(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】偏平型ボイスコイルモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/18 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H02K33/18 B
(21)【出願番号】P 2018223775
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】木本 昭洋
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004463(JP,A)
【文献】特開2001-097541(JP,A)
【文献】特開平02-250655(JP,A)
【文献】特開平08-214528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/00-33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に間隔をあけてかつ同極が対向するように設けられる第1磁石および第2磁石と、前記第1磁石および前記第2磁石の間に設けられかつ前記第1磁石および前記第2磁石を連結する第1ポールピースと
、前記第2磁石から見て前記第1方向における前記第1磁石とは反対側において前記第2磁石と間隔をあけてかつ前記第2磁石と同極が対向するように設けられる第3磁石と、前記第2磁石および前記第3磁石の間に設けられかつ前記第2磁石および前記第3磁石を連結する第2ポールピースとを有し、偏平状に形成される磁石ユニット、
前記第1方向周りに前記第1ポールピースを囲むように設けられる第1コイル
と、前記第1方向周りに前記第2ポールピースを囲むように設けられる第2コイルと、前記第1コイルおよび前記第2コイルを連結するコイル連結部とを有し、偏平状に形成されるコイルユニット、ならびに
前記第1方向に直交する第2方向において前記磁石ユニットおよび前記コイルユニットを挟むように設けられ、かつ前記コイルユニットに電流を供給すると前記磁石ユニットおよび前記コイルユニットのいずれか一方が他方に対して移動可能となるように前記他方に接続されるヨークを備え
、
前記第1方向において、前記第1コイルの寸法は前記第1ポールピースの寸法以上であり、かつ前記第2コイルの寸法は前記第2ポールピースの寸法以上である、偏平型ボイスコイルモータ。
【請求項2】
前記第1方向において、前記第1ポールピースおよび前記第2ポールピースの寸法は、前記第1磁石、前記第2磁石および前記第3磁石の寸法より小さい、請求項1に記載の偏平型ボイスコイルモータ。
【請求項3】
前記第1コイル
および前記第2コイルは、前記第2方向から見て前記ヨークからはみ出さないように設けられる、請求項1
または2に記載の偏平型ボイスコイルモータ。
【請求項4】
前記コイルユニットには直流電流が供給される、請求項1
から3のいずれかに記載の偏平型ボイスコイルモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は偏平型ボイスコイルモータに関し、より特定的には防振装置等に用いられる偏平型ボイスコイルモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1には、相互に対向するように設けられる一対の永久磁石と、一対の永久磁石の間に位置するように設けられる空芯コイルとを有するボイスコイルモータが開示されている。一方の永久磁石において他方の永久磁石と対向する面には、N極とS極とが隣り合うように着磁される。他方の永久磁石において一方の永久磁石と対向する面には、一方の永久磁石と異極同士が対向するようにN極とS極とが着磁される。空芯コイルに電流を供給すると、一方の永久磁石のN極から他方の永久磁石のS極に向かう磁界および他方の永久磁石のN極から一方の永久磁石のS極に向かう磁界と当該電流とによって、推力が発生し、当該推力によって空芯コイルが移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、一方の永久磁石のN極とS極との境界付近では、一方の永久磁石のN極から出た磁界は、他方の永久磁石のS極ではなく、隣り合うS極に向かう。他方の永久磁石のN極とS極との境界付近についても同様である。したがって、一方の永久磁石のN極とS極との境界付近および他方の永久磁石のN極とS極との境界付近の間においては、空芯コイルを移動させるための推力の発生に寄与する磁界を形成できない。また、空芯コイルは一対の永久磁石の間からはみ出す部分を有しており、空芯コイルに電流を供給したとしても当該部分には推力が発生しない。このように、特許文献1のボイスコイルモータは、推力効率が高くない。
【0005】
一方で、部品の小型化の要求により、小型のボイスコイルモータが望まれている。
【0006】
それゆえにこの発明の主たる目的は、小型でかつ推力効率の高い偏平型ボイスコイルモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、第1方向に間隔をあけてかつ同極が対向するように設けられる第1磁石および第2磁石と、第1磁石および第2磁石の間に設けられかつ第1磁石および第2磁石を連結する第1ポールピースとを有し、偏平状に形成される磁石ユニット、第1方向周りに第1ポールピースを囲むように設けられる第1コイルを有し、偏平状に形成されるコイルユニット、ならびに第1方向に直交する第2方向において磁石ユニットおよびコイルユニットを挟むように設けられ、かつコイルユニットに電流を供給すると磁石ユニットおよびコイルユニットのいずれか一方が他方に対して移動可能となるように他方に接続されるヨークを備える、偏平型ボイスコイルモータが提供される。
【0008】
この発明では、第1磁石および第2磁石は、同極が対向するように設けられ、第1コイルは、第1ポールピースを囲むように設けられる。したがって、第1磁石および第2磁石によって形成される磁界は、第1方向から見て第1磁石(第2磁石)とヨークとを繋ぐように放射状に延び、かつ第1コイルを通過するように形成される。言い換えると、第1磁石および第2磁石によって形成される磁界は、第1方向から見て第1コイルの全周を通過するように形成される。したがって、推力効率を高くすることができる。また、磁石ユニットおよびコイルユニットは、偏平状に形成される。したがって、寸法が小さい偏平型ボイスコイルモータを得ることができる。
【0009】
好ましくは、第1コイルは、第2方向から見てヨークからはみ出さないように設けられる。この場合、第1コイル全体を有効に使用できるので、より推力効率を高くすることができる。
【0010】
また好ましくは、コイルユニットには直流電流が供給される。この場合、コイルユニットに供給される直流電流の大きさを調整することによって、磁石ユニットおよびコイルユニットの一方を他方に対して所望の量だけ移動させることができる。したがって、偏平型ボイスコイルモータは位置決め用に好適に用いることができる。
【0011】
さらに好ましくは、磁石ユニットは、第2磁石から見て第1方向における第1磁石とは反対側において第2磁石と間隔をあけてかつ第2磁石と同極が対向するように設けられる第3磁石と、第2磁石および第3磁石の間に設けられかつ第2磁石および第3磁石を連結する第2ポールピースとをさらに有し、コイルユニットは、第1方向周りに第2ポールピースを囲むように設けられる第2コイルと、第1コイルおよび第2コイルを連結するコイル連結部とをさらに有する。この場合、第1コイルに電流を供給したときに発生する推力の方向と、第2コイルに電流を供給したときに発生する推力の方向とが同じになるように、第1コイルおよび第2コイルに電流を供給することによって、偏平型ボイスコイルモータによって得られる推力を大きくできる。
【0012】
好ましくは、第2コイルは、第2方向から見てヨークからはみ出さないように設けられる。この場合、第2コイル全体を有効に使用できるので、より推力効率を高くすることができる。
【0013】
この発明に係る偏平型ボイスコイルモータにおける「偏平」とは、偏平型ボイスコイルモータの偏平度f=2h/(a1+a2)(hは第2方向の寸法、a1は第1方向の寸法、a2は第3方向の寸法)と定義したときに、f≦0.7を満たす場合をいう。偏平度はf≦0.6が好ましい。なお、第3方向とは、第1方向および第2方向に直交する方向をいう。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、小型でかつ推力効率の高い偏平型ボイスコイルモータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータを示す図であり、(a)は一部断面側面図であり、(b)は(a)のA1-A1線断面図であり、(c)は平面図である。
【
図2】この発明の他の実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータを示す図であり、(a)は一部断面側面図であり、(b)は(a)のA2-A2線断面図であり、(c)は平面図である。
【
図3】この発明のその他の実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータを示す図であり、(a)は一部断面側面図であり、(b)は(a)のA3-A3線断面図であり、(c)は平面図である。
【
図4】この発明に係る偏平型ボイスコイルモータの一例を示す図であり、(a)は一部断面側面図であり、(b)は(a)のA4-A4線断面図であり、(c)は平面図である。
【
図5】比較例のボイスコイルモータを示す図であり、(a)は一部断面側面図であり、(b)は(a)のA5-A5線断面図であり、(c)は平面図である。
【
図6】この発明に係る偏平型ボイスコイルモータの一例と、比較例のボイスコイルモータとの推力効率の比較結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータ10は、ヨーク12、磁石ユニット14および第1コイル16(コイルユニットに相当)を有する。
【0018】
ヨーク12は、一対の対向部18,19およびヨーク連結部20を有する。対向部18,19はそれぞれ、第1方向X1に延びかつ平板状に形成される。対向部18,19は、第1方向X1に直交する第2方向Y1において、相互に対向しかつ磁石ユニット14および第1コイル16を挟むように設けられる。ヨーク連結部20は、第1方向X1における対向部18,19の一端部同士を連結する。ヨーク連結部20は、第1方向X1および第2方向Y1に直交する第3方向Z1において、磁石ユニット14および第1コイル16よりも大きい。
【0019】
磁石ユニット14は、第1磁石22、第2磁石24および第1ポールピース26を有し、偏平状に形成される。磁石ユニット14は、第2方向Y1から見て、対向部18,19からはみ出さないように設けられる。第1磁石22および第2磁石24はそれぞれ、第3方向Z1に延びかつ角柱状に形成される。第1磁石22および第2磁石24は、同じ磁石、すなわち相互に同形状、同寸法、同種類に設定される。第1磁石22および第2磁石24は、第1方向X1に間隔をあけてかつN極が対向するように設けられる。第2磁石24のS極側は、ヨーク連結部20に接続される。第1ポールピース26は、第1磁石22および第2磁石24の間に設けられ、かつ第1磁石22および第2磁石24を連結する。第1ポールピース26は、第1方向X1において第1磁石22および第2磁石24よりも大きく、第2方向Y1および第3方向Z1において第1磁石22および第2磁石24と同寸法に設定され、偏平状に形成される。第1ポールピース26には、鉄等の強磁性体が用いられる。このような磁石ユニット14において、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界(
図1(a)、(b)の点線矢印参照)は、第1方向X1から見て、放射状かつ第1コイル16を通過するように形成される。
【0020】
第1コイル16は、第1方向X1周りに第1ポールピース26を囲むように巻回され、偏平状に形成される。第1コイル16は、第1方向X1から見て、略四角形状かつ環状に形成される。第1コイル16は、磁石ユニット14およびヨーク12に対して移動可能に設けられる。第1コイル16は、第2方向Y1から見て、対向部18,19からはみ出さないように設けられる。第1コイル16は、第1方向X1において、第1ポールピース26よりも大きい。第1コイル16には、第1コイル16に直流電流を供給するための配線等(図示せず)が接続される。
【0021】
第1コイル16の外表面には、ブラケット28が接続される。ブラケット28には、偏平型ボイスコイルモータ10によって位置決めされる任意の被位置決め部材(図示せず)が取り付けられる。
【0022】
このような偏平型ボイスコイルモータ10において、第1コイル16に直流電流を供給すると、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界と当該直流電流とによって、第1方向X1に推力が発生し、当該推力によって第1コイル16が磁石ユニット14およびヨーク12に対して第1方向X1に移動する(
図1(a)の矢印B1参照)。
図1(b)に示す方向から見た状態において、時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20から離れる方向に推力が発生し、ヨーク連結部20から離れる方向に第1コイル16が移動する。
図1(b)に示す方向から見た状態において、反時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20に近づく方向に推力が発生し、ヨーク連結部20に近づく方向に第1コイル16が移動する。第1コイル16が第1方向X1に移動することに伴って、被位置決め部材も第1方向X1に移動する。第1コイル16に供給する直流電流の大きさを調整することによって、発生する推力の大きさを調整できる。このように、第1コイル16に供給する直流電流の向きおよび大きさを調整することによって、被位置決め部材を所望の位置に位置決めすることができる。
【0023】
このような偏平型ボイスコイルモータ10によれば、第1磁石22および第2磁石24は、同極が対向するように設けられ、第1コイル16は、第1ポールピース26を囲むように設けられる。したがって、
図1(b)に示すように、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界は、第1方向X1から見て第1磁石22(第2磁石24)とヨーク12とを繋ぐように放射状に延び、かつ第1コイル16を通過するように形成される。言い換えると、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界は、第1方向X1から見て第1コイル16の全周を通過するように形成される。したがって、推力効率を高くすることができる。また、磁石ユニット14および第1コイル16は、偏平状に形成される。したがって、小型で偏平度fが小さい偏平型ボイスコイルモータ10を得ることができる。
【0024】
第1コイル16は、第2方向Y1から見てヨーク12からはみ出さないように設けられるので、第1コイル16全体を有効に使用でき、より推力効率を高くすることができる。
【0025】
第1コイル16に供給される直流電流の大きさを調整することによって、第1コイル16を磁石ユニット14およびヨーク12に対して所望の量だけ移動させることができる。したがって、偏平型ボイスコイルモータ10は位置決め用に好適に用いることができる。
【0026】
上述した作用効果は、後述する
図2および
図3に示す実施形態においても同様に奏することができる。
【0027】
図2を参照して、この発明の他の実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータ100について説明する。上述した偏平型ボイスコイルモータ10と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。偏平型ボイスコイルモータ100は、ヨーク12、磁石ユニット102およびコイルユニット104を有する。
【0028】
磁石ユニット102は、第1磁石22、第2磁石24、第3磁石106、第1ポールピース108、および第2ポールピース110を有し、偏平状に形成される。第1方向X2において、第1磁石22と第2磁石24との間隔は、偏平型ボイスコイルモータ10における第1磁石22と第2磁石24との間隔よりも小さく設定される。第3磁石106は、第1磁石22および第2磁石24と同じ磁石、すなわち同形状、同寸法、同種類に設定される。第3磁石106は、第2磁石24から見て第1方向X2における第1磁石22とは反対側において、第2磁石24と間隔をあけて、かつ第2磁石24とS極が対向するように設けられる。第1方向X2において、第2磁石24と第3磁石106との間隔は、第1磁石22と第2磁石24との間隔と同等に設定される。第3磁石106のN極側は、ヨーク連結部20に接続される。第1ポールピース108は、第1方向X2において第1磁石22および第2磁石24よりも小さい点で、第1ポールピース26と異なる。第2ポールピース110は、第1ポールピース108と同じポールピース、すなわち同形状、同寸法、同種類に設定される。第2ポールピース110は、第2磁石24および第3磁石106の間に設けられ、かつ第2磁石24および第3磁石106を連結する。このような磁石ユニット102において、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界(
図2(a)の点線矢印参照)は、第1方向X2から見て、放射状かつ第1コイル112(後述)を通過するように形成される。第2磁石24および第3磁石106によって形成される磁界(
図2(a),(b)の点線矢印参照)は、第1方向X2から見て、放射状かつ第2コイル114(後述)を通過するように形成される。第2磁石24および第3磁石106によって形成される磁界は、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界とは逆方向に形成される。
【0029】
コイルユニット104は、第1コイル112、第2コイル114およびコイル連結部116を有する。第1コイル112は、第1方向X2において第1ポールピース108と同寸法に設定される点で、第1コイル16と異なる。第2コイル114は、第1コイル112と同じコイル、すなわち同形状、同寸法、同種類に設定され、第1方向X2周りに第2ポールピース110を囲むように巻回される。したがって、第2コイル114は、第1方向X2において第2ポールピース110と同寸法に設定される。第2コイル114は、第2方向Y2から見てヨーク12からはみ出さないように設けられる。コイル連結部116は、第1コイル112および第2コイル114の間に設けられ、第1コイル112および第2コイル114を連結する。第1ポールピース108に対する第1コイル112の位置関係と第2ポールピース110に対する第2コイル114の位置関係とが同じになるように、第1コイル112および第2コイル114は連結される。コイル連結部116は、第1方向X2から見て、第1コイル112および第2コイル114と重なるように略四角形状かつ環状に形成される。コイル連結部116は、第1方向X2において第2磁石24と同寸法に設定される。
【0030】
コイル連結部116の外表面には、ブラケット28が接続される。ブラケット28には、偏平型ボイスコイルモータ100によって位置決めされる任意の被位置決め部材(図示せず)が取り付けられる。
【0031】
このような偏平型ボイスコイルモータ100において、第1コイル112に直流電流を供給すると、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界と当該直流電流とによって、第1方向X2に推力が発生し、第2コイル114に直流電流を供給すると、第2磁石24および第3磁石106によって形成される磁界と当該直流電流とによって、第1方向X2に推力が発生する。当該推力によってコイルユニット104が磁石ユニット102およびヨーク12に対して第1方向X2に移動する(
図2(a)の矢印B2参照)。
図2(b)に示す方向から見た状態において、第1コイル112に時計回りに直流電流を供給し、第2コイル114に反時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20から離れる方向に推力が発生し、ヨーク連結部20から離れる方向にコイルユニット104が移動する。
図2(b)に示す方向から見た状態において、第1コイル112に反時計回りに直流電流を供給し、第2コイル114に時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20に近づく方向に推力が発生し、ヨーク連結部20に近づく方向にコイルユニット104が移動する。第1コイル112および第2コイル114に供給する直流電流の向きおよび大きさを調整することによって、被位置決め部材を所望の位置に位置決めすることができる。
【0032】
このような偏平型ボイスコイルモータ100によれば、第1コイル112に直流電流を供給したときに発生する推力の方向と、第2コイル114に直流電流を供給したときに発生する推力の方向とが同じになるように、第1コイル112および第2コイル114に直流電流を供給することによって、偏平型ボイスコイルモータ100によって得られる推力を大きくできる。
【0033】
第2コイル114は、第2方向Y2から見てヨーク12からはみ出さないように設けられるので、第2コイル114全体を有効に使用でき、より推力効率を高くすることができる。
【0034】
第1磁石22と第3磁石106とは同じ磁石であり、第1ポールピース108と第2ポールピース110とは同じポールピースであり、第1コイル112と第2コイル114とは同じコイルであり、第1ポールピース108に対する第1コイル112の位置関係と第2ポールピース110に対する第2コイル114の位置関係とは同じである。これによって、第1コイル112を通る磁界の分布と第2コイル114を通る磁界の分布とを、その向きを除いて等しくできる。
【0035】
図3を参照して、この発明のその他の実施形態に係る偏平型ボイスコイルモータ200について説明する。上述した偏平型ボイスコイルモータ10と共通する部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。偏平型ボイスコイルモータ200は、ヨーク12、磁石ユニット14および第1コイル202(コイルユニットに相当)を有する。
【0036】
偏平型ボイスコイルモータ200では、磁石ユニット14は、ヨーク連結部20に接続されず、第1コイル202およびヨーク12に対して移動可能に設けられる。
【0037】
第1コイル202は、第1方向X3から見て、略四角形状かつ環状に巻回される。第2方向Y3における第1コイル202の両側は、対向部18,19に固定される。第1コイル202が第1方向X3周りに第1ポールピース26を囲むように、第1コイル202の内方に磁石ユニット14が配置される。
【0038】
第1磁石22の外表面には、ブラケット28が接続される。ブラケット28には、偏平型ボイスコイルモータ200によって位置決めされる任意の被位置決め部材(図示せず)が取り付けられる。
【0039】
このような偏平型ボイスコイルモータ200において、第1コイル202に直流電流を供給すると、第1磁石22および第2磁石24によって形成される磁界と当該直流電流とによって、第1方向X3に推力が発生し、当該推力によって磁石ユニット14が第1コイル202およびヨーク12に対して第1方向X3に移動する(
図3(a)の矢印B3参照)。
図3(b)に示す方向から見た状態において、第1コイル202に時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20に近づく方向に推力が発生し、ヨーク連結部20に近づく方向に磁石ユニット14が移動する。
図3(b)に示す方向から見た状態において、第1コイル202に反時計回りに直流電流を供給すれば、ヨーク連結部20から離れる方向に推力が発生し、ヨーク連結部20から離れる方向に磁石ユニット14が移動する。磁石ユニット14が第1方向X3に移動することに伴って、磁石ユニット14に接続されたブラケット28も第1方向X3に移動する。このように、第1コイル202に供給する直流電流の向きおよび大きさを調整することによって、被位置決め部材を所望の位置に位置決めすることができる。
【0040】
このような偏平型ボイスコイルモータ200によれば、コイルユニットが可動する場合よりも、重量が大きい被位置決め部材の位置決めを行うことができる。
【0041】
図4~
図6を参照して、この発明に係る偏平型ボイスコイルモータ300(
図4参照)と、比較例のボイスコイルモータ1(
図5参照)との推力効率の比較結果(
図6参照)について説明する。
【0042】
図4および
図6を参照して、この発明に係る偏平型ボイスコイルモータ300は、幅(W:第1方向の寸法)75mm、奥行き(L:第3方向の寸法)110mm、高さ(H:第2方向の寸法)47mmに設定される。この場合の偏平度fはf=2H/(W+L)=0.51である。偏平型ボイスコイルモータ300は、偏平型ボイスコイルモータ10と寸法は異なるが略同様の構成を有するため、偏平型ボイスコイルモータ10と対応する部分については対応する符号の末尾に「a」を付すことによって詳細な説明を省略する。ヨーク12aは、ヨーク連結部20aに加えて、対向部18a,19aの他端部同士を連結しかつ第1磁石22aのS極側に接続されるヨーク連結部21aを有する。第1磁石22aおよび第2磁石24aには、NdFeB系焼結磁石を用いた。第1コイル16aに直流電流を供給すると、推力が発生し、当該推力によって第1コイル16aは移動する(
図4(a)の矢印B4参照)。第1コイル16aのうち矢印B4方向の推力が発生する部分の巻回方向の長さは、D1mmとなる(
図4(b)参照)。
【0043】
一方、
図5および
図6を参照して、比較例のボイスコイルモータ1は、幅(W)75mm、奥行き(L)110mm、高さ(H)60mmに設定される。この場合の偏平度fはf=2H/(W+L)=0.65である。ボイスコイルモータ1は、ヨーク2、磁石ユニット3およびコイル4を有する。ヨーク2は、相互に対向する一対の対向部5a,5b、ならびに一対の対向部5a,5bの一端部同士および他端部同士を連結するヨーク連結部6a,6bを有する。磁石ユニット3は、対向部5aの内面に設けられる第1磁石7、および第1磁石7に対向しかつ対向部5bの内面に設けられる第2磁石8を有する。第1磁石7における第2磁石8と対向する面には、N極とS極とが隣り合うように着磁される。第2磁石8における第1磁石7と対向する面には、第1磁石7と異極同士が対向するように、N極とS極とが着磁される。第1磁石7および第2磁石8には、NdFeB系焼結磁石を用いた。コイル4は、平面視において略四角形かつ環状に形成され、第1磁石7と第2磁石8との間に設けられる。したがって、第1磁石7のN極から第2磁石8のS極に向かう磁界、および第2磁石8のN極から第1磁石7のS極に向かう磁界はそれぞれ、コイル4を通過するように形成される(
図5(a)の点線矢印参照)。コイル4に直流電流を供給すると、推力が発生し、当該推力によってコイル4は移動する(
図5(a)の矢印B5参照)。コイル4のうち矢印B5方向の推力が発生する部分の巻回方向の長さは、2×D2mmとなる(
図5(c)参照)。
【0044】
偏平型ボイスコイルモータ300およびボイスコイルモータ1を比較すると、偏平型ボイスコイルモータ300の高さ(H)は、ボイスコイルモータ1の高さ(H)よりも小さく設定される。したがって、偏平型ボイスコイルモータ300の体積は、ボイスコイルモータ1の体積よりも小さく、偏平型ボイスコイルモータ300は、ボイスコイルモータ1よりも小型である。さらに、偏平型ボイスコイルモータ300の偏平度fは、ボイスコイルモータ1の偏平度fよりも小さく、偏平型ボイスコイルモータ300は、ボイスコイルモータ1よりも薄い偏平である。また、偏平型ボイスコイルモータ300における上記長さ(D1mm)は、ボイスコイルモータ1における上記長さ(2×D2mm)よりも長く、ボイスコイルモータ1における長さ(2×D2mm)の約1.5倍となる。このような2つの偏平型ボイスコイルモータ300およびボイスコイルモータ1において、偏平型ボイスコイルモータ300の第1コイル16a、およびボイスコイルモータ1のコイル4に直流定格電流を供給すると、偏平型ボイスコイルモータ300では45Nの推力が発生し、ボイスコイルモータ1では25Nの推力が発生した。そして、この場合の推力効率(推力/体積)を比較すると、偏平型ボイスコイルモータ300では0.12N/cm3となり、ボイスコイルモータ1では0.05N/cm3となった。
【0045】
上述したように、この発明に係る偏平型ボイスコイルモータ300は、比較例のボイスコイルモータ1よりも小型かつ薄い偏平であるにも拘らず、比較例のボイスコイルモータ1よりも推力効率が高い。
【0046】
上述した実施形態では、第1磁石22のN極と第2磁石24のN極とが対向するように設けられる場合について説明したが、これに限定されず、第1磁石22のS極と第2磁石24のS極とが対向するように設けられてもよい。
【0047】
上述した実施形態では、第2磁石24のS極と第3磁石106のS極とが対向するように設けられる場合について説明したが、これに限定されず、第2磁石24のN極と第3磁石106のN極とが対向するように設けられてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、コイルユニットに直流電流を供給する場合について説明したが、これに限定されず、コイルユニットに交流電流を供給してもよい。この場合、磁石ユニットおよびコイルユニットのうち可動する方が可動しない方に対して振動する偏平型ボイスコイルモータを構成できる。
【0049】
上述した実施形態では、第1コイル16が第1方向X1において第1ポールピース26より大きい場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、第1コイルは第1方向X1において第1ポールピース26と同寸法または第1ポールピース26よりも小さく設定されてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、第1コイル112が第1方向X2において第1ポールピース108と同寸法に設定され、第2コイル114が第1方向X2において第2ポールピース110と同寸法に設定される場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、第1コイルは第1方向X2において第1ポールピース108よりも大きくまたは小さく設定され、第2コイルは第1方向X2において第2ポールピース110よりも大きくまたは小さく設定されてもよい。
【0051】
上述した実施形態では、偏平型ボイスコイルモータ10,200における第1磁石22および第2磁石24、また、偏平型ボイスコイルモータ100における第1磁石22、第2磁石24および第3磁石106は、同じ磁石、すなわち相互に同形状、同寸法、同種類に設定される場合について説明したが、これに限定されない。
【0052】
上述した実施形態では、第1磁石22と第3磁石106とは同じ磁石であり、第1ポールピース108と第2ポールピース110とは同じポールピースであり、第1コイル112と第2コイル114とは同じコイルであり、第1ポールピース108に対する第1コイル112の位置関係と第2ポールピース110に対する第2コイル114の位置関係とは同じである場合について説明したが、これに限定されない。
【0053】
上述した実施形態では、第1コイルおよび第2コイルが、第2方向から見てヨークからはみ出さないように設けられる場合について説明したが、これに限定されない。第1コイルおよび第2コイルは、第2方向から見てヨークからはみ出すように設けられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,100,200,300 偏平型ボイスコイルモータ
12,12a ヨーク
14,102 磁石ユニット
16,112,202 第1コイル
18,18a,19,19a 対向部
20,20a,21a ヨーク連結部
22,22a 第1磁石
24,24a 第2磁石
26,108 第1ポールピース
28 ブラケット
104 コイルユニット
106 第3磁石
110 第2ポールピース
114 第2コイル
116 コイル連結部