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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】半導体装置、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20230209BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20230209BHJP
【FI】
H01L23/12 Q
H01L23/12 F
H01S5/022
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021083469
(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公開番号】P2022016297
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020119320
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】宮田 忠明
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭宏
(72)【発明者】
【氏名】中垣 政俊
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152465(JP,A)
【文献】特開2018-182035(JP,A)
【文献】特開2005-277164(JP,A)
【文献】特開2018-110262(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03499559(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子が搭載されたサブマウントと、
前記サブマウントが搭載されたパッケージ基板と、
を有し、
前記サブマウントは、前記半導体素子が搭載される第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に位置する側面と、を有し、
前記第2の面は、溝と、放熱部と、を有しており、
前記放熱部は前記パッケージ基板と第1接合部材によって物理的に接合されており、
前記側面に、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを第2接合部材によって電気的に接続する接続部が設けられており、
前記放熱部と前記接続部は、前記溝により離隔しており、電気的に絶縁されており、前記第1接合部材の一部は前記溝の中に設けられている、半導体装置。
【請求項2】
前記第2の面は、前記放熱部が設けられた第1領域と、前記溝によって前記第1領域と隔てられた第2領域と、を有し、
前記接続部は、前記側面および第2領域の一部に形成されており、前記溝から離隔している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記側面に設けられ、かつ、内面が導電膜で覆われた端面スルーホールと、前記導電膜と前記パッケージ基板の表面に接しており、前記パッケージ基板に近づくにつれ外側面が前記導電膜から離れる導電フィレットと、を有し、
前記端面スルーホールは、前記溝から離隔している、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体素子は、光半導体素子、またはパワー半導体素子を含む請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体素子は、複数設けられている請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1接合部材と前記第2接合部材は、異なる材料である請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1接合部材は、Ag、Cu、Auから選ばれる少なくとも一つを含む、ナノメートル材またはマイクロメートル材で構成される請求項1~のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体素子と、
前記半導体素子が搭載されたサブマウントと、
前記サブマウントが搭載されたパッケージ基板と、
を有し、
前記サブマウントは、前記半導体素子が搭載される第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に位置する側面と、を有し、
前記第2の面は、溝と、放熱部と、を有しており、
前記放熱部は前記パッケージ基板と第1接合部材によって物理的に接合されており、
前記側面に、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを第2接合部材によって電気的に接続する接続部が設けられており、
前記放熱部と前記接続部は、前記溝により離隔しており、電気的に絶縁されており、
前記第1接合部材は、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを接合する前の溶融温度よりも、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを電気的に接合する前の前記第2接合部材の溶融温度が高く、かつ、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを接合した後の溶融温度よりも、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを電気的に接合する前の前記第2接合部材の溶融温度が低い、半導体装置。
【請求項9】
裏面に放熱部と溝を有し、側面に端面スルーホールを有するサブマウントを準備する第1工程と、
第1の接合材料で、前記放熱部をパッケージ基板に物理的に接合する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記端面スルーホールの内側に第2の接合材料を配置して、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを電気的に接続する第3工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2工程で、前記第1の接合材料の少なくとも一部を前記溝の内部に収容させる、請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2の接合材料は金属ボールであり、前記第1の接合材料と異なる材料で形成されている、請求項または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第3工程は、加熱により前記金属ボールを溶融する工程を含み、
前記第1の接合材料は、前記加熱の温度よりも再溶融温度が高い材料で形成されている、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記パッケージ基板は、複数のパッケージ領域を含む一つのシート状の基板の一部であり、
前記第3工程の後に、前記シート状の基板を個々の前記パッケージ基板に分割する工程をさらに有する請求項12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体、パワー半導体などの半導体素子をパッケージ内に配置して小型化した半導体モジュールが広く用いられている。
【0003】
発光ダイオード素子が搭載された回路基板の側面に半円状のスルーホールが形成され、回路基板の裏面に放熱端子と、スルーホールに接続される下面電極端子が形成された発光ダイオード構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-080640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッケージ内に配置される半導体素子の発熱量は大きく、効率的に熱を逃がす構成が求められるが、放熱のための配線と電気的な接続のための配線とを準備すると、半導体装置が大型化するおそれがある。電気的な接続を担う配線面積を低減し、半導体装置を小型化する構成が求められる。
【0006】
本発明は、配線面積を低減し、半導体装置を小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの側面において、半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子が搭載されたサブマウントと、前記サブマウントが搭載されたパッケージ基板と、を有し、
前記サブマウントは、前記半導体素子が搭載される第1の面と、前記第1の面の反対側に位置する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面との間に位置する側面と、を有し、
前記第2の面は、溝と、放熱部と、を有しており、
前記放熱部は前記パッケージ基板と第1接合部材によって物理的に接合されており、
前記側面に、前記サブマウントと前記パッケージ基板とを第2接合部材によって電気的に接続する接続部が設けられており、前記放熱部と前記接続部は、前記溝により離隔しており、電気的に絶縁されている。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成により、配線面積を低減し、半導体装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の半導体装置におけるサブマウントの実装状態を示す図である。
図2】サブマウントの裏面と側面の形状を示す図である。
図3】パッケージ化された半導体装置の断面模式図である。
図4】半導体装置の製造工程図である。
図5】半導体装置の製造工程図である。
図6】半導体装置の製造工程図である。
図7】半導体装置の製造工程図である。
図8】半導体装置の製造工程図である。
図9A図8のI-I'断面での実装工程図である。
図9B図8のI-I'断面での実装工程図である。
図9C図8のI-I'断面での実装工程図である。
図9D図8のI-I'断面での実装工程図である。
図9E図8のI-I'断面での実装工程図である。
図10A】シート状基板上の複数のパッケージ領域の模式図である。
図10B】各パッケージ領域に実装されたサブマウントの模式図である。
図10C】シート状基板の分割により得られるパッケージ基板の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<半導体装置の構成>
図1は、実施形態の半導体装置1におけるサブマウント10の実装状態を示す図、図2は、半導体装置1で用いられるサブマウント10の裏面と側面の形状を示す図である。図1では、サブマウント10が搭載される面をX-Y面、X-Y面と垂直な方向をZ方向とする。Z方向は、サブマウント10の高さ方向に対応する。
【0011】
半導体装置1は、半導体素子30a、30b、30c(以下、適宜「半導体素子30」と総称する)と、これらの半導体素子30が搭載されたサブマウント10と、サブマウント10が搭載されたパッケージ基板20を備える。図1では、3つの半導体素子30がサブマウント10に搭載されているが、この例に限定されない。サブマウント10に単一の半導体素子30が搭載されてもよいし、複数の半導体素子30が一次元または2次元のアレイ状に配置されていてもよい。
【0012】
図1では、半導体素子30として、レーザダイオード(LD)等の光半導体素子をサブマウント10に搭載するが、この例に限定されない。整流器、昇圧器などのパワー半導体素子をサブマウント10に搭載してもよいし、単一またはアレイ状のLED(Light Emitting Device)が搭載されてもよい。
【0013】
サブマウント10は、電気的に絶縁性、かつ熱伝導性の高い材料で形成されている。サブマウント10の材料として、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)等を用いることができる。サブマウント10は、半導体素子30が搭載される第1の面と、第1の面と反対側の第2の面と、第1の面と第2の面の間の側面103を有する。ここでは、第1の面をサブマウント10の上面101、第2の面をサブマウント10の裏面102とする。
【0014】
図2に示すように、サブマウント10の裏面102は、溝12と放熱部16を有する。溝12は、サブマウント10の裏面102に直接形成されている。放熱部16は、熱伝導率のよい金属膜等で形成されている。サブマウント10の実装時には、放熱部16は、後述する第1接合材料41(図5参照)を硬化させてできる第1接合部材42によってパッケージ基板20に物理的に固定される。
【0015】
サブマウント10の側面103には、サブマウント10とパッケージ基板20とを電気的に接合するために、端面スルーホール13が形成されている。端面スルーホール13はサブマウント10を厚さ方向に貫通するが、側面103で外部に開放または露出されている。このようなスルーホールを「端面スルーホール」と呼ぶ。
【0016】
端面スルーホール13の側壁は導電膜14aで覆われている。導電膜14aはサブマウント10の上面101に延びて、上面101の電極パターン14bに連続している。端面スルーホール13の側壁を覆う導電膜14aは、サブマウント10の裏面102にも延びている。サブマウント10の裏面102で、端面スルーホール13の周囲を囲む導電膜14cが形成されている。導電膜14a、14c、及び電極パターン14bを合わせて導電膜14とする。
【0017】
サブマウント10の裏面102で、放熱部16と、端面スルーホール13から延びる導電膜14cは、溝12により離隔しており、電気的に隔てられている。裏面102のうち、放熱部16が設けられる領域を第1領域102A、溝12によって放熱部16と隔てられた領域を第2領域102Bとする。放熱部16は、サブマウント10とパッケージ基板20との電気的な接合に寄与せず、放熱のみに利用することも可能である。溝12はまた、後述するように、第1接合部材42の余剰部を収容することができ、パッケージ内での電気的な短絡を防止できる。これにより、配線面積を低減し半導体装置を小型化しつつ、放熱性を維持することができる。
【0018】
導電膜14cは、サブマウント10の裏面102で溝12から離隔して、端面スルーホール13の周囲を取り囲んでいる。導電膜14cが溝12から離隔して設けられていることによっても、パッケージ内での電気的な短絡が防止される。
【0019】
図1では、端面スルーホール13に金属ボール15が置かれ、サブマウント10とパッケージ基板20の間の最終的な電気接合が得られる直前の状態が示されている。金属ボール15は、「第2の接合材料」の一例である。金属ボール15は、Sn、Au、Ag、Cu、Ni、Bi、In等、または、それら複数の材料により構成されるAuSn、SnBi、Sn-Ag-Cu(「SAC」と呼ばれる)などの鉛フリーはんだで形成されている。
【0020】
図1の状態から金属ボール15を加熱することで、金属ボール15が溶融し、端面スルーホール13内の導電膜14aから、フィレット状に濡れ広がって、第2接合部材として後述する導電フィレット43(図3参照)が形成される。導電フィレット43は、導電膜14aとパッケージ基板20の表面に接しており、パッケージ基板20に近づくにつれ外側面が導電膜14aから離れる形状を有している。この加熱処理により、サブマウント10とパッケージ基板20の間の電気的な接合が得られる。
【0021】
ここでは第2の接合材料を金属ボール15として記載しているが、AuSn等をめっき等で形成してもよい。また、第2の接合材料の形状はボール型に限定されず、スタッド型や円柱型であってもよい。いずれの場合も、第1接合部材42の接合前の溶融温度は、第2の接合材料(たとえば金属ボール15)の溶融温度よりも低く、かつ、第1接合部材42の接合後の溶融温度は、第2の接合材料(たとえば金属ボール15)の溶融温度よりも高いことが好ましい。なお、第1接合部材42の溶融温度とは、部材が溶融し始める温度のことである。
【0022】
サブマウント10は、金属ボール15の加熱処理の間も、第1接合部材42により、パッケージ基板20の表面の定位置に固定されている。第1接合部材42には、例えば、Ag、Cu、Au等から選ばれる少なくとも一つを含み、サイズがナノメートル~マイクロメートルの材料を用いて構成されることが好ましい。また、金属ボール15と同様の材料であってもよい。例えばAuSnを用いた場合、溶融時に拡散されるAu量を多くすることにより、再溶融温度を金属ボール15の溶融温度より高くすることが可能となる。また放熱性を要求しない用途であれば、樹脂入りの金属溶融材料も使用可能である。
【0023】
サブマウント10とパッケージ基板20との電気的な接合が完了すると、サブマウント10および半導体素子30は封止される。一例として、パッケージ基板20にカバーが被せられ、パッケージ基板20の外周に沿って形成された金属パターン21に接合される。
【0024】
図3は、サブマウント10および半導体素子30が封止された半導体装置1の断面模式図である。パッケージ基板20にカバー32が被せられ、サブマウント10に搭載された半導体素子30が封止されている。カバー32は、ガラス、セラミック、絶縁性樹脂等で形成されてもよい。半導体素子30がLDの場合、カバー32に、LDからの出射光を透過する窓が形成されていてもよい。半導体素子30がパワー半導体の場合、カバー32を熱伝導率の高い金属、ガラス、樹脂、セラミック等で形成してもよい。
【0025】
カバー32の下面は、パッケージ基板20の金属パターン21に接合されている。図3では、パッケージ基板20にカバー32が被せられているが、パッケージ基板20をケーシング内に収容して、平坦なカバーをかぶせてもよい。
【0026】
サブマウント10に搭載された半導体素子30は、ワイヤ31等で電極パターン14bに接続されてもよい。サブマウント10の側面103(図1参照)で、端面スルーホール13に、第2接合部材としての導電フィレット43が形成され、サブマウント10とパッケージ基板20が電気的に接続されている。具体的には、端面スルーホール13に形成された導電膜14(導電膜14a、14c、及び電極パターン14bを含む)と導電フィレット43で電気的な接続部40が形成される。
【0027】
サブマウント10の裏面の放熱部16は、溝12によって接続部40から隔てられており、サブマウント10とパッケージ基板20との電気接続には寄与しない。放熱部16は、半導体素子30で発生した熱をパッケージ基板20から外部に逃がす役割のみに利用することも可能であり、放熱効率が良い。
【0028】
放熱部16をパッケージ基板20に固定する第1接合部材42は、その一部が溝12の内部に収容されていてもよい。溝12の存在により、放熱部16の物理的な接合時に、金属材料が濡れ広がって電気的な接続部40に到達することを防止できる。また、第1接合部材42と金属ボール15とで異なる材料を用いることができる。
【0029】
<半導体装置の製造工程>
図4図8は、半導体装置1の製造工程を示す斜視図である。図4で、サブマウント10を搭載するためのパッケージ基板20を準備する。パッケージ基板20には、あらかじめ所定の電極端子23が形成されている。電極端子23は、パッケージ基板20の内部の配線に接続されていてもよい。
【0030】
パッケージ基板20には、封止用の金属パターン21の他に、サブマウント10を固定する金属パターン22が形成されている。金属パターン22は、サブマウント10の放熱部16をパッケージ基板20に固定し、放熱部16とともに半導体素子30からの熱をパッケージ基板20に逃がす。金属パターン22は、熱伝導性の良い材料で形成され、ヒートシンクとしても機能する。
【0031】
図5で、金属パターン22の上に、サブマウント10の放熱部16を固定するための第1の接合材料41を、ディスペンサ等を用いて配置する。第1の接合材料41として、Au、Ag、Cu等の金属ナノパーティクルやAu、Ag、Cu等の金属ペースト、金属ナノペースト等を用いることができる。ナノパーティクルを用いる場合は、第1の接合材料41は、金属ナノパーティクルと有機溶剤を含んでいてもよい。
【0032】
図6で、サブマウント10を準備する。サブマウント10は、裏面102に放熱部16と溝12を有し(図2参照)、側面103に端面スルーホール13を有する。端面スルーホール13は溝12から離隔しており、側壁には、導電膜14aが形成されている。サブマウント10の上面101には、導電膜14aから連続する電極パターン14bが形成されている。サブマウント10には、半導体素子30a~30cが搭載されている。
【0033】
図7で、サブマウント10をパッケージ基板20に固定する。このときの固定は、第1の接合材料41(図5参照)による物理的な接合であり、サブマウント10とパッケージ基板20との電気的な接続に寄与しない接合である。第1の接合材料41を用いた接合は、加熱接合である。加熱温度は、150℃~270℃である。加熱温度は、金属ボール15による電気的な接続部40を形成する加熱温度よりも低い。
【0034】
サブマウント10をパッケージ基板20に実装する時の加重により、サブマウント10の放熱部16とパッケージ基板20の金属パターン22の間で第1の接合材料41が濡れ広がる。その後、加熱硬化することで、サブマウント10の放熱部16は、第1接合部材42によってパッケージ基板20に固定される。なお、加重と加熱は同時に行われてもよい。
【0035】
パッケージ基板20上には、電極端子23が30~1000umの狭ピッチで形成されており、サブマウント10の側面103には、導電膜14で覆われた端面スルーホール13も30~1000umの狭ピッチで形成されている。サブマウント10の固定によって、サブマウント10の端面スルーホール13は、パッケージ基板20の上の電極端子23に位置合わせされる。加熱接合時に、余剰の第1の接合材料41が濡れ広がっても、サブマウント10の裏面102の溝12内に収容され、電極端子23や導電膜14との短絡を防止することができる。
【0036】
図8で、端面スルーホール13内に、金属ボール15を配置する。金属ボール15は、パッケージ基板20の電極端子23の上に置かれる。これが図1の状態である。金属ボール15を、放熱部16の加熱接合よりも高い温度、たとえば280℃でリフローすることで端面スルーホール13に形成された導電膜14と電極端子23が、電気的に接続される。これにより、狭ピッチの配線が形成される。なお、金属ボール15をパッケージ基板20に形成しておき、形成されている金属ボール15の位置と端面スルーホール13の位置とが合うようにサブマウント10を配置してもよい。
【0037】
放熱部16を固定する第1接合部材42の融点または再溶融温度は、金属ボール15の溶融温度であるリフロー温度よりも高いため、リフロー時にサブマウント10は固定されたままである。溝12内に第1接合部材42の一部が存在する場合でも、リフロー温度では溶融しないので、電極端子23や金属ボール15に接触しない。
【0038】
放熱部16の物理的な接合と、端面スルーホール13での電気的な接続を、2段階に分けて別々に行うことによって、第1の接合材料41は金属ボール15と異なる材料を用いることができる。半導体装置1を小型化しつつ放熱効率を向上でき、かつパッケージ内での短絡を防止することができる。また、サブマウント10をパッケージ基板20に精度よく実装することができる。
【0039】
図9A図9Eは、2段階接合によるサブマウント10の実装工程を、図8のI-I'断面で示す。図9Aは、図5の状態に対応する。パッケージ基板20の金属パターン22上に、第1の接合材料41を配置する。上述のように、第1の接合材料41は、金属ボール15のリフロー温度よりも低い融点をもつ、金属のナノパーティクル、または金属のナノペーストである。サブマウント10をボンダ等により吸着保持し、放熱部16を金属パターン22に位置合わせし、端面スルーホール13を電極端子23に位置合わせする。
【0040】
図9Bで、サブマウント10を第1の接合材料41によってパッケージ基板20に物理的に接合する。図9Bは、図7の状態に対応し、たとえば250℃で熱圧着する。熱圧着により、放熱部16と金属パターン22は、第1接合部材42によって一体的に接合される。このとき、余剰の第1の接合材料41が金属パターン22上で濡れ広がっても、溝12内に収容され、電極端子23との接触は防止される。
【0041】
図9Cで、電極端子23上に第2の接合材料として金属ボール15を配置する。図9Cは、図8の状態に対応する。電極端子23とサブマウント10の端面スルーホール13は位置合わせされているので、電極端子23上に金属ボール15をおくことで、金属ボール15は端面スルーホール13内に収容される。あらかじめ端面スルーホール13の曲率と、金属ボール15の曲率を合わせておくことで、金属ボール15のほぼ半球が端面スルーホール13内に収容される。
【0042】
図9Dで、サブマウント10をパッケージ基板20に電気的に接続する。具体的には、280℃程度のリフローで金属ボール15を溶融して、端面スルーホール13に接続される導電フィレット43を形成する。端面スルーホール13の内面の導電膜14aと導電フィレット43で、電気的な接続部40が形成される。
【0043】
図9Eで、半導体素子30とサブマウント10上の電極パターン14bを、ワイヤ31等で接続し、パッケージ基板20にカバー32をかぶせて封止する。半導体素子30が面発光レーザの場合、カバー32の上面に半導体素子30からの出射光が透過する窓が設けられてもよい。半導体素子30が端面発光レーザの場合、カバー32の側面に半導体素子30からの出射光が透過する窓が設けられてもよい。
【0044】
サブマウント10の裏面で、放熱部16は電気的な接続部40と確実に隔離されており、効率的な配線配置で配線面積が低減される。また、広範囲の放熱部16で放熱性を維持しつつ、パッケージ内での短絡が防止される。
【0045】
上記では、単一のパッケージ基板20にサブマウント10を搭載する例を説明したが、複数のパッケージ基板がひとつのシート状に配置された基板を用いてもよい。この場合、たとえば図9Dの状態、すなわちサブマウント10がパッケージ基板に電気的に接続されるまで、複数の装置を一括して作製し、その後、シート状の基板を分割して個々のパッケージ基板20を得てもよい。あるいは、サブマウント10上の半導体素子30をワイヤボンディング等でサブマウント10に電気接続した後に、個々のパッケージ基板20に分割してもよい。
【0046】
図10A図10Cは、シート状の基板200を用いるときの作製例を示す。図10Aで、シート状の基板200の各パッケージ領域210-1~210-n(適宜、「パッケージ領域210」と総称する)に、図4の金属パターンを形成する。複数のパッケージ領域210は、分割領域215によって区画されている。
【0047】
図10Bで、図9A図9Dの工程が複数のパッケージ領域210で一括して行われ、サブマウント10が対応するパッケージ領域210に電気的に接続される。具体的には、放熱部16(図2参照)を物理的に固定した後に、金属ボール15を溶融して導電フィレット43を含む電気的な接続部40が形成される。
【0048】
図10Cで、シート状の基板200を分割領域215に沿って分割し、サブマウント10を搭載した個々のパッケージ基板20を得る。シート状の基板200は、ダイシング分割、プレス分割など、適切な方法で分割することができる。その後、個々のパッケージ基板20にカバー32をかぶせて(図9E参照)、複数の半導体装置1を得る。
【0049】
半導体装置の一括形成により、製造効率が向上する。実施形態の半導体装置1は、効率的な配線配置で、配線面積が低減され、小型化が実現されている。したがって、パッケージ領域210の面積が低減され、一枚のシート状の基板200に含まれるパッケージ領域210の数を増やすことができる。
【0050】
上述のように、第1の接合材料41で放熱部16をパッケージ基板20に固定する第1段階の物理的な接合の後に、端面スルーホール13で電気的な接続をとる第2段階の接合が行われる。第2段階の電気的な接続時に、サブマウント10はパッケージ基板20に確実に固定されているので、端面スルーホール13を狭ピッチの電極端子23に確実に電気接続することができる。
【0051】
第1段階の物理的な接合で、余剰の第1の接合材料41が溝12の内部に収容されるので、電気的な接続部との短絡を防止することができる。
【0052】
金属ボール15を低融点はんだ材料で形成することで、半導体素子30への影響が抑制される。第1接合部材42の融点はリフロー温度よりも高いので、リフロー時にもサブマウント10とパッケージ基板20との物理的な接合は、維持される。
【0053】
放熱部16は、電気接続のための領域を除いて、サブマウント10の裏面102の広い範囲にわたって形成されるので、放熱効果が高い。放熱部16は、溝12によって電気的な接続部と隔てられているので、実装工程を通して、短絡の発生が抑制される。
【0054】
以上、特定の実施例に基づいて半導体装置1の構成と製造方法を説明したが、本発明は上記の例に限定されない。溝12の配置は、図2のようなL字型の配置に限定されず、放熱部16を広くとることのできる適切な位置に配置され得る。溝12は、放熱部16と電気的な接続部を隔てて余剰の接合部材を収容できればよいので、断面が半円形、V字型等の溝であってもよい。金属ボール15の曲率半径と端面スルーホール13の曲率半径は必ずしも同程度でなくてもよく、金属ボール15のほとんどが端面スルーホール13内に位置するように曲率を調整してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 半導体装置
10 サブマウント
101 上面(第1の面)
102 裏面(第2の面)
102A 第1領域
102B 第2領域
103 側面
12 溝
13 端面スルーホール
14、14a、14c 導電膜
14b 電極パターン
15 金属ボール(第2の接合材料)
16 放熱部
20 パッケージ基板
21、22 金属パターン
23 電極端子
30 半導体素子
32 カバー
40 接続部
41 第1の接合材料
42 第1接合部材
43 導電フィレット(第2接合部材)
200 シート状の基板
210-1~210-n パッケージ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C