(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】粒状凍結装置及び方法
(51)【国際特許分類】
F25C 1/00 20060101AFI20230209BHJP
F25D 3/10 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
F25C1/00 A
F25D3/10 A
(21)【出願番号】P 2019153013
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2021-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 UBMジャパン株式会社により平成30年12月1日に出版された月刊誌「食品と開発」第53巻、第12号
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】米倉 正浩
(72)【発明者】
【氏名】多畑 英治
(72)【発明者】
【氏名】前田 雅紀
【審査官】嶋田 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-310943(JP,A)
【文献】特開平07-008240(JP,A)
【文献】特開昭63-157966(JP,A)
【文献】特開2000-180009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25C 1/00 ー 1/12
F25D 1/00 ー 16/00
F25D 27/00 ー 31/00
A23B 4/06 ー 4/09
A23L 3/36 ー 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温液化ガスを流す樋状の流路を備え、前記流路に低温液化ガスを送り出す低温液化ガス送出部と、前記流路に原料を連続的に滴下する原料滴下部と、原料の凍結物を低温液化ガスから分離する固液分離部とを備えた粒状凍結装置において、
前記流路は、上流に、流路幅が狭い幅狭区間を備え、該幅狭区間の下流に、該幅狭区間よりも流路幅が広い幅広区間を備え、前記幅狭区間と前記幅広区間の深さは同じであり、前記原料滴下部は、前記幅狭区間
上の上流部に原料を滴下するように配置され、
前記低温液化ガス送出部は、低温液化ガスを貯留する貯留槽と、該貯留槽から低温液化ガスを汲み上げて前記流路に送り出す揚液ポンプとを備え、
前記流路は、前記揚液ポンプから低温液化ガスを受ける始端部と、U字状に折り返す折り返し部と、前記固液分離部に低温液化ガスを流す終端部とを備え、前記固液分離部により凍結物が分離された低温液化ガスが前記貯留槽に戻されるように構成され、
前記終端部は前記貯留槽の直上に位置するように配置されていることを特徴とする粒状凍結装置。
【請求項2】
前記流路は、前記折り返し部より上流側が直線状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の粒状凍結装置。
【請求項3】
前記流路は、水平に配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の粒状凍結装置。
【請求項4】
前記流路全体の寸法は、深さ5~100mm、長さ1,000~10,000mm、幅50mm以上であり、前記幅狭区間と前記幅広区間との流路幅の比が1.1~2.0倍であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の粒状凍結装置。
【請求項5】
前記貯留槽及び前記揚液ポンプは外槽に覆われ、
前記始端部及び前記終端部が、前記外槽に設けられた開口部に差し込まれるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の粒状凍結装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載された粒状凍結装置によって原料を粒状に凍結させる粒状凍結方法であって、
前記流路の始端部から低温液化ガスを送り出す低温液化ガス送出工程と、
低温液化ガスを流した前記流路に原料を滴下する原料滴下工程と、
前記流路に滴下された原料の表面を凍結させる表面凍結工程と、
表面が凍結した原料を芯部まで凍結させる芯部凍結工程と、
流路の終端部で原料の凍結物を低温液化ガスから分離する固液分離工程と、
凍結物が分離された低温液化ガスを前記流路の始端部に送る低温液化ガス循環工程とを含むことを特徴とする粒状凍結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状凍結装置及び方法に関し、詳しくは、低温液化ガスを用いて液状の原料を粒状に凍結させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品関連の産業分野では、液体窒素に代表される低温液化ガスを用いて液状の原料を凍結する方法又は装置として、低温液化ガスを流した樋状の流路に原料を滴下ノズルで連続的に滴下して冷却し、粒状凍結物を生成するものが知られている。とりわけ、滴下された原料の液滴同士が付着することを防止できるものとして、樋状の流路に傾斜を設けて低温液化ガスの流速を上げるとともに、流路の幅を末端に向けて徐々に狭くして低温液化ガスの深度を確保し、さらに、並列された複数の滴下ノズルの間に対応するように複数の仕切りプレートを流路に設けた粒状凍結装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
他にも、傾斜した流路を上下に分割配置して、低温液化ガスを流路の上段から下段に折り返すように流すことで流路を長くして、原料の凍結時間を長くする構成が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6327721号公報
【文献】特開平7-8240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、低温液化ガスを流した流路に原料を滴下して粒状凍結物を得る装置では、滴下した原料を芯部まで凍結させられるように、流路を十分に長くして凍結時間を稼ぐ必要がある。そのため、流路を直線状に形成すると、必要な流路が長くなりすぎて装置の長大化を招くという問題があった。
【0006】
これに対し、特許文献1に記載された装置では、滴下した原料の表面が凍結する程度の長さの流路を採用し、流路を通過して表面が凍結した原料を流路の終端部で一旦カゴに溜めてから、再度カゴごと低温液化ガスに浸漬して芯部まで凍結させるようにしている。
【0007】
しかしながら、このように表面だけが凍結した原料を一カ所に溜めておく工程があることで、これらの原料がくっつき合って塊状になるおそれがあった。また、カゴに原料を溜めている間、粒状凍結物の生産に空白期間が生じるので、粒状凍結物を連続的に生産することができなかった。
【0008】
また、特許文献2のような構成では、流路の上段から下段に落下する箇所で低温液化ガスの流れが攪乱されるので、表面のみ凍結した原料同士がその箇所で次々に衝突し合って塊状になり、しかも、その塊が肥大していき流路を塞ぐという問題が生じていた。
【0009】
そこで本発明は、低温液化ガスに滴下した原料が凍結中に塊状になることを防ぎつつ、原料の粒状凍結物を安定的かつ連続的に生産可能な粒状凍結装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の粒状凍結装置は、低温液化ガスを流す樋状の流路を備え、前記流路に低温液化ガスを送り出す低温液化ガス送出部と、前記流路に原料を連続的に滴下する原料滴下部と、原料の凍結物を低温液化ガスから分離する固液分離部とを備えた粒状凍結装置において、前記流路は、上流に、流路幅が狭い幅狭区間を備え、前記幅狭区間と前記幅広区間の深さは同じであり、前記原料滴下部は、前記幅狭区間上の上流部に原料を滴下するように配置され、前記低温液化ガス送出部は、低温液化ガスを貯留する貯留槽と、該貯留槽から低温液化ガスを汲み上げて前記流路に送り出す揚液ポンプとを備え、前記流路は、前記揚液ポンプから低温液化ガスを受ける始端部と、U字状に折り返す折り返し部と、前記固液分離部に低温液化ガスを流す終端部とを備え、前記固液分離部により凍結物が分離された低温液化ガスが前記貯留槽に戻されるように構成され、前記終端部は前記貯留槽の直上に位置するように配置されていることを特徴としている。
【0012】
さらに、前記流路は、前記折り返し部より上流側が直線状に形成されていること、水平に配設されていることも特徴としており、前記流路全体の寸法は、深さ5~100mm、
長さ1,000~10,000mm、幅50mm以上であり、前記幅狭区間と前記幅広区間との流路幅の比が1.1~2.0倍であることも特徴としている。また、前記貯留槽及び前記揚液ポンプは外槽に覆われ、前記始端部及び前記終端部が、前記外槽に設けられた開口部に差し込まれるように配置されていることを特徴としている。
【0013】
そして、本発明の粒状凍結装置によって原料を粒状に凍結させる粒状凍結方法は、前記流路の始端部から低温液化ガスを送り出す低温液化ガス送出工程と、低温液化ガスを流した前記流路に原料を滴下する原料滴下工程と、前記流路に滴下された原料の表面を凍結させる表面凍結工程と、表面が凍結した原料を芯部まで凍結させる芯部凍結工程と、流路の終端部で原料の凍結物を低温液化ガスから分離する固液分離工程と、凍結物が分離された低温液化ガスを前記流路の始端部に送る低温液化ガス循環工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粒状凍結装置によれば、低温液化ガスを流す流路に幅狭区間があることにより、その区間を流れる低温液化ガスの液面が上昇して液体の深さが増すので、滴下した原料を流路の底面に付着させることがなく、滴下した原料の表面を凍結させることができる。また、幅狭区間より下流の幅広区間では流路の幅が広くなっていることから、原料を十分な間隔を保って流すことができるので、表面が凍結した原料が互いに衝突して塊状化することを防止し、滴下した原料を芯部まで凍結させた粒状凍結物を安定して得ることができる。
【0015】
また、流路を、単なる直線状とせず、折り返し部を設けてU字状に形成することにより、サイズをコンパクトにできるので、十分な凍結距離を確保しながら装置の長大化を抑止できる。しかも、低温液化ガス送出部によって、流路に低温液化ガスを流すと共に、流路に流した低温液化ガスを貯留槽で回収し、揚液ポンプを駆動力として再び流路に流すことができるので、低温液化ガス供給源から低温液化ガスが供給される限り、流路に低温液化ガスを恒常的に流し続けることができる。
【0016】
さらに、本発明の粒状凍結装置を用いた粒状凍結方法によれば、低温液化ガス送出工程と低温液化ガス循環工程とにより、流路には常に低温液化ガスが流れるように保たれ、原料滴下工程と、表面凍結工程と、芯部凍結工程と、固液分離工程と、凍結物回収工程とによる一連の作業工程により、流路に滴下した原料が流路の終端部で粒状凍結物となって、低温液化ガスから分離されて回収されるので、流路に原料を滴下し続けることで、粒状凍結物の生産を淀みなく連続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の粒状凍結方法を実施可能な粒状凍結装置の一形態例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至
図2に示されるように、粒状凍結装置11は、液体窒素に代表される低温液化ガスを流す樋状の流路12を備えており、流路12に低温液化ガスを送り出す低温液化ガス送出部13と、流路12に原料を連続的に滴下する原料滴下部14と、原料滴下部14により流路12に滴下された原料の凍結物を低温液化ガスから分離する固液分離部15と、固液分離部15によって分離された凍結物を回収する凍結物回収部16とを備えている。また、流路12は、上蓋17aを備えた外気遮断槽17の内部に納められている。
【0019】
流路12は、水平に配設されるとともに、低温液化ガスの流れの始めとなる始端部12aと、低温液化ガスの流れの終わりとなる終端部12bと、始端部12aから終端部12bにかけての中程でU字状に折り返す折り返し部12cとを備え、始端部12aから折り返し部12cまでの間、及び、折り返し部12cから終端部12bまでの間は、いずれも直線状に形成されている。
【0020】
また、流路12は、上流に、流路幅が狭い幅狭区間12dを備え、幅狭区間12dの下流に、幅狭区間12dよりも流路幅が広い幅広区間12eを備えている。ここで、幅狭区間12dの長さは、低温液化ガスの流れの中で、滴下された原料の表面を凍結させることができる程度の長さになっている。また、幅広区間12eの流路幅は、幅狭区間12dの流路幅に対して1.1~2.0倍の範囲、好ましくは1.3~1.5倍の範囲に設定されている。
【0021】
流路12全体の寸法は、滴下する原料の凍結しやすさや、原料滴下部14が一度に滴下する液滴の数に応じて変更可能であるが、深さは5~100mmの範囲内であり、長さは1,000~10,000mmの範囲内であり、幅は50mm以上であることが望ましい。
【0022】
また、滴下する原料の液滴の大きさによっては、凍結時間のみならず、液滴表面に対する芯部の凍結のしやすさも変わるので、流路12の長さと共に、液滴表面を凍結させる幅狭区間12dと芯部を凍結させる幅広区間12eとの比率も変えることが望ましい。例えば、滴下する原料の液滴が小さい場合は、凍結時間が短くなり、表面が凍結すれば芯部もすぐに凍結するので、流路12を短くし、幅広区間12eを幅狭区間12dよりも短くとることが望ましい。また、滴下する原料の液滴が大きい場合は、凍結時間が長くなり、表面が凍結しても芯部がすぐに凍結するわけではないので、流路12を長くし、幅広区間12eを幅狭区間12dよりも長くとることが望ましい。
【0023】
原料滴下部14は、幅狭区間12dの上流部に原料を滴下するように配置されており、複数の滴下ノズル(図示せず)を備え、流路12に複数の液滴を同時に滴下できるように構成されている。
【0024】
外気遮断槽17は、壁面に空気が封入された空気相と、断熱材によって形成された断熱相とからなる断熱構造(図示せず)を有しているので、流路12の温度変化を抑制して流路12を流れる低温液化ガスの蒸発を抑えることができる。外気遮断槽17の上蓋17aの、原料滴下部14の直下位置には、流路12への原料の滴下が阻害されないように滴下孔17bが設けられている。
【0025】
低温液化ガス送出部13は、真空断熱された底面及び壁面を有し、上面が開口した、低温液化ガスを貯留する貯留槽18と、貯留槽18から低温液化ガスを汲み上げて流路12に送り出す揚液ポンプ19と、貯留槽18に低温液化ガスを供給する、電磁弁20a付きの低温液化ガス供給源20と、貯留槽18の液面の高さを検知する液面センサー21と、液面センサー21の検知情報に応じてこの電磁弁20aを開閉して貯留槽18の液面の高さを一定に保つように制御する液面制御部22とを備えている。
【0026】
揚液ポンプ19は、動力であるモーター19aの下部に、円筒形状のケース19bが設けられたポンプであり、ケース19bの内部に配置した縦型のスクリュー(図示せず)をモーター19aで回転させることで液体を汲み上げられるように構成されている。ケース19bの下部には、低温液化ガスを流入させる流入口19cが設けられ、貯留槽18内に差し込まれるように配置されている。また、ケース19bの上部には、スクリューによってケース19b内に汲み上げられた低温液化ガスをケース19b外に吐出する吐出口19dが設けられている。したがって、揚液ポンプ19は、貯留槽18内の低温液化ガスを流入口19cから汲み上げて、吐出口19dから送り出すことができる。
【0027】
貯留槽18及び揚液ポンプ19のケース19bは、内部を保冷可能な筐体である外槽23に覆われており、貯留槽18及び揚液ポンプ19内の低温液化ガスの温度を維持できるように構成されている。外槽23の一側面の上部には開口部23aが設けられており、下部には排出口23bが設けられている。開口部23aは、外気遮断槽17と接続されており、外気遮断槽17内から外槽23内に、流路12の始端部12a及び終端部12bが、開口部23aを通じて差し込まれるように配設されている。また、排出口23bの外には、上面が開口した筐体である凍結物回収部16が隣接するように配置されている。
【0028】
開口部23aにおいて、流路12の始端部12aは、揚液ポンプ19の吐出口19dの直下に位置するように配置されており、流路12の終端部12bは、貯留槽18の直上に位置するように配置され、終端部12bの先には、メッシュ板15aからなる固液分離部15が取り付けられている。固液分離部15のメッシュ板15aは、上部が流路12の進行方向を遮るように垂設されるとともに、下部が傾斜して貯留槽18を避けるように排出口23bの先まで延び、外槽23の外に突き出て、凍結物回収部16の上方に至るように配設されている。
【0029】
固液分離部15がメッシュ板15aであることから、流路12の終端部12bに流れてきた低温液化ガスは、メッシュ板15aを通過して下方に位置する貯留槽18に流下する一方で、低温液化ガスと共に流れてきた原料の粒状凍結物は、メッシュ板15aの垂直部分で受け止められて低温液化ガスから分離され、傾斜部分を転がって排出口23bに誘導され、その先にある凍結物回収部16に回収される。
【0030】
したがって、揚液ポンプ19の吐出口19dから低温液化ガスが吐出されると、吐出された低温液化ガスは、流路12の始端部12aへと送り出されて流路12内を流れ、終端部12bに達すると、終端部12bから固液分離部15のメッシュ板15aを通過して貯留槽18に戻される。貯留槽18に戻された低温液化ガスは、揚液ポンプ19によって再び流路12に送り出される。
【0031】
また、液面制御部22は、液面センサー21によって貯留槽18の液面の高さが設定された下限値よりも低下したことを検知すると低温液化ガス供給源20の電磁弁20aを開くように指令を出し、液面の高さが設定された上限値に戻ったことを検知すると電磁弁20aを閉じるように指令を出すように設定されている。したがって、貯留槽18内の低温液化ガスは、液面制御部22によって所定量になるように保たれている。
【0032】
以下、上述の粒状凍結装置11を用いた粒状凍結方法について説明する。まず、低温液化ガス送出部13において、液面制御部22が低温液化ガス供給源20から貯留槽18に、所定の液面高さになるまで低温液化ガスを供給した状態で、揚液ポンプ19を駆動させ、貯留槽18から低温液化ガスを汲み上げて流路12の始端部12aに送り出し、低温液化ガスを流路12全体に流す(低温液化ガス送出工程)。
【0033】
流路12に十分な量の低温液化ガスが流されたら、原料滴下部14から原料を滴下する(原料滴下工程)。滴下された原料は、最初に幅狭区間12dで低温液化ガスの流れに浸されることで液滴表面が凍結され、粒状になって下流に流される(表面凍結工程)。表面が凍結した原料は、幅狭区間12dを過ぎると幅広区間12eに進入し、流路12の幅方向に広がりながら流され、芯部まで凍結される(芯部凍結工程)。芯部まで凍結した原料は、流路12の終端部12bに到達すると、固液分離部15のメッシュ板15aによって低温液化ガスから分離され(固液分離工程)、それとともに、メッシュ板15aに誘導されて凍結物回収部16に送られ、粒状凍結物として回収される(凍結物回収工程)。一方、凍結物が分離された低温液化ガスは、貯留槽18に戻され、揚液ポンプ19によって再び流路12の始端部12aに送られる(低温液化ガス循環工程)。
【0034】
本発明の粒状凍結装置11では、流路12に幅狭区間12dが設けられていることにより、その区間を流れる低温液化ガスの液面が流路幅の狭さの分だけ上昇して液体の深さが増すので、原料滴下部14から滴下された原料の液滴を流路12の底面に付着させることなく表面を凍結させて粒状化させ、低温液化ガスの流れに乗せることができる。
【0035】
また、幅狭区間12d下流の流路幅が狭いままであると、幅狭区間12dで表面のみ凍結した原料の粒同士が密集し、衝突し合って塊状化するおそれがあるが、幅狭区間12dの下流に、流路幅が広がった幅広区間12eが設けられていることにより、表面のみ凍結した原料の粒を十分な間隔を保って流すことができる。
【0036】
すなわち、本発明の粒状凍結装置11では、流路12に幅狭区間12dが設けられ、幅狭区間12dの下流が幅広区間12eになっていることにより、幅狭区間12dで表面が凍結した原料を、低温液化ガス中に流しつつ、その流れの中で互いに衝突し合って塊状化することを防止することができるので、滴下した原料を粒状のまま芯部まで凍結させることができ、原料の粒状凍結物を安定して得ることができる。
【0037】
また、流路12が略水平で高低差がほとんどないことから、貯留槽18から低温液化ガスを汲み上げる高さを低く抑えることができ、揚液ポンプ19に必要な動力を、流路12に高低差がある場合よりも削減することができる。
【0038】
しかも、流路12を、単なる直線状とせず、折り返し部12cを設けてU字状に形成することにより、サイズをコンパクトにできるので、十分な凍結距離を確保しながら装置の長大化を抑止できる。
【0039】
また、低温液化ガス送出部13によって、流路12に低温液化ガスを流すと共に、流路12に流した低温液化ガスを貯留槽18で回収し、揚液ポンプ19を駆動力として再び流路12に流すことができるので、低温液化ガス供給源20から低温液化ガスが供給される限り、流路12に低温液化ガスを恒常的に流し続けることができる。
【0040】
さらに、低温液化ガスを外槽23に覆われた貯留槽18と外気遮断槽17に覆われた流路12との間で循環させることで、低温液化ガスを蒸発しにくくすることができるので、低温液化ガスの損失を抑えて使用量を低減することが可能になる。
【0041】
そして、本発明の粒状凍結方法によれば、低温液化ガス送出工程と低温液化ガス循環工程とにより、流路12は常に低温液化ガスが流れるように保たれ、原料滴下工程と、表面凍結工程と、芯部凍結工程と、固液分離工程と、凍結物回収工程とによる一連の作業工程により、流路12に滴下した原料が流路12の終端部12bで粒状凍結物となって、低温液化ガスから分離されて回収されるので、流路12に原料を滴下し続けることで、粒状凍結物の生産を淀みなく連続的に行うことができる。
【0042】
なお、本発明において、粒状凍結の対象となる原料は、主に食品分野のものを想定しているが、それ以外にも、材料分野や医薬品分野のものも、粒状凍結の対象として採用可能である。また、原料滴下部に加えて、固形物を投下可能な原料投下部を設けることにより、液状原料のみならず、カットフルーツなどの固形物の凍結にも応用可能である。
【0043】
また、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、流路にはU字状の折り返し部が一カ所設けられているが、流路が略水平で、始端部と終端部とが近接するように形成されていれば、折り返し部が一カ所である必要はなく、U字状の折り返し部を奇数箇所設けて、複数回折り返す形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
11…粒状凍結装置、12…流路、12a…始端部、12b…終端部、12c…折り返し部、12d…幅狭区間、12e…幅広区間、13…低温液化ガス送出部、14…原料滴下部、15…固液分離部、15a…メッシュ板、16凍結物回収部、17…外気遮断槽、17a…上蓋、17b…滴下孔、18…貯留槽、19…揚液ポンプ、19a…モーター、19b…ケース、19c…流入口、19d…吐出口、20…低温液化ガス供給源、20a…電磁弁、21…液面センサー、22…液面制御部、23…外槽、23a…開口部、23b…排出口