(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリル含む医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4745 20060101AFI20230210BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230210BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230210BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230210BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230210BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230210BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230210BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230210BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230210BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230210BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230210BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
A61K31/4745
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/38
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020507579
(86)(22)【出願日】2018-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071545
(87)【国際公開番号】W WO2019030302
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-06
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】シェラー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムス,メイク
(72)【発明者】
【氏名】クーバス,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイガント,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,ミカエル
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-536256(JP,A)
【文献】米国特許第9000153(US,B2)
【文献】Tu Van Duong, et al.,Expert Opinion on Drug Delivery,2016年,Vol.13, Issue 12,pp.1681(1)-1694(14).
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4745
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/04
A61K 47/12
A61K 47/14
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/38
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリル、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体を、ポリマーマトリックス中に含む、または、これからなる、
ここでポリマーマトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナートおよび/またはセルロースアセタートフタラートを含む、または、これからなる、複合物。
【請求項2】
固体分散体は、固溶体である、請求項1に記載の複合物。
【請求項3】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、複合物の総重量に基づいて、ポリマーマトリックス中に、4から50までのパーセント(w/w
)の範囲内
で存在する、請求項1
または2に記載の複合物。
【請求項4】
複合物は、1μm~300μ
mの範囲のd
50値によって特徴づけられる平均粒子サイズを有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の複合物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物を含む造粒物であって、造粒物は、1000μm以
下の間のd
50値によって特徴づけられる粒子サイズを有する、前記造粒物。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物または請求項
5に記載の造粒物を含む医薬製剤。
【請求項7】
経口投与のための医薬製剤である、請求項
6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
即時放出製剤である、請求項
6または
7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
複合物および任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含むカプセルである、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
カプセルである、請求項
9に記載の医薬製剤であって、カプセルは、カプセルに含有される全ての材料の総重量に基づいて、40~100%(w/w)の請求項1~8のいずれか一項に記載の複合物;および0~60%(w/w)の少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形
剤から選択される、を含有する、前記医薬製剤。
【請求項11】
請求項
6~
8のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、充填剤、崩壊剤、流動促進剤および潤滑剤から選択される、1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を任意に含む錠剤である、前記医薬製剤。
【請求項12】
請求項
11に記載の医薬製剤であって、錠剤の総重量に基づいて、以下:
i)25~100%(w/w)の請求項1~7のいずれか一項に記載の複合物;
ii)0~45%(w/w)の充填剤;
iii)0~20%(w/w)の崩壊剤;
iv)0~5%(w/w)の潤滑剤;
v)0~7,5%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~20%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤
を含む錠剤である、前記医薬製剤。
【請求項13】
請求項
11または
12に記載の医薬製剤であって、錠剤の総重量に基づいて、以下:
i)60~80%(w/w)の請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物;
ii)10~30%(w/w)の充填剤;
iii)4~15%(w/w)の崩壊剤;
iv)0~3%(w/w)の潤滑剤;
v)0~5%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~10%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤
を含む錠剤である、前記医薬製剤。
【請求項14】
請求項
11、
12または
13のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、錠剤の総重量に基づいて、以下:
i)65~75%(w/w)の請求項1~7のいずれか一項に記載の複合物;
ii)15~25%(w/w)の充填剤;
iii)5~10%(w/w)の崩壊剤;
iv)0.25~2%(w/w)の潤滑剤;
v)0.5~2%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~10%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤
を含む錠剤である、前記医薬製剤。
【請求項15】
請求項
11、
12、
13または
14に記載の医薬製剤であって、充填剤は、ラクトースおよび/または微結晶性セルロースであり、崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースならびにそれらの塩および誘導体、とくにクロスカルメロースナトリウムから選択され、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびフマル酸ステアリルナトリウムから選択され、および/または、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素およびその誘導体から選択される、前記医薬製剤。
【請求項16】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物を調製するための方法であって、該方法は、スプレー乾燥、共沈または凍結乾
燥を含む、前記方法。
【請求項17】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物を調製するための方法であって、該方法は、以下:
(a)3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルおよび形成されるポリマーマトリックスのポリマー、ならびに、任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を、溶媒中に溶解すること、
(b)複合物を形成するために、ステップ(a)によって調製された溶液をスプレー乾燥すること、ならびに
(c)任意に複合物を乾燥すること
を包含する、前記方法。
【請求項18】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物を含む、錠剤である医薬製剤を調製するための方法であって、以下:
(a)複合物を形成するために、請求項1
6または
17に記載の方法を行うこと;
(b)複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤の混合物を任意に造粒すること;
(c)複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を混合すること;
(d)ステップ(b)によって調製された混合物またはステップ(c)によって調製された造粒物を錠剤化すること;ならびに
(e)任意にステップ(d)によって調製された錠剤を薄膜コーティングすること
を含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の複合物を含む、カプセルである医薬製剤を調製するための方法であって、以下:
(a)複合物を形成するために、請求項1
6または
17に記載の方法を行うこと;
(b)複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を任意に混合するこ
とによって得られた混合物を任意に造粒すること;
(c)ステップ(b)によって調製される混合物または造粒物またはステップ(a)によって調製される複合物をカプセルに充填すること
を含む、前記方法。
【請求項20】
任意に放射線治療と組み合わせた、がんの処置における使用のための、請求項
6~1
5のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項21】
処置がさらに化学治療を含む、請求項2
0に記載のがんの処置における使用のための医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルの固体医薬製剤、および、これを製造する方法、ならびに、その医療用途に関する。
【0002】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、イミダゾ[4,5c]キノリンのファミリーの1つのメンバーとして、WO 2012/028233 A1の例36として開示されており、これは、有用な薬理学的な特性を有することが見い出されている。それは、高度に強力であり(IC50<1nM)および血管拡張性失調症変異(Ataxia telangiectasia mutated; ATM)キナーゼの選択的インヒビターであり、これは、DNA二重鎖切断修復およびチェックポイント制御に重要なシグナリングキナーゼである。それにより、小分子インヒビターは、放射線治療などのDNA損傷剤およびトポテカン(登録商標)(ノバルティス)などのDSB誘導性細胞傷害剤の効果を相乗的に増強する。したがって、それは、とりわけ、抗がん剤および/または電離放射線にがん細胞を感作させるために使用され得る。
【0003】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、水および生物関連(biorelevant)媒体において、極めて低い可溶性を有する。詳細には、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、0.25μg/mLの空腹時における人工腸液(Fasted Simulated Intestinal Fluid (FaSSIF))および1μg/mLの摂食時における人工腸液(FedState Simulated Intestinal Fluid (FeSSIF))において可溶性を有する。かかる低可溶性に関わらず、100mgを超えるかなり高用量が、治療におけるその使用に必要とされる。>100mgのヒト推定有効用量により、化合物は、少なくとも100,000の用量/可溶性比率を有し、およびDCS IIbとして分類され得る(ButlerおよびDressman, 2010)ので、その治療に必要なバイオアベイラビリティを提供する医薬製剤は、達成するのが困難である。加えて、その結果得られる剤形のサイズは、経口投与に好適である必要がある。
【0004】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、再結晶化する傾向が強く、およびまた、解重合下で融解する。よって、非安定化した純粋なアモルファスの化合物の調製は困難である。加えて、この化合物についてのアモルファス状態は、極めて高い再結晶傾向に起因して、かなり不安定である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、充分なバイオアベイラビリティを提供するだろう3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルの剤形、および、その製造のための好適な公的なプロセスを提供することである。
【0006】
経口溶液、自己マイクロ乳化剤送達系(self-micro-emulsifying drug delivery system SMEDDS)などの治療におけるその使用のために必要な量で、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルのバイオアベイラビリティを提供する好適な医薬製剤を提供するための様々な試みは失敗している。例えば、治療のために充分な量でAPIを提供するために患者に投与される得る経口溶液は、高濃度のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加することなく得ることができず、これは、毒性学的観点から許容されない。さらに、SMEDDSまたはエマルションは、化合物の試験される油中の低い溶解性に起因して調製することができない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本発明は、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリル、またはその薬学的に許容し得る塩の固体分散体を、ポリマーマトリックス中に含む複合物に関する。
【0008】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、以下に説明されるとおりである:
【化1】
【0009】
任意の形態の3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、以降、「化合物」としても称される。
【0010】
本発明はさらに、上記複合物を含む医薬製剤、複合物を調製する方法、及び、医薬製剤を調製する方法、並びに、がんの処置における複合物夫々の医薬製剤の、単独または放射線治療および/または化学治療と組み合わせた、使用に関する。
【0011】
用語「複合物」は、本明細書に使用されるとき、活性医薬成分(API)および少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤を含む、3次元固体医薬製剤を意味する。この「複合物」は、例えば錠剤などの他の医薬製剤に加工されてもよいが、何らの修飾なしで、患者に直接投与されてもよい。
【0012】
用語「ポリマーマトリックス」は、本明細書に使用されるとき、1以上のポリマーによって形成される3次元固体を説明する。本発明の複合物において、ポリマーマトリックスは、化合物を包埋するために使用される。さらに、例えば、1以上のさらなるAPIまたは他の賦形剤などの化合物は、かかるポリマーマトリックス中に、溶解または分散などのように組み込むことができる。
【0013】
一側面において、本発明は、ポリマーマトリックス中に化合物またはその薬学的に許容し得る塩の固体分散体を含む複合物を提供する。いくつかの態様において、複合物は、固体分散体ならびに1以上の薬学的に許容し得る賦形剤(実例として充填剤(例として多糖、二糖、多価アルコール類)、崩壊剤(例としてポリビニルポリピロリドン、修飾された多糖類)、非イオン性およびイオン性界面活性剤(例としてポロクサマー、ラウリル硫酸ナトリウム)、可塑剤(例としてポリアルキレングリコール、トリアセチン、クエン酸エステル類およびフタル酸エステル類)および無機吸収剤(例としてシリカ)から選択される)を含んでいてもよい。
【0014】
用語「固体分散体」は、本明細書に使用されるとき、本発明に従うポリマーマトリックスである、分散媒体中に分散または分配される薬物物質を指す。薬物物質およびポリマーの物理的な状態の可能性のある組み合わせに基づいて、薬物物質は、結晶性またはアモルファスのいずれかであってもよく、およびポリマーマトリックスはまた、結晶およびアモルファスであってもよく、4つの可能性のある組合せ:結晶性薬物物質-結晶性ポリマー(固体懸濁液);アモルファスの薬物物質-アモルファスのポリマー;結晶性薬物-アモルファスのポリマー;およびアモルファスの薬物-結晶性ポリマーを生じる。
【0015】
本明細書における好ましい態様は、ポリマーマトリックス中のアモルファスの薬物物質に関する。アモルファスの薬物物質は、アモルファスのポリマーマトリックス中に、アモルファス(マイクロ)粒子の形態で分散され得、これは次いで、アモルファス懸濁液として称されるか、または、それは、固溶体を形成するために、ポリマーまたはポリマーマトリックス中に分子的に分散されてもよい。本発明の好ましい態様に従って、化合物およびポリマーの両方が、アモルファス状態で存在する。
【0016】
用語「固溶体」は、本明細書に使用されるとき、薬物物質のごく一部が溶液からでてくるかまたは未溶解である態様を依然として包含するべきである。ただし、少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%および最も好ましくは少なくとも約95%または少なくとも約99%の薬物物質(体積による)は、分子的に分散された状態で存在すべきである。かかる固溶体において、薬物物質の個々の物理的な特性は、もはや認識可能ではない。
【0017】
用語「約」は、本明細書に使用されるときは、明示的に示されるかどうかに関わらず、例えば、整数、分数、およびパーセンテージを含む、数値を指す。用語「約」は、一般には、当業者が、記載された値と等価であると考えるだろう(例として、同じ関数または結果を有する)数値範囲(例として、記載された値の+/- 1~3%)を指す。いくつかの場合において、用語「約」は、最も近い有効数字に四捨五入された数値を含み得る。
【0018】
好ましい態様において、本発明に従う複合物は、ポリマーマトリックス中の、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリル、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体からなる。もちろん、それは、単に固体分散体として称されてもよい。
最も好ましくは、固体分散体は、固溶体である。結果的に、本発明はまた、固体分散体が固溶体である複合物に関する。
【0019】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、任意の好適な塩形態で存在してもよいが、それは、最も好ましくは、塩形態ではなく、その遊離形態で存在する。
薬学的に許容し得る塩は、WO 2012/028233 A1の開示において言及されるものを含み、これは、その全体が本明細書に参考として援用される。かかる塩は、例えば、シュウ酸塩またはマレイン酸塩を含む。
【0020】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルまたはその薬学的に許容し得る塩の量または重量または重量パーセントへの参照は、本明細書で他に特定されない限り、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルの無水遊離形態を指すと受け取られるべきである。
【0021】
固体分散体を形成するために、ポリマーマトリックスを形成するポリマーまたはポリマー(複数)は、一般に、とくに溶融造粒または溶融押出プロセスで、または、溶媒中に溶解されて噴霧される場合、とくにスプレー乾燥プロセスで、薬物物質を包埋することができるポリマーである。代わりに、固体分散体はまた、共沈プロセスによって調製されてもよい。
【0022】
最も好ましくは分子レベルで、薬物物質を包埋することができる、および、その溶解を強化することができる任意のポリマーは、本発明の文脈において使用され得る。したがって、親水性ポリマーが好ましい。とくに好ましいのは、カルボキシル基などのイオン基を含有し、および、約pH5~約pH6.2の範囲のあるpH値未満で不溶性およびこのpH値を超えて可溶性であるポリマー、または両親媒性のポリマーである。結果的に、本発明の好ましい態様は、カルボキシル基などのイオン基を含有し、および、約pH5~約pH6.2の範囲のあるpH値未満で不溶性およびこのpH値を超えて可溶性であるポリマーを含むかまたはこれからなるポリマーマトリックス、あるいは、両親媒性ポリマーを含むかまたはこれからなるポリマーマトリックスに関する。
【0023】
用語「両親媒性ポリマー」は、本明細書に使用されるとき、別個の親水性および疎水性部分を有するポリマー材料を意味する。「親水性(の)」は、典型的には、水および他の極性分子を分子内相互作用する部分を意味する。「疎水性(の)」は、典型的には、水性媒体ではなく、油、脂肪または他の非極性分子と優先的に相互作用する部分を意味する。
【0024】
pH5~pH6.2の範囲のあるpH値未満で不溶性およびこのpHを超えて可溶性であり、および、複合物のポリマーマトリックスを形成するのに好適なポリマーの例は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシナート(HPMCAS)、セルロースアセタートフタラート(CAP)、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、セルロースアセタートトリメリタート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートトリメリタート(HPMCAT)、ポリ(メタクリル酸-コ-エチルアクリラート)(オイドラギット(登録商標)L100-55)およびポリ(メタクリル酸-コ-メタクリル酸メチル)(オイドラギット(登録商標)Lおよびオイドラギット(登録商標)Sであり、ここで、HPMCP、HPMCAS、CAP、PVAP、CATおよびHPMCATが、好ましい。
【0025】
好ましい両親媒性ポリマーの例は、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(PVAc-PVCap-PEG)、(Soluplus(登録商標))である。非イオン性である親水性ポリマーの例は、ビニルピロリドン-ビニルアセタートコポリマー(PVP-VA)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。結果的に、本発明はまた、ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート(HPMCAS)、セルロースアセタートフタラート(CAP)、ポリビニルアセタートフタラート(PVAP)、セルロースアセタートトリメリタート(CAT)またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートトリメリタート(HPMCAT)またはポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(PVAc-PVCap-PEG)である、複合物に関する。
【0026】
とくに好ましいのは、セルロースアセタートフタラートである。結果的に、本発明の特に好ましい態様は、ポリマーマトリックスがセルロースアセタートフタラートを含むかまたはこれからなる複合物に関する。セルロースアセタートフタラートはまた、Cellacefate NFまたはセルロースアセタートフタラートと命名され、USP/NF、EP、JPなどの様々の薬局方で特定されており、例えば、イーストマンケミカルカンパニーから入手可能である。
【0027】
本発明に従う、固体分散体中のポリマーマトリックスは、1を超えるマトリックス形成ポリマーを含み得る。好ましい一態様において、しかしながら、ポリマーマトリックスは、1のみのポリマーを含む。加えて、ポリマーマトリックスは、可塑剤、可溶化剤、pH調整剤、抗酸化剤および浸透圧原(osmogen)などの、1以上のさらなる薬学的賦形剤を含み得る。
【0028】
当該技術分野において知られている例示の可塑剤は、ポリアルキレングリコール、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸一水和物、トリアセチン、ジオクチルフタラート、ジエチルフタラート、セバシン酸ジブチル、ひまし油およびそれらの誘導体、例としてPEG-40水素化ひまし油を含む。
【0029】
例示の可溶化剤は、例としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例としてコリフォール(Kolliphor)(登録商標)P188、P338、P407)、ポリソルベート(例としてTween(登録商標))、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む。例示のpH調整剤は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、炭酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルギニン、グリシン、グリシルグリシン、ヒスチジンおよびリシンを含む。
【0030】
例示の抗酸化剤は、アスコルビン酸およびその塩および誘導体、ブチル化ヒドロキシトルエン、ビタミンE、トコフェリルポリエチレングリコールサクシナート、ブチル化ヒドロキシアニソール、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、メチオニンおよびリポ酸を含む。
【0031】
例示の浸透圧原は、pH調整剤下で言及されたような塩、および、さらに、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛の塩および塩化物、臭化物、ならびに糖類(例としてグルコース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、キシリトール、イノシトール)および尿素を含む。
【0032】
いくつかの例示の態様において、さらなる薬学的に許容し得る賦形剤は、ポリマーマトリックスを形成するためのポリマーとすでに混合して提供される。しかしながら、「ポリマー」は、本明細書に使用されるときは、ポリマーの添加剤とのブレントとして理解されるべきではなく、かかるポリマーを指すべきである。
【0033】
好ましい一態様において、固体分散体、より好ましくは固溶体は、ポリマーマトリックス中の薬物物質のみからなり、これは、任意のさらなる添加剤を含まない1ポリマーによって形成される(2構成要素系)。
【0034】
本発明に従う固体分散体は、実例として、溶融プロセス、例としてホットメルトエクストルージョンまたは溶融造粒によって、または溶媒ベースのプロセス、例としてスプレー乾燥、共沈凍結乾燥または溶媒鋳造(solvent casting)によって得ることができる。分散体夫々の複合体の最も有益な特性を提供することが見い出されているため、共沈、スプレー乾燥、凍結乾燥および溶媒蒸発などの溶媒ベースのアプローチは、好ましい。具体的に好ましいのは、スプレー乾燥である。
【0035】
本発明に従う複合物の好適な態様において、とくに固体分散体自体において、ポリマーマトリックス中の化合物の濃度は、複合物の総重量に基づいて、4から50までのパーセント(w/w)、好ましくは10から30までのパーセント(w/w)、より好ましくは15から25までのパーセント(w/w)、および最も好ましくは約20パーセント(w/w)の範囲である。結果的に、本発明はまた、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルが、ポリマーマトリックス中に、複合物の総重量に基づいて、4から50までのパーセント(w/w)、好ましくは10から30までのパーセント(w/w)、より好ましくは15から25までのパーセント(w/w)、および最も好ましくは約20パーセント(w/w)の範囲で存在する複合物に関する。
【0036】
とくに好ましい態様において、固体分散体は、約20%(w/w)の3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルおよび約80%(w/w)のポリマーマトリックス(好ましくはさらに添加剤を加えることなく、1のみのポリマーによって構成される)からなる。
【0037】
その産生プロセスに依存して、それによって調製される複合物は、患者によって直接使用されるのに適切でないかもしれないし、および、カプセルまたは錠剤などの医薬製剤への移送を可能にするさらなる下流の加工(processing)を必要とする。例えば、溶融押出は、ストランドを生じ、これは、より小さい単位に切断または製粉される必要があり、および、スプレー乾燥は、錠剤の調製またはカプセルへの充填の前に、さらなる造粒および小型化を必要とする細かすぎる小粒子を生じ得る。
【0038】
スプレー乾燥によって産生される場合、得られる複合物の粒子サイズは、大抵1μm~300μm、好ましくは20μm~200μmおよびより好ましくは30~100μmのd50値によって特徴づけられる範囲内である。したがって、本発明の一態様はまた、1μm~300μm、好ましくは20μm~200μmおよびより好ましくは30~100μmの範囲のd50値によって特徴づけられる平均粒子サイズを有する複合物を指す。
【0039】
粒子サイズが小さすぎる場合、それは、造粒またはローラーコンパクター(roller compaction)などの適切な技法を使用して増大させ得る。かかる技法は、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、300μm以下、実例として200μmと300μmとの間のd50値によって特徴づけられる粒子サイズを有し得る造粒物(granulate)を調製するために使用される。結果的に、本発明はまた、複合物を含む造粒物に関し、かかる造粒物は、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、300μm以下、実例として200μmと300μmとの間のd50値によって特徴づけられる粒子サイズを有する。
【0040】
一般に、より小さい粒子サイズは、より大きい表面積に関連し、これは、溶解の観点で有益であり得るが、元々の粒子の機械的な減少(これは、熱の生成にしばしば関連し、および従って、密度などの粒子の他の物理的パラメーターに負の影響を有し得る)を典型的に必要とするが、マトリックス内の薬物物質の分散、化合物の結晶化度および純度レベルさえもまた必要とする。本明細書で参照されるd50値は、マルバーンマスターサイザー2000(乾式法;マイクロ容量トレイ;試料量200mg;分散性空気圧0.1バール;供給速度50%;測定時間4s;1~5%の不明瞭化(obscuration);66の分散鋼球2mmの使用;MIE理論を用いて評価した測定値)でレーザー回折によって測定された。本明細書で参照されるd50値は、この直径の上半分及び下半分の分布を分けるマイクロメートルのサイズである。d50は、体積分布についての中央値であり、およびしばしば、Dv50(またはDv0.5)と命名される。
【0041】
用語「スプレー乾燥」は、本明細書に使用されるとき、原則として、溶媒抽出プロセスを指す。得られる生成物の構成要素は、液体中に溶解/分散され、および次いで、例えば蠕動ポンプを使用することによって、スプレー乾燥機の噴霧器に供給される。好適な噴霧器(これは、液体の噴霧に使用され得る)は、ノズルまたは回転ディスクを含む。ノズルを用いて、噴霧は、圧縮されたガスまたは加圧された液体の作用に起因して生じ得るが、回転ディスクの場合には、噴霧は、ディスクの迅速な回転に起因して生じる。両方の場合に、噴霧は、液体の小さな液滴への分裂を導き、溶媒は、エアロゾル液滴から抽出され、および、例えば溶媒トラップへの排気管を通って排出される。
【0042】
用語「共沈」は、本明細書に使用されるとき、一般には、共通の溶液から2以上の固体構成要素(例として、ポリマー担体およびAPI)を一緒に沈殿させるプロセスを指す。好適な溶媒は、充分な量のポリマーおよびAPIを溶解することができ、および、水性溶媒および有機溶媒の混合物、1の有機溶媒、または、1を超える有機溶媒の混合物である。水性溶媒は、水および緩衝化溶液を含む。化合物の低い水溶性に起因して、水性溶媒および有機溶媒の混合物中に存在する水性溶媒は、かなり少量であり、好ましくは約0~約20体積%の範囲の量である。使用され得る好適な有機溶媒は、これらに限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールなどのアルコールを含む。他の有機溶媒は、これらに限定されないがパーフルオロカーボン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド(N,N)、N-メチル-2-ピロリドンおよび他のものを含む。
【0043】
共沈のための好ましい溶媒は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド(N,N)、N-メチル-2-ピロリドンおよびそれらの混合物である。より好ましいのは、ジメチルスルホキシドである。構成要素の沈殿は、同時であってもよいし、または、それに密接に近接する範囲内でもよく、貧溶媒(antisolvent)への溶液の希釈、温度変化、pH変化、溶媒除去、または同種のものによって促進される。好適な貧溶媒は、APIならびにポリマーの両方について極めて低い可溶性を示す必要がある。可能性のある貧溶媒は、水性溶液、有機溶媒およびそれらの混合物である。好ましい貧溶媒は、酸性水溶液、例えば、クエン酸、酢酸、リン酸、塩酸を含有する水溶液である。より好ましいのは、クエン酸である。使用される溶媒は、プロセス条件下で貧溶媒と混和性である必要がある。言及された全ての好ましい溶媒および貧溶媒は、全ての割合で完全に混和性である。共沈は、APIが包埋されおよび当業者に周知である、ポリマーマトリックスからなる粒子の形成を導く。
【0044】
用語「凍結乾燥」は、本明細書に使用されるときは、凍結乾燥のプロセスを指し、これは、材料を凍結すること、および次いで、固相から気相へ直接昇華させるために、材料中の溶媒を凍結させるために周囲の圧力を低下させることを包含する溶媒除去プロセスである。主に脱水のために、すなわち水の除去のために使用されるが、本発明の複合物の調製のために使用され得るので、それはまた、1の有機溶媒、複数の有機溶媒の混合物、または水性溶媒と1以上の有機溶媒との混合物の除去のために使用され得る。ポリマーおよびAPIの溶液の凍結乾燥は、マトリックスの形成を導き、ここで、APIは、形成されたポリマーマトリックス中に包埋されている。
【0045】
用語「溶媒-蒸発」は、本明細書に使用されるときは、溶媒蒸発のプロセスを指し、これは、周囲の圧力を低下させること、および/または、材料中の溶媒を液相から気相へ直接蒸発させることを可能にするために温度を増加させることに起因する、溶媒除去プロセスである。それは、1の有機溶媒、複数の有機溶媒の混合物、または水溶性溶媒と1以上の有機溶媒との混合物の除去のために使用することができる。なぜなら、これらは、本発明の複合物の調製のために使用され得るからである。ポリマーおよびAPIの溶液の溶媒蒸発は、マトリックスの形成を導き、ここで、APIは、形成されるポリマーマトリックス中に包埋されている。
【0046】
原則として、スプレー乾燥または溶媒蒸発のための溶媒は、1の水性溶媒および1の有機溶媒の混合物、1の有機溶媒、または、1を超える有機溶媒の混合物であり得る。水性溶媒は、水および緩衝化溶液を包含する。化合物の低い水溶性に起因して、1の水性溶媒および1の有機溶媒の混合物中に存在する水性溶媒は、かなり少量であり、好ましくは、約0~約20体積%の範囲の量である。使用され得る好適な有機溶媒は、これらに限定されないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールなどのアルコールを含む。他の有機溶媒は、これらに限定されないが、パーフルオロカーボン、アセトン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドおよび他のものを含む。
【0047】
スプレー乾燥または溶媒蒸発のための好ましい溶媒は、1の有機溶媒または少なくとも2の有機溶媒の混合物、とくに2の溶媒の混合物である。より好ましくは、スプレー乾燥のための溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノールまたはそれらの混合物、とくにジクロロメタンおよびメタノールの混合物であり、好ましくは80/20または90/10の重量比である。2の有機溶媒の混合物であるスプレー乾燥または溶媒蒸発のための溶媒において、有機溶媒の各々は、1~約99重量%の範囲の量で存在し得、第1の有機溶媒は、ある量で存在し、第2の有機溶媒は、100%(w/w)に達しない量で存在する。
【0048】
本発明はまた、本発明に従う複合物を含む医薬製剤を提供する。結果的に、本発明はまた、複合物を含む医薬製剤に関する。
【0049】
好ましくは、医薬製剤は、経口投与用である。したがって、本発明はまた、医薬製剤に関し、これは、経口投与のための医薬製剤である。
さらにより好ましくは、医薬製剤は、即時放出製剤である。したがって、本発明はさらに、医薬製剤に関し、これは、即時放出製剤である。
【0050】
例示の態様において、医薬製剤、好ましくは錠剤は、30分以下、例として、20分以下、好ましくは15分以下、およびより好ましくは10分以下の崩壊時間によって特徴づけられる。上記参照される崩壊時間は、USP-NF<701>(USP39-NF34 Page 537;Pharmacopeial Forum: Volume No.34(1) Page 155) Disintegrationに従って、崩壊装置中で、0.01N HCl中37℃で測定される。この装置は、バスケット-ラック(basket-rack)アセンブリ、1000-mLの、浸漬流体のためのローフォーム(low-form)ビーカー、加熱のために恒温配置、および浸漬流体中のバスケットを上昇および下降させるためのデバイスからなる。
【0051】
バスケット-ラックアセンブリは、その軸に沿って垂直に移動し、および、6つのオープンエンドの透明なチューブから構成される;これらのチューブは、2つの平面によって垂直な位置で維持される。下方の平面の表面の下に付着されているのは、織られたステンレススチールワイヤの布地である。個々の研究書において特定されるように、各チューブは、円柱状のディスクを備えている。このディスクは、好適な透明なプラスチック材料から製造されている。バスケットの6つのチューブの各々に1投薬量単位を配置し、およびディスクを追加する。37±2°に維持された浸漬流体としての特定の媒体を使用して、装置を操作する。時間制限の終了時またはあらかじめ設定された間隔で、流体からバスケットを上昇させ、および、錠剤が完全に崩壊したか否かを観察する。
【0052】
好ましい態様において、本発明に従う医薬製剤は、複合物および任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含むカプセルである。カプセル自体は、硬ゼラチンカプセルなどの任意の薬学的に許容し得るカプセルであり得るが、好ましくは容易に溶解可能であるべきである。
【0053】
例示の態様において、医薬製剤は、カプセルであり、これは、充填剤の総重量に基づいて、40~100%(w/w)、実例として少なくとも50%(w/w)、より好ましくは少なくとも70、80、90、95または99%(w/w)の本発明に従う複合物;および0~60%(w/w)、すなわち充填剤の残り(100%(w/w)までの差)からなる充填剤、少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤(好ましくは充填剤、潤滑剤、流動促進剤(glidant)、および無機アルカリ金属塩から選択される)を含有する。言い換えれば、カプセルは、本明細書で与えられるような重量パーセントの計算ではカウントされない。
【0054】
本発明の好ましい態様は、医薬製剤に関し、これは、カプセルであり、カプセルに含有される材料の総重量に基づいて、40~100%(w/w)の複合物;および0~60%(w/w)の少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤(好ましくは、充填剤、崩壊剤および潤滑剤から選択される)を含有する。
【0055】
用語「充填剤」は、本明細書に使用されるときは、医薬製剤を形成するために必要な量の材料を提供することによって、かかる医薬製剤のバルクを増加させる薬剤である。充填剤はまた、錠剤およびカプセルの充填剤の調製において所望される流動特性および圧縮特徴を創出するように機能する。本発明において有用な充填剤は、ソルビトールまたはマンニトール、ズルシトール、キシリトールまたはリビトール、好ましくはソルビトールまたはマンニトール、特に好ましくはマンニトールなどの糖アルコール、グルコース、フルクトース、マンノース、ラクトース、ショ糖またはマルトース、好ましくはラクトース、ショ糖またはマルトース、特に好ましくはラクトースなどの糖、ジャガイモデンプン、イネデンプン、トウモロコシデンプンまたはアルファ化デンプン、好ましくはトウモロコシデンプンまたはアルファ化デンプン、特に好ましくはトウモロコシデンプンなどのデンプン、粉末状セルロースまたは微結晶性セルロース、好ましくは微結晶性セルロースなどのセルロース、またはそれらの混合物であり得る。本発明の具体的に好ましい態様において、医薬製剤は、充填剤として、ラクトースおよび/または微結晶性セルロースを含む。
【0056】
用語「崩壊剤」は、本明細書に使用されるときは、湿った場合に膨張および溶解し、錠剤または造粒物の崩壊を引き起こし、粉々になり活性医薬品を放出する化合物を指す。崩壊剤はまた、化合物が水などの溶媒と接触していることを保証するように機能する。崩壊剤は、錠剤または顆粒等々を崩壊するように作用し、およびよって、液体溶解媒体と接触する際に固体剤形の溶解を強化する。
【0057】
好適な崩壊剤は、クロスポビドン(架橋したポリビニルN-ピロリドン)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの塩および架橋誘導体などのそれらの誘導体、実例としてクロスカルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋したポリマー)、カルボキシメチルグリコール酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、カラゲナン、寒天、およびペクチンを含む。クロスポビドンおよびクロスカルメロースナトリウムは、特に好ましい。崩壊剤は、本発明に従う医薬製剤中に、0~20%(w/w)、好ましくは4~15%(w/w)、特に好ましくは5~10%(w/w)、最も好ましくは約6%(w/w)の割合で存在する。
【0058】
用語「潤滑剤」は、本明細書に使用されるときは、カプセルの充填または錠剤の圧縮機械において、成分が相互に粘着するのを妨げるために使用される不活性成分を指す。潤滑剤は、錠剤化操作の間、錠剤材料および鋳型中のラムのスライド摩擦(sliding friction)を低減し、ラムへの粘着を妨げる。好適な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸のアルカリ土類金属塩、ステアリン酸などの脂肪酸、セチルアルコールまたはステアリルアルコールなどの高級脂肪アルコール、ジパルミトステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ステアリンまたはジベヘン酸グリセリルなどの脂肪、フマル酸ステアリルナトリウムなどのC16~C18アルキル置換ジカルボン酸のアルカリ土類金属塩、水素化(hydrated)ひまし油または水素化(hydrated)綿実油などの水添植物油、タルクなどの鉱物油である。好ましい潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸または潤滑剤としてフマル酸ステアリルナトリウムであり、特に好ましいのは、ステアリン酸マグネシウムである。潤滑剤は、本発明に従う医薬製剤中に、0~5%(w/w)、好ましくは0~3%(w/w)、特に好ましくは0.25~2%(w/w)、最も好ましくは約0.5%(w/w)の割合で存在する。
【0059】
用語「流動促進剤(glidant)」は、本明細書に使用されるときは、粉末または顆粒などの微粒子の流動特徴を改善する、流動補助として使用される不活性成分を指す。本発明において、カプセル化または錠剤化などのさらなるプロセスの間の、複合物または複合物を含有する混合物の流動特徴。本発明における使用のための流動促進剤の非限定的な例は、コロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200, Cab-O-Sil)、タルク、炭酸マグネシウム、およびそれらの組み合わせを含む。流動促進剤は、本発明に従う医薬製剤中に、0~7.5%(w/w)、好ましくは0~2%(w/w)、特に好ましくは0.5~2%(w/w)、最も好ましくは約1%(w/w)の割合で存在する。
【0060】
無機アルカリ金属塩、すなわちアルカリ金属イオンおよび無機酸アニオンから構成される塩は、比較的最近、溶解を増強するのに有用であることが見い出されており、および、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、二水素リン酸ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムが含まれる。塩化ナトリウムは、特に好ましい。
【0061】
例の方法によって示されるとおり、カプセル処方物は、実例として、100、99.5、99、90、80、75、70、60または50%(w/w)、または、これらの値の任意の組み合わせによって包含される任意の範囲の、複合物夫々の固体分散体を含み得る。充填剤の残り(100%(w/w)までの差)は、上に記載されるような、少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤によって構成される。
【0062】
例示の態様において、医薬は、錠剤の総重量に基づいて、以下を含む充填剤を含有するカプセルである:
50~100%(w/w)の本発明に従う複合物;
0~20%(w/w)の崩壊剤;
0~50%(w/w)の充填剤;
0~5%(w/w)の潤滑剤;
0~5%(w/w)の流動促進剤
0~20%(w/w)の無機アルカリ金属塩;および
総量0~20%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤。
【0063】
充填剤は、上記の例示の態様において存在していてもよく、実例として、5~50%(w/w)の範囲で、または7.5~50%(w/w)の範囲、または実例として10~40%(w/w)の範囲で存在してもよい。
無機アルカリ金属塩は、好ましくは上記の例示の態様において存在していてもよく、および2.5~20%(w/w)、または5~17.5%(w/w)、実例として、または少なくとも7.5%(w/w)、実例としてほぼ10または15%(w/w)の量で含まれていてもよい。
【0064】
より好ましい態様において、医薬製剤は、錠剤および造粒物から選択され、およびしたがって典型的には少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤を含む。少なくとも1の薬学的に許容し得る賦形剤は、好ましくは充填剤、崩壊剤、潤滑剤、無機アルカリ金属塩またはそれらの組み合わせから選択される。結果的に、本発明はまた、医薬製剤に関し、これは、充填剤、崩壊剤、流動促進剤および潤滑剤から選択される任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を含む錠剤である。
【0065】
例示の態様において、医薬は、錠剤の総重量に基づいて、以下を含む錠剤である:
i)25~100%(w/w)の複合物;
ii)0~45%(w/w)の充填剤;
iii)0~20%(w/w)の崩壊剤;
iv)0~5%(w/w)の潤滑剤;
v)0~7,5%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~20%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤。
【0066】
1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤は、防腐剤、抗酸化剤、甘味料、香料(flavor)、色素、界面活性剤、および吸い上げ剤(wicking agent)から選択される1以上を含み得る。
多くの賦形剤は、医薬剤形の他の構成要素に基づいて、1を超える機能を発揮してもよい。明確性のために、とりわけ重量パーセントを算出する際、本発明に従う医薬製剤において使用される各薬学的に許容し得る賦形剤は、好ましくは1の機能のみに関連している、すなわち、崩壊剤または潤滑剤としてのいずれかと考えられる。
【0067】
別の例示の態様において、医薬製剤は、錠剤の総重量に基づいて、以下を含む錠剤である:
i)60~80%(w/w)の複合物;
ii)10~30%(w/w)の充填剤;
iii)4~15%(w/w)の崩壊剤;
iv)0~3%(w/w)の潤滑剤;
v)0~5%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~10%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤。
【0068】
さらに例示の態様において、医薬製剤は、錠剤の総重量に基づいて、以下を含む錠剤である:
i)65~75%(w/w)の請求項1~8のいずれか一項に記載の複合物;
ii)15~25%(w/w)の充填剤;
iii)5~10%(w/w)の崩壊剤;
iv)0.25~2%(w/w)の潤滑剤;
v)0.5~2%(w/w)の流動促進剤;および
vi)総量0~10%(w/w)の1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤。
【0069】
好ましくは、これらの態様において、充填剤は、ラクトースおよび/または微結晶性セルロースであり、崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの塩および誘導体、とくにクロスカルメロースナトリウムから選択され、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびフマル酸ステアリン酸ナトリウムから選択され、および/または、流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素およびその誘導体から選択される。とくに好ましい態様において、充填剤は、ラクトースおよび微結晶性セルロースであり、崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムであり、潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウムであり、および流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素である。
【0070】
好ましくは、1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤の総量は、0~10%(w/w)、0~7.5%(w/w)、0~5%(w/w)、0~2.5%(w/w)または0~1%(w/w)、実例として0%(w/w)である。
【0071】
もちろん、錠剤は、味および/または外観を改善するために、および/または、水分などの外部の影響から錠剤を保護するために、コーティングされてもよい。いずれのコーティングも、上記に列挙されるような、錠剤を構成する薬学的な活性成分および薬物物質の総重量100%(w/w)に向かってカウントすべきではない。薄膜コーティングのために、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリラート、ポリエチレングリコール、およびゼインを含む、改質セルロースなどのマクロ分子物質が使用されてもよい。コーティングの厚さは、好ましくは100μm未満である。
【0072】
本発明はまた、複合物を調製するための方法を提供し、これは、スプレー乾燥、共沈または凍結乾燥、好ましくは共沈スプレー乾燥、最も好ましくはスプレー乾燥を含む。結果的に、本発明はまた、複合物を調製するための方法に関し、この方法は、スプレー乾燥、共沈または凍結乾燥、好ましくは共沈およびスプレー乾燥、より好ましくはスプレー乾燥を含む。
【0073】
例示の態様において、方法は、以下:
(a)3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルおよび形成されるポリマーマトリックスのポリマー、および任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を溶媒中に溶解すること、
(b)複合物を形成するために、ステップ(a)によって調製された溶液をスプレー乾燥すること、ならびに、
(c)好ましくは減圧下で、任意に複合物を乾燥すること、
を含む。
【0074】
もちろん、溶解することは、APIおよびポリマーを溶媒中で溶解することを含んでもよく、これは、第一に、APIの溶液を形成するために、APIを溶解すること、および、第二に、APIの溶液にポリマーを添加および溶解することによって、あるいはその逆(すなわち、最初に溶媒中にポリマーを溶解し、および次いで、ポリマーを添加すること)によって連続的に実施してもよい。代わりに、APIおよびポリマーの溶液は、別々に調製されてもよく、および次いで、両方の溶液は、1の溶液に統一される。
【0075】
粒子の調製に使用することができる好適なスプレー乾燥技法は、周知であり、および例えば、K. Masters in ”Spray-drying Handbook”, John Wiley & Sons, New York, 1984に記載されている。好ましい態様において、液体の噴霧は、ノズルを使用して実施される。好適なスプレー乾燥機の例は、Mini Spray Dryer 290などのBuchiからの実験室規模のスプレー乾燥機、またはMOBILE MINOR(商標)、またはGEA NiroからのPharma Spray Dryer PharmaSD(登録商標)を含む。
【0076】
スプレー乾燥条件は、生成物特性、溶媒含量、粒子サイズ、形態学ならびにAPIおよびポリマーの分解の程度に主要な影響を有する。温度は、最も重要なプロセスパラメータである。なぜなら、化合物およびポリマーの高温度への暴露は、分解を引き起こし得るからである。スプレー乾燥機については、2つの温度:入口温度および出口温度が制御される必要がある。前者は、独立のプロセスパラメータであり、および、それは、操作者によって設定されてもよく、後者は、例として液体供給速度、噴霧ガス体積流量(使用される場合)、乾燥ガス体積流量、および選ばれる入口温度に依存している。プロセスパラメータは、当業者の技術常識に基づいて、慣用的な実験によって容易に達成することができる。
【0077】
本発明の適切な態様に従って、スプレー乾燥プロセスのパラメーターは、約25℃~約50℃の範囲内、好ましくは約25℃および40℃の範囲内に入る出口温度が達成される様式で、および、より好ましくは、出口温度が、約30℃である様式で、選択される。
【0078】
任意の乾燥ステップのために使用され得る好適な乾燥技法は、例えばドラム、ベルトおよびトレイ乾燥などの当該技術分野において知られている通常の技法を含む。かかる技法は、大気下、または常圧または減圧での窒素雰囲気下、例として真空下で実施され得る。減圧下の乾燥は、好ましい。
【0079】
調製された複合物は、錠剤またはカプセルなどの医薬製剤の調製のために使用することができる。複合物を含み、錠剤である、医薬製剤の調製のための例示の方法は、以下を含む:
(a)複合物を形成するために上記の方法を行うこと;
(b)好ましくは回転圧縮によって、複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤の混合物を任意に造粒すること;
(c)複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を混合すること;
(d)ステップ(b)によって調製された混合物またはステップ(c)によって調製された造粒物を錠剤化すること;ならびに
(e)ステップ(d)によって調製された錠剤を任意に薄膜コーティングすること。
【0080】
複合物および賦形剤を混合すること、および混合物を造粒することは、同じステップの一部であってもよく、すなわち、同時に生じてもよいことが理解されるべきである。
【0081】
用語「回転圧縮」は、微粉末が2つの対抗する回転ロールの間に強制されて、固体のコンパクトまたはリボンにプレスされるプロセスを指す。回転圧縮は、当業者に公知の任意の好適な回転圧縮機を用いて実施され得る。好適な回転圧縮機は、例えば、Fitzpatrick Company, USAのFitzpatrick(登録商標)Chilsonator IR220回転圧縮機を含む。プロセスパラメータ、とくに圧延力は、当業者の技術常識に基づいて、慣用的な実験法によって容易に達成され得る。好適な圧延力は、例えば、2から16kN/cmまでの範囲、より好ましくは4から12kN/cmの範囲、および最も好ましくは4から8kN/cmまでの範囲であり得る。
【0082】
錠剤に夫々圧縮する錠剤化は、一般的に使用されるエキセンプレスまたは回転プレスを用いて実施され得る。
【0083】
複合物を含む、カプセルである医薬製剤を調製するための例示の方法は、以下:
(a)複合物を形成するために本発明の方法を行うこと;
(b)複合物および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を任意に混合すること、および好ましくは回転圧縮により、任意に得られた混合物を造粒すること;
(c)ステップ(b)によって調製された混合物または造粒物、あるいは、ステップ(a)によって調製された複合物をカプセルに充填すること
を含む。
【0084】
導入部分において述べたとおり、3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルは、がんの処置における適用が見出されたATMキナーゼインヒビターとして、価値のある特性を示すことが見い出されている。それは、臨床試験において現在調査されている。
【0085】
結果的に、本発明は、がんの処置における使用のための、上に記載のとおりの複合物夫々の医薬製剤を提供する。
【0086】
任意に、がんの処置はさらに、放射線治療を含む。結果的に、本発明はまた、任意に放射線治療と一緒の、がんの処置における使用のための、本発明の医薬製剤に関する。好適な放射線治療処置は、WO 2012/028233 A1に記載されており、本明細書に参照により援用される。
【0087】
任意に、放射線治療に代えて、または放射線治療に加えて、がんの処置は、化学治療を含む。結果的に、本発明はまた、請求項23に記載のがんの処置における使用のための医薬製剤に関し、ここで、処置はさらに、化学治療を含む。
【0088】
3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリルと組み合わせて化学治療で使用され得る好適な薬学的に活性な成分は、1つの例を挙げると、シスプラチンおよびエトポシドまたはそれらの組み合わせを含む。
【0089】
結果的に、本発明はまた、それが必要な患者におけるがんを処置する方法を提供し、任意に放射線治療または化学治療またはその両方と組み合わせて、本発明に従う医薬製剤を患者に投与することを含む。例示の態様において、本発明は、それが必要な患者において、結腸、肺、頭頸部、膵臓、およびそれらの組織学的サブタイプから選択されるがんを処置する方法を提供し、エトポシドおよびプラチン(platin)から選択される少なくとも1つのさらなる治療剤と組み合わせて、本発明に従う複合物または医薬製剤中の3-フルオロ-4-[7-メトキシ-3-メチル-8-(1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-ベンゾニトリル、またはその薬学的に許容し得る塩を患者に投与することを含む。
【0090】
以下において、本発明は、その例示の態様を参照することにより説明され、これは、本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】
図1は、例1に記載される固体分散体の様々な態様についての溶解曲線を示す。黒丸:セルロースアセタートフタラート(CAP)中の10%化合物;白丸:CAP中の20%化合物;黒三角:オイドラギット(登録商標)L100中の10%化合物;白三角:オイドラギット(登録商標)L100中の20%化合物;黒四角:HPMCAS-M中の20%化合物;白四角:HPMCAS-L中の20%化合物;黒菱形:結晶性化合物;
【0092】
【
図2】
図2は、例4に記載されるような固体分散体の様々な態様についての溶解曲線を示す。白丸:CAP中の20%化合物;黒三角:HPMCAS-M中の20%化合物;白三角:HPMCAS-H中の20%化合物;黒四角:HPMCP HP50中の20%化合物;黒菱形:結晶性化合物。
【0093】
【
図3】
図3は、例5に記載されるような、pH6.5でのFaSSIF中のCAP中の16%(w/w)の化合物を含有する共沈物(coprecipitate)の溶解曲線を示す。
【
図4】
図4は、例6に記載されるような、PVAc-PVCap-PEG(白い記号)またはHPMCAS-L(黒い記号)中の10%化合物を含有するホットメルト押出物(hot melt extrudate)の溶解曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
本発明の詳細な記載
例1:
10または20%(w/w)のいずれかの化合物および90または80%(w/w)のいずれかのポリマーマトリックスを含む固体分散体は、特注の実験室規模のスプレー乾燥機を使用するスプレー乾燥によって調製される。使用されるポリマーは以下のとおりである:セルロースアセタートフタラート(CAP)、オイドラギット(登録商標)L100、HPMCAS-LおよびHPMCAS-M。10または20gの固体は、塩化メチレン/メタノール80/20(w/w)の混合物中に、2.5または5.0%(w/w)の固体含有量まで溶解され、および、以下の条件を使用してスプレー乾燥される:
【0095】
噴霧:150psi噴霧圧力で加圧したノズル;乾燥ガス流速:500g/min;液体供給速度:40g/min;入口温度:105℃;出口温度:40℃;二次乾燥:2~4日の減圧乾燥。
【0096】
溶解試験は、以下の試験条件を使用して、上記試料の全てについて実施される:スプレー乾燥された粉末は、37℃で、0.01M HCl中、1mL当たり200μg化合物まで分散される(時点-30min)。分散の30分後、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中の人工腸液(simulated intestinal fluid)(SIF;詳細についてはGalia et al., Evaluation of Various Dissolution Media for Predicting In Vivo Performance of Class I and II Drugs. Pharm. Research、Vol.15 No.5. 1998を参照))粉末の濃縮溶液は、PBS pH6.5中の0.5%(w/w)SIF粉末中、1mL当たり100μg化合物の濃度およびpHを得るために、試料に添加された(時点0分)。
【0097】
一致する時点において、試料は、遠心分離され、および上清のアリコートは、LPLCを使用して分析される。試料の残りは、再分散される。試料採取時点:-25、-15、-5分。緩衝液交換0分。さらなる試料採取4、10、20、40、90および1200分。
【0098】
その結果得られる溶解曲線は、
図1に説明される。HPMCAS中の固体分散体は、胃媒体中で最も高い過飽和を示すが、腸緩衝液に移行する際に迅速に沈殿する。HPMCASの異なるグレード間で差異は観察されない。オイドラギット(登録商標)L中の固体分散体は、薬物負荷とは無関係に、過飽和を示さない。CAP中の固体分散体は、結晶性化合物よりも少ない、胃媒体中の遊離薬物を示すが、腸媒体への移行の際にかなりの過飽和を示す。過飽和は、薬物負荷とは無関係であり、および20時間後も安定したままであった。
【0099】
CAP中の固体分散体のX線回折分析は、結晶性材料の証拠を示さない。
【0100】
例2:
さらなる実験は、例1と同じ機械を使用する固体分散体に基づいて、好ましいCAPについて実施される。15、18、20、25または30%(w/w)のいずれかの化合物および85、82、80、75、70%(w/w)のいずれかのCAPを含む固体分散体は、スプレー乾燥によって調製される。固体は、塩化メチレン/メタノール90/10(w/w)の混合物中に溶解され、および例1に記載される条件を使用してスプレー乾燥される。
【0101】
その結果得られる分散体は、<5%相対湿度で146~149℃の、および、75%相対湿度で80~84℃の、ガラス転移温度を有する。CAP中の固体分散体のX線回折分析は、薬物負荷とは無関係に、結晶性材料の証拠を示さない。達成された過飽和は、全ての薬物負荷について比較可能であり、および例1に示されるCAP固体分散体プロトタイプと類似している。
【0102】
例3:
さらなるプロセス最適化は、パイロット規模の市販のスプレー乾燥機(GEA Niro PSD-1)を使用して実施される。20%(w/w)化合物および80%(w/w)CAPを含む2つの個々のバッチの固体分散体は、スプレー乾燥によって調製される。3000gの固体は、3.9%(w/w)の固体含量まで、塩化メチレン/メタノール90/10(w/w)の混合物に溶解され、および以下の条件を使用してスプレー乾燥される:
【0103】
噴霧:450psi噴霧圧力で加圧したノズル;乾燥ガス流速:1850g/min;液体供給速度:210g/分;入口温度:95℃;出口温度:35℃;二次乾燥:40℃/15%相対湿度で18時間のトレイ乾燥、または40℃/15%相対湿度で13時間、これに続き40℃/30%相対湿度で2時間のトレイ乾燥。
【0104】
スプレー乾燥率(二次乾燥前)は、99~101%の間である。15%相対湿度のみで乾燥されたバッチは、100ppmの塩化メチレン、および<100ppmのメタノール(定量化限界(LOQ))の残留含量を有する。15および30%相対湿度で乾燥されたバッチは、塩化メチレンおよびメタノールの両方が<100ppm(LOQ)を有する。両方のバッチは、例1および2において観察されるように比較可能な過飽和を示す。ガラス転移温度は、両方のバッチについて、<5%相対湿度で145℃である。CAP中の固体分散体のX線回折分析は、結晶性材料の証拠を示さない。水含有量は、カール・フィッシャー滴定によって、2.5と2.8%との間で決定される。体積-重量粒子サイズ分布は、レーザー回折によって7/23/49μm(d10/d50/d90)として決定される。
【0105】
例4:
20%(w/w)化合物および80%(w/w)ポリマーマトリックスを含む固体分散体は、特注の実験室規模のスプレー乾燥機を使用して、スプレー乾燥によって調製される。使用されるポリマーは、以下のとおりである:CAP、HPMCAS-H、HPMCAS-MおよびHPMCP HP50。8~13gの間の固体は、3%(w/w)の固体含量まで、塩化メチレン/メタノール90/10(w/w)の混合物中に溶解され、および以下の条件を使用してスプレー乾燥される:
【0106】
噴霧:140psiの噴霧圧力で加圧されたノズル;乾燥ガス流速:450g/min;液体供給速度:35g/min;入口温度:81~91℃の間;出口温度:35℃;二次乾燥:40℃で15時間の対流トレイ乾燥機。
【0107】
スプレー乾燥率は、93~98%の間である。その結果得られる分散体は、<5%相対湿度で113~114℃、および75%相対湿度で58~62℃のガラス転移温度を有する。
【0108】
溶解実験は、例1に従って実施される。その結果得られる溶解曲線は、
図2に説明される。HPMCP中の固体分散体は、胃媒体において最も高い過飽和を示し、腸緩衝液への移行の際の迅速な沈殿がこれに続く。HPMCAS-M中の固体分散体は、例1からの同様の処方物よりも高い過飽和を、胃媒体中で示すが、腸緩衝液への移行の際に等しく沈殿する。HPMCAS-H中の固体分散体は、驚くべきことに、MおよびLグレードよりも、胃媒体において低い過飽和を示し、および、腸緩衝液への移行の45分後まで過飽和を維持する。
【0109】
例5 CPAを用いる共沈:
16%(w/w)化合物および84%(w/w)ポリマーマトリックス(CAP)を含む固体分散体は、共沈によって調製される。DMSO中の16mg/ml化合物および64mg/mlポリマーの透明な溶液(20%(w/w)の化合物 対 ポリマーに類似する)は、撹拌しながら70℃で調製される。溶液は、続いて周囲温度に冷却され、および透明なままである。1.3mlの透明なDMSO溶液は、ビーカー中で激しく撹拌しながら、15mlのクエン酸pH4.0のボルテックスに注がれる。その結果得られる懸濁液は、ろ過され、および得られたケーキは、20ml塩酸溶液pH2.0を用いて洗浄される。洗浄されたケーキは、減圧濾過によってあらかじめ乾燥され、および続いて窒素パージ下で、50℃で乾燥される。マトリックス中、理論濃度20%(w/w)化合物と最終濃度16%(w/w)との間の差異は、沈殿の間の化合物の喪失ならびに洗浄ステップから生じる。
【0110】
溶解試験条件:共沈物は、FaSSIF-V1溶液pH6.5中で6.7mg/mlまで分散される。FaSSIF粉末は、37℃で、biorelevantから得られた(Na-taurocholate 3.0mM、レシチン0.75mM、NaCl 105.9mM、NaH2PO4 28.4mM、NaOH 8.7mM、pH6.5)。一致する時点で、懸濁液のアリコートは、ろ過され、およびろ液は、HPLCを使用して分析される。試料採取時点は、以下のとおりである:5、10、15、20、30、45、60、90および120分。
【0111】
その結果得られる溶解曲線は、
図4に説明される。およそ0.25μg/mlのFaSSIF中の化合物の可溶性と比較して、共沈物は、およそ3μg/mlまでわずかに再結晶化が低下して、5μg/mlの良好な過飽和を示す。
【0112】
例6 PVAc-PVCap-PEGおよびHPMCAS-Lを用いるホットメルトエクストルージョン:
10%(w/w)化合物および90%(w/w)ポリマーマトリックスを含む固体分散体は、ホットメルトエクストルージョンによって調製される。使用されるポリマーは以下のとおりである:HPMCAS-LおよびPVAc-PVCap-PEG。10%(w/w)化合物および90%(w/w)ポリマーマトリックスを含有するおよそ10gの物理的な混合物は、Turbula T2Fを用いて10分間ブレンドされる。得られたブレンドは、続いて円錐体の100rpmで同時に回転する二軸を有するHaake Minilabを使用して押し出される。PVAc-PVCap-PEGについては、170℃の押出温度およびHPMCAS-Lについては180℃の押出温度が使用される。ストランドの製粉のために、2つの10mmジルコニウム酸化物の粉砕の球を有するPulverisette 23は、50Hzの振動で使用される。
【0113】
溶解試験は、上記の試料の全てについて、以下の試験条件を使用して実施される:製粉されたストランドは、37℃で、biorelevantからの、1.3ml FaSSIF-V1 pH6.5中、1mLあたり200μg化合物まで分散される(Na-taurocholate 3.0mM、レシチン0.75mM、NaCl 105.9mM、NaH2PO4 28.4mM、NaOH 8.7mM、pH6.5)。一致した時点において、試料は、遠心分離され、および上清のアリコートは、HPLCを使用して分析される。試料の残りは、再分散される。試料採取時点は、以下のとおりである:5、10、15、20、30、45、60、90および120分。
【0114】
その結果得られる溶解曲線は、
図4に説明される。両方の固体分散体は、強い過飽和を示し、これは、HPMCAS-L(5分においておよそ15μg/ml)と比較して、PVAc-PVCap-PEG(5分においておよそ50μg/ml)についてより明白でさえある。PVAc-PVCap-PEGは、かなり強い再結晶を示すが、およそ15μg/mlを用いる120分後のFaSSIF中の残りの可溶性は、かなり高い。HPMCAS-Lは、PVAc-PVCap-PEGよりも過飽和を安定化するのが優れており、および120分後におよそ4μg/mlで終了する。
【0115】
強い過飽和は、かなり驚くべきことである。なぜなら、粉末X線回折および偏光顕微鏡分析は、使用される条件下で、純粋なアモルファスの固体分散体が得られないことを実証するためである。
【0116】
例7 PVP-VA64を用いる溶媒ベースのスクリーニング
20%(w/w)化合物および80%(w/w)ポリマーマトリックスを含有する500μgの薄膜は、96ウェルプレート中で、塩化メチレン/メタノール90/10(V/V)の混合物の溶媒蒸発によって調製される。
【0117】
これらの薄膜は、96ウェルプレート中に直接FaSSIF中の非シンク溶解に供された。溶解は、37℃で、biorelevantからの200μlのFaSSIF-V1 pH6.5と共に生じた(Na-taurocholate 3.0mM、レシチン0.75mM、NaCl 105.9mM、NaH2PO4 28.4mM、NaOH 8.7mM、pH6.5)。60および120分後、100μlの試料は、採取され、および、PALLからのAcroprep Advance 96 Filter Plateを通る遠心分離によってろ過される。ろ液は、HPLCによって分析された。
【0118】
60分後に2μg/mlおよび120分後に1μg/mlを用いるのと同様の様式で調製されるポリマーなしの純粋な化合物と比較して、60分後の7.5μg/mlおよび120分後の4μg/mlの濃度で、優れた過飽和は、得ることができた。
【0119】
例8 PVPを用いる溶融ベースのスクリーニング
20%(w/w)化合物および80%(w/w)ポリマーマトリックスを含有する550μgの薄膜は、DSCるつぼ中に直接、塩化メチレン/メタノール90/10(V/V)の混合物の溶媒蒸発によって調製される。対応する薄膜はさらに、室温から155℃まで、20K/分でDSC1中で鍛えられた(tempered)。この温度は、10分間維持され、続いて、K/分で25℃まで冷却された(quooled)。
【0120】
これらの薄膜は、DSCるつぼ中に直接、FaSSIF中の非シンク溶解に供された。溶解は、37℃で、biorelevantからの110μlのFaSSIF-V1 pH6.5と共に生じた(Na-taurocholate 3.0mM、レシチン0.75mM、NaCl 105.9mM、NaH2PO4 28.4mM、NaOH 8.7mM、pH6.5)。60および120分後、55μlの試料は、採取され、および、PALLからのAcroprep Advance 96 Filter Plateを通る遠心分離によってろ過される。ろ液は、HPLCによって分析された。
【0121】
60分後および120分後に2μg/mlを用いるのと同様の様式で調製されるポリマーなしの純粋な化合物と比較して、60分後の7μg/mlおよび120分後の4μg/mlの濃度で、優れた過飽和は、得ることができた。
【0122】
例9:例示の錠剤処方物(w/oコーティング)
錠剤は、錠剤重量の示された重量パーセントで、以下の成分を含む組成物を用いて生成される。ブレンドは、0.5の固形分まで予め圧縮され、製粉され、および800μmのスクリーンを通過させて篩にかけられる。その結果得られる顆粒は、1.5~3.5MPaの引っ張り強さを有する錠剤を達成するために圧縮される。
【0123】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0124】
例1に記載されるような溶解アッセイにおいて、全ての錠剤処方物は、固体分散体の化合物溶解度をはるかに下回る化合物溶解度を達成する。しかしながら、および驚くべきことに、かかる錠剤は、粉砕され、および、経口投与に好適なビヒクルに懸濁される場合、その結果得られる化合物の血漿濃度化合物は、固体分散体から製造された同様の懸濁液の投与後に得られる濃度と比較可能である。
【0125】
例10:例示のカプセル処方物
HPMCカプセルは、示される充填剤の重量パーセントで、以下の成分を含む充填剤を用いて提供される。処方物の崩壊は、6分未満である。
【0126】
【0127】
例11:例示のカプセル処方物
HPMCカプセルは、以下の成分を含む充填剤を用いて、充填剤の示される重量パーセントで提供される。充填剤は、0.4と0.5g/cm3との間のバルク密度を達成するために、充填前に小型化される。
【0128】
【0129】
例12:例示の錠剤のパイロット規模圧縮
80%CAP中に化合物の固体分散体を含む錠剤は、錠剤当たり、10、50および100mgの強度でパイロット規模機器で製造される。例6の錠剤番号7に示されるような、約4.2kgブレンドの固体分散体および賦形剤は、50Lのビンブレンダー(bin blender)中で、示される量の半分の二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを使用して、ブレンドされる。ブレンドは、6kNの圧延力、2rpmの回転速度、2mmの間隙、および0.8mmのスクリーンサイズを使用するパイロット規模の機器で、回転圧縮によって造粒される。
【0130】
顆粒は、残りの二酸化ケイ素およびステアリン酸ナトリウムとブレンドされ、およびパイロット規模の回転プレスで圧縮される。好適なプレス力(press force)は、2または3MPaの引張強度まで、10、50または100mgの化合物を含む錠剤を圧縮するために選択される。例えば、3kN、10.2kN、および15.0kNのプレス力は、2MPaの引張強度まで、丸い10mg錠剤、楕円の50mg錠剤、および楕円の100mg錠剤を生成するために使用される。全ての錠剤は、許容し得る外観を有し、極めて速く崩壊し(全て1分未満)、破砕後の許容し得る質量喪失(0.1%未満)、ならびに10mg錠剤について2%未満、および50mgおよび100mg錠剤について1%未満の許容し得る相対的な標準偏差を有する。
【0131】
例13:例示の錠剤コーティング
10、50、または100mgの化合物を含む錠剤は、Vector LDCSパンコーター(pan coater)中でコーティングされる。コーティング溶液は、脱イオン水中の20%(w/w)Opadry II 85Fからなる。溶液は、22rpmで回転する1.3Lパン中の約1kgの錠剤のベッド上に噴霧される。9~11g/minの噴霧速度および15~16分の噴霧時間、一方、40~41CFMの乾燥ガス流動、入口温度74℃および出口温度43-44℃を用いる乾燥により、2.4~3.2%のコーティング重量を生じる。コーティングされた錠剤は、2.3~2.6%の残留水を含有し、これは、コーティング前より少ない。処方物の物理的または化学的分解は、コーティング後に見られない。コーティングされた錠剤は、未コーティングの錠剤コアよりもわずかにゆっくりと崩壊するが、崩壊は依然として非常に速い(10mgについて1分未満、50および100mgについて2分未満)。
【0132】
引張強度1.7MPaを有する錠剤コアは、一般に、コーティング、バルクハンドリング、パッケージング等に充分であるとみなされる(Pitt, K. G.およびM. G. Heasley (2013). “Determination of the tensile strength of elongated tablets.” Powder Technology 238: 169-175)。驚くべきことに、例10において示されるような2MPaに圧縮された錠剤は、コーティング後に表面欠陥を示す。引張強度3MPaまでの圧縮は、欠損を避けるのに充分である。