図である。
図3図1に示すレーダ装置の動作を説明するための図である。
図4図1に示すレーダ装置の動作を説明するための図である。
図5図1において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。
図7図6に示すレーダ装置の動作を説明するための図である。
図8図6に示すレーダ装置の動作を説明するための図である。
図9図6において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(A)本発明の第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーダ装置の構成例を示す図である。この図に示すように、本発明の第1実施形態に係るレーダ装置1は、局部発振部10、送信部11、制御・処理部15、受信部16、および、A/D(Analog to Digital)変換部21を主要な構成要素としている。
【0017】
ここで、局部発振部10は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部11と受信部16に供給する。
【0018】
送信部11は、変調部12、および、送信アンテナ13を有し、局部発振部10から供給されるCW信号を、変調部12によってパルス変調し、送信アンテナ13を介して物標に向けて送信する。
【0019】
送信部11の変調部12は、制御・処理部15によって制御され、局部発振部10から供給されるCW信号をパルス変調して出力する。送信アンテナ13は、変調部12から供給されるパルス信号を、物標に向けて送信する。
【0020】
制御・処理部15は、局部発振部10、変調部12、アンテナ切換部18、および、利得可変増幅部19を制御するとともに、A/D変換部21から供給される受信データに対して演算処理を実行することで、物標を検出する。
【0021】
図2は、図1に示す制御・処理部15の詳細な構成例を示すブロック図である。図2に示すように、制御・処理部15は、制御部15a、処理部15b、検出部15c、および、通信部15dを有している。ここで、制御部15aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、ROMおよびRAMに記憶されているデータに基づいて装置の各部を制御する。処理部15bは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行する。検出部15cは、例えば、DSP等によって構成され物標を検出する処理を実行する。通信部15dは、検出部15cによる検出結果を、外部の装置に対して通知する。
【0022】
図1に戻る。受信部16は、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-N(N≧2)、アンテナ切換部18、利得可変増幅部19、および、復調部20を有し、送信アンテナ13から送信され、物標によって散乱された信号を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。
【0023】
受信部16の第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nは、N個のアンテナ素子によって構成され、送信アンテナ13から送信され、物標によって散乱された信号を受信し、アンテナ切換部18に供給する。なお、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nは、例えば、水平方向に一定の間隔で配置されており、これらのアンテナに入射される反射波の位相差から物標が存在する方位角を検出することができる。
【0024】
アンテナ切換部18は、制御・処理部15の制御部15aによって制御され、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのいずれか1つを選択して、受信信号を利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、制御・処理部15の制御部15aによって利得が制御され、アンテナ切換部18から供給される受信信号を所定の利得で増幅して復調部20に出力する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される受信信号を、局部発振部10から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。
【0025】
A/D変換部21は、復調部20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して制御・処理部15に供給する。
【0026】
(B)本発明の第1実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第1実施形態の動作を説明する。図3は、第1実施形態の動作の概略を説明するための図である。レーダ装置1を搭載した車両が走行中に、例えば、路側物(図3の例では、ガードレール)の所定の位置Ptまでの距離dを検出する。つぎに、車両が所定の距離Dだけ直進したとする。なお、移動距離Dは、車両の速度と、経過した時間とから求めることができる。
【0027】
つぎに、レーダ装置1は、図4に簡略化して示すように、ガードレールまでの距離dと、移動距離Dを以下の式(1)に適用し、角度θを求める。なお、図4において、破線の矩形は移動前のレーダ装置1の位置を示し、実線の矩形は移動後のレーダ装置1の位置を示している。
【0028】
θ=arctan(d/D) ・・・(1)
【0029】
つぎに、レーダ装置1は、路側物の所定の位置Ptまでの角度を検出する。より詳細には、レーダ装置1は、送信アンテナ13から、例えば、パルス状の送信信号を送信し、路側物によって散乱された反射波を、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nによって受信する。
【0030】
アンテナ切換部18は、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのいずれか1つを選択し、利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、受信信号を増幅し、復調部20に供給する。
【0031】
復調部20は、局部発振部10から供給される局部発振信号に基づいて、受信信号を復調(例えば、ダウンコンバート)し、A/D変換部21に供給する。
【0032】
A/D変換部21は、復調部20から出力される信号をデジタル信号に変換して出力する。制御・処理部15は、A/D変換部21から供給されるデジタル信号を、処理部15bによって処理し、検出部15cが物標を検出する処理を実行する。より詳細には、検出部15cは、送信アンテナ13と、第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのそれぞれとの組み合わせによる送受信系列間の受信信号の位相差に基づいて物標の方位角θを検出する。
【0033】
ここで、レーダ装置1によって検出された方位角をθ1とし、図4による計算に基づいて検出された方位角をθ2とする。このとき、θ1=θ2であれば、方位角に関する検出誤差を有してないので補正は行わない。しかし、θ1≠θ2の場合には、検出誤差が生じているので、その場合には、方位角を検出するための角度テーブルの補正を行う。これにより、方位角の検出誤差を補正することができる。
【0034】
以上の処理によれば、路側物を利用して、方位角の検出誤差を補正することができる。このため、物標の速度を使用しないため、計算誤差を減らすことができる。
【0035】
つぎに、図5に示すフローチャートを参照して、本発明の第1実施形態において実行される処理の一例について説明する。図5に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0036】
ステップS10では、制御部15aは、送信信号を送信し、物標としての路側物によって反射された反射波を受信し、処理部15bおよび検出部15cによって物標までの距離dを検出する処理を実行する。
【0037】
ステップS11では、制御部15aは、車両からの車速信号および時間を参照することで移動距離を計算し、車両が距離Dを移動したか否かを判定し、距離Dを移動したと判定した場合(ステップS11:Y)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:N)には同様の処理を繰り返す。
【0038】
ステップS12では、検出部15cは、物標の方位角θ1を検出する。より詳細には、制御部15aが変調部12を制御して送信アンテナ13から送信信号を送信し、物標によって反射された反射波を第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nのいずれかによって受信する。そして、送信アンテナ13と第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nとの組み合わせによる送受信系列からの受信信号の位相差に基づいて物標の方位角θ1を検出する。
【0039】
ステップS13では、制御部15aは、ステップS10で検出した物標までの距離dと、ステップS11で検出した移動距離Dとに基づいて、物標の方位角θ2を前述した式(1)によって算出する。
【0040】
ステップS14では、制御部15aは、ステップS12で検出した方位角θ1と、ステップS13で算出した方位角θ2とが等しいか否かを判定し、等しいと判定した場合(ステップS14:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS14:N)にはステップS15に進む。
【0041】
ステップS15では、制御部15aは、例えば、検出部15cに格納されている角度テーブルを補正する処理を実行する。
【0042】
以上の処理によれば、路側物に基づいて、方位角の検出誤差を補正することができる。
【0043】
なお、以上の処理では、距離Dは固定としたが、この距離Dを可変とすることで、様々な方位角について、方位角の誤差を検証するとともに、必要に応じて誤差を補正することができる。
【0044】
(C)本発明の第2実施形態の構成の説明
図6は、本発明の第2実施形態の構成例を示す図である。図6では、図1に示す第1実施形態と比較すると、GPS(Global Positioning System)センサ31および磁気方位センサ32が追加されている。これら以外の構成は、図1と同様である。
【0045】
ここで、GPSセンサ31は、自車両の位置(緯度および経度)を検出し、制御・処理部15に供給する。磁気方位センサ32は、地磁気に基づいて自車両の方位を検出し、制御・処理部15に供給する。
【0046】
(D)本発明の第2実施形態の動作の説明
つぎに、図7および図8を参照して、図6に示す第2実施形態の動作について説明する。
【0047】
図7に示すように、本発明の第2実施形態では、レーダ装置1は、ある地点において、GPSセンサ31の出力を参照し、自車両の位置P1(x1,y1)を検出する。また、レーダ装置1は、路側物に対して電波を送信し、反射波から路側物の特定の部分までの距離dを検出し、これらに基づいて、路側物の特定の部分の位置Pt(xt,yt)=P1(xt-d,yt)を検出する。
【0048】
つぎに、レーダ装置1の制御部15aは、例えば、車速センサの検出値と、経過時間とを参照し、車両が所定の距離を進んだか否かを判定し、所定の距離を進んだと判定した場合には、GPSセンサ31の出力を参照し、自車両の位置P2(x2,y2)を検出する。
【0049】
なお、図7の例では、車両は直進しており、また、車両の進行方向も変化していないが、実際には、蛇行したり、進行方向が変化したりする。そこで、位置P1と位置P2における状態が図8であるとする。
【0050】
図8の例では、車両は直進ではなく斜めに進行しており、また、レーダ装置1の角度も変化している(図8では反時計方向に回転している)。
【0051】
このような場合に、レーダ装置1は、物標の位置Pt(xt,yt)と、その時点における自車両の位置P2(x2,y2)から以下の式(2)に基づいて、図8に示す角度θtを求める。なお、θtは、基準となる方向(図8の例では北の方向)と、物標の方向との間の角度である。
【0052】
θt=arctan((xt-x2)/(yt-y2)) ・・・(2)
【0053】
つぎに、レーダ装置1は、磁気方位センサ32の出力を参照し、レーダ装置1の法線方向Nと、基準となる方向の間の角度θvを算出する。より詳細には、磁気方位センサ32は、真北の方向に対する角度θnを出力するので、このθnをθvとすることができる。そして、これらのθvとθtから物標(図8の例では、路側物の特定の部分)と、レーダ装置1の法線方向との間の方位角θ1(=θv+θt)を算出する。
【0054】
つづいて、レーダ装置1は、送信部11を制御して送信信号を送信させ、反射波に基づいて物標の方位角θ2を検出する。
【0055】
つぎに、レーダ装置1は、θ1とθ2を比較し、これらが等しくない場合には、方位角の検出誤差が存在するとして、角度テーブルを補正する処理を実行する。これにより、方位角の誤差が解消される。
【0056】
以上に説明したように、本発明の第2実施形態によれば、車両が直進しない場合や、車両が回転した場合でも方位角の誤差を補正することができる。
【0057】
つぎに、図9を参照して、第2実施形態において実行される処理について説明する。図9に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0058】
ステップS30では、レーダ装置1は、自車両の位置P1(x1,y1)を検出する。より詳細には、レーダ装置1の制御・処理部15は、GPSセンサ31の出力を参照し、自車両の位置P1(x1,y1)を検出する。
【0059】
ステップS31では、レーダ装置1は、物標としての路側物の所定の位置までの距離dを検出する。より詳細には、レーダ装置1の制御部15aは、送信部11を制御して送信信号を送信させ、物標からの反射波を受信し、処理部15bおよび検出部15cによる処理により、物標までの距離dを検出する。
【0060】
ステップS32では、制御部15aは、ステップS30で特定した自車両の位置P1(x1,y1)と、ステップS31で検出した物標までの距離dに基づいて、物標の位置Pt(xt,yt)を検出する。例えば、図7の例では、Pt(xt,yt)=P1(x1-d,y1)により、物標の位置を特定する。
【0061】
ステップS33では、制御部15aは、ステップS32で特定した物標の位置Pt(xt,yt)を記憶する。
【0062】
ステップS34では、制御部15aは、所定の距離を移動したか否かを判定し、所定の距離を移動したと判定した場合(ステップS34:Y)にはステップS35に進み、それ以外の場合(ステップS34:N)には同様の処理を繰り返す。例えば、車速センサによって検出された車速と、図示しないタイマからの出力とを参照して、所定の距離を移動したと判定した場合にはYと判定してステップS35に進む。
【0063】
ステップS35では、制御部15aは、自車両の位置P2(x2,y2)を検出する。より詳細には、レーダ装置1の制御・処理部15は、GPSセンサ31の出力を参照し、自車両の位置P2(x2,y2)を検出する。
【0064】
ステップS36では、制御部15aは、物標の位置Pt(xt,yt)と、その時点における自車両の位置P2(x2,y2)から、前述した式(2)に基づいて、図8に示す角度θtを求める。
【0065】
ステップS37では、制御部15aは、磁気方位センサ32の出力を参照し、レーダ装置1の法線方向Nと、基準となる方向の間の角度θvを算出する。
【0066】
ステップS38では、制御部15aは、ステップS36およびステップS37で求めた角度θt,θvに基づいて、ステップS31で検出した路側物の特定の位置までの方位角θ2(=θt+θv)を算出する。
【0067】
ステップS39では、制御部15aは、ステップS31で検出した路側物の特定の位置までの方位角θ1を検出する。より詳細には、レーダ装置1の制御部15aは、送信部11を制御して送信信号を送信させ、物標からの反射波を受信し、処理部15bおよび検出部15cによる処理により、物標の方位角θ1を検出する。
【0068】
ステップS40では、制御部15aは、ステップS39で検出した方位角θ1と、ステップS38で算出した方位角θ2とを比較し、これらが等しいか否かを判定し、等しいと判定した場合(ステップS40:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS40:N)にはステップS41に進む。
【0069】
ステップS41では、制御部15aは、検出部15cに格納されている角度テーブルを、ステップS38で算出した方位角θ2により補正する。
【0070】
以上の処理によれば、図7および図8を参照して説明した第2実施形態の動作を実現することができる。
【0071】
(I)変形実施形態の説明
以上の各実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、図1および図6に示す構成では、1本の送信アンテナ13と、N本の第1受信アンテナ17-1~第N受信アンテナ17-Nを有するようにしたが、送受信系列が複数になれば、1本の受信アンテナと複数の送信アンテナとを有するようにしてもよい。
【0072】
また、以上の各実施形態では、左後方に配置されているレーダ装置1を例に挙げて説明したが、例えば、中央分離帯に配置されている路側物を用いて、右後方に配置されているレーダ装置の方位角の誤差を補正するようにしてもよい。
【0073】
また、左後方と右後方に配置されている2台のレーダ装置が相互に重複する検出領域を有する場合には、一方のレーダ装置により、重複する検出領域に存在する物標を用いて、前述した方法によって方位角の補正処理を実行し、得られた結果を、他方のレーダ装置にネットワーク等を介して供給し、他方のレーダ装置が方位角の補正を行うようにしてもよい。
【0074】
また、以上の各実施形態では、車両が所定の距離を移動した場合に、補正処理を実行するようにしたが、この距離を変化させることで、レーダ装置1によって検出される方位角を変化させ、様々な方位角の補正を行うようにしてもよい。
【0075】
また、以上の各実施形態では、車両の後方に配置したレーダ装置1の方位角を補正するようにしたが、前述したプロセスを逆に実行することで、車両の前方に配置されたレーダ装置の方位角を補正することも可能である。
【0076】
また、以上の各実施形態では、路側物として、ガードレールを例に挙げて説明したが、これ以外の路側物(例えば、交通標識、電柱、郵便ポスト等)を用いるようにしてもよい。
【0077】
また、図5および図9に示すフローチャートは一例であって、本発明がこれらに示す処理に限定されるものではない。
【0078】
また、図3に示す構成では、送信アンテナ13から送信される信号の種類についてはパルス信号を用いるようにしたが、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)信号を用いるようにしてもよい。
【0079】
また、以上の各実施形態では、レーダ装置1は、電磁波を送信して物標を検出するようにしたが、これ以外にも、例えば、光信号や、超音波等を用いるようにしてもよい。
【0080】
また、以上の各実施形態では、車両に搭載されたレーダ装置1を例に挙げて説明したが、固定物の近傍を移動する移動体に搭載されるレーダ装置であれば、本発明を適用することができる。
【0081】
また、図8の例では、レーダ装置1が回転することを想定したが、図4に示すように回転しない場合、すなわち、車両が直進している場合に測定したときは、角度θvは測定する必要がないので、そのような場合には、磁気方位センサ32は除外することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 レーダ装置
10 局部発振部
11 送信部
12 変調部
13 送信アンテナ
15 処理部
15a 制御部
15b 処理部
15c 検出部
15d 通信部
16 受信部
17-1~17-N 第1受信アンテナ~第N受信アンテナ
18 アンテナ切換部
19 利得可変増幅部
20 復調部
21 A/D変換部
31 GPSセンサ
32 磁気方位センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9