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特許7223707層を形成するためのスラッジフリー方式で連続して金属部品をリン酸亜鉛処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】層を形成するためのスラッジフリー方式で連続して金属部品をリン酸亜鉛処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/36 20060101AFI20230209BHJP
   C23C 22/73 20060101ALI20230209BHJP
   C23C 22/78 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C23C22/36
C23C22/73 Z
C23C22/78
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019556934
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2018055695
(87)【国際公開番号】W WO2018192707
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】17167467.4
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-ウィレム・ブラウウェル
(72)【発明者】
【氏名】フランク-オリヴァー・ピラレク
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド・ホセ・レサノ・アルタレホ
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・ハマッヒャー
(72)【発明者】
【氏名】マルク・バルツァー
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-183144(JP,A)
【文献】特開平05-230669(JP,A)
【文献】特開平02-277781(JP,A)
【文献】国際公開第2007/020985(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/013626(WO,A1)
【文献】特表2006-528280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0062027(US,A1)
【文献】国際公開第2013/153682(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00-22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に鉄表面およびアルミニウム表面を有する部品を含む一連の金属部品を防食処理するための方法であって、前記一連の金属部品の各部品は同じ組成であり、該方法において、前記一連の金属部品は連続的に次の湿式化学処理工程:
(I)D50値が3μm未満であり、リン酸塩を含む無機粒子成分を有するアルカリ性水性分散液と接触させることによる活性化であって、これらのリン酸塩の全体が、少なくとも部分的にホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトで構成され、ここで、前記無機粒子成分からのリン酸塩の量が、POとして計算され、前記アルカリ性水性分散液に基づいて、少なくとも40mg/kgであり、0.4g/kg未満である、活性化;
(II)
(a)5~50g/lのリン酸イオン、
(b)0.3~3g/lの亜鉛イオン、
(c)少なくとも15mmol/kgの溶解形態のアルミニウムイオン、および
(d)少なくとも1つのフッ化物イオンの供給源
を含有する酸性水性組成物と接触させることによるリン酸亜鉛処理
を受け、
ここで、前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物中の遊離フッ化物の濃度が、少なくとも2mmol/kgであるが、8mmol/kg以下であり、前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物のpHが、2.5超であるが、3.5未満であり、前記リン酸亜鉛処理における各部品の表面積に基づくアルミニウムの酸洗速度が、
【数1】
A:部品および前記部品の平方メートルあたりの前記酸性水性組成物のミリリットル単位で示される前記リン酸亜鉛処理浴からの実際のドラグアウト
以下であり、
前記アルカリ性水性分散液中、POとして計算された、mmol/kg単位での粒子リン酸塩の形態のリン酸塩の濃度が、mmol/kg単位での次の項:
【数2】
[AI]:mmol/kg単位での溶解形態のアルミニウムイオンの濃度
[F]:mmol/kg単位での遊離フッ化物の濃度
pH:前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物のpH
の100分の7超であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分に基づくリン酸塩の割合が、POとして計算して、少なくとも30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分中の亜鉛の割合が、少なくとも20重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分中のチタンの割合が、5重量%未満のチタンが前記活性化の前記アルカリ性水性分散液中に含有されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分からのリン酸塩の量が、POとして計算され、前記分散液に基づいて、少なくとも80mg/kgであることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記活性化における前記アルカリ性水性分散液のpHが、8超であるが、12未満であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物の場合、mmol/kg単位での溶解形態のナトリウムおよび/またはカリウムイオンの総濃度は、溶解形態のアルミニウムイオンの濃度の三乗根で割って、数40未満であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物中の溶解形態でのアルミニウムイオンの濃度が、30mmol/kg超であるが、100mmol/kg未満であることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物のpHが、2.7超であるが、3.3未満であることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記活性化と前記リン酸亜鉛処理との間にすすぎ工程も乾燥工程も行われないことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
中間すすぎ工程および/または中間乾燥工程を伴うか、又は伴わない、リン酸亜鉛処理の後に、浸漬コーティングが続くことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸亜鉛処理浴中に溶解したアルミニウムに対する耐性が高い鋼表面を含む部品を、層形成リン酸亜鉛処理するための方法に関し、この方法では、難溶性アルミニウム塩の沈殿を大幅に回避することができる。この方法では、粒子のホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトを含有する分散液による亜鉛表面の活性化が使用され、活性化における粒子リン酸塩の割合は、リン酸亜鉛処理における遊離フッ化物および溶解アルミニウムの量に適合させる必要がある。
【背景技術】
【0002】
リン酸亜鉛処理は、金属表面、特に鉄、亜鉛、およびアルミニウムの金属材料に結晶防食コーティングを適用するための方法であり、これは数十年にわたって使用され、深く研究されてきた。リン酸亜鉛処理は、数マイクロメートルの層厚で行われ、亜鉛イオンおよびリン酸塩を含有する酸性水性組成物中の金属材料の腐食性酸洗い液に基づいており、これは金属表面の相境界上のアルカリ拡散層に難溶性の微結晶として沈殿し、さらにその上でエピタキシャル成長する。金属アルミニウムの材料への酸洗反応をサポートし、溶解形態で金属材料上の層形成を妨げる浴毒アルミニウムをマスクするために、フッ化物イオンの供給源である水溶性化合物がしばしば添加される。リン酸亜鉛処理は、リン酸塩処理される部品の金属表面の活性化によって常に開始される。湿式化学活性化は、従来、リン酸塩のコロイド分散液との接触によって行われ、コロイド分散液は、金属表面上に固定されている限り、結晶コーティングを形成するための成長核として後続のリン酸塩処理に使用される。適当な分散液は、リン酸塩微結晶に基づくコロイド状の大部分がアルカリ性の水性組成物であり、これは堆積されるリン酸亜鉛層のタイプからのその結晶構造においてわずかな結晶学的偏差を有する。文献で一般にジャーンシュテット塩と呼ばれるリン酸チタンに加えて、水不溶性の二価および三価リン酸塩は、リン酸亜鉛処理のための金属表面を活性化するのに適当なコロイド溶液を提供するための出発材料としても適する。これに関連して、例えば国際公開第WO98/39498A1号は、特に金属Zn、Fe、Mn、Ni、Co、Ca、およびAlの二価および三価のリン酸塩を教示しており、金属亜鉛のリン酸塩は、技術的には、後続のリン酸亜鉛処理のための活性化に使用することが好ましい。
【0003】
活性化およびリン酸亜鉛処理のプロセス順序としての任意のタイプの層形成リン酸処理には、特に異なる金属材料の混合物で構成される部品の処理、または新規材料の処理でも重要になる独自の特性がある。例えば、アルミニウムイオンの存在下で材料鉄の表面上への均質な層形成は成功せず、フッ化物イオンによるマスキングが必要であることが既知である。しかしながら、アルミニウムイオンのマスキングは、高レベルのアルミニウムがリン酸亜鉛処理浴に入るとその限界に達し、その結果、平衡状態のアルミニウムイオンが鋼表面上の欠陥のないコーティングの形成を妨げる。したがって、先行技術では、リン酸亜鉛処理中に溶解したアルミニウムは、リン酸亜鉛処理浴から少なくとも部分的に除去される。多くの場合、水中に溶解したアルミニウムの高含有量は、ナトリウムおよび/またはカリウムイオンの存在下での氷晶石またはエルパソライトの沈殿によっても制限される。氷晶石またはエルパソライトの沈殿は、制御するのが技術的に複雑であり、付着物の形成を防止するために、浴からのスラッジの除去を必要とし、リン酸塩処理された表面から氷晶石またはエルパソライト微結晶の非常に微細な堆積を除去するために、浸漬コーティングの欠陥を防止し、リン酸亜鉛処理後の集中的なすすぎを必要とする。したがって、国際特許公開WO2004/007799A2号は、0.1g/lを超える溶解アルミニウム含有量は有害ではないと考えられ、アルミニウムイオンの別個の沈殿範囲を提供する必要はないが、少なくとも部分的にアルミニウムから製造される部品のリン酸塩処理のために、溶解アルミニウムの0.01~0.4g/lのより好ましい範囲が与えられるように、ナトリウムおよび/またはカリウムイオンの可能な限り低いレベルで、リン酸塩処理を行うことを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO98/39498A1号
【文献】国際特許公開WO2004/007799A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、溶解アルミニウムの高い割合にも耐える金属部品のリン酸亜鉛処理の方法に好適な条件を見出すことであり、その条件では、鋼表面上にほとんど欠陥のないリン酸亜鉛コーティングが成功し、その結果、全体として優れたコーティング接着性が得られる。特に、金属部品を層形成方式でリン酸塩処理段階で処理できる方法が提供され、その部品の表面は、元素鉄の金属材料および元素アルミニウムの金属材料で形成される。リン酸亜鉛処理浴のケアの必要性も可能な限り低くすべきであり、理想的には、酸洗の投入およびドラグアウトによって設定される定常状態の平衡濃度は、部品の鋼表面のリン酸塩処理性能の一連の部品の処理において、問題のないようにすべきである。また、この方法では、アルミニウム含有量が高いにもかかわらず、例えば氷晶石および/またはエルパソライトの形態で難溶性アルミニウム塩を沈殿させる傾向がないことが望ましく、これはそのような沈殿物を伴う場合、スラッジ形成のため、多くの場合に氷晶石またはエルパソライト微結晶介在物の非常に微細な介在物のために、浸漬コーティングによるコーティング後に不十分な腐食保護となり、該方法に重大な欠点が存在するためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この目的は、活性化に寄与する粒子リン酸塩の割合を、リン酸亜鉛処理において水中に溶解した遊離フッ化物およびアルミニウムイオンの量に対して適合させることにより達成される。
【0007】
したがって、本発明は、少なくとも部分的に鉄表面を有する部品を含む一連の金属部品の防食処理方法に関し、この方法では、一連の金属部品が連続的に次の湿式化学処理工程:
(I)D50値が3μm未満であり、リン酸塩を含む無機粒子成分を有するアルカリ性水性分散液と接触させることによる活性化であって、これらのリン酸塩の全体が、少なくとも部分的にホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトで構成される、活性化;
(II)
(a)5~50g/lのリン酸イオン、
(b)0.3~3g/lの亜鉛イオン、
(c)少なくとも15mmol/kgの溶解形態のアルミニウムイオン、および
(d)少なくとも1つのフッ化物イオンの供給源
を含有する酸性水性組成物と接触させることによるリン酸亜鉛処理
を受け、アルカリ性水性分散液中、POとして計算された、mmol/kg単位での粒子リン酸塩の形態のリン酸塩の濃度が、mmol/kg単位での次の項:
【数1】
[AI]:mmol/kg単位での溶解形態のアルミニウムイオンの濃度(mmol/kg)
[F]:mmol/kg単位での遊離フッ化物の濃度
pH:リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物のpH
100分の7超であることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に従って処理される部品は、製作プロセスから生じる任意の形状および設計の三次元構造であってよく、特にストリップ、金属板、ロッド、パイプなどのような半製品、ならびに好ましくは接着、溶接、および/またはフランジ加工によって相互接続されて複合構造を形成する前記半完成品から組み立てられた複合構造も含む。本発明の意味する範囲内で、その幾何学的表面の少なくとも10%が金属表面によって形成されている場合、部品は金属である。
【0009】
本発明の文脈において、亜鉛、鉄、またはアルミニウムの表面を有する部品の処理に言及する場合、50原子%超の関連元素を含有する金属基材または金属コーティングのすべての表面が含まれる。例えば、本発明によれば、亜鉛メッキ鋼グレードは、亜鉛表面を形成するが、例えば亜鉛メッキ鋼のみで作製された車体の刃先および円筒研削点では、本発明に従って鉄の表面を露出させることができる。本発明によれば、少なくとも部分的に亜鉛表面を有する一連の部品は、部品表面積に基づいて少なくとも5%の亜鉛表面を有することが好ましい。熱間成形鋼などの鋼種にも、スケーリングに対する保護および成形助剤として、アルミニウムの金属コーティングおよび数ミクロン厚のシリコンを提供してもよい。このようにコーティングされた鋼材は、たとえ基材が鋼であっても、本発明の文脈ではアルミニウム表面を有する。
【0010】
連続した部品の防食処理は、多数の部品が、各処理工程で提供される、従来システムタンク内に貯蔵されている処理溶液と接触する場合であり、個々の部品は連続して、したがって異なる時間に接触する。この場合、システムタンクは、連続した防食処理を目的として前処理溶液が入れられている容器である。
【0011】
連続した防食処理の部品に対する活性化およびリン酸亜鉛処理の処理工程は、それぞれの場合に提供される後続する湿式化学処理以外の任意の他の処理によって中断されない限り、「連続的に」行われる。
【0012】
本発明の意味する範囲内で、湿式化学処理工程は、金属部品を実質的に水からなる組成物と接触させることにより行われる処理工程であり、すすぎ工程を表すものではない。すすぎ工程は、前の湿式化学処理工程から、部品に接着することにより持ち越される、可溶性残留物、粒子、および活性成分を、処理される部品から完全または部分的に除去するためにのみ使用され、金属元素系または半金属元素系の活性成分を含まず、これらは、部品の金属表面をすすぎ液と接触させるだけで既に消費され、すすぎ液自体に含有されている。したがって、すすぎ液は単なる水道水であり得る。
【0013】
リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の遊離フッ化物の濃度は、フッ化物感受性測定電極を用いて、pH緩衝なしのフッ化物含有緩衝液での較正後、リン酸亜鉛処理の関連酸性水性組成物において20℃で電位差測定により決定できる。
【0014】
リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中に溶解したアルミニウムイオンの濃度は、0.2μmの公称孔径を有する膜を使用して行われる、酸性水性組成物の膜濾過の濾液中の原子発光分析法(ICP-OES)によって決定できる。同様に、本発明の文脈において、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の金属または半金属元素の他のイオンの濃度は、溶解形態で決定される。
【0015】
本発明の文脈で使用される「pH」は、20℃でのヒドロニウムイオン活性の負の常用対数に対応し、pH感受性ガラス電極によって決定することができる。したがって、組成物は、pHが7より下である場合は酸性であり、pHが7より上である場合はアルカリ性である。
【0016】
本発明の方法におけるリン酸亜鉛処理の酸性水性組成物の好ましいpHは、2.5超、特に好ましくは2.7超であるが、好ましくは3.5未満、特に好ましくは3.3未満である。
【0017】
本発明の方法では、活性化およびリン酸亜鉛処理の個々の処理工程は、リン酸亜鉛処理浴からアルミニウムイオンを除去する必要なく、部品の鉄表面に均質な結晶リン酸塩コーティングが常に製造されるように調整される。本発明の方法の好ましい実施形態では、POとしてmmol/kgで計算された、アルカリ性水性分散液中の粒子リン酸塩の形態のリン酸塩の濃度は、mmol/kg単位での次の項:
【数2】
[AI]:mmol/kg単位での溶解形態のアルミニウムイオンの濃度
[F]:mmol/kg単位での遊離フッ化物の濃度
pH:リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物のpH
100分の9超、特に好ましくは10分の1超である。
【0018】
酸性の水性組成物中に溶解したアルミニウムの濃度が15mmol/kgを大幅に超える場合、リン酸亜鉛処理で良好な結果を依然として達成することができる。多数の部品の一連の処理の定常状態平衡におけるアルミニウムの含有量の高い許容値により、一連の部品と一緒に処理されるアルミニウムの表面の割合を増やすことが可能になる。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態では、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の溶解形態のアルミニウムイオンの濃度は、30mmol/kg超である。溶解したアルミニウムイオンが100mmol/kgを超えると、鉄表面の十分な活性化に必要なリン酸塩を含有する粒子成分の量が非常に多く、この方法は経済的に魅力的なものではなくなる。したがって、本発明によれば、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の溶解形態のアルミニウムイオンの濃度は、100mmol/kg未満、特に好ましくは60mmol/kg未満、より特に好ましくは45mmol/kg未満であることが好ましい。
【0019】
アルカリ性水性分散液の粒子成分は、10kDの公称カットオフ限界(NMWC:公称分子量カットオフ)を有するアルカリ性水性分散液の、規定された部分体積の限外濾過の残留物を乾燥した後に残る、固体部分である。限外濾過は、濾液中で10μScm-1より低い導電率が測定されるまで、脱イオン水(κ<1μScm-1)を添加することにより行われる。アルカリ性水性分散液の無機粒子成分は、次に、限外濾過保持液の乾燥から得られた粒子成分を、触媒または他の添加剤を混合せずに、900℃でCOフリーの酸素フローを供給することにより、反応炉内で、赤外線センサーが反応炉の出口でCOフリーキャリアガス(ブランク値)と同一の信号を提供するまで熱分解したときに残るものである。無機粒子成分に含有されるリン酸塩は、25℃で15分間、10重量%のHNO水溶液を用いる、成分の酸消化後、該酸消化から直接、原子発光分析(ICP-OES)によりリン含有量として決定される。
【0020】
鉄表面を活性化するために、アルカリ性水性分散液が3μm未満のD50値を有することが重要であり、そうでない場合、非常に高いため、不経済な割合の粒子成分が、リン酸亜鉛処理の結晶核を提供する粒子と共に、金属表面の十分なコーティングを製造する可能性がある。さらに、粒子が平均して大きい分散液は、沈降する傾向がある。
【0021】
したがって、本発明の方法の好ましい実施形態において、活性化のアルカリ性水性分散液のD50値は2μm未満、特に好ましくは1μm未満であり、アルカリ性水性組成物中に含有される粒子成分の少なくとも90体積%がこの値を下回るように、D90値は好ましくは5μm未満である。
【0022】
この文脈におけるD50値は、アルカリ性水性組成物中に含有される粒子成分の50体積%を超えない、体積平均粒子直径を示す。体積平均粒子径は、いわゆるD50値としての体積加重累積粒子サイズ分布から、ミー理論による散乱光分析により、20℃でISO 13320:2009に従って、関連する組成物から直接に決定することができ、ここで、球状粒子およびn=1.52-i・0.1の散乱粒子の屈折率が仮定される。
【0023】
後続のリン酸塩処理において部品の鉄表面上への閉じたリン酸亜鉛コーティングの形成を効果的に促進し、この意味で鉄表面を活性化する、アルカリ性分散液の活性成分は、主にリン酸塩で構成され、同様に、少なくとも部分的にホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトで構成される。これに関して、活性化は、活性化のアルカリ性水性分散液の無機粒子成分のリン酸塩割合が、POとして計算して、分散液の無機粒子成分に基づいて、少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%、より特に好ましくは少なくとも40重量%であることが好ましい。
【0024】
したがって、本発明の意味する範囲内における活性化は、実質的に粒子形態で本発明にしたがい含有されるリン酸塩に基づいており、該リン酸塩は、好ましくは少なくとも部分的にホープアイト、フォスフォフィライト、および/またはショルザイト、特に好ましくはホープアイトおよび/またはフォスフォフィライト、より特に好ましくはホープアイトで構成される。ホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトのリン酸塩は、アルカリ性水性分散液を提供するために、細かく粉砕した粉末として、または安定剤と共に摩砕した粉末ペーストとして、水溶液中に分散させてもよい。結晶水を考慮に入れない場合、ホープアイトは、化学量論的にZn(POおよびニッケル含有かつマンガン含有変異体ZnMn(PO、ZnNi(POを含むが、フォスフォフィライトは、ZnFe(POからなり、ショルザイトは、ZnCa(POからなり、ハーロライトは、Mn(POからなる。アルカリ性水性分散液中のホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトの結晶相の存在は、上記の公称カットオフ限界の10kD(NMWC)の限外濾過による粒子成分の分離、および、残余分を一定質量まで105℃で乾燥後に、X線回折法(XRD)を用いて、実証することができる。
【0025】
亜鉛イオンを含み、特定の結晶化度を有するリン酸塩が存在することが好ましいため、本発明によれば、活性化のアルカリ性水性分散液は、アルカリ性水性分散液の無機粒子成分中、POとして計算される無機粒子成分のリン酸塩含有量に基づいて、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%の亜鉛である、強固に接着する結晶性リン酸亜鉛コーティングを形成するための方法が好ましい。
【0026】
しかしながら、本発明の意味する範囲内での活性化は、リン酸チタンのコロイド溶液によって達成されることを意図しておらず、これはそうでなければ、鉄、特に鋼の表面上の層形成リン酸亜鉛処理は信頼できず、腐食に対する保護に効果的なアルミニウム上の薄いリン酸塩コーティングの利点が達成されないためである。したがって、本発明の方法の好ましい実施形態では、活性化のアルカリ性水性分散液の無機粒子成分中のチタンの割合は、分散液の無機粒子成分に基づいて、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満である。特に好ましい実施形態では、活性化のアルカリ性水性分散液は、合計で10mg/kg未満、特に好ましくは1mg/kg未満のチタンを含有する。
【0027】
亜鉛、アルミニウム、および鉄から選択される全ての金属表面を十分に活性化するためには、リン酸塩を含む無機粒子成分の割合を適宜調整すべきである。この目的のために、本発明の方法において、無機粒子成分中のリン酸塩の割合が、POとして計算して、活性化のアルカリ性水性分散液に基づいて、少なくとも40mg/kg、好ましくは少なくとも80mg/kg、特に好ましくは少なくとも150mg/kgである場合が一般的に好ましい。経済的な理由および再現性のあるコーティング結果のために、活性化は最大限に希釈されたコロイド溶液で行われるべきである。したがって、無機粒子成分中のリン酸塩の割合は、活性化のアルカリ性水性分散液に基づいて、POとして計算して、0.8g/kg未満、特に好ましくは0.6g/kg未満、より特に好ましくは0.4g/kg未満であることが好ましい。
【0028】
鉄表面を有する部品の良好な活性化のために、活性化中に金属表面をほんの少しだけ酸洗いすることも有利である。同じことがアルミニウムおよび亜鉛の表面の活性化にも当てはまる。同時に、無機粒子成分、特に不溶性リン酸塩は、わずかな程度の腐食しか受けるべきではない。したがって、本発明の方法では、活性化におけるアルカリ性水性分散液のpHが8超、特に好ましくは9超であるが、好ましくは12未満、特に好ましくは11未満であることが好ましい。
【0029】
第2のリン酸亜鉛処理工程は、中間すすぎ工程を伴うか、または伴わず、活性化の直後に続き、それにより、一連の各部品が連続的に活性化を受けた後、中間湿式化学処理工程なしでリン酸亜鉛処理が続く。本発明の方法の好ましい実施形態では、一連の部品のための活性化とリン酸亜鉛処理との間に、すすぎ工程も乾燥工程も行われない。本発明の意味する範囲内の「乾燥工程」とは、例えば熱エネルギーを供給するか、または空気の流れを通過させることによる技術的手段を用いて、湿潤フィルムを有する金属部品の表面を乾燥させることを意図するプロセスを意味する。
【0030】
本発明による配位が、活性化と共に、一般に
(a)5~50g/kg、好ましくは10~25g/kgのリン酸イオン、
(b)0.3~3g/kg、好ましくは0.8~2g/kgの亜鉛イオン、および
(c)少なくとも1つの遊離フッ化物の供給源
を含有する従来のリン酸塩処理浴を使用して行われていれば、リン酸亜鉛処理は成功する。
環境衛生上の理由で好ましい一実施形態においては、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中に含有されるニッケルおよび/またはコバルトイオンは合計で10ppm未満である。
【0031】
本発明によれば、リン酸イオンの量は、POとして計算され、オルトリン酸および水中に溶解したオルトリン酸の塩のアニオンを含む。
【0032】
リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中のポイントにおける遊離酸の割合は、好ましくは少なくとも0.4であるが、好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。ポイントにおける遊離酸の割合は、10mlのサンプル容量の酸性水性組成物を50mlに希釈し、0.1N水酸化ナトリウム溶液でpH3.6に滴定することにより決定される。水酸化ナトリウム溶液のmlの消費は、遊離酸のポイント数を示す。
【0033】
本発明の方法の好ましい実施形態において、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物は、金属マンガン、カルシウム、鉄、マグネシウム、および/またはアルミニウムのカチオンをさらに含む。
【0034】
酸性水性組成物が、過酸化水素、亜硝酸塩、ヒドロキシルアミン、ニトログアニジン、および/またはN-メチルモルホリンN-オキシドなどの従来の促進剤を含有することができるような、リン酸亜鉛処理の従来の添加も、本発明にしたがう類似の方式で行うことができる。
【0035】
鉄、アルミニウム、および/または亜鉛の表面から選択される限り、部品のすべての金属表面上にリン酸亜鉛処理を層形成するプロセスには、遊離フッ化物イオンの供給源が不可欠である。一連の一部として処理される部品の成分として、これらの金属材料のすべての表面にリン酸塩コーティングが提供される場合、活性化における粒子成分の量は、リン酸亜鉛処理中の層形成に必要な遊離フッ化物の量に適合させる必要がある。鉄、特に鋼の表面上の閉じた欠陥のないリン酸塩コーティングの場合、本発明による方法では、酸性水性組成物中の遊離フッ化物の量は少なくとも0.5mmol/kgであることが好ましい。さらに、アルミニウムの表面にも、処理される一連の部品内に閉じたリン酸塩コーティングが提供される場合、本発明の方法では、酸性水性組成物中の遊離フッ化物の量は、少なくとも2mmol/kgであることが好ましい。一般に、本発明の方法において、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の遊離フッ化物の濃度が50mmol/kg未満、特に好ましくは40mmol/kg未満、より特に好ましくは30mmol/kg未満であれば、経済的理由において有利である。加えて、亜鉛の表面にも、処理される一連の部品内に閉じたリン酸塩コーティングが提供される場合、本発明の方法では、遊離フッ化物の濃度は、リン酸塩コーティングが容易に拭き取ることができるゆるいリン酸塩接着を有する値を超えないことが好ましく、これは、これらの接着が、活性化のアルカリ性水性分散液中の粒子リン酸塩の量が増加することにより回避することができないためである。したがって、本発明による方法では、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中の遊離フッ化物の濃度が8mmol/kg未満である場合、そのような部品が好ましい。
【0036】
遊離フッ化物の量は、pH緩衝なしのフッ化物含有緩衝液で較正した後、20℃で関連する酸性水性組成物中のフッ化物感受性測定電極によって電位差計で決定できる。遊離フッ化物の好適な供給源は、フッ化水素酸およびその水溶性塩、例えば、重フッ化アンモニウムおよびフッ化ナトリウム、ならびに元素Zr、Tiおよび/またはSiの複合フッ化物、特に元素Siの複合フッ化物である。したがって、本発明の方法の好ましい一実施形態では、遊離フッ化物の供給源は、フッ化水素酸およびその水溶性塩ならびに/または元素Zr、Tiおよび/もしくはSiの複合フッ化物から選択される。フッ化水素酸の塩は、60℃の脱イオン水(κ<1μScm-1)中へのその溶解度が、Fとして計算して、少なくとも1g/Lである場合、本発明の意味する範囲内で水溶性である。
【0037】
例えば氷晶石および/またはエルパソライトの形態における、難溶性アルミニウム塩の沈殿を回避するために、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物は、限られた量のナトリウムおよび/またはカリウムイオンのみを含有する。したがって、本発明の方法の好ましい一実施形態において、mmol/kg単位での溶解形態のナトリウムおよび/またはカリウムイオンの総濃度は、溶解形態のアルミニウムイオンの濃度の三乗根で割って、数40未満、特に好ましくは数30未満、より特に好ましくは数20未満である場合である。
【0038】
既に述べたように、本発明の方法の別の利点は、前記方法の過程で、閉じたリン酸亜鉛コーティングがアルミニウムの表面上にも形成されることである。したがって、本発明の方法で処理される一連の部品は、少なくとも1つのアルミニウムの表面を有する部品の処理も含むことが好ましい。亜鉛およびアルミニウムの表面が、対応する材料で構成された成分で達成されているか、一連の異なる部品で達成されているかどうかは関係ない。したがって、本発明による方法では、一連内で、アルミニウム表面を有する部品も処理することが好ましく、一連の部品は、鉄表面に加えてアルミニウム表面も有することが好ましい。
【0039】
処理される一連の部品内において、鉄の表面に加えて、アルミニウムの表面にも、リン酸塩コーティングが提供され、一連の各部品が同じ組成である、本発明の方法は、リン酸亜鉛処理浴からの実際のドラグアウトによって事前に決定されたアルミニウムの酸洗速度まで、リン酸亜鉛処理中に溶解したアルミニウムイオンを浴から除去する必要なく、コスト効率的に操作することができる。この酸洗速度は、リン酸亜鉛処理からのドラグアウトに依存し、各部品の総表面積に基づく:
【数3】
A:部品および該部品の平方メートルあたりの酸性水性組成物のミリリットル単位で示される、リン酸亜鉛処理浴からの実際のドラグアウト
【0040】
一連の部品の処理において、酸洗速度がドラグアウトに依存する値(式2)を下回る場合、リン酸亜鉛処理の酸性水性組成物中で、溶解アルミニウムの100mmol/kg以下の定常状態濃度が達成される。
【0041】
アルミニウムの酸洗速度が、リン酸亜鉛処理からのドラグアウトによって事前に決定された上記の値を超える場合、リン酸亜鉛処理浴中のアルミニウムイオンの枯渇のために、および前記浴を再生するために、リン酸亜鉛処理から連続的または非連続的に除去される酸性水性組成物の部分体積、およびこの種の1つ以上の水性組成物によってリン酸亜鉛処理に連続的または非連続的に供給される同等に大きな部分体積が、前記の部分体積に基づいて、それぞれの場合に、リン酸塩イオン、亜鉛イオン、および/またはフッ化物イオンの供給源に関しては、前記除去された部分体積中の対応するイオンの濃度と比較して、より高い濃度を有するが、溶解形態でのアルミニウムイオンに関しては、除去された部分体積よりも低い濃度を有することが有利である。
【0042】
本発明による方法では、実質的に有機のカバー層が適用される過程で、後続の浸漬コーティングのための良好なコーティングプライマーが製造される。したがって、本発明の方法の好ましい一実施形態では、中間すすぎおよび/または乾燥工程を伴うか、又は伴わない、好ましくはすすぎ工程を伴い、かつ乾燥工程を伴わない、リン酸亜鉛処理の後に、浸漬コーティング、特に好ましくは電着塗装、より好ましくは陰極電着塗装が続く。
本明細書の当初の開示は、少なくとも下記の態様を包含する。
〔1〕少なくとも部分的に鉄表面を有する部品を含む一連の金属部品を防食処理するための方法であって、該方法において、前記一連の金属部品は連続的に次の湿式化学処理工程:
(I)D50値が3μm未満であり、リン酸塩を含む無機粒子成分を有するアルカリ性水性分散液と接触させることによる活性化であって、これらのリン酸塩の全体が、少なくとも部分的にホープアイト、フォスフォフィライト、ショルザイト、および/またはハーロライトで構成される、活性化;
(II)
(a)5~50g/lのリン酸イオン、
(b)0.3~3g/lの亜鉛イオン、
(c)少なくとも15mmol/kgの溶解形態のアルミニウムイオン、および
(d)少なくとも1つのフッ化物イオンの供給源
を含有する酸性水性組成物と接触させることによるリン酸亜鉛処理
を受け、前記アルカリ性水性分散液中、PO として計算された、mmol/kg単位での粒子リン酸塩の形態のリン酸塩の濃度が、mmol/kg単位での次の項:
[AI]:mmol/kg単位での溶解形態のアルミニウムイオンの濃度
[F]:mmol/kg単位での遊離フッ化物の濃度
pH:前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物のpH
の700分の1超であることを特徴とする、方法。
〔2〕前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分に基づくリン酸塩の割合が、PO として計算して、少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも35重量%、より特に好ましくは少なくとも40重量%であることを特徴とする、〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分中の亜鉛の割合が、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも40重量%であることを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分中のチタンの割合が、5重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、より特に好ましくは10mg/kg未満のチタンが前記活性化の前記アルカリ性水性分散液中に含有されることを特徴とする、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕前記活性化における前記アルカリ性水性分散液の前記無機粒子成分からのリン酸塩の量が、PO として計算され、前記分散液に基づいて、少なくとも40mg/kg、好ましくは少なくとも80mg/kg、特に好ましくは少なくとも150mg/kgであることを特徴とする、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕前記活性化における前記アルカリ性水性分散液のpHが、8超、好ましくは9超であるが、好ましくは12未満、特に好ましくは11未満であることを特徴とする、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物の場合、mmol/kg単位での溶解形態のナトリウムおよび/またはカリウムイオンの総濃度は、溶解形態のアルミニウムイオンの濃度の三乗根で割って、数40未満、好ましくは数30未満、特に好ましくは数20未満であることを特徴とする、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物中の溶解形態でのアルミニウムイオンの濃度が、30mmol/kg超であるが、好ましくは100mmol/kg未満、特に好ましくは60mmol/kg未満、より特に好ましくは45mmol/kg未満であることを特徴とする、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕遊離フッ化物の濃度が、少なくとも2mmol/kgであるが、好ましくは50mmol/kg以下、特に好ましくは40mmol/kg以下、より特に好ましくは30mmol/kg以下であることを特徴とする、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕前記リン酸亜鉛処理の前記酸性水性組成物のpHが、2.5超、好ましくは2.7超であるが、好ましくは3.5未満、より特に好ましくは3.3未満であることを特徴とする、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕前記活性化と前記リン酸亜鉛処理との間にすすぎ工程も乾燥工程も行われないことを特徴とする、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の方法。
〔12〕一連内で、アルミニウム表面を有する部品も処理され、前記一連の部品が、前記鉄表面に加えてアルミニウム表面も好ましくは有することを特徴とする、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕一連の各部品が同じ組成であり、前記リン酸亜鉛処理における各部品の表面積に基づくアルミニウムの酸洗速度が、
A:部品および前記部品の平方メートルあたりの前記酸性水性組成物のミリリットル単位で示される前記リン酸亜鉛処理浴からの実際のドラグアウト
以下であることを特徴とする、〔12〕に記載の方法。
〔14〕一連の各部品が同じ組成であり、前記リン酸亜鉛処理における各部品の表面積に基づくアルミニウムの酸洗速度が、
A:部品および部品の平方メートルあたりの酸性水性組成物のミリリットル単位で示されるリン酸亜鉛処理浴からの実際のドラグアウト
より大きく、前記リン酸亜鉛処理から連続的または非連続的に除去される前記酸性水性組成物の部分体積、および、この種の1つ以上の水性組成物によって前記リン酸亜鉛処理に連続的または非連続的に供給される同等に大きな部分体積が、前記部分体積に基づいて、それぞれの場合に、前記リン酸塩イオン、亜鉛イオン、および/またはフッ化物イオンの供給源に関しては、前記除去された部分体積中の対応するイオンの濃度と比較して、より高い濃度を有するが、溶解形態での前記アルミニウムイオンに関しては、前記除去された部分体積よりも低い濃度を有することを特徴とする、〔12〕に記載の方法。
〔15〕中間すすぎ工程および/または中間乾燥工程を伴うか、又は伴わない、好ましくはすすぎ工程を伴い、かつ乾燥工程を伴わない、リン酸亜鉛処理の後に、浸漬コーティング、好ましくは電着塗装、特に好ましくは陰極電着塗装が続くことを特徴とする、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0043】
アルミニウム板(AA6014)および鋼板(CRS)を、粒子リン酸亜鉛の分散液で事前に活性化した後、リン酸亜鉛処理浴中、異なるレベルの遊離フッ化物および溶解アルミニウムで処理し、該リン酸亜鉛処理の直後に、コーティングの外観を評価した。表1に、活性化およびリン酸亜鉛処理の組成物の概要、ならびにコーティングの品質の評価結果を示す。上記の板は、示された順序で、次の方法工程を受けた。
A1)55℃で180秒間の浸漬による洗浄および脱脂
15g/l BONDERITE(登録商標)C-AK11566(Henkel AG&Co.KGaA)
1.1g/l BONDERITE(登録商標)M-AD ZN-2(Henkel AG&Co.KGaA)
5g/l BONDERITE C-AD1561(Henkel AG&Co.KGaA)
2.2g/l NaHCO
脱イオン水(κ<1μScm-1)での調製;水酸化カリウム溶液を使用してpHを10.8に調整。
A2)A1)のような組成物を使用し、1barおよび55℃で70秒間の噴霧による洗浄および脱脂
B)脱イオン水(κ<1μScm-1)を用いる、20℃で60秒間のすすぎ
C)20℃で30秒間の浸漬活性化
0.6~4g/kg PREPALENE(登録商標)X(Nihon Parkerizing Co.,Ltd.)は、8.4重量%のZn(PO)2*4HOの形態の亜鉛を含有する。
200mg/kg K
脱イオン水(κ<1μScm-1)での調製;HPOを用いてpHを10.3に調整。
活性化のための分散液のD50値は、20℃で0.25μmであり、これは散乱粒子の屈折率をn=1.52-i・0.1と仮定する粒子分析器HORIBA LA-950(Horiba Ltd.)を用い、ISO 13320:2009に準拠し、ミー理論による静的散乱光分析に基づいて決定した。
D)50℃で150秒間の浸漬によるリン酸亜鉛処理
1.2g/kg 亜鉛
1.0g/kg マンガン
0.9g/kg ニッケル
15.3g/kg リン酸塩
1.9g/kg 硝酸塩
2.0g/kg N-メチルモルホリン-N-オキシド
20mg/kg 過酸化水素
表1に従い、ある量のフッ化物の供給源およびある量のアルミニウムを添加した。
脱イオン水(κ<1μScm-1)での調製;10%のNaOHを用いてpHをpH3.0に調整
遊離酸:1.1~1.3ポイント
遊離酸は、10mlのサンプル容量を脱イオン水で50mlへ希釈し、続いて、0.1N NaOHを用いるpH3.6までの滴定から決定し、水酸化ナトリウム溶液のミリリットル単位での消費量が、遊離酸のポイントでの量に対応する。
リン酸亜鉛処理浴は、ナトリウム塩を添加せずに配合した。ナトリウムの割合は、1mg/kg未満であった。
E)20℃で60秒間の脱イオン水(κ<1μScm-1)を用いるすすぎ
F)圧縮空気を吹き付けた後、乾燥キャビネット中、50℃で乾燥
【0044】
表1から、板上において均質で閉じているように肉眼で見える、満足できるリン酸塩コーティングは、活性化における粒子リン酸亜鉛の量を、リン酸亜鉛処理における遊離フッ化物の量および溶解アルミニウムの量に適合させることにより達成できることが分かる(CRS-L-A1-h;CRS-H-A1-I;CRS-H-A2-I;CRS-H-A3-I)。活性化における粒子リン酸亜鉛の量が、遊離フッ化物量および溶解アルミニウムの濃度で規定される値を下回ると、不均質なコーティングが達成される(CRS-L-A2-I;CRS-L-A3-h)か、または、リン酸塩コーティングが実質的に閉じているにもかかわらず、リン酸塩処理後に基材表面が見えたままである(CRS-L-A1-I;CRS-L-A2-h)。アルミニウム上であっても、表1に従う本発明の方法の変形例において、閉じたリン酸塩コーティングが製造されるように、鉄の表面およびアルミニウムの表面を有する部品を含む一連の部品の防食処理に対する本発明の方法の適合性が実証される。
【0045】
【表1】