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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】無人飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B61B 7/00 20060101AFI20230208BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20230208BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230208BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20230208BHJP
   B64U 10/14 20230101ALI20230208BHJP
   B64U 50/35 20230101ALI20230208BHJP
   B64U 101/31 20230101ALN20230208BHJP
【FI】
B61B7/00 A
B64D27/24
B64C39/02
H02G1/02
B64U10/14
B64U50/35
B64U101:31
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018237722
(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公開番号】P2020100171
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】名雪 琢弥
(72)【発明者】
【氏名】所 健一
【審査官】谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】特許第6394833(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0007196(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1815091(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第107359538(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1806040(KR,B1)
【文献】中国実用新案第205355674(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107336831(CN,A)
【文献】特開2018-090990(JP,A)
【文献】特開2017-214037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 7/00 - 7/06
B64C 39/00 - 39/12
B64D 27/00 - 27/26
H02G 1/00 - 1/10
B64U 1/00 - 80/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともバッテリの電力により駆動力を得て無人で飛行する飛行体と、
前記飛行体に取り付けられ、送電線に装着される環状の本体部と、
前記本体部に設けられ、活線状態の前記送電線からの電力により前記バッテリの充電を行う給電手段とを備え、
前記本体部は、
固定環部、及び、前記固定環部に対して開閉自在に支持された開閉環部からなり、
前記給電手段は、
前記本体部の前記固定環部、及び、前記開閉環部に巻回されたコイル部材からなり、
前記固定環部は、
前記送電線に接触して転動するローラ部材を有し、
前記ローラ部材には、駆動手段が備えられ、
前記駆動手段は、前記バッテリの電力で駆動され、
前記飛行体の上側に接続アーム部材を介して前記本体部が取り付けられ、
前記本体部が前記送電線に装着された状態で、前記飛行体が前記送電線に吊架され、
前記飛行体は、
複数の回転翼を有し、前記送電線に沿った方向を含む任意の方向に飛行するマルチコプターであり、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構を備え、前記回転翼の角度を前記送電線に対して傾斜した状態にすることで、前記送電線に沿った方向の推進力を得るようにし
前記本体部が複数備えられ、それぞれの前記本体部に軸が設けられ、前記接続アーム部材の前記本体部側が、複数本(3本)の軸で支持されることで、前記飛行体が前記複数の本体部に支持され、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構は、
前記複数本の軸の長さを異なる長さに設定して前記飛行体を傾動させる機構である
ことを特徴とする無人飛行装置。
【請求項2】
少なくともバッテリの電力により駆動力を得て無人で飛行する飛行体と、
前記飛行体に取り付けられ、送電線に装着される環状の本体部と、
前記本体部に設けられ、活線状態の前記送電線からの電力により前記バッテリの充電を行う給電手段とを備え、
前記本体部は、
固定環部、及び、前記固定環部に対して開閉自在に支持された開閉環部からなり、
前記給電手段は、
前記本体部の前記固定環部、及び、前記開閉環部に巻回されたコイル部材からなり、
前記固定環部は、
前記送電線に接触して転動するローラ部材を有し、
前記ローラ部材には、駆動手段が備えられ、
前記駆動手段は、前記バッテリの電力で駆動され、
前記飛行体の上側に接続アーム部材を介して前記本体部が取り付けられ、
前記本体部が前記送電線に装着された状態で、前記飛行体が前記送電線に吊架され、
前記飛行体は、
複数の回転翼を有し、前記送電線に沿った方向を含む任意の方向に飛行するマルチコプターであり、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構を備え、前記回転翼の角度を前記送電線に対して傾斜した状態にすることで、前記送電線に沿った方向の推進力を得るようにし、
前記本体部が複数備えられ、前記複数の本体部に対して一つの前記接続アーム部材を介して前記飛行体が支持され、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構は、
前記接続アーム部材の端部の少なくとも一方(上端もしくは下端、上端及び下端)に自在継ぎ手を設け、前記自在継ぎ手と前記本体部、もしくは、前記自在継ぎ手と前記飛行体、もしくは、前記自在継ぎ手と前記本体部及び前記飛行体を接続し、前記接続アーム部材を傾斜自在にして前記飛行体を傾動させる機構である
ことを特徴とする無人飛行装置。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の無人飛行装置において、
前記飛行体、もしくは、前記本体部の少なくともいずれかに設けられ、前記送電線の外観状態を把握する点検把握手段を備えた
ことを特徴とする無人飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線から給電を行って飛行する無人飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコプター(ドローン)を飛ばして、空撮等を行ったり、迷子や徘徊者等の行方を追跡したりする技術が従来から知られている(例えば、特許文献1)。ドローンは搭載されたバッテリの電力により駆動力を得て任意の場所を飛行するため、定期的にバッテリの充電が必要になっている。大容量のバッテリを搭載することができれば、飛行時間を長くすることができる一方で、ドローン自体の重量が重くなり、飛行時間を長くすることには限界があるのが現状であった。
【0003】
近年、ドローンは、空撮や追跡に留まらず、物等の長距離の移送等の要望も出現してきているのが実情であり、バッテリを大型化することなく長距離の飛行に対しても電力が確保できるドローンの設備の出現が望まれているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-13976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、送電線から給電を行うことで、バッテリを大型化することなく、飛行のための電力を確保することができる無人飛行装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の無人飛行装置は、少なくともバッテリの電力により駆動力を得て無人で飛行する飛行体と、前記飛行体に取り付けられ、送電線に装着される環状の本体部と、前記本体部に設けられ、活線状態の前記送電線からの電力により前記バッテリの充電を行う給電手段とを備え、
前記本体部は、固定環部、及び、前記固定環部に対して開閉自在に支持された開閉環部からなり、前記給電手段は、前記本体部の前記固定環部、及び、前記開閉環部に巻回されたコイル部材からなり、前記固定環部は、前記送電線に接触して転動するローラ部材を有し、前記ローラ部材には、駆動手段が備えられ、前記駆動手段は、前記バッテリの電力で駆動され、前記飛行体の上側に接続アーム部材を介して前記本体部が取り付けられ、前記本体部が前記送電線に装着された状態で、前記飛行体が前記送電線に吊架され、前記飛行体は、複数の回転翼を有し、前記送電線に沿った方向を含む任意の方向に飛行するマルチコプターであり、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構を備え、前記回転翼の角度を前記送電線に対して傾斜した状態にすることで、前記送電線に沿った方向の推進力を得るようにし、前記本体部が複数備えられ、それぞれの前記本体部に軸が設けられ、前記接続アーム部材の前記本体部側が、複数本(3本)の軸で支持されることで、前記飛行体が前記複数の本体部に支持され、前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構は、前記複数本の軸の長さを異なる長さに設定して前記飛行体を傾動させる機構であることを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、活線状態の送電線に本体部を装着し、給電手段によりバッ
テリの充電を行う。このため、送電線から給電を行うことができ、バッテリを大型化する
ことなく、飛行のための電力を確保することができる。また、大規模な設備を必要とせず
に、飛行のための電力を確保することができる。
そして、開閉環部を開いた状態で固定環部を活線状態の送電線に配置し、開閉環部を閉じて環状の本体部とする。開閉環部が閉じられることで、ゼロであった結合係数(カップリング)が確保できるようになり、固定環部、及び、開閉環部に巻回されたコイル部材により効果的に電力を取り出してバッテリに充電を行うことができる。
また、ローラ部材を送電線で転動させることで、飛行体を送電線に沿って容易に移動させることができる。即ち、装置全体(搬送物等を含めて)の重量をローラ部材で機械的に支えることができ、装置全体を浮遊させるための電力が不要でペイロードを稼ぐことができ(エネルギーを節約することができ)、小型のバッテリを適用することができる。
また、バッテリの電力でローラ部材を駆動させることで、無人飛行装置の飛行を停止させた状態で送電線に沿って移動させることができる。また、移動しながら充電を行うことができる。
また、本体部が送電線に装着された状態で、飛行体が送電線に吊架されるため、突風などで装置が飛ばされることがなく、送電線に沿った飛行体の移動を確実に行うことができる。
また、マルチコプター(ドローン)を飛ばして、本体部を送電線に装着し、ドローンを送電線に沿って移動させながらバッテリの充電を行うことができる。尚、飛行体として、バッテリを搭載した電動の無人ヘリコプターや無人飛行機を適用することも可能である。
【0008】
従って、送電線に沿って飛行体を移動させることで、飛行のための電力を確保することができ、広範囲に張り巡らされた送電線網を基幹経路として飛行体の長距離の移動が可能になる。例えば、出発地から最寄りの送電線網の送電線まではバッテリの電力により飛行体の駆動源を賄って飛行を行い、送電線網ではバッテリの充電を行いながら送電線からの電力により飛行体の駆動源を賄って目的地の近傍まで移動し、目的地に近い送電線網の位置から目的地まではバッテリの電力により飛行体の駆動源を賄って飛行を行う。これにより、出発地から目的地が遠距離であっても、小さなバッテリの充電電力により飛行体を移動させることができ、小型であっても長距離の移動が可能な無人飛行装置とすることができる。
【0009】
また請求項1に記載の無人飛行装置において、前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構は、前記回転翼の部分を傾動させる機構であることが好ましい。
【0013】
また、請求項2に係る本発明の無人飛行装置は、少なくともバッテリの電力により駆動力を得て無人で飛行する飛行体と、前記飛行体に取り付けられ、送電線に装着される環状の本体部と、前記本体部に設けられ、活線状態の前記送電線からの電力により前記バッテリの充電を行う給電手段とを備え、
前記本体部は、固定環部、及び、前記固定環部に対して開閉自在に支持された開閉環部からなり、前記給電手段は、前記本体部の前記固定環部、及び、前記開閉環部に巻回されたコイル部材からなり、前記固定環部は、前記送電線に接触して転動するローラ部材を有し、前記ローラ部材には、駆動手段が備えられ、前記駆動手段は、前記バッテリの電力で駆動され、前記飛行体の上側に接続アーム部材を介して前記本体部が取り付けられ、前記本体部が前記送電線に装着された状態で、前記飛行体が前記送電線に吊架され、前記飛行体は、複数の回転翼を有し、前記送電線に沿った方向を含む任意の方向に飛行するマルチコプターであり、
前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構を備え、前記回転翼の角度を前記送電線に対して傾斜した状態にすることで、前記送電線に沿った方向の推進力を得るようにし、前記本体部が複数備えられ、前記複数の本体部に対して一つの前記接続アーム部材を介して前記飛行体が支持され、前記回転翼の回転中心軸を傾ける機構は、前記接続アーム部材の端部の少なくとも一方(上端もしくは下端、上端及び下端)に自在継ぎ手を設け、前記自在継ぎ手と前記本体部、もしくは、前記自在継ぎ手と前記飛行体、もしくは、前記自在継ぎ手と前記本体部及び前記飛行体を接続し、前記接続アーム部材を傾斜自在にして前記飛行体を傾動させる機構であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項3に係る本発明の無人飛行装置は、請求項1もしくは請求項2に記載の無人飛行装置において、前記飛行体、もしくは、前記本体部の少なくともいずれかに設けられ、前記送電線の外観状態を把握する点検把握手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
請求項3に係る本発明では、送電線に沿って飛行体を移動させながらバッテリの充電を行う際に、点検把握手段により送電線の外観状態を把握して不具合の有無を確認することができる。即ち、送電線の点検のための飛行体のバッテリの充電を、点検中の送電線から電力を得て行うことができる。
【0021】
請求項3に係る本発明の無人飛行装置は、搭載されたバッテリの電力により飛行体を飛行させながら、飛行体に備えられた給電手段により活線状態の送電線からの電力でバッテリの充電を行い、充電中に前記送電線の外観状態を把握する送電線の点検を実施することができる。
【0022】
因みに、特開2017-225326号公報には、活線状態の送電線に自走式の点検装置を取り付けて送電線の点検を行う技術が開示され、マルチコプターを用いて装置に揚力を発生させて装着の運用を安全に行う技術が開示されている。送電線の点検を行う装置とマルチコプター(ドローン)を組み合わせる点(構成要素)は近似した技術であるが、特開2017-225326号公報に開示された技術は、活線状態の送電線からバッテリに給電を行う本願発明の技術とは、全く異なる技術である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無人飛行装置は、送電線から給電を行うことで、バッテリを大型化することなく、飛行のための電力を確保することが可能になる。
【0024】
特に、本発明の無人飛行装置は、搭載されたバッテリの電力により飛行体を飛行させながら、飛行体に備えられた給電手段により活線状態の送電線からの電力でバッテリの充電を行い、充電中に前記送電線の外観状態を把握して送電線の点検を実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例に係る無人飛行装置の状況を説明する全体の概略図である。
図2】本発明の一実施例に係る無人飛行装置の具体的な状態を説明する外観図である。
図3】環状の本体部の外観図である。
図4】環状の本体部の外観図である。
図5】給電手段の概念図である。
図6】コイルの巻数と得られる電力の関係を表すグラフである。
図7】ドローンの回転翼の回転中心軸を傾ける機構の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に基づいて無人飛行装置の全体の構成を説明する。
図1には本発明の一実施例に係る無人飛行装置により充電を行っている状態の全体の状況を表す概略を示してある。
【0027】
図に示すように、鉄塔1に張られた送電線2には、無人飛行装置3の四角枠状態の環状の本体部4が装着されている。即ち、環状の本体部4の内側に送電線2が配された状態になっている。無人飛行装置3は、飛行体(マルチコプター:ドローン)5が備えられ、ドローン5には動力源となるバッテリ6が備えられ、ドローン5はバッテリ6の電力により飛行する。そして、ドローン5に本体部4が取り付けられている。
【0028】
環状の本体部4には送電線2から電力を得て、バッテリ6の充電を行う給電手段7が備えられている。給電手段7は、本体部4に所定の巻数で巻回されたコイル部材としてのコイル8(図2参照)を有している。具体的には後述するが、活線状態の送電線2からコイル8を介して電力を得て、得られた電力がバッテリ6に給電される。
【0029】
活線状態の送電線2に本体部4を装着し、給電手段7(図2参照)によりバッテリ6の充電を行うため、送電線2から給電を行うことができ、バッテリ6を大型化することなく、ドローン5を飛行させるための電力を確保することができる。
【0030】
従って、送電線2に沿ってドローン5を移動させることで、飛行のための電力を確保することができ、広範囲に張り巡らされた送電線網を基幹経路として、ドローン5の長距離の移動が可能になる。例えば、送電線2から所定の距離の目的地まではバッテリ6の電力で無人飛行装置3を飛行させて所望の作業(配達や撮影等)を行い、充電を行いながら送電線2に沿って所望の場所まで移動し、再び、バッテリ6の電力で無人飛行装置3を飛行させて所望の作業(配達や撮影等)を行うことができる。
【0031】
図2から図4に基づいて無人飛行装置を具体的に説明する。
【0032】
図2には本発明の一実施例に係る無人飛行装置の具体的な構成を説明する外観を示してある。また、図3には開閉環部が閉じている状態の環状の本体部の外観を示してあり、図3(a)は正面視、図3(b)は側面視である。また、図4には開閉環部が開いている状態の環状の本体部の正面視を示してある。
【0033】
図に示すように、本体部4は、下側が開口するコ字状の固定環部11を有し、固定環部11の下側の開口部位には開閉自在に支持された開閉環部12を有している。開閉環部12には、例えば、エアシリンダ等の駆動により開閉するスライド機構の枠材13が備えられている。
【0034】
固定環部11には、ローラ部材15の端部が軸受け17を介して回動自在に支持され、ローラ部材15は軸方向の中央部位に向けて漸次小径とされ、送電線2に接触して転動するようになっている。ローラ部材15を送電線2で転動させることで、送電線2の張架状態に関わらず、送電線2に沿った方向のみにドローン5を確実に移動させることができる。
【0035】
尚、ローラ部材15に駆動手段(例えば、バッテリ6からの電力で駆動する電動モータ)を接続し、ローラ部材15を駆動ローラとすることも可能である。
【0036】
本体部4の固定環部11、及び、開閉環部12には、コイル8が所定の巻数(例えば、39巻)で巻回され、二次側として非接触で電力が取り出されるようになっている。
【0037】
一つのドローン5に対して本体部4が3つ備えられ、本体部4は接続アーム部材16によりドローン5の上側に取り付けられている。接続アーム部材16を介在させることにより、送電線2とドローン5の間に、電磁界ノイズを受けない一定の間隔を維持することができる。
【0038】
ドローン5の上側に本体部4が3つ取り付けられ、3つの本体部4が送電線2に装着された状態で、ドローン5が送電線2に吊架されるようになっている。ドローン5が送電線2に吊架されるため、送電線2に沿った方向(前後)のみのドローン5の移動を行うことができる。そして、突風などが生じても装置が飛ばされることがない。
【0039】
ドローン5には、送電線2の外観状態を把握する点検把握手段としての検査カメラ18が設けられている。また、ドローン5には、二次側の交流電流を整流するAC/DCコンバータ21と、全体としての負荷抵抗を最適化するDC/DCコンバータ22が設けられている。
【0040】
送電線2に沿ってドローン5を移動させながらバッテリ6の充電を行う際に、検査カメラ18により送電線2の外観を撮影して(把握して)不具合の有無を確認することができる。即ち、送電線2の点検のためのドローン5のバッテリ6の充電を、点検中の送電線2から電力を得て行うことができる。
【0041】
上述した無人飛行装置3は、搭載されたバッテリ6の電力によりドローン5を飛行させながら、給電手段7により活線状態の送電線2からの電力でバッテリ6の充電を行い、充電中に送電線2の外観状態を把握する送電線2の点検を実施することができる。
【0042】
尚、点検把握手段を備えず、送電線2の点検方法を実施しない状態で、活線状態の送電線2から給電を行ってバッテリ6の充電を実施する装置とすることも可能である。
【0043】
本体部4を送電線2に装着する場合、図4に示したように、例えば、エアシリンダ等の駆動によりスライド機構の枠材13を移動させて開閉環部12を開いた状態にする。ドローン5の移動により、送電線2を開いた部位から通し、枠材13を移動させて開閉環部12を閉じた状態にする。
【0044】
本体部4を送電線2に装着した後、ドローン5の水平移動により、ローラ部材15を送電線2に転動させながら本体部4を送電線2に沿って移動させる。移動させながら、給電手段7によりバッテリ6の充電を行う。ドローン5を停止させた状態で本体部4を移動させずに、給電手段7によりバッテリ6の充電を行うことも可能である。
【0045】
図5図6に基づいて給電手段7の一例を説明する。
図5には給電手段をブロック構成の状態で表した概念、図6にはコイルの巻数と得られる電力の関係を示してある。
【0046】
本体部4に相当する部位のコイル8が巻かれた部位により取り出される電力P(負荷抵抗Rで消費される電力P)を求める場合、一次側自己インダクタンスL0、二次側自己インダクタンスL1、結合係数k、送電線2を流れる電流の大きさI0と周波数fに基づいて次式で演算される。
P=R・(ω・M・I0)/{R+(ω・L1)}
ここで、ω=2πf
M=(L0・L1)1/2
である。
【0047】
図5に示すように、送電線2に装着される本体部4には、AC/DCコンバータ21、DC/DCコンバータ22を介してバッテリ6が接続されている。AC/DCコンバータ21、DC/DCコンバータ22を介して、取り出される電力が最大となるように負荷抵抗が調整されると共に、交流電流が適切な充電電流に整流されてバッテリ6に供給される。
【0048】
図6に示すように、巻数毎に、負荷抵抗に応じて得られる電力が確認されている。例えば、69巻の場合、3Ωで約9Wの電力が得られることが確認されている。また、24巻、32巻の場合、2Wから3Wの電力が得られることが確認されている。
【0049】
送電線2の電流が1000A、周波数50Hzの場合に取り出せる最大電力Pmaxは、負荷抵抗3Ωを接続した時に得られ(69巻のコイルで得られ)、9Wとされることが確認されている。本体部4を3つ並べているため、取り出すことができる電力は27Wになる。
【0050】
例えば、バッテリ6として3.7V、700mAhのバッテリ6を搭載した場合、ドローン5の飛行時間を7分とすると、飛行に必要な出力Pfは、
Pf×(7分/60分)=3.7V×0.7Ah
Pf=22W
となる。
飛行中にバッテリ6が満充電になる時間Δtは、
(3Pmax-Pf)×(Δt/60分)=3.7V×0.7Ah
Δt=30分
となる。
【0051】
上述したように、送電線2の電流が(500Aから1000A/回線)であることを考えると、ドローン5を飛行させながらであっても、短時間でバッテリ6の充電を行うことが可能になることがわかる。
【0052】
上述した無人飛行装置3は、送電線2から給電を行うことで、バッテリ6を大型化することなく、ドローン5の飛行のための電力を確保することが可能になる。
【0053】
ローラ部材15を送電線2で転動させて送電線2に沿った方向のみにドローン5(無人飛行装置3)を移動させる際に、ドローン5の回転翼の回転中心軸を傾けることで、送電線2に沿った方向の移動を容易に行うことができる。ドローン5の回転翼の回転中心軸を傾ける構成としては、図7に示した構成が考えられる。
【0054】
図7に基づいてドローン5の回転翼の回転中心軸を傾ける構成を説明する。図7にはドローン5の回転翼の回転中心軸を傾ける機構の概念状況を示してある。
【0055】
図7(a)に示すように、ドローン5の回転翼(駆動手段を含む)の部分を回転翼の回転中心軸に直交する軸周りで回動自在にすることができる。これにより、ドローン5の姿勢を保った状態で(送電線2とドローン5の間の距離を保った状態で)、回転翼の角度が送電線2に対して傾斜した状態になり、送電線2に沿った方向の推進力が得られやすくなり、送電線2に沿った無人飛行装置3の移動を容易に行うことができる。
【0056】
図7(b)に示すように、3つの本体部4を支えるそれぞれの軸の長さを異なる長さに設定し、一つのドローン5の全体の角度を変更することができる。これにより、ドローン5が送電線2に対して傾斜した状態になって回転翼の角度が傾斜し、送電線2に沿った方向の推進力が得られやすくなり、送電線2に沿った無人飛行装置3の移動を容易に行うことができる。3つの本体部4を支えるそれぞれの軸を軸方向に伸縮自在にすることで、ドローン5の角度(回転翼の角度)を任意の角度に調整することができる。
【0057】
図7(c)に示すように、接続アーム部材16の両端部(もしくは上端部、下端部の少なくとも一方)に自在継ぎ手を設け、自在継ぎ手と本体部4、ドローン5を接続し、接続アーム部材16を傾斜自在にすることで、一つのドローン5の全体の角度を変更することができる。例えば、本体部4側に対して接続アーム部材16の上端を傾斜させて接続することができる。これにより、接続アーム部材16を所望の角度に傾斜させることで、ドローン5が送電線2に対して傾斜した状態になって回転翼の角度が傾斜し、送電線2に沿った方向の推進力が得られやすくなり、送電線2に沿った無人飛行装置3の移動を容易に行うことができる。
【0058】
尚、図7(c)には、本体部4側に対して接続アーム部材16の上端を傾斜させている例を示してあるが、ドローン5側に対して接続アーム部材16の下端を傾斜させて接続することも可能である。また、本体部4側、ドローン5側のそれぞれに対して接続アーム部材16を傾斜させて接続させることも可能である。
【0059】
上述した実施例に対し、ドローン5に代えて、本体部4に給電用、データ通信用等のアタッチメント(コンセント部材等)を装備することで、送電線2からの給電された電力を他の電動部材(工具や計測機器等)の電力等として用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 鉄塔
2 送電線
3 無人飛行装置
4 本体部
5 ドローン
6 バッテリ
7 給電手段
8 コイル
11 固定部材
12 開閉環部
13 枠材
15 ローラ部材
16 接続アーム部材
17 軸受け
18 検査カメラ
21 AC/DCコンバータ
22 DC/DCコンバータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7