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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C09K 19/12 20060101AFI20230214BHJP
   C07C 69/94 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/16 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20230214BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20230214BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C09K19/12
C07C69/94 CSP
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
C09K19/30
C09K19/32
C09K19/34
C09K19/38
C09K19/54 Z
G02F1/13 500
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019570322
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2018045882
(87)【国際公開番号】W WO2019155761
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2018020435
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智広
(72)【発明者】
【氏名】近藤 史尚
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226616(JP,A)
【文献】特開2016-017034(JP,A)
【文献】特開2016-011346(JP,A)
【文献】特開2015-205843(JP,A)
【文献】特開2005-035985(JP,A)
【文献】特開2016-011347(JP,A)
【文献】特開平10-182556(JP,A)
【文献】特表2002-521354(JP,A)
【文献】特表平11-513360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0139786(US,A1)
【文献】Macromolecules,1996年,29(5),P.1649-1654
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/
C09K 19/
G02F 1/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-A)で表される化合物からなる、液晶分子の水平配向剤
【化1】


およびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く、PおよびPが式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
SpおよびSpは独立して、炭素数から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1つの-CH-は、-O-で置き換えられ;
【化2】


Yは(MES-1-01)から(MES-1-05)、(MES-1-07)から(MES-1-09)のいずれかの式で表される基である。
【化3】


は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、水素、フッ素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、単結合または-C≡C-であり;
また、上記式中の、下記に示す1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化4】

【請求項2】
式(1-A)で表される化合物からなる、液晶分子の水平配向剤
【化5】


およびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPが同一の構造であることは無く、式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
【化6】


SpおよびSpは独立して、炭素数から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、1つの-CH-は、-O-で置き換えられ;
Yは(MES-2-01)から(MES-2-15)のいずれかで表される基である。
【化7】


は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
また、上記式中の、下記に示す1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、
1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化8】

【請求項3】
請求項1または2に記載した液晶分子の水平配向剤の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【請求項4】
式(2)から式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項に記載の液晶組成物。
【化9】


式(2)から式(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【請求項5】
式(5)から式(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項またはに記載の液晶組成物。
【化10】


式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換え
られてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、-OCF3、-OCHF2、-CF3、-CHF2、-CH2
、-OCF2CHF2、または-OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-CF=CF-、-CH=CF-または-(CH-であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項6】
式(8)で表される化合物の少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化11】


式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換え
られてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nであり;
環Dは、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
17は、単結合、-CHCH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-O
CF-、または-CHO-であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項7】
式(9)から式(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化12】


式(9)から式(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられて
もよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2
は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,
4-シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
環Eおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、-CHCH-、-COO-、-CHO-、-OCF-、または-OCFCHCH-であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、-CHF-または-CF-であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項8】
式(16)で表される化合物の少なくとも1つの重合性化合物を含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化13】


式(16)において、
環Fおよび環Iは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
環Gは、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
22およびZ23は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-CH=C(CH)-、または-C(CH)=C(CH)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
11、P12、およびP13は独立して、式(P-1)から式(P-5)で表される基の群から選択された重合性基であり;
【化14】


11、M12、およびM13は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
Sp11、Sp12、およびSp13は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
uは、0、1、または2であり;
f、g、およびhは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてf、g、およびhの和は2以上である。
【請求項9】
式(16-1)から式(16-27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの重合性化合物を含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化15】


【化16】


【化17】


式(16-1)から式(16-27)において、
11、P12、およびP13は独立して、式(P-1)から式(P-3)で表される基の群から選択された重合性基であり、ここでM11、M12、およびM13は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり:
【化18】


Sp11、Sp12、およびSp13は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これら
の基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【請求項10】
式(1)および式(16)以外の重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、および消泡剤の少なくとも1つをさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項11】
請求項から10のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、一つの分子内に複数種の重合性基を有する重合性の極性化合物、この化合物を含み、誘電率異方性が正または負の液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、FPA(field-induced photo-reactive alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
液晶表示素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有するAM素子を得ることができる。2つの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はより好ましい。
【0004】
【表1】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。素子のモードに応じて、大きな光学異方性または小さな光学異方性、すなわち適切な光学異方性が必要である。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。この値は、TNのようなモードの素子では約0.45μmである。この値は、VAモードの素子では約0.30μmから約0.40μmの範囲であり、IPSモードまたはFFSモードの素子では約0.20μmから約0.30μmの範囲である。これらの場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は、素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、正または負に大きな誘電率異方性が好ましい。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比とに寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、素子の寿命に関連する。この安定性が高いとき、素子の寿命は長い。このような特性は、液晶プロジェクター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。
高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型のAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型の液晶表示素子では、重合体を含有する液晶組成物が用いられる。まず、少量の重合性化合物を添加した組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板のあいだに電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、組成物中に重合体の網目構造を生成する。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。重合体のこのような効果は、TN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、FPAのようなモードを有する素子に期待できる。
【0007】
ポリイミドのような配向膜の代わりに、シンナメート基を有する低分子化合物やポリビニルシンナメート、カルコン構造を有する低分子化合物、アゾベンゼン構造を有する低分子化合物やデンドリマーを用いて液晶の配向を制御する方法が報告されている(特許文献1、2または3)。特許文献1、2または3の方法では、まず、この低分子化合物やポリマーを添加物として液晶組成物に溶解させる。次に、この添加物を相分離させることによってこの低分子化合物やポリマーからなる薄膜を基板上に生成させる。最後に、液晶組成物の上限温度より高い温度で基板に直線偏光を照射する。この直線偏光によって低分子化合物やポリマー二量化または異性化するとき、その分子が一定方向に配列される。この方法では、低分子化合物やポリマーの種類を選択することにより、IPSやFFSのような水平配向モードの素子とVAのような垂直配向モードの素子とを製造することができる。この方法においては、低分子化合物やポリマーが液晶組成物の上限温度より高い温度で容易に溶解し、室温に戻したとき、この化合物が液晶組成物から容易に相分離することが重要である。ただし、低分子化合物やポリマーと液晶組成物との相溶性を確保するのが困難であった。
【0008】
これまでに、配向膜を有しない液晶表示素子において、液晶分子を水平配向させることの出来る化合物として、特許文献2に末端にメタクリレート基を有する化合物([化2])、特許文献3には末端にアクリレート基を有する化合物[14]等が記載されている。しかし、これらの化合物は液晶分子を水平配向させる能力は十分ではない。また、置換されている重合性基は一種のみである。
【0009】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2015/146369号
【文献】国際公開第2017/057162号
【文献】国際公開第2017/102068号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第一の課題は、化学的に高い安定性、液晶分子を水平配向させる高い能力、広い添加濃度範囲における高い配向性、適切な反応性、および液晶組成物への高い溶解度の少なくとも1つの特性を有し、そして液晶表示素子に用いた場合に電圧保持率が大きいことが期待される化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含み、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、この組成物に紫外線照射することにより極性化合物が素子内で膜を形成した際、その膜が適切な硬度、接触する成分の低い浸透性、高い耐候性、適切な体積抵抗値の少なくとも1つの特性を有し、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命の少なくとも1つの特性を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、以下の式(1)で表される化合物が、上記の課題を解決できることを見出し、発明を完成させた。
【化2】

(式中の記号の説明は後述する)
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の長所は、化学的に高い安定性、液晶分子を水平に配向させる高い能力広い添加濃度範囲における高い配向性、適切な反応性、および液晶組成物への高い溶解度の少なくとも1つを有し、そして液晶表示素子に用いた場合に電圧保持率が大きいことが期待される化合物を提供することである。第二の長所は、この化合物を含み、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。第三の長所は、この組成物を含み、この組成物に紫外線照射することにより極性化合物が素子内で膜を形成した際、その膜が適切な硬度、接触する成分の低い浸透性、高い耐候性、適切な体積抵抗値の少なくとも1つの特性を有し、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命の少なくとも1つの特性を有する液晶表示素子を提供することである。本発明の化合物を含む液晶組成物を利用することによって、配向膜の形成工程が不要になるので、製造コストを低減させた液晶表示素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。「極性化合物」は、極性基が基板表面と相互作用することによって液晶分子が配列するのを援助する。
【0015】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。液晶性化合物の割合(含有量)は、この液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。添加物の割合(添加量)は、液晶性化合物の割合と同様に、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0016】
式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と略すことがある。化合物(1)は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。このルールは、式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物などにも適用される。六角形で囲んだB、C、Fなどの記号はそれぞれ環B、環C、環Fなどに対応する。六角形は、シクロヘキサン環やベンゼン環のような六員環またはナフタレン環のような縮合環を表す。この六角形を横切る斜線は、環上の任意の水素が-Sp-Pなどの基で置き換えられてもよいことを表す。eなどの添え字は、置き換えられた基の数を示す。添え字が0のとき、そのような置き換えはない。
【0017】
末端基R11の記号を複数の成分化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR11が表す2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。例えば、化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がエチルであるケースがある。化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基、環、結合基などの記号にも適用される。式(8)において、iが2のとき、2つの環Dが存在する。この化合物において、2つの環Dが表す2つの基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。このルールは、iが2より大きいときの任意の2つの環Dにも適用される。このルールは、他の環、結合基などの記号にも適用される。
【0018】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数は任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できる。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つのAが、B、C、またはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられた場合、少なくとも1つのAがCで置き換えられた場合、および少なくとも1つのAがDで置き換えられた場合、さらに複数のAがB、C、Dの少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、少なくとも1つの-CH-(または、-CHCH-)が-O-(または、-CH=CH-)で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの-CH-が-O-で置き換えられて、-O-O-のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(-CH-H)の-CH-が-O-で置き換えられて-O-Hになることも好ましくない。
【0019】
ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素または塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。アルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、ネマチック相の上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって生成した非対称な二価基にも適用される。
【化3】
【0020】
本発明は、下記の項などを包含する。
【0021】
項1. 式(1)で表される化合物。
【化4】

式(1)において、
aおよびbは独立して、0、1または2であり、0≦a+b≦3であり、
環A、環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-Sp-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、aが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよく、bが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよく;
、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。但し、Z、Z、またはZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり、aが2のとき、2つのZは異なっていてもよく、2つのZは異なっていてもよく;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよく、構造内に複数のSpまたはSpが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく;
1およびPは独立して、式(1b)~式(1h)のいずれかで表される基であり、構造内に複数のPまたはPが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く;
【化5】

式(1b)~式(1h)において、
、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
項2. 式(1)において、
aおよびbは独立して、0、1または2であり、0≦a+b≦2であり;
環A、環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-Sp-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、aが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよく、bが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよく;
、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CF=CF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CHCO-または-COCH=CH-であり、但し、Z、Z、またはZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり、aが2のとき、2つのZは異なっていてもよく、2つのZは異なっていてもよく;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、構造内に複数のSpまたはSpが存在する場合はそれぞれが異なっていてもよく;
およびPは独立して、式(1b)~式(1h)のいずれかで表される基であり、構造内に複数のPまたはPが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く;
【化6】

式(1b)~式(1h)において、
、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい、項1に記載の化合物。
項3. 式(1-1)から式(1-3)のいずれか1つで表される、項1または2に記載の化合物。
【化7】

式(1-1)から式(1-3)において、
環A、環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-SP-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
、ZおよびZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CF=CF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CHCO-または-COCH=CH-であり、ただしZ、ZおよびZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、構造内に複数のSpまたはSpが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく;
およびPは独立して、式(1b)~式(1h)のいずれかで表される基であり、構造内に複数のPまたはPが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く;
【化8】

、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
項4. 式(1-1)、式(1-2)および式(1-3)において、
環A、環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-Sp-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく;
、ZおよびZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり、ただしZ、ZおよびZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく、構造内に複数のSpまたはSpが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく;
およびPは独立して、式(1b)、式(1c)、式(1d)、または式(1e)のいずれかで表される基であり、構造内に複数のPまたはPが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く、PおよびPがアクリレート、メタクリレートのみの組み合わせであることは無く;
【化9】

、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
式(1b)~式(1e)において、
は水素、ハロゲン、または炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、およびRは独立して、水素または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい、項3に記載の化合物。
項5. 式(1-1)、式(1-2)、または式(1-3)で表される化合物において、Z、Z、またはZのいずれか1つは、-COO-または-OCO-である、項4に記載の化合物。
項6. 式(1-1)、式(1-2)、または式(1-3)で表される化合物において、Z、Z、またはZのいずれか1つは、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-である、項4に記載の化合物。
項7. 式(1-A)で表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【化10】

およびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)、(1b-4)、(1b-5)、(1c-1)、(1d-1)、(1d-2)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く、PおよびPが式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく;
【化11】

Yは(MES-1-01)から(MES-1-10)のいずれかの式で表される基である。
【化12】

は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、水素、フッ素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、単結合または-C≡C-であり;
また、上記式中の、下記に示す1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化13】

項8. 式(1-A)で表される、項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【化14】
およびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)、(1b-4)、(1b-5)、(1c-1)、(1d-1)、(1d-2)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPが同一の構造であることは無く、式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
【化15】

SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく;
Yは(MES-2-01)から(MES-2-15)のいずれかで表される基である。
【化16】

は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
また、上記式中の、下記に示す1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化17】

項9. 項1から8のいずれか1項に記載した化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
項10. 式(2)から式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9に記載の液晶組成物。
【化18】

式(2)から式(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
項11. 式(5)から式(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9または10に記載の液晶組成物。
【化19】

式(5)から式(7)において、
13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、-OCF3、-OCHF2、-CF3、-CHF2、-CH2F、-OCF2CHF2、または-OCF2CHFCF3であり;
環C、環C、および環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
14、Z15、およびZ16は独立して、単結合、-CHCH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-CF=CF-、-CH=CF-または-(CH-であり;
11およびL12は独立して、水素またはフッ素である。
項12. 式(8)で表される化合物の少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化20】

式(8)において、
14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nであり;
環Dは、1,4-シクロヘキシレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
17は、単結合、-CHCH-、-C≡C-、-COO-、-CFO-、-OCF-、または-CHO-であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
項13. 式(9)から式(15)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項9から12のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化21】

式(9)から式(15)において、
15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環E、環E、環E、および環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
環Eおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはデカヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり;
18、Z19、Z20、およびZ21は独立して、単結合、-CHCH-、-COO-、-CHO-、-OCF-、または-OCFCHCH-であり;
15およびL16は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、-CHF-または-CF-であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
項14. 式(16)で表される化合物の少なくとも1つの重合性化合物を含有する、項9から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化22】

式(16)において、
環Fおよび環Iは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
環Gは、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;
22およびZ23は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-CH=C(CH)-、または-C(CH)=C(CH)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
11、P12、およびP13は独立して、式(P-1)から式(P-5)で表される基の群から選択された重合性基であり;
【化23】

11、M12、およびM13は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
Sp11、Sp12、およびSp13は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
uは、0、1、または2であり;
f、g、およびhは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてf、g、およびhの和は2以上である。
項15. 式(16-1)から式(16-27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの重合性化合物を含有する、項9から14のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【化24】

【化25】

【化26】

式(16-1)から式(16-27)において、
11、P12、およびP13は独立して、式(P-1)から式(P-3)で表される基の群から選択された重合性基であり、ここでM11、M12、およびM13は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり:
【化27】

Sp11、Sp12、およびSp13は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
項16. 式(1)および式(16)以外の重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、および消泡剤の少なくとも1つをさらに含有する、項9から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
項17. 項9から16のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する、液晶表示素子。
【0022】
本発明は、次の項も含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤のような添加物の少なくとも2つをさらに含有する上記の液晶組成物。(b)上記の液晶組成物に化合物(1)または化合物(16)とは異なる重合性化合物を添加することによって調製した重合性組成物。(c)上記の液晶組成物に化合物(1)と化合物(16)とを添加することによって調製した重合性組成物。(d)重合性組成物を重合させることによって調製した液晶複合体。(e)この液晶複合体を含有する高分子支持配向型の素子。(f)上記の液晶組成物に化合物(1)と化合物(16)と、化合物(1)または化合物(16)とは異なる重合性化合物とを添加することによって調製した重合性組成物を使用することによって作成した高分子支持配向型の素子。
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成、液晶組成物、および液晶表示素子について順に説明する。
【0023】
1.化合物(1)の態様
本発明の実施形態にかかる化合物(1)は、少なくとも1つの環より構成されるメソゲン部位と、複数種の重合性基を有する極性化合物であることを特徴とする。化合物(1)は、重合性基を複数種持つことにより、重合性基が一種の化合物と比較しその特性の調節が容易である。用途の一つは、液晶表示素子に使われる液晶組成物用の添加物である。化合物(1)は液晶分子の配向を水平に制御する目的で添加される。このような添加物は、素子に密閉された条件下では化学的に安定であり、液晶組成物への高い溶解度を有し、そして液晶表示素子に用いた場合の電圧保持率が大きいことが好ましい。化合物(1)は、このような特性をかなりの程度で充足する。
【0024】
化合物(1)の好ましい例について説明をする。化合物(1)におけるR、Z~Z、A~A、Sp、Sp、P、P、aおよびbの好ましい例は、化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基の種類を適切に組み合わせることによって、特性を任意に調整することが可能である。化合物の特性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【化28】
【0025】
環A、A、AおよびAは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-Sp-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、aが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよく、bが2のとき、2つの環Aは異なっていてもよい。
【0026】
好ましい環A、A、AおよびAは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、または炭素数2から11のアルケニルオキシで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。さらに好ましくは、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、または2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素、または炭素数1から5のアルキルで置き換えられてもよい。特に好ましくは、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、またはペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素はフッ素、メチル、またはエチルで置き換えられてもよい。
【0027】
、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。但し、Z、Z、またはZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、-COCH=CH-のいずれかであり、aが2のとき、2つのZは異なっていてもよく、2つのZは異なっていてもよい。
好ましいZ、Z、Z、ZおよびZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、または-CF=CF-である。さらに好ましくは、単結合、-(CH-、または-CH=CH-である。特に好ましくは、単結合である。
【0028】
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、ハロゲンで置き換えられてもよい。
好ましいSpおよびSpは独立して、単結合、炭素数1~6のアルキレン、1つの-CH-が-O-で置き換えられた炭素数1~6のアルキレン、または-OCOO-である。さらに好ましくは、炭素数1~6のアルキレン、または-OCOO-である。
【0029】
およびPは独立して、式(1b)~式(1h)のいずれかで表される基である。
【0030】
好ましいPおよびPは独立して、(1b)、(1c)、(1d)、および(1e)である。
【化29】
【0031】
さらに好ましい基は、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)、(1b-4)、(1b-5)、(1c-1)、(1d-1)、(1d-2)または(1e-1)で表される基である。
【化30】

式(1b)~式(1h)において、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
【0032】
好ましいM、M、MおよびM4は独立して、水素、フッ素、メチル、エチル、またはトリフルオロメチルである。さらに好ましくは、水素である。
【0033】
は水素、ハロゲン、または炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよい。
【0034】
好ましいRは、水素、フッ素、メチル、エチル、メトキシメチル、またはトリフルオロメチルである。さらに好ましくは、水素である。
【0035】
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15の直鎖状、分岐状または環状のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0036】
好ましいR、R、R、R、およびRは独立して、水素、炭素数1~10の直鎖状アルキル、炭素数2~10の直鎖状アルケニル、炭素数1~10の直鎖状アルコキシ、または炭素数3~6の環状アルキルである。さらに好ましくは、水素、炭素数2~6の直鎖状アルキル、炭素数2~6の直鎖状アルケニル、炭素数1~5の直鎖状アルコキシ、または炭素数4~6の環状アルキルである。
【0037】
好ましくは、0≦a+b≦2である。
【0038】
化合物(1)の好ましい例は、式(1-1)~(1-3)である。
【化31】

式(1-1)から式(1-3)において、
環A、環A、環Aおよび環Aは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、アントラセン-2,6-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から11のアルコキシ、炭素数2から11のアルケニルオキシ、-Sp-P、または-Sp-Pで置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;
、ZおよびZは独立して、単結合、-(CH-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CFO-、-OCF-、-CHO-、-OCH-、-CF=CF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CHCO-または-COCH=CH-であり、ただしZ、ZおよびZの中で少なくとも1つは、-COO-、-OCO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であり;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく、構造内に複数のSpまたはSpが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく;
およびPは独立して、式(1b)~式(1h)のいずれかで表される基であり、構造内に複数のPまたはPが存在する場合、それぞれが異なっていてもよく、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く;
【化32】

、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【化33】

式(1b)~式(1h)において、
、M、MおよびMは独立して、水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
は水素、ハロゲン、炭素数1から5のアルキルであり、このアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH-は、-O-で置き換えられてもよく;
、R、R、R、およびRは独立して、水素、または炭素数1から15のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-または-S-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0039】
式(1-1)、式(1-2)、または式(1-3)で表される化合物において、Z、Z、またはZのいずれか1つは、-COO-または-OCO-であることが好ましい。
また、式(1-1)、式(1-2)、または式(1-3)で表される化合物において、Z、Z、またはZのいずれか1つは、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=CH-、-CH=CHCO-、または-COCH=CH-であることが好ましい。
【0040】
化合物(1)は、式(1-A)で表されるものであることが好ましい。
【化34】

式(1-A)において、
およびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)、(1b-4)、(1b-5)、(1c-1)、(1d-1)、(1d-2)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPがすべて同一の構造であることは無く、PおよびPが式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく;
【化35】

Yは(MES-1-01)から(MES-1-10)のいずれかの式で表される基である。
【化36】

は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、水素、フッ素、メチル、またはエチルであり;
は独立して、単結合または-C≡C-であり;
また、式中で下記に示す、1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化37】
【0041】
別の式(1-A)の態様では、PおよびPは独立して、式(1b-1)、(1b-2)、(1b-3)、(1b-4)、(1b-5)、(1c-1)、(1d-1)、(1d-2)または(1e-1)で表される基であり、ただしPおよびPが同一の構造であることは無く、式(1b-1)および(1b-2)のみの組み合わせであることは無く;
【化38】

SpおよびSpは独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCOO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-(CH-は、-CH=CH-で置き換えられてもよく;
Yは(MES-2-01)から(MES-2-15)のいずれかで表される基である。
【化39】


は独立して、フッ素、塩素、メチル、またはエチルであり;
また、式中で下記に示す、1,4-フェニレンと(R)を直線で結んだ表記は、1つまたは2つの水素がRで置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを表す。
【化40】
【0042】
また、化合物(1)の具体的な例は、後述の実施例の中で述べる。
【0043】
式(2)から(15)は、液晶組成物の成分化合物を示している。化合物(2)から(4)は小さな誘電率異方性を有する。化合物(5)から(7)は、正に大きな誘電率異方性を有する。化合物(8)はシアノ基を有するので正により大きな誘電率異方性を有する。化合物(9)から(16)は、負に大きな誘電率異方性を有する。これらの化合物の具体的な例は、後で述べる。
【0044】
化合物(16)において、P11、P12、およびP13は独立して、重合性基である。
【0045】
好ましいP11、P12、およびP13は、式(P-1)から式(P-5)で表される基の群から選択された重合性基である。さらに好ましいP11、P12、およびP13は、基(P-1)、基(P-2)、または基(P-3)である。特に好ましい基(P-1)は、-OCO-CH=CHまたは-OCO-C(CH)=CHである。基(P-1)から基(P-5)の波線は、結合する部位を示す。
【化41】
【0046】
基(P-1)から基(P-5)において、M11、M12、およびM13は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
好ましいM11、M12、およびM13は、反応性を上げるために水素またはメチルである。さらに好ましいM11はメチルであり、さらに好ましいM12およびM13は水素である。
【0047】
Sp11、Sp12、およびSp13は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0048】
好ましいSp11、Sp12、およびSp13は、単結合である。
【0049】
環Fおよび環Iは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。
【0050】
好ましい環Fおよび環Iは、フェニルである。環Gは、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。特に好ましい環Gは、1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。
【0051】
22およびZ23は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CHCH-は、-CH=CH-、-C(CH)=CH-、-CH=C(CH)-、または-C(CH)=C(CH)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0052】
好ましいZ22およびZ23は、単結合、-CHCH-、-CHO-、-OCH-、-COO-、または-OCO-である。さらに好ましいZ22およびZ23は、単結合である。
【0053】
uは、0、1、または2である。
【0054】
好ましいuは、0または1である。f、g、およびhは独立して、0、1、2、3、または4であり、そして、f、g、およびhの和は、1以上である。好ましいf、g、またはhは、1または2である。
【0055】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成できる。合成法を記載しなかった化合物は、「オーガニック・シンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)などの成書に記載された方法によって合成する。
【0056】
2-1.結合基Z、Z、Z、ZおよびZの生成
化合物(1)における結合基を生成する方法の例は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSG(またはMSG)は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG(またはMSG)が表す一価の有機基は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)~(1J)は、化合物(1)または化合物(1)の中間体に相当する。
【0057】
【化42】
【0058】
【化43】
【0059】
【化44】
【0060】
【化45】
【0061】
【化46】
【0062】
【化47】
【0063】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(21)と化合物(22)を、炭酸塩、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒の存在下で反応させ、化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、化合物(23)にn-ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム触媒の存在下で化合物(22)を反応させても合成される。
【0064】
(II)-COO-と-OCO-の生成
化合物(23)にn-ブチルリチウムを、次いで二酸化炭素を反応させ、カルボン酸(24)を得る。このカルボン酸(24)と、化合物(21)から誘導したフェノール(25)とをDCC(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4-ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて-COO-を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって-OCO-を有する化合物も合成する。
【0065】
(III)-CFO-と-OCF-の生成
化合物(1B)をローソン試薬で硫黄化し、化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N-ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、-CFO-を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(26)をDAST((ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって-OCF-を有する化合物も合成する。
【0066】
(IV)-CH=CH-の生成
化合物(22)をn-ブチルリチウム、次いでDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)と反応させてアルデヒド(27)を得る。ホスホニウム塩(28)とカリウムtert-ブトキシドを反応させて発生させたリンイリドを、アルデヒド(27)と反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0067】
(V)-CHCH-の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素触媒の存在下で水素化し、化合物(1E)を合成する。
【0068】
(VI)-C≡C-の生成
ジクロロパラジウムとヨウ化銅の触媒存在下で、化合物(23)に2-メチル-3-ブチン-2-オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(29)を得る。ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(29)を化合物(22)と反応させて、化合物(1F)を合成する。
【0069】
(VII)-CHO-と-OCH-の生成
化合物(27)を水素化ホウ素ナトリウムで還元して化合物(30)を得る。これを臭化水素酸で臭素化して化合物(31)を得る。炭酸カリウムの存在下、化合物(25)と化合物(31)を反応させて、化合物(1G)を合成する。この方法によって-OCH-を有する化合物も合成する。
【0070】
(VIII)-CF=CF-の生成
化合物(23)をn-ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(32)を得る。化合物(22)をn-ブチルリチウムで処理したあと化合物(32)と反応させて、化合物(1H)を合成する。
【0071】
(VIV)-CH=CHCO-と-COCH=CH-の生成
化合物(40)と化合物(27)をNaOH存在下で、アルドール縮合反応をし化合物(1I)を合成する。
【0072】
(X)-CH=CHCOO-と-OCOCH=CH-の生成
ケイ皮酸(41)と、化合物(25)をDCC(1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4-ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて化合物(1J)を合成する。
【0073】
2-2.環A、A、AおよびAの生成
1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-エチル-1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、ペルヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイル、2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3,17-ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。
【0074】
2-3.連結基SpまたはSp、および重合性基PまたはPの生成
重合性基PまたはPの好ましい例は、アクリロイルオキシ(1b)、マレイミド(1c)、イタコン酸エステル(1d)、ビニルエステル(1e)、オキシラニル(1g)、またはビニルオキシ(1h)である。
【化48】
【0075】
この重合性基が連結基SpまたはSpで環に結合した化合物を合成する方法の例は、下記のとおりである。まず、連結基SpまたはSpが単結合である例を示す。
【0076】
(1) 単結合である化合物の合成
SpまたはSpが単結合である化合物の合成方法は、下記のスキームのとおりである。このスキームにおいて、MSGは、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。化合物(1S)から(1Z)は、化合物(1)に相当する。重合性基がアクリレート誘導体の場合は、対応するアクリル酸とHO-MSGとのエステル化によって合成する。ビニルオキシは、HO-MSGと臭化ビニルのエーテル化により合成する。オキシラニルは、末端2重結合の酸化により合成する。マレイミド基は、アミノ基と無水マレイン酸との反応により合成する。イタコン酸エステルは、対応するイタコン酸とHO-MSGとのエステル化によって合成する。ビニルエステルは、酢酸ビニルとHOOC-MSGとのエステル交換反応により合成する。
【0077】
【化49】
【0078】
【化50】
【0079】
【化51】
【0080】
連結基SpまたはSpが単結合である化合物の合成法を以上に述べた。その他の連結基を生成する方法は、結合基Z、Z、Z、ZおよびZの合成法を参考に合成できる。
【0081】
2-4.合成例
化合物(1)を合成する方法の例は、次のとおりである。これらの化合物において、MESは、少なくとも1つの環を有するメソゲン基である。P、M、M、Sp、およびSpの定義は、前記と同一である。
化合物(51A)、および化合物(51B)は、市販されているか、もしくは適切な環構造を有するメソゲン(MES)を出発物として一般的な有機合成法に従って合成することができる。MESとSpがエーテル結合で連結している化合物を合成する場合は、化合物(51A)を出発物として、化合物(52)および水酸化カリウムなどの塩基を用いてエーテル化を行うことにより、化合物(53)を得ることができる。またMESとSpが単結合で連結している化合物を合成する場合は、化合物(51B)を出発物として、化合物(52)、パラジウムなどの金属触媒、および塩基を使用してクロスカップリング反応を行うことによって、化合物(53)を得ることができる。化合物(53)は必要に応じてTMS、THPなどの保護基を作用させた化合物(54)に誘導する場合がある。
その後、化合物(53)または化合物(54)から、化合物(55)および水酸化カリウムなどの塩基の存在下で再度エーテル化を行うことにより、化合物(56)を得ることができる。この際、前段階で保護基を作用させた場合は、脱保護反応によって保護基を取り除く。
【0082】
【化52】

が式(1b-3)で表される基である化合物(1A)は、化合物(57)より以下の方法で合成できる。化合物(57)から、化合物(58)、DCCおよびDMAPの存在下でエステル化反応を行うことにより化合物(1A)に誘導できる。
【化53】
【0083】
3.液晶組成物
本発明の実施形態にかかる液晶組成物は、化合物(1)を成分Aとして含む。化合物(1)は、素子の基板との非共有結合的な相互作用によって、液晶分子の配向の制御に寄与することができる。この組成物は、化合物(1)を成分Aとして含み、以下に示す成分B、C、D、およびEから選択された液晶性化合物をさらに含むことが好ましい。成分Bは、化合物(2)から(4)である。成分Cは化合物(5)から(7)である。成分Dは、化合物(8)である。成分Eは、化合物(9)から(16)である。この組成物は、化合物(2)から(16)とは異なる、その他の液晶性化合物を含んでもよい。この組成物を調製するときには、正または負の誘電率異方性の大きさなどを考慮して成分B、C、D、およびEを選択することが好ましい。成分を適切に選択した組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、熱または紫外線に対する安定性、および適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)を有する。
【0084】
化合物(1)の好ましい割合は、紫外線に対して高い安定性を維持するために液晶組成物の重量に基づいて、通常、約0.01重量%以上であり、液晶組成物へ溶解させるために、通常、約10重量%以下である。さらに好ましい割合は、液晶組成物の重量に基づいて、約0.1重量%から約5重量%の範囲である。最も好ましい割合は、液晶組成物の重量に基づいて、約0.5重量%から約3重量%の範囲である。
【0085】
成分Bは、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分Bの好ましい例として、化合物(2-1)から(2-11)、化合物(3-1)から(3-19)、および化合物(4-1)から(4-7)を挙げることができる。成分Bの化合物において、R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルまたはアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0086】
【化54】
【0087】
成分Bは、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。化合物(2)は、主として粘度の減少または光学異方性の調整に効果がある。化合物(3)および(4)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整に効果がある。
【0088】
成分Bの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が小さくなるが粘度は小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Bの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0089】
成分Cは、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分Cの好ましい例として、化合物(5-1)から(5-16)、化合物(6-1)から(6-120)、化合物(7-1)から(7-62)を挙げることができる。成分Cの化合物において、R13は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X11は、フッ素、塩素、-OCF3、-OCHF2、-CF3、-CHF2、-CH2F、-OCF2CHF2、または-OCF2CHFCF3である。
【0090】
【化55】
【0091】
【化56】
【0092】
【化57】
【0093】
【化58】

【化59】
【0094】
【化60】
【0095】
【化61】
【0096】
成分Cは、誘電率異方性が正であり、熱、光などに対する安定性が非常に優れているので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Cの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Cを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Cの含有量は液晶組成物の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。成分Cを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0097】
成分Dは、右末端基が-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nである化合物(8)である。成分Dの好ましい例として、化合物(8-1)から(8-64)を挙げることができる。成分Dの化合物において、R14は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;-X12は-C≡Nまたは-C≡C-C≡Nである。
【0098】
【化62】
【0099】
【化63】
【0100】
成分Dは、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に主として用いられる。この成分Dを添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分Dは、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果をもたらす。成分Dは、素子の電圧-透過率曲線の調整にも有用である。
【0101】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Dの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分Dを誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分Dの含有量は液晶組成物の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。成分Dを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0102】
成分Eは、化合物(9)から(16)である。これらの化合物は、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。
【0103】
成分Eの好ましい例として、化合物(9-1)から(9-8)、化合物(10-1)から(10-17)、化合物(11-1)、化合物(12-1)から(12-3)、化合物(13-1)から(13-11)、化合物(14-1)から(14-3)、化合物(15-1)から(15-3)および化合物(16-1)から(16-3)を挙げることができる。成分Eの化合物において、R15およびR16は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;R17は、水素、フッ素、炭素数1から10のアルキル、または炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0104】
【化64】
【0105】
【化65】
【0106】
成分Eは、誘電率異方性が負に大きい。成分Eは、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分Eの含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が-5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、液晶組成物の重量に基づいて、成分Eの含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0107】
成分Eのうち、化合物(9)は二環化合物であるので、主として、粘度の減少、光学異方性の調整、または誘電率異方性の増加に効果がある。化合物(10)および(11)は三環化合物であるので、上限温度を高くする、光学異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(12)から(16)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0108】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分Eの含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分Eを誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分Eの含有量は液晶組成物の重量に基づいて30重量%以下が好ましい。成分Eを添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧-透過率曲線を調整することが可能となる。
【0109】
以上に述べた成分B、C、D、およびEを適切に組み合わせることによって、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、正または負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性、大きな弾性定数などの特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。必要に応じて、成分B、C、D、およびEとは異なる液晶性化合物を添加してもよい。
【0110】
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、式(1)および式(16)以外の重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0111】
重合性化合物は、液晶組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。電極間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して、重合性化合物と化合物(1)とを共重合させることによって、液晶組成物の中に重合体を生成させる。この際、化合物(1)は、極性基がガラス(または金属酸化物)の基板表面と非共有結合的に相互作用した状態で固定化される。これにより、液晶分子の配向を制御する能力がさらに向上すると同時に、化合物(1)が液晶組成物中に漏れ出す事が無くなる。また、ガラス(または金属酸化物)の基板表面おいても、適切なプレチルトが得られるので、応答時間が短縮され、かつ電圧保持率の大きな液晶表示素子が得られる。
【0112】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0113】
重合性化合物のさらに好ましい例は、化合物(M-1)から(M-17)である。化合物(M-1)から(M-17)において、R25からR31は独立して、水素またはメチルであり;s、v、およびxは独立して、0または1であり;tおよびuは独立して、1から10の整数であり;L21からL26は独立して、水素またはフッ素であり、L27およびL28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0114】
【化66】
【0115】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0116】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2-(4-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4-ジエチルキサントン/p-ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0117】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0118】
エステル結合基、桂皮酸エステル結合、カルコン骨格またはスチルベン骨格を有する化合物(1)を組成物に混合した場合、成分Aである化合物(1)が組成物の特性に及ぼす主要な効果は次のとおりである。この化合物(1)は、偏光によってフリース転位、光二量化または二重結合のシス-トランス異性化を生じるとき、分子レベルで一定方向に配列
される。したがって、極性化合物から調製した薄膜は、ポリイミドのような配向膜と同様に、液晶分子を配向させる。
【0119】
芳香族エステルを有し、重合性基を有する化合物(1)である場合は、紫外光が照射されることにより芳香族エステル部位が光分解することでラジカルが形成されて、光フリース転位を生じる。
光フリース転位において、芳香族エステル部位の光分解は偏光紫外光の偏光方向と芳香族エステル部位の長軸方向が同一方向であった場合に生じる。光分解後は再結合し、互変異性化により水酸基が分子内に生じる。この水酸基により、基板界面の相互作用が生じ、極性化合物が基板界面側に異方性を持って吸着しやすくなると考えられる。また、重合性基を有しているため重合により偏光の向きに沿って反応した化合物(1)がその方向性を失うことなく固定化される。この性質を利用して液晶分子を配向させることが可能な薄膜を調製することができる。この薄膜を調製するために、照射する紫外線は直線偏光が適している。まず、液晶組成物に極性化合物である化合物(1)を0.1重量%から10重量%の範囲で添加し、極性化合物を溶解させるために組成物を加温する。この組成物を、配向膜を有しない素子に注入する。次に、素子を加温しながら直線偏光を照射することによって、極性化合物を光フリース転位させ、重合させる。
光フリース転位した極性化合物は一定方向に配列され、重合後に形成される薄膜は液晶配向膜としての機能を有する。
【0120】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノ-ル、フェノチアジンなどである。
【0121】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果をもたらす。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op-1)から(Op-18)を挙げることができる。化合物(Op-18)において、環Jは1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。
【0122】
【化67】
【0123】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO-1)および(AO-2);IRGANOX 415、IRGANOX 565、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 3114、およびIRGANOX 1098(商品名:BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。具体例として下記の化合物(AO-3)および(AO-4);TINUVIN 329、TINUVIN P、TINUVIN 326、TINUVIN 234、TINUVIN 213、TINUVIN 400、TINUVIN 328、およびTINUVIN 99-2(商品名:BASF社);および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0124】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO-5)および(AO-6);TINUVIN 144、TINUVIN 765、およびTINUVIN 770DF(商品名:BASF社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIRGAFOS 168(商品名:BASF社)を挙げることができる。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0125】
【化68】
【0126】
化合物(AO-1)において、R40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、-COOR41、または-CHCHCOOR41であり、ここでR41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO-2)および(AO-5)において、R42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO-5)において、R43は水素、メチル、またはO(酸素ラジカル)であり、環Gは1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり、zは1、2、または3である。
【0127】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックス方式で駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0128】
この組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)、そしてポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。重合性化合物の添加量が液晶組成物の重量に基づいて約10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。重合性化合物の好ましい割合は、液晶組成物の重量に基づいて、約0.1重量%から約2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、液晶組成物の重量に基づいて、約0.2重量%から約1.0重量%の範囲である。PSAモードの素子は、アクティブマトリックス、パッシブマトリクスのような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。重合性化合物の添加量を増やすことによって、高分子分散(polymer dispersed)モードの素子も作製することができる。
【0129】
高分子支持配向型の素子では、組成物に含まれる重合体が液晶分子を配向させる。極性化合物である化合物(1)は、液晶分子が配列するのを援助する。すなわち、化合物(1)は、配向膜の代わりに用いることができる。このような素子を製造する方法の一例は、次のとおりである。
アレイ基板とカラーフィルター基板と呼ばれる2つの基板を有する素子を用意する。この基板は配向膜を有しない。この基板の少なくとも1つは、電極層を有する。液晶性化合物を混合して液晶組成物を調製する。この組成物に重合性化合物および極性化合物である化合物(1)を添加する。必要に応じて添加物をさらに添加してもよい。この組成物を素子に注入する。この素子に光照射する。紫外線が好ましい。光照射によって重合性化合物を重合させる。この重合によって、重合体を含む組成物が生成し、PSAモードを有する素子が作製される。
【0130】
素子を製造する方法を説明する。第一は、極性化合物である化合物(1)を液晶組成物に添加し、組成物を上限温度より高い温度で加温して溶解させる工程である。第二は、この組成物を液晶表示素子に注入する工程である。第三は、上限温度より高い温度に液晶組成物を加温したまま、偏光紫外線を照射する工程である。極性化合物である化合物(1)は、直線偏光によって光フリース転位、光二量化または二重結合のシス-トランス異性化のいずれかを起こし、同時に重合も進行する。化合物(1)の重合体は薄膜として基板上に形成され固定化される。この重合体は分子レベルで一定方向に配列されるので、薄膜は液晶配向膜としての機能を有する。この方法によって、ポリイミドのような配向膜を有しない液晶表示素子を製造することができる。
【0131】
この手順において、極性化合物である化合物(1)は、極性基が基板表面と相互作用するので、基板上に偏在する。この化合物(1)が、偏光紫外線の照射により液晶分子を配向させ、同時に重合性化合物が紫外線によって重合するので、この配向を維持した重合体が生成する。この重合体の効果によって、液晶分子の配向が追加的に安定化するので、素子の応答時間が短縮される。画像の焼き付きは、液晶分子の動作不良であるから、この重合体の効果によって焼き付きも同時に改善されることになる。特に本発明の実施形態にかかる化合物(1)は重合性の極性化合物である為、液晶分子を配向させると共に、他の重合性化合物と共重合する。これによって極性化合物が液晶組成物中に漏れ出す事が無くなる為、電圧保持率の大きな液晶表示素子が得られる。
【実施例
【0132】
実施例(合成例、素子の使用例を含む)により、本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合することによって調製した混合物をも含む。
1.化合物(1)の実施例
【0133】
化合物(1)は、実施例1などに示す手順により合成した。特に記載のない限り、反応は窒素雰囲気下で行った。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物(1)、液晶性化合物、組成物、素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0134】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX-500を用いた。H-NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F-NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0135】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC-2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1ml/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0136】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC-20AD;SPD-20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC-Pack ODS-A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC-R7Aplusを用いた。
【0137】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV-1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0138】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。
【0139】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED-2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0140】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP-52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0141】
(2)転移温度(℃)
測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスエスアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X-DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0142】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれをC、Cのように表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0143】
(3)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物(1)と成分B、C、Dのような化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。
【0144】
(4)ネマチック相の下限温度(T;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを≦-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0145】
(5)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
測定には、東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0146】
(6)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n∥)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0147】
(7)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm)
電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0148】
誘電率異方性が正の試料と負の試料とでは、特性の測定法が異なることがある。誘電率異方性が正であるときの測定法は、項(8a)から(12a)に記載した。誘電率異方性が負の場合は、項(8b)から(12b)に記載した。
【0149】
(8a)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
正の誘電率異方性:測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0150】
(8b)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
負の誘電率異方性:測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した値を用いた。
【0151】
(9a)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
正の誘電率異方性:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。
【0152】
(9b)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
負の誘電率異方性:誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0153】
(10a)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
正の誘電率異方性:測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22およびK33の平均値で表した。
【0154】
(10b)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN)
負の誘電率異方性:測定には株式会社東陽テクニカ製のEC-1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。静電容量(C)と印加電圧(V)の値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0155】
(11a)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
正の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0156】
(11b)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
負の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0157】
(12a)応答時間(τ;25℃で測定;ms)
正の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0158】
(12b)応答時間(τ;25℃で測定;ms)
負の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら23.5mW/cmの紫外線を8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0159】
原料
ソルミックス(登録商標)A-11は、エタノール(85.5%)、メタノール(13.4%)とイソプロパノール(1.1%)の混合物であり、日本アルコール販売(株)から入手した。
【0160】
[合成例1]
化合物(No.156)の合成
【化69】
【0161】
第1工程
化合物(T-1)(2.77g)、化合物(T-2)(2.00g)、DMAP(0.27g)、およびジクロロメタン(100ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(4.81g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製して、化合物(T-3)(4.38g;100%)を得た。
【0162】
第2工程
化合物(T-3)(4.38g)、炭酸カリウム(6.15g)、4,4’-ビフェニルジオール(T-4)(16.5g)およびDMF(100ml)を反応器に入れ、60℃で2時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:4)で精製して、化合物(T-5)(3.00g;45%)を得た。
【0163】
第3工程
化合物(T-5)(1.20g)、化合物(T-6)(1.27g)、DMAP(0.10g)、およびジクロロメタン(100ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(0.90g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:9)で精製して、化合物(No.156)(2.00g;87%)を得た。尚、化合物(T-6)は既知物質であり、当業者であれば容易に合成法を得ることが出来る。
【0164】
得られた化合物(No.156)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.16(d,2H)、7.57(d,2H)、7.53(d,2H)、7.25(d,2H)、7.00(d、2H)、6.98(d、2H)、6.41(dd,1H)、6.13(dd,1H)、5.82(dd,1H)、5.62(dd,1H)、5.37(dd,1H)、4.61(t,2H)、4.28(t、2H)、4.19(t、2H)、4.05(t,2H)、1.85(quint,2H)、1.73(quint,2H)、1.55(quint,2H)、1.46(quint,2H).
【0165】
化合物(No.156)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 91.8 I 重合温度(℃):132.1
【0166】
[合成例2]
化合物(No.157)の合成
合成例1において、化合物(T-6)の代わりに化合物(T-7)を用いることにより、化合物(No.157)を合成した。尚化合物(T-7)は既知物質であり、当業者であれば容易に合成法を得ることが出来る。
【化70】

得られた化合物(No.157)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.16(d,2H)、7.58(d,2H)、7.52(d,2H)、7.25(d,2H)、7.00(d、2H)、6.97(d、2H)、6.10(s,1H)、5.72(dd,1H)、5.55(t,1H)、5.37(dd,1H)、4.61(t,2H)、4.29(t、2H)、4.17(t、2H)、4.05(t,2H)、1.94(s,3H)、1.83(quint,2H)、1.71(quint,2H)、1.55(quint,2H)、1.46(quint,2H).
【0167】
化合物(No.157)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 91.8 I 重合温度(℃):168.9
【0168】
[合成例3]
化合物(No.158)の合成
【化71】
【0169】
第1工程
化合物(T-8)(30.0g)、炭酸カリウム(38.0g)、化合物(T-1)(17.0g) およびDMF(300ml)を反応器に入れ、100℃で10時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:3)で精製して、化合物(T-9)(35.0g;97%)を得た。
【0170】
第2工程
化合物(T-9)(35.0g)、トリメチルシリルアセチレン(15.6g)、よう化銅(2.5g)、Pd(PPhCl(4.67g)及びトリエチルアミン(200ml)を容器に採り、一晩攪拌した。反応混合物を水に注ぎトルエンにて抽出し、水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡茶色固体を得た。この固体を溶液にして、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:4)、で精製し、得られたものをメタノール(100ml)THF(100ml)の混合溶液に溶解した。そこにKF(7.7g)を添加し、室温で一晩攪拌した。得られたものを濃縮しシリカゲルカラムクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:4)で精製し、化合物(T-10)(17.9g;83%)を得た。
【0171】
第3工程
化合物(T-10)(3.25g)、化合物(T-2)(2.00g)、DMAP(0.27g)、およびジクロロメタン(100ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(4.81g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T-11)(4.5g;93%)を得た。
【0172】
第4工程
化合物(T-12)(5.00g)、化合物(T-7)(6.55g)、DMAP(0.52g)、およびジクロロメタン(100ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(4.62g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:9)で精製して、化合物(T-13)(7.1g;63%)を得た。
【0173】
第5工程
化合物(T-13)(4.9g)、化合物(T-11)(2.2g)、よう化銅(0.17g)、Pd(PPhCl(0.32g)及びトリエチルアミン(100ml)を容器に採り、一晩攪拌した。反応混合物を水に注ぎトルエンにて抽出し、水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡茶色固体を得た。この固体を溶液にして、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:9)、で精製し、化合物(No.158)(4.3g;73%)を得た。
【0174】
得られた化合物(No.158)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.16(d,2H)、7.47(d,2H)、7.43(s,1H)、7.39(dd,1H)、7.11(d、1H)、6.97(d、2H)、6.90(d、2H)、6.10(s,1H)、5.72(dd,1H)、5.55(t,1H)、5.37(dd,1H)、4.60(t,2H)、4.26(t、2H)、4.17(t、2H)、4.06(t,2H)、2.22(s,3H)、1.95(s,3H)、1.85(quint,2H)、1.72(quint,2H)、1.55(quint,2H)、1.47(quint,2H).
【0175】
化合物(No.158)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 75.71 I 重合温度(℃):261.67
【0176】
[合成例4]
化合物(NO.81)の合成
【化72】
【0177】
第1工程
化合物(T-14)(10.0g)、水酸化カリウム(0.33g)、酢酸パラジウム(1.84g) および酢酸ビニル(100ml)を反応器に入れ、室温で2日間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、ヘプタン:トルエン=1:2)で精製して、化合物(T-15)(8.7g;77%)を得た。
【0178】
第2工程
4,4´-ビフェニルジオール(T-4)(10g)、4-ヒドロキシ安息香酸(7.4g)、DMAP(4-ジメチルアミノピリジン)(0.34g)、およびジクロロメタン(200ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(11g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:1)で精製して、化合物(T-16)(3g;40%)を得た。
【0179】
第3工程
化合物(T-16)(3.26g)、炭酸カリウム(2.3g)、化合物(T-17)(2.48g) およびDMF(100ml)を反応器に入れ、70℃で10時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:4)で精製して、化合物(T-18)(1.62g;45%)を得た。
【0180】
第4工程
化合物(T-18)(1.62g)、炭酸カリウム(1.1g)、化合物(T-15)(0.97g) およびDMF(100ml)を反応器に入れ、60℃で3時間撹拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:9)で精製して、化合物(No.81)(1.20g;55%)を得た。
【0181】
得られた化合物(No.81)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.16(d,2H)、7.58(d,2H)、7.53(d,2H)、7.30(dd,1H)、7.25(d、2H)、7.00(d、2H)、6.97(d、2H)、6.46(dd,1H)、6.18(dd,1H)、5.87(dd,1H)、4.89(dd,1H)、4.58(dd,1H)、4.54(t、2H)、4.26(t、2H)、4.06(t,2H)、2.45(t,2H)、1.85(quint,2H)、1.76(quint,2H)、1.57(quint,2H).
【0182】
化合物(No.81)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 107.7 I 重合温度(℃):162.11
【0183】
[合成例5]
化合物(No.281)の合成
合成例3において、化合物(T-7)の代わりに化合物(T-6)を用いることにより、化合物(No.281)を合成した。
【化73】
得られた化合物(No.281)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.15(d,2H)、7.47(d,2H)、7.43(s,1H)、7.39(dd,1H)、7.11(d、1H)、6.97(d、2H)、6.89(d、2H)、6.31(d,1H)、6.11(dd,1H)、5.82(d,1H)、5.77(dd,1H)、5.37(dd,1H)、4.59(t,2H)、4.26(t、2H)、4.18(t、2H)、4.05(t,2H)、2.22(s,3H)、1.85(quint,2H)、1.73(quint,2H)、1.55(quint,2H)、1.47(quint,2H).
【0184】
化合物(No.281)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 68.05 I 重合温度(℃):253.5
【0185】
[合成例6]
化合物(No.282)の合成
【化74】
【0186】
第1工程
化合物(T-19)(2.5g)、化合物(T-20)(2.12g)、DMAP(0.11g)、およびジクロロメタン(100ml)を反応器に入れ、0℃に冷却した。そこへDCC(2.04g)を添加し、室温に戻しつつ12時間攪拌した。不溶物を炉別した後、反応混合物を水に注ぎ込み、水層をジクロロメタンで抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製して、化合物(T-21)(4.15g;97%)を得た。尚、化合物(T-19)は既知物質であり、当業者であれば容易に合成法を得ることが出来る。
【0187】
第2工程
化合物(T-21)(4.15g)、化合物(T-11)(2.04g)、よう化銅(0.17g)、Pd(PPhCl(0.32g)及びトリエチルアミン(100ml)を容器に採り、一晩攪拌した。反応混合物を水に注ぎトルエンにて抽出し、水にて洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して淡茶色固体を得た。この固体を溶液にして、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(容積比、酢酸エチル:トルエン=1:9)、で精製し、化合物(No.282)(0.53g;9.7%)を得た。
【0188】
得られた化合物(No.282)のNMR分析値は、以下の通りである。
H-NMR:化学シフトδ(ppm;CDCl3):8.05(s,1H)、7.98(d,1H)、7.58(d,1H)、7.51(d,2H)、7.10(d、2H)、6.93(d、4H)、6.10(s,1H)、5.72(dd,1H)、5.55(t,1H)、5.37(dd,1H)、4.61(t,2H)、4.27(t、2H)、4.16(t、2H)、3.96(t,2H)、2.58(s,3H)、1.95(s,3H)、1.85(quint,2H)、1.72(quint,2H)、1.55(quint,2H)、1.47(quint,2H).
【0189】
化合物(No.282)の物性は、次のとおりであった。
転移温度(℃):C 118.6 I 重合温度(℃):140.24
【0190】
合成例に記載した合成法に準じて、以下の化合物(No.1)~(No.392)を合成できる。
【0191】
【化75】
【0192】
【化76】
【0193】
【化77】
【0194】
【化78】
【0195】
【化79】
【0196】
【化80】
【0197】
【化81】
【0198】
【化82】
【0199】
【化83】
【0200】
【化84】
【0201】
【化85】
【0202】
【化86】
【0203】
【化87】
【0204】
【化88】

【0205】
2.素子の使用例
使用例における化合物は、下記の表2の定義に基づいて記号により表した。表2において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号の後にあるかっこ内の番号は化合物の番号に対応する。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【表2】

【表3】
【0206】
1.原料
配向膜を有しない素子に、極性化合物を添加した組成物を注入した。直線偏光を照射したあと、この素子における液晶分子の配向を確認した。最初に原料を説明する。原料は、組成物(M1)から組成物(M41)のような組成物、化合物(No.1)から化合物(No.280)のような極性化合物の中から適宜選択した。組成物は以下のとおりである。
【0207】
[組成物(M1)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 10%
5-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
2-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 7%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 7%
3-B(2F,3F)B(2F,3F)-O2 (9-7) 3%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 5%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 10%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 10%
2-HH-3 (2-1) 14%
3-HB-O1 (2-5) 5%
3-HHB-1 (3-1) 3%
3-HHB-O1 (3-1) 3%
3-HHB-3 (3-1) 4%
2-BB(F)B-3 (3-6) 4%
NI=73.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.113;Δε=-4.0;Vth=2.18V;η=22.6mPa・s.
【0208】
[組成物(M2)]
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 6%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 4%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 7%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 7%
5-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 4%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
2-HH-3 (2-1) 12%
1-BB-5 (2-8) 12%
3-HHB-1 (3-1) 4%
3-HHB-O1 (3-1) 3%
3-HBB-2 (3-4) 3%
NI=82.8℃;Tc<-30℃;Δn=0.118;Δε=-4.4;Vth=2.13V;η=22.5mPa・s.
【0209】
[組成物(M3)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
5-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 8%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 4%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 5%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
3-HH-V (2-1) 27%
3-HH-V1 (2-1) 6%
V-HHB-1 (3-1) 3%
NI=78.1℃;Tc<-30℃;Δn=0.107;Δε=-3.2;Vth=2.02V;η=15.9mPa・s.
【0210】
[組成物(M4)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 10%
5-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 10%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
5-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 5%
3-HH-4 (2-1) 14%
V-HHB-1 (3-1) 10%
3-HBB-2 (3-4) 7%
NI=88.5℃;Tc<-30℃;Δn=0.108;Δε=-3.8;Vth=2.25V;η=24.6mPa・s;VHR-1=99.1%;VHR-2=98.2%;VHR-3=97.8%.
【0211】
[組成物(M5)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 8%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 10%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HHB(2F,3F)-1 (10-1) 6%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
3-HEB(2F,3F)B(2F,3F)-O2 (16-1) 3%
3-H1OCro(7F,8F)-5 (13-2) 3%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 5%
3-HH-O1 (2-1) 5%
1-BB-5 (2-8) 4%
V-HHB-1 (3-1) 4%
5-HB(F)BH-3 (4-2) 5%
NI=81.1℃;Tc<-30℃;Δn=0.119;Δε=-4.5;Vth=1.69V;η=31.4mPa・s.
【0212】
[組成物(M6)]
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 15%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
3-dhBB(2F,3F)-O2 (10-9) 5%
3-chB(2F,3F)-O2 (16-2) 7%
2-HchB(2F,3F)-O2 (16-3) 8%
5-HH-V (2-1) 18%
7-HB-1 (2-5) 5%
V-HHB-1 (3-1) 7%
V2-HHB-1 (3-1) 7%
3-HBB(F)B-3 (4-5) 8%
NI=98.8℃;Tc<-30℃;Δn=0.111;Δε=-3.2;Vth=2.47V;η=23.9mPa・s.
【0213】
[組成物(M7)]
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 18%
5-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 17%
3-HHB(2F,3Cl)-O2 (10-12) 5%
3-HBB(2F,3Cl)-O2 (10-13) 8%
5-HBB(2F,3Cl)-O2 (10-13) 7%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 5%
3-HH-V (2-1) 11%
3-HH-VFF (2-1) 7%
F3-HH-V (2-1) 10%
3-HHEH-3 (3-13) 4%
3-HB(F)HH-2 (4-7) 4%
3-HHEBH-3 (4-6) 4%
NI=77.5℃;Tc<-30℃;Δn=0.084;Δε=-2.6;Vth=2.43V;η=22.8mPa・s.
【0214】
[組成物(M8)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 8%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 10%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 10%
2O-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 3%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
2-HHB(2F,3F)-1 (10-1) 5%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 6%
2-BB(2F,3F)B-4 (11-1) 6%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
3-HH1OCro(7F,8F)-5 (13-6) 4%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 6%
3-dhBB(2F,3F)-O2 (10-9) 4%
3-HH-V (2-1) 11%
1-BB-5 (2-8) 5%
NI=70.6℃;Tc<-20℃;Δn=0.129;Δε=-4.3;Vth=1.69V;η=27.0mPa・s.
【0215】
[組成物(M9)]
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 14%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 3%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 10%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 6%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
3-HH-V (2-1) 14%
1-BB-3 (2-8) 3%
3-HHB-1 (3-1) 4%
3-HHB-O1 (3-1) 4%
V-HBB-2 (3-4) 4%
1-BB(F)B-2V (3-6) 6%
5-HBBH-1O1 (4-1) 4%
NI=93.0℃;Tc<-30℃;Δn=0.123;Δε=-4.0;Vth=2.27V;η=29.6mPa・s.
【0216】
[組成物(M10)]
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 6%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 5%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 10%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
5-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
3-HH-V (2-1) 11%
1-BB-3 (2-8) 6%
3-HHB-1 (3-1) 4%
3-HHB-O1 (3-1) 4%
3-HBB-2 (3-4) 4%
3-B(F)BB-2 (3-8) 4%
NI=87.6℃;Tc<-30℃;Δn=0.126;Δε=-4.5;Vth=2.21V;η=25.3mPa・s.
【0217】
[組成物(M11)]
3-HB(2F,3F)-O4 (9-1) 6%
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 4%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 7%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 6%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 10%
5-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 8%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
2-HH-3 (2-1) 12%
1-BB-3 (2-8) 6%
3-HHB-1 (3-1) 3%
3-HHB-O1 (3-1) 4%
3-HBB-2 (3-4) 6%
3-B(F)BB-2 (3-8) 3%
NI=93.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.124;Δε=-4.5;Vth=2.22V;η=25.0mPa・s.
【0218】
[組成物(M12)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
5-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 8%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
5-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 5%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 5%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 4%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
3-HH-V (2-1) 33%
V-HHB-1 (3-1) 3%
NI=76.4℃;Tc<-30℃;Δn=0.104;Δε=-3.2;Vth=2.06V;η=15.6mPa・s.
【0219】
[組成物(M13)]
2-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 6%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 4%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 3%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 14%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 11%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 9%
2-HH-3 (2-1) 5%
3-HH-VFF (2-1) 30%
1-BB-3 (2-8) 5%
3-HHB-1 (3-1) 3%
3-HBB-2 (3-4) 3%
NI=78.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.103;Δε=-3.2;Vth=2.17V;η=17.7mPa・s.
【0220】
[組成物(M14)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 5%
5-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 8%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 5%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 4%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 9%
4-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
3-HH-V (2-1) 27%
3-HH-V1 (2-1) 6%
V-HHB-1 (3-1) 5%
NI=81.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.107;Δε=-3.2;Vth=2.11V;η=15.5mPa・s.
【0221】
[組成物(M15)]
3-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 8%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 5%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 7%
2-BB(2F,3F)B-4 (11-1) 7%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 3%
5-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3) 4%
2-HchB(2F,3F)-O2 (16-3) 8%
4-HH-V (2-1) 15%
3-HH-V1 (2-1) 6%
1-HH-2V1 (2-1) 6%
3-HH-2V1 (2-1) 4%
V2-BB-1 (2-8) 5%
1V2-BB-1 (2-8) 5%
3-HHB-1 (3-1) 6%
3-HB(F)BH-3 (4-2) 4%
NI=88.7℃;Tc<-30℃;Δn=0.115;Δε=-1.9;Vth=2.82V;η=17.3mPa・s.
【0222】
[組成物(M16)]
V2-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 8%
V2-H1OB(2F,3F)-O4 (9-5) 4%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 7%
2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 7%
3-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 7%
5-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 4%
V-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 6%
V2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
V-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
V-HBB(2F,3F)-O4 (10-7) 6%
2-HH-3 (2-1) 12%
1-BB-5 (2-8) 12%
3-HHB-1 (3-1) 4%
3-HHB-O1 (3-1) 3%
3-HBB-2 (3-4) 3%
NI=89.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.122;Δε=-4.2;Vth=2.16V;η=23.4mPa・s.
【0223】
[組成物(M17)]
3-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 3%
V-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 3%
V2-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 5%
5-H2B(2F,3F)-O2 (9-4) 5%
V2-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 3%
1V2-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 3%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 6%
V-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 6%
V-HHB(2F,3F)-O4 (10-1) 5%
V2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
V2-BB(2F,3F)B-1 (11-1) 4%
V2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 5%
V-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 4%
V-HBB(2F,3F)-O4 (10-7) 5%
V-HHB(2F,3Cl)-O2 (10-12) 3%
3-HH-V (2-1) 27%
3-HH-V1 (2-1) 6%
V-HHB-1 (3-1) 3%
NI=77.1℃;Tc<-20℃;Δn=0.101;Δε=-3.0;Vth=2.04V;η=13.9mPa・s.
【0224】
[組成物(M18)]
V-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 10%
V2-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 10%
2-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 3%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 3%
2O-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 3%
V2-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 8%
V2-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 5%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
V-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 6%
V-HBB(2F,3F)-O4 (10-7) 8%
V-HHB(2F,3Cl)-O2 (10-12) 7%
3-HH-4 (2-1) 14%
V-HHB-1 (3-1) 10%
3-HBB-2 (3-4) 7%
NI=75.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.114;Δε=-3.9;Vth=2.20V;η=24.7mPa・s.
【0225】
[組成物(M19)]
2-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 7%
3-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 11%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 8%
2-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 9%
5-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
V-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 8%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (10-3)3.5%
2-HH-3 (2-1) 21%
3-HH-4 (2-1) 5%
3-HB-O2 (2-5) 2.5%
1-BB-3 (2-8) 4%
3-HHB-1 (3-1) 1.5%
3-HBB-2 (3-4) 9.5%
NI=80.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.108;Δε=-3.8;Vth=2.02V;η=19.8mPa・s.
【0226】
[組成物(M20)]
2-H1OB(2F,3F)-O2 (9-5) 5.5%
2-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 11%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5) 13%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (10-5)15.5%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 9%
2-HH-3 (2-1) 25%
3-HH-4 (2-1) 3%
3-HBB-2 (3-4) 14%
5-B(F)BB-2 (3-8) 4%
NI=85.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.109;Δε=-3.6;Vth=2.06V;η=20.9mPa・s.
【0227】
[組成物(M21)]
V-HB(2F,3F)-O2 (9-1) 7%
V-2BB(2F,3F)-O2 (9-3) 10%
V-HHB(2F,3F)-O1 (10-1) 7%
V-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 9%
V-2HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 8%
3-HH2B(2F,3F)-O2 (10-4) 9%
V-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 7%
V-HBB(2F,3F)-O4 (10-7) 7%
2-HH-3 (2-1) 9%
3-HH-4 (2-1) 3%
3-HH-V (2-1) 15%
3-HH-V1 (2-1) 6%
1V2-HH-3 (2-1) 3%
NI=87.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.100;Δε=-3.4;Vth=2.25V;η=16.6mPa・s.
【0228】
[組成物(M22)]
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 6%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 13%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 4%
4-HHBB(F,F)-F (7-6) 5%
3-HBBXB(F,F)-F (7-32) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (7-46) 2%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 8%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 7%
3-HH-V (2-1) 44%
V-HHB-1 (3-1) 6%
2-BB(F)B-3 (3-6) 2%
NI=79.8℃;Tc<-30℃;Δn=0.106;Δε=8.5;Vth=1.45V;η=11.6mPa・s;γ1=60.0mPa・s.
【0229】
[組成物(M23)]
5-HXB(F,F)-F (5-13) 3%
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 3%
3-HHXB(F,F)-CF3 (6-100) 3%
3-HGB(F,F)-F (6-103) 3%
3-HB(F)B(F,F)-F (6-50) 5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 6%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F(-) 2%
3-BB(2F,3F)XB(F,F)-F (6-114) 4%
3-B(2F,3F)BXB(F,F)-F (6-115) 5%
3-HHB(F,F)XB(F,F)-F (7-29) 4%
3-HB-CL (5-2) 3%
3-HHB-OCF3 (6-1) 3%
3-HH-V (2-1) 22%
3-HH-V1 (2-1) 10%
5-HB-O2 (2-5) 5%
3-HHEH-3 (3-13) 3%
3-HBB-2 (3-4) 7%
5-B(F)BB-3 (3-8) 3%
NI=71.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.099;Δε=6.1;Vth=1.74V;η=13.2mPa・s;γ1=59.3mPa・s.
【0230】
[組成物(M24)]
5-HXB(F,F)-F (5-13) 6%
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 6%
V-HB(F)B(F,F)-F (6-50) 5%
3-HHB(F)B(F,F)-F (7-9) 7%
2-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (7-47) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (7-47) 4%
5-HB-CL (5-2) 5%
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 10%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V (2-1) 10%
4-HH-V1 (2-1) 8%
5-HB-O2 (2-5) 7%
4-HHEH-3 (3-13) 3%
1-BB(F)B-2V (3-6) 3%
1O1-HBBH-3 (4-1) 5%
NI=78.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.095;Δε=3.4;Vth=1.50V;η=8.4mPa・s;γ1=54.2mPa・s.
【0231】
[組成物(M25)]
3-HHEB(F,F)-F (6-12) 5%
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 7%
5-HBEB(F,F)-F (6-39) 5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 10%
2-HHB(F)B(F,F)-F (7-9) 3%
3-HB(2F,3F)BXB(F,F)-F (7-58) 3%
3-BB(2F,3F)BXB(F,F)-F (7-59) 2%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (7-28) 6%
2-HH-3 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 20%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-5) 5%
V2-B2BB-1 (3) 3%
3-HHEBH-3 (4-6) 5%
3-HHEBH-5 (4-6) 5%
NI=90.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.089;Δε=5.5;Vth=1.65V;η=13.6mPa・s;γ1=60.1mPa・s.
【0232】
[組成物(M26)]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 12%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 5%
4-HHBB(F,F)-F (7-6) 4%
3-HBBXB(F,F)-F (7-32) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (7-46) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 5%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 4%
2-HH-3 (2-1) 6%
3-HH-5 (2-1) 6%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-VFF (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-5) 7%
V-HHB-1 (3-1) 6%
V-HBB-2 (3-4) 5%
NI=78.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.107;Δε=7.0;Vth=1.55V;η=11.6mPa・s;γ1=55.6mPa・s.
【0233】
[組成物(M27)]
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 3%
3-BBXB(F,F)-F (6-91) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 8%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 5%
4-HHBB(F,F)-F (7-6) 4%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 6%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 5%
3-HH-V (2-1) 30%
3-HH-V1 (2-1) 5%
3-HHB-O1 (3-1) 2%
V-HHB-1 (3-1) 5%
2-BB(F)B-3 (3-6) 6%
F3-HH-V (2-1) 15%
NI=80.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=5.8;Vth=1.40V;η=11.6mPa・s;γ1=61.0mPa・s.
【0234】
[組成物(M28)]
3-HGB(F,F)-F (6-103) 3%
5-GHB(F,F)-F (6-109) 4%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (6-113) 5%
3-BB(F)B(F,F)-CF3 (6-69) 2%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 4%
3-GBB(F)B(F,F)-F (7-55) 2%
2-dhBB(F,F)XB(F,F)-F (7-50) 4%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (―) 5%
7-HB(F,F)-F (5-4) 3%
2-HH-3 (2-1) 14%
2-HH-5 (2-1) 4%
3-HH-V (2-1) 26%
1V2-HH-3 (2-1) 5%
1V2-BB-1 (2-8) 3%
2-BB(F)B-3 (3-6) 3%
3-HB(F)HH-2 (4-7) 4%
5-HBB(F)B-2 (4-5) 6%
NI=78.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.094;Δε=5.6;Vth=1.45V;η=11.5mPa・s;γ1=61.7mPa・s.
【0235】
[組成物(M29)]
3-HBB(F,F)-F (6-24) 5%
5-HBB(F,F)-F (6-24) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 5%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (7-60) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F(-) 4%
3-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V1 (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-5) 5%
7-HB-1 (2-5) 5%
VFF-HHB-O1 (3-1) 8%
VFF-HHB-1 (3-1) 3%
NI=80.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.101;Δε=4.6;Vth=1.71V;η=11.0mPa・s;γ1=47.2mPa・s.
【0236】
[組成物(M30)]
3-HHB(F,F)-F (6-3) 8%
3-GB(F)B(F)-F (6-116) 2%
3-GB(F)B(F,F)-F (6-117) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 8%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 6%
5-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
3-HH-V (2-1) 30%
3-HH-V1 (2-1) 10%
1V2-HH-3 (2-1) 8%
3-HH-VFF (2-1) 8%
V2-BB-1 (2-8) 2%
5-HB(F)BH-3 (4-2) 5%
5-HBBH-3 (4-1) 5%
NI=78.6℃;Tc<-20℃;Δn=0.088;Δε=5.6;Vth=1.85V;η=13.9mPa・s;γ1=66.9mPa・s.
【0237】
[組成物(M31)]
3-HHEB(F,F)-F (6-12) 4%
5-HHEB(F,F)-F (6-12) 3%
3-HBEB(F,F)-F (6-39) 3%
5-HBEB(F,F)-F (6-39) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 3%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
5-HB-CL (2-5) 5%
3-HHB-OCF3 (3-1) 4%
3-HHB(F,F)XB(F,F)-F (7-29) 5%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (7-29) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (-) 5%
2-HH-5 (2-1) 3%
3-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 24%
4-HH-V (2-1) 5%
1V2-HH-3 (2-1) 5%
3-HHEH-3 (3-13) 5%
5-B(F)BB-2 (3-8) 3%
5-B(F)BB-3 (3-8) 2%
NI=82.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.093;Δε=6.9;Vth=1.50V;η=16.3mPa・s;γ1=65.2mPa・s.
【0238】
[組成物(M32)]
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 9%
3-HBB(F,F)-F (6-24) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 4%
3-BB(F)B(F,F)-CF3 (6-69) 4%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 5%
3-GBB(F)B(F,F)-F (7-55) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (7-55) 4%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 10%
5-HB-O2 (2-5) 10%
7-HB-1 (2-5) 5%
V2-BB-1 (2-8) 3%
3-HHB-1 (3-1) 4%
1V-HBB-2 (3-4) 5%
5-HBB(F)B-2 (4-5) 6%
NI=79.6℃;Tc<-20℃;Δn=0.111;Δε=4.7;Vth=1.86V;η=9.7mPa・s;γ1=49.9mPa・s.
【0239】
[組成物(M33)]
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 14%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 7%
7-HB(F,F)-F (5-4) 6%
2-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 30%
3-HH-V1 (2-1) 3%
3-HH-VFF (2-1) 10%
3-HHB-1 (3-1) 4%
3-HHB-3 (3-1) 5%
3-HHB-O1 (3-1) 3%
1-BB(F)B-2V (3-6) 3%
3-HHEBH-3 (4-6) 3%
3-HHEBH-4 (4-6) 4%
3-HHEBH-5 (4-6) 3%
NI=83.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.086;Δε=3.8;Vth=1.94V;η=7.5mPa・s;γ1=51.5mPa・s.
【0240】
[組成物(M34)]
3-HBB(F,F)-F (6-24) 5%
5-HBB(F,F)-F (6-24) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 5%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (7-60) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F(-) 4%
3-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 28%
4-HH-V1 (2-1) 7%
5-HB-O2 (2-5) 2%
7-HB-1 (2-5) 5%
VFF-HHB-O1 (3-1) 8%
VFF-HHB-1 (3-1) 3%
2-BB(2F,3F)B-3 (11-1) 4%
3-HBB(2F,3F)-O2 (10-7) 2%
NI=81.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.109;Δε=4.8;Vth=1.75V;η=13.3mPa・s;γ1=57.4mPa・s.
【0241】
[組成物(M35)]
3-HHEB(F,F)-F (6-12) 4%
3-HBEB(F,F)-F (6-39) 3%
5-HBEB(F,F)-F (6-39) 3%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 3%
3-HBBXB(F,F)-F (7-32) 6%
4-GBB(F,F)XB(F,F)-F (7-62) 2%
5-GBB(F,F)XB(F,F)-F (7-62) 2%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
5-HHB(F,F)XB(F,F)-F (7-29) 3%
5-HEB(F,F)-F (5-10) 3%
5-HB-CL (5-2) 2%
3-HHB-OCF3 (6-1) 4%
3-HH-5 (2-1) 4%
3-HH-V (2-1) 21%
3-HH-V1 (2-1) 3%
4-HH-V (2-1) 4%
1V2-HH-3 (2-1) 6%
5-B(F)BB-2 (3-8) 3%
5-B(F)BB-3 (3-8) 2%
3-HB(2F,3F)-O2 (10-7) 3%
3-BB(2F,3F)-O2 (9-3) 2%
3-HHB(2F,3F)-O2 (10-1) 4%
F3-HH-V (2-1) 3%
NI=78.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.101;Δε=6.7;Vth=1.45V;η=17.8mPa・s;γ1=67.8mPa・s.
【0242】
[組成物(M36)]
3-HHB(F,F)-F (6-3) 10%
3-HHXB(F,F)-F (6-100) 2%
3-GHB(F,F)-F (6-109) 5%
3-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 6%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 14%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 10%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 6%
2-HH-3 (2-1) 5%
3-HH-4 (2-1) 11%
3-HH-O1 (2-1) 5%
5-HB-O2 (2-5) 8%
3-HHB-1 (3-1) 6%
3-HHB-3 (3-1) 6%
3-HHB-O1 (3-1) 6%
NI=77.6℃;Tc<-20℃;Δn=0.109;Δε=10.6;Vth=1.34V;η=22.6mPa・s;γ1=92.4mPa・s.
【0243】
[組成物(M37)]
3-HBB-F (6-22) 3%
3-BB(F,F)XB(F)-OCF3 (6-96) 3%
3-HHB(F)-F (6-2) 3%
3-HGB(F,F)-F (6-103) 3%
5-GHB(F,F)-F (6-109) 3%
3-HBB(F,F)-F (6-24) 4%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 5%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 5%
3-HBBXB(F,F)-F (7-32) 5%
3-BBVFFXB(F,F)-F (6-119) 8%
3-HH-V (2-1) 39%
1-HH-V1 (2-1) 3%
1-HH-2V1 (2-1) 4%
3-HHEH-5 (3-13) 3%
1-BB(F)B-2V (3-6) 3%
3-HHEBH-3 (4-6) 3%
5-HBB(F)B-2 (4-5) 3%
NI=85.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.102;Δε=4.1;γ1=43.0mPa・s.
【0244】
[組成物(M38)]
3-HHBB(F)-F (7-5) 3%
2-HHEB(F,F)-F (6-12) 3%
5-BB(F)B(F,F)-F (6-69) 7%
3-HHB(F)B(F,F)-F (7-9) 3%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 3%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (7-60) 3%
3-HHVFFXB(F,F)-F (6-120)5%
3-BBVFFXB(F,F)-F (6-119)5%
3-HBBVFFXB(F,F)-F (7-61) 3%
2-HH-5 (2-1) 5%
3-HH-V (2-1) 20%
5-HH-V (2-1) 12%
3-HH-V1 (2-1) 4%
4-HH-V1 (2-1) 5%
2-HH-2V1 (2-1) 3%
1-BB-3 (2-8) 3%
V2-BB(F)B-1 (3-6) 5%
V2-B(F)BB-1 (3-8) 5%
3-HB(F)HH-5 (4-7) 3%
NI=85.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.115;Δε=4.2;γ1=41.4mPa・s.
【0245】
[組成物(M39)]
3-BB(F)XB(F)B(F,F)-F (7-60) 5%
3-HGB(F,F)-F (6-103) 3%
5-GHB(F,F)-F (6-109) 4%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (6-113) 5%
3-HHBB(F,F)-F (7-6) 4%
2-dhBB(F,F)XB(F,F)-F (7-50) 4%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 3%
3-HGB(F,F)XB(F,F)-F (7) 5%
7-HB(F,F)-F (5-4) 3%
2-HH-3 (2-1) 14%
2-HH-5 (2-1) 4%
3-HH-V (2-1) 26%
1V2-HH-3 (2-1) 5%
1V2-BB-1 (2-8) 3%
2-BB(F)B-3 (3-6) 3%
3-HB(F)HH-2 (4-7) 4%
5-HBB(F)B-2 (4-5) 5%
NI=78.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.094;Δε=5.6;Vth=1.45V;η=11.5mPa・s;γ1=61.7mPa・s.
【0246】
[組成物(M40)]
3-HBB(F,F)-F (6-24) 5%
5-HBB(F,F)-F (6-24) 4%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-47) 5%
3-BB(F、F)XB(F)B(F,F)-F (7-60) 10%
3-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (7-15) 3%
2-HH-5 (2-1) 4%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 10%
4-HH-V1 (2-1) 7%
5-HB-O2 (2-5) 5%
7-HB-1 (2-5) 5%
VFF-HHB-O1 (3-1) 8%
VFF-HHB-1 (3-1) 3%
NI=79.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.099;Δε=5.0;Vth=1.64V;η=10.4mPa・s;γ1=44.7mPa・s.
【0247】
[組成物(M41)]
3-GBXB(F)B(F,F)-F (7) 5%
3-HHB(F,F)-F (6-3) 7%
3-GB(F)B(F)-F (6-116) 2%
3-GB(F)B(F,F)-F (6-117) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (6-97) 7%
3-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 4%
5-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (7-57) 5%
3-HH-V (2-1) 30%
3-HH-V1 (2-1) 10%
1V2-HH-3 (2-1) 8%
3-HH-VFF (2-1) 8%
V2-BB-1 (2-8) 2%
5-HB(F)BH-3 (4-2) 4%
5-HBBH-3 (4-1) 5%
NI=79.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.091;Δε=5.7;Vth=1.83V;η=14.9mPa・s;γ1=69.3mPa・s.
【0248】
2.液晶分子の配向
使用例1~使用例7
組成物(M1)に第1添加物として化合物(No.156)を0.1重量%、0.3重量%、0.5重量%、1.0重量%、3.0重量%、5.0重量%、10.0重量%の割合で、酸化防止剤として、R40がn-ヘプチルである化合物(AO-1)を150ppmの割合で添加した。100℃で加熱攪拌し、その後室温に戻し一週間放置したところ、結晶等の析出は無く完全に溶解していた。この混合物を、配向膜を有しないIPS素子に90℃(ネマチック相の上限温度以上)で注入した。IPS素子を90℃で加熱しながら素子に対して法線方向から直線偏光した紫外線(313nm、2.0J/cm)を照射し、配向処理を行った素子を得た。直線偏光の偏光軸に対して、素子が平行になるようにして、偏光子と検光子が直交して配置された偏光顕微鏡にセットした。この素子に下から光を照射し、光漏れの有無を観察した。光が素子を通過しない場合は、配向が「良好」であると判断した。素子を通過した光が観察された場合は、「不良」と表した。本使用例1~7では光漏れが観察されなかったので、配向は良好であった。
【0249】
使用例8~使用例28
組成物(M1)を用い、酸化防止剤として、R40がn-ヘプチルである化合物(AO-1)を150ppmの割合で添加し、第1添加物を下記表4に示す割合で混合した。その他は使用例1と同様に操作した。使用例1と同様な方法で溶解性および光漏れの有無を観察したところ、いずれも完全に溶解し、また配向は良好であった。
【0250】
【表4】
【0251】
使用例1~28において、用いる液晶組成物をM2~M41に変更してそれぞれ同様の操作をしたところ、いずれにおいても溶解性および配向は良好であった。
【0252】
組成物(M1)から組成物(M41)までの組成物、化合物(No.1)から化合物(No.280)までの第一添加物の中から適宜選択し、同様の操作を行ったところ、いずれにおいても溶解性および配向は良好であった。
【0253】
比較例1~21
重合性基がいずれもアクリレート基である(A-1-1-1)、特許文献3に記載の[14]および重合性基がいずれもメタクリレート基である特許文献2に記載の[化2]を第一添加物として、下記表5に示す割合で液晶組成物(M1)に混合し、使用例と同様の操作により、溶解性および配向性を評価した。その結果、本発明の実施形態にかかる化合物と比較し、いずれの化合物においても溶解性は劣り、配向が確認される添加濃度の範囲は限られていた。また、液晶組成物(M2)から(M41)を用いて同様の評価を行ったところ、いずれも組成物(M1)を用いた場合と同様な傾向であった。
【化89】
【0254】
【表5】
【0255】
使用例において、組成物や極性化合物である化合物(1)の種類、量、を変えたが、溶け残りや析出はなく、素子の光漏れは観察されなかった。この結果は、素子にポリイミドのような配向膜がなくても配向は良好であり、総ての液晶分子が一定方向に配列していることを示している。一方、比較例においては、高濃度添加の際は溶解性が充分ではなく、配向が良好に観察される添加濃度範囲も限られたものであった。したがって、本発明の実施形態にかかる化合物(1)を用いれば広い添加濃度範囲での使用が可能である。また本発明の実施形態にかかる液晶組成物を用いれば、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、高い電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命の少なくとも一つの特性を有する液晶表示素子が得られる。さらに、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、紫外線に対する高い安定性、熱に対する高い安定性のような特性において、少なくとも1つを充足する液晶組成物を有する液晶表示素子が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明の実施形態にかかる液晶組成物は、液晶モニター、液晶テレビなどに用いることができる。