(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】フライ調理用油脂組成物の安定化方法
(51)【国際特許分類】
A23D 9/00 20060101AFI20230213BHJP
A23D 9/007 20060101ALI20230213BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20230213BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/007
A23L5/10 D
(21)【出願番号】P 2019569012
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2019001619
(87)【国際公開番号】W WO2019151009
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018015954
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100106448
【氏名又は名称】中嶋 伸介
(72)【発明者】
【氏名】椹木 庸介
(72)【発明者】
【氏名】堀 竜二
(72)【発明者】
【氏名】境野 眞善
(72)【発明者】
【氏名】牧田 成人
(72)【発明者】
【氏名】荒井 尚志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 茂雄
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04283437(US,A)
【文献】特開平03-133337(JP,A)
【文献】特開2004-173614(JP,A)
【文献】特開2009-050234(JP,A)
【文献】特開2011-205924(JP,A)
【文献】特開2015-084721(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064569(WO,A1)
【文献】特開2015-119728(JP,A)
【文献】J. Am. Oil. Chem. Soc.,1986年,vol.63, no.9,pp.1185-1188
【文献】J. Oleo Sci.,2013年,vol.62, no.12,pp.981-987
【文献】J. Food Sci. Technol.,2017年,vol.54, no.8,pp.2464-2473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライ調理用油脂組成物の着色の抑制方法であって、
食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加する、前記抑制方法。
【請求項2】
前記クロロフィル類を、1質量ppm以上1,000質量ppm以下のクロロフィル類濃度であるクロロフィル類濃厚液として添加することを特徴とする、請求項1に記載の抑制方法。
【請求項3】
前記食用油脂は、大豆油、菜種油、パーム系油脂、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、米油及び紅花油から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1
又は2に記載の抑制方法。
【請求項4】
前記クロロフィル類が、クロロフィルa、フェオフィチンa、及びピロフェオフィチンaから選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1
~3のいずれかに記載の抑制方法。
【請求項5】
前記クロロフィル類が、クロロフィルa及びフェオフィチンaを含むことを特徴とする、請求項4に記載の抑制方法。
【請求項6】
前記クロロフィルaに対する前記フェオフィチンaの質量割合が、0.3以上1.5以下である、請求項5に記載の抑制方法。
【請求項7】
前記クロロフィル類が、藻類由来であることを特徴とする、請求項1
~6のいずれかに記載の抑制方法。
【請求項8】
フライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇の抑制方法であって、
食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加する、前記抑制方法。
【請求項9】
フライ調理用油脂組成物のトコフェロール類減少の抑制方法であって、
食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加する、前記抑制方法。
【請求項10】
食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加する工程を含む
(ただし、前記クロロフィル類の添加された前記食用油脂の水素化工程を含まない)、フライ調理用油脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記クロロフィル類を、1質量ppm以上1,000質量ppm以下のクロロフィル類濃度であるクロロフィル類濃厚液として添加する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記クロロフィル類が、クロロフィルa及びフェオフィチンaを含むことを特徴とする、請求項10
又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記クロロフィルaに対する前記フェオフィチンaの質量割合が、0.3以上
0.97未満である、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
請求項10
~13のいずれかに記載の製造方法で得られたフライ調理用油脂組成物
(ただし、綿実油を除く)で食材をフライ調理する工程を含む、フライ食品の製造方法。
【請求項15】
クロロフィル類を有効成分として含むフライ調理用油脂組成物の安定化剤。
【請求項16】
前記フライ調理用油脂組成物の着色を抑制するための請求項15に記載の安定化剤。
【請求項17】
前記フライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇を抑制するための請求項15に記載の安定化剤。
【請求項18】
前記フライ調理用油脂組成物のトコフェロール類減少を抑制するための請求項15に記載の安定化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライ調理用油脂組成物の安定化方法に関し、より詳細には、フライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する時の前記油脂組成物の着色、アニシジン価上昇及びトコフェロール類減少を抑制して油脂組成物を安定化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大豆油、菜種油等の食用油脂を用いて食材をフライ調理すると、加熱操作、食材や雰囲気中の酸素や水分の影響等によって食用油脂の色調が変化する。食用油脂の色調が変化すると、フライ品の品質が悪化するため、食用油脂の長時間の使用ができない。
【0003】
食用油脂で揚げ物を調理する際の加熱着色を抑制する先行技術として、特許文献1は、精製された食用油脂に圧搾油及び又は抽出油、脱ガム油などのリン由来成分を添加することにより揚げ物用油脂組成物の加熱耐性を向上させる方法を提案する。特許文献1の発明によれば、揚げ物用油脂組成物の加熱安定性、特に加熱着色及び加熱臭の抑制をすることができる。
【0004】
アニシジン価は、油脂の酸化が進むと生成するアルデヒド含有量をあらわす数値であり、油脂劣化の指標の一つとなる。フライ調理時の油脂のアニシジン価上昇を抑制することが、フライ調理用油脂組成物の劣化を抑制するのに有効であると考えられる。
【0005】
精製油脂には、油糧原料に天然に含まれるトコフェロール類が多量に残存している。精製油脂中のトコフェロール類は、加熱等によって消失してゆく。トコフェロール類は、食用油脂の酸化防止作用を有するので、フライ調理時の食用油脂中のトコフェロール類減少を抑制することが、フライ調理用油脂組成物の劣化を抑制するのに有効であると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-050234号公報(加熱耐性に優れた揚げ物用油脂組成物の製造方法)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特許文献1のリン分を用いる方法とは異なる方法で、フライ調理時におけるフライ調理用油脂組成物の着色を抑制する方法を提供することにある。
【0008】
特許文献1の発明は、アニシジン価上昇の抑制やトコフェロール類減少の抑制に向けられていない。そこで、本発明は、フライ調理時におけるフライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇及び/又はトコフェロール類減少の抑制方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を鋭意検討した結果、クロロフィル類の食用油脂への添加が、フライ調理時の食用油脂の着色を抑えるのに有効であることを発見し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、フライ調理用油脂組成物の着色の抑制方法であって、食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加する、前記抑制方法を提供する。
【0010】
前記クロロフィル類を、1質量ppm以上1,000質量ppm以下のクロロフィル類濃度であるクロロフィル類濃厚液として添加することが好ましい。
【0011】
前記食用油脂は、例えば大豆油、菜種油、パーム系油脂、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、米油及び紅花油から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0012】
前記クロロフィル類は、クロロフィルa、フェオフィチンa、及びピロフェオフィチンaから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0013】
前記クロロフィル類は、クロロフィルa及びフェオフィチンaを含むことが好ましい。
【0014】
前記クロロフィルaに対する前記フェオフィチンaの質量割合は、0.3以上1.5以下であることが好ましい。
【0015】
前記クロロフィル類は、例えば藻類由来である。
【0016】
本発明は、また、フライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇の抑制方法であって、食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下添加することを特徴とする、前記抑制方法を提供する。
【0017】
本発明は、また、フライ調理用油脂組成物のトコフェロール類減少の抑制方法であって、食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下となるように添加することを特徴とする、前記抑制方法を提供する。本明細書において、前記トコフェロール類は、α、β、γ及びδ-トコフェロール並びにα、β、γ及びδ-トコトリエノールを意味する。
【0018】
本発明は、また、食用油脂に藻類由来のクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下となるように添加する工程を含む、フライ調理用油脂組成物の製造方法を提供する。
【0019】
前記クロロフィル類を、1質量ppm以上1,000質量ppm以下のクロロフィル類濃度であるクロロフィル類濃厚液として添加することが好ましい。
【0020】
前記クロロフィル類は、クロロフィルa及びフェオフィチンaを含むことが好ましい。
【0021】
前記クロロフィルaに対する前記フェオフィチンaの質量割合は、0.3以上1.5以下であることが好ましい。
【0022】
本発明は、また、上記製造方法で得られたフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する工程を含む、フライ食品の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、また、クロロフィル類を有効成分として含むフライ調理用油脂組成物の安定化剤を提供する。
【0024】
前記安定化剤は、特にフライ調理用油脂組成物の着色の抑制するために用いられる。
【0025】
前記安定化剤は、特にフライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇を抑制するために用いられる。
【0026】
前記安定化剤は、フライ調理用油脂組成物のトコフェロール類減少を抑制するために用いられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のフライ調理用油脂組成物の安定化剤及び着色の抑制方法によれば、フライ調理用油脂組成物を用いて食材を例えば20時間のような長時間、フライ調理しても、油脂組成物の着色は、クロロフィル類を添加していない対照油と比べて有意に抑制される。この着色の抑制は、油脂組成物の延命に大いに寄与する。
【0028】
本発明のフライ調理用油脂組成物の安定化剤及びアニシジン価上昇の抑制方法によれば、フライ調理用油脂組成物を用いて食材を長時間、フライ調理しても、クロロフィル類を添加した油脂組成物のアニシジン価は、クロロフィル類を添加していない対照油のアニシジン価と比べて有意に抑制される。アニシジン価上昇の抑制は、油脂の酸化が進むと生成するアルデヒドの生成の抑制を意味するので、本発明は、油脂組成物の延命に大いに寄与する。
【0029】
また、本発明のフライ調理用油脂組成物の安定化剤及びトコフェロール類減少の抑制方法によれば、フライ調理用油脂組成物を用いて食材を長時間、フライ調理しても、クロロフィル類を添加した油脂組成物中のトコフェロール類減少は、クロロフィル類を添加していない対照油と比べて有意に抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のフライ調理用油脂組成物の着色の抑制方法は、食用油脂にクロロフィル類を添加することを必須とする。前記食用油脂は、フライ調理用油脂組成物のベース油となるものである。食用油脂は、通常、精製油である。前記食用油脂の例は、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、紅花油、亜麻仁油、ゴマ油、米油、落花生油、ヤシ油等の植物油脂、豚脂、牛脂、鶏脂、乳脂等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド並びにこれらに分別、水素添加、エステル交換等を施した加工油脂が挙げられる。食用油脂は、大豆油、菜種油、パーム系油脂、コーン油、ヒマワリ油、オリーブ油、綿実油、及び紅花油から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの食用油脂は、一種単独でも二種以上の併用でもよい。ここでいうパーム系油脂とは、パーム油及びパーム油の加工油脂を意味する。
【0031】
前記食用油脂は、好ましくは融点が10℃以下、より好ましくは0℃以下である。なお、本明細書で、融点は、上昇融点を意味する。上昇融点は、基準油脂分析試験法2.2.4.2-1996に則って測定することができる。
【0032】
前記食用油脂の前記フライ調理用油脂組成物に対する含有量は、通常、70質量%以上でよく、好ましくは85質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上である。食用油脂の含有量の上限は特にないが、食用油脂とクロロフィル類の合計が100質量%以下である。
【0033】
クロロフィルは、マグネシウムにテトラピロール環が配位した有機錯体である。クロロフィルは、テトラピロール環の種類及び結合している置換基によって、クロロフィルa、クロロフィルb等の多くの型が存在する。クロロフィルの金属が外れて2個の水素で置換されたものがフェオフィチンである。また、クロロフィルが熱分解によって変性したものがピロフェオフィチンである。前記クロロフィル類は、一種単独でも二種以上の併用でもよい。
【0034】
前記クロロフィル類の油脂組成物への添加量は、0.05質量ppm以上2質量ppm以下であり、好ましくは0.07質量ppm以上1.5質量ppm以下であり、より好ましくは0.1質量ppm以上1質量ppm以下である。クロロフィル類添加量が0.05質量ppm未満であると、本発明の効果が得られない。逆に、クロロフィル類添加量が2質量ppmを超えると、油脂の外観が悪くなる。なお、クロロフィル類濃度は、吸光光度法、蛍光光度法やHPLC法で測定可能である。
【0035】
前記クロロフィル類は、クロロフィルa、フェオフィチンa、及びピロフェオフィチンaから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。前記クロロフィル類は、クロロフィルa及びフェオフィチンaを含むことが特に好ましい。
【0036】
前記クロロフィルaに対する前記フェオフィチンaの質量割合は、通常、0.1以上2以下でよく、好ましくは0.3以上1.5以下であり、特に好ましくは0.5以上1以下である。
【0037】
前記クロロフィル類の由来は、特に制限されない。天然には緑藻(例えばクロレラ、ミドリムシ)、らん藻、紅藻、けい藻、褐藻等の藻類、緑黄色野菜等の高等植物、緑色細菌、紅色細菌(例えばRb.sphaeroides)等の光合成細菌から得ることができる。好ましくは、藻類由来のクロロフィル類である。
【0038】
前記クロロフィル類は、クロロフィル類を含有する市販品や試薬を使用してもよい。クロロフィル類を含有する市販品の例として、製品名「ニチノーカラーG-AO」(クロレラ由来、日農化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0039】
前記食用油脂への前記クロロフィル類の添加方法は、特に制限されない。クロロフィル類の食用油脂への添加及び食用油脂との均質化が容易となる点で、クロロフィル類を予め溶解したクロロフィル類濃厚液の形態で添加することが好ましい。
【0040】
クロロフィル類濃厚液の溶媒は、クロロフィル類が溶解する限り特に制限されない。前記溶媒は、食用油脂が好ましい。前記食用油脂は一種単独でも二種以上の併用でもよい。また、クロロフィル類濃厚液の溶媒は、フライ調理用油脂組成物のベース油と同一でも異なっていてもよい。
【0041】
クロロフィル類濃厚液中のクロロフィル類濃度の下限は、通常、1質量ppm以上であり、好ましくは3質量ppm以上であり、特に好ましくは5質量ppm以上である。クロロフィル類濃厚液のクロロフィル類濃度の上限は、通常、1,100質量ppm以下であり、好ましくは1,000質量ppm以下であり、特にこのましくは900質量ppm以下である。クロロフィル類濃度が下限よりも低過ぎると、本発明の効果を得るために前記クロロフィル類濃厚液が多量に必要となる。逆に、クロロフィル類濃度が上限よりも高過ぎると、フライ調理用油脂組成物の調製時のクロロフィル類濃度の管理が難しくなる。
【0042】
前記フライ調理用油脂組成物へのクロロフィル類濃厚液の添加量は、クロロフィル濃厚油のクロロフィル類濃度に依存するが、通常、1質量%以上50質量%以下でよく、好ましくは、5質量%以上30質量%以下である。
【0043】
上記フライ調理用油脂組成物には、本発明の効果を阻害しない限り、食用油脂に添加される汎用の助剤を添加することができる。そのような助剤の例には、シリコーン;トコフェロール等の抗酸化剤;香料等が挙げられる。
【0044】
本発明による着色の抑制効果は、例えば以下の方法で評価することができる。
1.色調の測定
AOCS Cc13j-97に準じて、ロビボンド自動比色計を用いて、ロビボンドセルに入れた試験油又は対照油の色度を室温下で測定する。得られた色度Y値とR値から色調(Y+10R)を求める。
【0045】
2.着色抑制率の算定
対照油の色調を基準とした試験油の色調から着色抑制率を、以下に示す式:
【数1】
で算出する。
【0046】
本発明によれば、クロロフィル類を含まない対照油を基準とした着色抑制率は、クロロフィル類濃度や食材に応じて変わるが、通常、3~50%となる。この抑制効果は、フライ調理用油脂組成物の使用時間を6~100%程度延命することになる。
【0047】
本発明は、また、前記油脂組成物が食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下となるように添加することを特徴とする、フライ調理用油脂組成物のアニシジン価上昇の抑制方法を提供する。
【0048】
アニシジン価上昇の抑制方法に使用する食用油脂及びクロロフィル類は、前記着色の抑制方法と同じである。
【0049】
前記クロロフィル類の添加量は、上記アニシジン価上昇の抑制の観点から、好ましくは0.07質量ppm以上1.5質量ppm以下であり、より好ましくは0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である。
【0050】
本発明によるアニシジン価上昇の抑制効果は、例えば以下の方法で評価することができる。以降、アニシジン価をAnVと称することがある。
1.アニシジン価(AnV)の測定
AnVは、試料中のカルボニル化合物とp-アニシジンとを作用させた時の350nmの吸光係数E1%
1cmを100倍したものとして定義される。フライ調理試験後の試験油のAnVを基準油脂分析試験法2.5.3-2013に準じて、分光光度計を用いて測定する。
【0051】
2.AnV上昇抑制率の算定
対照油の測定結果を基準としたAnV上昇抑制率を、以下に示す式:
【数2】
を用いて算出する。
【0052】
本発明によれば、クロロフィル類を含まない対照油を基準としたAnV上昇抑制率は、クロロフィル類濃度、食材、フライ調理温度等に応じて変わるが、通常、2~30%となる。
【0053】
本発明は、また、食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下となるように添加することを特徴とする、フライ調理用油脂組成物のトコフェロール類減少の抑制方法を提供する。
【0054】
トコフェロール類減少の抑制方法に使用する食用油脂及びクロロフィル類は、前記着色の抑制方法と同じである。
【0055】
前記クロロフィル類の添加量は、上記トコフェロール類の減少の抑制の観点から、好ましくは0.07質量ppm以上1.5質量ppm以下であり、より好ましくは0.1質量ppm以上1.0質量ppm以下である。
【0056】
本発明によるトコフェロール類減少の抑制効果は、例えば以下の方法で評価することができる。以降、トコフェロール類をTocと称することがある。
1.トコフェロール類(Toc)の測定
試験油に内部標準物質(2,2,5,7,8-pentamethyl-6-hydroxychroman、例えば和光純薬工業株式会社製)を加えたものをヘキサンに溶解して分析サンプルとする。分析サンプルのトコフェロール類をHPLCで分析する。予めビタミンE定量用標準試薬(例えば和光純薬工業株式会社製)を用いて作成しておいた検量線に、内部標準物質と各トコフェロール類との質量比を当てはめることにより、試験油中のトコフェロール類を定量する。詳細な測定条件は以降の実施例にて説明する。
【0057】
2.Toc減少抑制率の算定
対照油でのTocの減少を基準とした、試験油のToc減少抑制率を、以下に示す式:
【数3】
を用いて算出する。
【0058】
本発明によれば、クロロフィル類を添加しない対照油を基準としたToc減少抑制率は、クロロフィル類濃度、食材、フライ調理温度等に応じて変わるが、通常、0.5~50%となる。
【0059】
本発明は、また、食用油脂にクロロフィル類を0.05質量ppm以上2質量ppm以下となるように添加する工程を含む、フライ調理用油脂組成物の製造方法を提供する。
【0060】
この製造方法に使用する食用油脂は、フライ調理用油脂組成物の着色の抑制方法と同じである。
【0061】
本発明は、また、上記製造方法で得られたフライ調理用油脂組成物で食材をフライ調理する工程を含む、フライ食品の製造方法を提供する。フライ調理温度は、食材や調理方法に依存するが、通常、140℃以上200℃以下である。前記フライ食品の例は、唐揚げ、コロッケ、天ぷら、野菜や魚介類の素揚げ、カツ、フリッター、揚げ菓子又は揚げパン、揚げ麺等である。
【0062】
本発明は、また、クロロフィル類を有効成分として含むフライ調理用油脂組成物の安定化剤を提供する。前記安定化剤は、好ましくはフライ調理用油脂組成物の着色、アニシジン価上昇、及び/又はトコフェロール類減少の抑制のために用いられる。フライ調理用油脂組成物、及びクロロフィル類の具体例や由来は、上記に説明したとおりである。
【0063】
前記安定化剤中のクロロフィル類の担体(希釈剤)は、前記クロロフィル類濃厚液の調製で例示した溶媒と同様である。前記安定剤には、酸化防止剤、消泡剤、乳化剤、香料等の助剤を適宜添加してもよい。前記安定化剤中のクロロフィル類の含有量は、前記クロロフィル類濃厚液へのクロロフィル類の添加量と同様である。
【実施例】
【0064】
以下に本発明に従う実施例を説明することにより、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以降、クロロフィル類をChlと称することがある。
〔実施例1~2〕クロロフィル化合物添加試験
1.フライ調理用油脂組成物の調製
フライ調理用油脂組成物のベース油となる精製菜種油として、製品名「J キャノーラ油」(クロロフィル類(Chl)濃度0(質量ppm)、リン分0(質量ppm)、株式会社J-オイルミルズ製)を用意した。このベース油に、クロロフィル試薬(製品名「クロロフィルa」、「クロロフィルb」、「フェオフィチンa」又は「フェオフィチンb」(いずれも、リン分0(質量ppm)、和光純薬工業株式会社製))を添加しクロロフィル類濃厚液を調製した。表1に記載のChl濃度になるように精製菜種油に前記クロロフィル類濃厚液を添加することにより、フライ調理用油脂組成物を調製した。以降、ベース油単独を対照油、そしてベース油にクロロフィル類を添加した油脂組成物を試験油ということがある。
【0065】
(ICP発光分析法によるリン分の定量)
試料をキシレンで希釈し、ICP発光分光分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製)で分析した。また、定量にあたっては、CONOSTAN(登録商標) Oil Analysis Standard(SCP SCIENCE社製)を使用した。
【0066】
2.フライ調理試験及び評価
上記フライ調理用油脂組成物のフライ調理試験を行い、対照油でのフライ調理試験結果を基準とした試験油のフライ安定性を評価した。フライ安定性の評価は、フライ調理試験後の試験油及び対照油をサンプリングして、フライ調理後の着色抑制率、アニシジン価上昇抑制率及びトコフェロール類減少抑制率について行った。結果を表1に示す。
【0067】
〔フライ調理試験〕
まず、フライ調理試験の揚げ種として、以下の加工食品:
唐揚げ:製品名「若鶏唐揚げ(GX388)」(味の素冷凍食品株式会社製)、
ポテトコロッケ:製品名「NEWポテトコロッケ60(GC080)」(約60g/個、味の素冷凍食品株式会社製)を用意した。
【0068】
電気フライヤー(製品名:FM-3HR、マッハ機器株式会社製)に、試験油又は対照油を3.4kg投入し、180℃の揚げ温度まで昇温した。昇温後、電気フライヤーに、唐揚げ又はポテトコロッケを以下に示す要領で投入して、1日10時間で延べ30時間のフライ調理を行った。
〔フライ条件〕
唐揚げ:揚げ質量400g/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数1回/2時間(1~3日目)
ポテトコロッケ:揚げ数量5個/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数2回/日(1日目のみ実施)
【0069】
〔フライ調理後の油脂組成物の着色抑制率〕
1.色調の測定
AOCS Cc13j-97に準じて、ロビボンド自動比色計(Lovibond(登録商標)PFXi-880、The Tintometer Ltd.製)を用いて、ロビボンドセル(W600/OG/、1インチ)に入れた試験油又は対照油の色度を室温下で測定した。得られた色度Y値とR値から、色調(Y+10R)を求めた。
【0070】
2.着色抑制率の算定
対照油の色調を基準とした試験油の色調から着色抑制率を、以下に示す式:
【数4】
で算出した。
【0071】
〔フライ調理後の油脂組成物のAnV上昇抑制率〕
1.AnVの測定
上記フライ調理試験後の試験油のAnVを基準油脂分析試験法2.5.3-2013に準じて、可視紫外分光光度計(製品名SHIMADZU UV-2450、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
【0072】
2.AnV上昇抑制率の算定
対照油の測定結果を基準とした試験油のAnV上昇抑制率を、以下に示す式:
【数5】
を用いて算出した。
【0073】
〔フライ調理後の油脂組成物のToc減少抑制率〕
1.Tocの測定
10mLメスフラスコに油脂を約0.2g、内部標準物質(2,2,5,7,8-pentamethyl-6-hydroxychroman、(例えば和光純薬工業株式会社製))を1mL加え、ヘキサンでメスアップしたものをサンプルとした。分析サンプルのTocをHPLCで分析した。HPLC条件を以下に示す。
カラム:InertSil(登録商標)NH2(2.1mm×250mm、5μm)
カラム温度:60℃
検出器:SHIMADZU蛍光検出器RF-10AXL
検出波長:Ex295nm、Em325nm
移動相:ヘキサン98容量%:2-プロパノール2容量%
(トコトリエノールの分析時にはヘキサン99容量%:2-プロパノール1容量%)
注入量:2μL
流速:0.5mL/分
【0074】
ビタミンE定量用標準試薬(和光純薬工業株式会社製)を用いて作成した検量線に、内部標準物質と各トコフェロールとの重量比を当てはめることにより、分液サンプル中のTocを定量した。なお、トコトリエノールの標準試薬が入手困難なため、トコトリエノールの定量値はトコフェロール標準試薬を用いて算出した。
【0075】
2.Toc減少抑制率の算定
対照油でのTocの減少を基準とした試験油のToc類減少抑制率を、以下に示す式:
【数6】
を用いて算出した。
【0076】
【0077】
対照油を30時間のフライ調理試験に供した後の色調(Y+10R)は、表1に示すように、62となった(比較例1)。一方、同じ対照油にクロロフィル類を0.209質量ppm又は0.255質量ppm添加した試験油の色調は、フライ調理試験後、52及び50に収まった(実施例1及び2)。試験油のフライ時の着色は、対照油を基準として16.1%又は19.4%抑制されたことになる。以上のことから、試験油に添加されたクロロフィル類は、油脂組成物をフライ調理に用いた時の着色を抑制する効果を奏することが判明した。
【0078】
対照油を30時間のフライ調理試験に供した後のAnVは、表1に示すように、68.8となった(比較例1)。一方、同じ対照油にクロロフィル類を添加した試験油のAnVは、フライ調理試験後、63.5及び64.2であった。試験油のフライ時のAnVの上昇は、対照油を基準として7.6%及び6.7%抑制されたことになる。試験油に添加されたクロロフィル類には、油脂組成物をフライ調理に用いた時のAnV上昇を抑制する作用があることが判明した。
【0079】
対照油のTocの含量は、表1に示すように、714.4質量ppmあったところ、30時間のフライ調理試験後には、533.4質量ppmに減少した(比較例1)。一方、実施例1及び2では、同じ対照油にクロロフィル類を添加した試験油のフライ調理試験後のTocの含量は、それぞれ、558.1質量ppm及び563.0質量ppmに収まった。試験油のTocのフライ調理時の減少は、対照油を基準として12.3%及び13.3%抑制されたことになる。試験油に添加されたクロロフィル類には、油脂をフライ調理に用いた時のTocの含量の減少を抑制する作用があることが判明した。
【0080】
〔実施例3~4〕クロロフィル類濃厚液添加試験
1.フライ調理用油脂組成物の調製
実施例1において、対照油に添加するクロロフィル類化合物を市販の色素に変更した。市販の色素(製品名「ニチノーカラーG-AO」、日農化学工業株式会社製)の二種類のロットを用意した(以下、各ロットを色素(1)及び色素(2)という)。色素(1)のリン分をICP発光分析法で測定したところ、8,386質量ppmであった。
【0081】
上記色素(1)又は(2)をベース油(前記精製菜種油)に添加して、クロロフィル濃厚液を調製した。このクロロフィル濃厚油のChl濃度を以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0082】
表4に記載したように、クロロフィル濃厚液を精製菜種油に添加することにより、フライ調理用油脂組成物を調製した。フライ調理用油脂組成物のChl濃度及びリン分を、クロロフィル類濃厚液中の含有量とベース油への添加量から算出した。これらの結果を表4に示す。
【0083】
2.クロロフィル類濃厚液のChl濃度の測定
クロロフィル類濃厚液のChl濃度をHPLCで測定した。クロロフィル類の定量のために検量線を作成した。検量線にはクロロフィルa及びb、ならびにフェオフィチンa及びbを用いた(いずれも和光純薬工業株式会社製)。なお、ピロフェオフィチンの標準品は入手困難なため、フェオフィチンa及びbをそれぞれピロフェオフィチンa及びbの代わりに用いて検量線を作成した。
【0084】
まず、内部標準物質としてフタロシアニン亜鉛(和光純薬工業株式会社製)をテトラヒドロフランに0.75mg/mLとなるように溶解させて内部標準溶液を調製した。既定量のクロロフィルa、クロロフィルb、フェオフィチンa及びフェオフィチンbをアセトンに溶解させた後、精製菜種油で希釈して検量線測定用サンプルを用意した。検量線測定用サンプル0.2g及び内部標準溶液100μLをアセトン2mLに混合してHPLC分析試料とした。HPLC分析試料を以下の条件でHPLC分析することにより検量線を作成した。
【0085】
〔HPLC条件〕
検出器:蛍光検出器RF-20A XS
カラム:SHISEIDO CAPCELL PAK C18(4.6mm×250mm,5μm)
カラム温度:40℃
移動相A:アセトン
移動相B:メタノール:水=87:13(v:v)
グラジエント条件:表2に記載
注入量:10μL
流速:1.0mL/分
【0086】
【0087】
〔検出条件〕
クロロフィル類のa体及びb体を感度よく測定するために、以下の2種類の励起波長(Ex)及び測定波長(Em)の組み合わせを採用した。
チャンネル1:Ex404nm、Em670nm、
チャンネル2:Ex440nm、Em650nm
チャンネル1は、クロロフィル類のa体に感度が高く、チャンネル2は、クロロフィル類のb体に感度が高い。
【0088】
次に、市販の色素を精製菜種油に希釈したクロロフィル類濃厚液0.2g及び内部標準溶液100μLをアセトン2mLに混合した試料を上記条件でHPLC分析した。なお、色素(1)及び色素(2)のクロロフィル類濃厚液は、それぞれ色素0.0699g及び0.0665gを精製菜種油200.7g及び202.17gに希釈して調製した。前記クロロフィル類濃厚液の測定結果を検量線に当てはめることにより、前記クロロフィル類濃厚液のChl濃度を決定した。なお、表3において、クロロフィル類の濃度(質量ppm)は、測定限界未満を「0」と表記した。
【0089】
表3に示すように、色素(1)はクロロフィル類のa体からなり、一方、色素(2)はクロロフィル類のa体とb体の混合物であった。また、フェオフィチンaのクロロフィルaに対する質量割合は、色素(2)よりも色素(1)の方が高かった。
【0090】
【0091】
3.フライ調理試験及び評価
以下の点を除き、実施例1と同じ操作でフライ調理試験及び評価を行った。結果を表4に示す。
【0092】
電気フライヤー(製品名:FM-3HR、マッハ機器株式会社製)に、試験油又は対照油を3.4kg投入し、180℃の揚げ温度まで昇温した。昇温後、電気フライヤーに、唐揚げ又はポテトコロッケを以下に示す要領で投入して、1日8時間で延べ40時間のフライ調理を行った。
〔フライ条件〕
唐揚げ:揚げ質量400g/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数5回/日(1~5日目)
ポテトコロッケ:揚げ数量5個/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数2回/日(1日目と4日目に実施)
【0093】
着色抑制率の評価においては、ロビボンドセルとして1/2インチセルを用いた。
【0094】
【0095】
実施例3及び4のように、クロロフィル類として市販の色素を使用しても、実施例1と同様に、着色、AnVの上昇、及びTocの減少がいずれも抑制された。ただし、比較例3のように、油脂組成物への添加Chl濃度が0.014質量ppmでは、Tocの減少は抑制されなかった。油脂組成物への添加Chl濃度は、0.087質量ppm以上で効果が認められた。
【0096】
〔実施例5~8〕油脂組成物への添加Chl濃度の変更試験
色素(1)を用いて表5に記載のChl濃度となるクロロフィル類濃厚液を調製した。表5の記載したように、使用したクロロフィル類濃厚液と添加量を変更したこと以外は、実施例3と同じ手順で油脂組成物を調製した。
【0097】
これらの油脂組成物を用いて実施例3と同じ手順でフライ調理試験及び評価を行った。結果を表5に示す。Chl濃度が0.07質量ppm程度と微量でも、フライ後の試験油の着色抑制率及びToc減少抑制率は20%以上である。AnV上昇抑制率を10%以上とするには、0.2質量ppm以上のChl濃度を要する。
【0098】
【0099】
〔実施例9〕ベース油変更試験(1)
色素(1)を用いて表6に記載のChl濃度となるように精製大豆油(製品名「J 大豆白絞油」(Chl濃度0質量ppm、リン分0質量ppm、株式会社J-オイルミルズ製))を用いてクロロフィル類濃厚液を調製した。表6に記載したように、使用したクロロフィル類濃厚液の添加量及びベース油を精製大豆油に変更したこと以外は、実施例3と同じ手順で油脂組成物を調製した。これらの油脂組成物を用いて、ロビボンドセルとして1インチセルを用いた以外は実施例3と同じ手順でフライ調理試験及び評価を行った。結果を表6に示す。
【0100】
表6に示すとおり、ベース油を大豆油に変更しても、着色、AnV上昇及びToc減少の抑制率に関して本発明の効果が得られた。
【0101】
【0102】
〔実施例10〕ベース油変更試験(2)
色素(1)を用いて表7に記載のChl濃度となるように精製パームオレイン(製品名「フライオイル J」(パームオレイン、ヨウ素価67、Chl濃度0質量ppm、リン分0質量ppm、株式会社J-オイルミルズ製)を用いてクロロフィル類濃厚液を調製した。表7に記載したように、使用したクロロフィル類濃厚液の添加量及びベース油を精製パームオレインに変更したこと以外は、実施例3と同じ手順で油脂組成物を調製した。以下に記載のフライ条件、ロビボンドセルとして1インチセルを用いたこと、及びToc減少抑制率の算出にα、β、γ及びδ-トコトリエノールの分析値を用いたこと以外は実施例3と同じ手順でフライ調理試験及び評価を行った。結果を表7に示す。
【0103】
電気フライヤー(製品名:FM-3HR、マッハ機器株式会社製)に、試験油又は対照油を3.4kg投入し、180℃の揚げ温度まで昇温した。昇温後、電気フライヤーに、唐揚げ又はポテトコロッケを以下に示す要領で投入して、1日8時間で延べ24時間のフライ調理を行った。
〔フライ条件〕
唐揚げ:揚げ質量400g/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数5回/日(1~3日目)
ポテトコロッケ:揚げ数量5個/回、揚げ時間5分/回、揚げ回数2回/日(1日目のみ実施)
【0104】
表7に示すとおり、ベース油をパームオレインに変更しても、着色、AnV上昇及びToc減少の抑制率に関して本発明の効果が得られた。実施例6、9及び10を比較すると、着色抑制率の点でベース油は菜種油及び大豆油が好ましい。AnV上昇抑制率の点でベース油は菜種油及び大豆油が好ましく、大豆油がより好ましい。Toc減少抑制率の点でベース油は菜種油及び大豆油が好ましく、菜種油がより好ましい。
【0105】