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特許7223379微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】微粒子の製造装置および微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20230209BHJP
   B22F 9/14 20060101ALI20230209BHJP
   H05H 1/30 20060101ALI20230209BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
B01J19/08 K
B22F9/14
H05H1/30
C01B33/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020541201
(86)(22)【出願日】2019-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2019034379
(87)【国際公開番号】W WO2020050202
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018164750
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】田中 康規
(72)【発明者】
【氏名】清水 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】末安 志織
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 周
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 智也
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭太郎
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-138287(JP,A)
【文献】特開2012-055840(JP,A)
【文献】特開2017-105680(JP,A)
【文献】特表2008-528259(JP,A)
【文献】北 健太郎,ほか,原料間歇供給を伴う変調誘導熱プラズマを用いたFe-doped TiO2ナノ粒子大量生成における冷却ガス供給法の影,平成27年電気学会全国大会講演論文集,2015年03月05日,1-083
【文献】南雲 俊宏,ほか,誘導熱プラズマを用いたアルミナナノ粒子生成に対する矩形波AM変調による急冷効果の検討,平成19年度電気関係学会北陸支部連合大会講演論文集,2007年09月08日,A-01
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00-19/32
B22F 9/00- 9/30
H05H 1/00- 1/54
C01B 33/00-33/46
B01J 2/00- 2/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の製造装置であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、
内部に前記熱プラズマ炎が発生され、前記原料供給部により供給される前記原料を前記熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、
前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部と、
前記熱プラズマ炎に、急冷ガスを供給する気体供給部とを有し、
前記気体供給部は、前記急冷ガスの供給量を時間変調して供給する、微粒子の製造装置。
【請求項2】
前記原料供給部は、前記原料の前記熱プラズマ炎中への供給量を時間変調して、前記原料を前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1に記載の微粒子の製造装置。
【請求項3】
前記プラズマ発生部は、前記熱プラズマ炎として、温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させ、前記変調誘導熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、前記高温状態よりも温度が低い低温状態とにさせる、請求項1または2に記載の微粒子の製造装置。
【請求項4】
前記気体供給部は、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記低温状態のときに、前記急冷ガスの供給量を多くする、請求項3に記載の微粒子の製造装置。
【請求項5】
前記原料供給部は、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記高温状態のときに、前記原料の供給量を多くする、請求項3または4に記載の微粒子の製造装置。
【請求項6】
前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~5のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項7】
前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項1~のいずれか1項に記載の微粒子の製造装置。
【請求項8】
微粒子の製造方法であって、
微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎に供給する第1の工程と、
前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させ気相状態の混合物とし、前記熱プラズマ炎に急冷ガスを供給する第2の工程とを有し、
前記第2の工程では、前記急冷ガスの供給量を時間変調して供給する、微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の工程では、前記原料を、前記熱プラズマ炎中への供給量を時間変調して、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項8に記載の微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記熱プラズマ炎は、温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎である、請求項8または9に記載の微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記第2の工程では、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記低温状態のときに、前記急冷ガスの供給量を多くする、請求項10に記載の微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記第1の工程では、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記高温状態のときに、前記原料の供給量を多くする、請求項10または11に記載の微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記第1の工程では、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項8~12のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記第1の工程では、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給する、請求項8~12のいずれか1項に記載の微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プラズマ炎を用いた微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関し、特に、熱プラズマ炎の冷却に用いる急冷ガスを時間変調させて供給する、微粒子を製造する微粒子の製造装置および微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン微粒子、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、多岐の分野で用いられている。このような微粒子を製造する方法の一つとして、気相法が挙げられる。気相法には、各種のガス等を高温で化学反応させる化学的方法と、電子ビームまたはレーザ等のビームを照射して物質を分解し、蒸発させて微粒子を生成する物理的方法とがある。
【0003】
気相法の他の方法としては、熱プラズマ法がある。熱プラズマ法は、熱プラズマ炎中で原材料を瞬時に蒸発させた後、その蒸発物を急冷凝固させて微粒子を製造する方法である。熱プラズマ法によれば、クリーンで生産性が高く、高温で熱容量が大きいため高融点材料にも対応可能であり、他の気相法に比べて複合化が比較的容易であるといった多くの利点を有する。このため、熱プラズマ法は、微粒子を製造する方法として積極的に利用されている。
【0004】
従来の熱プラズマ法を用いた微粒子の製造方法としては、例えば、原材料物質を粉末状にし、この粉末状にされた原材料(粉末原材料、粉体)をキャリアガス等と共に、分散させて直接熱プラズマ中に投入することにより、微粒子を製造している。
例えば、特許文献1には、炭化チタン微粒子の製造方法が記載されている。
特許文献1では、チタンまたはチタン酸化物の粉末をキャリアガスにより分散させ、チタンまたはチタン酸化物の粉末を熱プラズマ炎中に供給する工程と、熱プラズマ炎の終端部に、冷却用ガスと炭素源として反応性ガスを供給し、炭化チタン微粒子を生成する工程とを備えており、反応性ガスの供給量を変えて生成される炭化チタン微粒子の酸素含有量を変えることが記載されている。
また、特許文献1には、チタンまたはチタン酸化物の粉末を、炭素源である炭素を含む液体状の物質に分散させてスラリーにし、スラリーをキャリアガスにより液滴化させて熱プラズマ炎中に供給する工程を備えており、スラリーのフィード量が一定になるように制御し、スラリーを投入する際のキャリアガスの流量を変えて、生成される炭化チタン微粒子の酸素含有量を変えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/002695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微粒子の製造方法としては、上述の特許文献1のように、チタンまたはチタン酸化物の粉末をキャリアガスにより分散させて熱プラズマ炎中に供給すること、およびチタンまたはチタン酸化物の粉末をスラリーにし、スラリーをキャリアガスにより液滴化させて熱プラズマ炎中に供給することが従来から知られている。
特許文献1に記載の製造方法では、ナノサイズの微粒子を製造することができるものの、現在、よりサイズが小さい微粒子が要求されており、この要求に十分に対応できない。
本発明の目的は、より小さな微粒子を製造する微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、微粒子の製造装置であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎中に供給する原料供給部と、内部に前記熱プラズマ炎が発生され、前記原料供給部により供給される前記原料を前記熱プラズマ炎にて蒸発させて気相状態の混合物とするプラズマトーチと、前記プラズマトーチの内部に前記熱プラズマ炎を発生させるプラズマ発生部と、前記熱プラズマ炎に、急冷ガスを供給する気体供給部とを有し、前記気体供給部は、前記急冷ガスの供給量を時間変調して供給する、微粒子の製造装置を提供するものである。
【0008】
前記原料供給部は、前記原料の前記熱プラズマ炎中への供給量を時間変調して、前記原料を前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
また、前記プラズマ発生部は、前記熱プラズマ炎として、温度状態が時間変調された変調誘導熱プラズマ炎を発生させ、前記変調誘導熱プラズマ炎を周期的に高温状態と、前記高温状態よりも温度が低い低温状態とにさせることが好ましい。
【0009】
また、前記気体供給部は、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記低温状態のときに、前記急冷ガスの供給量を多くすることが好ましい。
前記原料供給部は、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記高温状態のときに、前記原料の供給量を多くすることが好ましい。
前記原料供給部は、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
前記原料供給部は、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、微粒子の製造方法であって、微粒子製造用の原料を熱プラズマ炎に供給する第1の工程と、前記原料を前記熱プラズマ炎で蒸発させ気相状態の混合物とし、前記熱プラズマ炎に急冷ガスを供給する第2の工程とを有し、前記第2の工程では、前記急冷ガスの供給量を時間変調して供給する、微粒子の製造方法を提供するものである。
【0011】
前記第1の工程では、前記原料を、前記熱プラズマ炎中への供給量を時間変調して、前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
また、前記熱プラズマ炎は、温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにされる変調誘導熱プラズマ炎であることが好ましい。
【0012】
また、前記第2の工程では、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記低温状態のときに、前記急冷ガスの供給量を多くすることが好ましい。
前記第1の工程では、前記変調誘導熱プラズマ炎が前記高温状態のときに、前記原料の供給量を多くすることが好ましい。
前記第1の工程では、前記原料を、粒子状に分散させた状態で、前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
前記第1の工程では、前記原料を液体に分散させてスラリーにし、前記スラリーを液滴化して前記熱プラズマ炎中に供給することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法によれば、より小さい微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の微粒子の製造装置のプラズマトーチの一例を示す模式的部分断面図である。
図3】本発明の実施形態の微粒子の製造装置の他の例を示す模式図である。
図4】パルス変調時のコイル電流の時間変化についての説明図である。
図5】(a)はコイル電流を変調するためのパルス制御信号を示すグラフであり、(b)はバルブの開閉タイミングを示すグラフであり、(c)は原料の供給を示すグラフである。
図6】(a)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第1の例を示すグラフであり、(b)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第2の例を示すグラフであり、(c)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第3の例を示すグラフであり、(d)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第4の例を示すグラフである。
図7】数値計算に用いたモデルを示す模式的斜視図である。
図8】(a)~(d)は急冷ガスを時間変調した場合における温度分布を示す模式図である。
図9】(a)~(d)は時間変調していない場合における温度分布を示す模式図である。
図10】モデルの中心軸における時間平均温度の分布を示すグラフである。
図11】モデルの中心軸における温度分布の時間変化を示すグラフである。
図12】(a)~(h)は熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調した場合における温度分布を示す模式図である。
図13】(a)~(h)は熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調した場合における粒子の軌跡を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
【0016】
図1に示す微粒子の製造装置10(以下、単に製造装置10という)は、微粒子製造用の原料を用いて、ナノサイズの微粒子を製造するものである。微粒子製造用の原料には、例えば、粉末を用いる。
なお、製造装置10は、微粒子であれば、その種類は特に限定されるものではなく、原料の組成を変えることにより、金属微粒子以外にも微粒子として、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子、酸窒化物微粒子等の微粒子を製造することができる。
製造装置10は、原料供給部12と、プラズマトーチ14と、チャンバー16と、回収部18と、プラズマガス供給部20と、プラズマ発生部21と、気体供給部22と、制御部24とを有する。
【0017】
原料供給部12はプラズマトーチ14に中空状の供給管13を介して接続されている。
また、原料供給部12とプラズマトーチ14との間の供給管13に、後述するように間歇供給部15を設けてもよい。製造装置10では間歇供給部15は必須の構成ではないが、間歇供給部15を設けた方がより好ましい。
プラズマトーチ14の下方にチャンバー16が設けられ、チャンバー16に回収部18が設けられている。プラズマ発生部21はプラズマトーチ14に接続されており、後述するようにプラズマ発生部21により、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100が発生される。
【0018】
原料供給部12は、微粒子製造用の原料をプラズマトーチ14の内部で発生する熱プラズマ炎100中に供給するためのものである。
原料供給部12は、原料を熱プラズマ炎100中に供給することができれば、特に限定されるものではなく、原料を粒子状に分散させた状態で熱プラズマ炎100中に供給するものと、原料をスラリーにし、スラリーを液滴化した形態で熱プラズマ炎100中に供給するものとの2通りの方式を用いることができる。
【0019】
例えば、微粒子製造用の原料に、粉末を用いた場合、プラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中に原料が供給される際には原料が粒子状に分散されている必要がある。このため、例えば、原料は、キャリアガスに分散させて粒子状に供給される。この場合、例えば、原料供給部12は、粉末の原料を分散状態に維持しつつ、定量的にプラズマトーチ14内部の熱プラズマ炎100中に供給するものである。このような機能を有する原料供給部12としては、例えば、特許第3217415号公報、および特開2007-138287号公報に開示されている装置が利用可能である。
例えば、原料供給部12は、例えば、原料の粉末を貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、原料の粉末を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された原料の粉末が最終的に散布される前に、これを粒子の状態に分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
キャリアガス供給源から押し出し圧力がかけられたキャリアガスとともに原料の粉末は供給管13を介してプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中へ供給される。
原料供給部12は、原料の粉末の凝集を防止し、分散状態を維持したまま、原料の粉末を、粒子状に分散させた状態でプラズマトーチ14内に散布することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。キャリアガスには、例えば、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
【0020】
原料の粉末をスラリーの形態で供給する原料供給部12は、例えば、特開2011-213524号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、原料供給部12は、原料の粉末が水等の液体に分散されたスラリー(図示せず)を入れる容器(図示せず)と、容器中のスラリーを攪拌する攪拌機(図示せず)と、供給管13を介してスラリーに高圧をかけプラズマトーチ14内に供給するためのポンプ(図示せず)と、スラリーを液滴化させてプラズマトーチ14内へ供給するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給源(図示せず)とを有する。噴霧ガス供給源は、キャリアガス供給源に相当するものである。噴霧ガスのことをキャリアガスともいう。
スラリーの形態で原料を供給する場合、原料の粉末を水等の液体に分散させてスラリーにする。なお、スラリー中の原料の粉末と水との混合比は、特に限定されるものではなく、例えば、質量比で5:5(50%:50%)である。
【0021】
原料の粉末をスラリーにして、スラリーを液滴化した形態で供給する原料供給部12を用いた場合、噴霧ガス供給源から押し出し圧力をかけられた噴霧ガスが、スラリーと共に供給管13を介してプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中へ供給される。供給管13は、スラリーをプラズマトーチ内の熱プラズマ炎100中に噴霧し液滴化するための二流体ノズル機構を有しており、これにより、スラリーをプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中に噴霧する。すなわち、スラリーを液滴化させることができる。噴霧ガスには、上述のキャリアガスと同様に、例えば、アルゴンガス(Arガス)、窒素ガス等の不活性ガスが用いられる。
このように、二流体ノズル機構は、スラリーに高圧をかけ、気体である噴霧ガス(キャリアガス)によりスラリーを噴霧することができ、スラリーを液滴化させるための一つの方法として用いられる。
なお、上述の二流体ノズル機構に限定されるものではなく、一流体ノズル機構を用いてもよい。さらに他の方法として、例えば、回転している円板上にスラリーを一定速度で落下させて遠心力により液滴化する(液滴を形成する)方法、スラリー表面に高い電圧を印加して液滴化する(液滴を発生させる)方法等が挙げられる。
【0022】
プラズマトーチ14は、内部に熱プラズマ炎100が発生されるものであり、原料供給部12により供給される原料を熱プラズマ炎100にて蒸発させて気相状態の混合物45とするものである。
図2に示すように、プラズマトーチ14は、石英管14aと、石英管14aの外面に設けられた、プラズマトーチ14の外側を取り巻く高周波発振用コイル14bとで構成されている。プラズマトーチ14の上部には、供給管13が挿入される供給口14cがその中央部に設けられており、プラズマガス供給口14dがその周辺部(同一円周上)に形成されている。
供給管13により、例えば、粉末状の原料と、アルゴンガスまたは水素ガス等のキャリアガスとがプラズマトーチ14内に供給される。
【0023】
プラズマガス供給口14dは、例えば、図示しない配管によりプラズマガス供給部20が接続されている。プラズマガス供給部20は、プラズマガス供給口14dを介してプラズマトーチ14内にプラズマガスを供給するものである。プラズマガスとしては、例えば、アルゴンガスおよび水素ガス等が単独または適宜組み合わせて用いられる。
【0024】
また、プラズマトーチ14の石英管14aの外側は、同心円状に形成された石英管14eで囲まれており、石英管14aと14eの間に冷却水14fを循環させて石英管14aを水冷し、プラズマトーチ14内で発生した熱プラズマ炎100により石英管14aが高温になりすぎるのを防止している。
【0025】
プラズマ発生部21は、高周波電源(図示せず)を有するものであり、高周波発振用コイル14bに高周波電流を印加する。高周波発振用コイル14bに高周波電流が印加されると、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100が発生する。
また、プラズマトーチ14内における圧力雰囲気は、微粒子の製造条件に応じて適宜決定されるものであり、例えば、大気圧以下である。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、5Torr(666.5Pa)~750Torr(99.975kPa)とすることができる。
【0026】
図1に示すようにチャンバー16は、プラズマトーチ14に近い方から、上流チャンバー16aがプラズマトーチ14と同軸方向に取り付けられている。また、上流チャンバー16aと垂直に下流チャンバー16bを設け、さらに下流に、微粒子を捕集するための所望のフィルター18aを備える回収部18が設けられている。製造装置10において、微粒子の回収場所は、例えば、フィルター18aである。
チャンバー16に、気体供給部22が接続されている。気体供給部22から供給される急冷ガスにより、チャンバー16内で、原料に応じた材料の微粒子(図示せず)が生成される。また、チャンバー16は冷却槽として機能するものである。
【0027】
回収部18は、フィルター18aを備えた回収室と、この回収室内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ18bとを備えている。チャンバー16から送られた微粒子は、上述の真空ポンプ18bで吸引されることにより、微粒子が回収室内に引き込まれ、フィルター18aの表面で留まった状態にて、微粒子が回収される。
【0028】
気体供給部22は、チャンバー16内の熱プラズマ炎100に急冷ガスを供給するものである。急冷ガスは、冷却ガスとして機能するものである。気体供給部22は、気体が貯留される気体供給源(図示せず)と、チャンバー16内に供給する急冷ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、ブロア等の圧力付与部(図示せず)とを有する。また、気体供給源からのガス供給量を制御する調整弁(図示せず)が設けられている。気体供給源は、急冷ガスの組成に応じたものが用いられ、気体の種類は1種類に限定されるものではなく、急冷ガスを混合ガスとする場合、気体供給源を複数用意する。
急冷ガスは、冷却する機能を発揮するものであれば、特に限定されるものではない。急冷ガスには、例えば、原料と反応しない、アルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスが用いられる。急冷ガスは、これ以外に、水素ガスを含有してもよい。また、急冷ガスは、原料と反応する反応性ガスを含有してよい。反応性ガスとしては、例えば、メタン、エタン,プロパン,ブタン,アセチレン,エチレン,プロピレン,ブテン等の炭素数4以下の各種の炭化水素ガス等が挙げられる。
【0029】
気体供給部22は、例えば、熱プラズマ炎100の尾部100b(図2参照)、すなわち、プラズマガス供給口14dと反対側の熱プラズマ炎100の端、すなわち、熱プラズマ炎100の終端部に向かって、例えば、45°の角度で、急冷ガス(冷却ガス)を供給し、かつチャンバー16の内壁に沿って上方から下方に向かって、急冷ガス(冷却ガス)を供給する。なお、熱プラズマ炎100の終端部に急冷ガスを供給することに限定されるものではない。
【0030】
気体供給部22からチャンバー16内に供給される急冷ガスにより、熱プラズマ炎100で気相状態にされた混合物が急冷されて、原料に応じた材料の微粒子が得られる。これ以外にも上述の急冷ガスは微粒子の分級に寄与する等の付加的作用を有する。
原料に応じた材料の微粒子の生成直後の微粒子同士が衝突し、凝集体を形成することで粒子径の不均一が生じると、品質低下の要因となる。しかしながら、熱プラズマ炎の尾部100b(終端部)に向かって、急冷ガスを供給することにより、急冷ガスが微粒子を希釈することで、微粒子同士が衝突して凝集することが防止される。
また、チャンバー16の内壁面に沿って、急冷ガスを供給することにより、微粒子の回収の過程において、微粒子のチャンバー16の内壁への付着が防止され、生成した微粒子の収率が向上する。
【0031】
気体供給部22は、上述のように熱プラズマ炎100に急冷ガスを供給するものであるが、急冷ガスの供給量は、一定ではなく、時間変調して、急冷ガスを供給する。供給量の時間変化は、特に限定されるものではなく、サイン波状でも、三角波状でも、方形波状でも、のこぎり波状でもよい。急冷ガスの供給量を時間変調することにより、冷却効果が高くなり、より小さい微粒子を製造することができる。
気体供給部22における急冷ガスの時間変調は、例えば、気体供給源からの供給量を一定にし、調整弁に、例えば、ボールバルブを用いて、供給量を時間変調する。
【0032】
気体供給部22の熱プラズマ炎100への急冷ガスの供給方法は、特に限定されるものではなく、1方向から急冷ガスを供給してもよい。また、熱プラズマ炎100の周囲を囲む、複数の方向から急冷ガスを供給してもよい。この場合、急冷ガスの供給口をチャンバー16の外周面に、周方向に沿って複数に、例えば、等間隔に設けるが、等間隔に限定されるものではない。
複数の方向から急冷ガスを供給する場合、供給タイミングは、特に限定されるものではなく、複数の方向から同期して急冷ガスを供給する。これ以外にも、例えば、時計回りまたは反時計回りの順で、急冷ガスを供給してもよい。この場合、急冷ガスにより、チャンバー16内に旋回流等の気流が生じる。複数の方向から急冷ガスを供給する場合、供給順を決定することなく、ランダムに供給してもよい。
【0033】
原料供給部12は、上述のように、熱プラズマ炎100に原料を供給するものであり、原料を、予め定めた量を供給するものであり、時間によらず、一定量の原料を供給する。
原料供給部12は、原料の熱プラズマ炎100中への供給量を時間変調して、原料を熱プラズマ炎100中に供給するものでもよい。これにより、熱プラズマ炎100に変動がなくても、時間的に変動する。
この場合、例えば、供給管13に間歇供給部15を設ける。間歇供給部15により、チャンバー16内に原料を時間変調して供給する。原料の供給量の変化は、特に限定されるものではなく、サイン波状でも、三角波状でも、方形波状でも、のこぎり波状でもよい。
時間変調の際、急冷ガスの供給と原料の供給とは、関数で表される時間変化が同じであることが好ましい。これにより、急冷ガスの供給と原料の供給とのタイミングを合わせやすくなる。
【0034】
間歇供給部15は、例えば、供給管13に接続されたソレノイドバルブ(電磁弁)を用いて、原料の供給量を時間変調する。制御部24により、ソレノイドバルブの開閉が制御される。ソレノイドバルブ以外に、ボールバルブを用いてもよい。この場合も、制御部24により、ボールバルブの開閉が制御される。制御部24により、例えば、急冷ガスの供給量が多いときに、原料の供給量を少なくし、急冷ガスの供給量が少ないときに、原料の供給量を多くするパターンで、供給量を時間変調する。これにより、より小さい微粒子を製造することができる。
上述のように、製造装置10は、急冷ガスを時間変調して供給することができ、これにより、熱プラズマ炎をさらに冷却することができ、温度が低い状態を作り出すことができる。このため、より小さい微粒子を製造することができる。
さらには、製造装置10は、原料の供給も、時間変調することができる。この場合、急冷ガスの時間変調とともに、原料の供給も時間変調することにより、さらに小さい微粒子を製造することができる。なお、急冷ガスの供給と原料の供給とのタイミングは、急冷ガスの供給量が少ないときに、原料の供給を多くすることが好ましい。
【0035】
次に、上述の製造装置10を用いた微粒子の製造方法について、金属微粒子を例にして説明する。
まず、金属微粒子の原料の粉末として、例えば、平均粒子径が10μm以下のSiの粉末を原料供給部12に投入する。
プラズマガスに、例えば、アルゴンガスおよび水素ガスを用いて、高周波発振用コイル14b(図2参照)に高周波電圧を印加し、プラズマトーチ14内に熱プラズマ炎100を発生させる。
また、気体供給部22から熱プラズマ炎100の尾部100b(図2参照)、すなわち、熱プラズマ炎100の終端部に、急冷ガスとして、例えば、アルゴンガスとメタンガスの混合ガスを供給する。
【0036】
次に、キャリアガスとして、例えば、アルゴンガスを用いてSiの粉末を気体搬送し、供給管13を介してプラズマトーチ14内の熱プラズマ炎100中に供給する(第1の工程)。供給されたSiの粉末は、熱プラズマ炎100中で蒸発して気相状態の混合物45(図2参照)となる。
このとき、急冷ガスを時間変調させて、すなわち、供給量を周期的に変えて、急冷ガスを熱プラズマ炎100に供給する(第2の工程)。これにより、熱プラズマ炎100が急冷されてSi微粒子(金属微粒子)が生成されるが、このとき、チャンバー16内に温度が低い領域が生じ、より小さいSi微粒子が得られる。
そして、チャンバー16内で得られたSi微粒子は、真空ポンプ18bによる回収部18からの負圧(吸引力)によって回収部18のフィルター18aに捕集される。
製造装置10では、急冷ガスを時間変調したが、さらに原料の供給を時間変調してもよい。この場合、急冷ガスの供給量が少ないときに、原料の供給を多くすることが好ましい。急冷ガスの供給タイミングと、原料の供給タイミングとは制御部24で調整される。
【0037】
次に、微粒子の製造装置の他の例について説明する。
図3は本発明の実施形態の微粒子の製造装置の他の例を示す模式図であり、図4はパルス変調時のコイル電流の時間変化についての説明図である。
図3に示す微粒子の製造装置10a(以下、単に製造装置10aという)において、図1に示す製造装置10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図3に示す製造装置10aは、図1に示す製造装置10に比して、プラズマ発生部21(図1参照)にかえて、高周波変調誘導熱プラズマ発生部26を有する点が異なり、それ以外の構成は、図1に示す製造装置10と同じ構成である。
【0038】
製造装置10aでは、図1に示す製造装置10と同じく、原料供給部12は間歇供給部15に接続されている。間歇供給部15とプラズマトーチ14とは中空状の供給管13を介して接続されている。また、上述のようにプラズマ発生部21(図1参照)にかえて高周波変調誘導熱プラズマ発生部26が設けられている。高周波変調誘導熱プラズマ発生部26により、プラズマトーチ14の内部に熱プラズマ炎100が発生されるとともに、熱プラズマ炎100の温度状態が時間変調されて、熱プラズマ炎100の温度状態が周期的に高温状態と、高温状態よりも温度が低い低温状態になる。
熱プラズマ炎が所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にされたもの、すなわち、熱プラズマ炎の温度状態が時間変調されたもののことを変調誘導熱プラズマ炎という。
【0039】
原料供給部12は、プラズマトーチ14の上部に設けられた間歇供給部15のバルブ30cに接続されている。
【0040】
高周波変調誘導熱プラズマ発生部26は、熱プラズマ炎100を発生させるための高周波電流を高周波発振用コイル14b(図2参照)に供給するとともに、高周波発振用コイル14bへの高周波電流を所定時間間隔で振幅変調することができるものである。以下、熱プラズマ炎100を発生させるために高周波発振用コイル14bに供給する高周波電流を、コイル電流という。
高周波変調誘導熱プラズマ発生部26は、高周波インバータ電源28aと、インピーダンス整合回路28bと、パルス信号発生器28cと、FETゲート信号回路28dとを有する。
【0041】
高周波インバータ電源28aを構成するMOSFETインバータ電源は、電流の振幅を変調できる機能を有しており、コイル電流を振幅変調できる。
高周波インバータ電源28aは、例えば、整流回路と、MOSFETインバータ回路とを有する。高周波インバータ電源28aにおいて、整流回路は、例えば、入力電源として三相交流を用いるものであり、三相全波整流回路により交流-直流変換を行った後、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を用いたDC-DCコンバータにより、その出力電圧値を変化させる。
【0042】
MOSFETインバータ回路は、整流回路に接続されており、整流回路で得られた直流を交流に変換するものである。これにより、インバータ出力、すなわち、コイル電流が振幅変調(AM変調)される。
高周波インバータ電源28aは、出力側にインピーダンス整合回路28bが接続されている。このインピーダンス整合回路28bは、コンデンサ、共振コイルからなる直列共振回路により構成されており、プラズマ負荷を含めた負荷インピーダンスの共振周波数が高周波インバータ電源28aの駆動周波数領域内となるようにインピーダンスマッチングを行うものである。
【0043】
パルス信号発生器28cは、高周波変調誘導熱プラズマを維持するコイル電流の振幅に矩形波変調を加えるためのパルス制御信号を発生させるものである。
FETゲート信号回路28dは、パルス信号発生器28cで発生されたパルス制御信号に基づく変調信号を、高周波インバータ電源28aのMOSFETインバータ回路のMOSFETのゲートに供給するものである。これにより、パルス信号発生器28cによるパルス制御信号でコイル電流を振幅変調して振幅を相対的に大きくするか、または小さくして、例えば、図4に示す矩形波102のように、コイル電流をパルス変調することができる。コイル電流をパルス変調することにより、熱プラズマ炎100を、所定時間間隔で周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態にすることができる。高周波変調誘導熱プラズマ発生部26においては、高周波発振用コイル14bに、単に高周波電流を供給することにより、温度状態が変わらない熱プラズマ炎を発生させることもできる。
原料を間歇的に供給する場合、熱プラズマ炎100の高温状態に同期させて原料を供給して、原料を高温状態で完全に蒸発させて気相状態の混合物45(図2参照)とし、さらに低温状態の時には、原料を供給せずに、急冷ガスの供給量を多くして気相状態の混合物45(図2参照)を急冷する。
【0044】
なお、図4に示す矩形波102において、コイル電流に対して電流振幅の高値(HCL)、低値(LCL)と定義し、変調一周期の中で、HCLをとる時間をオン時間、LCLをとる時間をオフ時間と定義する。さらに、一周期におけるオン時間の割合(オン時間/(オン時間+オフ時間)×100(%))をデューティ比(DF)とする。また、コイルの電流振幅の比(LCL/HCL×100(%))を電流変調率(SCL)とする。
また、矩形波102において、オン時間、オフ時間、および1サイクルは、いずれもマイクロ秒から数秒オーダーであることが好ましい。
【0045】
さらには、パルス制御信号を用いて、コイル電流を振幅変調する際には、予め定められている波形、例えば、矩形波を用いて振幅変調することが好ましい。なお、矩形波に限定されるものではなく、三角波、のこぎり波、逆のこぎり波、または正弦波等を含む曲線を含む繰り返し波からなる波形を用いることができることは言うまでもない。
時間変調の際、熱プラズマ炎の高温状態と低温状態との変化、急冷ガスの供給および原料の供給とは、関数で表される時間変化が同じであることが好ましい。これにより、急冷ガスの供給、原料の供給、および熱プラズマ炎の温度状態のタイミングを合わせやすくなる。
【0046】
間歇供給部15は、プラズマトーチ14内への原料の供給を間歇的に行うためのものである。この間歇供給部15は、トリガ回路30aと、電磁コイル30bと、バルブ30cとを有する。
トリガ回路30aは、パルス信号発生器28cに接続されており、パルス信号発生器28cからパルス制御信号が入力されて、この入力されたパルス制御信号に同期してTTLレベルの信号を発生するものである。
電磁コイル30bは、トリガ回路30aに接続されており、トリガ回路30aからのTTLレベルの信号に基づいてバルブ30cを開閉させるものである。
【0047】
バルブ30cは、原料供給部12から、例えば、キャリアガスとともに供給される微粒子製造用の原料のプラズマトーチ14内部への進入を制御するものであり、上述のように、電磁コイル30bにより開閉が制御される。これにより、原料が高温状態の熱プラズマ炎100に間歇的に供給される。
本実施形態においては、図5(a)に示すパルス制御信号104がパルス信号発生器28cから出力されて、このパルス制御信号104に同期したTTLレベルの信号がトリガ回路30aで作成される。このTTLレベルの信号に基づいて、図5(b)に示すタイミング信号106で、バルブ30cが所定の時間間隔で開閉される。その結果、図5(c)に示す波形108で、例えば、原料粉末がプラズマトーチ14内に間歇的に供給され、原料を高温状態の熱プラズマ炎100に間歇的に供給することができる。
さらに、TTLレベルの信号に基づいて、急冷ガスの供給タイミングを制御する。これにより、急冷ガスの供給、原料の供給、および熱プラズマ炎の温度状態のタイミングを高い精度で合わることができる。
【0048】
なお、製造装置10aでは、上述のように熱プラズマ炎100の高温状態、および低温状態の温度状態のタイミングをフィードバック制御してもよい。また、バルブ30cの開閉タイミングを制御してもよい。この場合、トリガ回路30aで作成されるTTLレベルの信号、すなわち、電磁コイル30bへの入力信号の位相をずらすような信号を作成し、この信号をトリガ回路30aに供給する。これにより、原料の供給のタイミングを、熱プラズマ炎が高温状態、すなわち、オン時間とすることができる。
このように、製造装置10aでは、急冷ガスの時間変調に加え、原料の供給および熱プラズマ炎の温度も時間変調することができる。時間変調のタイミングを調整することより、さらに小さい微粒子を製造することができる。
【0049】
製造装置10aでは、高周波変調誘導熱プラズマ発生部26と間歇供給部15とが連動する構成としたが、これに限定されるものではなく、間歇供給部15単独で動作するようにしてもよい。これにより、例えば、間歇供給部15は、原料を時間変調せずに供給することができる。この場合、熱プラズマ炎だけが時間変調され、原料の供給量は、時間によらず一定である。
製造装置10aでは、上述のように、急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調が可能であるが、製造装置10のように、急冷ガスと原料の供給とを時間変調してもよく、急冷ガスと熱プラズマ炎の温度とを時間変調してもよい。
また、製造装置10aでは、熱プラズマ炎の温度を時間変調しているが、例えば、特許第5564370号公報に記載されているように分光分析を用いてもよい。この場合、変調誘導熱プラズマ炎について分光分析し、変調誘導熱プラズマ炎の放射光のうち、原料に由来する波長の光の強度に基づいて高周波変調誘導熱プラズマ発生部により変調誘導熱プラズマ炎の温度状態を時間変調させる。
【0050】
次に、上述の製造装置10aを用いた微粒子の製造方法について、金属微粒子を例にして説明する。製造装置10aを用いた微粒子の製造方法は、上述の製造装置10を用いた微粒子の製造方法に比して、熱プラズマ炎を時間変調している点が異なり、それ以外の製造方法は同じである。
製造装置10aを用いた微粒子の製造方法でも、原料の粉末として、例えば、平均粒子径が10μm以下のSiの粉末を用いる。キャリアガス、プラズマガス、および急冷ガスは、上述の製造装置10を用いた微粒子の製造方法と同じである。
【0051】
プラズマトーチ14内に熱プラズマ炎を発生させるが、このとき、温度状態が時間変調されて周期的に高温状態と、この高温状態よりも温度が低い低温状態とにして変調誘導熱プラズマ炎とする。
熱プラズマ炎(変調誘導熱プラズマ炎)中に、例えば、アルゴンガスを用いてSiの粉末を気体搬送して供給する(第1の工程)。供給されたSiの粉末は、熱プラズマ炎(変調誘導熱プラズマ炎)中で蒸発して気相状態の混合物45(図2参照)となる。
このとき、急冷ガスを熱プラズマ炎に対して、供給量を周期的に変えて供給する(第2の工程)。これにより、熱プラズマ炎が急冷されてSi微粒子(金属微粒子)が生成されるが、このとき、チャンバー16内に温度が低い領域が生じ、さらに小さいSi微粒子が得られる。なお、熱プラズマ炎が低温状態のときに、高温状態のときよりも急冷ガスの供給量を多くすることが好ましい。この場合、熱プラズマ炎が高温状態のときに、急冷ガスの供給量をゼロにすることがより好ましい。
そして、チャンバー16内で得られたSi微粒子は、上述のように真空ポンプ18bによる回収部18からの負圧(吸引力)によって回収部18のフィルター18aに捕集される。
【0052】
製造装置10aでは、急冷ガスと熱プラズマ炎を時間変調したが、さらに原料の供給を時間変調してもよい。この場合、変調誘導熱プラズマ炎が高温状態のときに、低温状態のときよりも原料の供給量を多くすることが好ましい。この場合、変調誘導熱プラズマ炎が低温状態のときに、原料の供給量をゼロにすることがより好ましい。これにより、原料を高温状態で完全に蒸発させて気相状態にすることができる。
さらには、上述のように急冷ガスの供給量が少ないときに、原料の供給を多くすることが好ましい。急冷ガスの供給タイミングと、熱プラズマ炎の温度状態の変化のタイミングと、原料の供給タイミングとは制御部24で調整される。
【0053】
次に、製造装置10および製造装置10aの急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調について説明する。
図6(a)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第1の例を示すグラフであり、(b)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第2の例を示すグラフであり、(c)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第3の例を示すグラフであり、(d)は急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度の時間変調の第4の例を示すグラフである。
なお、図6(a)~(d)は、いずれも急冷ガス、原料および熱プラズマ炎の温度を示すものであり、符号40は急冷ガスを示し、符号42は原料を示し、符号44は熱プラズマ炎を示す。図6(a)~(d)は、横軸に時間、縦軸に規格化した供給量と、規格化した温度を示す。図6(a)~(d)において、縦軸の数値が小さいと供給量が小さいこと、および温度が低いことを示す。縦軸の数値が大きいと供給量が多いこと、および温度が高いことを示す。
【0054】
製造装置10および製造装置10aでは、例えば、図6(a)に示すように、原料および熱プラズマ炎を一定にして、急冷ガスだけを、例えば、サイン波状に時間変調することができる。
また、図6(b)に示すように、熱プラズマ炎を一定にして、急冷ガスと原料を、例えば、サイン波状に時間変調することができる。この場合、急冷ガスと原料とは、位相をずらしており、急冷ガスの供給量が多いときに、原料の供給量を小さくしている。これにより、より小さい微粒子を製造することができる。
製造装置10aでは、例えば、図6(c)に示すように、原料を一定にして、急冷ガスと熱プラズマ炎を、例えば、サイン波状に時間変調することができる。この場合、急冷ガスと熱プラズマ炎とは、位相をずらしており、急冷ガスの供給量が多いときに、熱プラズマ炎を低温状態にしている。これにより、より小さい微粒子を製造することができる。
さらには、製造装置10aでは、例えば、図6(d)に示すように、急冷ガス、原料、および熱プラズマ炎を、例えば、サイン波状に時間変調することができる。この場合、急冷ガスと、原料および熱プラズマ炎とは、位相をずらしており、急冷ガスの供給量が多いときに、原料の供給量を少なくし、かつ熱プラズマ炎を低温状態にしている。これにより、さらに小さい微粒子を製造することができる。
【0055】
次に、急冷ガスの時間変調による冷却状態について説明する。
図7は数値計算に用いたモデルを示す模式的斜視図である。
図7に示す数値計算に用いたモデル50は、プラズマトーチ14の下端部とチャンバー16を、数値解析可能なモデル化したものであり、円筒状である。一方の端部50aが熱プラズマ炎側であり、他方の端部50bが熱プラズマ炎の反対側である。また、モデル50では、急冷ガスの供給部50cを設定している。供給部50cは、等間隔に8方向から急冷ガスが供給される構成である。モデル50の符号Cは中心軸を示す。
円筒状のモデル50について、中心軸Cを含む切断面における温度分布を数値計算を用いて求めた。
【0056】
数値計算では、運動方程式、連続の式、およびエネルギー保存式を用い、COMSOL Multiphysics(登録商標)を使用して計算した。
なお、数値計算において、モデル50の一方の端部50aに、境界条件として、熱を与えた。計算条件としては、急冷ガスの流量だけを時間変調したもの(図8(a)~(d)参照)、熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調したもの(図12(a)~(h)参照)とした。また、比較のために、時間変調していないもの(図9(a)~(d)参照)についても数値計算した。
急冷ガスはアルゴンガスとした。また、急冷ガスの流量は最大流量を50リットル/分とし、平均流量を25リットル/分とした。熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調したものは、位相差をπ/2とした。急冷ガスの時間変調の周期は、1秒とした。
【0057】
図8(a)~(d)は急冷ガスを時間変調した場合における温度分布を示す模式図であり、図9(a)~(d)は時間変調していない場合における温度分布を示す模式図である。図8(a)~(d)と、図9(a)~(d)とは、それぞれ対応しており、同じ時間における温度分布を示す。図8(a)および図9(a)は時間0.0秒を示し、図8(b)および図9(b)は時間0.25秒を示し、図8(c)および図9(c)は時間0.5秒を示し、図8(d)および図9(d)は時間0.75秒を示す。
図9(a)~(d)では温度分布の時間変化が見られない。一方、図8(a)~(d)では、図8(c)において、領域51のように急激な温度低下が生じていることが見られた。このように急冷ガスの供給量を時間変調することにより、大きな冷却効果が得られることがわかる。なお、領域51は、急冷ガスの供給部50cの近傍である。
【0058】
ここで、図10はモデルの中心軸における時間平均温度の分布を示すグラフであり、図11はモデルの中心軸における温度分布の時間変化を示すグラフである。図10および図11は、図8(a)~(d)および図9(a)~(d)の結果を示している。
図10および図11では、横軸に中心軸の位置、縦軸に規格化した温度を示している。図10および図11において、横軸の中心軸の位置の数値が小さい方が、モデル50の一方の端部50a側の位置であり、中心軸の位置の数値が大きい方が他方の端部50b側の位置である。
また、図10の符号46は急冷ガスを時間変調したものを示し、符号47は時間変調していないものを示す。図11の符号48は急冷ガスを時間変調したものを示し、符号49は時間変調していないものを示す。
【0059】
図10に示すように、チャンバーの中心部の平均温度は、急冷ガスを時間変調したものと、時間変調していないものとによる違いはないが、他方の端部50b側では、急冷ガスを時間変調したものの方が温度が低い。
図11に示すように、急冷ガスの供給量を時間変調することにより、チャンバーの中心部の温度が低いことがわかる。この温度が低い領域を利用することにより、大きな冷却効果が得られ、より小さい微粒子を製造することができる。
【0060】
図12(a)~(h)は熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調した場合における温度分布を示す模式図であり、図13(a)~(h)は熱プラズマ炎および急冷ガスの流量を時間変調した場合における粒子の軌跡を示す模式図である。熱プラズマ炎および急冷ガスの流量のそれぞれの時間変調の周期は1秒とした。
なお、粒子の軌跡では、急冷ガスが粒子の動きに影響を及ぼすが、粒子が急冷ガスに影響を及ぼさないとした。
また、粒子径を100nmとし、単一分散と仮定し、粒子の比熱は考慮していない。粒子は壁面で反跳するとし、一方の端部50aで粒子は静止するとした。
【0061】
図12(a)~(h)と図13(a)~(h)とは、それぞれ対応しており、同じ時間における温度分布と、粒子の状態を示す。図12(a)~(h)と図13(a)~(h)とは、図6(c)に示す熱プラズマ炎および急冷ガスの変化をするものである。
図12(a)および図13(a)は時間0.25秒を示し、図12(b)および図13(b)は時間0.30秒を示し、図12(c)および図13(c)は時間0.40秒を示し、図12(d)および図13(d)は時間0.50秒を示し、図12(e)および図13(e)は時間0.55秒を示し、図12(f)および図13(f)は時間0.60秒を示し、図12(g)および図13(g)は時間0.65秒を示し、図12(h)および図13(h)は時間0.70秒を示す。
【0062】
熱プラズマ炎の温度が高い場合。対応する図12(a)および(b)、ならびに図12(g)および(h)では温度が高い状態になっている。急冷ガスの流量が多い、図12(c)および(d)では温度が低い状態になっている。図12(e)に示すように急冷ガスがチャンバー内に流れ込んで内部の温度が低い状態になっている。
粒子の状態については、図13(c)~(e)に示すように、粒子が一方の端部50a側に分布しており、熱プラズマ炎の尾部付近に滞留している。また,図13(f)および(g)に示すように、急冷ガスの流量が多いと粒子が他方の端部50bに向かって分散した。
【0063】
なお、本実施形態の製造装置10、および製造装置10aは、原料に、例えば、Si粉末を用い、ナノサイズのSi微粒子を製造することができる。しかし、これに限定されるものではなく、他の元素の粒子を微粒子製造用の原料として用いて、その酸化物、金属、窒化物、炭化物等の微粒子の製造を行うことも可能である。この場合、スラリー化しても微粒子の製造を行うことができる。
【0064】
原料は、粉末の場合、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒子径が適宜設定されるが、平均粒子径は、例えば、BET径換算で、100μm以下であり、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
例えば、原料としては、熱プラズマ炎により蒸発させられるものであれば、その種類を問わないが、好ましくは、以下のものがよい。すなわち、原子番号3~6、11~15、19~34、37~52、55~60、62~79および81~83の元素よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、単体酸化物、複合酸化物、複酸化物、酸化物固溶体、金属、合金、水酸化物、炭酸化合物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物、水素化物、金属塩または金属有機化合物を適宜選択すればよい。
【0065】
なお、単体酸化物とは酸素以外に1種の元素からなる酸化物をいい、複合酸化物とは複数種の酸化物から構成されるものをいい、複酸化物とは2種以上の酸化物からできている高次酸化物をいい、酸化物固溶体とは異なる酸化物が互いに均一に溶け合った固体をいう。また、金属とは1種以上の金属元素のみで構成されるものをいい、合金とは2種以上の金属元素から構成されるものをいい、その組織状態としては、固溶体、共融混合物、金属間化合物あるいはそれらの混合物をなす場合がある。
【0066】
また、水酸化物とは水酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭酸化合物とは炭酸基と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、ハロゲン化物とはハロゲン元素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、硫化物とは硫黄と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、窒化物とは窒素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、炭化物とは炭素と1種以上の金属元素から構成されるものをいい、水素化物とは水素と1種以上の金属元素から構成されるものをいう。また、金属塩は少なくとも1種以上の金属元素を含むイオン性化合物をいい、金属有機化合物とは1種以上の金属元素と少なくともC、O、N元素のいずれかとの結合を含む有機化合物をいい、金属アルコキシドや有機金属錯体等が挙げられる。
【0067】
例えば、単体酸化物としては、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)、酸化銀(Ag)、酸化鉄、酸化マグネシウム(MgO)、酸化マンガン(Mn)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム、酸化サマリウム、酸化ベリリウム(BeO)、酸化バナジウム(V)、酸化クロム(Cr)、酸化バリウム(BaO)などを挙げることができる。
【0068】
また、複合酸化物としては、アルミン酸リチウム(LiAlO)、バナジウム酸イットリウム、リン酸カルシウム、ジルコン酸カルシウム(CaZrO)、ジルコン酸チタン鉛、酸化チタン鉄(FeTiO)、酸化チタンコバルト(CoTiO)等を、複酸化物としては、錫酸バリウム(BaSnO)、(メタ)チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸バリウムに酸化ジルコニウムと酸化カルシウムが固溶した固溶体などを挙げることができる。
さらに、水酸化物としてはZr(OH)、炭酸化合物としてはCaCO、ハロゲン化物としてはMgF、硫化物としてはZnS、窒化物としてはTiN、炭化物としてはSiC、水素化物としてはTiH等を挙げることができる。
【0069】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の微粒子の製造装置および微粒子の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10、10a 微粒子の製造装置(製造装置)
12 原料供給部
13 供給管
14 プラズマトーチ
14a 石英管
14b 高周波発振用コイル
14c 供給口
14d プラズマガス供給口
14e 石英管
14f 冷却水
15 間歇供給部
16 チャンバー
16a 上流チャンバー
16b 下流チャンバー
18 回収部
18a フィルター
18b 真空ポンプ
20 プラズマガス供給部
21 プラズマ発生部
22 気体供給部
24 制御部
26 高周波変調誘導熱プラズマ発生部
28a 高周波インバータ電源
28b インピーダンス整合回路
28c パルス信号発生器
28d FETゲート信号回路
30a トリガ回路
30b 電磁コイル
30c バルブ
45 混合物
50 モデル
50a 端部
50b 端部
50c 供給部
100 熱プラズマ炎
102 矩形波
104 パルス制御信号
106 タイミング信号
108 波形
C 中心軸
図1
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