(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20230213BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230213BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230213BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G03F7/023
G03F7/004 512
B32B27/34
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2018195113
(22)【出願日】2018-10-16
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ブンキ
(72)【発明者】
【氏名】本松 譲
(72)【発明者】
【氏名】山藤 征矢
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-122990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
G03F 7/004
B32B 27/34
C08G 73/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)
ナフトキノンジアジド化合物と、を含み、
前記アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、170以上、200以下の酸価(mgKOH/g)を有し、かつ少なくとも、下記化学式(2)で示される酸無水物と、下記一般式
(5)および(6)で示されるジアミン化合物、または一般式(5)、(6)および(7)で示されるジアミン化合物とを反応して得られるポリアミック酸であることを特徴とする、感光性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、
Xは、2価の有機基であり、
nは、1以上の整数である。)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記ジアミン化合物は、一般式(5)で示されるジアミン化合物を35~75モル%の範囲で含み、一般式(6)で示されるジアミン化合物を25~65モル%の範囲で含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
フィルム上に、請求項1
または2に記載の感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の感光性樹脂組成物または請求項
3に記載のドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする、硬化物。
【請求項5】
請求項
4に記載の硬化物を形成材料として有することを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えるドライフィルム、該感光性樹脂組成物により形成された硬化物および該硬化物を形成材料として有するプリント配線板、半導体素子などの電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、高い絶縁性、耐熱性および機械強度などの優れた特性を有しているため、様々な分野において広く利用されている。例えば、航空宇宙分野にとどまらず、フレキシブルプリント配線板や半導体素子のバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜への適用が進められている。
【0003】
通常、ポリイミドは、熱可塑性および有機溶剤への溶解性が乏しく、加工が困難であるという側面を有する。そのため、ポリイミドは、有機溶剤に可溶なポリイミド前駆体(ポリアミック酸)と、光反応性の化合物とを配合して得られる液状の感光性樹脂組成物の状態で使用される。
具体的には、ウエハなどの基材上に、該感光性樹脂組成物を塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成し、該乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射して露光し、次いで現像することによって所望のパターン膜を形成した後、ポリイミドとするためにポリアミック酸を高温にて閉環反応させ、硬化することが行われている。
【0004】
このような感光性樹脂組成物としては、従来、ポリアミック酸およびナフトキノンジアジドを含むポジ型の感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に提案されているような感光性樹脂組成物では、ポリアミック酸が有するカルボキシル基に起因して、現像時に、未露光部までも溶解してしまい(膜減り現象)、希望するパターン膜を得ることができないという問題があった。すなわち、現像時の露光部と未露光部の溶解速度の差が大きい(溶解コントラストの大きい)材料が求められている。
【0006】
これに対し従来、溶解コントラストを向上させるため、ポリアミック酸が有するカルボキシル基をエステル化することが行われている(特許文献2参照)。
しかしながら、ポリアミック酸が有するカルボキシル基をエステル化したことに伴い、ポリアミック酸の閉環反応では、より高い温度が必要となること、閉環反応の際にエステル部が脱離することに起因する硬化収縮が発生してしまうことなどの問題があった。さらに、ポリアミック酸の合成プロセスにエステル化工程が加わるため、生産性が低下してしまうこと、該エステル化により副生成物が発生する可能性があることなどといった問題もあった。
【0007】
また、このような感光性樹脂組成物は、コスト削減の観点から、露光部がより低い露光量でも現像性が得られる、いわゆる高い感度を有していること、および半導体素子の小型化や高機能化に合わせて微細なパターン形成をすることができる、いわゆる高い解像度を有していることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭52-13315号公報
【文献】特開平4-168441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ポリアミック酸におけるカルボキシル基をエステル化することなく、高い溶解コントラストが得られ、高感度および高解像度の乾燥塗膜を形成するのに有効な感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、前記感光性樹脂組成物を用いたドライフィルムおよびプリント配線板、半導体素子などの電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、特定の構造で示される繰り返し単位を有し、かつ特定の数値範囲の酸価を有するポリアミック酸と感光剤とを含む感光性樹脂組成物によれば、乾燥塗膜において、高い溶解コントラストが得られ、感度および解像度が顕著に向上するとの知見を得て、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、
(A)アルカリ可溶性樹脂と、
(B)感光剤と、を含み、
アルカリ可溶性樹脂が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有し、170以上、200以下の酸価(mgKOH/g)を有し、かつ少なくとも、下記化学式(2)で示される酸無水物と、下記一般式(3)または(4)を満たす、2種以上のジアミン化合物とを反応して得られるポリアミック酸であることを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、
Xは、2価の有機基であり、
nは、1以上の整数である。)
【化2】
【化3】
【化4】
(上記一般式(3)中、
Yは、それぞれ独立して、酸素原子および炭素数1~5の2価の有機基から選択されるが、少なくとも1つは、酸素原子であり、
R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基であり、
aは、0~3の整数であり、
bは、0~4の整数であり、
上記一般式(4)中、
R
2~R
5のいずれかが、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、それ以外のR
2~R
5が水素原子である。)
【0013】
本発明の一実施形態において、ジアミン化合物は、下記化学式(5)~(7)で示される化合物から選択される。
【化5】
【化6】
【化7】
【0014】
本発明の一実施形態において、感光剤は、ナフトキノンジアジド化合物である。
【0015】
本発明のドライフィルムは、フィルム上に、上記感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物または上記ドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする。
【0017】
本発明の電子部品は、上記硬化物を形成材料として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、ポリアミック酸のカルボキシル基をエステル化することなく、溶解コントラストを顕著に改善することができるため、上記したポリアミック酸の閉環反応における温度の問題、エステル部が脱離することに起因する硬化収縮の問題、生産性低下の問題、副生成物発生の問題を解消することができる。
また、本発明の感光性樹脂組成物によれば、高い感度および解像度を有する乾燥塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)感光剤とを含む。
以下、本発明の感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂を含み、該アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸である。
【化8】
【0020】
上記一般式(1)において、Xは、2価の有機基を、nは、1以上の整数を表す。
【0021】
また、このポリアミック酸は、少なくとも、下記化学式(2)で示される酸無水物と、下記一般式(3)または(4)を満たす、2種以上のジアミン化合物とを反応させることにより得られたものである。
【化9】
【化10】
【化11】
【0022】
上記一般式(3)中、Yは、それぞれ独立して、酸素原子および炭素数1~5の2価の有機基から選択されるが、少なくとも1つは、酸素原子である。
炭素数1~5の有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基およびネオペンチレン基などが挙げられる。
R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~5のアルキル基または炭素数1~5のハロゲン化アルキル基から選択される。
炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびネオペンチル基などが挙げられる。
炭素数1~5のハロゲン化アルキル基としては、フロオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、ジフルオロプロピル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基およびトリフルオロプロピル基などが挙げられる。
aは、0~3の整数であり、好ましくは0または1である。
bは、0~4の整数である。
何ら限定されるものではないが、一般式(3)を満たす化合物としては、以下のようなものが挙げられる。
【化12】
【0023】
上記した一般式(3)を満たす化合物の中でも、化学式(5)または化学式(6)で示される、以下の化合物が感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度という観点から好ましい。
【化13】
【化14】
【0024】
上記一般式(4)中、R
2~R
5のいずれかが、好ましくはR
2またはR
4のいずれかが、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、それ以外のR
2~R
5が水素原子である。
炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などが挙げられる。
炭素数1~12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基などが挙げられる。
炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、トリル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、クロルフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジエトキシフェニル基、メトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、エトキシベンジル基、ジエトキシベンジル基、アミノフェニル基、アミノベンジル基、ニトロフェニル基、ニトロベンジル基、シアノフェニル基、シアノベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビフェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
炭素数6~10のフェノキシ基としては、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基およびジメトキシフェノキシ基などが挙げられる。
炭素数6~10のベンジル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、プロピルベンジル基、ジメチルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基およびメトキシベンジル基などが挙げられる。
炭素数6~10のベンジルオキシ基としては、メチルベンジルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ベチルベンジルオキシ基、エチルベンジルオキシ基、プロピルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、メトキシベンジルオキシ基およびエトキシベンジルオキシ基などが挙げられる。
上記した中でも、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、高温パターン維持性、感度および線熱膨張係数の観点からは、R
2~R
5のいずれかが、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基であることが好ましく、炭素数6~10の芳香族基がより好ましく、フェニル基、トリル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基およびジエチルフェニル基がさらに好ましく、未露光部の膜減り現象の抑止効果の観点から、フェニル基が特に好ましい。
特に好ましくは、R
2またはR
4のいずれかが、炭素数6~10の芳香族基であり、それ以外のR
2~R
5が水素原子である。具体的には、化学式(7)で示される、以下の化合物が挙げられる。該化合物を使用することにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度をより向上することができる。
【化15】
【0025】
上記一般式(4)で示されるジアミン化合物は、下記一般式(8)で示される化合物と、下記一般式(9)で示される化合物とを反応させた後、ニトロ基を還元することにより得ることができる。
【化16】
【化17】
【0026】
上記式一般式(8)おいて、Zは、水酸基、またはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基およびヨード基から選択されるハロゲン基を示す。これらの中でも反応性という観点からは、クロロ基およびブロモ基が好ましい。
上記一般式(9)おいて、R2~R5は、上記した通りである
【0027】
Zが水酸基である場合、上記一般式(8)および(9)で示される化合物の反応は、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤またはP-トルエンスルホン酸のような有機酸触媒の存在下で行うことが好ましい。
また、Zがハロゲン基である場合、上記一般式(8)および(9)で示される化合物の反応は、トリエチルアミンのような受酸剤存在下で行われることが好ましい。
【0028】
一般式(4)で示されるジアミン化合物は、上記方法により合成されたものに限定されず、市販されるものを使用してもよい。
【0029】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリアミック酸は、その合成に上記化学式(2)で示される酸無水物以外の酸無水物(以下、その他の酸無水物という。)を使用することができる。
例えば、その他の酸無水物としては、無水ピロメリット酸、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ペンタン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ-1-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロヘキサン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-メチル-3-エチルシクロヘキサ-1-エン-3-(1,2),5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-エチルシクロヘキサン-1-(1,2),3,4-テトラカルボン酸二無水物、1-プロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ジプロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3-(2,3)-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、1-プロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ジプロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3-(2,3)-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる
【0030】
本発明の特性を損なわない範囲において、ポリアミック酸は、その合成に上記一般式(3)および(4)で示されるジアミン化合物以外のジアミン化合物(以下、その他のジアミン化合物という。)を使用することができる。
例えば、その他のジアミン化合物としては、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、 2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミンなど、4、4‘-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランスー1,4-ジアミノシクロヘキサン、シスー1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,0]デカン、1,3-ジアミノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロププロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0031】
好ましい態様において、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリアミック酸は、下記化学式(2)で示される酸無水物と、下記化学式(5)で示されるジアミン化合物と、下記化学式(6)で示さえるジアミン化合物との反応物である。これにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度をより向上することができる。
下記化学式(5)および(6)で示されるジアミン化合物に加え、下記化学式(7)で示されるジアミン化合物をさらに使用してもよい。これにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度をより向上することができる。
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0032】
ポリアミック酸におけるジアミン成分由来の構成単位の総含有量を100モル部としたとき、上記一般式(5)で示されるジアミン化合物の構成割合は、25モル部以上、75モル部以下であることが好ましく、45モル部以上、65モル部以下であることがより好ましく、55モル部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度および解像度をより向上することができる。
また、上記一般式(6)で示されるジアミン化合物の構成割合は、25モル部以上、75モル部以下であることが好ましく、35モル部以上、55モル部以下であることがより好ましく、45モル部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の感度および解像度をより向上することができる。
また、上記一般式(7)で示されるジアミン化合物の構成割合は、5モル部以上、20モル部以下であることが好ましく、7モル部以上、15モル部以下であることがより好ましく、10モル部であることが特に好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度をより向上することができる。
【0033】
本発明において、ポリアミック酸の酸価(mgKOH/g)は、170以上、200以下であることを特徴とする。これにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラストを顕著に改善することができる。より好ましくは、ポリアミック酸の酸価は、180以上、190以下である。
本発明において、酸価は、「JIS K 2501-2003石油および潤滑油-中和価試験方法」に記載の方法に準じた方法により測定された値を意味する。
具体的には、試料をキシレンとジメチルホルムアルデヒドを1:1の質量比で混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定する。滴定曲線上の変位点を終点とし、水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から、酸価を算出する。
【0034】
本発明において、ポリアミック酸の数平均分子量(Mn)は、2,000以上、50,000以下であることが好ましく、4,000以上、25,000以下であることがより好ましい。これにより、ポリアミック酸のアルカリ現像液への溶解性を向上することができる。
また、ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、4,000以上、100,000以下であることが好ましく、8,000以上、50,000以下であることがより好ましい。これにより、クラックの発生がない良好な硬化膜を得ることができる。
さらに、Mw/Mnは、1以上、5以下であることが好ましく、1以上、3以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物は、以上説明したようなポリアミック酸を含み、これにより、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、感度および解像度を顕著に改善することができる。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、ポリアミック酸を2種以上含んでいてもよい。
【0036】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含み、例えば、光酸発生剤、光重合開始剤および光塩基発生剤などが挙げられる。これらの中でも、溶解コントラストという観点から、光酸発生剤が好ましい。
この感光剤は、公知慣用の割合で配合することができ、例えば、光酸発生剤については、ポリアミック酸100質量部に対して、5~40質量部、好ましくは10~30質量部の割合で配合することが好ましい。
なお、感光性樹脂組成物は、感光剤を2種以上含んでいてもよい。
【0037】
光酸発生剤は、紫外線や可視光などの光照射により酸を発生する化合物であり、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミドおよびベンゾキノンジアゾスルホン酸エステルなどを挙げることができる。
上記した中でも、溶解コントラストという観点から、ナフトキノンジアジド化合物が好ましい。
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533、TS567、TS583、TS593)、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550、BS570、BS599)、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428、TKF-528)などが挙げられる。
【0038】
光重合開始剤は、紫外線や可視光などの光照射によりラジカルなどを発生する化合物であり、例えば、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤およびチタノセン系光重合開始剤などが挙げられる。
オキシムエステル系光重合開始剤の市販品としては、BASFジャパン社製の、イルガキュアーOXE01、イルガキュアーOXE02、ADEKA社製N-1919およびNCI-831などが挙げられる。
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンおよびN,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられ、この市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)907、Omnirad(オムニラッド)369およびOmnirad(オムニラッド)379などが挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドおよびビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられ、この市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)TPOおよびIGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)819などを用いることができる。
チタノセン系光重合開始剤としては、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-フェニル-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ジ-クロロ-チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、3、4、5、6ペンタフルオロフェニル)チタニウムおよびビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどが挙げられ、この市販品としては、IGM Resins社製のOmnirad(オムニラッド)784などが挙げられる。
【0039】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光などの光照射により分子構造が変化することにより、または分子が開裂することにより、1種以上の塩基性物質(2級アミンおよび3級アミンなど)を生成する化合物である。
光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、感光性樹脂組成物の感度という観点からは、イオン型光塩基発生剤が好ましい。
イオン型光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩などが挙げられ、この市販品としては、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266およびWPBG-300などが挙げられる。
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基およびアルコオキシベンジルカーバメート基などの置換基を有する化合物などが挙げられる。
その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)およびWPBG-165などが挙げられる。
【0040】
[その他の成分]
本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の感光性樹脂組成物へ、更に光感度を向上させるために公知の増感剤や、基材との接着性向上のため、シランカップリング剤などの公知の密着剤などを配合してもよい。
更に、加工特性や各種機能性を付与するために、本発明の感光性樹脂組成物へ、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよく、例えば、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子などを用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩などの無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維などを配合してもよい。
【0041】
[溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、上記各成分を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトンおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0042】
感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、その用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、感光性樹脂組成物に含まれるポリアミック酸100質量部に対し、50質量部以上、9000質量部以下とすることができる。
なお、感光性樹脂組成物は、溶剤を2種以上含んでいてもよい。
【0043】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、フィルム(例えば支持(キャリア)フィルム)と、このフィルム上に、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。また、ドライフィルムは、フィルム上に形成された樹脂層上に、さらに保護(カバー)するフィルム(いわゆる保護フィルム)を備えていてもよい。
【0044】
[フィルム]
フィルムは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ならびにポリスチレンフィルムなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムを使用することができる。
これらの中でも、耐熱性、機械的強度および取扱性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらフィルムの積層体をフィルムとして使用することもできる。
【0045】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0046】
フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10~150μmとすることができる。
【0047】
[樹脂層]
樹脂層は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであり、その厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、1μm以上、150μm以下とすることができる。
【0048】
樹脂層は、フィルム上に、感光性樹脂組成物を、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーターおよびスプレーコーターなどにより、均一な厚さに塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
また、他の実施形態においては、樹脂層は、保護フィルム上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより形成することができる。
【0049】
[保護フィルム]
本発明においては、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護フィルムを積層することが好ましい。
【0050】
剥離可能な保護フィルムとしては、保護フィルムを剥離するときに樹脂層とフィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さくなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムおよび表面処理した紙などを用いることができる。
【0051】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上、150μm以下とすることができる。
【0052】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする。また、該硬化物は、パターンが形成されているもの(以下、場合によりパターン膜という)であってもよい。
以下、本発明の硬化物の製造方法を説明する。
【0053】
[第1工程]
本発明の硬化物の製造方法は、感光性樹脂組成物を、基材上に塗布し塗膜を形成し、これを乾燥することにより、または上記ドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、乾燥塗膜を形成させる工程を含む。
【0054】
感光性樹脂組成物の基材上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターおよびスクリーン印刷機などを用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、ならびにインクジェット法などが挙げられる。
【0055】
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥などの方法が用いられる。
また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリイミド前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが望ましい。
具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことが好ましい。また、操作方法が簡便であるため、ホットプレートを用いて、1~20分乾燥を行うことが好ましい。
また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
【0056】
ドライフィルムの基材上への転写は、真空ラミネーターなどを用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムの樹脂層が真空条件下で回路基板の凹凸に充填するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。
【0057】
基材としては、あらかじめ銅などにより回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートなどを用いた高周波回路用銅張積層板などの材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4など)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板などを挙げることができる。
【0058】
[第2工程]
次に、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを通して選択的に、あるいはフォトマスクを通さず非選択的に、活性エネルギー線を照射し、露光する。
【0059】
活性エネルギー線は、例えば(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には活性エネルギー線は、最大波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。
露光量は膜厚などによって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプなどを搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。
【0060】
[第3工程]
該工程は、必要に応じ行われるものであり、塗膜を短時間加熱することにより、未露光部のポリイミド前駆体の一部を閉環してもよい。ここで、閉環率は、30%程度である。加熱時間および加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、塗布膜厚、(B)感光剤の種類によって適宜変更する。
【0061】
[第4工程]
次いで、上記露光後の塗膜を、現像液により処理し、塗膜中の露光部分を除去することにより、パターン膜を得ることができる。
該工程においては、従来より知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法などの中から任意の方法を選択することができる。
【0062】
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム塩類などの水溶液を挙げることができる。
また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0063】
その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0064】
[第5工程]
次いで、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。
該加熱工程により、感光性樹脂組成物に含まれるエステル基含有ポリイミド前駆体は、閉環し、ポリイミドとなる。
【0065】
加熱条件は、適宜調整することが好ましく、例えば、150℃以上、300℃未満の温度において、5分~120分程度と設定することができる。
加熱には、例えば、ホットプレート、オーブンおよび温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることができる。
加熱雰囲気(気体)、空気下であってもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガス下であってもよい。
【0066】
[用途]
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、接着剤、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品および建築材料などの形成材料として好適に用いられる。
【0067】
具体的には、表示装置の形成材料としては、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料および配向膜などにおける、層形成材料および画像形成材料が挙げられる。
半導体素子の形成材料としては、レジスト材料およびバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜などにおける、層形成材料が挙げられる。
電子部品の形成材料としては、プリント配線板、層間絶縁膜および配線被覆膜などにおける、封止材料および層形成材料が挙げられる。
また、光学部品の形成材料としては、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品および反射防止膜などにおける、光学材料や層形成材料が挙げられる。
さらに、建築材料としては、塗料、コーティング剤などに用いることができる。
【0068】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜などとして好適に利用できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0070】
(参考例1:ポリアミック酸Aの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、下記化学式(5)で示される、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)11.25mmolおよび下記化学式(6)で示される、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)3.75mmolを撹拌溶解した。
その後、下記化学式(2)で示される、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)13.38mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Aのワニスを得た。ポリアミック酸Aの数平均分子量(Mn)は9,856、重量平均分子量(Mw)は23,852、Mw/Mnは2.42であった。
得られたポリアミック酸Aの酸価を、JIS K 2501-2003に準拠して測定したところ、199(mgKOH/g)であった。
【化22】
【化23】
【化24】
【0071】
(参考例2:ポリアミック酸Bの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA9.75mmolおよびBAPP5.25mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.84mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Bのワニスを得た。ポリアミック酸Bの数平均分子量(Mn)は10,475、重量平均分子量(Mw)は25,454、Mw/Mnは2.43であった。
得られたポリアミック酸Bの酸価を、参考例1同様、測定したところ、192(mgKOH/g)であった。
【0072】
(参考例3:ポリアミック酸Cの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA8.25mmolおよびBAPP6.75mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.80mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Cのワニスを得た。ポリアミック酸Cの数平均分子量(Mn)は10,579、重量平均分子量(Mw)は24,966、Mw/Mnは2.36であった。
得られたポリアミック酸Cの酸価を、参考例1同様、測定したところ、185(mgKOH/g)であった。
【0073】
(参考例4:ポリアミック酸Dの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA6.75mmolおよびBAPP8.25mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.76mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Dのワニスを得た。ポリアミック酸Dの数平均分子量(Mn)は10,872、重量平均分子量(Mw)は26,524、Mw/Mnは2.46であった。
得られたポリアミック酸Dの酸価を、参考例1同様、測定したところ、179(mgKOH/g)であった。
【0074】
(参考例5:ポリアミック酸Eの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA5.25mmolおよびBAPP9.75mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.72mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Eのワニスを得た。ポリアミック酸Eの数平均分子量(Mn)は9,720、重量平均分子量(Mw)は26,147、Mw/Mnは2.69であった。
得られたポリアミック酸Eの酸価を、参考例1同様、測定したところ、173(mgKOH/g)であった。
【0075】
(参考例6:ポリアミック酸Fの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA7.50mmol、BAPP6.00mmolおよび下記化学式(7)で示される、(2-フェニル-4-アミノフェニル)-4-アミノベンゾエート(PHBAAB)1.50mmolを撹拌溶解した。
その後、4,4'-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)13.80mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸Fのワニスを得た。ポリアミック酸Fの数平均分子量(Mn)は10,382、重量平均分子量(Mw)は24,897、Mw/Mnは2.40であった。
得られたポリアミック酸Fの酸価を、参考例1同様、測定したところ、185(mgKOH/g)であった。
【化25】
【0076】
(参考例7:ポリアミック酸aの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA15.00mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.98mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸aのワニスを得た。ポリアミック酸aの数平均分子量(Mn)は10,476、重量平均分子量(Mw)は25,980、Mw/Mnは2.48であった。
得られたポリアミック酸aの酸価を、参考例1同様、測定したところ、220(mgKOH/g)であった。
【0077】
(参考例8:ポリアミック酸bの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、BAPP15.00mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.83mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸bのワニスを得た。ポリアミック酸bの数平均分子量(Mn)は10,952、重量平均分子量(Mw)は26,613、Mw/Mnは2.43であった。
得られたポリアミック酸bの酸価を、参考例1同様、測定したところ、156(mgKOH/g)であった。
【0078】
(参考例9:ポリアミック酸cの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA8.25mmolおよびBAPP6.75mmolを撹拌溶解した。
その後、下記化学式(11)で示される、4,4'-ビフタル酸二無水物(BPDA)18.83mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸cのワニスを得た。ポリアミック酸cの数平均分子量(Mn)は9,648、重量平均分子量(Mw)は25,760、Mw/Mnは2.67であった。
得られたポリアミック酸cの酸価を、参考例1同様、測定したところ、190(mgKOH/g)であった。
【化26】
【0079】
(参考例10:ポリアミック酸dの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.1リットルのフラスコ中に、N-メチルピロリドン40gを仕込み、ODA8.25mmolおよび下記化学式(12)で示される、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(4-APBP)6.75mmolを撹拌溶解した。
その後、ODPA13.84mmolを固体のまま5gずつ30分間かけて加え、室温で16時間撹拌を続け、ポリアミック酸dのワニスを得た。ポリアミック酸dの数平均分子量(Mn)は9,510、重量平均分子量(Mw)は25,772、Mw/Mnは2.71であった。
得られたポリアミック酸dの酸価を、参考例1同様、測定したところ、191(mgKOH/g)であった。
【化27】
【0080】
<実施例1>
上記参考例1において得られたアルカリ可溶性樹脂A、感光剤およびアリールアミノ基を有するシランカップリング剤を下記組成で混合し、感光性樹脂組成物を得た。
(感光性樹脂組成物組成)
・ポリアミック酸A 100質量部
・感光剤 20質量部
(三宝化学工業(株)製、TKF-525、ナフトキノンジアジド化合物)
・シランカップリング剤 7質量部
(信越シリコーン社製、KBM-573)
【0081】
<実施例2~7および比較例1~4>
アルカリ可溶性樹脂を表1中に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして、感光性樹脂組成物を得た。
【0082】
<<溶解コントラスト評価>>
上記実施例および比較例において得られた感光性樹脂組成物を、シリコン基板上に塗布し、ホットプレートにより、120℃で4分加熱し、乾燥塗膜を形成させた。
該乾燥塗膜に、高圧水銀ランプ(i線フィルター付き)を用いて、ブロード光を、パターンを有するフォトマスクを通して照射した。なお、露光量は500mJ/cm2とした。
露光後の乾燥塗膜を、25℃の2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用いて現像し、現像速度測定装置(リソテックジャパン(株)製のRDA-790)を用いて、露光部および未露光部における乾燥塗膜の溶解速度を測定した。
なお、溶解速度(μm/min)=減少膜厚(μm)/現像時間(min)により求められる。式中、減少膜厚は、現像前後の乾燥塗膜の厚さの差を、現像時間は、乾燥塗膜をTMAH水溶液に浸漬した時間を意味する。
【0083】
露光部の溶解速度と、未露光部の溶解速度との比(未露光部の溶解速度/露光部の溶解速度)を算出し、以下の評価基準に従い、評価した。比の数値と共に評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎◎:溶解速度比が、10以上であった。
◎:溶解速度比が、7以上、10未満であった。
○:溶解速度比が、3以上、7未満であった。
×:溶解速度比が、3未満であった。
【0084】
<<感度評価>>
上記実施例および比較例において得られた感光性樹脂組成物を、スピンコーターにてシリコン基板上に塗布し、ホットプレートにより、120℃で4分加熱乾燥し、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成した。
該乾燥塗膜に、高圧水銀ランプ(i線フィルター付き)を用いて、ブロード光を、パターンを有するフォトマスクを通して照射した。なお、露光量は50mJ/cm2ずつ上昇させ、フォトマスク透過後で、0~1000mJ/cm2の範囲で行った。
露光後の乾燥塗膜を、2.38%TMAH水溶液を用いて現像し、水によりリンスし、ポジ型のパターン膜を形成させた。
露光部が完全に溶出しなくなった露光量を、最小露光量とし、以下の評価基準に従い、評価した。評価結果を表1にまとめた。
なお、比較例1~3については、溶解コントラストが低く、パターン形成を行うことができなかったため、感度を評価することができず、「-」と記載した。
(評価基準)
◎:最小露光量が、300mJ/cm2以下であった。
○:最小露光量が、300mJ/cm2より大きく、500mJ/cm2以下であった。
×:最小露光量が、500mJ/cm2より大きかった。
【0085】
<<解像度評価>>
上記実施例および比較例において得られた感光性樹脂組成物を、スピンコーターにてシリコン基板上に塗布し、ホットプレートにより、120℃で4分加熱乾燥し、感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を形成した。
該乾燥塗膜に、高圧水銀ランプ(i線フィルター付き)を用いて、ブロード光を、一辺が50μm正方形パターンを有するフォトマスクを通して照射した。なお、露光量は25mJ/cm2とした。
露光後の乾燥塗膜を、2.38%TMAH水溶液を用いて現像し、水によりリンスし、ポジ型のパターン膜を形成させた。
正方形パターンの一辺の長さを5μmずつ減少させていき、電子顕微鏡(SEM“JSM-6010”)により観察したときに、つぶれや残査などが見られない、良好なパターンが形成される限界の一辺の長さを、解像度とし、以下の評価基準に従い、評価した。評価結果を表1にまとめた。
なお、比較例1~3については、溶解コントラストが低く、パターン形成を行うことができなかったため、感度を評価することができず、「-」と記載した。
(評価基準)
◎:一辺が10μm以下の正方形パターンを形成することができた。
○:一辺が10μm以下の正方形パターンは形成することができなかったが、一辺が10μmより大きく、20μm以下の正方形パターンは形成することができた。
×:一辺が20μm以下の正方形パターンを形成することができなかった。
【0086】
【0087】
上記表中に示す評価結果からも明らかなように、各実施例において得られた感光性樹脂組成物は、高い溶解コントラスト、感度および解像度を有していることが確認できた。
特に、ポリアミック酸の酸価(mgKOH/g)が、180以上、190以下である、実施例3および実施例6においては、溶解コントラストが特に優れていることが確認できた。