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特許7225270FZ法により半導体材料から単結晶を製造する方法、この方法を実施するための装置、およびシリコン半導体ウェハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】FZ法により半導体材料から単結晶を製造する方法、この方法を実施するための装置、およびシリコン半導体ウェハ
(51)【国際特許分類】
   C30B 13/20 20060101AFI20230213BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C30B13/20
C30B29/06 501A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020572461
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019064554
(87)【国際公開番号】W WO2020001940
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】102018210317.8
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルトマンショーファー,ルートビヒ
(72)【発明者】
【氏名】マイスタエルンスト,ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】ラトニークス,グンダース
(72)【発明者】
【氏名】ツィツェルスベルガー,ジーモン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218076(JP,A)
【文献】特開平05-024966(JP,A)
【文献】特開2016-079065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 13/20
C30B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶を製造する方法であって、
原料棒(3)と成長単結晶(4)との間に溶融ゾーン(5)を形成するステップと、
前記原料棒(3)の材料を第1の誘導コイル(1)の高周波磁界の中で溶融させるステップと、
前記溶融ゾーン(5)の材料を前記成長単結晶(4)の上で結晶化させるステップと、
前記成長単結晶(4)を回転軸(7)を中心として回転させ、予め定められたパターンに従って回転の方向および回転の速度を変更するステップと、
第2の誘導コイル(2)の交流磁界を前記溶融ゾーン(5)に印加するステップとを含み、前記第2の誘導コイル(2)は、前記成長単結晶(4)を取囲み、低周波交流電流で動作し、前記交流磁界は、前記成長単結晶(4)の前記回転軸(7)について軸対称ではない、方法。
【請求項2】
前記第2の誘導コイル(2)の中心を通る軸(6)と、前記成長単結晶(4)の前記回転軸(7)とは、15°以上30°以下の角度をなす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の誘導コイル(2)は、700アンペア回数以上1100アンペア回数以下の起磁力で動作する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ドーパントを含むドーピングガスを、前記溶融ゾーン(5)の外側部分への経路で、前記溶融ゾーン(5)に送るステップを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ドーピングガスを、前記溶融ゾーン(5)の外側部分への経路で前記溶融ゾーン(5)に送るステップは、前記成長単結晶(4)が、前記成長単結晶(4)の円筒形部分の直径の少なくとも95%に対応する直径に達した後であって前記直径が前記円筒形部分の直径の100%になる前に、開始される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶を製造するための装置であって、前記装置は、
原料棒(3)と成長単結晶(4)との間に溶融ゾーン(5)を形成するための第1の誘導コイル(1)と、
前記第1の誘導コイル(1)への電流リード線(8)と、
前記成長単結晶(4)を取囲み前記溶融ゾーン(5)に交流磁界を印加する第2の誘導コイル(2)とを備え、前記第2の誘導コイル(2)は、水平面から傾斜し、低周波交流電流で動作する、装置。
【請求項7】
前記第2の誘導コイル(2)の中心を通る軸(6)は、前記成長単結晶(4)の回転軸(7)との間に、15°以上30°以下の角度をなすことを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の誘導コイル(1)と前記第2の誘導コイル(2)との間の距離は、前記第1の誘導コイル(1)がその電流リード線(8)を有する場所において、最大である、請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記ドーパントを含むドーピングガスを前記溶融ゾーン(5)の外側部分に送るための少なくとも1つのノズル(10)を備える、請求項6~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
互いの間に120°の間隔が設けられ、前記ドーピングガスを前記溶融ゾーン(5)の前記外側部分に送るための、3つのノズル(10)を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記溶融ゾーン(5)と前記成長単結晶(4)との間の相境界の領域において前記成長単結晶(4)を取囲む再加熱器(12)を備える、請求項6~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
直径が200mm以上でありn型ドーパントがドープされた単結晶シリコンの半導体ウェハであって、前記半導体ウェハは、
1×10 16 原子/cm 以下の格子間酸素濃度を有し、
前記半導体ウェハのR/2の位置からエッジまでの抵抗率増加が2%以上であり、Rは前記半導体ウェハの半径を表し、
RRVで表される抵抗率のばらつきが9%以下であり、
成長縞の変動範囲が±10%以下である、半導体ウェハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料棒と成長単結晶との間に溶融ゾーンを形成することを含む、FZ法に従い半導体材料の単結晶を製造するプロセスを対象とする。本発明はまた、上記プロセスの実施に適した装置、および、上記プロセスにより入手可能となるn型ドーパントがドープされたシリコン半導体ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
フローティングゾーン法は、原料棒と成長単結晶との間に溶融ゾーンを形成することと、原料棒の溶融材料を高周波磁界の中で溶融させることと、溶融ゾーンの材料を成長単結晶の上で結晶化させることとを含む。
【0003】
US3,705,789は、FZ法を用い、溶融ゾーンに追加の磁界を印加して単結晶を製造することを記載している。この磁界は、500Hzと500kHzとの間の周波数の電流が印加されるさらに他の誘導コイルによって生成される。この追加で印加される磁界は、溶融ゾーンを支持する役割を果たす。
【0004】
WO2008/125104A1は、同様のプロセスを記載しており、その主な目的は、単結晶から切り出したウェハ上における単結晶の電気的特性を均質化することである。この方法はまた、成長単結晶を回転軸を中心として回転させることと、予め定められたパターンに従って回転の方向および回転の速度を変更することとを含む。
【0005】
特開2015-229612は、FZ方法に従うプロセスを記載しており、200mmの直径と、5mmのエッジを除外したことを考慮すると最良の場合において3.8%と16%との間にあるRRVとを有する単結晶シリコン半導体ウェハが、上記プロセスによって入手可能になる。RRV(radial resistivity variation:径方向抵抗率ばらつき)は、単結晶の、長手方向軸に対して垂直な面における、抵抗率のばらつきの尺度である。RRVは、以下の式、RRV=[(ρmax-ρmin)/ρmin]×100%に従って計算され、式中、ρmaxおよびρminは、それぞれ、ウェハの面内における最大抵抗率および最小抵抗率を表す。
【0006】
特に、リン、ヒ素およびアンチモン等のn型ドーパントは、偏析係数が比較的小さいので、成長単結晶内でこのようなドーパントを均質的に分布させるのは、より困難である。そのため、nドープのシリコンウェハの抵抗率の径方向のばらつきは、p型ドーパントがドープされた対応するウェハよりも大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、FZ法に従い半導体材料の単結晶を製造するプロセスを提供することであり、このプロセスは、抵抗率の均質化を実現し、電気的特性が改善された単結晶シリコンの半導体ウェハを入手可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶を製造するプロセスによって解決され、このプロセスは、
原料棒と成長単結晶との間に溶融ゾーンを形成するステップと、
第1の誘導コイルの高周波磁界の中で原料棒の材料を溶融させるステップと、
溶融ゾーンの材料を成長単結晶の上で結晶化させるステップと、
成長単結晶を回転軸を中心として回転させるステップと、
予め定められたパターンに従って回転の方向および回転の速度を変更するステップと、
第2の誘導コイルの交流磁界を溶融ゾーンに印加するステップとを含み、この交流磁界は、成長単結晶の回転軸について軸対称ではない。
【0009】
発明者らは、上記課題を解決するためには、交流磁界を溶融ゾーンに印加する第2の誘導コイルを水平位置から傾斜させて配置するのが好都合であることを見出した。第2の誘導コイルの中心を通る軸と、成長単結晶の回転軸とは、ゼロではない角度を形成する。好ましくは、この角度は15°以上30°以下である。交流磁界は電磁力を溶融ゾーンに加え、これが、溶融ゾーンにおけるドーパントの混合を改善し、溶融ゾーンの中心における流れを著しく非対称になるように調整する。このことが、特に成長単結晶の中心においてドーパントがより均一的に取り込まれることを確実にする。
【0010】
このプロセスの有効性はドーパントの種類とは無関係である。したがって、このプロセスを用いることにより、n型ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶だけでなくp型ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶も製造することができる。このプロセスを用いることにより、とりわけ直径が200mm以上のシリコン単結晶を製造することは、特に好都合である。この場合、原料棒は、好ましくは多結晶シリコンからなり、好ましくは化学気相成長法によって製造される。
【0011】
ドーパントは、予めドープされた原料棒を介して、および/または溶融ゾーンに送られたドーピングガスを介して、成長単結晶に供給することができる。本発明の好ましい設計に従うと、ドーパントは、溶融ゾーンの外部領域への経路上で、ドーピングガスとして送られる。ドーピングガスを、異なる2つの経路で、溶融ゾーンの外部領域と溶融ゾーンの内部領域とに送ることが、特に好ましい。ドーピングガスの流れおよび/またはドーピングガス内のドーパントの濃度は、2つの経路について個々に調整することができ、そうすることで、成長単結晶のエッジにおいてドーパントの空乏化が生じないようにすることができる。成長単結晶の直径が、外部に配置されたノズルからのドーピングガスが結晶のエッジに直接接触するのではなく溶融ゾーンの自由表面に接触するのに少なくとも十分な大きさに達するまで、ドーピングガスが溶融ゾーンの外部領域に送られないようにすることが、好都合である。好ましい構成において、ノズルの位置は、結晶の円筒形部分の直径の90%~95%に相当し、ドーピングは、円筒形部分の直径の95%と100%との間に達したときに開始される。円筒形部分は、その後の加工中に半導体ウェハに分割される単結晶の部分である。この最小の直径にまだ達していない場合、ドーピングガスの流れは、一時的に、溶融ゾーンと、成長単結晶のエッジにおける成長単結晶との間の相境界に接触する。ここは特に擾乱が生じ易く、ドーピングガスがこのポイントに送られた場合に生じるものを含む。好ましくは、ドーピングガスは、キャリアガスと、たとえばアルゴンおよびホスフィンであるドーパントとを含む。
【0012】
成長単結晶を、回転軸を中心として時計回りまたは反時計回りに回転させ、回転の方向および回転の速度を、予め定められたパターンに従って時折変更する。
【0013】
さらに、本発明は、ドーパントがドープされた半導体材料の単結晶を製造するための装置を対象とし、この装置は、
原料棒と成長単結晶との間に溶融ゾーンを形成するための第1の誘導コイルと、
第1の誘導コイルへの電流リード線と、
上記成長単結晶を取囲み交流磁界を上記溶融ゾーンに印加する第2の誘導コイルとを備え、上記第2の誘導コイルは水平面から傾斜している。
【0014】
第2の誘導コイルには、その周波数が好ましくは25Hz以上250Hz以下の交流電流が供給される。したがって、この周波数は、MHzの範囲、典型的には2~3MHzの範囲の第1の誘導コイルの交流電流の周波数よりも、大幅に低い。好ましくは、第2の誘導コイルは700アンペア回数以上1100アンペア回数以下の起磁力(magnetomotive force)(mmf)で動作する。
【0015】
第2の誘導コイルは、水平面から傾斜している。この誘導コイルの中心を通る軸は、成長単結晶の回転軸との間に、好ましくは15°以上30°以下の角度を形成する。好ましくは、第2の誘導コイルを、上にある第1の誘導コイルまでの距離が、第1の誘導コイルがその電流リード線を有するポイントで、最大になるように、傾斜させる。言い換えると、好ましくは、第2の誘導コイルは、第1の誘導コイルの電流リード線から遠ざかるように傾斜している。
【0016】
好ましくは、この装置はさらに、ドーピングガスを溶融ゾーンの外側部分に送るための1つ以上のノズルを備え、より好ましくは、ドーピングガスを溶融ゾーンの内側部分に送るための1つ以上のさらに他のノズルを備える。好ましくは、ノズルは第1の誘導コイルの下側に設けられる。たとえば、外側のノズルが3つあり、これらのノズルのうちの1つと次のノズルとの間の距離は、90°、または好ましくは120°である。
【0017】
加えて、好ましくは、上記装置は、溶融ゾーンと成長単結晶との間の相境界のエリアにおいて、成長単結晶を取囲む再加熱器を備える。好ましくは、再加熱器は反射器として設計されるが、能動加熱素子として設計することも可能である。好ましくは、再加熱器は、再加熱器から成長単結晶までの距離が、第2の誘導コイルから成長単結晶までの距離よりも小さくなるような、直径を有する。
【0018】
好ましくは、第2の誘導コイルは筐体に収容され、この筐体内で、第2の誘導コイルの絶縁された巻線が、水等の冷却材で冷却される。好ましくは、この筐体は、非磁性(非強磁性)鋼等の導電性材料からなる。この筐体に、特に、コーティング、好ましくは銀コーティングにより、導電性を付与することが、特に好ましい。このコーティングの厚さは、好ましくは40μm以上である。
【0019】
最後に、本発明は、直径が200mm以上でありn型ドーパントがドープされた単結晶シリコンの半導体ウェハに関し、この半導体ウェハは、
1×1016原子/cm以下の格子間酸素濃度を有し、
半導体ウェハのR/2の位置からエッジまでの抵抗率増加が2%以上であり、Rは半導体ウェハの半径を表し、
RRVで表される抵抗率のばらつきが9%以下であり、
成長縞の変動範囲が±10%以下である。
【0020】
好ましくは、n型ドーパントはリンである。本発明に係る半導体ウェハは、本発明に係るプロセスを適用することによって製造した単結晶から切り出したものである。
【0021】
格子間酸素濃度は、新規ASTM規格に従って測定される。
NTD(neutron transmutation doping:中性子転換ドーピング)によってドープされた半導体ウェハとは異なり、本発明に係るウェハの抵抗率はエッジに向かって増大する。
【0022】
RRVは、4探針法に従い、半導体ウェハの直径に沿って、隣り合う測定位置間の距離を2mmとして測定され、したがって、6mmのエッジが除外されることを考慮しなければならない。
【0023】
成長縞は、溶融ゾーンと成長単結晶との間の相境界における温度およびドーパント濃度の変動によって生じ、結果として抵抗率の変動を示す。成長縞の変動範囲の調査を、SRP測定(spreading resistance profiling:拡がり抵抗プロファイリング)により、半導体ウェハの中心から径方向外側に向かうラインに沿い、隣り合う測定位置間の距離を50μmとして行い、したがって半径の60%の長さを測定する。
【0024】
上記発明の方法の態様に関する特徴は、発明の装置に転用することが可能である。逆に、本発明に係る装置の上記形態に関して示した特徴を、本発明に係るプロセスに、必要な変更を加えて適用することができる。本発明の形態の上記およびその他の特徴は、図面の記載および請求項において説明される。個々の特徴は、別々に実現、または、本発明の実施形態として組み合わせて実現されてもよい。さらに、これらは、独立して保護されることが可能な好都合な実施を説明することができる。
【0025】
以下、本発明を図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る装置の好ましい設計の特徴を概略的に示す図である。
図2】実験例のいくつかの半導体ウェハの、4探針法によって測定された、径方向座標POSに依存する、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
図3】実験例のいくつかの半導体ウェハの、4探針法によって測定された、径方向座標POSに依存する、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
図4】実験例のいくつかの半導体ウェハの、4探針法によって測定された、径方向座標POSに依存する、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
図5】実験例の半導体ウェハの、SRP測定によって測定された、これらの半導体ウェハのエッジからの距離ΔPの関数としての、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
図6】比較例のいくつかの半導体ウェハの、4探針法によって測定された、径方向座標POSに依存する、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
図7】比較例の半導体ウェハの、SRP測定によって測定された、これらの半導体ウェハのエッジからの距離ΔPの関数としての、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示される装置は、第1の誘導コイル1と第2の誘導コイル2とを含む。第1の誘導コイルは、高周波交流電流によって通電され、原料棒3と成長単結晶4との間に位置する。第1の誘導コイルの主な役割は、原料棒3と成長単結晶4との間に溶融ゾーン5を形成すること、および、原料棒3からの材料を溶融させることにより、成長単結晶4の上で結晶化する、溶融ゾーン5からの材料を埋め合わせることである。図示されていないが、原料棒および成長単結晶を回転させるため、かつ、成長単結晶を下降させるための、当業者には周知の装置がある。
【0028】
第2の誘導コイル2は、低周波交流電流で動作し、成長単結晶4の周りに、水平位置から傾斜するように配置されている。この配置により、第2の誘導コイル2の中心を通る軸6と成長単結晶4の回転軸7とは、ゼロよりも大きな値を有する角度αで交差する。第2の誘導コイル2は、第1の誘導コイル1への電流リード線8から遠ざかるように傾斜し、交流磁界を溶融ゾーン5に印加する。第2の誘導コイル2が傾斜するように配置されているので、溶融ゾーン5内の交流磁界は、溶融流を、溶融ゾーン5の中心にまたがる矢印9の方向に駆動する体積力を生じさせる。この非対称の溶融流は、溶融ゾーンにおけるドーパントの分布を均質化し、最終的には成長単結晶4におけるドーパントの分布が均質化される。
【0029】
示されている装置は、ドーパントを含むドーピングガスを溶融ゾーン5の外側部分に送るための少なくとも1つのノズル10と、ドーパントを含むドーピングガスを溶融ゾーン5の内側部分に送るための少なくとも1つのさらに他のノズル11とをさらに含む。好ましくは、ノズル10、11は第1の誘導コイル1の下側に設けられる。典型的な、発明の装置は、内側のノズル11なしでも機能することができる。
【0030】
最後に、示されている装置は受動再加熱器12(反射器)を含み、この再加熱器は、成長単結晶4を取囲み、成長単結晶4のエッジにおける、特に溶融ゾーン5と成長単結晶4との間の相境界の領域における、径方向温度勾配を、減衰させる。
【0031】
本発明に係る実施例の詳細な説明
n型ドーパント(ドーピングガス:ArおよびPH)がドープされたシリコン単結晶を製造するために、本発明を、実験において、図1に示される特徴を有する装置を用いてテストした。次に、単結晶を研削および加工して、直径200mmの、研磨された半導体ウェハにした。第2の誘導コイル2は、直径が300mmであり、121個の巻線で構成されていた。第2の誘導コイルを、第1の誘導コイル1の電流リード線8の水平位置から下に向かって傾斜するように配置した。第2の誘導コイル2の中心を通る軸6と成長単結晶の回転軸7との間の角度αは22.5°であった。第2の誘導コイルを50Hzの交流電流で動作させ、電流強度は、第1の実験例において5A(605アンペア回数のmmfに相当)、第2の実験例において7.5A(907.5アンペア回数のmmfに相当)であった。比較のために、比較実験において別の単結晶を製造し、加工して半導体ウェハにした。このときの単結晶は、図1と同様の特徴を有するが第2の誘導コイル2がない装置で製造した。
【0032】
得られたウェハの抵抗率を、4探針法に従い、ウェハの直径に沿って(隣り合う測定位置間の距離を2mmとし、エッジ6mmを除外)測定し、成長縞の変動範囲を、SRP測定によって(ウェハの中心から径方向外側に向かうラインに沿い、隣り合う測定位置間の距離を50μmとし、半径の60%の長さにわたって)求めた。
【0033】
図2は、第1の実験例のいくつかのウェハの、径方向座標POSに依存する、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す。
【0034】
図3は、第2の実験例のいくつかの半導体ウェハの、径方向座標POSの関数としての、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す。使用する電流強度が高いほど、特に半導体ウェハの中心(POS=0mm)の周りの領域において、より均一的な抵抗率曲線が得られることがわかる。
【0035】
図4は、第3の実験例のいくつかの半導体ウェハの、径方向座標POSの関数としての、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す。第3の実験例では、単結晶のドーピングを、ドーピングガスを、溶融ゾーンの外側部分への経路および溶融ゾーンの内側部分への経路で、溶融ゾーンに送ることによって行ったが、第1および第2の実験例では、ドーピングガスを溶融ゾーンの外側部分に送らなかった。ドーピングガスを溶融ゾーンの外側部分に追加で送ることにより、特に半導体ウェハのエッジ領域(POS=±94mm)において、より平坦な抵抗率曲線が得られることがわかる。これらの半導体ウェハの場合、RRVは9%以下、成長縞の変動範囲は±10%以下であった。
【0036】
図5は、第3の実験例の半導体ウェハのSRP測定の結果を示し、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを、これらの半導体ウェハのうちの2つの半導体ウェハの、エッジからの距離ΔPの関数としてプロットしている。ΔP=100mmはウェハの中心である。
【0037】
図6は、比較実験におけるいくつかの半導体ウェハの、径方向座標POSの関数としての、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを示す。
【0038】
図7は、比較実験における半導体ウェハのSRP測定の結果を示し、目標抵抗率からの抵抗率のずれΔρを、これらの半導体ウェハのうちの2つの半導体ウェハの、エッジからの距離ΔPの関数としてプロットしている。ΔP=100mmはウェハの中心である。
【0039】
具体例としての設計の上記説明は、一例として理解されるべきものである。一方において、本開示は、本発明および関連する利点を当業者が理解することを可能にし、他方において、当業者の理解は、明らかな改良形ならびに記載されている構造およびプロセスの明らかな改良形を含む。したがって、このような改良形、変形、および均等物はすべて、請求項の保護範囲によってカバーされねばならない。
【符号の説明】
【0040】
使用されている参照符号のリスト
1 第1の誘導コイル
2 第2の誘導コイル
3 原料棒
4 成長単結晶
5 溶融ゾーン
6 軸
7 回転軸
8 電流リード線
9 矢印の方向
10 ノズル
11 ノズル
12 再加熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7