(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】熱安定性が増加した接合結合部のための水性前処理剤
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230209BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20230209BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20230209BHJP
C08K 5/057 20060101ALI20230209BHJP
C08K 5/31 20060101ALI20230209BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20230209BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230209BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230209BHJP
C09D 183/08 20060101ALI20230209BHJP
C09J 183/08 20060101ALI20230209BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L83/06
C08K5/5415
C08K5/057
C08K5/31
C08K3/20
C09D5/00 D
C09D5/00 Z
C09D7/63
C09D183/08
C09J183/08
(21)【出願番号】P 2019561150
(86)(22)【出願日】2018-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2018061967
(87)【国際公開番号】W WO2018206623
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】レト ドーナー
(72)【発明者】
【氏名】ザーラ フォルネラ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0323203(US,A1)
【文献】特表2019-515990(JP,A)
【文献】特表2016-511304(JP,A)
【文献】国際公開第2011/068128(WO,A1)
【文献】特開2013-074170(JP,A)
【文献】特開平08-060028(JP,A)
【文献】特開平09-132758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 77/00-77/62
C09D 5/00
C09D 183/00-183/16
C09D 7/63
C09J 183/00-183/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物であって、
a)少なくとも1個のエポキシ基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のエポキシシランと、
b)少なくとも1種の非イオン性湿潤剤と
、
c2)前記エポキシシランが、前記水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~0.5重量%の量で存在するという条件で、前記水性組成物の総重量を基準として、0.1重量%~1重量%の水溶性有機チタネート、並びに結果として生じる前記組成物のpHが8~14にある十分な量の水溶性塩基と
を含む水性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の湿潤剤が、ポリエーテル、ポリエーテルシロキサン、ピロリドン及び変性天然油の群からの乳化剤及び界面活性剤から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシシランが、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はグリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有し、且つ、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基及びイソシアヌレート基から選択される少なくとも1個のさらなる官能基を有する有機シラン又はこれらの有機シランのオリゴマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記有機チタネートがテトラアルコキシチタネート、とりわけ2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記塩基が少なくとも1個の第三級アミン基を有する化合物、とりわけN-アルキル化グアニジン化合物を含むことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、全体組成物を基準として、90~98重量%の水を含む一液型水性組成物であることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、水と:
前記水性組成物の総重量を基準として
、
0.2重量%~0.4重量%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
0.1重量%~2.5重量%の、ポリエーテル及びピロリドンから選択される少なくとも1種の湿潤剤と、
0.3重量%~0.6重量%のテトラアルコキシチタネート、とりわけ2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)と、
前記水性組成物の総重量を基準として、0重量%~1.5重量%の少なくとも1種のアミノシランと、結果として生じる前記組成物のpHが9~11.5にある十分な量の水溶性塩基と
を含むことを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
接着促進剤又はプライマーとしての請求項1~
8のいずれか一項に記載の水性組成物の使用。
【請求項10】
処理される基材が、ガラス又はガラスセラミック基材である、請求項
9に記載の使用。
【請求項11】
自動車建造における直接グレージングのための請求項
9又は
10に記載の使用。
【請求項12】
ポリウレタン接着剤と一緒の請求項
9~
11のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着促進剤組成物として好適である、組成物、とりわけ水性一液型又は二液型組成物に、この組成物の製造方法に及びそれの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
接着接合は、広く用いられる接合方法論である。しかしながら、いくつかの基材(接合基材)は、それらがある種の接着剤とゼロの又は不満足な接着を構築し得るので、又は要求が厳しい環境条件下で特に、経時的に接合の損失があるので、ここで問題があり得る。基材と接着剤との間に中間層を形成するために接着剤の前に基材に塗布される接着促進剤組成物が、接着性を改善するために、その理由で長い間使用されてきた。接着促進剤組成物の使用の特に重要な分野は、とりわけ直接グレージング、車両車体への窓ガラスの接合における、車両建造である。
【0003】
典型的には、そのような組成物は、ガラスと他の材料との接合のための理想的な中間層を可能にする、有機シランをベースとする。より具体的には、そのような接着促進剤組成物は、プライマー及び活性化剤として、すなわち、接着促進アンダーコートとして使用される。そのような組成物は、迅速なフラッシュオフを確実にするために、不活性の、容易に揮発する溶剤を含有することが多い。しかしながら、有機溶剤の中身は、環境適合性及び労働安全性の観点から不利である。
【0004】
有機シランをベースとし、水を溶剤として含有する水性接着促進剤組成物は公知である。しかしながら、それらは、いくつかの不利点を有する。シランベースの水性接着促進剤組成物の問題は、十分な反応性と連動して比較的低い貯蔵安定性又は、十分な安定性と連動して不十分な反応性を有することである。これは、使用されるシランが、水との混合時に加水分解してシラノール基(Si-OH)を形成する加水分解性官能基を有するためである。そのようなシラノール基は、反応性が高いことが多く、自発的に互いに縮合し、接着促進剤組成物中に不溶性の沈澱物及び機能障害をもたらす、比較的高い分子量の縮合生成物を形成する。
【0005】
加えて、そのような水性接着促進剤組成物でのアミノシラン及び/又はメルカプトシランの使用も公知である。水中でのメルカプトシラン又はオリゴシラン-メルカプトシラン混合物の乳化は、シラン基が加水分解される前にメルカプトシランが水溶性ではないので、特に困難である。加水分解の前に、これらのシランを水中へ持ち込むために、完全な均質分布が確実にされなければならない。加えて、さらなる反応として起こる縮合をできるだけ遅くするように、pHは、酸、例えば酢酸で調整されなければならない。それ故、シランと水とは、均質に迅速に混合されなければならず、それは、特別な混合装置を必要とする。
【0006】
この結果は、水性接着促進剤組成物が一般に二液型システム(例えば、Sika Schweiz AG製のSika HydroPrep(登録商標)-100)として販売され、2つの構成要素の混合のための混合プロセスが使用前に現場で必要とされることである。2つの構成要素は、非常に著しい乱流を使って均質に非常に迅速に混合されることが重要である。装置(「振盪機」)の特別に開発された部品がこの目的のために必要とされる。調合後に、調合済み生成物は、30日以下の貯蔵安定性(「ポットライフ」)を有する。
【0007】
しかしながら、この問題は、欧州特許第2951244号明細書に教示されているような特別な調合物によって改善される。そこに開示されている水性接着促進剤組成物は、一液型調合物としてでさえも非常に良好な貯蔵安定性を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらのさらなる開発にもかかわらず、オリゴシランをベースとする水性接着促進剤組成物は、依然として、要求の厳しい接合のためのそれらの使用を制限するいくつかの不利点を有する。より具体的には、そのような接着促進剤をベースとする接着接合は通常、有機溶剤をベースとする接着促進剤と比べて不十分な熱安定性を有する。特有の接着剤との併用で、接合が長期間にわたって熱い条件にさらされる場合に、いくつかの基材、とりわけガラスとのそのような状況下で、しばらくしてそれが安定性を失い得るので、これは、問題をもたらし得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それ故、優れた貯蔵安定性を有する水性の、シランベースの接着促進剤組成物であって、この水性組成物がまた一液型水性接着促進剤システムとして販売することができ、特別な混合装置なしにより簡単な混合がまた可能であるものとし、これらが接合の熱安定性の明らかな改善をさらにもたらすような、組成物を提供することが本発明の目的である。
【0010】
意外にも、エポキシシランを含む水性組成物への少なくとも1種のメルカプトシランの添加及び結果として生じる混合物のpHの酸性範囲への調整によって、又は少なくとも1種の有機チタネートの添加及び結果として生じる混合物のpHの塩基性範囲への調整によって、高い熱安定性を有する接合を可能にする、貯蔵安定性のある、一液型組成物を製造することが可能であることが今や見いだされた。両代替手段は、予想外にも、同じ技術的結果をもたらし、それ故に、本水性組成物は、酸又は塩基感受性基材及び/又は接着剤の存在下でさえも、多くの用途において使用することができる。
【0011】
したがって、本発明は、水溶性組成物であって、
a)少なくとも1個のエポキシ基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のエポキシシランと、
b)少なくとも1種の非イオン性湿潤剤と、
c1)エポキシシランが、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~1重量%の量で存在するという条件で、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~2重量%の、少なくとも1個のメルカプト基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のメルカプトシラン、並びに結果として生じる組成物のpHが1~6にある十分な量の水溶性酸、
又は
c2)エポキシシランが、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~0.5重量%の量で存在するという条件で、水性組成物の総重量を基準として、0.1重量%~1重量%の水溶性有機チタネート、並びに結果として生じる組成物のpHが8~14にある十分な量の水溶性塩基と
を含む水性組成物に関する。
【0012】
意外にも、本発明の組成物を使って及び接着剤を使用して、極めて熱安定性のある接合物を生成することが可能であることが見いだされた。形成された接合物は、接合の損失なしに90℃で、数週間、例えば5週間貯蔵することができる。追加の、驚くべき発見は、混合プロセスを明らかに簡単にし、且つ、標準反応器での問題のない製造を可能にする、水中での反応性の高い構成要素の改善された混和性であった。本発明は、したがって、生成物が一液型システムとして、そしてもはや複雑な二液型システムとしてではなく供給することができるので、より容易なハンドリングを可能にする。本発明は、したがって、水性一液型システムの供給を求める要求を満たすものである。
【0013】
本発明の水性組成物は、基材、とりわけガラス及びガラスセラミックスのための、又は自動車建造における直接グレージングのための反応性の高い、目に見えない接合前処理剤として、とりわけポリウレタン接着剤、好ましくは一液型ポリウレタン接着剤での接合のための前処理剤として実に一般的に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本文献において、「シラン」及び「オリゴシラン」という用語は、第一に少なくとも1個の加水分解性基、典型的には2若しくは3個の加水分解性基、好ましくはSi-O結合によってケイ素原子に直接結合したアルコキシ基又はアシルオキシ基を有し、第二にSi-C結合によってケイ素原子に直接結合した少なくとも1個の有機ラジカルを有する化合物を言う。アルコキシ又はアシルオキシ基を有するそのようなシランはまた、有機アルコキシシラン又は有機アシルオキシシランとして当業者に知られている。
【0015】
シランは、湿気との接触時に加水分解を受けるという特性を有する。これは、有機シラノール、すなわち、1個以上のシラノール基(Si-OH基)を含有する有機ケイ素化合物を形成し、その後の縮合反応によって、有機シロキサン、すなわち、1個以上のシロキサン基(Si-O-Si基)を含有する有機ケイ素化合物を形成する。
【0016】
「エポキシシラン」、「アミノシラン」及び「メルカプトシラン」は、有機ラジカルがそれぞれ、エポキシ基、アミノ基及びメルカプト基を有する有機シランを言う。アミノ、メルカプト又はオキシラン基を有する有機ケイ素化合物はまた、「アミノシラン」、「メルカプトシラン」又は「エポキシシラン」とも呼ばれる。
【0017】
「第一級アミノシラン」は、第一級アミノ基、すなわち、有機ラジカルに結合したNH2基を有するアミノシランを言う。「第二級アミノシラン」は、第二級アミノ基、すなわち、2個の有機ラジカルに結合したNH基を有するアミノシランを言う。
【0018】
Si結合した加水分解性基は、任意選択的に触媒の存在下で、シラノール基への加水分解によって加水分解することができる基である。加水分解生成物は、加水分解性基が少なくとも部分的に加水分解している、すなわち、加水分解性基の少なくともいくらかがOH基によって置き換えられているシランである。縮合生成物には、この種の2個以上の加水分解シランの縮合物が含まれる。シランのこれらの加水分解及び縮合生成物は、当業者に知られている。
【0019】
「独立して」という表現は、ここでは常にまた、異なる選択肢が存在する場合に同じ分子内に独立してという意味である。
【0020】
物質又は組成物は、それが、貯蔵の結果としてその使用にとって適切な程度まで、その用途又は使用特性のいかなる変化もなしに、長期間にわたって、典型的には少なくとも3カ月から6カ月以上までにわたって好適な容器中室温で貯蔵することができる場合に「貯蔵安定性がある」又は「貯蔵できる」と言及される。
【0021】
「質量」及び「重量」という用語は、本文献では同じ意味で用いられる。したがって、「重量百分率」(重量%)は、特に明記しない限り、全組成物の又は、内容次第で、全体分子の質量(重量)に関する百分率質量分率である。
【0022】
「室温」は、23±2℃、とりわけ23℃の温度を言う。
【0023】
本文献において述べられる全ての業界基準及び公定基準は、特に明記しない限り、最初の出願の出願時に正当なバージョンに関する。
【0024】
本発明の組成物は、1種以上の有機シラン、中でも少なくとも1種のエポキシシランを含有する。本発明の組成物中の有機シランはそれぞれ、少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する。これらは、任意のお決まりの加水分解性基であってもよく、アルコキシ基及びアシルオキシ基が好ましく、C1~C4アルコキシ基が特に好ましい。水との混合後に、加水分解性基は、時間とともに加水分解することができる。その場合の結果は、加水分解性基の少なくともいくらかがOH基で置き換わっている加水分解生成物である。さらなる反応として、縮合生成物が、加水分解生成物中の形成されたシラノール基によって生じ得る。例えば、存在する有機シランはまた、完全加水分解も若しくは部分加水分解形態にあっても、又は部分縮合形態にさえあってもよい。
【0025】
本発明の組成物中に存在するエポキシシランは、少なくとも1個のエポキシ基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する。エポキシ基は、好ましくはグリシドキシ又はエポキシシクロヘキシル基、とりわけグリシドキシ基である。
【0026】
好ましいエポキシシランは、(エポキシアルコキシ)アルキルトリアルコキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランである。ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらの物質クラスの好ましい代表物は、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、並びにまた3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又は3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが本発明の組成物中に存在する。
【0027】
本組成物のために、1種以上のエポキシシランが存在することが可能である。
【0028】
本発明の組成物はまた、少なくとも1種の非イオン性湿潤剤を含む。「非イオン性湿潤剤」は、水中で大部分はイオン形ではなく、並びに水の表面張力を下げることができる及び/又はエマルジョンの安定化を可能にする全ての物質を意味すると理解される。これらには、非イオン界面活性剤、界面活性物質、乳化剤及びこれらの特性を有する類似の物質が含まれる。
【0029】
好適な非イオン界面活性剤には、例えば、エトキシレート、例えば、アルコール、例えばポリエーテル、グリコールエーテル、ポリオキシアルキレンポリオール、アミン、脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキルフェノール、エタノールアミド、脂肪アミン、ポリシロキサン、ポリエーテルシロキサン又は脂肪酸エステル、しかしまたアルキル若しくはアルキルフェノールポリグリコールエーテル、例えば脂肪アルコールポリグリコールエーテル、又は脂肪酸アミド、アルキルグリコシド、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート若しくはトリアルキルアミンオキシド、しかしまたポリ(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコール若しくはアミノポリアルキレングリコールとのエステル及びアミドのエトキシル化付加生成物が含まれ、それらは、多くても1つの末端においてアルキル基で終わっていてもよい。
【0030】
そのような界面活性剤は、広く商業的に入手可能である。アルコキシル化アルコール、アルコキシル化非イオンフルオロ界面活性剤、とりわけ、ABCR,Germanyから商業的に入手可能である、Zonyl(登録商標)FSO-100、アルコキシル化アルコール又はアルコキシル化アルキルフェノール、とりわけ、Rhodiaから商業的に入手可能である、Antarox FM 33が特に好適である。加えて、Cognis製のHydropalat(登録商標)120などの、アルコキシル化脂肪アルコールが好ましい。非イオン性湿潤剤としてCognis製のHydropalat(登録商標)3037を使用することが特に好ましい。ポリエーテル、とりわけ、300g/モル以下、とりわけ205g/モル以下、好ましくは200g/モル以下のモル質量を有する短鎖ポリエーテル、例えばグリコールエーテルがまた非常に好ましい。好ましいポリエーテルは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(「トリグライム」)、ビス(2-メトキシエチル)エーテル(「ダイグライム」)並びに、最も好ましくは、2,5,7,10-テトラオキサウンデカンである。
【0031】
好適な乳化剤にはとりわけまた、ピロリドン類、プロピオンアミド類及びアミノアルコール反応生成物から選択されるものが含まれる。ピロリドン類は環状カルボキサミドであり;プロピオンアミド類は線状カルボキサミドである。アミノアルコールは、組成物中のアミノシラン及び/又はメルカプトシランの少なくとも一部を有する反応生成物の形態の統合乳化剤として使用される。ピロリドン類又はアミノアルコール反応生成物の使用が好ましい。乳化剤は、水とのより良好な混和性及び水の添加後の減速した縮合反応をもたらす。
【0032】
使用できるピロリドン類は、とりわけ2-ピロリドン類である。2-ピロリドン類は環状カルボキサミドである。使用できるピロリドン類は、γ-ブチロラクタムとも言われる、2-ピロリドン、又は3個のメチレン環基の少なくとも1つ上に及び/又は窒素原子上に置換基を有する2-ピロリドンの誘導体である。窒素原子上の好適な置換基は、アルキル、例えばC1~12アルキル、好ましくはC1~C7アルキル、より好ましくはC1~C4アルキル、とりわけメチル若しくはエチル、又はシクロアルキル、好ましくはシクロペンチル及びシクロヘキシル、とりわけシクロヘキシルである。メチレン基上の好適な置換基は、例えば、アルキル、好ましくはC1~C4-アルキル、とりわけメチル若しくはエチルである。
【0033】
N-置換2-ピロリドン類が好ましい。それらは、任意選択的に、少なくとも1個のメチレン環基上に置換基を有してもよいが、これは好ましくない。例は、N-C1~C12アルキル-2-ピロリドン及びポリビニルピロリドンである。より長鎖のアルキル基を有する化合物の例は、1-オクチル-2-ピロリドン及び1-ドデシルピロリドンである。N-C1~C7アルキル-2-ピロリドン又はN-C1~C6アルキル-2-ピロリドン、とりわけN-C1~C4アルキル-2-ピロリドン、及びN-シクロヘキシル-2-ピロリドンなどの、N-シクロアルキル-2-ピロリドンが特に好ましい。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)及びとりわけN-シクロヘキシル-2-ピロリドン(CHP)が最も好ましい。
【0034】
好適なプロピオンアミド類は、プロピオンアミドそれ自体及びプロピオンアミドの誘導体である。好適なプロピオンアミド類の例は、式
R6-C(O)NR7
2
(式中、R6は、置換若しくは非置換のエチル基であり、R7は独立して、H又はC1~4アルキル基、とりわけメチル若しくはエチルである)
のプロピオンアミド類である。好ましくは、少なくとも1つのR7基はC1~4アルキル基であり、より好ましくは、両R7基がC1~4アルキル基であり、メチル及びエチル基が好ましい。
【0035】
R6基は好ましくは、エチル基上に好ましくは少なくとも1個の置換基、好ましくは正確に1個の置換基を有してもよい。置換基は、好ましくは、エチル基の末端に、すなわち、プロピオンアミドのC3原子上にある。好適な置換基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシなどの、C1~C4アルコキシ基である。
【0036】
具体的な例は、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミドである。
【0037】
アミノアルコール反応生成物がそれで形成されるアミノアルコールは、少なくとも1個のアミノ基及び少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物である。アミノアルコールは、1若しくは2個のヒドロキシル基を有してもよく、例えば、1個のヒドロキシル基が好ましい。アミノアルコールは、アミノ基が、例えば、第一級若しくは第二級アミノ基であり得る場合、例えば、1若しくは2個のアミノ基を有してもよい。
【0038】
アミノアルコール反応生成物の調製のための乳化剤前駆体として好適なアミノアルコールの例は、エタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、N-(β-アミノエチル)アミノエタノール、ジエタノールアミン及びN-メチルジエタノールアミン、最も好ましくはジエチレングリコールアミンである。ジエチレングリコールアミンはまた、2-(2-アミノエトキシ)エタノールとも言われる。
【0039】
少なくとも1種のアミノアルコール反応生成物が乳化剤として使用される場合、存在するアミノアルコール並びにエポキシシラン及び任意のさらなる有機シランの少なくともいくらかは、存在する少なくとも1種のエポキシシラン及び任意のさらなる有機シラン中に存在する加水分解性基の少なくともいくらかがアミノアルコールのアミノアルコキシド基によって置き換えられている反応生成物の形態で存在する。
【0040】
反応生成物は、組成物中に存在するシラン中のSi結合した加水分解性基の少なくともいくらかのアミノアルコールとのエステル交換又はアミノアルコールでのエステル化によって得られる。
【0041】
エステル交換又はエステル化の程度は、広い範囲内で選択することができる。組成物中に存在するエポキシシラン及び存在する任意のさらなる有機シラン中のSi結合した加水分解性基が全てアミノアルコキシド基によって置き換えられることもまた可能である。好ましくは、エステル交換又はエステル化の程度は、組成物中に存在するシランの総量を基準として、シラン中に存在するSi結合した加水分解性基及びSi結合したアミノアルコキシド基対Si結合したアミノアルコキシド基のモル比が1:1~10:1、好ましくは10:5~10:2の範囲にあるように選択される。
【0042】
例えば、3個の加水分解性基(例えばメトキシ)を有するシランにおいて、1個の加水分解性基がアミノアルコキシド基によって置き換えられる場合、反応生成物は、2個の加水分解性基及び1個のアミノアルコキシド基を含有する。Si結合した加水分解性基(2)及びSi結合したアミノ基(1)対Si結合したアミノアルコキシド基(3)のモル比は、その場合には3:1であろう。アミノアルコキシド基は原則としてまた、加水分解性基であるけれども、これは、ここでは考慮に入れられない。
【0043】
このモル比が、ほんの少しでも加水分解及び/又は縮合反応もある前の組成物を基準としていることは明らかであろう。記載された反応生成物を含有する組成物が異なる化合物、例えば未変換エポキシシラン及び1、2若しくは3個のアミノアルコキシド基を有する、存在する任意のさらなる有機シランの混合物であり得ることもまた明らかであろう。前述のモル比は、それ故、平均値と見なされるべきである。水の添加後に、加水分解及び/又は縮合生成物が生じることもさらに可能である。
【0044】
エステル交換又はエステル化の結果としてアミノアルコキシド基を有する存在するエポキシシラン及び任意のさらなるシランは、存在するエポキシシラン又は任意のさらなる有機シランとここでは依然として見なされる。混合物又は反応生成物の調製方法は、下でさらに詳細に説明される。
【0045】
好ましい実施形態において、ピロリドン類及びプロピオンアミド類、好ましくはピロリドン類、とりわけN-シクロヘキシル-2-ピロリドンから選択されるさらなる乳化剤が、アミノアルコール反応生成物を含有する組成物にさらに添加される。このようにして、組成物の混和性及び得られる水性組成靴の貯蔵安定性をさらに増加させることが可能である。
【0046】
好ましい実施形態において、存在する少なくとも1種の非イオン性湿潤剤は、ポリエーテル、ポリエーテルシロキサン、ピロリドン類及び変性天然油の群からの乳化剤又は界面活性剤から選択される。
【0047】
第1の好ましい主要な実施形態において、本発明の組成物は、エポキシシランが、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~1重量%、好ましくは0.3重量%~0.8重量%の量で存在するという条件で、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~2重量%、好ましくは0.25重量%~1重量%の、少なくとも1個のメルカプト基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のメルカプトシラン、並びに結果として生じる組成物のpHが1~6、好ましくは2.5~5にある十分な量の水溶性酸をさらに含有する。
【0048】
この実施形態は、室温よりも下でさえも優れた接合特性を示す特に熱安定性のある接合物をもたらし、塩基感受性の、又は酸安定性のある、基材及び/又は接着剤にとりわけ好適である。
【0049】
この実施形態において、非イオン性湿潤剤としてポリエーテル、より好ましくは2,5,7,10-テトラオキサウンデカンを使用することが好ましい。この実施形態においてさらに特に好ましい非イオン性湿潤剤は、ピロリドン類、とりわけN-シクロヘキシル-2-ピロリドン、及び/又はポリエーテル変性シロキサン、とりわけ、BYK Chemie GmbH,Germany製のBYK-349、及び/又は変性天然油、とりわけ、Cognis,Germany製のHydropalat(登録商標)3037である。この実施形態におけるこれらの非イオン性湿潤剤の好ましい量は、ピロリドン類及び/又はポリエーテルについては、全体組成物を基準として、0.1~2.0重量%、ポリエーテル変性シロキサンについては、全体組成物を基準として、0.1~0.5重量%、変性天然油については、全体組成物を基準として、0.25~0.75重量%である。
【0050】
少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する、この実施形態において存在するメルカプトシランは、好ましくはメルカプト官能性有機アルコキシシラン、すなわち、加水分解性シラン基上にC1~C4アルコキシ基を有するメルカプトシランである。メルカプト官能性有機メトキシシラン及びメルカプト官能性有機エトキシシランが特に好ましい。3個のアルコキシ基、とりわけ3個のメトキシ基を有するメルカプトシラが特に有利であることが分かった。
【0051】
特に好ましいメルカプトシランは、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン及び3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、とりわけ3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、より好ましくは3-メルカプトプロピルトリメトキシシランである。
【0052】
しかしながら、複数のメルカプト及び/又は複数のシラン基を有するメルカプトシランを使用することもまた可能である。
【0053】
この実施形態において、少なくとも1種のメルカプトシランは、全体組成物を基準として、0.2重量%~2重量%、好ましくは0.25重量%~1重量%の量で、とりわけ好ましくは0.3~0.75重量%の量で本発明の組成物中に存在する。
【0054】
加えて、本発明のこの実施形態は、少なくとも1種の水溶性酸を含有する。この実施形態において、この酸は、結果として生じる組成物のpHが3~6、好ましくは2.5~5にあるような量で存在する。酸を使用することなしで、本発明のこの実施形態において、濁り及び沈澱物を示すことなく許容できる貯蔵安定性を有する安定した組成物を得ることは可能ではない。酸は、有機であっても無機であってもよい。有機酸は第一に、カルボン酸、とりわけ、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸及びクエン酸を含む群から選択されるカルボン酸、並びにアミノ酸、とりわけアスパラギン酸及びグルタミン酸である。好ましいカルボン酸は酢酸である。
【0055】
有機酸は、第二にとりわけ、硫黄原子又はリン原子を含有するものである。そのような有機酸は、とりわけ、有機スルホン酸である。有機スルホン酸は、炭素原子を有する有機ラジカルを有し、且つ、少なくとも1個の官能基-SO3Hを有する化合物を意味すると理解される。芳香族スルホン酸が好ましい。
【0056】
芳香族スルホン酸は、単環式であっても多環式であってもよく、1個以上のスルホ基が存在してもよい。例えば、これは、ナフタレン-1-若しくは-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はアルキルベンゼンスルホン酸であり得る。
【0057】
酸はまた、無機酸であり得る。好適な無機酸は、例えば、硫黄原子又はリン原子を有するものである。リン原子を有する酸は、とりわけ、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸である。硫黄原子を有する酸は、とりわけ硫黄酸、とりわけ、硫酸、亜硫酸、過硫酸、二硫酸(=ピロ硫酸)、二亜硫酸、ジチオン酸、亜ジチオン酸、チオ硫酸又はチオ亜硫酸である。
【0058】
4.0~5のpKaを有する酸が好ましい。pKaが酸の解離定数Kaの負の10を底とする対数を意味することは既知のように化学者によって理解される:pKa=-log10Ka。
【0059】
所望の範囲へのpHの調整のための酸の典型的な量は、勿論、使用される酸及びその強さに依存する。カルボン酸、とりわけ酢酸については、好適な量は、典型的には、全体組成物を基準として、0.15重量%~2.5重量%である。
【0060】
第2の好ましい主要な実施形態において、本発明の組成物は、エポキシシランが、水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~0.5重量%、好ましくは0.2重量%~0.4重量%の量で存在するという条件で、水性組成物の総重量を基準として、0.1重量%~1重量%、好ましくは0.3重量%~0.6重量%の水溶性有機チタネート、並びに結果として生じる組成物のpHが8~14、好ましくは9~11.5にある十分な量の水溶性塩基をさらに含有する。
【0061】
この実施形態は、室温よりも下でさえも優れた接合特性を示す特に熱安定性のある接合物をもたらし、酸感受性の、又は塩基安定性のある、基材及び/又は接着剤にとりわけ好適である。
【0062】
この実施形態において、非イオン性湿潤剤としてポリエーテル、より好ましくは2,5,7,10-テトラオキサウンデカンを使用することが好ましい。この実施形態におけるさらに特に好ましい非イオン性湿潤剤は、ピロリドン類、とりわけN-シクロヘキシル-2-ピロリドンである。この実施形態におけるこれらの非イオン性湿潤剤の好ましい量は、ピロリドン類及び/又はポリエーテルについては、全体組成物を基準として、1.0~3.0重量%である。
【0063】
この実施形態は、第1の追加構成成分として、水性組成物の総重量を基準として、0.3重量%~0.6重量%の水溶性有機チタネートを含有する。好適な水溶性有機チタネートは特に、Ti(OR)4のもの、すなわち、酸素-チタン結合によって結合した置換基を含み、キレート置換基(多座配位子)をまた含むものである。酸素-チタン結合によってチタン原子に結合した特に好適な置換基は、アルコキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロホスフェート基及びアセチルアセトネート基を含む群から選択されるそれらの置換基である。
【0064】
特に好適な化合物は、チタンに結合した全ての置換基が、アルコキシ基、スルホネート基、カルボキシレート基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルピロホスフェート基及びアセチルアセトネート基を含む群から選択され、ここで、全ての置換基が同一であっても異なるものであってよいものである。
【0065】
特に好適なアルコキシ基は、とりわけメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ及びイソブトキシ置換基であることが分かった。
【0066】
好適な有機チタン化合物は、例えばKenrich Petrochemicals又はDuPontから、商業的に入手可能である。好適な有機チタン化合物の例は、例えば、Kenrich Petrochemicals製のKen-React(登録商標)KR TTS、KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 33DS、KR 38S、KR 39DS、KR44、KR 134S、KR 138S、KR 158FS、KR212、KR 238S、KR 262ES、KR 138D、KR 158D、KR238T、KR 238M、KR238A、KR238J、KR262A、LICA 38J、KR 44、KR 55、LICA 01、LICA 09、LICA 12、LICA 38、LICA 44、LICA 97、LICA 99、KR OPPR、KR OPP2又はDuPont製のTyzor(登録商標)ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA-75、AA-95、AA-105、TE、ETAM、OGTである。
【0067】
Ken-React(登録商標)KR 7、KR 9S、KR 12、KR 26S、KR 38S、KR44、LICA 09、LICA 44、NZ 44、及びDuPont製のTyzor(登録商標)ET、TPT、NPT、BTM、AA、AA-75、AA-95、AA-105、TE、ETAMが好ましい。
【0068】
酸素-チタン結合によってチタン原子に結合した式(II)及び/又は(III)の置換基を有する有機チタン化合物が特に好ましい。
【0069】
最も好ましい有機チタネートは、Ken-React(登録商標)KR44商品名で入手可能な、2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)である。
【0070】
加えて、本発明のこの実施形態は、少なくとも1種の水溶性塩基を含有する。この実施形態において、この塩基は、結果として生じる組成物のpHが8~14、好ましくは9~11.5であるような量で存在する。塩基は、有機であっても無機であってもよい。有機塩基は、第一に、アミン、とりわけ第三級アミン、並びにアミジン及びグアニジンであり、それらはまた、単環式又は多環式構造を有してもよい。
【0071】
好適なアミンは、とりわけ、アルキル-、シクロアルキル-又はアラルキルアミン、例えばトリエチルアミン、トリイソプロピルアミンなど、及びこの種のさらなる水溶性アミンである。
【0072】
好適なビグアニド類は、とりわけビグアニド、1-ブチルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1-ブチルビグアニド、1-フェニルビグアニド又は1-(o-トリル)ビグアニド(OTBG)である。
【0073】
好適なアミジン類は、とりわけ1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N’-ジ-n-ヘキシルアセトアミジン(DHA)、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、2,5,5-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール又はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールである。
【0074】
好適なグアニジン類は、とりわけ1-ブチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、2-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、2-(3-(メチルジメトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、2-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ-[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-シクロヘキシル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン(OTG)、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ(o-トリル)グアニジン又は2-グアニジノベンズイミダゾールである。
【0075】
好適な無機塩基は、とりわけ、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどの水酸化物である。
【0076】
塩基は、好ましくは少なくとも1個の第三級アミン基を有する化合物、とりわけN-アルキル化グアニジン化合物である。テトラメチルグアニジンが特に好ましい。
【0077】
所望の範囲へのpHの調整のための塩基の典型的な量は、勿論、使用される塩基及びその強さに依存する。N-アルキル化グアニジン化合物、とりわけテトラメチルグアニジンについては、好適な量は、典型的には、全体組成物を基準として、0.25重量%~0.55重量%である。
【0078】
本発明の組成物の全ての実施形態は、任意選択的に、しかし好ましくは、さらなる有機シランを含有する。より具体的には、本発明の組成物は、少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有し、且つ、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基及びイソシアヌレート基から選択される少なくとも1個のさらなる官能基を有するさらなる有機シラン又はこれらの有機シランのオリゴマーを含む。
【0079】
特に好適なさらなる有機シランは、式(I)又は(II)又は(III)
【化1】
の有機ケイ素化合物である。
【0080】
R1は、ここで、1~20個の炭素原子を有する、任意選択的に芳香族部分を有する、且つ、任意選択的に1個以上のヘテロ原子、とりわけ窒素原子を有する、線状若しくは分岐の、任意選択的に環状のアルキレン基である。
【0081】
R2は、ここで、H又は1~5個の炭素原子を有するアルキル基、とりわけメチル若しくはエチル、又はアシル基、とりわけアセチルである。
【0082】
R3は、ここで、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、とりわけメチルである。
【0083】
Xは、ここで、H、又はOH、(メタ)アクリロイルオキシ、アミン、アシルチオ及びビニル、好ましくはアミンを含む群から選択される官能基である。完全を期すために、本文献におけるアシルチオは、置換基
【化2】
(式中、R
4は、とりわけ1~20個の炭素原子を有する、アルキルであり、点線は、置換基R
1への結合を表す)を意味すると理解されることが言及される。
【0084】
X1は、ここでは、NH、S、S2及びS4を含む群から選択される官能基である。
【0085】
X2は、ここでは、N及びイソシアヌレートを含む群から選択される官能基である。
【0086】
aは、ここでは、値0、1及び2の1つ、好ましくは0を表す。
【0087】
置換基R1は、とりわけメチレン、プロピレン、メチルプロピレン、ブチレン又はジメチルブチレン基である。特に好ましいものは、置換基R1としてプロピレン基である。
【0088】
式(I)の好適な有機ケイ素化合物の例は、
オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、メチルオクチルジメトキシシラン;
3-メタクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(=4,7,10-トリアザデシルトリメトキシシラン)、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、7-アミノ-4-オキサヘプチルジメトキシメチルシラン、N-(メチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン;
3-アシルチオプロピルトリメトキシシラン;
ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン
を含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0089】
アルコキシ基がアセトキシ基で置き換えられている、直前で述べられた有機ケイ素化合物、例えばオクチルトリアセトキシシラン(オクチル-Si(O(O=C)CH3)3)もまた好ましい。そのような有機ケイ素化合物は、加水分解すると酢酸を脱離する。
【0090】
述べられたこれらの有機ケイ素化合物の中で、官能基をさらに有するケイ素原子に結合した有機置換基、すなわち、アルキル基ではない有機置換基を有し、XがHではない式(I)に従うものが好ましい。
【0091】
式(II)の有機ケイ素化合物の好適な例は、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、4,4,15,15-テトラエトキシ-3,16-ジオキサ-8,9,10,11-テトラチア-4-15-ジシラオクタデカン(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド又はビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン)、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0092】
式(III)の有機ケイ素化合物の好適な例は、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、1,3,5-トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン尿素(=トリス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)及び1,3,5-トリス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン尿素(=トリス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート)を含む群から選択される有機ケイ素化合物である。
【0093】
任意選択的に、本組成物はまた、式(IV)
Si(OR4)4 (IV)
(式中、R4は独立して、1~4個の炭素原子を有するアルキル基又はアシル基、とりわけアセチル基である)の少なくとも1種のテトラアルコキシシランを含んでもよい。そのようなテトラアルコキシシランは、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン及びテトラアセトキシシランである。テトラエトキシシランが特に好ましい。アミノシラン及びメルカプトシランの場合のように、テトラアルコキシシランは、水の存在下で加水分解を受けることができ、任意選択的に他のシランと縮合する。
【0094】
好ましいさらなる有機シランは、アミノシラン、とりわけX=NH2又はNH2-CH2-CH2-NH、X1=NH及びX2=Nのアミノシランである。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン及びそれらの互いの混合物が特に好ましい。
【0095】
好適なアミノシランは、とりわけ、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメトキシメチルシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルジメトキシメチルシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノ-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、N-エチル-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-4-アミノブチルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-メチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-エチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-プロピルアミノメチルジメトキシメチルシラン、N-ブチルアミノメチルジメトキシメチルシラン;N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、及びケイ素上に3個のメトキシ基よりもむしろ3個のエトキシ又は3個のイソプロポキシ基を有するそれらの類似体からなる群から選択されるアミノシランである。
【0096】
一実施形態において、式(I)のアミノシランは、式(V)
H2N-R5-Si(OR2)(3-a)(R3)a (V)
(式中、R5は、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、とりわけプロピレンであり、他の置換基及び添字は、式(I)において定義されている通りである)
のアミノシランである。ここでは、3-アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0097】
好ましい実施形態において、式(I)のアミノシラン、とりわけ式(VI)又は(VII)又は(VIII)のアミノシランは、第二級アミノ基を有する。
【化3】
(式中、R
5は、1~6個の炭素原子を有する線状若しくは分岐アルキレン基、とりわけプロピレンであり、他の置換基及び添字は、式(I)において定義されている通りである)。N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-[2-(2-アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンが特に好ましいことが分かった。
【0098】
式(I)の2種以上のアミノシランが組成物中に存在し、そのうち好ましくは少なくとも1種が式(VI)のアミノシランである場合に特に有利であることが分かった。特に好ましい組み合わせは、組成物中での式(VI)のアミノシラン及び式(VIII)のアミノシランである。
【0099】
本発明の全ての組成物は水性である、すなわち、組成物は水をさらに含む。
【0100】
本発明の組成物は、とりわけ、全体組成物を基準として、90~98重量%の水を含む一液型水性組成物である。それが多液型組成物である場合、それは、全構成要素分が混合された後で、全体組成物を基準として、90~98重量%の水を好ましくは含む。
【0101】
本発明の組成物の特に好ましい第1の主要な実施形態は、水と、
水性組成物の総重量を基準として、0.3重量%~1重量%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
0.1重量%~2重量%の、ポリエーテル、ポリエーテルシロキサン、ピロリジン類及び変性天然油から選択される少なくとも1種の湿潤剤と、
水性組成物の総重量を基準として、0.3重量%~1重量%のメルカプトプロピルトリメトキシシランと、
水性組成物の総重量を基準として、0重量%~0.3重量%の少なくとも1種のアミノ-又はイソシアヌレートシランと、結果として生じる組成物のpHが2.5~5にある十分な量の水溶性酸と
を含む。
【0102】
本発明の組成物の特に好ましい第1の主要な実施形態は、水と、
水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~0.4重量%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
0.1重量%~2.5重量%の、ポリエーテル及びピロリジン類から選択される少なくとも1種の湿潤剤と、
0.3重量%~0.6重量%のテトラアルコキシチタネート、とりわけ2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)と、
水性組成物の総重量を基準として、0重量%~1.5重量%の少なくとも1種のアミノシランと、結果として生じる組成物のpHが9~11.5にある十分な量の水溶性塩基と
を含む。
【0103】
一液型又は多液型組成物は、さらなる任意選択の構成成分を含んでもよい。そのような追加の構成成分は、例えば、アニオン、カチオン又は両性界面活性剤、接着促進剤添加剤、触媒、共溶剤、殺生物剤、沈降防止剤、安定剤、防止剤、顔料、染料、防食剤、着臭剤、UVインジケータ、チキソトロピー剤、充填材、消泡剤及び水性接着促進剤組成物の分野の当業者に知られているさらなる添加剤である。
【0104】
例えば、イオン又は両性界面活性剤は、一液型又は二液型水性接着促進剤組成物の可能な追加の構成成分である。使用されるそのような界面活性剤は、溶液中の水又は他の液体の表面張力を下げる天然物質であっても合成物質であってもよい。湿潤剤とも呼ばれる、使用される界面活性剤は、アニオン、カチオン若しくは両性界面活性剤又はそれらの混合物であり得る。
【0105】
アニオン界面活性剤の例は、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート又はスルホネート基を有する界面活性剤、例えばアミノ酸誘導体、脂肪アルコールエーテルスルフェート、脂肪アルコールスルフェート、石鹸、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪アルコールエトキシレート、しかしまたアルカンスルホネート、オレフィンスルホネート又はアルキルホスフェートである。
【0106】
カチオン界面活性剤の例は、第四級アンモニウム又はホスホニウム化合物、例えばテトラアルキルアンモニウム塩、N,N-ジアルキルイミダゾリン化合物、ジメチルジステアリルアンモニウム化合物、又はN-アルキルピリジン化合物、とりわけ塩化アンモニウムである。両性(Ampholytic)つまり両性(amphoteric)界面活性剤には、両性電解質(ampholyte)と呼ばれる、両性電解質(amphoteric electrolytes)、例えばアミノカルボン酸、及びベタインが含まれる。
【0107】
好ましく使用されるさらなる任意選択の構成成分は、水溶性接着促進剤添加剤、好ましくは水溶性アミン含有接着促進剤添加剤である。水溶性接着促進剤添加剤の使用は、一般に、接合性能を改善する。水溶性接着促進剤添加剤は、商業的に入手可能である。
【0108】
好適な水溶性接着促進剤添加剤の例は、反応性の高い有機官能性シロキサンオリゴマーである。例は、縮合アミノシロキサン及び/又はフェニルシロキサンである。シロキサンの縮合度は、様々であり得る。シロキサンは、二量体、三量体若しくは4個以上の単量体シランからなるオリゴマー又はそれらの混合物であり得る。そのようなシロキサン、とりわけアミノシロキサンはまた、Degussa AG,Germanyから例えばDynasylan(登録商標)HYDROSIL 2627、Dynasylan(登録商標)HYDROSIL 2776又はDynasylan(登録商標)HYDROSIL 2929として、商業的に入手可能である。
【0109】
共溶剤は、アルコール又はエーテル又はケトンなどの水混和性溶剤を意味すると理解される。しかしながら、そのような溶剤は、ほんの少量で、すなわち、典型的には水を基準として10重量%未満で使用されることが好ましい。より好ましくは、組成物は、-水性組成物中に使用されるアルコキシシランの加水分解から生じる微量のアルコールは別として-そのような共溶剤を含まない。より大きい含有量の溶剤が使用される場合、VOC問題が順繰りに増加し、その回避が、勿論、水性組成物の使用の主な理由の一つである。
【0110】
本組成物は、一液型又は二液型水性接着促進剤組成物、より好ましくは一液型水性接着促進剤組成物であり得る。
【0111】
好ましい一液型水性接着促進剤組成物において、上記のシラン、湿潤剤及び水が唯一の構成要素として存在する。二液型水性接着促進剤組成物は、上記のシラン及び任意選択的に湿潤剤を含む、シランプレミックスとも呼ばれる、シラン構成要素Aと、水を含む、水性プレミックスとも呼ばれる、水性構成要素Bとからなる。一液型水性接着促進剤組成物は、優れた貯蔵安定性で有名である。
【0112】
シランを含有する組成物に水が添加される場合、シランは、時間とともに、通常2~3分以内に加水分解及び/又は縮合を受け得る。組成物はその時、その中に存在するシランだけでなく、これらのシランの加水分解及び/又は縮合生成物をまた含み得るし、又は進行した転化の場合には、場合により、上記のように存在するシランの加水分解及び/又は縮合生成物のみを含み得る。
【0113】
好ましい一液型水性組成物は、好ましくは以下の通り製造される。最初に装入する水に、攪拌しながら、少なくとも1種の湿潤剤などの追加の構成成分及び、実施形態に依存して、さらなる構成成分が好ましくは添加される。添加は、室温で適切に達成され;適切な場合、攪拌操作もまた、高温で達成することができる。
【0114】
追加の構成成分は、好ましくは、連続的に添加され、次の構成成分の添加の前に、構成成分が水に溶解してしまうか又は均質に分配されるまで、攪拌が好ましくは続けられる。可能な追加の構成成分の添加の順番は任意である。
【0115】
混合物は、均質な混合物を得るために一定時間適切に攪拌される。
【0116】
本発明の一液型又は二液型水性組成物は、接着剤及びシーラント用の接着促進剤又はプライマーとして、好ましくはプライマーとしてとりわけ好適である。そのようなプライマーの使用は、接着接合を改善する。
【0117】
使用される接着剤は、原則として、いかなる接着剤でもあり得る。接着の有利な改善は、ポリウレタン接着剤、とりわけイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを含有するものの場合にとりわけ見いだされる。そのようなポリウレタン接着剤は、広く商業的に入手可能であり、例えば、Sika Schweiz AG製のSikaflex(登録商標)である。本発明の水性組成物は、1K(一液型)ポリウレタン接着剤に特に好適である。
【0118】
2つ以上の基材の好適な接合又は密封方法は、したがって、本発明の水性接着促進剤組成物が前処理剤として少なくとも1つの基材に塗布され、フラッシュオフされるものである。その後、基材は、接着剤又はシーラント、好ましくは1Kポリウレタン接着剤で接合又は密封される。
【0119】
本接着促進剤組成物は、様々な方法で使用することができる。特に好ましい実施形態において、それらは、プライマー又は接着促進アンダーコートである。
【0120】
さらなる態様において、本発明は、接合の又は密封の方法に関する。この方法は、以下の工程:
i)接合される若しくは密封される基材S1に上記のような接着促進剤組成物を塗布する工程
ii)基材S1上に存在する組成物に接着剤若しくはシーラントを塗布する工程
iii)接着剤若しくはシーラントを第2基材S2と接触させる工程;
又は
i’)接合される若しくは密封される基材S1に上記のような接着促進剤組成物を塗布する工程
ii’)第2基材S2の表面に接着剤若しくはシーラントを塗布する工程
iii’)接着剤若しくはシーラントを基材S1上に存在する組成物と接触させる工程;
又は
i’’)接合される若しくは密封される基材S1に上記のような接着促進剤組成物を塗布する工程
ii’’)基材S1及びS2の表面間に接着剤若しくはシーラントを塗布する工程
を含む。
【0121】
第2基材S2は、ここでは、基材S1と同じ材料又は異なるものからなる。
【0122】
典型的には、工程iii)、iii’)又はii’’)に、接着剤又はシーラントを硬化させる工程iv)が続く。
【0123】
使用される接着剤若しくはシーラントは、原則として、任意の接着剤又はシーラントであり得る。選択は、オープンタイム及び形成される接合への機械的要求などの要因によって導かれる。この方法は、ポリウレタン接着剤又はシーラントに、とりわけイソシアネート基を有する少なくとも1種のポリウレタンプレポリマーを含有するポリウレタン接着剤にとりわけ好適であることが分かった。そのようなポリウレタン接着剤は、イソシアネート基の架橋反応によって空気湿気の影響下で硬化し、とりわけ、Sika Schweiz AGからSikaflex(登録商標)名称で、広く商業的に入手可能である。
【0124】
工程ii)、ii’)又はii’’)の前に、乾燥クロスでのワイピング-オフ工程が最大であり得る。濡れたクロス又は類似の方法による絶えず存在する塗布は、「ワイプ-オン」と言われる。相応に、塗布とワイピング-オフとの組み合わせは、「ワイプ-オン/オフ」と言われる。
【0125】
接着剤又はシーラントの塗布に関して、接着促進剤組成物がフラッシュオフしてしまうまで待つことが可能である。しかしながら、驚くべきことに、依然として湿った接着促進剤組成物フィルムへの接着剤又はシーラントの直接塗布、すなわち、「ウェット-オン-ウェット」は、これが硬化したシーラント又は接着剤の接着性又は機械的特性のいかなる注目に値する不利点をも有することなく、ほとんどの場合にまた可能であることが分かった。
【0126】
基材S1は、基材S2と同じものであってもそれとは異なるものであってもよい。
【0127】
好適な基材S1又はS2は、例えば、無機基材、例えばガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、煉瓦、タイル、石膏及び花崗岩若しくは大理石などの天然石など;金属又は合金、例えばアルミニウム、鋼、非鉄金属、銀などの貴金属、亜鉛めっき金属など;有機基材、例えば木材、PVC、ポリカーボネート、PMMA、ポリエステルなどのプラスチック、エポキシ樹脂など;被覆基材、例えば粉末被覆金属又は合金;並びにペイント及びラッカーである。ガラス、ガラスセラミック、ガラス又はガラスセラミック上のスクリーンプリント又はシルバープリント、とりわけ自動車ペイントの形態での、アルミニウム及びラッカーが、基材S1又はS2としてとりわけ好ましい。
【0128】
基材は、必要ならば接着剤又はシーラントの塗布前に前処理することができる。この種の前処理には、とりわけ、物理的及び/若しくは化学的クリーニング方法、例えばサンディング、サンドブラスティング、ブラッシングなど、又は洗剤若しくは溶剤での処理、又は接着促進剤、接着促進剤溶液若しくはプライマーの塗布が含まれる。
【0129】
接合又は密封のそのような方法は、物品をもたらす。本方法は、広く、例えば工業生産に又は土木工学若しくは構造工学に用いることができるので、この物品の種類はまた非常に多様である。
【0130】
より具体的には、この物品は、構築構造物、工業商品又は交通手段である。より具体的には、それは、建物、又はその一部である。又は物品は、とりわけ交通手段、とりわけ自動車、バス、トラック、鉄道車両、船又は航空機である。
【0131】
本発明の水性組成物は、とりわけ車両建造における、窓ガラスの接合のための、又は直接グレージングのための前処理剤として特に好適である。それ故、好ましい実施形態において、一基材は、ガラス又はガラスセラミックであり、第2基材は、ラッカー又は塗装金属若しくは塗装金属合金である。
【0132】
水性組成物でのメルカプトシランの使用は、銀への又は銀系組成物若しくは合金への1Kポリウレタン接着剤の接着性の著しい改善をもたらす。記載される本方法は、窓ガラスと集積アンテナ又は他の電子構成部品との接合にとりわけ好適であることが分かった。そのようなアンテナ接点又は他の電子構成部品は、窓ガラス上に存在し、典型的には銀から、又は銀系組成物若しくは合金からなる。
【実施例】
【0133】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は、決して本発明を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、全ての数字は重量に基づく。より具体的には、それぞれの組成物についての表中の数は、それぞれの実施例組成物の総重量を基準とする、重量パーセントを意味する。
【0134】
【0135】
組成物の製造
表2及び3による全ての組成物C1~C10を、100mLの実験室ガラスボトル中で製造した。
【0136】
組成物C1~C4及びC9~C10は、水性プレミックス及びシランプレミックスとして製造した。
【0137】
水性プレミックスは、各場合に湿潤剤を最初に装入する水に添加し、酸を添加し、混合により均質化することによって製造した。
【0138】
それぞれのシランプレミックスは、最初にCHP湿潤剤を導入し、攪拌しながら次の順番で、使用する場合、さらなる構成成分を添加することによって別個のボトル中で製造した:Sil A189、Sil A187、Sil A1170、A-Link 597、Sil A1120、Byk 349。その後、混合物を実験室振盪機で均質化した。
【0139】
シランプレミックスを次に、約10秒以内に攪拌しながら水性プレミックスに添加した。これに、さらなる2分間の攪拌及び実験室振盪機での均質化が続いた。
【0140】
組成物C5~C8の構成成分を、表に明記される順番に攪拌しながら単一容器に徐々に添加した。これに、さらなる2分間の攪拌及び実験室振盪機での均質化が続いた。
【0141】
【0142】
【0143】
試験
形成された水性組成物C1~C8を、様々な接着剤と組み合わせての接着促進剤として様々な基材上の接着接合物の熱安定性について試験した。この目的で、室温(RT)で7日間(d)又は90℃で7~34日間貯蔵した接着接合物を、以下に明記される方法によって試験した。
【0144】
使用された接着剤は、商業的に入手可能な一液型湿気硬化ポリウレタン接着剤であり、イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを含有し、Sika Schweiz AGから商業的に入手可能である、Sikaflex(登録商標)-250であった。
【0145】
使用された基材は、「フロートガラス(Sn)」:スズ側が接着性試験のために使用されたフロートガラス、Rocholl,Germany;「フロートガラス(空気)」:空気側が接着性試験のために使用されたフロートガラス、Rocholl,Germany;「VSG」:VSGセラミック、Ferro 14279、Rocholl,Germany;「ESG」:ESGセラミック、Ferro 14251、Rocholl,Germany;「Frit 3402」:ESGセラミック、Ferro AD 3402、Rocholl,Germanyであった。
【0146】
全ての基材面は、イソプロパノール/水混合物(2:1)に浸されたセルロースクロス(Tela(登録商標))を用いてワイプ-オフすることによって、接着促進剤組成物の塗布の直前にきれいにし、接着促進剤組成物の塗布前に少なくとも2分間フラッシュオフした。
【0147】
水性組成物を、これに浸されたセルロースクロス(Tela(登録商標)、Tela-Kimberly Switzerland GmbH)を用いて特定の基材に塗布し、10分間フラッシュオフした(「ワイプ-オン」)。比較目的のために、乾燥セルロースクロス(Tela(登録商標)、Tela-Kimberly Switzerland GmbH)での塗布後に3分間ワイプ-オフしたことを除いて、同一の塗布を実施した(「ワイプ-オン/オフ」)。三角形ビーズの接着剤を、23±2℃及び50%相対空気湿度でexpressionカートリッジ及びノズルを用いて塗布した。接着剤それ自体は、塗布前に60℃で2時間閉鎖型カートリッジにおいて平衡させた。
【0148】
接着剤を使った硬化接合物を、制御された気候条件(23℃、50%相対空気湿度)(RT)下で7日の硬化時間後に、及び7~34日間のオーブン中でのその後の熱貯蔵(90℃)後に試験した。
【0149】
接着剤の接着性を「ビーズ接着性試験」を用いて試験した。これは、接合表面の直上のその末端でビーズへカットすることを伴う。ビーズのカット端を丸ペンチで保持し、基材から引き離した。これは、ペンチの先端上へビーズを注意深く巻き取り、カットを、むき出しの基材までのビーズ引張り方向に直角に入れることによって行った。ビーズ引張り速度は、カットが約3秒毎に入れられなければならないように選択するべきである。試験距離は、少なくとも8cmに相当しなければならない。評価されるものは、ビーズが引き離された後の基材上に残っている接着剤である(凝集破壊)。接着特性は、接合エリアの凝集破壊の目視測定によって評価される。
【0150】
凝集破壊の割合が高ければ高いほど、接着接合の評価はより良好である。70%未満の凝集破壊の試験結果は、典型的には不十分であると考えられる。結果を表4~9にまとめる。
【0151】
比較として使用された非発明の接着促進剤が長期熱貯蔵の場合に性能の明らかな低下を示すのに対して、本発明の水性接着促進剤組成物は長期熱貯蔵後でさえも良好な結果を達成することがこれらの結果からはっきりと明らかである。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【表9】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]水性組成物であって、
a)少なくとも1個のエポキシ基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のエポキシシランと、
b)少なくとも1種の非イオン性湿潤剤と、
c1)前記エポキシシランが、前記水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~1重量%の量で存在するという条件で、前記水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~2重量%の、少なくとも1個のメルカプト基及び少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有する少なくとも1種のメルカプトシラン、並びに結果として生じる前記組成物のpHが1~6にある十分な量の水溶性酸;
又は
c2)前記エポキシシランが、前記水性組成物の総重量を基準として、0.2重量%~0.5重量%の量で存在するという条件で、前記水性組成物の総重量を基準として、0.1重量%~1重量%の水溶性有機チタネート、並びに結果として生じる前記組成物のpHが8~14にある十分な量の水溶性塩基と
を含む水性組成物。
[2]前記少なくとも1種の湿潤剤が、ポリエーテル、ポリエーテルシロキサン、ピロリドン及び変性天然油の群からの乳化剤及び界面活性剤から選択されることを特徴とする、上記[1]に記載の組成物。
[3]前記エポキシシランが、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はグリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むことを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]前記組成物が、少なくとも1個のSi結合した加水分解性基を有し、且つ、第一級アミノ基、第二級アミノ基、ヒドロキシル基及びイソシアヌレート基から選択される少なくとも1個のさらなる官能基を有する有機シラン又はこれらの有機シランのオリゴマーをさらに含むことを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の組成物。
[5]前記組成物が構成成分c1)を含み、かつ前記メルカプトシランがメルカプトプロピルトリメトキシシラン及び/又はメルカプトプロピルトリエトキシシランを含むことを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[6]前記組成物が構成成分c1)を含み、かつ前記酸がカルボン酸、とりわけ酢酸を含むことを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[7]前記組成物が構成成分c2)を含み、かつ前記有機チタネートがテトラアルコキシチタネート、とりわけ2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)を含むことを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[8]前記組成物が構成成分c2)を含み、前記塩基が少なくとも1個の第三級アミン基を有する化合物、とりわけN-アルキル化グアニジン化合物を含むことを特徴とする、上記[1]~[4]及び[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[9]前記組成物が、全体組成物を基準として、90~98重量%の水を含む一液型水性組成物であることを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の組成物。
[10]
前記組成物が、水と:
前記水性組成物の総重量を基準として、0.3重量%~1重量%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
前記水性組成物の総重量を基準として、0.1重量%~2重量%の、ポリエーテル、ポリエーテルシロキサン、ピロリドン及び変性天然油から選択される少なくとも1種の湿潤剤と、
前記水性組成物の総重量を基準として、0.3重量%~1重量%のメルカプトプロピルトリメトキシシランと、
前記水性組成物の総重量を基準として、0重量%から0.3重量%の少なくとも1種のアミノ-又はイソシアヌレートシランと、結果として生じる前記組成物のpHが2.5~5にある十分な量の水溶性酸とを含むことを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[11]
前記組成物が、水と:
前記水性組成物の総重量を基準として、
0.2重量%~0.4重量%のグリシドキシプロピルトリメトキシシランと、
0.1重量%~2.5重量%の、ポリエーテル及びピロリドンから選択される少なくとも1種の湿潤剤と、
0.3重量%~0.6重量%のテトラアルコキシチタネート、とりわけ2-プロパノラトトリス(3,6-ジアザ)ヘキサノラトチタン(IV)と、
前記水性組成物の総重量を基準として、0重量%~1.5重量%の少なくとも1種のアミノシランと、結果として生じる前記組成物のpHが9~11.5にある十分な量の水溶性塩基とを含むことを特徴とする、上記[1]~[4]及び[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[12]接着促進剤又はプライマーとしての上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の水性組成物の使用。
[13]処理される基材が、ガラス又はガラスセラミック基材である、上記[12]に記載の使用。
[14]自動車建造における直接グレージングのための上記[12]又は[13]に記載の使用。
[15]ポリウレタン接着剤と一緒の上記[12]~[14]のいずれか一つに記載の使用。