(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】カウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230209BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B62D25/08 H
F16B5/07 L
(21)【出願番号】P 2018216520
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】小林 潤仁
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226411(JP,A)
【文献】特開2008-155748(JP,A)
【文献】特開2014-055641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
F16B 5/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、ウインドシールドの下縁部に隣接するように配置されるカウルルーバと、前記ウインドシールドの下縁部にブラケットが取り付けられるブラケット付きウインドシールドとの連接構造であって、
前記カウルルーバは、カウルルーバ本体と、前記カウルルーバ本体の前記ウインドシールド側の端部から車体の車室内側に向けて延設されてブラケット側連接部に対向配置されるカウルルーバ側連接部と、を有し、
前記ブラケットは、前記ウインドシールドの下縁部であり、かつ前記車室内側の面に固定される固定部と、前記固定部の下縁部から前記車室内側に向けて延設された前記ブラケット側連接部と、を有し、
前記カウルルーバ側連接部と前記ブラケット側連接部のうち一方の連接部は、他方の連接部に向けて突出された突起部本体と、前記突起部本体に弾性変形可能に設けられた爪部と、を有する係合部を備え、
前記他方の連接部は、前記突起部本体が挿入されて前記爪部と係合する貫通孔を有する被係合部を備え、
前記爪部は、前記カウルルーバを前記ブラケットに組み付ける際に、前記貫通孔の内壁面に押されて弾性変形し、元の状態に復元することにより前記貫通孔と係合
し、
前記一方の連接部は、前記貫通孔に挿入され、前記突起部本体の挿入方向長さよりも長いガイド用突起部を有するガイド部材を備える、
カウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項2】
前記係合部は、前記一方の連接部の長手軸に沿って複数備えられ、
前記被係合部は、前記他方の連接部の長手軸に沿って複数備えられる、
請求項1に記載のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記ブラケットの長手軸と平行な方向に長辺を有する矩形状に構成されている、
請求項1
又は2に記載のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項4】
前記貫通孔の前記長辺の長さは、前記突起部本体の長手軸の方向の長さよりも長い、
請求項
3に記載のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項5】
前記一方の連接部は、位置決め用突起部を有する位置決め部材を備え、
前記位置決め用突起部の長手軸の方向の長さは、前記貫通孔の長辺の長さと同じか、前記位置決め用突起部が前記貫通孔を貫通できる程度に長い、
請求項
3又は
4に記載のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【請求項6】
前記一方の連接部は前記カウルルーバ側連接部であり、前記他方の連接部は前記ブラケット側連接部である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のフロントガラス(ウインドシールドに相当)の下縁部を挟持するカウルルーバが開示されている。このカウルルーバは、カウルルーバのフロントガラス側の縁部(後端部)に、挟持縁部と挟持片とからなる断面略コ字状の挟持部が形成されている。
【0003】
特許文献1のカウルルーバをフロントガラスに組み付ける作業(以下、「連接作業」と称する。)について説明する。フロントガラスは、カウルルーバの連接作業に先立って車体の窓枠に予め取り付けられており、このフロントガラスの下縁部に、カウルルーバの挟持部を接近させる。次に、カウルルーバの挟持片の上面をフロントガラスの下側縁に当接させ、挟持縁部と挟持片との間でフロントガラスの下縁部を挟持するようにカウルルーバを上方に移動する。このような連接作業により、挟持片が挟持縁部に対して弾性変形されて、挟持縁部と挟持片との間にフロントガラスの下縁部が挟持される。これによって、カウルルーバがフロントガラスに組み付けられてなる連接構造体が構成される。
【0004】
一方、特許文献2には、ウインドウガラス(ウインドシールドに相当)の下縁部とウォータタンク(カウルルーバに相当)とが、側方部材(ブラケットに相当)を介して組み付けられた連接構造体が開示されている。
【0005】
特許文献2の側方部材は、第1及び第2の部分を有している。第1の部分は、ウインドシールドに固定される固定面を備えており、この固定面は、両面テープを介してウインドシールドの車内側面に接着される。第2の部分は、カウルルーバを着脱できる係合凹部を備えている。
【0006】
特許文献2のウォータタンクは、ウォータタンクの下面に突起部を備えており、この突起部が、側方部材の係合凹部に係合あるいは嵌合される。これにより、ウォータタンクが側方部材付きウインドウガラスに組み付けられてなる連接構造体が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-97061号公報
【文献】特表2011-520694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の連接構造は、ブラケットを備えていないため、カウルルーバの硬質な挟持部とフロントガラスの下縁部との間に異物(砂等の粒状異物)が侵入した場合、車体の走行中に異音(フロントガラスと異物との擦れ音)が発生するという問題があった。また、走行中の振動等により、異物がフロントガラスと擦れてフロントガラスの表面に傷が発生し、この傷を起点にフロントガラスが割れるという虞があった。
【0009】
一方、特許文献2の連接構造は、側方部材を備えることで特許文献1の問題を解消することができるものの、ウォータタンクを側方部材に容易に組み付けることができないという問題があった。
【0010】
すなわち、連接作業は、特許文献1の如く、車体の窓枠にフロントガラスを予め取り付けた状態で行うことが一般的である。特許文献2の連接構造では、作業者がウインドウガラスの下縁部に沿って移動しながら、ウォータタンクの突起部を、側方部材の係合凹部に順次係合させていく作業を行う必要があり、作業者の移動の際に車体が邪魔になるので、連接作業性が悪いという問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、カウルルーバをブラケット付きウインドシールドに容易に組み付けることができる新規なカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造は、本発明の目的を達成するために、車体に取り付けられ、ウインドシールドの下縁部に隣接するように配置されるカウルルーバと、ウインドシールドの下縁部にブラケットが取り付けられるブラケット付きウインドシールドとの連接構造であって、カウルルーバは、カウルルーバ本体と、カウルルーバ本体のウインドシールド側の端部から車体の車室内側に向けて延設されてブラケット側連接部に対向配置されるカウルルーバ側連接部と、を有し、ブラケットは、ウインドシールドの下縁部であり、かつ車室内側の面に固定される固定部と、固定部の下縁部から車室内側に向けて延設されたブラケット側連接部と、を有し、カウルルーバは、カウルルーバ本体と、カウルルーバ本体の後端部から室内側に向けて延設されてブラケット側連接部に対向配置されるカウルルーバ側連接部と、を有し、カウルルーバ側連接部とブラケット側連接部のうち一方の連接部は、他方の連接部に向けて突出された突起部本体と、突起部本体に弾性変形可能に設けられた爪部と、を有する係合部を備え、他方の連接部は、突起部本体が挿入されて爪部と係合する貫通孔を有する被係合部を備え、爪部は、カウルルーバをブラケットに組み付ける際に、貫通孔の内壁面に押されて弾性変形し、元の状態に復元することにより貫通孔と係合する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、カウルルーバをブラケット付きウインドシールドに容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1に示した連接構造体を構成する各構成部材を分離して示した組立斜視図
【
図3】ウインドシールドの下縁部に沿ってブラケットが接着固定された説明図
【
図4】
図1に示したカウルルーバの構成を車内面側から見たときの説明図
【
図10】カウルルーバを車体の上方から見たときの係合部の拡大図
【
図11】カウルルーバを車体の下方から見たときの係合部の拡大図
【
図12】係合部を被係合部に係合させるための動作を時系列的に示した説明図
【
図13】被係合部に係合した爪部の状態を示した要部拡大図
【
図14】カウルルーバを車体の上方から見たときのガイド部材の拡大図
【
図15】カウルルーバを車体の下方から見たときのガイド部材の拡大図
【
図16】カウルルーバを車体の上方から見たときの位置決め部材の拡大図
【
図17】カウルルーバを車体の下方から見たときの位置決め部材の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明に係るカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造の好ましい実施形態について説明する。なお、以下の図面において、同一又は類似する部材については、同一の符号を付して説明し、重複する場合にはその説明を省略する場合もある。
【0016】
図1は、実施形態のカウルルーバとブラケット付きウインドシールドとの連接構造(以下、「連接構造」と略称する。)により組み立てられた連接構造体10の全体斜視図であり、
図2は、
図1に示した連接構造体10を構成する各構成部材を分離して示した組立斜視図である。
【0017】
図2に示すように、連接構造体10を構成する各構成部材は、ウインドシールド12と、ブラケット14と、カウルルーバ16と、を有している。このような構成部材を有する連接構造体10によれば、長手軸Aを有する長尺形状のブラケット14が、ウインドシールド12の下縁部12Aに沿って両面接着テープ18により接着固定される。これにより、ブラケット14付きウインドシールド12が構成される。
【0018】
図3には、ブラケット14付きウインドシールド12の斜視図が示されている。この後、
図2に示すように、このブラケット14に対し、長手軸Bを有する長尺形状のカウルルーバ16がブラケット14に組み付けられる。これにより、
図1に示した連接構造体10が構成される。
【0019】
なお、添付図面において、矢印U(up)は車体(不図示)の上方を示し、矢印D(down)は車体の下方を示し、矢印F(forward)は車体の前方を示し、矢印B(backward)は車体の後方を示す。また、ウインドシールド12の「面」に関し、「車外側面」と称した場合には車体の外側に面する面を指し、「車内側面」と称した場合には車体の車室内側に面する面を指す。また、ブラケット14及びカウルルーバ16の「面」に関しては、「上面」と称した場合には上方に向いた面を指し、「下面」と称した場合には下方に向いた面を指す。
【0020】
ここで、
図4に示す連接構造体10の正面図は、カウルルーバ16の構成を車内側面から見たときの説明図である。カウルルーバ16の構成を説明するために、
図4の5-5線に沿う断面図が
図5に示され、
図4の6-6線に沿う断面図が
図6に示され、
図4の7-7線に沿う断面図が
図7に示され、
図4の8-8線に沿う断面図が
図8に示され、
図4の9-9線に沿う断面図が
図9に示されている。
【0021】
〔ウインドシールド12〕
図5から
図9に示すように、ウインドシールド12は、車体の前方側の窓枠(不図示)に取り付けられるフロントガラスであり、合わせガラスによって構成されている。すなわち、ウインドシールド12は、2枚のガラス板20、22を、中間膜24を介して接合することにより構成されている。このウインドシールド12は、後述するカウルルーバ16の連接作業に先立って車体の窓枠に予め取り付けられる。
【0022】
ガラス板20、22は、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。ガラス板20、22は、例えばフロート法などにより板状に成形され、重力成形またはプレス成形などにより高温で曲げ成形される。ガラス板20、22は、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。強化ガラスは、物理強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。物理強化ガラスである場合は、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。化学強化ガラスである場合は、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、ガラス板20、22は、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。ガラス板20、22の板厚は特に限定されないが、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましい。ガラス板20、22の厚みは同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、ガラス板20、22の一方、もしくは両方が、合わせガラスを車両に取り付けたときに、下辺側(エンジンフード側)から上辺側(ルーフ側)に向かうにつれて、厚みが厚くなる楔形状であってもよい。
【0023】
中間膜24は、ガラス板20、22を接合する。中間膜24は、ポリビニルブチラール(PVB)からなる中間膜のほか、特に耐水性が要求される場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いることができ、さらに、アクリル系光重合型プレポリマー、アクリル系触媒重合型プレポリマー、アクリル酸エステル・酢酸ビニルの光重合型プレポリマー、ポリビニルクロライドなども使用可能である。中間膜24は、単層構造、複数層構造のいずれでもよい。なお、合わせガラスを構成するガラスの枚数は、2枚に限定されず、3枚以上でもよい。中間膜24は、3枚以上のガラスを接合する場合は、2枚以上用いてもよい。中間膜24は厚みが一定でもよいし、合わせガラスを車両に取り付けたときに、下辺側(エンジンフード側)から上辺側(ルーフ側)に向かうにつれて、厚みが厚くなる楔形状であってもよい。
【0024】
合わせガラスの周縁部には、不図示の黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)が全周にわたって帯状に形成されていてもよい。遮蔽層はガラス板20、22の両方に設けられていてもよいし、いずれか一方にのみに設けられていてもよい。遮蔽層は、合わせガラスを車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有している。遮蔽層は、セラミックペーストをガラス板20、22両方、またはいずれか一方の面上に塗布した後に焼成することにより形成される。遮蔽層の厚みは3μm以上15μm以下であることが好ましい。また、遮蔽層の幅は特に限定されないが、20mm以上300mm以下であることが好ましい。
【0025】
〔ブラケット14〕
図5に示すように、ブラケット14は、ウインドシールド12の下縁部12Aにカウルルーバ16の後端部16Aを組み付ける連接部材として機能する。ブラケット14は、例えばステンレス、アルミニウム又は鉄等の金属製であり、ウインドシールド12の下縁部12Aに沿った長手軸A(
図2参照)を有する。実施形態では、金属製のブラケット14を例示するが、ブラケット14は樹脂製であってもよい。その場合、ブラケット14の材質としては、軽量で耐候性のある熱可塑性エラストマーを例示することができる。また、ブラケット14は剛性を備えることが好ましく、その場合、ブラケット14の硬度(JISK6253デュロメータ・タイプA硬度(以下「硬度」という))としては、例えば90度以上100度以下であることが好ましい。ブラケット14の硬度が90度以上であれば、ブラケット14自体に剛性を備えさせることができる。
【0026】
また、
図5に示すように、ブラケット14は、ウインドシールド12の下縁部12Aであり、かつウインドシールド12の室内側の面に両面接着テープ18を介して固定される平板状の固定部26と、固定部26の下縁部から車体の車室内側に向けて延設された平板状のブラケット側連接部28と、を有し、断面形状がL字状に構成されている。なお、実施形態では、両面接着テープ18によって固定部26をウインドシールド12に固定するとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系又はエポキシ樹脂系等の公知の接着剤や、ホットメルト接着剤等を用いて接着固定してもよい。
【0027】
〔カウルルーバ16〕
カウルルーバ16は、車体に取り付けられ、ウインドシールド12の下縁部12Aに隣接するように配置される。このカウルルーバ16は、例えばポリプロピレン又はABS(アクリロニトリル、ブタジエン及びスチレンの3成分からなる熱可塑性樹脂)等の射出成形品からなる板材部材である。カウルルーバ16は、カウルルーバ本体30と、カウルルーバ本体30の後端部(カウルルーバ16の後端部16Aに相当)から室内側に向けて延設されてブラケット側連接部28に対向配置される平板状のカウルルーバ側連接部32と、を有している。カウルルーバ16においても、断面形状がL字状に構成されている。なお、実施形態では、樹脂製のカウルルーバ16を例示するが、カウルルーバ16はステンレス、アルミニウム又は鉄等の金属製であってもよい。
【0028】
カウルルーバ側連接部32は、係合部34を備えている。ここで、
図10は、カウルルーバ16を車体の上方から見たときの係合部34の拡大図であり、
図11は、カウルルーバ16を車体の下方から見たときの係合部34の拡大図である。
【0029】
図10及び
図11に示すように、係合部34は、ブラケット側連接部28(
図5参照)に向けて突出された突起部本体36と、突起部本体36に弾性変形可能に設けられた爪部38と、を有する。
【0030】
突起部本体36は、カウルルーバ側連接部32の面に対して垂線方向に突出して形成されている。また、突起部本体36は、平板状に構成されてその上面及び下面が長手軸Bと平行な方向に配置されており、この突起部本体36の中央部分に、爪部38が一対のスリット40、40を介して弾性変形可能に設けられている。この爪部38は、突起部本体36との連結部38Aを基端部としたときに先端部に向けた傾斜面38Bが形成され、その傾斜面38Bの先端部にストッパ部38Cが形成されている。このように構成された係合部34によれば、連結部38Aを支点として爪部38を車体の前方側に弾性変形させることができる。
【0031】
一方、
図2及び
図3に示すように、ブラケット側連接部28は、被係合部42を備えている。被係合部42は、係合部34(
図10参照)の突起部本体36が挿入されて爪部38と係合する貫通孔44を有している。この貫通孔44は、ブラケット14の長手軸Aと平行な方向に長辺を有する矩形状に構成されており、その長辺の長さは、突起部本体36の長手軸Bの方向の長さよりも長めに構成されている。よって、突起部本体36は、貫通孔44に対して「隙間嵌め」の嵌め合いで挿入される。
【0032】
図12に示す(A)、(B)、(C)、(D)の各図面は、係合部34が被係合部42に係合していく動作を時系列的に示した説明図であり、特に爪部38が貫通孔44に係合していく動作を示している。
【0033】
図12(A)では、車体の上下方向において爪部38の連結部38Aを貫通孔44に正対させた状態が示されている。この状態からカウルルーバ16を上方に向けて移動させていくと、
図12(B)に示すように、突起部本体36(
図11参照)が貫通孔44に挿入されていく。そして、爪部38は、その傾斜面38Bが貫通孔44の内壁面44Aに押されることから、
図12(C)に示すように、連結部38Aを支点として車体の前方側に弾性変形されていく。そして、ストッパ部38Cが貫通孔44を通過すると、
図12(D)に示すように、爪部38が元の状態に復元してストッパ部38Cが貫通孔44に係合する。具体的には、
図13に示す係合後の爪部38に示すように、ストッパ部38Cがブラケット側連接部28の面に当接することにより、ストッパ部38Cが貫通孔44に係合する。
【0034】
このように、カウルルーバ16を上方に向けて移動させるだけの作業で係合部34が被係合部42に係合し、カウルルーバ16がブラケット14付きウインドシールド12に組み付けられる。ここで、実施形態の連接構造では、
図2に示すように、カウルルーバ16の長手軸Bに沿って係合部34を複数個所(
図2では10箇所)設け、これに対応してブラケット14の長手軸Aに沿って被係合部42も複数個所(
図2では10箇所)設けたが、これは一例であり、例えば、係合部34と被係合部42はそれぞれ1箇所以上設けていればよい。つまり、1箇所のみであっても、係合部34と被係合部42との係合により、カウルルーバ16をブラケット14付きウインドシールド12に組み付けることができる。
【0035】
なお、
図10及び
図11で示す符号46は、突起部本体36を補強するリブであり、このリブ46、46は突起部本体36と一体に形成されている。また、
図11で示す符号48は、カウルルーバ側連接部32を補強するリブであり、このリブ48は、カウルルーバ側連接部32を挟んで係合部34の反対側に形成され、かつカウルルーバ16の長手軸Bに沿って所定の間隔で複数形成されている(
図4参照)。更に、実施形態の連接構造によれば、
図12(D)で示すように、カウルルーバ16がブラケット14付きウインドシールド12に組み付けられると、
図5から
図9に示すように、ウインドシールド12の上面とカウルルーバ本体30の上面とが同一面上に配置される。
【0036】
【0037】
ガイド部材50は、カウルルーバ側連接部32に備えられている。ここで、
図14は、カウルルーバ16を車体の上方から見たときのガイド部材50の拡大図であり、
図15は、カウルルーバ16を車体の下方から見たときのガイド部材50の拡大図である。
【0038】
図14及び
図15に示すように、ガイド部材50は、ブラケット側連接部28(
図6参照)に向けて突出されたガイド用突起部52を備えている。
【0039】
ガイド用突起部52は、平板状に構成されてその上面及び下面が長手軸Bと平行な方向に配置されている。また、ガイド用突起部52は、カウルルーバ側連接部32の面に対して垂線方向に突出して形成されており、その突出長さ(L1)は、
図10に示した突起部本体36の突出長さ(L2)よりも長めに構成されている。
【0040】
このように構成されたガイド部材50は、
図3及び
図6に示すように、ブラケット14付きウインドシールド12にカウルルーバ16を組み付ける際に、ブラケット14の貫通孔44にガイド用突起部52が挿入されるが、その突出長さ(L1、L2)の大小関係で
図10及び
図11に示した突起部本体36よりも先に貫通孔44に挿入されていく。つまり、ガイド用突起部52が貫通孔44に挿入されていくその動作によって、突起部本体36は、突起部本体36が挿入される貫通孔44に向けて自動的に案内される。よって、ガイド用突起部52が挿入される貫通孔44にガイド用突起部52を合わせた状態で、カウルルーバ16をブラケット14に向けて押し込むだけで、
図12に示した係合部34を被係合部42に係合させることができる。
【0041】
なお、
図14及び
図15に示したガイド部材50は、本願の連接構造において必須の構成要素ではないが、ガイド部材50を備えることにより、係合部34を被係合部42に容易に係合させることができるので、このようなガイド部材50を備えることが好ましい。また、ガイド部材50は、
図4に示すように、長手軸Bの中央位置に対して対称位置にそれぞれ1箇所備えられているが、ガイド部材50の配置位置及び配置数はカウルルーバ16の形状に応じて適宜設定されるものである。
【0042】
次に、
図7に示す位置決め部材60について説明する。
【0043】
位置決め部材60は、カウルルーバ側連接部32に備えられている。ここで、
図16は、カウルルーバ16を車体の上方から見たときの位置決め部材60の拡大図であり、
図17は、カウルルーバ16を車体の下方から見たときの位置決め部材60の拡大図である。
【0044】
図16及び
図17に示すように、位置決め用突起部62の長手軸の方向の長さは、貫通孔44の長辺の長さと同じか、位置決め用突起部62が貫通孔44を貫通できる程度に長めに構成されている。よって、位置決め用突起部62は、貫通孔44に対して「締り嵌め」の嵌め合いで挿入される。また、位置決め部材60は、
図16及び
図17に示すように、位置決め用突起部62に弾性変形可能に設けられた爪部38を有する。
【0045】
位置決め用突起部62は、カウルルーバ側連接部32の面に対して垂線方向に突出して形成されている。また、位置決め用突起部62は、平板状に構成されてその上面及び下面が長手軸Bと平行な方向に配置されており、その幅(W1)は、
図10に示した突起部本体36の幅(W2)及び貫通孔44の幅(W3:
図3参照)よりも、位置決め用突起部62が貫通孔44を貫通できる程度に長め(「締り嵌め」の嵌め合いを構成可能な長さ)に構成されている。
【0046】
また、位置決め用突起部62の中央部分には、爪部38が一対のスリット40、40を介して弾性変形可能に設けられている。この爪部38については既述しているので、ここではその説明を省略する。
【0047】
このように構成された位置決め部材60は、
図3及び
図7に示すように、ブラケット14付きウインドシールド12にカウルルーバ16を組み付ける際に、ブラケット14の貫通孔44に位置決め用突起部62が挿入されるが、その幅(W1、W2、W3)の大小関係で
図3に示した貫通孔44に「締り嵌め」の嵌め合いで嵌合されていく。つまり、位置決め用突起部62が貫通孔44に嵌合されることで、ブラケット14に対するカウルルーバ16の連接位置が、長手軸A及びB方向にがたつくことなく位置決めされる。よって、位置決め部材60が挿入される貫通孔44に位置決め用突起部62を合わせた状態で、カウルルーバ16をブラケット14に向けて押し込むだけで、
図12に示した係合部34を被係合部42に係合させることができる。また、位置決め部材60は、爪部38を備えているので、この爪部38も貫通孔44に係合する。
【0048】
なお、
図16及び
図17に示した位置決め部材60は、本願の連接構造において必須の構成要素ではないが、位置決め部材60を備えることにより、係合部34を被係合部42に容易に係合させることができるので、このような位置決め部材60を備えることが好ましい。また、位置決め部材60は、
図4に示すように、長手軸Bの中央位置に1箇所備えられているが、位置決め部材60の配置位置及び配置数はカウルルーバ16の形状に応じて適宜設定されるものである。
【0049】
以下、
図8及び
図9の構成について簡単に説明すると、
図8には、係合部34(
図10参照)、被係合部42(
図10参照)、リブ48(
図10参照)、ガイド部材50(
図14参照)及び位置決め部材60(
図16参照)が存在しない箇所の連接構造体10の断面構造が示されている。また、
図9には、係合部34(
図10参照)、被係合部42(
図10参照)、(
図14参照)及び位置決め部材60(
図16参照)が存在しない箇所の連接構造体10の断面構造が示されている。
【0050】
次に、上記の如く構成された実施形態の連接構造の利点について説明する。
【0051】
車体の窓枠に取り付けられたブラケット14付きウインドシールド12にカウルルーバ16を組み付ける連接作業は、
図12の説明で既述したように、まず、車体の上下方向において爪部38の連結部38Aを貫通孔44に正対させる(
図12(A)参照)。次に、カウルルーバ16を上方に向けて押し込んで(
図12(B)参照)、突起部本体36(
図11参照)を貫通孔44に挿入していく。そうすると、爪部38は、その傾斜面38Bが貫通孔44の内壁面44Aに押されることから、連結部38Aを支点として車体の前方側に弾性変形されていく(
図12(C)参照)。そして、ストッパ部38Cが貫通孔44を通過すると、爪部38が元の状態に復元してストッパ部38Cが貫通孔44に係合する(
図12(D)参照)。これにより、連接作業が終了する。つまり、カウルルーバ16を上方に向けて押し込む作業のみで連接作業が終了する。
【0052】
以上の如く、実施形態の連接構造によれば、カウルルーバ側連接部32は、ブラケット側連接部28に向けて突出された突起部本体36と、突起部本体36に弾性変形可能に設けられた爪部38と、を有する係合部34を備え、ブラケット側連接部28は、突起部本体36が挿入されて爪部38と係合する貫通孔44を有する被係合部42を備え、爪部38は、カウルルーバ16をブラケット14に組み付ける際に、貫通孔44の内壁面44Aに押されて弾性変形し、元の状態に復元することにより貫通孔44と係合する。これにより、作業者がウインドウガラスの下縁部に沿って移動しながら連接作業を行う特許文献2の連接構造と比較して、カウルルーバ16をブラケット14付きウインドシールド12に容易に組み付けることができる。
【0053】
また、実施形態の連接構造によれば、
図6、
図14及び
図15の如く、貫通孔44に挿入され、突起部本体36の挿入方向長さよりも長いガイド用突起部52を有するガイド部材50を備えているので、既述したように、係合部34を被係合部42に容易に係合させることができる。
【0054】
また、実施形態の連接構造によれば、
図7、
図16及び
図17に示すように、貫通孔44に対して相対的に「締り嵌め」の嵌め合いで嵌合される位置決め用突起部62を有する位置決め部材60を備えているので、既述したように、係合部34を被係合部42に容易に係合させることができる。
【0055】
なお、上記の説明では、ブラケット側連接部28に被係合部42を備え、カウルルーバ側連接部32に係合部34を備えた例について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラケット側連接部28に係合部34を備え、カウルルーバ側連接部32に被係合部42を備えてもよい。この場合、ブラケット14は、金属製ではなく、係合部34を射出成形により構成可能な樹脂製とすることが好ましい。また、この場合、カウルルーバ16は金属製とすることが好ましい。
【0056】
また、上記の説明では、ブラケット側連接部28に貫通孔44を備え、カウルルーバ側連接部32にガイド部材50及び位置決め部材60を備えた例について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラケット側連接部28にガイド部材50及び位置決め部材60を備え、カウルルーバ側連接部32に貫通孔44を備えてもよい。この場合もブラケット14は樹脂製とすることが好ましい。また、この場合もカウルルーバ16は金属製とすることが好ましい。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
10…連接構造体、12…ウインドシールド、14…ブラケット、16…カウルルーバ、18…両面接着テープ、20…ガラス板、22…ガラス板、24…中間膜、26…固定部、28…ブラケット側連接部、30…カウルルーバ本体、32…カウルルーバ側連接部、34…係合部、36…突起部本体、38…爪部、40…スリット、42…被係合部、44…貫通孔、46…リブ、48…リブ、50…ガイド部材、52…ガイド用突起部、60…位置決め部材、62…位置決め用突起部