IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230213BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20230213BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G01N35/00 C
G01N35/02 C
A61L2/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019039257
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143944
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅木 博也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 貴洋
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-070788(JP,A)
【文献】特開昭63-163168(JP,A)
【文献】特開2018-117586(JP,A)
【文献】特開2018-171028(JP,A)
【文献】特開2013-075257(JP,A)
【文献】特開2001-091520(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056064(WO,A1)
【文献】特開2019-100849(JP,A)
【文献】特開2013-75257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬容器を保持する試薬容器保管庫と、
前記試薬容器を収容し、前記試薬容器保管庫の所望位置まで輸送する試薬駆動ディスクと、前記試薬駆動ディスク、又は、前記試薬容器を前記試薬駆動ディスクに装着する装填システムに紫外線を照射する照射部と、前記照射部を制御する制御部と、を備え、
前記試薬容器に前記照射部を備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記照射部を備える前記試薬容器は、
前記制御部と、前記照射部を駆動する駆動バッテリーと、紫外線照射のタイミングを切り替えるスイッチと、を有する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、特定のタイミングで前記照射部の点灯および消灯を切り替える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、特定のタイミングで前記スイッチを切り替えるよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記試薬駆動ディスクは、RFID(Radio Frequency Identification)情報読み出しデバイスAを備え、
前記制御部は、
前記照射部を備える前記試薬容器のRFIDタグ情報を前記RFID情報読み出しデバイスAにより読み出し、前記駆動バッテリーの残量を確認し、残量が必要十分量である場合、前記RFIDタグ情報を登録する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、
前記RFIDタグ情報の登録後、前記照射部を備える前記試薬容器を、前記試薬駆動ディスクへ移動し、殺菌動作の実行を命令する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記試薬駆動ディスクはRFID情報読み出しデバイスBを備え、
前記制御部は、
前記RFID情報読み出しデバイスBに隣接する位置まで、前記照射部を備える前記試薬容器を移動し、前記照射部を点灯して殺菌動作を実行するよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項に記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、前記殺菌動作の実行後、前記RFID情報読み出しデバイスBに隣接する位置まで、前記照射部を備える前記試薬容器を移動し、前記照射部を消灯するよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分析試薬など消耗品を扱うことが一般的である自動分析装置においては、それら消耗品の交換/補充頻度を低減することで、ワークフローを効率化できる。例えば、分析試薬については、装置内保存時の試薬安定性である“オンボード安定性”を高めることで、その交換/補充頻度を低減できる。これを実現する一つの手段として、試薬成分の熱変性を防ぐために、分析試薬保管庫に保冷機能を持たせるといった方法がある。この保冷機能に加えて、装置外部から侵入した細菌やカビなどの微生物による汚染(コンタミネーション)を防ぐことも、オンボード安定性を高める上で重要である。例えば、分析試薬保管庫に殺菌機能を持たせ、分析試薬保管庫内を常に清浄に保つことで、微生物による汚染を防ぐことができる。これらの機能は、分析試薬の交換/補充のための手間や時間の節約に役立ち、1日の取り扱いサンプル数が比較的多い大規模施設で特に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-219452号公報
【文献】特開2018-054292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動分析装置で使用する試薬のオンボード安定性の向上を目的とした、試薬殺菌手段に関する発明として、特許文献1および2に記載のものがある。これらはいずれも、洗浄液や緩衝液など、分析項目の種類に依らず共通で使用される“共通試薬”に対する殺菌を目的としたものである。詳細には、共通試薬ボトルに直接、殺菌部を設置し、定期的に殺菌作業を実施することで試薬ボトル内への微生物の混入及び繁殖を防ぐといったものである。一方で、分析試薬保管庫に対する殺菌を目的とした殺菌手段に関する技術開発等は未だなされていない。
【0005】
本発明の目的は、装置外部由来の微生物による汚染(コンタミネーション)を防ぐため、試薬容器保管庫に対する殺菌手段を備えた自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明においては、試薬容器を保持する試薬容器保管庫と、試薬容器を収容し、試薬容器保管庫の所望位置まで輸送する試薬ディスクと、試薬ディスクと試薬容器の装填システムに紫外線を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、を備える自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置外部由来の微生物によるコンタミネーションを防ぐことで、試薬容器保管庫内を清浄に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動分析装置の一概略構成を示す図。
図2】試薬容器(密閉状態)の斜視模式図。
図3】試薬容器(開放状態)の斜視模式図。
図4】試薬ディスクの外観図。
図5A】蓋が除かれた状態での試薬ディスクの外観図。
図5B】蓋が除かれた状態での試薬ディスクの平面図。
図5C】試薬ディスクの図。
図6】装填システムの概略図。
図7】試薬容器投入部と装填システムの関係を示した模式図。
図8】試薬容器投入部の拡大図。
図9】実施例1に係る殺菌ユニットの一構成例を示す図。
図10A】実施例1に係る殺菌ユニットのメカスイッチ(OFFの状態)の図。
図10B】実施例1に係る殺菌ユニットのメカスイッチ(ONの状態)の図。
図11】実施例1に係るメンテナンス作業として殺菌ユニットを使用する場合の殺菌手順のフローチャート図。
図12】実施例1に係るメンテナンス作業として殺菌ユニットを繰り返し使用する場合の殺菌手順のフローチャート図。
図13A】実施例1に係る分析測定開始前準備動作の際に殺菌ユニットを使用する場合の殺菌手順のフローチャート図。
図13B】実施例1に係る分析測定開始前準備動作の際に殺菌ユニットを使用する場合の殺菌手順の続きを示すフローチャート図。
図14】実施例2に係る殺菌ユニットの一設置構成例を示す図。
図15】実施例2に係る殺菌ユニットの他の設置構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、上述した本発明の課題を解決するための手段に至るために検討した主要な技術事項について説明する。試薬容器保管庫に対する殺菌手段の設計においては、特に省スペース化、稼動部との干渉の可能性、に留意する必要がある。
【0010】
まず、省スペース化について説明する。一般に共通試薬ボトルは、オペレータが容易にアクセスできるよう、装置外に設置場所を設けている場合が殆どである。それに対し、分析試薬容器は、装置内部(前述の試薬容器保管庫を指す)に設置場所を設けている場合が多い。また、分析試薬容器のローディング/アンローディングを自動で行う装置の場合は、省スペース化のため、試薬容器投入エリアが必要最低限の広さしか有していない場合が多い。よって、(i)殺菌手段を設置することで試薬容器保管庫の占有体積を極力増大させない事、(ii)殺菌手段を試薬容器保管庫に定期的にローディング/アンローディングすることを想定した場合、試薬容器投入エリア(以下、試薬ローディング部と呼ぶ)の占有体積を極力増大させない事、に留意しなければならない。
【0011】
次に、稼動部との干渉の可能性について説明する。後述するように、多くの場合、自動分析装置は試薬容器保管庫内に、分析試薬容器を収容し、且つ、試薬容器保管庫内の所望位置まで輸送する試薬駆動ディスクを備えている。この場合、殺菌手段とそれに関わる給電用のケーブルなどの部品が、稼動部である試薬駆動ディスクと空間的に干渉しないように留意する必要がある。
【0012】
以下、本発明を実施するための種々の形態を図面に従い順次説明する。本明細書では、「殺菌」または「微生物を死滅させる」との表現を、「微生物を殺す」という意味以外に、「微生物を無害化する」という意味でも使用する。また、これらの表現では、菌や微生物を全滅させるという意味以外にも、菌や微生物を減少させるという意味でも使用する。各実施例を詳述するに先立ち、各実施例に共通する自動分析装置の全体構成等を説明する。
【0013】
図1は自動分析装置の一構成例の全体を示す図である。自動分析器101内のサンプル輸送ライン114は、サンプル分注ユニット115に隣接するサンプル分注機構へサンプル104を輸送する。
【0014】
サンプル分注チップ/反応容器廃棄孔102、サンプル分注チップ保持部103、反応溶液撹拌ユニット105、サンプル分注チップ/反応容器ステーション107およびインキュベータ108の一部の上方にて、サンプル分注チップ/反応容器輸送ユニット106がX軸、Y軸およびZ軸の方向に移動するようになっている。サンプル分注チップ/反応容器輸送ユニット106は、反応容器をサンプル分注チップ/反応容器ステーション107からインキュベータ108へ移動させる。サンプル分注チップ/反応容器輸送ユニット106はまた、サンプル分注チップをサンプル分注チップ保持部103まで移動させる。
【0015】
サンプル分注ユニット115は、サンプル分注チップが置かれたサンプル分注チップ保
持部103の上部領域まで移動し、サンプル分注チップのいずれか1つをピックアップす
る。サンプルの上部領域に移動し、吸引によりサンプルを取得した後に、サンプル分注ユ
ニット115は更にインキュベータ108上の反応容器の上部領域へ移動し、サンプルを
反応容器内に排出する。この後でサンプル分注ユニット115は、サンプル分注チップ/
反応容器廃棄孔の上部領域まで移動し、廃棄のためにサンプル分注チップを孔の内部に落
下する。インキュベータ108は、複数の反応容器を係止する能力を有し、反応容器の各
々を回転運動によりインキュベータ108の円周上の所定位置まで移動させる。
【0016】
試薬ディスク111は、複数の試薬容器110を保持するようになっており、回転運動によって各試薬容器110を試薬ディスク111の円周部上の所定位置へ移動させる。試薬ディスク111上の所定の種類の試薬の上部領域へ試薬分注機構109が移動し、次にこの分注機構は、所定の量の試薬を吸引し、インキュベータ上の所定の反応容器の上部領域へ移動した後に、試薬を反応容器内に排出する。
【0017】
試薬ディスク111上には、撹拌手段としての磁性粒子攪拌アーム116(スティラーとも称される)がセットされている。このアーム116は、攪拌するべき磁性粒子溶液が入っている試薬容器の上部領域へ移動し、アーム116の磁性粒子攪拌要素を下げ、この攪拌要素を回転させることによって磁性粒子溶液を攪拌する。溶液内の磁性粒子が自然沈殿しないようにするために、磁性粒子攪拌アーム116は、試薬が分注される直前に磁性粒子を攪拌する。攪拌後、磁性粒子攪拌アーム116は、クリーニング液が入ったクリーニングセルの上部領域へ移動した後に降下し、磁性粒子攪拌要素を回転させ、この攪拌要素に付着している磁性粒子を取り除く。
【0018】
サンプルと所定の試薬を分注してから所定の反応時間が経過した後に形成される反応溶
液を、反応溶液吸引ノズル112が反応容器から吸引し、次に検出ユニット113へ反応
溶液を供給する。この検出ユニット113は反応溶液中の被測定物質を定性/定量分析す
る。サンプル分注チップ/反応容器輸送ユニット106は、分析された反応溶液をサンプル
分注先端/反応容器廃棄孔の上部領域に移動させ、廃棄するために反応容器を廃棄孔内に入れる。
【0019】
なお、自動分析装置のうち、以上説明したサンプル搬送ライン114、試薬ディスク1
11、インキュベータ108、サンプル分注ユニット115、試薬分注機構109、サン
プル分注チップ・反応容器輸送ユニット106、検出ユニット113を分析動作部と称する。
さらに、自動分析装置は、分析動作部に加えて、自動分析装置全体の動作を制御する制御
部117と操作部118とを備えている。制御部117は、例えばハードウェア基板とコ
ンピュータで構成され、ハードディスクなどの記憶装置119が接続されている。操作部
118は、ディスプレイである表示装置や、マウス、キーボードなどの入力装置から構成
されている。記憶装置119には例えば各ユニットに対応した温度範囲などが記憶されて
いる。
【0020】
制御部117は、専用の回路基板によってハードウェアとして構成されていてもよいし、コンピュータで実行されるソフトウェアによって構成されてもよい。ハードウェアにより構成する場合には、処理を実行する複数の演算器を配線基板上、または半導体チップまたはパッケージ内に集積することにより実現できる。ソフトウェアにより構成する場合には、コンピュータに高速な汎用CPUを搭載して、所望の演算処理を実行するプログラムを実行することで実現できる。このプログラムが記録された記録媒体により、既存の装置をアップグレードすることも可能である。また、これらの装置や回路、コンピュータ間は、有線または無線のネットワークで接続され、適宜データが送受信される。
【0021】
図2図3は、各実施例の自動分析装置で使用する試薬容器の一例を示す斜視模式図である。この試薬容器110は、3本の容器で1セットを構成しており、例えば磁性粒子溶液と2種類の試薬で1セットを構成している。各容器は、試薬を収容する本体部と、試薬に対してアクセス可能な開口部303と、開口部303を密閉可能な蓋部201からなっている。試薬容器110全体の外形は、肩部202を有する略直方体の形状であり、肩部の上側に3つの開口部303が並んで上側に突出している。自動分析装置に組み込まれた試薬容器蓋開閉装置による開閉動作を可能とするため、蓋部201の一端には丸棒状の突起部302が設けられており、蓋部201に対して試薬容器110の側面方向に突出している。また、試薬容器110の端面にはRFID(Radio Frequency Identification)タグ203が取り付けられている。RFIDタグ203の内蔵メモリには、当該試薬容器110を特定するための容器ID、その試薬容器110に収容されている試薬の種類、試薬の量、試薬の有効期限、その他必要な情報が格納されている。なお、試薬容器情報の読み取り手段には、RFIDに限らずバーコードその他の情報読み取り手段を用いても構わない。
【0022】
図2は、密閉状態の試薬容器を示す斜視模式図である。初期状態では開口部303は蓋部201によって密閉されている。なお、開口部303を確実に密閉するため、蓋部には開口部303内に挿入して密閉することが可能な密閉部材304が設けられている。開口部303が常時開放されていると、内部の試薬が蒸発したり、試薬濃度が変化する恐れがある。また、取り扱いの際に誤って試薬容器110を倒してしまった場合に、試薬容器110内の試薬がこぼれる危険がある。開口部303を蓋部201によって密閉しておき、必要な時に蓋部201を開くことにより、これらの不都合を軽減することができる。図3は、開放状態の試薬容器を示す斜視模式図である。蓋部201はヒンジ301を回転軸として回動することにより突起部302の方から蓋部201が開く。このとき、密閉部材304は完全に開口部303から取り除かれており、蓋部201はヒンジ301を中心として大きな角度で開放されている。
【0023】
図4は、各実施例にかかわる試薬ディスク111の外観図である。試薬容器110を一定の温度に制御するために、試薬ディスク111は断熱機能を有する蓋401とジャケット402とを含む。また、蓋401の一部にRFID情報読み出しデバイス403が備わっている。後述するように、ジャケット402もRFID情報読み出しデバイスを備えており、それと区別するために上記のデバイス403をRFID情報読み出しデバイスAと称する。
【0024】
図5Aは、蓋401が除かれた状態を示す試薬ディスク111の外観図、図5Bはその平面図である。この試薬ディスク111は、試薬容器110を所望する位置へ輸送するための試薬駆動ディスク501(第1ターンテーブルパーティションとも称される)と、試薬駆動ディスク501を駆動する試薬駆動ディスク駆動ユニット502と、試薬攪拌位置508を有する固定ディスク503(第2ターンテーブルパーティションとも称される)と、分析中でもシステム内に試薬容器110をマウントできるようにする装填システム504と、試薬駆動ディスク501から固定ディスク503または装填システム504へ試薬容器110を移動させるための試薬容器移動ユニット505(コンテナシフト機構とも称される)と、RFID情報読み出しデバイス506(前述の蓋401上の読み出しデバイス403と区別するために、RFID情報読み出しデバイスBと称する)と、試薬容器110の間のスペースを区切るためのパーティションプレートとを含む。ここで、パーティションプレートで仕切られた各スペースを試薬容器設置スロットと呼ぶ。
【0025】
図5Bの平面図に明らかなように、試薬駆動ディスク501の作動経路上には試薬分注位置509が存在する。試薬攪拌位置508は、試薬分注位置509に隣接し、試薬分注ピペットの作動経路上に存在する。この試薬ディスクの領域は処理ゾーンとも称される。
【0026】
図5Cは、図5A図5Bに示された試薬ディスクの側面図である。試薬攪拌位置508において、磁性粒子攪拌アーム116が試薬容器内部の磁性粒子溶液を攪拌している間、試薬分注ピペット109は、同じ種類の試薬を他の反応容器内に分注できる。これによって、磁性粒子攪拌時間を充分確保でき、分注と攪拌を同時に実行することが可能となっている。従って、スループットを低減することなく分析することができる。図5Cでは、試薬分注位置509と試薬攪拌位置508とが直線状にラインアップされており、双方の位置は試薬分注ピペットの作動経路上の同じ位置に存在する。試薬分注ピペットの作動経路が円周上にあった場合でも、実質的に同じことが言える。
【0027】
図6は、図5Aの装填システム504の略図である。この装填システムは、試薬ディスクの内側円周部分に位置する固定ディスクの一部を形成し、このシステムは、上方および下方に作動する。例えば試薬ディスクの外側円周部分に固定ディスクが存在する場合、装填システムを垂直方向または横方向に引き出すことができるように、装填システムを構成してもよい。更に固定ディスクの一部は装填システムであり、システムは最大5つの試薬容器を交換できるようにする形状となっているため、2つ以上の試薬容器を交換できるようにしてもよいし、1つの試薬容器だけを交換できるようにしてもよい。装填システム504は、試薬容器110を載せる試薬設置ユニット601と、試薬を上方/下方に作動させるようになっている試薬アクチュエータ602を含む。
【0028】
図7は各実施例の自動分析装置の試薬容器投入部と装填システムの関係を示した模式図であり、装填システム504が最上部に位置した状態を示している。試薬容器投入部は、試薬容器を装置内部に導入させる開口701と、開口701につながる開口前方の上面702と下面703の間の空間で構成される試薬ローディング部を有する。なお、装填システムが最下部に位置する場合は、開口701は遮蔽部材によって塞がれた状態となる。本実施例では、開口701につながる開口前方の下面に試薬容器を案内するための複数のガイド溝704が放射状に配置されている。ガイド溝704は、試薬容器110の下端部をその中でスライドさせて開口701の内部に向けて案内するためのものであり、本例では5本のガイド溝が試薬容器の挿入方向に沿って設けられている。図示されているように、放射状に配置された5個のガイド溝704は、同じく放射状に配置された装填システム上の5個のスロットと連通している。すなわち、放射状に配置されたスロット801と放射状に配置されたガイド溝704は完全に連続して一体化した放射形状の溝を構成している。
【0029】
オペレータは試薬容器の底部をガイド溝704に入れ、試薬容器を掴んだままガイド溝704に沿って開口701の奥の方にスライドさせていくだけで試薬容器をスロット801内に挿入することができる。各ガイド溝の上方には状態を示すインジケータランプ705が設けられている。また、開口701の脇にはローダスイッチ706が設けられている。後述するように、ローダスイッチ706は装填システム504を上昇/下降させるためのハードスイッチであり、試薬排出/追加の際に使用される。
【0030】
図8は試薬ローディング部を拡大したものである。図示したように、試薬ローディング部下面のガイド溝704に加えて、上面にもガイド溝802が設置されている。上面のガイド溝802も、下面のガイド溝と同様に放射状に配置されている。試薬容器110は投入エリアに設けられた上下のガイド溝704・802に上端と下端を固定されてスライドされるため、より精度よくスロット801に挿入することができる。さらに、上面のガイド溝802は試薬容器の蓋の開閉機構を有しており、試薬容器を最奥にスライドさせる過程で蓋が半開状態になる仕組みになっている(以下、当該機構をハーフオープナー、当該機能をハーフオープン機能とそれぞれ称する)。これにより、オペレータは試薬容器を投入する際に、蓋をその都度自身の手で開ける必要がない。
【0031】
以下、各実施例に係る自動分析装置のオペレータによる試薬排出/追加シーケンスの一例について説明する。
まず、連続した試薬装填動作の流れについて説明する。オペレータはホストコンピュータを通して試薬排出/追加リクエストを選択する。ホストコンピュータは、装置のそのときの作動ステータスを分析し、次に試薬交換が実行可能であると判断された場合に、ホストコンピュータはインジケータランプ705を点灯させて試薬交換を実行できることを知らせる。オペレータはホストコンピュータおよびインジケータランプ705の双方からの情報に従い、試薬が交換可能であると判断する。
【0032】
オペレータによる試薬排出リクエストを受け付けた後、試薬駆動ディスク501が回転し、排出対象の試薬容器を装填システム504に隣接する位置まで移動させる。次いで、試薬容器移動ユニット505は、当該試薬容器を試薬駆動ディスク501から装填システム504へ移動させる。この状態でオペレータによってローダスイッチ706が押下されると、装填システム504は上方に作動し、オペレータによって当該試薬容器を排出可能な状態となる。
【0033】
ここで、試薬の追加が必要な場合は、オペレータは追加対象の試薬容器を装填システム504に設置することができる。当該試薬容器を設置後、オペレータによってローダスイッチ706が押下されると、装填システム504は下方に作動する。その際、装填システム504は、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)に隣接する位置で一度停止する。ここで当該デバイスにより、追加試薬容器のRFID情報が読み出され、次いで装置に登録される。試薬情報が登録されると、当該試薬容器は試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される。
【0034】
なお、追加試薬容器を誤って前後逆向きに挿入してしまった場合、RFID情報は正常に読み出されず、試薬情報は登録されない。このとき装置は、試薬情報登録に失敗した旨を、ディスプレイを介してオペレータに通知する。さらに、装填システム504を上方に作動し、登録に失敗した試薬容器が取出し可能な状態にする。この状態で、オペレータはスロット801から容器を一度取り出し、正しい向きで容器を再度ガイドに挿入する。
【実施例1】
【0035】
実施例1は、試薬容器を保持する試薬容器保管庫と、試薬容器を収容し、試薬容器保管庫の所望位置まで輸送する試薬ディスクと、試薬ディスクと試薬容器の装填システムに紫外線を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、を備える構成の自動分析装置の実施例である。特に、本実施例では、殺菌のための紫外線の照射部を試薬容器に装着させる場合の構成について説明する。
【0036】
図9は本実施例の自動分析装置における殺菌のための殺菌ユニット901を示している。同図に示すように、試薬容器110の内部に紫外線照射部902をはじめとする全ての構成部品が組み込まれており、容器自体の形状は通常の試薬容器と同一である。このような構造にすることで、通常の試薬容器と同一の方法で、装置にローディングすることが可能となる。つまり、当該容器専用の投入部を設置する必要がなく、省スペース化を実現することが可能となる。
【0037】
紫外線照射部902以外の構成部品には、照射部の紫外線照射を制御する制御部903、駆動用バッテリー904、紫外線照射のタイミングを切り替えるメカスイッチ905、紫外線照射に伴う局所的な発熱を緩和するための放熱部906、バッテリー残量を表示するバッテリー残量インジケータ907がある。このように、試薬容器に照射部を備え、照射部を備える試薬容器は、制御部と、照射部を駆動する駆動バッテリーと、紫外線照射のタイミングを切り替えるスイッチを少なくとも有している。
【0038】
ここで、紫外線照射部902には紫外LEDを使用する。前述の通り、試薬のオンボード安定性を確保するために、試薬ディスク111内の温度を一定(例えば2~10℃)に保つことが望まれる。よって、紫外線照射部902に放熱部906を装着し、紫外線照射に伴う局所的な発熱を緩和することは、装置上での試薬の安定保存の観点で重要である。
【0039】
次に、メカスイッチ905による照射タイミングの切替機能について説明する。図10A、10Bはそれぞれ当該スイッチ905がOFFの状態、ONの状態を示している。図10Aに示すように、スイッチ905は蓋部201が完全に閉じた状態ではOFFになる。一方で、図10Bに示すように、蓋部201が半開状態になった際にONにする(全開時もONになる)。スイッチ905は凸部1001の下にバネ1002を備えており、蓋部201が完全に閉じた状態ではバネ1002および凸部1001が押し込まれ、制御部と電気的に絶縁した状態になり、紫外線が照射されない。
【0040】
ここで、蓋部201が半開状態になると、バネ1002の開放に伴い凸部1001の押込みが解除され、制御部と電気的に導通した状態になり、紫外線が照射される。この機能は次に説明するように、殺菌ユニット901によるオペレータの紫外線曝露を防ぐ上で有用である。この殺菌ユニット901を使用する際、オペレータはまず蓋部201が閉じた状態で当該ユニットを試薬ローディング部のガイド溝704に設置する。
【0041】
次いで、殺菌ユニット901投入前の所定の処理を実施すると、例えばユーザーインターフェイス(UI)を介して装置に殺菌ユニット901投入を命令した後にローダスイッチ706を押下するなどすると、装填システム504が上昇する。さらに、オペレータは設置していた殺菌ユニット901をガイド溝704に沿ってスライドさせスロット801内に挿入する。このとき、殺菌ユニット901が上面のガイド溝802を通過する際に、前述のハーフオープン機能によって蓋部201が半開状態になり、スイッチ905がONの状態になる。つまり、殺菌ユニット901がスロット801内に挿入されて初めて紫外線照射が開始される。これにより、当該ユニットによるオペレータの紫外線曝露を未然に防ぐことができる。メカスイッチ905の数は3つである必要はなく、1つもしくは2つでもよい。
【0042】
照射タイミングの切替機構は上記に限らず、複数種類のスイッチを併用してもよい。例えば、上記スイッチ905に加えて、同じくメカスイッチの一つであるトグルスイッチを併用してもよい。オペレータによって自由に切り替えが行えるように当該トグルスイッチを容器外面に装着し、トグルスイッチがONになる、及びメカスイッチ905がONになる、という2つの条件が揃って初めて紫外線が照射されるという仕組みにしてもよい。
【0043】
メカスイッチ以外にも、照度センサ、温度センサ、加速度センサといったセンサを利用した切替機構を使用してもよい。照度センサを利用したスイッチは、照度が予め設定された閾値を下回った際にスイッチをONの状態にするというものである。殺菌ユニット901が試薬ディスク内に存在する場合においてのみ閾値を下回るようにしておけば、試薬ディスク外でのオペレータの紫外線暴露を防ぐことができる。
【0044】
温度センサを利用したスイッチは、温度が予め設定された閾値を下回った際にスイッチをONの状態にするというものである。これも照度センサ同様に、殺菌ユニット901が試薬ディスク内に存在する場合においてのみ閾値を下回るようにしておけば、試薬ディスク外でのオペレータの紫外線暴露を防ぐことができる。加速度センサを利用したスイッチは、一定の加速度を検知した際にスイッチをONの状態にするというものである。ここでは、試薬ディスクが殺菌ユニットを保持した上で、試薬駆動ディスク501を回転させながら紫外線を照射する場合を想定している。つまり、試薬駆動ディスク501が停止した状態から回転動作に移行した際に生じる加速度を検知して紫外線を照射するというものである。
【0045】
上記以外に、無線通信を利用した切替機構を使用してもよい。例えば、殺菌ユニットを電源が切れた状態で試薬ディスクにローディング後、当該ユニット対応のリモコンによりスイッチをONにしてもよい。また、無線通信技術の一つで、本実施例の自動分析装置でも採用されているRFIDを利用してもよい。例えば、RFIDタグ203に、タグ情報を読み取る際に当該ユニットのスイッチを切り替えるような回路を組み込んでおけばよい。こうすることで、当該ユニットのローディング時に、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)によりRFIDタグ203のタグ情報が読み取られた際にスイッチがONになる。一方、当該ユニットのアンローディング時に、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)により再度タグ情報が読み取られた際にスイッチがOFFになる。
【0046】
この切替手段にはRFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)を利用してもよい。すなわち、当該ユニットをローディングした直後に、試薬駆動ディスク501が回転し、読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動する。続けてRFIDタグ203のタグ情報が読み取られ、スイッチがONになる。当該ユニットを使用後、再びデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し、タグ情報が読み取られることでスイッチがOFFになる。無線通信を利用したスイッチングの大きなメリットは、試薬容器保管庫内部のようなオペレータがアクセス不可能な領域で紫外線照射を切り替えられる点である。
【0047】
このようにスイッチの数/種類を増やし、紫外線照射に至るステップを増やすことで、オペレータの紫外線曝露のリスクを低減することができる。照射までのステップを増やす事以外に、照射に至るロジックを複雑化することでも上記リスクを低減することができる。図9に示した、メカスイッチ905を3つ備えた場合を例に挙げて詳細を説明する。
【0048】
ロジックの複雑化の一つの手段として、3つのメカスイッチの切替の順番に対して一定のルールを設けるという方法がある。例えば、試薬容器110においてRFIDタグ203が貼られている面を前方/前面と呼ぶとしたとき、後方の容器から順にスイッチがONになった場合のみ紫外線が照射されるとしてもよい。実際に殺菌ユニット901を正しい向き(RFIDタグ203がRFID情報読み出しデバイス403と正対する向き)で最奥にスライドさせた場合、上記の順番でスイッチがONになる。このようなルールを設けることで、誤ってオペレータが蓋部201を開けてしまった際に紫外線が照射されるリスクを低減することができる。
【0049】
前述のとおり、本実施例では、紫外線照射部として紫外LED(Light Emitting Diode)を使用する場合を説明した。紫外光源として水銀ランプを用いることもできるものの、紫外LEDを用いた方が省スペース化の点でメリットがある。紫外LEDからの放射光の中心波長は、殺菌に有用であることが知られている180nmから340nmが望ましい。特に殺菌効率の高い波長である260nm付近、すなわち230nmから290nmであることが望ましい。
【0050】
紫外光の照射光量はLEDに給電する電流、電圧、および通電時間に依存し、制御部903によって制御される。殺菌に必要な単位面積当りの紫外線照射光量は殺菌対象の菌種および照射波長の組合せによって決まる。よって、菌種と使用する紫外線の波長の各組合せについて、殺菌に必要な照射光量を予め実測または計算によって求める。制御部903の記憶部903Aには、これらの情報がテーブルとして格納されている。
【0051】
殺菌効果の観点では照射光量は大きいほうが望ましい。その一方で、紫外線照射に伴う、試薬成分や、試薬容器保管庫内の各種構成部材(試薬容器や試薬ディスク)への影響を考慮する必要がある。すなわち、それらが紫外線照射によって変性しないよう、照射波長および照射光量を制御する必要がある。変性が許容範囲内となる照射光量は、使用する試薬と照射波長の組合せによって決まるため、各組合せについて予め実測または計算によって求める。制御部903の記憶部903Aには、これらの情報がテーブルとして格納されている。なお、試薬成分や構成部材の変性は、赤外分光法や質量分析法などにより評価される化学結合や分子量の変化によって定義可能である。さらに、構成部材の機械的特性の変化については、ナノインデンター等を使用した押し込み試験で評価される硬度やヤング率等のパラメータの変化によって定義可能である。
【0052】
照射光量の制御においては、上記の殺菌効果、試薬成分/各種構成部品の変性、という観点に加えて、更に、試薬ディスク内の温度環境への影響という観点も必要となる。例えば、試薬ディスク内の温度を2~10℃に保つ必要がある場合、LEDの点灯によって殺菌ユニット周辺温度が10℃を超過しないように気を付けなければならない。本実施例では、照射部に放熱部906を装着することで局所的な温度上昇を抑制することができる。ここで、放熱部906にはヒートシンクとファンを使用する。
【0053】
使用するLEDの数は本実施例のように1個に限定する必要はなく、照射範囲の拡大を目的に複数使用してもよい。また、レンズやミラーなどの光学部材を利用してもよい。光学部材については、殺菌ユニット903に付与してもよいし、試薬容器保管庫内に備え付けてもよい。さらに、アクチュエータを使用し、LEDの取付け位置/角度を可変にすることで照射範囲の拡大を図ることもできる。
【0054】
上述した通り、紫外線照射部にはLED以外にも水銀ランプも使用することができる。照射光量は水銀ランプに給電する電流、電圧、および通電時間に依存する。LEDの場合と同様に、殺菌対象の菌種とランプの発光波長の各組合せについて、殺菌に必要な照射光量を予め実測または計算によって求める。制御部903の記憶部903Aには、これらの情報がテーブルとして格納されている。さらに、試薬成分や試薬容器保管庫内の各種構成部材の変性についてもLEDの場合と同様に考慮する必要がある。すなわち、変性が許容範囲内となる照射光量を、使用する試薬と照射波長の各組合せについて予め実測または計算によって求める。
【0055】
制御部903の記憶部903Aには、これらの情報が表テーブルとして格納されている。なお、水銀ランプには殺菌に寄与しない可視~赤外領域の波長も含まれるため、光学フィルターによって照射波長を制御することが望まれる。照射範囲については、ランプの数を増やす、レンズやミラーなどの光学部材を併用する、などして拡大可能である。光学部材は殺菌ユニット903に付与してもよいし、試薬容器保管庫内に備え付けてもよい。さらに、アクチュエータを使用し、ランプの取付け位置/角度を可変にすることで照射範囲の拡大を図ることもできる。
【0056】
紫外線照射部をはじめとする殺菌ユニット903の各構成部品への給電にはバッテリーを使用する。利便性の観点から、バッテリーは充電によって繰り返し使用できるものが望ましい。使用バッテリーの選択においては、安全面、エネルギー密度、及び質量、などについて考慮する必要がある。本実施例では、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、およびリチウムポリマー電池といった、一般的な充電バッテリーの使用を想定している。なお、充電作業はオペレータが定期的に装置外で行う。すなわち、殺菌ユニットを一定回数使用後、当該ユニットをアンローディングし、バッテリーを取り出す。次いで、取り出したバッテリーを専用の充電器に設置し充電を行う。充電器は、バッテリーを取り出すことなく殺菌ユニットを設置するだけで充電可能な構成にしてもよい。なお、充電方式には無線充電を採用してもよい。
【0057】
上記の装置外での充電に対して、例えば試薬容器保管庫など、装置内に充電ポートを設置してもよい。例えば、固定ディスク503内の一部を充電ポートとして使用してもよい。このとき、試薬攪拌位置508を充電ポートとしてもよいし、新たに充電ポートを設置してもよい。また、試薬駆動ディスク501内の試薬容器設置スロットの一つを殺菌ユニット専用スロットとし、そこで充電を行なってもよい。ここで、殺菌ユニット専用とは、分析試薬容器と共用のスロットではないことを意味する。なお、充電方式には無線充電を採用してもよい。充電手順については、殺菌ユニットの運用方法(後述)と併せて説明する。
【0058】
次にバッテリー残量の管理方法について説明する。バッテリー残量は、前記バッテリー残量インジケータ907によってオペレータによる目視確認が可能である。また、前述の装置内に設置した充電ポートをバッテリー残量が確認可能な構成にしてもよい。これにより、充電ポートに殺菌ユニットを移動・設置する度に、装置によって自動でバッテリー残量を確認することができる。さらには、RFIDタグ203のタグ情報の一つとしてバッテリー残量を記憶させることができる。これにより、RFID情報読み出しデバイス403/506でタグ情報が読み取られる度にバッテリー残量を確認することができる。ここで、充電ポート/RFID情報読み出しデバイスによって読み出されたバッテリー残量は装置GUI上に表示され、オペレータによって確認可能とする。
【0059】
以下に、本実施例の殺菌ユニットの運用方法を説明する。ここでは、オペレータが装置メンテナンス作業として当該ユニットを使用する場合を考える。また、本作業実施前は、装置は分析動作などを実行していない、所謂スタンバイ状態にあるものとする。さらに、当該ユニットを試薬駆動ディスク501内の試薬容器設置スロットに保持した状態で、試薬駆動ディスクを回転させながら紫外線を照射することを想定する。ここで言う試薬容器設置スロットとは、前述の殺菌ユニット専用のスロットではなく、分析試薬容器と共用のスロットを指す。なお、紫外線照射タイミングの切替機構として、前述のハーフオープナーを利用したメカスイッチ905、およびRFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)との無線通信を利用したスイッチを併用する場合を例に挙げる。
【0060】
図11図12は作業手順のフローチャートであり、その動作主体は、制御部117、903により制御される自動分析装置、並びにオペレータである。図11は当該作業を1回実施した後に使用した殺菌ユニットをアンローディングする場合を示している。一方、図12はバッテリー残量がなくなるまで当該作業を繰り返し実施した後、使用した殺菌ユニットをアンローディングする場合を示している。
【0061】
まず、前者について説明する。殺菌ユニットを装置へローディングするにあたり、オペレータは最初に装置UI上で殺菌ユニットの投入を命令する(S1101)。すると、装置は試薬駆動ディスク上に当該ユニットを設置するための空きスロットがあるか確認する(S1102)。空きスロットがないと判定された場合は、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1103)。それを確認したオペレータは、適当な試薬容器を一つ選択し、アンローディングする(試薬排出の手順は既に述べているためここでは省略する、S1104)。試薬排出後、再度、当該ユニットの投入を命令する(S1101)。
【0062】
装置によって空きスロットの存在が確認された後、オペレータはローダスイッチ706を押下する(S1105)。すると、装填システム504が上方に作動し、オペレータによる殺菌ユニットの投入が可能となる(S1106)。この状態でオペレータは当該ユニットを装填システム504に設置し(S1107)、再びローダスイッチ706を押下する(S1108)。すると、装填システム504は下方に作動する(S1109)。その過程で、殺菌ユニットのRFIDタグに記憶されているバッテリー残量がRFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)によって読み取られる(S1110)。
【0063】
ここで、殺菌ユニットを誤って前後逆向きに挿入してしまったためにRFID情報が正常に読み出されなかった場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1111)。続けて、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1112)。警告メッセージを確認したオペレータはスロット801から殺菌ユニットを一度取り出し、正しい向きで再度ガイドに挿入する(S1113)。
【0064】
RFIDタグ情報の読み出しにおいて(S1110)、当該情報が正常に読み出された場合、次に読み出されたバッテリー残量の確認を行う(S1114)。ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1115)。続けて、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1116)。警告メッセージを確認したオペレータは、装填システム504から殺菌ユニットを排出した後(S1117)、バッテリーの充電を行う(S1118)。バッテリー充電後、再び殺菌ユニットの投入を行う(S1101~)。
【0065】
バッテリー残量が必要十分量である場合、バッテリー残量をはじめとする殺菌ユニットの情報が装置の記憶部に登録される(S1119)。登録後、殺菌ユニットは試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される(S1120)。次に、オペレータは装置のUI上で殺菌動作の実行を命令する(S1121)。すると、殺菌ユニットはRFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し(S1122)、当該デバイスとの通信によってLEDが点灯する(S1123)。LED点灯後、所定のシーケンスに基づき試薬駆動ディスクが回転することで保管庫内の殺菌を行う(S1124)。すなわち、制御部は、RFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで殺菌ユニットが移動した後、紫外線を照射するよう制御する。
【0066】
殺菌動作完了後、再び、殺菌ユニットは上記読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動する(S1125)。続けて、当該デバイスとの通信によってLEDが消灯する(S1126)。LED消灯後、殺菌ユニットは装填システム504に隣接する位置まで移動し、さらに試薬容器移動ユニット505により装填システム504まで移動される(S1127)。その後、装填システム504が上方に作動し(S1128)、オペレータによる殺菌ユニットが取り出し可能な状態になる(S1129)。最後に、オペレータが殺菌ユニットを取り出し、本メンテナンス作業は完了となる。
【0067】
このように、制御部は、RFIDタグ情報の登録後、殺菌ユニットを試薬駆動ディスクへ移動し、殺菌動作の実行を命令する。また、制御部は、RFID情報読み出しデバイスBに隣接する位置まで、殺菌ユニットを移動した後、殺菌ユニットを点灯して殺菌動作を実行するよう制御する。更に、制御部は、殺菌動作の実行後、RFID情報読み出しデバイスBに隣接する位置まで、殺菌ユニットを移動した後、照射部を消灯するよう制御する。
【0068】
次に、図12を使って、バッテリー残量がなくなるまで本メンテナンス作業を繰り返し実施する場合について説明する。ここでは、過去に本メンテナンス作業を実施し、使用後の殺菌ユニットがそのまま試薬ディスク内に保持されている場合を想定する。また、最初、LEDは消灯した状態であるとする。まず、オペレータは装置UI上で殺菌動作の実行を命令する(S1201)。すると、殺菌ユニットは装填システム504に隣接する位置まで移動し、さらに試薬容器移動ユニット505により装填システム504まで移動される(S1202)。その後、装填システム504が上方に作動し、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)に隣接する位置で一度停止する(S1203)。さらに、当該デバイス(デバイスA)により、バッテリー残量が読み出される(S1204)。
【0069】
ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1205)。次いで、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1206)。警告メッセージを確認したオペレータは、装填システム504から殺菌ユニットを排出した後(S1207)、バッテリーの充電を行う(S1208)。
【0070】
バッテリー残量が必要十分量である場合、バッテリー残量等の殺菌ユニット情報が更新される(S1209)。更新後、装填システム504は下方に作動し(S1210)、殺菌ユニットが試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される(S1211)。続けて、殺菌ユニットはRFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し(S1212)、当該デバイスとの通信によってLEDが点灯する(S1213)。LED点灯後、所定のシーケンスに基づき試薬駆動ディスクが回転することで保管庫内の殺菌を行う(S1214)。
【0071】
殺菌動作完了後、再び、殺菌ユニットは上記読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し(S1215)、当該デバイスとの通信によってLEDが消灯する(S1216)。LED消灯後、殺菌ユニットは装填システム504に隣接する位置まで移動し、さらに試薬容器移動ユニット505により装填システム504まで移動される(S1217)。装填システム504が上方に作動し、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)に隣接する位置で一度停止する(S1218)。次いで、当該デバイス(デバイスA)によりバッテリー残量が読み出される(S1219)。
【0072】
ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1220)。その後、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1221)。警告メッセージを確認したオペレータは、装填システム504から殺菌ユニットを排出し(S1222)、バッテリーの充電を行う(S1223)。
【0073】
バッテリー残量が必要十分量である場合、殺菌ユニット情報が更新される(S1224)。更新後、装填システム504は下方に作動し(S1225)、殺菌ユニットが試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される(S1226)。これで本メンテナンス作業は完了となる。最後に更新された殺菌ユニット情報は記憶装置119によって記憶され、次のメンテナンス作業時にオペレータは事前に殺菌ユニットのローディング状況やバッテリー残量を確認できる。
【0074】
また、メンテナンス作業完了時に、作業日時を記憶装置119によって記憶してもよい。そうすることで、例えば、最後に本メンテナンス作業を実施した日から一定期間空いた場合に、作業実施を促すメッセージをGUI上に表示するといった機能を持たせることができる。また、メッセージ表示に加えて、測定依頼がないときに装置が自動で作業を実施してもよい。バッテリーについても、試薬容器保管庫内(固定ディスク503内や試薬駆動ディスク501内)に充電ポートがある場合、作業完了後に殺菌ユニットを充電ポートに移動させておけば、次の作業実施までにバッテリーを充電させておくことができる。なお、装置UI上で殺菌ユニットの排出を命令することで、たとえバッテリー残量が必要十分量ある場合であっても任意のタイミングで殺菌ユニットを排出することができるものとする。以上は、オペレータが装置メンテナンス作業として殺菌ユニットを使用する場合である。
【0075】
次に、分析測定開始前の準備動作の際に当該作業を実施する場合について説明する。ここでは、過去に本メンテナンス作業を実施し、使用後の殺菌ユニットがそのまま試薬ディスク内または保管庫内の充電ポート(設置されている場合)に保持されている場合を例に挙げる。図13A図13Bはその作業手順のフローチャートを示し、その動作主体は、制御部117、903により制御される自動分析装置、並びにオペレータである。
【0076】
まず、図13Aに示すように、オペレータが分析測定を依頼すると、分析測定開始前の準備動作が始まる(S1301)。殺菌ユニットは装填システム504に隣接する位置まで移動し、さらに試薬容器移動ユニット505により装填システム504まで移動される(S1302)。その後、装填システム504が上方に作動し、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)に隣接する位置で一度停止する(S1303)。さらに、当該デバイス(デバイスA)により、バッテリー残量が読み出される(S1304)。ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1305)。次いで、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1306)。警告メッセージを確認したオペレータは、装填システム504から殺菌ユニットを排出した後(S1307)、バッテリー充電済みの殺菌ユニットを設置する(S1310)。
【0077】
バッテリー充電済みのものがない場合は、オペレータはローダスイッチ706を押下する(S1308)。それに伴い装填システム504は下方に作動し(S1309)、その後、殺菌動作を実施せず、分析開始前準備動作が完了次第、分析動作に移行する。バッテリー充電済みのものを新たに設置した場合、オペレータによりローダスイッチ706が押下されると(S1311)、装填システムが下方に作動する(S1312)。その過程で上記読み出しデバイス(デバイスA)によりバッテリー残量が読み出される(S1313)。
【0078】
ここで、殺菌ユニットを誤って前後逆向きに挿入してしまったためにRFID情報が正常に読み出されなかった場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1314)。次いで、殺菌ユニットを排出するために装填システム504が上方に作動する(S1315)。警告メッセージを確認したオペレータはスロット801から殺菌ユニットを一度取り出し、正しい向きで再度ガイドに挿入する(S1316)。RFID情報の読み出しにおいて(S1313)、当該情報が正常に読み出された場合、次にバッテリー残量の確認を行う(S1317)。ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1318)。その後、殺菌動作を実施せず、分析開始前準備動作が完了次第、分析動作に移行する。
【0079】
一方、図13Bに示すように、バッテリー残量が必要十分量である場合、バッテリー残量等の殺菌ユニット情報が更新される(S1319)。その後、装填システム504は下方に作動し(S1320)、殺菌ユニットが試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される(S1321)。続けて、殺菌ユニットはRFID情報読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し(S1322)、当該デバイスとの通信によってLEDが点灯する(S1323)。LED点灯後、所定のシーケンスに基づき試薬駆動ディスクが回転することで保管庫内の殺菌を行う(S1324)。
【0080】
殺菌動作完了後、再び、殺菌ユニットは上記読み出しデバイス506(デバイスB)に隣接する位置まで移動し(S1325)、当該デバイスとの通信によってLEDが消灯する(S1326)。LED消灯後、殺菌ユニットは装填システム504に隣接する位置まで移動し、さらに試薬容器移動ユニット505により装填システム504まで移動される(S1327)。装填システム504が上方に作動し、RFID情報読み出しデバイス403(デバイスA)に隣接する位置で一度停止する(S1328)。さらに、当該デバイス(デバイスA)により、バッテリー残量が読み出される(S1329)。ここで、バッテリー残量が必要十分量に満たない場合、その旨をGUI上に警告メッセージとして表示する(S1330)。その後、殺菌動作を実施せず、分析開始前準備動作が完了次第、分析動作に移行する。
【0081】
バッテリー残量が必要十分量である場合、バッテリー残量等の殺菌ユニット情報が更新される(S1331)。更新後、装填システム504は下方に作動し(S1332)、殺菌ユニットが試薬容器移動ユニット505により試薬駆動ディスク501まで移動される(S1333)。これで本メンテナンス作業は完了となる。最後に更新された殺菌ユニット情報は記憶装置119によって記憶され、次のメンテナンス作業時にオペレータは事前に殺菌ユニットのローディング状況やバッテリー残量を確認できる。
【0082】
また、メンテナンス作業完了時に、作業日時を記憶装置119によって記憶してもよい。そうすることで、例えば、最後に本メンテナンス作業を実施した日から一定期間空いた場合に、作業実施を促すメッセージをGUI上に表示するといった機能を持たせることができる。また、メッセージ表示に加えて、測定依頼がないときに装置が自動で作業を実施してもよい。バッテリーについても、試薬容器保管庫内、すなわち固定ディスク503内や試薬駆動ディスク501内に充電ポートがある場合、作業完了後に殺菌ユニットを充電ポートに移動させておけば、次の作業実施までにバッテリーを充電させておくことができる。なお、装置のUI上で殺菌ユニットの排出を命令することで、たとえバッテリー残量が必要十分量ある場合であっても任意のタイミングで殺菌ユニットを排出することができるものとする。
【0083】
以上は分析開始前の準備動作の際に実施する場合である。これに限らず、装置起動時や装置シャットダウン時に実施してもよい。また、装置シャットダウン後、ある一定期間が経過した後に装置が自動で実施してもよい。なお、作業工程は上記の図13A図13Bのフローチャートと同じとする。
【0084】
次に殺菌動作のシーケンスについて説明する。本動作は、LEDを点灯させた状態で殺菌ユニットを保持した試薬駆動ディスク501が一定間隔で回転することを基本とする。照射角度を変えながら試薬駆動ディスク501を回転するなどして、可能な限り保管庫内に均一に光を当てることが望ましい。また、既に述べたように、試薬容器保管庫内に光学部材(ミラーやレンズなど)を設置することで、照射範囲の拡大を図ってもよい。予めコンタミネーションが発生しやすい場所(装置外部と通じる場所など)を調べておき、その場所に対して集中的に紫外線を照射するようにしてもよい。また、シーケンスを複数種類用意し、オペレータが自由に選択できるようにしてもよい。構造上光が届きにくい場所、例えば、装填システム504底面とジャケット402底面の隙間に対しては、装填システム504を僅かに上方に作動したうえで紫外線を照射することで殺菌できる。
【0085】
以上詳述した通り、本実施例の構成により、試薬容器保管庫の省スペース化、試薬駆動ディスクとの干渉を回避しながら、装置外部由来の微生物によるコンタミネーションを防ぐことで、試薬容器保管庫内を清浄に保つことができる自動分析装置を提供することができる。
【実施例2】
【0086】
実施例2は、試薬容器を保持する試薬容器保管庫と、試薬容器を収容し、試薬容器保管庫の所望位置まで輸送する試薬ディスクと、試薬ディスクと試薬容器の装填システムに紫外線を照射する照射部と、照射部を制御する制御部と、を備える構成の自動分析装置の実施例であって、紫外線を照射する照射部を自動分析装置の一部に備え付ける構成の実施例である。本実施例では、特に照射部を試薬ディスクのジャケット402内、又は装填システム504内に備え付ける場合を例に挙げる。
【0087】
図14は殺菌ユニット1401をジャケット402内に装着した場合を示している。本図では殺菌ユニット1401を2個装着しているが、数はこの限りではなく1個でもよいし3個以上でもよい。すなわち、試薬ディスクのジャケット402の内側に少なくとも1個の照射部が設置される。一方、図15は殺菌ユニット1501を装填システム504内に装着した場合を示している。この場合も殺菌ユニットの装着数に限りはなく、1個だけでもよいし複数でもよい。すなわち、少なくとも1個の照射部が、装填システムに装着される。
【0088】
まず、本実施例に係る紫外線を照射する照射部について説明する。実施例1と同様に、紫外線照射部としてLEDを使用する。紫外光源として水銀ランプを用いることもできるものの、紫外LEDを用いた方が省スペース化の点でメリットがある。紫外LEDからの放射光の中心波長は、殺菌に有用であることが知られている180nmから340nmが望ましい。特に殺菌効率の高い波長である260nm付近、すなわち230nmから290nmであることが望ましい。
【0089】
実施例1では照射光量の制御は殺菌ユニット内の制御部903によって行われた。一方、本実施例では図1に示した装置側の制御部117によって行う。殺菌に必要な照射光量については、実施例1と同様に、菌種と使用する紫外線の波長の各組合せについて予め実測または計算によって求める。実施例1ではこれらの情報は制御部903の記憶部903Aにテーブルとして格納されるのに対し、本実施例では装置側の記憶装置119に格納される。
【0090】
紫外線による試薬成分および試薬容器保管庫内の各種構成部材、例えば、試薬容器や試薬ディスクの変性が許容範囲内となる照射光量についても、使用する試薬と照射波長の各組合せについて予め実測または計算によって求める。これらの情報はテーブルとして記憶装置119に格納される。なお、試薬成分や構成部材の変性は、赤外分光法や質量分析法などにより評価される化学結合や分子量の変化によって定義可能である。さらに、構成部材の機械的特性の変化については、ナノインデンター等を使用した押し込み試験で評価される硬度やヤング率等のパラメータの変化によって定義可能である。
【0091】
照射光量の制御においては、上記の殺菌効果、試薬成分/各種構成部品の変性、という観点に加えて、試薬ディスク内の温度環境への影響、という観点も必要となる。例えば、試薬ディスク内の温度を2~10℃に保つ必要がある場合、LEDの点灯によって殺菌ユニット周辺温度が10℃を超過しないように気を付けなければならない。照射部にヒートシンクなどの放熱部を装着することで局所的な温度上昇を抑制することができる。
【0092】
使用するLEDの数は1個に限定する必要はなく、照射範囲の拡大を目的に複数使用してもよい。また、レンズやミラーなどの光学部材を利用してもよい。光学部材は殺菌ユニットに付与してもよいし、試薬容器保管庫内の任意の場所に備え付けてもよい。さらに、アクチュエータを使用し、LEDの取付け位置/角度を可変にすることで照射範囲の拡大を図ることもできる。また、予めコンタミネーションが発生しやすい場所(装置外部と通じる場所など)を調べておき、その周囲に集中的に設置してもよい。
【0093】
紫外線照射部にはLED以外にも水銀ランプも使用することができることは実施例1同様である。LEDの場合と同様に、殺菌対象の菌種とランプの発光波長の各組合せについて、殺菌に必要な照射光量を予め実測または計算によって求める。これらの情報はテーブルとして記憶装置119に格納される。さらに、試薬成分や試薬容器保管庫内の各種構成部材の変性についてもLEDの場合と同様に考慮する必要がある。すなわち、変性が許容範囲内となる照射光量を、使用する試薬と照射波長の各組合せについて予め実測または計算によって求める。記憶装置119には、これらの情報がテーブルとして格納されている。なお、水銀ランプには殺菌に寄与しない可視~赤外領域の波長も含まれるため、光学フィルターによって照射波長を制御することが望まれる。照射範囲については、ランプの数を増やす、レンズやミラーなどの光学部材を併用する、などして拡大可能である。光学部材は殺菌ユニット9に付与してもよいし、試薬容器保管庫内の任意の場所に備え付けてもよい。さらに、アクチュエータを使用し、ランプの取付け位置/角度を可変にすることで照射範囲の拡大を図ることもできる。
【0094】
次に本実施例の殺菌ユニットへの給電手段について説明する。実施例1とは異なり、殺菌ユニットへの給電にバッテリーは使用せず、装置から直接給電可能とする。有線での給電でもよいし、無線充電を利用してもよい。バッテリーを使用しないため、殺菌メンテナンス作業実施前のバッテリー残量の確認が不要となる。
【0095】
照射タイミングの切替には実施例1で説明した種々のスイッチは利用せず、制御部117によって行うものとする。但し、オペレータの紫外線曝露のリスクを最小限に抑えるためにインターロック機構を設けることが望ましい。例えば殺菌ユニットを試薬容器保管庫内に備え付ける場合、保管庫の蓋401にインターロック機構を設けることで、装置メンテナンス作業などでオペレータが蓋401を開けた際に紫外線を被爆するリスクを低減することができる。また、当該ユニットを装填システム504に備え付ける場合も同様に、蓋401にインターロック機構を設けることでリスクを低減することができる。つまり、装填システムが下方に作動し、ジャケット402が完全に遮蔽された場合にのみ紫外線が照射される仕組みにしておけばよい。
【0096】
殺菌ユニットの運用手順は実施例1と同様である。すなわち、オペレータが装置メンテナンス作業の一つとして殺菌動作を実施してもよい。また、分析測定開始前の準備動作時、装置起動時、装置シャットダウン時、および装置シャットダウン後に実施してもよい。さらに、前回の作業からある一定期間経過した際に装置が自動で実施してもよい。
【0097】
次に殺菌動作のシーケンスについて説明する。殺菌ユニットを試薬容器保管庫内に備え付ける場合、保管庫の蓋401を開けた場合を除き、試薬容器保管庫内へはオペレータはアクセス不可能であるため、紫外線を常時照射してもよい。一方、当該ユニットを装填システム504を備え付ける場合は、装填システム504が最下部に位置し、蓋401が完全に閉じた場合においてのみ紫外線を照射するものとする。
【0098】
本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
101 自動分析器、106 サンプル分注チップ/反応容器輸送ユニット、108 インキュベータ、109 試薬分注機構、110 試薬容器、111 試薬ディスク、113 検出ユニット、114 サンプル搬送ライン、117、903 制御部、203 RFIDタグ、301 ヒンジ、302 突起部、303 開口部、304 密閉部材、401 蓋、402 ジャケット、403、506 デバイス、501 試薬駆動ディスク、502 試薬駆動ディスク駆動ユニット、503 固定ディスク、504 装填システム、505 試薬容器移動ユニット、601 試薬設置ユニット、602 試薬アクチュエータ、701 開口、704、802 ガイド溝、705 インジケータランプ、706 ローダスイッチ、801 スロット、901、1401、1501 殺菌ユニット、902 紫外線照射部、904 駆動用バッテリー、905 メカスイッチ、906 放熱部、907 バッテリー残量インジケータ。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15