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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】モリブデンを含有する低抵抗膜
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/14 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
C23C16/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020504286
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018026746
(87)【国際公開番号】W WO2018191183
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】62/483,857
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンバレ・シュルティ・ビベク
(72)【発明者】
【氏名】フマユン・ラシーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダネク・ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ライ・チウキン・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ・ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】バンノルカー・ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ・グリフィン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブタイル・ゴラン
(72)【発明者】
【氏名】バン クリーンプット・パトリック
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-284360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0213541(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0202786(US,A1)
【文献】特開2016-098406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン(Mo)を含む材料スタックであるMo含有スタックの製造方法であって、
タングステン(W)含有層を基板上に提供する工程と、
Mo含有層を前記W含有層上に蒸着させる工程と、
を備え
前記W含有層は、W核形成層である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項2】
モリブデン(Mo)を含む材料スタックであるMo含有スタックの製造方法であって、
タングステン(W)含有層を基板上に提供する工程と、
モリブデン(Mo)含有層を前記W含有層上に蒸着させる工程と、
を備え、
前記Mo含有層は、還元剤と、六フッ化モリブデン(MoF )、五塩化モリブデン(MoCl )、二塩化二酸化モリブデン(MoO Cl )、四塩化酸化モリブデン(MoOCl )、および、ヘキサカルボニルモリブデン(Mo(CO) )から選択されたMo含有前駆体とに、前記W含有層を暴露させることによって蒸着される、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記W含有層は、WCN層である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記W含有層は、1または複数の塩化タングステン前駆体から蒸着される、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記Mo含有層は、1(原子)%未満の不純物を有するMo層である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載のMo含有スタックの製造方法であって、さらに、前記Mo含有層を熱アニールする工程を備える、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記Mo含有前駆体への暴露中の基板温度は、550℃未満である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項8】
請求項に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記基板は、第1基板温度で前記還元剤に暴露され、第2基板温度で前記Mo含有前駆体に暴露され、前記第1基板温度は、前記第2基板温度よりも低い、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項9】
請求項に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項10】
Mo含有スタックの製造方法であって、
第1基板温度で、基板を収容する処理チャンバに還元剤ガスを流して、前記基板上に共形還元剤層を形成する工程と、
第2基板温度で前記共形還元剤層をモリブデン含有前駆体に暴露させて、前記還元剤層をモリブデンに変換する工程と、
を備える、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記第1基板温度は、前記第2基板温度より低い、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記第1基板温度は400℃以下であり、前記第2基板温度は500℃以上である、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項14】
請求項10または請求項11に記載のMo含有スタックの製造方法であって、さらに、前記モリブデンをアニールする工程を備える、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項15】
Mo含有スタックの製造方法であって、
還元剤をパルス供給する工程であって、前記還元剤は、ホウ素(B)含有、シリコン(Si)含有、または、ゲルマニウム(Ge)含有である、工程と、
Mo含有前駆体をパルス供給する工程であって、
前記Mo含有前駆体は、前記還元剤または前記還元剤の生成物によって還元されて、B、Si、および、Geの内の1以上を含む多成分タングステン含有膜を前記基板上に形成する、工程と、
を備える、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のMo含有スタックの製造方法であって、前記多成分タングステン含有膜は、5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geを含み、前記5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geは、前記還元剤によって供給される、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項17】
モリブデン(Mo)を含む材料スタックであるMo含有スタックの製造方法であって、
タングステン(W)含有層を基板上に設けることと、
モリブデン(Mo)含有層を前記W含有層の上に堆積させることであって、前記W含有層を還元剤ガスとMo含有前駆体ガスとに暴露することにより、前記Mo含有層を堆積させることと、
を備える、Mo含有スタックの製造方法。
【請求項18】
モリブデン(Mo)を含む材料スタックであるMo含有スタックの製造方法であって、
基板を、還元剤ガスとモリブデン(Mo)含有前駆体ガスとの交互パルスに暴露することにより、基板にMo層を堆積すること、を備え、
前記Mo含有前駆体ガスに暴露する間の前記基板の温度は、前記還元剤ガスに暴露する間の前記基板の温度に比べて高い、Mo含有スタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条の下、2017年4月10日出願の米国仮特許出願第62/483,857号の利益を主張し、その仮特許出願は、参照によって本書に組み込まれる。
【0002】
本明細書で提供されている背景技術の記載は、本開示の背景を概略的に提示するためのものである。ここに名を挙げられている発明者の業績は、この背景技術に記載された範囲において、出願時に従来技術として通常見なされえない記載の態様と共に、明示的にも黙示的にも本開示に対する従来技術として認められない。
【0003】
化学蒸着(CVD)技術を用いたタングステン(W)膜蒸着は、半導体製造処理の不可欠な部分である。例えば、タングステン膜は、水平相互接続の形態の低抵抗電気接続、隣接する金属層の間のビア、ならびに、シリコン基板上の第1の金属層およびデバイスの間のコンタクトとして利用されうる。また、タングステン膜は、様々なメモリ用途(ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)のための埋め込みワード線(bWL)アーキテクチャの形成など)およびロジック用途でも利用されうる。bWL蒸着の一例では、WFを用いたCVD処理によってTiN/W二層を形成するために、タングステン層が、窒化チタン(TiN)バリア層上に蒸着されうる。しかしながら、フィーチャサイズおよび膜厚が減少し続けていることで、TiN/W膜スタックには様々な課題がもたらされている。これらは、より薄い膜の高い抵抗率、および、TiNバリア特性の低下を含む。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様は、タングステン(W)含有層を基板上に提供する工程と、モリブデン(Mo)含有層をW含有層上に蒸着させる工程と、を備える、方法に関する。いくつかの実施形態において、W含有層は、WCN層である。いくつかの実施形態において、W含有層は、W核形成層である。いくつかの実施形態において、W含有層は、1または複数の塩化タングステン前駆体から蒸着される。いくつかの実施形態において、Mo含有層は、1(原子)%未満の不純物を有するMo層である。いくつかの実施形態において、方法は、Mo含有層を熱アニールする工程を備える。いくつかの実施形態において、Mo含有層は、還元剤と、六フッ化モリブデン(MoF)、五塩化モリブデン(MoCl)、二塩化二酸化モリブデン(MoOCl)、四塩化酸化モリブデン(MoOCl)、および、ヘキサカルボニルモリブデン(Mo(CO))から選択されたMo含有前駆体とに、W含有層を暴露させることによって蒸着される。いくつかの実施形態において、Mo含有前駆体への暴露中の基板温度は、550℃未満である。いくつかの実施形態において、基板は、第1基板温度で還元剤に暴露され、第2基板温度でMo含有前駆体に暴露され、第1基板温度は、第2基板温度よりも低い。いくつかの実施形態において、還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である。
【0005】
本開示の別の態様は、第1基板温度で、基板を収容する処理チャンバに還元剤ガスを流して、基板上に共形還元剤層を形成する工程と、第2基板温度で共形還元剤層をモリブデン(Mo)含有前駆体に暴露させて、還元剤層をモリブデンに変換する工程と、を備える、方法に関する。いくつかの実施形態において、第1基板温度は、第2基板温度より低い。いくつかの実施形態において、還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である。いくつかの実施形態において、第1基板温度は400℃以下であり、第2基板温度は500℃以上である。いくつかの実施形態において、方法は、さらに、モリブデンをアニールする工程を備える。
【0006】
本開示の別の態様は、還元剤をパルス供給する工程であって、還元剤は、ホウ素(B)含有、シリコン(Si)含有、または、ゲルマニウム(Ge)含有である、工程と、Mo含有前駆体をパルス供給する工程であって、Mo含有前駆体は、還元剤または還元剤の生成物によって還元されて、B、Si、および、Geの内の1以上を含む多成分タングステン含有膜を基板上に形成する、工程と、を備える、方法に関する。いくつかの実施形態において、多成分タングステン含有膜は、5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geを含む。いくつかの実施形態において、5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geは、還元剤によって供給される。
【0007】
本開示の別の態様は、本明細書に開示された方法を実行するための装置である。これらの特徴および他の特徴について、図面を参照しつつさらに論じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】様々な実施形態に従ったモリブデン(Mo)を含む材料スタックの概略的な例を示す図。
図1B】様々な実施形態に従ったモリブデン(Mo)を含む材料スタックの概略的な例を示す図。
【0009】
図2】Mo埋め込みワード線(bWL)を備えたDRAMアーキテクチャの概略的な例を示す図。
【0010】
図3A】3D NAND構造内のMoワード線の概略的な例を示す図。
【0011】
図3B】Moワード線および共形バリア層を含むMo充填後の製造途中の3D NAND構造の3Dフィーチャの2Dレンダリングを示す図。
【0012】
図4A】開示された実施形態に従って実行される方法の処理フローチャート。
図4B】開示された実施形態に従って実行される方法の処理フローチャート。
【0013】
図5】タングステン(W)核形成層へのMoのCVD蒸着のための様々な基板温度およびチャンバ圧について、Mo厚さ(オングストローム)対CVD持続時間(秒)を示すグラフ。
図6】タングステン(W)核形成層へのMoのCVD蒸着のための様々な基板温度およびチャンバ圧について、Mo抵抗率(μΩ-cm)対Mo厚さ(オングストローム)を示すグラフ。
【0014】
図7】様々な基板温度およびチャンバ圧でのWCNへのMoのCVD蒸着について、Moの成長率を示すグラフ。
図8】様々な基板温度およびチャンバ圧でのWCNへのMoのCVD蒸着について、Moの抵抗率対Mo膜厚を示すグラフ。
【0015】
図9】CVD蒸着されたMo層の厚さおよび抵抗率をWCN下層の厚さの関数として示すグラフ。
【0016】
図10】2nmのWCN上に蒸着された様々な厚さのMoスタックについて800℃でのアニール後のスタック抵抗率の減少を示すグラフ。
【0017】
図11】本明細書に記載の実施形態に従って、蒸着処理を実行するのに適した処理システムを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、提示した実施形態の完全な理解を促すために、数多くの具体的な詳細事項が示されている。開示された実施形態は、これらの具体的な詳細事項の一部またはすべてがなくとも実施可能である。また、開示した実施形態が不必要に不明瞭となることを避けるため、周知の処理動作の詳細な説明は省略した。開示した実施形態は、具体的な実施形態に関連して説明されているが、開示した実施形態を限定する意図はないことを理解されたい。
【0019】
ロジックおよびメモリ用途のための低抵抗メタライゼーションスタック構造を本明細書に提供する。図1Aおよび図1Bは、様々な実施形態に従ったモリブデン(Mo)を含む材料スタックの概略的な例である。図1Aおよび図1Bは、特定のスタックにおける材料の順序を示しており、図2および図3に関して後に詳述するように、任意の適切なアーキテクチャおよび用途で用いられてよい。図1Aの例において、基板102が、その上に蒸着されたMo層108を有する。基板102は、シリコンまたはその他の半導体のウエハ、例えば、200mmウエハ、300mmウエハ、または、450mmウエハであってよく、誘電材料、導電材料、または、半導体材料などの1または複数の材料層を上に蒸着されたウエハを含みうる。方法は、その他の基板(ガラス、プラスチックなど)上にメタライゼーションスタック構造を形成するために適用されてもよい。
【0020】
図1Aでは、誘電体層104が、基板102の上にある。誘電体層104が基板102の半導体(例えば、Si)表面上に直接蒸着されてもよいし、任意の数の中間層が存在してもよい。誘電体層の例は、ドープおよび非ドープの酸化シリコン、窒化シリコン、および、酸化アルミニウムの層を含み、具体例としては、ドープまたは非ドープ層SiOおよびAlが挙げられる。また、図1Aでは、拡散バリア層106が、Mo層108と誘電体層104との間に配置されている。拡散バリア層の例は、窒化チタン(TiN)、チタン/窒化チタン(Ti/TiN)、窒化タングステン(WN)、および、炭窒化タングステン(WCN)を含む。拡散バリアのさらなる例は、後に詳述するように、多成分Mo含有膜である。Mo層108は、構造の主要な導電体である。後に詳述するように、Mo層108は、Mo核形成層およびバルクMo層を含んでよい。さらに、いくつかの実施形態において、Mo層108は、タングステン(W)またはW含有成長開始層の上に蒸着されてよい。
【0021】
図1Bは、材料スタックの別の例を示す。この例において、スタックは、基板102、誘電体層104を備え、Mo層108が誘電体層104上に蒸着されており、間に拡散バリア層はない。図1Aの例のように、Mo層108は、Mo核形成層およびバルクMo層を備えてよく、いくつかの実施形態において、Mo層108は、タングステン(W)またはW含有成長開始層の上に蒸着されてよい。Wよりも低い電子平均自由行程を有するMoを主要な導電体として用いることにより、より低い抵抗の薄膜を得ることができる。
【0022】
図1Aおよび図1Bは、メタライゼーションスタックの例を示すが、方法および結果として得られるスタックは、そのように限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、Moは、W開始層を備えてまたは備えずに、Siまたはその他の半導体基板上に直接蒸着されてよい。
【0023】
上述し以下でさらに説明する材料スタックは、様々な実施形態で用いられてよい。図2図3A、および、図3Bは、Mo含有スタックが利用されうる構造の例を提供する。図2は、シリコン基板202内にMo埋め込みワード線(bWL)208を備えたDRAMアーキテクチャの概略的な例を示す。Mo bWLは、シリコン基板202にエッチングされたトレンチ内に形成されている。トレンチのライニングは、共形バリア層206、および、共形バリア層206とシリコン基板202との間に配置された絶縁層204である。図2の例において、絶縁層204は、高k材料(酸化シリコンまたは窒化シリコン材料など)から形成された、ゲート酸化物層であってよい。本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、共形バリア層は、TiNまたはタングステン含有層である。いくつかの実施形態において、TiNがバリアとして用いられる場合、共形タングステン含有成長開始層が、共形バリア層206とMo bWL208との間に存在してよい。あるいは、Mo bWL208は、TiNまたはその他の拡散層の上に直接蒸着されてもよい。
【0024】
図3Aは、3D NAND構造323内のMoワード線308の概略的な例を示す。図3Bには、ワード線308および共形バリア層306を含むMo充填後の製造途中の3D NAND構造の3Dフィーチャの2Dレンダリングが示されている。図3Bは、充填された領域の断面図であり、図に示されたピラー狭窄324は、断面図よりも平面図で見られる狭窄を表す。共形バリア層306は、図2の共形バリア層206に関して上述したように、TiNまたはタングステン含有層であってよい。いくつかの実施形態において、タングステン含有膜は、後述するように、後続のCVD Mo蒸着のためのバリア層および核形成層として機能しうる。TiNがバリアとして用いられる場合、共形タングステン含有成長開始層が、バリアとワード線との間に存在してよい。あるいは、Moワード線308は、TiNまたはその他の拡散層の上に直接蒸着されてもよい。
【0025】
Mo含有スタックを形成する方法は、蒸着技術(CVDおよびパルス核形成層(PNL)蒸着など)を含む。PNL技術では、共反応物質、任意選択的なパージガス、および、Mo含有前駆体のパルスが、順次、チャンバ内に注入され、そこからパージされる。処理は、所望の厚さが達成されるまで、循環的に繰り返される。PNLは、概して、原子層蒸着(ALD)技術など、半導体基板上での反応のために順次反応物質を追加する任意の循環処理を具体化する。PNLは、本明細書に記載の方法におけるMo核形成層および/またはW系成長開始層の蒸着に用いられてよい。核形成層は、通例、薄い共形層であり、後にバルク材料をその上に蒸着するのを容易にする。様々な実施例によると、核形成層は、フィーチャの任意の充填の前、および/またはフィーチャの充填中の後の時点に蒸着されてよい。
【0026】
タングステン核形成層を蒸着するためのPNL技術については、米国特許第6,635,965;7,005,372;7,141,494;7,589,017;7,772,114;7,955,972;および、8,058,170に記載されている。核形成層の厚さは、核形成層蒸着方法と、バルク蒸着の所望の質に依存しうる。一般に、核形成層の厚さは、質の高い均一なバルク蒸着を支援するのに十分である。例としては、10Å~100Åの範囲であってよい。
【0027】
多くの実施例において、Moバルク層の蒸着は、還元剤およびMo含有前駆体が蒸着チャンバに流されてフィーチャ内にバルク層を蒸着させるCVD処理によって実行されうる。不活性の搬送ガスが、反応物質流であって予混合されても予混合されなくてもよい反応物質流の内の1または複数を供給するために用いられてよい。PNLまたはALD処理と異なり、この動作は、一般に、所望の量が蒸着されるまで、連続的に反応物質を流すことを含む。特定の実施例において、CVD動作は、複数の段階で実行されてよく、反応物質が連続的かつ同時に流れる複数の期間が、1または複数の反応物質の流れが迂回される期間で隔てられる。
【0028】
Mo含有前駆体は、六フッ化モリブデン(MoF)、五塩化モリブデン(MoCl)、二塩化二酸化モリブデン(MoOCl)、四塩化酸化モリブデン(MoOCl)、および、ヘキサカルボニルモリブデン(Mo(CO))を含む。有機金属前駆体(モリブデンシリルシクロペンタジエニルおよびモリブデンシリルアリル錯体など)が用いられてもよい。Mo含有前駆体は、ハロゲン化合物前駆体であってよく、これは、MoFおよびMoClならびに安定分子を形成しうる2以上のハロゲンを有する混合ハロゲン化合物前駆体を含む。混合ハロゲン化合物前駆体の一例は、安定分子を形成しうるMoClBrであり、xおよびyは、0より大きい任意の数である。
【0029】
W系成長開始層上のMo含有層
特定の実施形態において、タングステン(W)系成長開始層上にモリブデン(Mo)含有層を含む構造が提供される。Mo含有膜の形成方法も提供されている。
【0030】
W系成長開始層は、任意のW含有層であってよい。いくつかの実施形態において、それは、核形成層であり、すなわち、その上に続けてバルク材料を形成するのを容易にするよう機能する薄い共形層である。いくつかの実施形態において、W系成長開始層は、バルクW含有層であり、バルクW含有層自体が、核形成層上に蒸着されてよい。フィーチャ充填のために用いられる場合、核形成層が、フィーチャの側壁および底部を共形に被覆するように蒸着されてよい。下にあるフィーチャの底部および側壁と共形にすることは、高品質な蒸着を支援するのに重要でありうる。様々な実施形態によれば、W系成長開始層は、PNLおよびCVD処理の一方または両方によって蒸着されてよい。例えば、CVD層が、PNL層上に蒸着されてよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、W含有層は、元素W層である。かかる層は、PNLまたはCVD法を含む任意の適切な方法によって蒸着されてよい。元素Wは、WCまたはWNのような2成分の膜およびWCNのような3成分の膜とは区別されるが、いくらかの量の不純物を含んでもよい。それは、W層またはW膜と呼ばれうる。
【0032】
いくつかの実施形態において、W系成長層は、低抵抗W(LRW)膜である。特定の実施形態に従った低抵抗タングステンの蒸着は、米国特許第7,772,114号に記載されている。特に、’114特許は、PNL W層上へのWのCVD蒸着の前に、PNL W核形成層を還元剤に暴露させることについて記載している。LRW膜は、大きいMo粒子成長のための良好なテンプレートを提供する大きい粒子サイズを有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、W系成長層は、ホウ素含有還元剤(例えば、B)またはシリコン含有還元剤(例えば、SiH)の内の1または複数を共反応物質として用いて蒸着されたPNL W核形成層である。例えば、1または複数のS/Wサイクル(ここで、S/Wとは、シランのパルスの後に、六フッ化タングステン(WF)またはその他のタングステン含有前駆体のパルスが続くことである)が、Mo層の蒸着されるPNL W核形成層を蒸着するために用いられてよい。別の例において、1または複数のB/Wサイクル(ここで、B/Wとは、ジボランのパルスの後にWFまたはその他のタングステン含有前駆体のパルスが続くことである)が、Mo層の蒸着されるPNL W核形成層を蒸着するために用いられてもよい。B/WおよびS/Wサイクルの両方が、PNL W核形成層を蒸着するために用いられてもよい。ホウ素含有還元剤およびシリコン含有還元剤の一方または両方を用いたPNL処理の例は、米国特許第7,262,125;7,589,017;7,772,114;7,955,972;8,058,170;9,236,297;および、9,583,385号に記載されている。
【0034】
いくつかの実施形態において、W系成長層は、六塩化タングステン(WCl)または五塩化タングステン(WCl)などの塩化タングステン(WCl)前駆体を用いて蒸着されたW層またはその他のW含有層である。塩化タングステンを用いたW含有層の蒸着は、米国特許第9,595,470号;米国特許公開第20150348840号;および、米国特許出願15/398,462号に記載されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、W系成長層は、低フッ素W層である。米国特許第9,613,818号は、低フッ素W層を蒸着する順次CVD法を記載する。米国特許公開第2016/0351444号は、低フッ素W層を蒸着するPNL法を記載する。
【0036】
いくつかの実施形態において、W系成長層は、WN、WC、または、WCN膜である。WN、WC、または、WCNの内の1以上を蒸着する方法が、米国特許第7,005,372;8,053,365;8,278,216号;および、米国特許出願第15/474,383号の各々に記載されている。
【0037】
W系成長層は、上記の例に限定されず、ALD、PNL、CVD、または、物理蒸着(PVD)法など、任意の適切な方法によって蒸着された任意のW膜またはその他のW含有膜であってよい。ALD、PNL、および、CVD蒸着は、W含有前駆体への暴露を含む。WFおよびWCl前駆体に加えて、W含有前駆体の例は、ヘキサカルボニルタングステン(W(CO))および有機金属前駆体(MDNOW(メチルシクロペンタジエニル-ジカルボニルニトロシル-タングステン)およびEDNOW(エチルシクロペンタジエニル-ジカルボニルニトロシル-タングステン)など)を含む。多くのALD、PNL、および、CVD蒸着処理では、還元剤が、W含有前駆体を還元するために用いられる。例としては、水素ガス(H)、シラン(SiH)、ジシラン(Si)ヒドラジン(N)、ジボラン(B)、および、ゲルマン(GeH)を含む。
【0038】
また、上述のように、本明細書に記載のW含有膜は、用いられる特定の前駆体および処理によっては、窒素、炭素、酸素、ホウ素、リン、硫黄、シリコン、ゲルマニウムなど、いくらかの量の他の化合物、ドーパント、および/または、不純物を含みうる。膜中のタングステン含有量は、(原子)タグステン20%から100%の範囲でありうる。多くの実施例において、薄膜は、タングステンリッチであり、少なくとも50%の(原子)タングステン、もしくは、少なくとも約60%、75%、90%、または、99%の(原子)タングステンを含む。いくつかの実施例において、膜は、元素タングステン(W)と、他のタングステン含有化合物(WC、WNなど)との混合物であってよい。
【0039】
Mo含有膜は、ALDまたはCVDなどの任意の適切な方法によってW系成長開始層上に蒸着されてよい。いくつかの実施形態において、順次CVD処理が用いられてよい。順次CVD処理は、米国特許第9,613,818号に記載されており、その特許は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
Mo含有膜の蒸着は、同時または順次に、W系成長開始層をMo含有前駆体と還元剤またはその他の共反応物質とに暴露させる工程を含んでよい。Mo含有前駆体の例は、MoF、MoCl、MoOCl、および、Mo(CO)を含む。有機金属前駆体(モリブデンシリルシクロペンタジエニルおよびモリブデンシリルアリル錯体など)が用いられてもよい。Mo膜の純度(例えば、O含有量で測定される)は、前駆体および共反応物質の分圧を変化させることによって調整できる。
【0041】
Mo蒸着中の基板温度は、300℃~750℃の間であってよく、特定の実施形態では、450℃~550℃の間であってよい。基板温度は、サーマルバジェットおよび蒸着化学物質によって決まる。サーマルバジェットは用途によって決まり、高い蒸着温度は、メモリ用途では問題にならないが、ロジック用途のサーマルバジェットを超えうる。
【0042】
W含有成長開始層の存在は、より低い温度での蒸着の実行を可能にする。例えば、MoClまたはMoOClからMo蒸着は、Mo-Cl結合の強度により、550℃未満の温度で実行することができない。しかしながら、W含有成長開始層を用いれば、550℃未満で蒸着を実行できる。Mo蒸着中のチャンバ圧は、例えば、5Torr~60Torrであってよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、より強い還元剤(SiHまたはBなど)ではなく、Hが還元剤として用いられる。これらの強い還元剤は、酸素含有Mo含有前駆体を用いる場合に、望ましくない酸素リッチな界面を引き起こしうる。Mo含有膜は、元素Mo膜であってよいが、かかる膜は、用いられる特定の前駆体および処理によっては、いくらかの量の他の化合物、ドーパント、および/または、不純物を含みうる。
【0044】
PNL蒸着されたMo核形成層上のMo含有層
特定の実施形態では、Mo含有層が、W系成長開始層を利用せずに蒸着されてよい。例えば、元素Mo層が、TiNまたは誘電体層の上に蒸着されてよい。特定の前駆体に対して、蒸着温度は、蒸着を得るために、相対的に高くてよい(550℃超)。塩素含有前駆体(MoOCl、MoOCl、およびMoOClなど)を用いたCVD蒸着が、TiNおよび誘電体表面に550℃より高い温度で実行されてよい。より低い温度で、CVD蒸着が、上述のようにW系成長開始層を用いて任意の表面に実行されてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、CVD蒸着が、PNLプロセスによって蒸着されたMo含有核形成層を用いて任意の表面に実行されてもよい。
【0045】
上述のように、PNL処理では、共反応物質、任意選択的なパージガス、および、Mo含有前駆体のパルスが、順次、チャンバ内に注入され、そこからパージされる。いくつかの実施形態では、Mo核形成層が、ホウ素含有還元剤(例えば、B)またはシリコン含有還元剤(例えば、SiH)の内の1または複数を共反応物質として用いて蒸着される。例えば、1または複数のS/Moサイクル(ここで、S/Moとは、シランのパルスの後に、Mo含有前駆体のパルスが続くことである)が、CVD Mo層の蒸着されるPNL Mo核形成層を蒸着するために用いられてよい。別の例において、1または複数のB/Moサイクル(ここで、B/Moとは、ジボランのパルスの後に、Mo含有前駆体のパルスが続くことである)が、CVD Mo層の蒸着されるPNL Mo核形成層を蒸着するために用いられてもよい。B/MoおよびS/Moサイクルの両方が、PNL Mo核形成層(例えば、x(B/Mo)+y(S/Mo)、ここで、xおよびyは整数)を蒸着するために用いられてもよい。Mo核形成層のPNL蒸着のために、いくつかの実施形態において、Mo含有前駆体は、酸素非含有前駆体(例えば、MoFまたはMoCl)であってよい。酸素含有前駆体中の酸素は、シリコン含有またはホウ素含有還元剤と反応して、不純な高抵抗膜であるMoSiまたはMoBを形成しうる。酸素含有前駆体は、酸素混入を最小限にして用いられてよい。いくつかの実施形態では、Hが、ホウ素含有またはシリコン含有還元ガスの代わりに還元ガスとして用いられてもよい。Mo核形成層の蒸着の厚さの例は、5Å~30Åの範囲である。この範囲の下限での膜は、連続しない場合があるが、連続バルクMo成長を開始する助けになりうる限りは、その厚さで十分でありうる。いくつかの実施形態において、還元剤パルスは、Mo前駆体パルスよりも低い基板温度でなされてよい。例えば、Moパルスが300℃より高い温度でなされる時に、BまたはSiH(もしくは、その他のホウ素含有またはシリコン含有還元剤)パルスが、300℃より低い温度で実行されてよい。
【0046】
還元剤層を用いたMo蒸着
より低い温度(550℃未満)での蒸着が、図4Aに示すような処理によって非W表面(誘電体およびTiN表面など)に直接実行されてもよい。それは、W含有面上で用いられてもよい。図4Aは、開示された実施形態に従って実行される方法の処理フローチャートを提供する。図4Aの動作402~408は、少なくとも誘電体表面またはその他の表面へ直接的に共形Mo層を形成するために実行されてよい。
【0047】
動作402において、基板は、還元剤層を形成するために還元剤ガスに暴露される。いくつかの実施形態において、還元剤ガスは、シラン、ボラン、もしくは、シランおよびジボランの混合物であってよい。シランの例は、SiHおよびSiを含み、ボランの例は、ジボラン(B)、および、Bn+4、Bn+6、Bn+8、Bを含み、ここで、nは、1~10の整数であり、mは、とは異なる整数である。その他のホウ素含有化合物、例えば、アルキルボラン、アルキルホウ素、アミノボラン(CHNB(CH、カルボラン(Cn+2など)が用いられてもよい。いくつかの実施例において、還元剤層は、タングステン前駆体を還元できるシリコンまたはシリコン含有材料、リンまたはリン含有材料、ゲルマニウムまたはゲルマニウム含有材料、ホウ素またはホウ素含有材料、ならびに、それらの組みあわせを含んでよい。かかる層を形成するのに利用できる還元剤ガスのさらなる例は、PH、SiHCl、および、GeHを含む。様々な実施形態によると、水素が、バックグラウンドで流されても流されなくてもよい。(水素は、タングステン前駆体を還元しうるが、シランおよびジボランなどの十分な量のより強い還元剤とのガス混合物中では還元剤として機能しない)。
【0048】
いくつかの実施形態において、還元剤ガスは、ジボランなどの少量のホウ素含有ガスを別の還元剤と共に含む混合物である。少量のホウ素含有ガスの追加は、別の還元剤の分解および付着係数に大きく影響しうる。2つの還元剤、例えばシランおよびジボランへ基板を順次暴露させてもよいことに注意されたい。ただし、混合ガスを流すことは、非常に少量のマイノリティなガスの追加(例えば、シラン対ジボランの比が少なくとも100:1)を容易にすることができる。いくつかの実施形態において、搬送ガスが流されてもよい。いくつかの実施形態において、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または、その他の不活性ガスなどの搬送ガスが、動作402中に流されてよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、還元剤層は、元素シリコン(Si)、元素ホウ素(B)、元素ゲルマニウム(Ge)、または、それらの混合物を含んでよい。例えば、後述するように、還元剤層は、SiおよびBを含んでよい。Bの量は、還元剤層の高い蒸着率を達成するが低い抵抗率になるように調整されてよい。いくつかの実施形態において、還元剤層は、例えば、5%~80%の間のホウ素、もしくは、5%~50%の間のホウ素、5%~30%の間、または、5%~20%の間のホウ素を有してよく、残りは、基本的に、Siおよび一部の例ではHからなる。水素原子、例えば、SiH、BH、GeH、または、それらの混合物、が存在し、ここで、x、y、および、zは、独立的に、0から対応する還元剤化合物の化学量論的当量未満の数までの間であってよい。
【0050】
いくつかの実施形態において、組成は、還元剤層の厚さを通して変化しうる。例えば、還元剤層は、還元剤層の底部で20%のBであり、層の上部で0%のBであってよい。還元剤層の全厚は、10Å~50Åの間であってよく、いくつかの実施形態において、15Å~40Åの間、または、20Å~30Åの間であってよい。還元剤層は、フィーチャを共形にライニングする。
【0051】
動作402中の基板温度は、膜が共形になるように温度T1に維持されてよい。温度が高すぎると、膜は、下層構造のトポグラフィと共形にならない場合がある。いくつかの実施形態において、90%または95%より大きいステップカバレッジが達成される。シラン、ジボラン、および、シラン/ジボラン混合物について、共形性は、300℃で優れており、400℃以上の温度では低下しうる。したがって、いくつかの実施形態において、動作202中の温度は、最大限で350℃であり、もしくは、最大限で325℃、最大限で315℃、または、最大限で300℃でさえある。いくつかの実施形態では、300℃未満の温度が用いられる。例えば、温度は、200℃程度の低さであってよい。
【0052】
動作402は、任意の適切な持続期間にわたって実行されてよい。いくつかの例において、持続時間の例は、約0.25秒~約30秒、約0.25秒~約20秒、約0.25秒~約5秒、または、約0.5秒~約3秒を含む。
【0053】
動作404で、チャンバは、基板の表面に吸着しなかった余分な還元剤を除去するために、任意選択的にパージされる。パージは、固定圧で不活性ガスを流すことでチャンバの圧力を低減させ、別のガス暴露を開始する前にチャンバを再加圧することによって実行されてよい。不活性ガスの例は、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、および、それらの混合物を含む。パージは、約0.25秒~約30秒、約0.25秒~約20秒、約0.25秒~約5秒、または、約0.5秒~約3秒の持続期間にわたって実行されてよい。
【0054】
動作406において、基板は、基板温度T2でMo含有前駆体に暴露される。Mo含有化合物の例は、上記しており、塩化物および酸塩化物を含む。酸素含有前駆体の利用は、不純物混入およびより高い抵抗率につながりうる。しかしながら、酸素が取り込まれた場合、非常に薄く、おそらく不連続な還元剤層が、許容可能な抵抗率のために用いられてよい。いくつかの実施形態において、窒素(N)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、または、その他の不活性ガスなどの搬送ガスが、動作406中に流されてよい。温度の例は、500℃~700℃である。
【0055】
動作406は、任意の適切な持続期間にわたって実行されてよい。いくつかの実施形態において、その動作は、Mo含有前駆体のソーク、および、いくつかの実施形態においてMo含有前駆体パルスのシーケンスを含んでよい。様々な実施形態によると、動作406は、Hの存在下で実行されてもよいしされなくてもよい。Hが用いられる場合、いくつかの実施形態において、HおよびMo含有前駆体は、ALDタイプモードで適用されてよい。例えば:
のパルス
アルゴンパージ
バックグラウンドのHを伴うかまたは伴わないMo含有前駆体のパルス
アルゴンパージ
繰り返し
【0056】
基板温度T2は、Mo含有前駆体が還元剤層と反応して元素Moを形成するのに十分な高さである。還元剤層全体が、Moに変換される。いくつかの実施形態において、温度は、少なくとも450℃であり、100%またはほぼ100%の変換を得るために少なくとも550℃であってもよい。結果として得られるフィーチャは、Moの共形膜でライニングされている。それは、10Å~50Åの間であってよく、いくつかの実施形態において、15Å~40Åの間、または、20Å~30Åの間であってよい。一般に、それは、還元剤層とおおよそ同じ厚さである。いくつかの実施形態において、それは、変換中の体積膨張によって、還元剤層より最大5%厚い場合がある。いくつかの実施形態において、CVD Mo層が、共形Mo層上に蒸着されてもよい。
【0057】
多成分Mo膜
いくつかの実施形態において、多成分Mo含有膜が提供される。いくつかのかかる実施形態において、多成分Mo含有膜は、ホウ素(B)、シリコン(Si)、または、ゲルマニウム(Ge)の内の1または複数を含んでよい。図4Bは、開示された実施形態に従って実行される方法の処理フローチャートを提供する。
【0058】
最初に、基板が、還元剤パルスに暴露される(ブロック452)。いくつかの実施形態において、還元剤パルスに暴露されて膜が上に形成される表面は、誘電体である。様々な実施形態によると、膜は、導電体表面および半導体面を含むその他のタイプの表面上に形成されてよい。
【0059】
ブロック452で用いられる還元剤は、後続の動作で用いられるMo含有前駆体を還元すると共に、結果として得られる膜に組み込まれる化合物を提供する。かかる還元剤の例は、ホウ素含有、シリコン含有、および、ゲルマニウム含有還元剤を含む。ホウ素含有還元剤の例は、Bn+4、Bn+6、Bn+8、Bなどのボランを含み、ここで、nは、1~10の整数であり、mは、とは異なる整数である。特定の例において、ジボランが用いられてもよい。その他のホウ素含有化合物、例えば、アルキルボラン、アルキルホウ素、アミノボラン(CHNB(CH、および、カルボラン(Cn+2など)が用いられてもよい。シリコン含有化合物の例は、シラン(SiHおよびSiなど)を含む。ゲルマニウム含有化合物の例は、Gen+4、Gen+6、Gen+8、および、Geなどのゲルマンを含み、ここで、nは、1~10の整数であり、nは、mとは異なる整数である。その他のゲルマニウム含有化合物、例えば、アルキルゲルマン、アルキルゲルマニウム、アミノゲルマン、および、カルボゲルマンが用いられてもよい。
【0060】
様々な実施形態によると、ブロック452は、熱分解された元素のホウ素、シリコン、または、ゲルマニウムの薄層を基板の表面上に吸着させることを含んでよい。いくつかの実施形態において、ブロック452は、前駆体分子を基板表面上に吸着させることを含んでもよい。
【0061】
次に、中に基板を配置されたチャンバは、任意選択的にパージされてもよい(ブロック454)。パージパルスまたは排気が、存在する場合に任意の副生成物と、未吸着の前駆体とを除去するために用いられうる。この次に、Mo含有前駆体のパルスが続く(ブロック456)。いくつかの実施形態において、Mo含有前駆体は、MoOCl、MoOCl、および、MoClといったCl含有前駆体である。任意選択的なパージ(457)が、ブロック456の後に実行されてもよい。Mo含有前駆体は、還元剤(もしくは、その分解生成物または反応生成物)によって還元されて、多成分膜を形成する。
【0062】
蒸着サイクルが、通例、Mo含有層の一部を蒸着する。ブロック457の後、蒸着サイクルが、いくつかの実施例において完了し、蒸着される膜は、MoB、MoSi、および、MoGeといったモリブデン含有の2成分膜であり、ここで、xはゼロより大きい。かかる実施形態において、処理は、所望の厚さが蒸着されるまで、ブロック452~457のサイクルを繰り返して、ブロック462に進んでよい。成長速度の例は、サイクルあたり約100Åでありうる。
【0063】
いくつかの実施形態において、処理は、第3反応物質を任意選択的に導入する動作に進む(ブロック458)。第3反応物質は、一般に、炭素または窒素といった膜に導入される元素を含む。窒素含有反応物質の例は、N、NH、および、Nを含む。炭素含有反応物質の例は、CHおよびCを含む。任意選択的なパージ(ブロック459)が続いてもよい。次いで、処理は、蒸着サイクルを繰り返してブロック462に進んでよい。
【0064】
窒素または炭素を含む3成分の膜の例については上記した。いくつかの実施形態において、膜は、窒素および炭素を両方含んでもよい(例えば、MoSiCN)。
【0065】
様々な実施形態によると、多成分タングステン膜は、以下の原子百分率を有してよい:Mo約5%~90%、B/Ge/Si約5%~60%、C/N約5%~80%。いくつかの実施形態において、多成分膜は、以下の原子百分率を有する:Mo約15%~約80%;B/Ge/Si:約15%~約50%;C/N約20%~約50%。様々な実施形態によると、多成分Mo膜は、少なくとも50%Moである。
【0066】
様々な実施形態によると、蒸着は、相対的に高く、例えば、550℃~650℃など、500℃~700℃の間であり、いくつかの実施形態では、約500℃超である。これは、Mo含有前駆体の還元を促進し、また、B、Si、または、Geを2成分膜に組み込むことを可能にする。範囲の上限は、サーマルバジェットの考慮によって限定されうる。いくつかの実施形態において、ブロック452、456、および、458の内の任意の1または複数が、他のブロックのいずれとも異なる温度で実行されてもよい。特定の実施形態において、ブロック452からブロック456への移行およびブロック456からブロック458への移行は、マルチステーションチャンバ内で、或る蒸着ステーションから別の蒸着ステーションへ基板を移動させることを含む。さらに、ブロック452、ブロック456、および、ブロック458の各々は、同じマルチステーションチャンバの異なるステーションに実行されてよい。いくつかの実施形態において、ブロック452、456、および、458の順序は変更されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、2成分または3成分の膜の仕事関数などの電気的特性が、窒素または炭素を導入することによって調整されてもよい。同様に、還元剤の量が、膜に組み込まれるB、Si、または、Geの量を調整するために、(投入量および/またはパルス時間を変調することによって)調節されてもよい。さらに、ブロック452、456、および、458の内の任意の1または2つのブロックが、2成分または3成分の膜のタングステンおよびその他の成分の相対量、ひいては、それらの物理的、電気的、および、化学的特性を調整するために、サイクル毎に2回以上実行されてもよい。多成分層は、Moと、B、Si、および、Geの内の1以上と、任意選択的にCおよびNの内の1以上と、を含んでよい。例は、MoB、MoSi、MoGe、MoB、MoSi、MoGe、MoSi、MoB、MoGeを含み、ここで、xおよびyは、ゼロより大きい。
【0068】
図4Bを参照して記載した処理において、還元剤中の元素(B、Si、または、Ge)が、Mo含有膜へ意図的に組み込まれることに注意されたい。これは、B含有、Si含有、または、Ge含有還元剤がこれらの元素を全くまたは微量しか持たない元素Mo膜を形成するために利用されうる上述した特定のPNLおよびCVD蒸着処理ならびに図4Bに記載した蒸着処理の特定の実施形態とは対照的である。B、Ge、または、Siの組み込みは、パルス幅および投入量によって制御できる。さらに、いくつかの実施形態において、より高い温度が、組み込みを増大させるために用いられてもよい。温度が高すぎると、反応ガスの制御されない分解につながりうる。いくつかの実施形態において、図4Aに関して上述したように、基板温度は、還元剤ガスに対して低い温度であり、Mo前駆体に対して高い温度であってよい。
【0069】
いくつかの実施形態において、図4Bの処理は、B、Si、または、Geが膜に組み込まれず、Cおよび/またはNを組み込んで、例えば、MoC、MoN、または、MoCN膜を形成するために、ブロック458を実行するように、変形されてもよい。Cおよび/またはN含有反応物質が、かかる実施形態で用いられてよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、多成分Mo含有膜は、拡散バリア(例えば、ワード線)である。いくつかの実施形態において、多成分タングステン含有膜は、金属ゲートのための仕事関数層である。いくつかの実施形態において、バルクMo層が、多成分層上に蒸着されてもよい。バルク層は、いくつかの実施形態において、中間層なしに多成分Mo含有膜上に直接蒸着されてよい。いくつかの実施形態において、それは、CVDによって蒸着されてよい。
【0071】
実験
WFを還元するために、それぞれ、シランおよびジボランを用いてPNLによって蒸着されたタングステン核形成層上にCVD Mo膜を成長させた。シラン蒸着タングステン核形成層は、SW核形成層とも呼ばれ、ジボラン蒸着タングステン核形成層は、BW核形成層とも呼ばれる。Mo膜は、MoOClおよびHから蒸着された。
【0072】
各蒸着について、30Torrおよび45Torrの処理圧を比較した。30Torrでは、Mo蒸着が観察されず、いくらかのW損失が観察され、SW核形成よりもBW核形成で、より多くのW損失が観察された。二次イオン質量分析(SIMS)データは、1原子%未満のO含有量を示した。
【0073】
異なる温度(500℃および520℃)、異なる圧力(45Torrおよび60Torr)で、CVDによってSW核形成層およびBW核形成層上にMoを蒸着した。また、核形成層を蒸着するためのBWまたはSWサイクル利用回数を変更した(1、2、3、または、4)。図5および図6は、それぞれ、Mo厚さ(オングストローム)対CVD持続時間(秒)、および、Mo抵抗率(μΩ-cm)対Mo厚さ(オングストローム)を示す。
【0074】
45Torrよりも60Torr処理圧で、低い抵抗率が観察された。60Torrでは、500℃および520℃の間に有意な差は観察されなかった。同等のBW核形成層およびSW核形成層の厚さでは、SW核形成層で、より低い抵抗率が観察された。より薄い(サイクル回数が少ない)SW核形成層で、より高い抵抗率が観察された。
【0075】
異なる温度(500℃および520℃)、異なる圧力(45Torrおよび60Torr)で、CVDによってWCN上にMoを蒸着した。図7は、Mo成長率を示し、図8は、抵抗率対Mo膜厚を示している。図9は、厚さおよび抵抗率をWCN下層の厚さの関数として示している。45TorrではWCNエッチングが観察されたが、60Torrでは均一なMo蒸着が観察された。60Torrでは、520℃でより高い成長率が観察され、温度は抵抗率に影響を与えなかった。Moは、10オングストローム程度の薄いWCN上で成長され、WCNが薄いほど、抵抗率が低くなった。SIMSデータは、バルク中の総不純物(例えば、O、B、C)が0.5(原子)%未満で、WCN上のCVD Moが滑らかであることを示した。
【0076】
いくつかの実施形態において、Moは、誘電体下層に対して、金属または純粋な(自然酸化物なしの)Si表面上に選択的に蒸着されうる。例えば、金属コンタクトまたはミドルオブライン(MOL)ロジック用途のために、金属上へ選択的にMoを成長させて、ボトムアップのボイドフリーギャップ充填を実現できる。かかる用途において、Moは、露出した二酸化シリコンまたはその他の露出した誘電体表面に隣接する金属またはSi表面上に直接蒸着されてよい。誘電体上の核形成の遅延は、Moが金属表面上に優先的に蒸着されるような遅延である。例えば、金属の底部および二酸化シリコンの側壁を有するフィーチャが、Mo含有前駆体および共反応物質に暴露されてよい。Moは、側壁からよりもむしろボトムアップで成長する。
【0077】
アニール
いくつかの実施形態において、熱アニールが、Mo蒸着後に実行される。これは、Mo粒子成長および低い抵抗率を可能にしうる。Moの融点はWよりも低いので、Mo膜に対しては、粒子成長およびそれに伴う抵抗率の低下が、より低い温度で起きる。アニール温度の例は、700℃~1100℃の範囲である。アニールは、炉内でまたは高速熱アニールによって実行されてよい。様々な実施形態によると、アニールは、水素(H)雰囲気、窒素(N)雰囲気、または、真空など、任意の適切な雰囲気中で実行されてよい。
【0078】
様々な実施形態によると、Mo膜は、蒸着とアニールとの合間に空気に暴露されてもよいしされなくてもよい。Mo膜が、空気またはその他の酸化環境に暴露される場合、暴露の結果として形成された二酸化モリブデン(MoO)または三酸化モリブデン(MoO)を除去するために、アニールの間または後に、還元環境が用いられてよい。特に、MoOは、795℃の融点を有しており、除去されなければ、アニール中に融解しうる。
【0079】
以下の表1は、2つのW膜(AおよびB)と、2つのMo膜(CおよびD)とを比較したものである。
【表1】
【0080】
膜Aは、WFを用いて蒸着された低フッ素タングステン(LFW)膜である。膜Bは、WClおよびWClを用いて蒸着されたタングステン膜である。膜Cは、MoClを用いて蒸着されたモリブデン膜であり、膜Dは、MoOClを用いて蒸着されたモリブデン膜である。膜Dは、蒸着後アニールを受けた。特に、抵抗率は、膜AおよびBよりも、膜CおよびDに対して低い。抵抗率は厚さと共に低下し、25μΩ-cm(膜C)および17μΩ-cm(膜D)は、直接的に40μΩ-cm(膜A)に相当する。O含有前駆体で蒸着された膜Dは、低いOを示す。膜CおよびDの応力は、膜AおよびBに匹敵する。
【0081】
図10は、WCN上に蒸着された様々な厚さのMo膜について800℃でのアニール後の抵抗率の減少を示すグラフである。WCN上のW膜の抵抗率も、比較のために示されている。抵抗率の有意な減少が観察される。抵抗率の減少は、粒子成長によるものである。下の表2は、蒸着直後およびアニール後のCVD Mo膜中のMo粒子の相および平均粒子サイズを示す。
【表2】
雰囲気において800℃で1時間5分行った炉アニールが、匹敵する結果を示した。
【0082】
装置
任意の適切なチャンバを用いて、開示した実施形態を実施することができる。蒸着装置の例としては、例えば、カリフォルニア州フレモントのLam Research社製のALTUS(登録商標)およびALTUS(登録商標)Max、もしくは、様々な他の市販の処理システムのいずれかなど、様々なシステムが挙げられる。処理は、複数の蒸着ステーションで並行して実行できる。
【0083】
いくつかの実施形態では、タングステン核形成処理が、単一の蒸着チャンバ内に配置された2、5、または、さらに多くの蒸着ステーションの内の1つである第1のステーションで実行される。いくつかの実施形態において、核形成処理の様々な工程が、蒸着チャンバの2つの異なるステーションで実行される。例えば、基板は、基板表面に局所的な雰囲気を形成する個々のガス供給システムを用いて、第1ステーション内でジボラン(B)に暴露されてよく、次いで、基板は、第2ステーションに移送され、核形成層を蒸着するために六塩化タングステン(WCl)などの前駆体に暴露される。いくつかの実施形態において、基板は、その後、ジボランへの第2暴露のために第1ステーションに戻されるか、または、第3反応物質暴露のための第3ステーションへ移送されてよい。次いで、WCl(または、その他の塩化タングステン)への暴露のために基板を第2ステーションに移送して、タングステン核形成を完了し、同じまたは異なるステーションでバルクモリブデン蒸着を進めてよい。次いで、1または複数のステーションを用いて、上述のようにMo化学蒸着(CVD)を実行できる。
【0084】
図11は、本明細書に記載の実施形態に従って、蒸着処理を実行するのに適した処理システムを示すブロック図である。システム1100は、搬送モジュール1103を備える。搬送モジュール1103は、処理中の基板が様々なリアクタモジュール間で移動される時の汚染のリスクを最小限に抑えるために、清浄な加圧環境を提供する。搬送モジュール1103には、本明細書に記載の実施形態に従って、核形成層蒸着(パルス核形成層(PNL)蒸着とも呼ばれる)およびCVD蒸着を実行できるマルチステーションリアクタ1109が取り付けられている。チャンバ1109は、これらの動作を順に実行しうる複数のステーション1111、1113、1115、および、1117を備えてよい。例えば、チャンバ1109は、ステーション1111および1113がPNL蒸着を実行し、ステーション1113および1115がCVDを実行するように構成されてよい。各蒸着ステーションは、加熱されたウエハペデスタルと、シャワーヘッド、拡散プレート、または、その他のガス流入口と、を備えてよい。
【0085】
また、プラズマ前洗浄または化学的な(非プラズマ)前洗浄を実行できる1または複数の単一ステーションモジュールまたはマルチステーションモジュール1107が、搬送モジュール1103上に取り付けられてよい。モジュールは、様々な他の処理(例えば、還元剤浸漬)に用いられてもよい。システム1100は、ウエハが処理前後に収容される1または複数(この例では2つ)のウエハソースモジュール1101も備える。大気搬送チャンバ1119内の大気ロボット(図示せず)が、まず、ソースモジュール1101からロードロック1121にウエハを取り出す。搬送モジュール1103内のウエハ搬送装置(一般に、ロボットアームユニット)が、ロードロック1121から搬送モジュール1103上に取り付けられたモジュールに、そして、モジュールの間で、ウエハを移動させる。
【0086】
特定の実施形態において、システムコントローラ1129が、蒸着中の処理条件を制御するために用いられる。コントローラは、通例、1または複数のメモリデバイスと、1または複数のプロセッサとを備える。プロセッサは、CPUまたはコンピュータ、アナログおよび/またはデジタル入力/出力接続、ステッパモータコントローラボードなどを備えてよい。
【0087】
コントローラは、蒸着装置の動作すべてを制御してよい。システムコントローラは、タイミング、ガスの混合、チャンバ圧、チャンバ温度、ウエハ温度、用いられる場合には高周波(RF)電力レベル、ウエハチャックまたはペデスタルの位置、ならびに、特定の処理の他のパラメータを制御するための一連の命令を含むシステム制御ソフトウェアを実行する。コントローラに関連するメモリデバイスに格納された他のコンピュータプログラムが、いくつかの実施形態において用いられてもよい。
【0088】
通例は、コントローラに関連したユーザインターフェースが存在する。ユーザインターフェースは、表示スクリーン(装置および/または処理条件のグラフィカルソフトウェアディスプレイ)と、ポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクなどのユーザ入力デバイスと、を含みうる。
【0089】
システム制御ロジックは、任意の適切な方法で構成されてよい。一般に、ロジックは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで設計または構成されうる。駆動回路を制御するための命令は、ハードコードされてもよいし、ソフトウェアとして提供されてもよい。命令は、「プログラミング」によって提供されうる。かかるプログラミングは、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路、および、ハードウェアとして実装された特定のアルゴリズムを有する他のデバイス内にハードコードされたロジックなど、任意の形態のロジックを含むと理解される。また、プログラミングは、汎用プロセッサ上で実行できるソフトウェア命令またはファームウェア命令を含むと理解される。システム制御ソフトウェアは、任意の適切なコンピュータ読み取り可能プログラム言語でコードされてよい。あるいは、制御ロジックはコントローラにハードコードされてもよい。これらの目的で、特定用途向け集積回路、プログラム可能論理デバイス(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイすなわちFPGA)などが用いられてもよい。以下では、「ソフトウェア」または「コード」が利用される場合、機能的に同等のハードコードされたロジックが代わりに利用されうる。
【0090】
処理手順内の蒸着処理およびその他の処理を制御するためのコンピュータプログラムコードは、例えば、アセンブリ言語、C、C++、パスカル、フォートランなど、任意の従来のコンピュータ読み取り可能なプログラミング言語で書かれうる。コンパイルされたオブジェクトコードまたはスクリプトが、プラグラム内に特定されたタスクを実行するために、プロセッサによって実行される。
【0091】
制御パラメータは、例えば、処理ガスの組成および流量、温度、圧力、プラズマ条件(RF電力レベルおよび低周波RF周波数など)、冷却ガス圧、ならびに、チャンバ壁の温度などの処理条件に関連する。これらのパラメータは、レシピの形態でユーザに提供され、ユーザインターフェースを用いて入力されうる。
【0092】
処理を監視するための信号が、システムコントローラのアナログおよび/またはデジタル入力接続によって提供されてよい。処理を制御するための信号が、蒸着装置のアナログおよびデジタル出力接続で出力される。
【0093】
システムソフトウェアは、多くの異なる方法で設計または構成されうる。例えば、本発明の蒸着処理を実行するのに必要なチャンバ構成要素の動作を制御するために、様々なチャンバ構成要素サブルーチンまたは制御オブジェクトが書かれてよい。このためのプログラムまたはプログラムセクションの例は、基板配置コード、処理ガス制御コード、圧力制御コード、ヒータ制御コード、および、プラズマ制御コードを含む。
【0094】
いくつかの実施例において、コントローラ1129は、システムの一部であり、システムは、上述の例の一部であってよい。かかるシステムは、1または複数の処理ツール、1または複数のチャンバ、処理のための1または複数のプラットフォーム、および/または、特定の処理構成要素(ウエハペデスタル、ガスフローシステムなど)など、半導体処理装置を備えうる。これらのシステムは、半導体ウエハまたは基板の処理前、処理中、および、処理後に、システムの動作を制御するための電子機器と一体化されてよい。電子機器は、「コントローラ」と呼ばれてもよく、システムの様々な構成要素または副部品を制御しうる。コントローラ1129は、処理要件および/またはシステムのタイプに応じて、処理ガスの供給、温度設定(例えば、加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、いくつかのシステムにおける高周波(RF)発生器設定、RF整合回路設定、周波数設定、流量設定、流体供給設定、位置および動作設定、ならびに、ツールおよび他の移動ツールおよび/または特定のシステムと接続または結合されたロードロックの内外へのウエハ移動など、本明細書に開示の処理のいずれを制御するようプログラムされてもよい。
【0095】
概して、コントローラは、命令を受信する、命令を発行する、動作を制御する、洗浄動作を可能にする、エンドポイント測定を可能にすることなどを行う様々な集積回路、ロジック、メモリ、および/または、ソフトウェアを有する電子機器として定義されてよい。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態のチップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または、プログラム命令(例えば、ソフトウェア)を実行する1または複数のマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを含みうる。プログラム命令は、様々な個々の設定(またはプログラムファイル)の形態でコントローラに伝えられて、半導体ウエハに対するまたは半導体ウエハのための特定の処理を実行するための動作パラメータ、もしくは、システムへの動作パラメータを定義する命令であってよい。動作パラメータは、いくつかの実施形態において、ウエハの1または複数の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、および/または、ダイの加工中に1または複数の処理工程を達成するために処理エンジニアによって定義されるレシピの一部であってよい。
【0096】
コントローラ1129は、いくつかの実施例において、システムと一体化されるか、システムに接続されるか、その他の方法でシステムとネットワーク化されるか、もしくは、それらの組み合わせでシステムに結合されたコンピュータの一部であってもよいし、かかるコンピュータに接続されてもよい。例えば、コントローラ1129は、「クラウド」内にあってもよいし、ウエハ処理のリモートアクセスを可能にできるファブホストコンピュータシステムの全部または一部であってもよい。コンピュータは、現在の処理のパラメータを変更する、現在の処理に従って処理工程を設定する、または、新たな処理を開始するために、システムへのリモートアクセスを可能にして、製造動作の現在の進捗を監視する、過去の製造動作の履歴を調べる、もしくは、複数の製造動作からの傾向または性能指標を調べうる。いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えば、サーバ)が、ネットワーク(ローカルネットワークまたはインターネットを含みうる)を介してシステムに処理レシピを提供してよい。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインターフェースを備えてよく、パラメータおよび/または設定は、リモートコンピュータからシステムに通信される。一部の例において、コントローラは、データの形式で命令を受信し、命令は、1または複数の動作中に実行される処理工程の各々のためのパラメータを指定する。パラメータは、実行される処理のタイプならびにコントローラがインターフェース接続するまたは制御するよう構成されたツールのタイプに固有であってよいことを理解されたい。したがって、上述のように、コントローラは、ネットワーク化されて共通の目的(本明細書に記載の処理および制御など)に向けて動作する1または複数の別個のコントローラを備えることなどによって分散されてよい。かかる目的のための分散コントローラの一例は、チャンバでの処理を制御するために協働するリモートに配置された(プラットフォームレベルにある、または、リモートコンピュータの一部として配置されるなど)1または複数の集積回路と通信するチャンバ上の1または複数の集積回路である。
【0097】
限定はしないが、システムの例は、プラズマエッチングチャンバまたはモジュール、蒸着チャンバまたはモジュール、スピンリンスチャンバまたはモジュール、金属メッキチャンバまたはモジュール、洗浄チャンバまたはモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバまたはモジュール、CVDチャンバまたはモジュール、ALDチャンバまたはモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはモジュール、イオン注入チャンバまたはモジュール、トラックチャンバまたはモジュール、ならびに、半導体ウエハの加工および/または製造に関連するかまたは利用されうる任意のその他の半導体処理システムを含みうる。
【0098】
上述のように、ツールによって実行される1または複数の処理工程に応じて、コントローラは、他のツール回路またはモジュール、他のツール構成要素、クラスタツール、他のツールインターフェース、隣接するツール、近くのツール、工場の至る所に配置されるツール、メインコンピュータ、別のコントローラ、もしくは、半導体製造工場内のツール位置および/またはロードポートに向かってまたはそこからウエハのコンテナを運ぶ材料輸送に用いられるツール、の内の1または複数と通信してもよい。
【0099】
コントローラ1129は、様々なプログラムを備えてよい。 基板配置プログラムは、ペデスタルまたはチャック上に基板をロードするため、および、基板とチャンバの他の部品(ガス流入口および/またはガスターゲットなど)との間の間隔を制御するために用いられるチャンバ構成要素を制御するためのプログラムコードを備えてよい。処理ガス制御プログラムは、ガス組成および流量を制御するため、ならびに、任意選択的に、チャンバ内の圧力を安定させるために蒸着の前にチャンバ内にガスを流すためのコードを備えてよい。圧力制御プログラムは、例えば、チャンバの排気システムのスロットルバルブを調節することにより、チャンバ内の圧力を制御するためのコードを備えてよい。ヒータ制御プログラムは、基板を加熱するために用いられる加熱ユニットへの電流を制御するためのコードを備えてよい。あるいは、ヒータ制御プログラムは、ウエハチャックへの熱伝導ガス(ヘリウムなど)の供給を制御してもよい。
【0100】
蒸着中に監視されうるチャンバセンサの例は、マスフローコントローラ、圧力センサ(マノメータなど)、ならびに、ペデスタルまたはチャック内に配置された熱電対を含む。適切にプログラムされたフィードバックアルゴリズムおよび制御アルゴリズムが、所望の処理条件を維持するためにこれらのセンサからのデータと共に用いられてよい。
【0101】
以上、単一チャンバまたはマルチチャンバの半導体処理ツールにおける本開示の実施形態の実施について説明した。
【0102】
以上、単一チャンバまたはマルチチャンバの半導体処理ツールにおける開示された実施形態の実施について説明した。本明細書に記載の装置および処理は、例えば、半導体デバイス、ディスプレイ、LED、光起電力パネルなどの加工または製造のために、リソグラフィパターニングツールまたは処理と共に用いられてもよい。通例、必ずしもそうとは限らないが、かかるツール/処理は、共通の製造施設で一緒に利用または実行されている。薄膜のリソグラフィパターニングは、通例、以下の工程の一部または全部を含み、各工程は、複数の可能なツールで提供される:(1)スピンオンまたはスプレーオンツールを用いて、ワークピース(すなわち、基板)上にフォトレジストを塗布する工程;(2)ホットプレートまたは炉またはUV硬化ツールを用いて、フォトレジストを硬化させる工程;(3)ウエハステッパなどのツールで可視光またはUVまたはX線にフォトレジストを暴露させる工程;(4)ウェットベンチなどのツールを用いて、選択的にレジストを除去することによってパターニングするためにレジストを現像する工程;(5)ドライエッチングツールまたはプラズマ支援エッチングツールを用いて、下層の膜またはワークピースにレジストパターンを転写する工程;ならびに、(6)RFプラズマまたはマイクロ波プラズマレジストストリッパなどのツールを用いて、レジストを除去する工程。
【0103】
結び
理解を深めるために、本実施形態について、ある程度詳しく説明したが、添付の特許請求の範囲内でいくらかの変更および変形を行ってもよいことは明らかである。本発明の処理、システム、および、装置を実施する多くの他の方法が存在することに注意されたい。したがって、本実施形態は、例示的なものであって、限定的なものではないとみなされ、実施形態は、本明細書に示した詳細に限定されない。本開示は、以下の形態により実現されてもよい。
[形態1]
方法であって、
タングステン(W)含有層を基板上に提供する工程と、
モリブデン(Mo)含有層を前記W含有層上に蒸着させる工程と、
を備える、方法。
[形態2]
形態1に記載の方法であって、前記W含有層は、WCN層である、方法。
[形態3]
形態1の方法であって、前記W含有層は、W核形成層である、方法。
[形態4]
形態1ないし3のいずれかに記載の方法であって、前記W含有層は、1または複数の塩化タングステン前駆体から蒸着される、方法。
[形態5]
形態1ないし3のいずれかに記載の方法であって、前記Mo含有層は、1(原子)%未満の不純物を有するMo層である、方法。
[形態6]
形態1ないし3のいずれかに記載の方法であって、さらに、前記Mo含有層を熱アニールする工程を備える、方法。
[形態7]
形態1ないし3のいずれかに記載の方法であって、前記Mo含有層は、還元剤と、六フッ化モリブデン(MoF6)、五塩化モリブデン(MoCl5)、二塩化二酸化モリブデン(MoO2Cl2)、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)、および、ヘキサカルボニルモリブデン(Mo(CO)6)から選択されたMo含有前駆体とに、前記W含有層を暴露させることによって蒸着される、方法。
[形態8]
形態7に記載の方法であって、前記Mo含有前駆体への暴露中の基板温度は、550℃未満である、方法。
[形態9]
形態7に記載の方法であって、前記基板は、第1基板温度で前記還元剤に暴露され、第2基板温度で前記Mo含有前駆体に暴露され、前記第1基板温度は、前記第2基板温度よりも低い、方法。
[形態10]
形態9に記載の方法であって、前記還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である、方法。
[形態11]
方法であって、
第1基板温度で、基板を収容する処理チャンバに還元剤ガスを流して、前記基板上に共形還元剤層を形成する工程と、
第2基板温度で前記共形還元剤層をモリブデン含有前駆体に暴露させて、前記還元剤層をモリブデンに変換する工程と、
を備える、方法。
[形態12]
形態11に記載の方法であって、前記第1基板温度は、前記第2基板温度より低い、方法。
[形態13]
形態11または12に記載の方法であって、前記還元剤は、ホウ素含有還元剤とシリコン含有還元剤との混合物である、方法。
[形態14]
形態11または12に記載の方法であって、前記第1基板温度は400℃以下であり、前記第2基板温度は500℃以上である、方法。
[形態15]
形態11または12に記載の方法であって、さらに、前記モリブデンをアニールする工程を備える、方法。
[形態16]
方法であって、
還元剤をパルス供給する工程であって、前記還元剤は、ホウ素(B)含有、シリコン(Si)含有、または、ゲルマニウム(Ge)含有である、工程と、
Mo含有前駆体をパルス供給する工程であって、
前記Mo含有前駆体は、前記還元剤または前記還元剤の生成物によって還元されて、B、Si、および、Geの内の1以上を含む多成分タングステン含有膜を前記基板上に形成する、工程と、
を備える、方法。
[形態17]
形態16に記載の方法であって、前記多成分タングステン含有膜は、5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geを含み、前記5%~60%(原子%)のB、Si、または、Geは、前記還元剤によって供給される、方法。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11