(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】可撓端子及びその製造方法、並びに電気部品
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20230208BHJP
H01R 13/03 20060101ALI20230208BHJP
H01R 11/11 20060101ALI20230208BHJP
H01R 35/02 20060101ALI20230208BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R13/03 Z
H01R11/11 D
H01R35/02 B
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2019060165
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】古木 雄一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-120384(JP,A)
【文献】特開平08-222301(JP,A)
【文献】特開平08-153561(JP,A)
【文献】特開2002-222685(JP,A)
【文献】特開2011-187167(JP,A)
【文献】特開昭63-250082(JP,A)
【文献】特開2019-125430(JP,A)
【文献】特開2014-164951(JP,A)
【文献】特開2013-030337(JP,A)
【文献】特開2008-41332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/00-4/22
H01R11/00-11/32
H01R13/00-13/08
H01R13/15-13/35
H01R35/00-35/04
H01R43/027-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導線の束で構成される編線または撚り線を構成し、かつ矩形の断面形状を有する可撓部材と、
導体材料からなり、筒状の内部空間を有する1対の接続部材と
を備え、
前記可撓部材の両端部が、前記1対の接続部材のそれぞれの前記内部空間に挿入された状態で圧潰されて、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続してなる可撓端子であって、
前記1対の接続部材の少なくとも一方は、
前記可撓部材の端部が前記内部空間に部分的に挿入され、前記可撓部材の非存在状態が確保された状態で、前記端部を挟んで圧着固定された、1対の係止部を有し、かつ前記端部に一体接続された
、前記端部が挿入された部分である接続部と、
前記接続部に隣接して設けられ、前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延び、前記可撓部材の非存在状態で圧潰されて、
前記可撓部材が非存在状態となる箇所の厚さ寸法が
前記接続部より小さい板状をなす延設部と
を有し、
前記延設部の端部に、前記延設部の延在方向と異なる方向に延出し、または前記延設部の板面に対して屈曲する導体板が接続されていることを特徴とする可撓端子。
【請求項2】
前記延設部に、他の部材を連結するための連結孔が形成されている、請求項1に記載の可撓端子。
【請求項3】
前記延設部と前記導体板との接続は、溶接接続である、請求項1または2に記載の可撓端子。
【請求項4】
前記導体板に、他の部材を連結するための連結孔が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項5】
前記導体板は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項6】
前記導体板の表面に、めっきが施されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項7】
前記導線は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項8】
前記接続部材は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項9】
前記導線および前記接続部材の少なくとも一方の表面に、めっきが施されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の可撓端子。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の可撓端子を有する電気部品。
【請求項11】
複数本の導線の束で構成され、編線または撚り線を構成し、かつ矩形の断面形状を有する可撓部材の両端部を、1対の接続部材の管状の内部空間にそれぞれ部分的に挿入して、前記内部空間への前記可撓部材の非存在状態を確保する工程と、
前記可撓部材の端部を部分的に挿入した状態の前記接続部
材を圧潰し、前記可撓部材の端部を挟んで圧着固定することで1対の係止部を形成し、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続
して、前記端部が挿入された部分である接続部を形成する工程と、
前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延びる延設部を
前記接続部に隣接して設け、前記可撓部材の非存在状態で圧潰して、
前記可撓部材が非存在状態となる箇所を、前記接続部よりも厚さ寸法が小さい板状に成形する工程と、
前記延設部の端部に、前記導体板を前記延設部の延在方向と異なる方向に延出し、または前記延設部の板面に対して屈曲した導体板を設ける工程と、
を有することを特徴とする、可撓端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓端子及びその製造方法、並びに電気部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器などを接続して電力を伝送する部材としては、例えば複数本の導線の束で構成された可撓部材を有する可撓端子が用いられている。可撓端子は、可撓部材の両端部に設けられた導体材料からなる接続部材を介して電気機器などの2つの接続対象物同士を接続することで、地震等の激しい振動に対しても、可撓端子を構成する可撓部材で振動を効果的に吸収することができ、あるいは熱膨張差が大きく、変形量が大きくなる使用態様であったとしても、可撓部材が熱膨張および熱収縮による寸法変動を効果的に吸収することができる部材である。
【0003】
このような可撓端子は、例えば
図6に示すように、筒状の内部空間を有する接続部材92、93の内部空間の全長に亘って可撓部材91の端部を挿入した後に、接続部材92、93を圧潰することによって、可撓部材91の両端部のそれぞれに、接続部材92、93が一体化された構成を有している。例えば、特許文献1には、接続部材の内部空間の全長に亘って可撓部材が挿入されていることを確認しやすくするため、接続部材の内外を連通せしめる切り込みを具備する構造が記載されている。また、特許文献2には、接続部材が可撓部材から分離しにくい可撓端子として、接続部材の一部を折れ曲げて可撓部材に食い込ませた構成を有する可撓端子が記載されている。また、特許文献3には、Ni線材の編組線あるいは集合撚線からなる可撓部材が、SUS材製パイプ内に配された状態で、SUS材製パイプが平型に圧縮加工されてなる可撓端子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-153561号公報
【文献】特開平08-222301号公報
【文献】特開2002-222685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3に記載の可撓端子はいずれも、複数本の導線の束で構成された可撓部材を有するため、可撓端子を介して接続される2つの接続対象物に対して、引っ張り、圧縮、ねじり等の外力等が作用して、2つの接続対象物同士の位置関係がずれるような変形が生じたとしても、可撓部材が撓んで、かかる変形を有効に吸収しつつ、これらの接続対象物同士の電気的または熱的な接続を継続して維持することができるため、可撓端子を介して接続された2つの接続対象物同士の位置関係についての自由度は高い。しかしながら、特許文献1~3に記載の可撓端子の両端部は、圧潰した接続部材の全長にわたって可撓部材が内在しているため、可撓端子の両端部の厚さは、可撓部材の厚さと接続部材の厚さの合計厚さになるため厚くなり、加えて、可撓端子を介して2つの接続対象物を電気的または熱的に接続する場合、可撓端子の接続部材に設けた貫通孔と、接続部材上に重ね合わせた接続対象物の貫通孔とを一致させた状態でボルト等を挿通した後に、ボルトの挿入側とは反対側からナットをボルトに螺合させて締め付けるなどの作業が必要になるが、かかる作業を行うスペース(特に可撓端子1aの厚さ方向のスペース)が狭い場合には、可撓端子の接続作業を行うことができない場合があった。このため、可撓端子の接続作業を行うためのスペースに制約がある場合であっても、接続対象物を接続することが可能な可撓端子が求められていた。
【0006】
本発明の目的は、電気機器などの接続対象物同士の位置関係についての自由度が高く、かつ接続対象物に接続させるための作業スペース(特に可撓端子1aの厚さ方向の作業スペース)に制約がある場合であっても、接続対象物同士を接続するための接続作業が容易な可撓端子及びその製造方法、並びに電気部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、可撓部材の端部に一体接続されている接続部から可撓部材とは反対側に延びる、接続部よりも厚さ寸法が小さい板状の延設部を設けることにより、電気機器などの接続対象物同士を接続させるために可撓端子を取り付けるのに必要な作業スペース(特に可撓端子1aの厚さ方向の作業スペース)が小さくなることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)複数本の導線の束で構成される可撓部材と、導体材料からなり、筒状の内部空間を有する1対の接続部材とを備え、前記可撓部材の両端部が、前記1対の接続部材のそれぞれの前記内部空間に挿入された状態で圧潰されて、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続してなる可撓端子であって、前記1対の接続部材の少なくとも一方は、前記可撓部材の端部に一体接続された接続部と、前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延び、前記可撓部材の非存在状態で圧潰されて、前記接続部よりも厚さ寸法が小さい板状をなす延設部とを有することを特徴とする可撓端子。
(2)前記導線の束は、編線または撚り線を構成する、上記(1)に記載の可撓端子。
(3)前記接続部は、前記可撓部材の端部に対して圧着固定された係止部を有する、上記(1)または(2)に記載の可撓端子。
(4)前記延設部に、他の部材を連結するための連結孔が形成されている、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(5)前記延設部の端部に、導体板が接続されている、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(6)前記延設部と前記導体板との接続は、溶接接続である、上記(5)に記載の可撓端子。
(7)前記導体板に、他の部材を連結するための連結孔が形成されている、上記(5)または(6)に記載の可撓端子。
(8)前記導体板は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、上記(5)~(7)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(9)前記導体板の表面に、めっきが施されている、上記(5)~(8)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(10)前記導線は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、上記(1)~(9)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(11)前記接続部材は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなる、上記(1)~(10)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(12)前記導線および前記接続部材の少なくとも一方の表面に、めっきが施されている、上記(1)~(11)のいずれか1項に記載の可撓端子。
(13)上記(1)~(12)のいずれか1項に記載の可撓端子を有する電気部品。
(14)複数本の導線の束で構成される可撓部材の両端部を、1対の接続部材の管状の内部空間にそれぞれ挿入する工程と、前記可撓部材の端部を挿入した状態の前記接続部材の接続部を圧潰して、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続する工程と、前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延びる延設部を、前記可撓部材の非存在状態で圧潰して、前記接続部よりも厚さ寸法が小さい板状に成形する工程と、を有することを特徴とする、可撓端子の製造方法。
(15)前記延設部の端部に、導体板を接続する工程をさらに有することを特徴とする、上記(14)に記載の可撓端子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可撓部材の端部に一体接続されている接続部から可撓部材とは反対側に延びる、接続部よりも厚さ寸法が小さい板状の延設部を設けることにより、接続対象物同士の位置関係についての自由度が高く、かつ接続対象物同士を接続させるために可撓端子を接続対象物に接続する作業スペース(特に可撓端子の厚さ方向の作業スペース)に制約がある場合であっても、電気機器などの接続対象物への接続作業が容易な可撓端子及びその製造方法、並びに電気部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る可撓端子の構成の一例を示すものであって、(a)が斜視図、(b)がA-A’線で切断したときの断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の変形例に係る可撓端子の構成の一例を示すものであって、(a)が斜視図、(b)がB-B’線で切断したときの断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の他の変形例に係る可撓端子の構成の一例を示すものであって、(a)が斜視図、(b)がC-C’線で切断したときの断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る可撓端子の構成の一例を示すものであって、(a)が斜視図、(b)がD-D’線で切断したときの断面図である。
【
図5】(a)~(d)は、
図4に示す可撓端子の変形例であって、延設部の端部に種々の異なる形状の導体板を接続したときの状態を示した図である
【
図6】従来技術に係る可撓端子の構成の一例を示したものであって、(a)が斜視図、(b)がE-E’線で切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
【0012】
<可撓端子>
本実施形態の可撓端子は、複数本の導線の束で構成され、例えば少なくともねじり変形および圧縮変形に対する吸収が可能な可撓部材と、導体材料からなり、筒状の内部空間を有する1対の接続部材とを備え、前記可撓部材の両端部が、前記1対の接続部材のそれぞれの前記内部空間に挿入された状態で圧潰されて、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続してなる可撓端子であって、前記1対の接続部材の少なくとも一方は、前記可撓部材の端部に一体接続された接続部と、前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延び、前記可撓部材の非存在状態で圧潰されて、前記接続部よりも厚さ寸法が小さい板状をなす延設部を有する。
【0013】
本実施形態に係る可撓端子では、上記した構成を有する可撓部材を有するとともに、可撓部材の端部に一体接続されている接続部から可撓部材とは反対側に延び、接続部よりも厚さ寸法が小さい板状の延設部を設けることにより、接続対象物同士の位置関係についての自由度が高く、かつ接続対象物同士を接続させるための可撓端子の接続作業スペース(特に可撓端子の厚さ方向の作業スペース)に制約がある場合であっても、電気機器などの接続対象物への接続作業を容易に行うことができる。
【0014】
以下、本発明の可撓端子の各実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
<可撓端子についての第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る可撓端子1aの構成の一例を示す斜視図である。本実施形態に係る可撓端子1aは、可撓部材11と1対の接続部材12a、13aとを備えるとともに、1対の接続部材12a、13aの少なくとも一方は、可撓部材11の両端部にそれぞれ一体接続された接続部121、131と、接続部121、131よりもそれぞれ厚さ寸法が小さい板状の延設部122a、132aと、を有する。
【0016】
(可撓部材)
可撓部材11は、複数本の導線の束で構成される部材であり、少なくともねじり変形および圧縮変形を吸収することが可能である。このような可撓部材11を2つの接続対象物(図示せず)同士の接続に用いることで、2つの接続対象物間に、引っ張り、圧縮、ねじり等の力が作用して、2つの接続対象物同士の位置関係がずれるような変形が生じたとしても、可撓端子1aの可撓部材11が撓んで、かかる変形を有効に吸収しつつ、これらの
接続対象物同士の電気的または熱的な接続を継続して維持することができる。また、特に振動の激しい環境下での使用態様や、熱膨張差の大きい接続対象物間の接続に用いた場合であっても、振動や熱膨張、熱収縮による寸法変動を吸収することができる。
【0017】
ここで、可撓部材11の断面形状は、矩形であることが好ましい。これにより、可撓部材11が屈曲し易くなるため、ねじり変形や圧縮変形を吸収し易くすることができる。また、可撓部材11からの放熱が促進されるため、特に接続対象物が電気機器である場合に、熱による電気機器への悪影響を低減することができる。他方で、可撓部材11を用いて伝熱部品に用いる場合で、可撓部材11における放熱が望ましくない場合は、熱のロスを防ぐ観点から、可撓部材11の断面形状を略円形としてもよい。
【0018】
また、可撓部材11を構成する導線の断面は、略円形であることがより好ましい。これにより、可撓部材11があらゆる方向に屈曲し易くなるため、端子間の位置関係についての自由度をより高めることができ、また、可撓部材11がねじり変形や圧縮変形を吸収し易くすることができる。
【0019】
また、可撓部材11を構成する導線の束は、編線または撚り線を構成していることが好ましい。これにより、可撓部材11を、長さ方向、幅方向および厚さ方向の3次元的な方向の変形を容易にして屈曲性をより高めて変形を吸収しやすい構成にし、導線の断線を低減することができる。
【0020】
可撓部材11を構成する導線の材質は、可撓部材11において必要とされる導電率や熱伝導率の大きさや、可撓性に応じて決定される。その中でも、特に高い導電率や熱伝導率を得るとともに、高い可撓性を得る観点では、導線は、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなることが好ましい。ここで、導線の表面には、例えば錫、銀またはニッケルからなるめっきが施されていることが、耐食性の点で好ましい。なお、導線の表面には、めっきが施されていなくてもよい。
【0021】
(接続部材)
接続部材12a、13aは、いずれも導体材料からなり、筒状の内部空間S1、S2を有する部材である。これらの接続部材12a、13aは、それぞれの内部空間S1、S2の一部に、可撓部材11の両端部が挿入された状態で圧潰されており、それにより可撓部材11と接続部材12a、13aとが一体接続される。このような接続部材12a、13aを設けることで、可撓端子1aにねじり変形や圧縮変形が加わったときに、可撓部材11の全体で変形を吸収することができる。
【0022】
1対の接続部材12a、13aのうち少なくとも一方は、可撓部材11の端部に一体接続されている接続部121、131と、この接続部121、131から可撓部材11と反対側に延びる延設部122a、132aと、を有する。このとき、
図1に示されるように、1対の接続部材の両方(接続部材12a、13a)が接続部121、131と延設部122a、132aを有するものであってもよい。また、
図2に示されるように、1対の接続部材のうち一方(接続部材12a)のみを、接続部121と延設部122aを有するとともに構成し、他方の接続部材19は、可撓部材11の端部が完全に挿入された状態でボルト等の締結部材による締付力等によって可撓部材の端部に接続され、延設部を有さない従来の接続部材であってもよい。
【0023】
接続部121、131は、接続部材12a、13aのうち、可撓部材11の両端部が挿入された状態で圧潰されている部分である。この接続部121、131は、可撓部材11の端部に対して圧着固定された係止部123、124、133、134を有することが好ましい。これにより、可撓部材11が接続部材12a、13aに係止されるため、可撓端子1aに引張方向の力が加わっても、接続部材12a、13aを可撓部材11から分離しにくくすることができる。
【0024】
延設部122a、132aは、接続部材12a、13aのうち、内部に可撓部材11が存在しない状態で内部空間S1、S2が圧潰されている部分である。ここで、延設部122aは、接続部121の厚さ寸法t1よりも小さい厚さ寸法t2の板状をなす。また、延設部132aは、接続部131の厚さ寸法t1’よりも小さい厚さ寸法t2’の板状をなす。このように、接続部121、131の厚さ寸法より小さい厚さ寸法の延設部122a、132aを有することで、端子の取り付け部分が占有する体積が小さくなるため、この可撓端子1aを用いて接続対象物同士を接続させる際に、可撓端子1aを接続対象物に接続する(取り付ける)ための作業スペース(特に可撓端子1aの厚さ方向の作業スペース)に制約がある場合であっても、可撓端子1aを接続対象物に接続することができる。
【0025】
ここで、接続部121、131の厚さ寸法t1、t1’は、それぞれ可撓部材11が挿入されている部分における接続部121、131の平均の厚さとすることができる。また、延設部122a、132aの厚さ寸法t2、t2’は、それぞれ内部に可撓部材11が存在しない状態で内部空間S1、S2が圧潰されている部分の厚さの最小値とすることができる。
【0026】
この延設部122a、132aには、接続対象物を連結するための連結孔125、135が形成されていることが好ましい。このとき、可撓端子1aを取り付ける接続対象物側の端子(図示せず)にも同様の孔を設けることで、これらの孔と連結孔125、135とを挿通可能な締結部材(ボルト、リベットなど)を用いることができるため、可撓端子1aをより強固に接続対象物(電気機器など)に固定することができる。ここで、連結孔125、135は、接続対象物の端子が延設部122a、132aと接触した状態で回動するのを防ぐため、延設部122a、132aの少なくともいずれかに複数設けられていることが好ましい。
【0027】
延設部122a、132aの端部の形状は、特に限定されず、例えば
図1に示されるように、端面が実質的に揃えられていてもよい。また、
図3に示されるように、筒状の内部空間を有する接続部材12b、13bの圧潰によって接している筒の片面が延出することで、延設部122b、132bを構成してもよい。
【0028】
接続部材12a、13aの材質は、接続部材12a、13aにおいて必要とされる導電性や熱伝導性の大きさや、機械的強度に応じて決定される。その中でも、特に高い導電性や熱伝導性を得るとともに、高い機械的強度を得る観点では、接続部材12a、13aは、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなることが好ましい。ここで、接続部材12a、13aの表面には、例えば錫、銀またはニッケルからなるめっきが施されていてもよい。なお、接続部材12a、13aの表面には、めっきが施されていなくてもよい。
【0029】
<可撓端子についての第二実施形態>
図4は、本実施形態に係る可撓端子1cの構成の一例を示す構成図である。本実施形態に係る可撓端子1cは、可撓部材11と接続部材12c,13cを備えるとともに、接続部材12c,13cの少なくとも一方の接続部材、
図4では双方の接続部材12c,13cは、可撓部材11の端部に一体接続された接続部121、131と、接続部121、131よりも厚さ寸法が小さい板状の延設部122c、132cと、延設部122c、132cの端部に接続されている導体板14c、15cと、を有する。ここで、可撓部材11と接続部材12c,13cについては、第一実施形態と同様にすることができる。
【0030】
(導体板)
導体板14c、15cは、それぞれ接続部材12c、13cの延設部122c、132cの端部に接続されている部材である。このように、延設部122a、132aにそれぞれ導体板14c、15cを接続させるように構成することで、接続部材12c、13cとは別個の部材によって導体板14c、15cを作製することが可能になるため、導体板14c、15cの形状や厚さの自由度を高めることができる。
【0031】
導体板14cの厚さ寸法t3は、延設部122cと同様に、接続部121の厚さ寸法t1よりも小さい。また、導体板15cの厚さ寸法t3’は、延設部132cと同様に、接続部131の厚さ寸法t1’よりも小さい。このことで可撓端子1cを接続対象物に接続する作業スペースに制約がある場合であっても、可撓端子1cを接続対象物に接続することができる。また、接続部材12c、13cの厚さによらずに厚さ寸法t3、t3’をそれぞれ決めることができるため、可撓端子1cの接続対象物への接続部分において所望の機械的特性を持たせることができる。なお、導体板14c、15cの厚さ寸法t3、t3’は、延設部122c、132cの厚さ寸法と同じであってもよく、また、延設部122c、132cの厚さ寸法と異なっていてもよい。
【0032】
導体板14cと延設部122cとの接続や、導体板15cと延設部132cとの接続は、溶接、摩擦攪拌接合等が挙げられるが、接続強度の点から溶接接続であることが好ましく、これらの接続部分には溶接部161、162が形成される。本実施形態に係る可撓端子1cでは、圧潰により形成される延設部122c、132cが板状になっているため、その端部に、導体板14c、15cを容易に溶接接続させることができる。
【0033】
導体板14c、15cには、接続対象物を連結するための連結孔141、151が形成されていることが好ましい。このとき、接続対象物の側の端子にも同様の孔を設けることで、これらの孔と連結孔141、151とを貫通する部材(リベットなど)を用いて固定することが可能になるため、可撓端子1cをより強固に接続対象物に固定することができる。ここで、連結孔141、151は、接続対象物の端子が導体板14c、15cと接触した状態で回動するのを防ぐため、導体板14c、15cの少なくともいずれかに複数設けられていることが好ましい。
【0034】
導体板14c、15cの材質は、導体板14c、15cにおいて必要とされる導電性や熱伝導性の大きさや、機械的強度に応じて決定される。その中でも、特に高い導電性や熱伝導性を得るとともに、高い機械的強度を得る観点では、導体板14c、15cは、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなることが好ましい。ここで、導体板14c、15cの表面には、例えば錫、銀またはニッケルからなるめっきが施されていてもよい。なお、導体板14c、15cの表面には、めっきが施されていなくてもよい。
【0035】
導体板14c、15cは、
図4に示されるように、延設部122c、132cと同じ方向に延出するように構成してもよいが、これに限定されない。本実施形態に係る可撓端子1cは、導体板14c、15cを成形した後で、導体板14c、15cと延設部122c、132cとを接続して作製することが可能なため、導体板14c、15cに複雑な形状を付与することも可能である。
【0036】
より具体的には、
図5(a)に示すように、延設部132dの端部と略同一の平面で、延設部132dと異なる方向に延出する導体板15dを構成してもよい。また、
図5(b)に示されるように、接続対象物に固定する部分である連結孔151が、延設部132eの端部からステップ状に延在する板面に形成されていて、延設部132eとは略平行な位置関係になるように、導体板15eを屈曲させてもよい。また、
図5(c)に示されるように、接続対象物に固定する部分である連結孔151が、延設部132fの板面に対して直交する幅端面側に設けられるように、導体板15fを屈曲させてもよい。また、
図5(d)に示されるように、導体板15gが、より複雑な形状を有していてもよい。
【0037】
このように、本実施形態に係る可撓端子は、接続対象物同士の位置関係についての自由度が高いため、幅広い接続対象物に用いることが可能である。
【0038】
<電気部品>
本実施形態に係る電気部品は、上述の可撓端子を有するものである。このような電気部品としては、特に限定されない。上述の可撓端子は、接続対象物間の振動を吸収し、また、熱膨張および熱収縮による寸法変動を吸収することが可能なため、振動が発生し易い電気部品や、熱が発生し易い電気部品にも、好ましく用いることができる。
【0039】
<伝熱部品>
また、本実施形態に係る可撓端子は、伝熱部品に用いることもできる。このような伝熱部品としては、特に限定されない。上述の可撓端子は、一方の接続対象物から他方の接続対象物に熱を伝導することができるため、一方の接続対象物からの熱によって他方の接続対象物を加熱したり、一方の接続対象物からの熱を他方の接続対象物に逃がして冷却したりすることができる。
【0040】
<可撓端子の製造方法>
本実施形態に係る可撓端子の製造方法は、複数本の導線の束で構成される可撓部材の両端部を、1対の接続部材の管状の内部空間にそれぞれ挿入する工程と、前記可撓部材の端部を挿入した状態の前記接続部材の接続部を圧潰して、前記可撓部材および前記接続部材を一体接続する工程と、前記接続部から前記可撓部材とは反対側に延びる延設部を、前記可撓部材の非存在状態で圧潰して、前記接続部よりも厚さ寸法が小さい板状に成形する工程と、を有する。
【0041】
以下、本発明の可撓端子の製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0042】
(可撓部材の接続部材への挿入)
本実施形態に係る製造方法では、複数本の導線の束で構成される可撓部材と、管状の内部空間を有する1対の接続部材を用い、可撓部材の両端部を、接続部材の管状の内部空間にそれぞれ挿入する。
【0043】
接続部材の管状の内部空間への可撓部材の挿入は、可撓部材が挿入されていない部分が形成されるように、部分的に行う。これにより、可撓部材が挿入されていない部分の圧潰によって延設部を形成することができる。
【0044】
本実施形態で用いられる可撓部材および接続部材としては、銅、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウムまたはニッケルからなるものを用いることが好ましい。また、可撓部材および接続部材としては、錫、銀またはニッケルからなるめっきが施されたものを用いてもよい。なお、めっきが施されていない可撓部材および接続部材を用いてもよく、また、めっきが施されていない可撓部材および接続部材を後述するように接続させた後で、これらを纏めてめっき加工してもよい。
【0045】
(可撓部材と接続部材の接続)
次いで、可撓部材の端部を挿入した状態の接続部材の接続部を圧潰して、可撓部材および接続部材を一体接続する。これにより、接続部材のうち可撓部材の端部が挿入されている部分が接続部となり、圧潰によって可撓部材と接続部材とが固定される。
【0046】
接続部材の接続部を圧潰する手段としては、特に限定されず、公知の手段を用いることができる。
【0047】
可撓部材と接続部材を接続させた後、可撓部材の端部が挿入されている接続部に対して、さらにカシメ加工を施すことが好ましい。カシメ加工を施すことによって、可撓部材が接続部材に係止されて係止部が形成されるため、可撓部材と接続部材とをより強固に固定することができる。
【0048】
(延設部の形成)
接続部から可撓部材とは反対側に延びる延設部について、可撓部材の非存在状態で圧潰して、接続部よりも厚さ寸法が小さい板状に成形する。これにより、接続部材のうち可撓部材が存在しない部分が延設部となり、圧潰によって接続部よりも薄い板状の部分が形成される。この部分を接続対象物に連結することにより、接続対象物同士を接続させるための可撓端子の接続作業スペース(特に可撓端子1aの厚さ方向の作業スペース)に制約がある場合であっても、可撓端子を電気機器などの接続対象物に連結することができる。
【0049】
(導体板の接続)
本実施形態に係る製造方法では、形成される延設部の端部に、導体板を接続する工程をさらに有することが好ましい。これにより、別個に成形した導体板を接続対象物との接続に用いることが可能になるため、接続対象物との接続部分について、形状や厚さの自由度を高めることができる。
【0050】
延設部に導体板を接続させる手段としては、溶接接続を行うことが好ましい。溶接としては、電子ビーム溶接やアルゴン溶接、摩擦攪拌接合を行うことが好ましく、その中でも電子ビーム溶接を行うことがより好ましい。
【0051】
このように、本実施形態に係る可撓端子の製造方法によることで、ねじり変形および圧縮変形に対する吸収が可能であるとともに、端子間の位置関係についての自由度が高く、かつ端子を接続させるスペースに制約がある場合であっても、電気機器などの接続対象物を接続することが可能な可撓端子を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1a~1c 可撓端子
11 可撓部材
12a~12c、13a~13g、19 接続部材
14c、15c~15g 導体板
121、131 接続部
122a~122c、132a~132g 延設部
123、124、133、134 係止部
125、135 延設部の連結孔
141、151 導体板の連結孔
191 接続部材の連結孔
161、162 溶接部