IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金エレクトロデバイス株式会社の特許一覧 ▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-配線構造 図1
  • 特許-配線構造 図2
  • 特許-配線構造 図3
  • 特許-配線構造 図4
  • 特許-配線構造 図5
  • 特許-配線構造 図6
  • 特許-配線構造 図7
  • 特許-配線構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】配線構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20230208BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20230208BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01L23/04 D
H01L23/02 H
H01L23/12 301Z
H01L23/12 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021566821
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036178
(87)【国際公開番号】W WO2021131192
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2019237042
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 正人
(72)【発明者】
【氏名】久保 昇
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-114689(JP,A)
【文献】特開2014-135372(JP,A)
【文献】特開2005-150467(JP,A)
【文献】特表2016-531439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02-23/04、23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上へボールグリッドアレイを用いて実装されることになる配線構造であって、
誘電体からなり、前記回路基板に対向することになる対向面を有する基体と、
前記基体中に設けられ、前記対向面に達し、第1信号線路および第2信号線路を有する第1差動線路と、
前記基体中に設けられ、前記対向面に達し、第3信号線路および第4信号線路を有する第2差動線路と、
前記対向面上に設けられ、接地電位が付与されることになる接地領域と、
前記対向面上に設けられ、前記第1信号線路に接続された第1パッドと、
前記対向面上に設けられ、前記第2信号線路に接続された第2パッドと、
前記対向面上に設けられ、前記接地領域を介して前記第2パッドと隣り合い、前記第3信号線路に接続された第3パッドと、
前記対向面上に設けられ、前記第4信号線路に接続された第4パッドと、
を備え、
前記接地領域は、前記第2パッドと前記第3パッドとの間の介在部と、前記介在部から外れた非介在部とを含み、
前記基体の前記対向面は、前記第1パッドと前記第2パッドとの間の第1領域と、前記第2パッドと前記介在部との間の第2領域と、前記第1パッドおよび前記第2パッドの各々と前記非介在部との間の第3領域とを含み、
前記基体の前記対向面は、前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域の少なくともいずれかにトレンチを有している、
配線構造。
【請求項2】
前記トレンチは少なくとも前記第1領域に位置する、請求項1に記載の配線構造。
【請求項3】
前記トレンチは少なくとも前記第2領域に位置する、請求項1または2に記載の配線構造。
【請求項4】
前記トレンチは少なくとも前記第1領域および前記第2領域に位置する、請求項1に記載の配線構造。
【請求項5】
前記トレンチは少なくとも前記第1領域、前記第2領域および前記第3領域に位置する、請求項1に記載の配線構造。
【請求項6】
前記対向面は縁を有しており、前記対向面上において、前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッドおよび前記第4パッドの各々は前記縁に隣接している、請求項1から5のいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項7】
前記基体はセラミックスからなる、請求項1から6のいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項8】
前記第1パッド、前記第2パッド、前記第3パッド、前記第4パッドおよび前記接地領域の各々の上に、前記ボールグリッドアレイを構成する導電性ボールをさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項9】
前記導電性ボールははんだボールである、請求項8に記載の配線構造。
【請求項10】
前記導電性ボールの体積と等しい体積を有する球の直径をボール径と定義したとき、前記トレンチは前記ボール径の1/3以上かつ前記ボール径以下の深さを有している、請求項8または9に記載の配線構造。
【請求項11】
前記トレンチは100μm以上かつ300μm以下の深さを有している、請求項1から10のいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項12】
前記基体は、少なくとも1つの電子部品が実装されることになる実装面と、前記実装面上の空間を囲む枠部とを有している、請求項1から11のいずれか1項に記載の配線構造。
【請求項13】
前記少なくとも1つの電子部品は光学部品を含み、前記枠部は貫通孔部および透光部の少なくともいずれかを有している、請求項12に記載の配線構造。
【請求項14】
前記基体は、前記トレンチの深さ方向に沿った厚み方向を有しており、前記トレンチは、前記厚み方向に沿った深さ方向を有しており、
前記第1信号線路、前記第2信号線路、前記第3信号線路および前記第4信号線路の各々は、前記基体の前記対向面から前記基体中を前記厚み方向に沿って前記トレンチよりも深く延びている、
請求項1から13のいずれか1項に記載の配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線構造に関し、特に、回路基板上へボールグリッドアレイ(BGA)を用いて実装されることになる配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用のパッケージなどの配線構造を実装する技術のひとつとしてBGA技術がある。この技術によれば、格子状に配列された球状の導電性ボール、典型的にははんだボール、が用いられる。例えば、特開2008-283622号公報(特許文献1)は、BGA技術によって接続される多層誘電体基板を開示している。多層誘電体基板は、はんだボール搭載用のパッドと、このパッドに接続され多層誘電体基板内を通る柱状導体とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-283622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、配線構造の高密度化が要請されている。すなわち、配線構造内の、信号が供される信号線路、および、接地電位が供される接地部に対して、微細化が要求されている。この微細化に対応して仮に、配線構造を回路基板に実装するための導電性ボールも同様に小さくされたとすると、導電性ボールによる配線構造の実装信頼性が確保できない可能性がある。具体的には、第1に、導電性ボールのサイズが過小であれば、接合強度が低下してしまう。第2に、導電性ボールが配線構造と回路基板との間で応力を緩和する機能が低下してしまう。特に、配線構造が主にセラミックスからなり回路基板が主に樹脂からなる場合、両者の間での熱膨張係数の差異が大きいので、熱応力の緩和の必要性が高い。よって、配線構造内の微細化に比して、導電性ボールの小型化には限界がある。よって、高密度化が進むほど、導電性ボールのサイズは、配線構造中の信号線路の断面に比して相対的に大きくなりやすい。よって、配線構造における信号線路とそれに隣り合う信号線路または接地部との間の間隔に比して、導電性ボール間の間隔が狭くなりやすい。
【0005】
配線構造およびそれが実装される回路基板の特性インピーダンスは、通常、ほぼ共通とされる。配線構造における配線間隔が十分である一方で導電性ボール間の間隔が過小である場合、配線構造および回路基板の特性インピーダンスに比して、導電性ボールによって構成されたBGA接合部において特性インピーダンスが局所的に低下してしまう。この局所的な低下によって、特性インピーダンスの不整合が生じる。特性インピーダンスの不整合は、信号周波数が高くなるほど伝送特性に悪影響を及ぼす。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、実装信頼性を維持しつつ良好な高周波伝送特性を得ることができる配線構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態の配線構造は、回路基板上へボールグリッドアレイを用いて実装されることになるものである。配線構造は、基体と、第1差動線路と、第2差動線路と、接地領域と、第1パッドと、第2パッドと、第3パッドと、第4パッドとを有している。基体は、誘電体からなり、回路基板に対向することになる対向面を有している。第1差動線路は、基体中に設けられており、対向面に達しており、第1信号線路および第2信号線路を有している。第2差動線路は、基体中に設けられており、対向面に達しており、第3信号線路および第4信号線路を有している。接地領域は、対向面上に設けられており、接地電位が付与されることになる。第1パッドは、対向面上に設けられており、第1信号線路に接続されている。第2パッドは、対向面上に設けられており、第2信号線路に接続されている。第3パッドは、対向面上に設けられており、接地領域を介して第2パッドと隣り合っており、第3信号線路に接続されている。第4パッドは、対向面上に設けられており、第4信号線路に接続されている。接地領域は、第2パッドと第3パッドとの間の介在部と、介在部から外れた非介在部とを含む。基体の対向面は、第1パッドと第2パッドとの間の第1領域と、第2パッドと介在部との間の第2領域と、第1パッドおよび第2パッドの各々と非介在部との間の第3領域とを含む。基体の対向面は、第1領域、第2領域および第3領域の少なくともいずれかにトレンチを有している。
【発明の効果】
【0008】
上記配線構造によれば、配線の特性インピーダンスがトレンチ近傍で増大する。これにより、導電性ボール同士の接近による特性インピーダンスの局所的低下に起因しての高周波伝送特性への悪影響を抑えることができる。よって、導電性ボール同士の接近を避けるために導電性ボールのサイズを過度に小さくする必要がなく、これにより実装信頼性が維持される。以上から、実装信頼性を維持しつつ良好な高周波伝送特性を得ることができる。
【0009】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態1における電子機器の構成を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の実施の形態1における配線構造の一部構成の回路図である。
図3図1の破線部III-IIIに対応する部分断面図である。
図4】本発明の実施の形態1における配線構造の構成を概略的に示す部分平面図である。
図5】本発明の実施の形態2における配線構造の構成を概略的に示す部分平面図である。
図6】特性インピーダンスを時間領域反射(TDR:Time Domain Reflectometry)として示すシミュレーション結果を示すグラフ図である。
図7】反射係数と周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
図8】伝送係数と周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1における電子機器900の構成を概略的に示す断面図である。電子機器900は、パッケージ100(配線構造)と、BGA90と、プリント基板200(回路基板)と、電子部品300と、光ファイバ310と、蓋体400とを有している。BGA90は、パッケージ100とプリント基板200との間の電気的かつ機械的接続のためのものであり、格子状に配列されたはんだボール91(導電性ボール)を含む。
【0013】
パッケージ100は、図示されているように、プリント基板200上へBGA90を用いて実装されることになるものである。パッケージ100は、誘電体からなる基体(詳しくは後述する)を有しており、この基体は底部101および枠部102を有している。底部101は、電子部品300が実装されることになる実装面SMを有している。枠部102は、実装面SM上の空間CVを囲んでいる。枠部102は、光ファイバ310を通すための貫通孔部110を有している。変形例として、貫通孔部110に代わって透光部が設けられてもよい。透光部は、透光性材料からなる窓部である。
【0014】
本実施の形態においては、電子部品300は、互いに電気的に接続された集積回路(IC)301および光学部品302を含む。IC301の動作周波数は高周波であってよく、例えば55GHz以上であってよい。光学部品302は、例えば、フォトダイオードである。光ファイバ310は、光学部品302に接続されており、貫通孔部110を通って空間CVの外へ延びている。
【0015】
図2は、パッケージ100(図1)の一部構成の回路図である。図3は、破線部III-III(図1)に対応する部分断面図である。図4は、パッケージ100の構成を概略的に示す部分平面図である。
【0016】
パッケージ100は、誘電体からなる基体80を有している。基体80は、誘電体からなり、例えばセラミックスからなる。基体80は、実装面SMと、対向面SPとを有している。対向面SPは、パッケージ100がプリント基板200へ実装される際に、BGA90を介してプリント基板200に対向することになる。実装面SM上には、電子部品300(図1)が実装されることになる。
【0017】
パッケージ100は基体80中に、差動線路131(第1差動線路)と、差動線路132(第2差動線路)と、接地部10とを有しており、これらは対向面SPおよび実装面SMの各々に達している。接地部10は、差動線路131および差動線路132の各々の電気的シールドのためのものであり、接地電位(基準電位)が付与されることになる。なお接地電位は、電子機器900が使用される際に付与されていればよい。差動線路131は、信号線路11(第1信号線路)および信号線路12(第2信号線路)を有しており、差動線路132は、信号線路13(第3信号線路)および信号線路14(第4信号線路)を有している。
【0018】
パッケージ100は基体80の対向面SP上に、接地領域20と、パッド21(第1パッド)と、パッド22(第2パッド)と、パッド23(第3パッド)と、パッド24(第4パッド)とを有しており、これらはそれぞれ、接地部10と、信号線路11と、信号線路12と、信号線路13と、信号線路14とに接続されている。パッド23は、接地領域20を介してパッド22と隣り合っている。接地領域20には接地電位が付与されることになる。接地領域20は、パッド22とパッド23との間の介在部20iと、介在部から外れた非介在部20nとを含む。
【0019】
基体80の対向面SPは、図4に示されているように、パッド21とパッド22との間の領域R1(第1領域)と、パッド22と介在部20iとの間の領域R2(第2領域)と、パッド21およびパッド22の各々と非介在部20nとの間の領域R3(第3領域)とを含む。基体80の対向面SPは、領域R1、領域R2および領域R3の少なくともいずれかにトレンチTRを有している。トレンチTRは少なくとも領域R1に位置していてよい。またトレンチTRは少なくとも領域R2に位置していてよい。好ましくは、トレンチTRは少なくとも領域R1および領域R2に位置している。より好ましくは、図4に示されているように、トレンチTRは少なくとも領域R1、領域R2および領域R3に位置している。
【0020】
平面レイアウト(図4参照)において、好ましくは、トレンチTRのうちパッド21およびパッド22に隣接する部分は、縁EDに垂直であってパッド21とパッド22との中点を通る仮想線に対して線対称性を有している。より好ましくは、トレンチTRのうちパッド21~24に隣接する部分は、縁EDに垂直であってパッド22とパッド23との中点を通る仮想線に対して線対称性を有している。
【0021】
トレンチTRは100μm以上かつ300μm以下の深さを有していることが好ましい。トレンチTR内の空間の誘電率は、基体80の誘電率よりも低く、典型的には約1である。典型的には、トレンチTR内は、気体によって充填されているか、または真空である。
【0022】
トレンチTRは、図4に示されているように対向面SPの縁EDに達していなくてよい。その場合、基体80の製造においてトレンチTRに対応するパンチ孔を有するグリーンシートを用いた工法の適用が容易となる。トレンチTRが縁EDに達しているとすると、グリーンシートのパッド21に対応する部分が周囲の他の部分から分離されてしまうので、積層前の単一のグリーンシートのハンドリングが困難となる。なお、グリーンシートの積層後にトレンチが、例えばレーザ加工で形成される場合は、トレンチが縁EDに達していても、上記の問題は生じない。
【0023】
対向面SP上において、パッド21、パッド22、パッド23およびパッド24の各々は縁EDに隣接していることが好ましい。ここで、あるパッドが縁EDに隣接しているということは、図4に示されているように、当該パッドと縁EDとの間に他のパッドがないことを意味する。具体的には、パッド21、パッド22、パッド23およびパッド24の各々は、BGA90に対応して対向面SP上に格子状に配列されたパッドのうち対向面SPの外周に配置されたものである。典型的には、パッド21、パッド22、パッド23およびパッド24は、対向面SP上の全パッドのうち、縁EDから最も近くに位置するパッドである。
【0024】
パッケージ100は、図2に示されているように、基体80の実装面SM上に、接続端30と、接続端31と、接続端32と、接続端33と、接続端34とを有していてよく、これらはそれぞれ、接地部10と、信号線路11と、信号線路12と、信号線路13と、信号線路14とに接続されている。接続端30と、接続端31と、接続端32と、接続端33と、接続端34とは、電子部品300(図1)へのパッケージ100の電気的接続に用いられる。
【0025】
プリント基板200(図3)は、基体280と、回路パターンとを有している。基体280は樹脂からなってよい。言い換えれば、プリント基板200は樹脂基板であってよい。回路パターンは、例えば、回路パターン220と、回路パターン221と、回路パターン230と、回路パターン231とを含む。またプリント基板200は、回路パターン220と回路パターン230とを厚み方向においてつなぐビア電極210と、回路パターン221と回路パターン231とを厚み方向においてつなぐビア電極211とを有していてよい。
【0026】
電子機器900(図1)においては、図4に示されているように、パッド21、パッド22、パッド23、パッド24および接地領域20の各々の上に、BGA90を構成するはんだボール91が配置されている。よって、電子機器900が製造される際には、パッド21、パッド22、パッド23、パッド24および接地領域20の各々の上に、BGA90を構成するはんだボール91が搭載されたパッケージ100が準備される。そしてBGA90を用いてパッケージ100がプリント基板200に実装される。例えば図3に示された視野においては、接地領域20と回路パターン220との間、および、パッド21と回路パターン221との間が、はんだボール91によって接合される。
【0027】
はんだボール91は、パッド21、パッド22、パッド23、パッド24および接地領域20等の上に搭載される時点と、その後においてパッケージ100とプリント基板200との間に挟まれる時点とで、変形を受ける。この変形によってはんだボール91は、図3に示されているように、球形から変形した形状を有している。はんだボール91の体積と等しい体積を有する球の直径をボール径と定義したとき、トレンチTRはボール径の1/3以上かつボール径以下の深さを有していることが好ましい。ボール径は、実装信頼性の観点で200μmよりも大きいことが好ましく、高密度化の観点で400μmよりも小さいことが好ましく、例えば300μm程度である。隣接するはんだボール91の中心間距離は、例えば、500μm程度である。隣接するはんだボール間の隙間(図3における横方向の隙間)は、通常、隣接するパッド間の隙間(図3におけるパッド20とパッド21との間の隙間)よりも小さく、上記のようにボール径が300μmであって中心間距離が500μmである場合は200μm未満である。
【0028】
本実施の形態によれば、配線の特性インピーダンスがトレンチTR近傍で増大する。これにより、はんだボール91同士の接近による特性インピーダンスの局所的低下に起因しての高周波伝送特性への悪影響を抑えることができる。よって、はんだボール91同士の接近を避けるために導電性ボール91のサイズを過度に小さくする必要がなく、これにより実装信頼性が維持される。以上から、実装信頼性を維持しつつ良好な高周波伝送特性を得ることができる。
【0029】
具体的には、はんだボール91同士の接近によって特性インピーダンスが局所的に低下した箇所と、トレンチTRによって特性インピーダンスが局所的に増加した箇所とが十分に近ければ、信号周波数が極端に高くない限り、これら低下と増加とが実質的に相殺することによって特性インピーダンスの整合を図ることができる。よって、はんだボール91とトレンチTRとの間の距離は小さいことが好ましく、この距離は、例えばボール径以下である。
【0030】
トレンチTRは少なくとも領域R1(図4)に位置していてよい。これにより、信号線路11およびパッド21を含む配線と、信号線路12およびパッド22を含む配線との間の容量結合が小さくなる。よって、トレンチTR近傍で両配線の特性インピーダンスが増大する。よって、パッド21上のはんだボール91とパッド22上のはんだボール91との接近に起因しての特性インピーダンスの局所的低下による悪影響を抑えることができる。よって、信号線路11を含む配線と、信号線路12を含む配線との各々の高周波伝送特性を高めることができる。言い換えれば、差動線路131(図2)の高周波伝送特性を高めることができる。
【0031】
トレンチTRは少なくとも領域R2(図4)に位置していてよい。これにより第1に、信号線路12およびパッド22を含む配線と、接地部10および接地領域20を含む部材との間の容量結合が小さくなる。よって、トレンチTR近傍で配線の特性インピーダンスが増大する。よって、パッド22上のはんだボール91と、接地領域20上のはんだボール91との接近に起因しての特性インピーダンスの局所的低下による悪影響を抑えることができる。よって、配線の高周波伝送特性を高めることができる。第2に、信号線路12およびパッド22を含む配線と、信号線路13およびパッド23を含む配線との間の容量結合が小さくなる。よって、信号線路12を含む差動線路131(図2)と、信号線路13を含む差動線路132(図2)との間でのクロストークが抑制される。
【0032】
トレンチTRが領域R1および領域R2だけでなく領域R3にも位置していることによって、トレンチTRによるインピーダンス整合の余地が、より確保される。
【0033】
対向面SP上において、図4に示されているように、パッド21、パッド22、パッド23およびパッド24の各々が縁EDに隣接していることが好ましい。これにより、差動線路131および差動線路132用のパッドが対向面SP上において縁EDに隣接して配置される。よって、これら差動線路用のパッドと縁EDとの間に他のパッドが配置されない。よって、プリント基板200(図3)の、縁ED近傍部分において、これら他のパッドからの配線に妨げられることなく、差動線路用のパッドからの配線を配置することができる。
【0034】
プリント基板200はしばしば樹脂基板であり、その場合、パッケージ100の基体80がセラミックスからなると、プリント基板200とパッケージ100との間での熱膨張係数の差異が大きく、よって熱応力が生じやすい。本実施の形態によれば、はんだボール91を過度に小さくする必要がないので、この熱応力を十分に緩和することができる。これにより、熱応力に起因して両者の接合が外れることが防止される。
【0035】
BGAの導電性ボールとして、本実施の形態においては、はんだボール91が用いられる。これにより、典型的なBGA技術を用いることができる。
【0036】
トレンチTRの深さがボール径の1/3以上であることによって、トレンチTRによる、容量結合の低減効果を十分に確保しやすくなる。トレンチTRの深さがボール径以下であることによって、パッケージ100の配線のうち、特性インピーダンスがトレンチTRによって増大される部分の長さが過大になることが避けられる。よって、はんだボール91から遠い位置においてまで特性インピーダンスが増大されてしまうことが避けられる。よって、トレンチTRに起因して特性インピーダンスの不整合がかえって悪化することを避けることができる。
【0037】
トレンチTRの深さが100μm以上であることによって、トレンチTRによる、容量結合の低減効果を十分に確保しやすくなる。トレンチTRの深さが300μm以下であることによって、配線のうち、特性インピーダンスがトレンチTRによって増大される部分の長さが過大になることが避けられる。よって、はんだボール91から遠い位置においてまで特性インピーダンスが増大されてしまうことが避けられる。よって、トレンチTRに起因して特性インピーダンスの不整合がかえって悪化することを避けることができる。
【0038】
基体80が枠部102(図1)を有することによって、パッケージ100は蓋体400と共に、封止された空間CVを構成することができる。これにより、空間CV内に電子部品300を封止することができる。
【0039】
枠部102の貫通孔部110は、光学部品302に関連した光を透過させるのに用いることができる。光学部品302が搭載されたパッケージは、しばしば高周波伝送を要する。本実施の形態によれば、高周波伝送の特性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、パッケージ100上に実装される電子部品300(図1)は、光ファイバ310が接続された光学部品302を含む。変形例として、電子部品は光学部品および光ファイバを含まなくてもよい。また本実施の形態においてはパッケージ100が枠部102を有しているが、変形例として、配線構造は枠部を有していなくてもよい。また本実施の形態においては、BGA接続における典型的な導電性ボールであるはんだボール91が用いられているが、導電性ボールははんだボールに限定されるものではない。
【0041】
<実施の形態2>
図5は、本実施の形態2におけるパッケージ100V(配線構造)の構成を概略的に示す部分平面図である。パッケージ100Vにおいては、基体80のトレンチTRは、領域R1、領域R2および領域R3のそれぞれに位置するトレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3を含む。パッケージ100(図4:実施の形態1)のトレンチTRは、これらトレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3が互いにつながることで構成されたものに相当する。一方、パッケージ100Vは、図5に示されているように、互いに分離されたトレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3を有している。なお変形例として、トレンチTR3へトレンチTR1およびトレンチTR2の一方がつながり他方がつながらない形態が用いられてもよい。また他の変形例として、トレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3のうちの1つまたは2つのみが設けられてもよい。
【0042】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0043】
本実施の形態によっても、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。さらに、本実施の形態によれば、トレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3が互いに分離されていることによって、基体80の製造においてトレンチTR1、トレンチTR2およびトレンチTR3に対応するパンチ孔を有するグリーンシートを用いた工法の適用が容易となる。
【0044】
<シミュレーション>
トレンチTR(図5参照)の構成とはんだボールのボール径とが高周波伝送特性へ及ぼす影響についてのシミュレーション結果について、図6図8を参照して、以下に説明する。なお各図において、比較例を示すものとして、線E0aはボール径300μmかつトレンチなしの条件に対応し、線E0bはボール径200μmかつトレンチなしの条件に対応する。また実施例を示すものとして、線E2aはボール径300μmかつトレンチTR1,TR2の深さ200μmかつトレンチTR3なしの条件に対応し、線E2bはボール径300μmかつトレンチTR1,TR2の深さ300μmかつトレンチTR3なしの条件に対応し、線E3aはボール径300μmかつトレンチTR1~TR3の深さ200μmの条件に対応し、線E3bはボール径300μmかつトレンチTR1,TR2の深さ300μmかつトレンチTR3の深さ200μmの条件に対応する。
【0045】
図6は、特性インピーダンスを時間領域反射(TDR:Time Domain Reflectometry)として示すシミュレーション結果を示すグラフ図である。TDRの時間軸は空間軸とみなすことができ、図中、おおよそ50~65psの範囲がBGA90近傍の位置に相当する。比較例としての線E0a(ボール径300μmかつトレンチなし)を参照して、おおよそ50~65psで特性インピーダンスの著しい局所的低下が見られ、これは特性インピーダンスの著しい不整合につながっている。比較例としての線E0b(ボール径200μmかつトレンチなし)を参照して、ボール径を300μmから200μmに低減することで、この不整合が緩和されている。しかしながら、前述したように、ボール径が小さいと実装信頼性の低下が懸念される。これに対して実施例(線E2a、線E2b、線E3aおよび線E3b)によれば、300μmのボール径を用いつつも特性インピーダンスの不整合が緩和されている。
【0046】
図7は、反射係数と周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフ図である。比較例としての線E0a(ボール径300μmかつトレンチなし)は、おおよそ20~60GHzの範囲で、他のいずれの例に比しても、より大きな反射係数を有しており、これは好適でない伝送特性を意味する。比較例としての線E0b(ボール径200μmかつトレンチなし)を参照して、ボール径を300μmから200μmに低減することで反射係数が低減されている。しかしながら、前述したように、ボール径が小さいと実装信頼性の低下が懸念される。これに対して実施例(線E2a、線E2b、線E3aおよび線E3b)によれば、300μmのボール径を用いつつも反射係数が低減されている。反射係数の低減は、BGA90近傍で特性インピーダンスがより整合されたためと考えられる。
【0047】
図8は、伝送係数と周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフ図である。比較例としての線E0a(ボール径300μmかつトレンチなし)は、おおよそ60GHz以下の範囲で、他のいずれの例に比しても、より小さな伝送係数を有しており、これは好適でない伝送特性を意味する。比較例としての線E0b(ボール径200μmかつトレンチなし)を参照して、ボール径を300μmから200μmに低減することで伝送係数が増大されている。しかしながら、前述したように、ボール径が小さいと実装信頼性の低下が懸念される。これに対して実施例(線E2a、線E2b、線E3aおよび線E3b)によれば、300μmのボール径を用いつつも伝送係数が増大されている。伝送係数の増大は、BGA90近傍での信号反射が低減されたためと考えられる。
【0048】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0049】
10 :接地部
11 :第1信号線路
12 :第2信号線路
13 :第3信号線路
14 :第4信号線路
20 :接地領域
20i :介在部
20n :非介在部
21 :第1パッド
22 :第2パッド
23 :第3パッド
24 :第4パッド
30~34 :接続端
80 :基体
90 :BGA
91 :はんだボール(導電性ボール)
100 :配線構造
100,100V :パッケージ(配線構造)
101 :底部
102 :枠部
110 :貫通孔部
131 :第1差動線路
132 :第2差動線路
200 :プリント基板(回路基板)
210,211 :ビア電極
220,221,230,231 :回路パターン
280 :基体
300 :電子部品
302 :光学部品
310 :光ファイバ
400 :蓋体
900 :電子機器
CV :空間
ED :縁
R1 :第1領域
R2 :第2領域
R3 :第3領域
SM :実装面
SP :対向面
TR,TR1~TR3 :トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8