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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】耐火性材料、及び区画貫通部耐火部材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230208BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230208BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20230208BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20230208BHJP
   C09K 21/14 20060101ALI20230208BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C08J9/04 CES
C08K3/04
C08K3/40
C08L101/12
C09K21/02
C09K21/14
C08L23/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018217171
(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公開番号】P2020083962
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英史
(72)【発明者】
【氏名】宮城 秀文
(72)【発明者】
【氏名】多賀 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】小久保 陽介
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-059439(JP,A)
【文献】特開2004-043641(JP,A)
【文献】特開2007-291795(JP,A)
【文献】山口 正夫,資料 プラスチック難燃化の現状,日本ゴム協会誌,1974年,47巻、12号,p.803-812
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08K 3/04
C08K 3/40
C08L 101/12
C09K 21/02
C09K 21/14
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂と、屈伏点1000℃以下のガラスフリットと、膨張性黒鉛と、酸素指数が25.5%以上の樹脂と、発泡剤とを含有する樹脂組成物を発泡してなり、かさ密度が100~600kg/m である耐火性材料
【請求項2】
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、屈伏点1000℃以下のガラスフリットを5~200質量部含有する、請求項1に記載の耐火性材料
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、膨張性黒鉛を20~100質量部含有する、請求項1又は2に記載の耐火性材料
【請求項4】
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、酸素指数25.5%以上の樹脂を0.5~100質量部含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の耐火性材料
【請求項5】
前記樹脂組成物が、架橋剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐火性材料
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の耐火性材料を用いた区画貫通部耐火部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性材料、及び区画貫通部耐火部材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建造物では、各設備・各部屋を画分する壁や床などの防火区画体に貫通孔を穿設し、この貫通孔に各種電線ケーブル、給排水管、ガス管、ドレイン管等の貫通物が挿通される。そのため、ある区画で火災が発生すると、その熱や炎により貫通物を構成する発泡断熱材、被覆材、樹脂パイプ等の可燃性樹脂が燃焼、溶融して焼失し、その結果、貫通孔に大きな空隙が生じ、これが炎道となって隣室へ延焼が進んでしまう。
【0003】
貫通孔に対する防火対策としては、貫通物が焼失して生じる空隙を素早く閉塞することが重要である。そのために、熱膨張性材料を含む耐火性又は不燃性のパテ、あるいはこのパテと難燃性・不燃性の材料とを組み合わせた耐火部材が、貫通孔内壁と貫通物との間に充填される。この充填により、炎と熱により貫通物を構成する可燃性樹脂が燃焼ないし溶融しても、生じた空隙を熱膨張性材料の膨張作用により閉塞することができる。
上記熱膨張性材料としては、熱膨張性黒鉛(以下、「膨張性黒鉛」ともいう。)が汎用されている。膨張性黒鉛は、層間に存在する化合物が火災時の熱によって熱分解し、生じた分解ガスの圧力で、各層の間が押し広げられて膨張する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-036290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貫通孔内壁と貫通物との間を埋める耐火部材として、例えば、貫通物周囲に接して配されるスポンジ様のクッション性材料と、このクッション性材料の周囲に配された、熱膨張性材料が組み込まれた支持材料とにより構成された2層構成の取り付け部材が知られている。耐火部材をこのような取り付け部材とすることにより施工性が向上し、また、クッション性材料で貫通物に接するので、施工後における貫通物の移動(摺動等)も可能となる。
しかし、上記の取り付け部材は、貫通孔が大口径の場合に適用が難しい場合がある。熱膨張性材料は貫通孔内壁と接する支持体に組み込まれているため、火災時に生じた大きな空隙を熱膨張性材料の膨張作用によって閉塞するには一定の時間を要するためである。また、大口径の空隙を閉塞できたとしても、型崩れせずに閉塞状態を維持することは難しい。
【0006】
本発明は、クッション性を有する耐火性材料であって、それ自体で優れた熱膨張性を示し、また、熱膨張後の型崩れも生じにくい耐火性材料を提供することを課題とする。また本発明は、上記耐火性材料を用いた区画貫通部耐火部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、貫通孔に生じた空隙を上記取り付け部材によって確実に閉塞するには、クッション性材料にも熱膨張能をもたせることが有効であること、また、熱膨張後の型崩れの抑制については、燃焼後の炭化物の機械強度を高めることが有効との着想のもと鋭意検討を重ねた。その結果、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を、熱膨張性材料として膨張性黒鉛を用いて、屈伏点1000℃以下のガラスフリットを配合し、さらに酸素指数25.5%以上の樹脂を配合して樹脂組成物を調製し、これを発泡して得られる発泡体が、燃焼時の熱膨張性が格段に向上し、また熱膨張後の炭化物の機械強度にも優れることを見い出した。つまり、熱膨張性に優れ、熱膨張後の型崩れも生じにくい、クッション性(発泡性)耐火性材料が得られることを見い出すに至った。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねて完成させるに至ったものである。
【0008】
すなわち上記課題は以下の発明により解決された。
〔1〕
ポリオレフィン系樹脂と、屈伏点1000℃以下のガラスフリットと、膨張性黒鉛と、酸素指数が25.5%以上の樹脂と、発泡剤とを含有する樹脂組成物を発泡してなり、かさ密度が100~600kg/m である耐火性材料
〔2〕
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、屈伏点1000℃以下のガラスフリットを5~200質量部含有する、〔1〕に記載の耐火性材料
〔3〕
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、膨張性黒鉛を20~100質量部含有する、〔1〕又は〔2〕に記載の耐火性材料
〔4〕
前記樹脂組成物が、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対し、酸素指数25.5%以上の樹脂を0.5~100質量部含有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1に記載の耐火性材料
〔5〕
前記樹脂組成物が、架橋剤を含有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の耐火性材料
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の耐火性材料を用いた区画貫通部耐火部材。
【発明の効果】
【0009】
発明の耐火性材料は、クッション性を有し、それ自体で優れた熱膨張性を示し、熱膨張後の型崩れも生じにくい。また、本発明の区画貫通部耐火部材は、大口径の貫通孔(区画貫通部)であっても、火災時の熱や炎によって生じる空隙を素早く、より確実に閉塞することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物、耐火性材料及び区画貫通部耐火部材について、好ましい実施形態を順に説明する。
【0011】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、屈伏点1000℃以下のガラスフリットと、膨張性黒鉛と、酸素指数25.5%以上の樹脂を含有する。本発明の樹脂組成物はさらに、無機フィラー等の耐火性材料に通常配合され得る原料を配合することができる。
本発明の樹脂組成物はそのままでも、熱膨張性に優れ、また膨張後に型崩れを生じにくいパテとして使用することができる。
本発明の樹脂組成物を、クッション性を有する耐火性材料を得るための前駆材料として用いる場合、通常は発泡剤が配合される。発泡剤を含有する本発明の樹脂組成物を発泡させることにより、クッション性を有し、熱膨張性に優れ、また熱膨張後の型崩れを生じにくい本発明の耐火性材料を得ることができる。より均一な発泡状態の耐火性材料を作り出すために、本発明の樹脂組成物は発泡剤に加えて架橋剤を含有することが好ましく、また、架橋助剤として重合性モノマー等を含有することもできる。
【0012】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明の樹脂組成物は、ベース樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含有する。本発明においてポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン単独重合体及び/又はオレフィン共重合体を意味する。
オレフィン単独重合体とは、1種類のオレフィンの重合体をいう。
オレフィン共重合体とは、あるオレフィンと、それと異なるオレフィンの共重合体、及び、オレフィンと、オレフィン以外の炭素-炭素二重結合を有する化合物、例えばビニル化合物との共重合体などオレフィン成分を構成成分として有するものを含む、広義の意味で用いる。
ポリオレフィン系樹脂の具体例として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体等を用いることができる。本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を1種含有してもよく、2種以上を含有してもよい。なかでも、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び/又は低密度ポリエチレンが好ましい。
【0013】
<屈伏点1000℃以下のガラスフリット>
本発明の樹脂組成物は、屈伏点1000℃以下のガラスフリット(以下、単に「ガラスフリット」とも称す。)を含有する。ガラスフリットは焼結剤として機能し、熱や炎により焼結し、型崩れを防止する。
ガラスフリットとしては、リン酸系低融点ガラス、ホウ酸系低融点ガラス、酸化ナトリウム系低融点ガラス等を用いることができる。これらはB、P、ZnO、SiO、Bi、Al、BaO、CaO、MgO、MnO、ZrO、TiO、CeO、SrO、V、SnO、LiO、NaO、KO、CuO、Fe等を屈伏点が1000℃以下になるよう成分割合を調整したものである。ガラスフリットの屈伏点は350~650℃であることが好ましい。本発明の樹脂組成物は、ガラスフリットを1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
本発明の樹脂組成物に含まれるガラスフリットは、屈伏点が800℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましく、500℃以下であってもよく、450℃以下であってもよい。また、上記ガラスフリットの屈伏点は、通常は100℃以上であり、200℃以上であることも好ましく、300℃以上であることも好ましい。
本発明においてガラスフリットの屈伏点とは、ガラスフリットから作製したΦ5mm×4cm長の試料を、熱機械分析装置(リガクTMA8311)にて、室温から3℃/minの速度で昇温して熱膨張挙動を観察し、見かけ上の熱膨張が上昇から減少に転じる点として定義される。
【0014】
本発明の樹脂組成物中のガラスフリットの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に調整される。例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して5~200質量部とすることができる。本発明の樹脂組成物中のガラスフリットの含有量は、発泡性および焼結作用のバランスの観点から、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して10~200質量部が好ましく、20~200質量部がより好ましく、40~200質量部がさらに好ましく、60~200質量部が特に好ましい。
【0015】
<膨張性黒鉛>
本発明に用いる膨張性黒鉛は、二次元的に広がる六員環構造の網平面の層と層とがC軸方向に積層している六方晶結晶の前記各層間に、熱分解性の物質を挿入した層間化合物である。例えば発煙硫酸や硫酸と濃硝酸、各種の硝酸塩、過塩素酸、各種の過塩素酸塩、クロム酸、各種のクロム酸塩、重クロム酸などを含む酸化性溶液に黒鉛を浸漬した後、水洗、乾燥して製造される。
膨張性黒鉛は、急激に加熱されると、層間に挿入されている化合物や結晶粒界に挿入された化合物が熱分解し、そのときに発生する分解ガスの圧力で各層の間が押し広げられ、膨張する。膨張性黒鉛の熱膨張開始温度は、通常は180~260℃程度である。
【0016】
膨張性黒鉛は粉末状のものを使用することが好ましい。熱膨張性黒鉛の熱膨張性を効果的に発現させる観点から、本発明の樹脂組成物中の膨張性黒鉛の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して20~100質量部が好ましく、30~100質量部がより好ましく、30~90質量部がさらに好ましい。
【0017】
膨張性黒鉛は、熱膨張性の耐火性材料に通常用いられるものを本発明にも広く適用できる。膨張性黒鉛は商業的に入手可能であり、このような膨張性黒鉛として、例えば、SS-3、MZ-260(いずれも商品名、エアー・ウォーター社製)、955025L(商品名、伊藤黒鉛工業社製)等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、膨張性黒鉛を1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0018】
<酸素指数25.5%以上の樹脂>
本発明の樹脂組成物は、酸素指数(OI値)25.5%以上の樹脂を含有する。酸素指数は燃焼が持続するのに必要な最低酸素濃度(体積%)である。樹脂の酸素指数はJIS K7201-2:2007に準拠して決定される。
酸素指数25.5%以上の樹脂は、燃焼後も炭化層として残りやすい。したがって、燃焼後においても貫通孔を効果的に塞ぐことができる。また、樹脂組成物が酸素指数25.5%以上の樹脂を含有することにより、樹脂組成物ないしはこれを発泡させた耐火性材料の熱膨張性を効果的に高めることができる。酸素指数25.5%以上の樹脂の酸素指数の上限に特に制限はなく、通常は80%以下である。
本発明に用いる酸素指数25.5%以上の樹脂の好ましい具体例として、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリサルフォン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。これらは、粉の状態で配合してもよく、ポリマーブレンド等の状態にして、可塑化させて配合しても良い。
本発明の樹脂組成物は、酸素指数25.5%以上の樹脂を1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0019】
本発明の樹脂組成物中、酸素指数25.5%以上の樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5~100質量部が好ましく、5~90質量部がより好ましく、10~80質量部とすることも好ましい。
【0020】
<無機フィラー>
本発明の樹脂組成物は無機フィラーを含有することが好ましい。無機フィラーは、耐火性材料に通常用いられるものを、本発明の樹脂組成物にも広く適用することができる。無機フィラーの好ましい具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、及びシリカ等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、無機フィラーを1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
本発明の樹脂組成物が無機フィラーを含有する場合、樹脂組成物中の無機フィラーの含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して5~300質量部が好ましく、10~250質量部がより好ましく、20~240質量部がさらに好ましく、30~215質量部がさらに好ましく、40~200質量部とすることも好ましい。
【0021】
<発泡剤>
本発明の樹脂組成物は、発泡剤を含有することが好ましい。本発明の樹脂組成物が発泡剤を含有することにより、樹脂組成物を発泡させて、クッション性を有し、熱膨張性に優れ、また熱膨張後の型崩れを生じにくい耐火性材料をより効率的に得ることができる。
発泡剤は加熱等によりガスを発生して樹脂組成物を発泡させるものである。発泡剤の具体例として、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)、p-トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジアゾアミノベンゼン、N,N’-ジメチルN,N’-ジニトロテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、発泡剤を1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0022】
本発明の樹脂組成物が発泡剤を含有する場合、樹脂組成物中の発泡剤の含有量は、目的の発泡状態に応じて、また使用する発泡剤の種類に応じて適宜に設定される。例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して5~50質量部とすることができ、10~40質量部としてもよく、15~35質量部とすることも好ましい。
【0023】
<架橋剤>
本発明の樹脂組成物は、架橋剤を含有することも好ましい。架橋剤は所定の加熱温度下でベース樹脂に作用してベース樹脂に架橋構造を形成させる。これにより、樹脂組成物の粘度を所望のレベルに調整することができる。
また、本発明の樹脂組成物が発泡剤を含有する形態であると、この樹脂組成物を発泡のために加熱した際に架橋反応が進行し、樹脂組成物が所定の粘度に達した状態で発泡が生じ、より均一な発泡状態の耐火性材料を得ることができる。
架橋剤は好ましくはラジカル発生剤であり、有機過酸化物が好ましい。
有機過酸化物は、少なくとも炭素原子と-O-O-結合を有する化合物であり、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アシルパーオキサイド、アルキルパーエステル、ジアシルパーオキサイド、モノパーオキシカーボネート、パーオキシジカーボネートが挙げられる。
このうち、本発明では、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、アルキルパーオキシエステル及びモノパーオキシカーボネートが好ましく、特にジアルキルパーオキサイドが好ましい。
【0024】
有機過酸化物の具体例を挙げれば次の通りである。
(ケトンパーオキサイド化合物)
シクロヘキサノンパーオキサイド、鎖状メチルエチルケトンパーオキサイド等
【0025】
(パーオキシケタール化合物)
1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、環状メチルエチルケトンパーオキサイド等
【0026】
(ハイドロパーオキサイド化合物)
t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド等
【0027】
(ジアルキルパーオキサイド化合物)
ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等
【0028】
(アシルパーオキサイド化合物)
アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド等
【0029】
(アルキルパーオキシエステル化合物)
t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等
【0030】
(ジアシルパーオキサイド化合物)
ジアセチルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ビス(2,4-ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ビス(m-トルオイル)パーオキサイド等
【0031】
(モノパーオキシカーボネート化合物)
t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート等
【0032】
(パーオキシジカーボネート化合物)
ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等
【0033】
本発明の樹脂組成物が架橋剤を含有する場合、室温でも反応が進行し得るが、低温保存(例えば-20℃以下で保存)することにより樹脂組成物の状態を安定に保つことができる。
【0034】
本発明の樹脂組成物が架橋剤を含有する場合、樹脂組成物中の架橋剤の含有量を、例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1~10質量部とすることができ、0.3~5質量部としてもよく、0.5~3質量部とすることも好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述した架橋剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
<架橋助剤>
本発明の樹脂組成物は、架橋助剤を含有することも好ましい。架橋助剤として重合性モノマーを好適に用いることができる。重合性モノマーは重合開始剤の存在下で重合し、樹脂組成物の粘度を上昇させる。したがって、例えば上記架橋剤と同様に、均一な発泡状態の形成に寄与する。重合性モノマーの重合性基はエチレン性不飽和基(炭素-炭素二重結合を有する基)が好ましい。重合性モノマーがエチレン性不飽和基を有することにより、上述した架橋剤の作用により重合を開始することができる。
また、重合性モノマーは多官能モノマーであることが好ましい。多官能モノマーは重合して架橋ポリマーを形成するため、官能基の数や使用量を調整することにより、組成物の粘度調整の自由度が増す。
架橋助剤は2~5官能の多官能モノマーが好ましく、2~4官能の多官能モノマーがより好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物が架橋助剤を含有する場合、樹脂組成物中の架橋助剤の含有量を、例えば、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.1~5質量部とすることができ、0.2~3質量部としてもよく、0.2~2質量部とすることも好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上述した架橋助剤の1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
本発明の樹脂組成物は上記各成分に加え、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有することができる。例えば、粘度調整剤、分散剤、気泡化核剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、染料、顔料、相溶化剤、滑材、難燃剤、可塑剤等を含有することができる。
【0038】
<樹脂組成物の調製>
本発明の樹脂組成物は、上述した各成分(原料)を通常の方法で混練することにより得ることができる。例えば、各成分をニーダーミキサー、バンバリーミキサーなどを用いて混練して得ることができる。
【0039】
[耐火性材料]
本発明の耐火性材料は、本発明の樹脂組成物を発泡してなる発泡体である。通常は、本発明の耐火性材料の前駆材料とする樹脂組成物は発泡剤を含有する。
樹脂組成物の発泡は、通常の方法で行うことができる。例えば、本発明の樹脂組成物をプレス機等により所望の形状に成形し、加熱することにより発泡させ、目的の形状、クッション性の耐火性材料を得ることができる。
発泡のための加熱温度は、発泡剤の種類により適宜に調節することができる。例えば、180~230℃に加熱して発泡体を得ることができる。
【0040】
本発明の耐火性材料は、施工性等の観点から、密度(かさ密度)が10~600kg/mが好ましく、20~600kg/mがより好ましく、50~600kg/ さらに好ましく、100~600kg/mが特に好ましい。
本発明の耐火性材料は、平均気泡径が1~1000μm、特に2~500μmであることが好ましい。平均気泡径が1μm未満であると独立気泡の割合が多くなりやすく、吸音特性が悪くなり、1000μmを超えると断熱性能が悪くなる。ここでいう平均気泡径は、ASTM D3576-77に準拠して求めることができる。
【0041】
[区画貫通部耐火部材]
本発明の区画貫通部耐火部材(以下、単に「耐火部材」とも称す。)は、本発明の耐火性材料を用いてなる耐火部材である。本発明の耐火部材は、住宅等の区画貫通孔と、当該貫通孔に挿入された各種電線ケーブル、給排水管、ガス管、ドレイン管等の貫通物との間の空隙を埋めるための部材である。
本発明の耐火部材の構造に特に制限はなく、目的に応じて適宜に設計される。なかでも、本発明の耐火性材料が貫通物と接して配されるように構成されていることが好ましい。本発明の耐火性材料はクッション性を有するため、耐火性部材の施工性が向上し、また、施工後における貫通物の移動(摺動)も容易である。
本発明の耐火部材は、本発明の耐火性材料そのものでもよく、本発明の耐火性材料に他の材料を組合せたものであってもよい。本発明の耐火部材が本発明の耐火性材料と他の材料とを組み合わせた形態の好ましい例として、略半割りの金属製パイプ、又は略半割りの樹脂製もしくはゴム製パイプを支持体とし、この支持体の内側の面に本発明の耐火性材料を貼合した取り付け部材の形態が挙げられる。このような形態とすることにより、耐火性材料のクッション性を利用して当該耐火性材料を貫通物周囲全体に押し付けるような形で耐火性材料に貫通物を抱かせることができる。その状態で、耐火部材を貫通孔に差し込むことにより、区画貫通部耐火部材として機能させることができる。すなわち、現場で簡単かつ確実に施工できる耐火部材とすることができる。
以下に、本発明を実施例に基づき更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0042】
[調製例1] 樹脂組成物の調製
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
【0043】
<ポリオレフィン系樹脂(ベース樹脂)>
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(商品名:エバフレックス45LX、三井・デュポンポリケミカル社製)
【0044】
<屈伏点1000℃以下のガラスフリット>
商品名:VY0144M2、日本フリット社製、屈伏点:373℃
【0045】
<膨張性黒鉛>
商品名:MZ-260、エアー・ウォーター社製
【0046】
<酸素指数が25.5%以上の樹脂>
・ポリフェニレンエーテル(PPE、商品名:ザイロン S201A、旭化成社製、酸素指数:29%)
・ポリイミド(PI、商品名:ポリイミド P84NT、ダイセル・エボニック社製、酸素指数:49%)
・ポリカーボネート(PC、商品名:ユーピロン E-2000FN、三菱エンジニアリングプラスチック社製、酸素指数:26%)
・ポリサルフォン(PS、商品名:ウルトラゾーンS2010 パウダーグレード、社製、酸素指数:31%)
・ポリ塩化ビニル(PVC、商品名:PVCレジン TK-1400、信越化学社製、酸素指数:46%)
【0047】
<無機フィラー>
・水酸化マグネシウム(商品名:マグシーズHR、神島化学工業社製)
・水酸化アルミニウム(商品名:B703S、日本軽金属社製)
・酸化チタン(商品名:Ti-Pure R-103、Chemours社製)
【0048】
<発泡剤>
アゾジカルボンアミド(商品名:VI50ST、大塚化学社製)
【0049】
<分散剤>
グリセリンモノステアレート(商品名:リケマールS-100、理研ビタミン社製)
【0050】
<粘度調整剤>
フッ素系ゴム粉(商品名:メタブレンA-3000、三菱ケミカル社製)
【0051】
<架橋剤>
有機過酸化物(化合物名:ジクミルパーオキサイド(DCP))
【0052】
<架橋助剤>
1,3-プロパンジオール-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-トリアクリラート(商品名:オグモントT200、新中村化学工業社製)
【0053】
上記各原料を、下表に示す比(単位:質量部)で配合し、混練機(加圧式ニーダー)を用いて発泡剤が分解しない温度(100~130℃程度)で混練して樹脂組成物とした。この樹脂組成物のペレットを押出機に供給し、樹脂温度100~130℃程度で押出成形して、所望の厚さと幅を有する未発泡シートを形成した。原料の配合順序は、膨張性黒鉛を最後に配合し、膨張性黒鉛を配合してからの混練は、良好な分散状態が得られる最低限とした。
【0054】
[調製例2] 耐火性材料(発泡体)の調製
上記調製例1で得た未発泡シート(縦10cm×横10cm×厚さ2.5mm)を、180~230℃に調整した加熱発泡炉に投入して発泡シート(耐火性材料)を作製した。
【0055】
[密度(かさ密度)の測定]
上記調製例2で得た耐火性材料(発泡体)を試料とし、この試料の質量をこの試料の体積で除して耐火性材料のかさ密度(単位kg/m)を決定した。
【0056】
[熱膨張倍率の測定]
上記調製例2で得た耐火性材料(発泡体)を外径約25mmにくり抜いて円柱状試料とした。
円柱状試料を銅管にセットし、450℃で1時間以上養生した電気炉内に銅管を入れた。
450℃で30分間経過後、銅管を電気炉から取り出して放冷し、室温条件下で、銅管内で熱膨張した円柱状試料の高さをミリメートル単位で測定した。
得られた結果に基づき、熱膨張倍率を下記式により決定した。

熱膨張倍率=[450℃で30分間処理して熱膨張させた後の耐火性材料の高さ(mm)]/[銅管にセットする前の耐火性材料の高さ(mm)]
【0057】
[燃焼後の炭化物の強度]
上記の450℃で30分間処理した熱膨張後の試料を用いて、フォースゲージを用いて破壊加重を測定した。
具体的には、銅管から取り出した熱膨張後の試料を、円柱状に立った状態となるように台座の上に置き、圧子をフォースゲージに取り付けて50mm/minの速度で試料を円柱の中心軸方向に圧縮した。15mm(18秒間)圧縮するまでの間の荷重の最大値(N)を測定した(圧縮開始から15mm圧縮に到達するまでの間に、荷重が増加し、やがて荷重は最大値に達し、次いで荷重が減少に転じる)。上記圧子は、円錐形状の頂点で試料に接する構造であり、当該円錐形状を側面から平面視した際の円錐の頂点の角度は70°であり、円錐底面部の直径は10mmである。
同一の組成・発泡状態にある耐火性材料から、上記と同様にして得られた熱膨張後の試料2つについても、同様にして15mm(18秒間)圧縮したときの荷重の最大値(N)を測定し、計3つの試料の測定値の平均を破壊加重(破壊強度、N)とした。結果を下表に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
上記表に示されるように、耐火性材料が膨張性黒鉛を含有しない場合、熱膨張は事実上生じない(比較例2、3)。また、耐火性材料が膨張性黒鉛を含有していても、酸素指数25.5%以上の樹脂を含有しない場合には、熱膨張倍率に劣る結果となった(比較例1、4)。また、酸素指数25.5%以上の樹脂を含有しない場合、熱膨張後の破壊強度にも劣ることがわかる(比較例1~4)。
これに対し、膨張性黒鉛と酸素指数25.5%以上の樹脂とを組み合わせて含有する本発明の構成の耐火性材料は、熱膨張性に優れ、また、熱膨張後の破壊強度が高く型崩れしにくい性状であった(実施例1~12)。