(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】含フッ素硬化性組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230214BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L71/00 Z
(21)【出願番号】P 2021550596
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035174
(87)【国際公開番号】W WO2021065527
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019179708
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
(72)【発明者】
【氏名】朝日 智之
【審査官】蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-084405(JP,A)
【文献】特開2010-180375(JP,A)
【文献】特開2012-072272(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190526(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 ~ 101/16
C08G 65/48、77/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性シリル基、シラノール基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物(但し、加水分解性シリル基を有する化合物は、分子中にフッ素原子を含まない。)から選ばれる少なくとも1種の化合物、あるいは、上記化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、ウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、アルキッド樹脂組成物及びシリコーン樹脂組成物から選ばれる樹脂組成物を含む、熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、下記一般式(1)
[M
cR
bSi-Z
2]
a-Q
1-Z
1-Rf-Z
1-Q
1-[Z
2-SiR
bM
c]
a (1)
(式中、Rfは数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。
Z
1はそれぞれ独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造及び/又は不飽和結合を有する基であってもよい。
Z
2はそれぞれ独立に炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
Q
1はそれぞれ独立に(a+1)価の連結基であり、水素原子、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子のいずれか2種類以上の原子を含む構造であり、環状をなしていてもよい。
aはそれぞれ独立に1~10の整数であり、bはそれぞれ独立に0~2の整数であり、cはそれぞれ独立に1~3の整数であり、かつ同一ケイ素原子上のb、cにおいてb+c=3を満たす。式(1)における[ ]で括られたa個のZ
2はすべてQ
1構造中のケイ素原子と結合している。
Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基である。
Mはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなり、かつ揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)が0.005~50質量部である含フッ素硬化性組成物。
【請求項2】
熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、下記一般式(1)
[M
c
R
b
Si-Z
2
]
a
-Q
1
-Z
1
-Rf-Z
1
-Q
1
-[Z
2
-SiR
b
M
c
]
a
(1)
(式中、Rfは数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。
Z
1
はそれぞれ独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造及び/又は不飽和結合を有する基であってもよい。
Z
2
はそれぞれ独立に炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
Q
1
はそれぞれ独立に(a+1)価の連結基であり、水素原子、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子のいずれか2種類以上の原子を含む構造であり、環状をなしていてもよい。
aはそれぞれ独立に1~10の整数であり、bはそれぞれ独立に0~2の整数であり、cはそれぞれ独立に1~3の整数であり、かつ同一ケイ素原子上のb、cにおいてb+c=3を満たす。式(1)における[ ]で括られたa個のZ
2
はすべてQ
1
構造中のケイ素原子と結合している。
Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基である。
Mはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなり、かつ揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)が0.005~50質量部である含フッ素硬化性組成物であって、
表面改質成分(B)が、さらに下記一般式(2)
F-Rf’-F (2)
(式中、Rf’は数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。)
で示される無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)を、一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)と上記(b2)成分の合計100モル%に対して5モル%未満含み、揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中の(b1)成分と(b2)成分の合計が0.005~50質量部であり、かつ、常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤の含有量が(B)成分全体の1質量%未満であ
る含フッ素硬化性組成物。
【請求項3】
式(1)、(2)において、Rf及びRf’が、それぞれ以下の2価パーフルオロエーテル基群
-CF
2O-
-CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2O-
-CF(CF
3)CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
から選ばれる少なくとも1つの構造からなる繰り返し単位と、炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基からなるものである請求項1又は2に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項4】
式(1)、(2)において、Rf及びRf’が、以下のいずれか
-CF
2O(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
qCF
2-
-CF
2CF
2O(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
qCF
2CF
2-
(式中、pは10~290の整数、qは5~170の整数、p+qは15~295の整数である。-CF
2O-と-CF
2CF
2O-の各繰り返し単位の配列はランダムである。)
-CF(CF
3)[OCF
2CF(CF
3)]
sO(C
uF
2uO)
v[CF(CF
3)CF
2O]
tCF(CF
3)-
-CF
2CF
2CF
2O[CF(CF
3)CF
2O]
tCF
2CF
2-
(式中、s、tは独立に1~120の整数であり、かつs+tは4~121の整数であり、uは1~6の整数であり、vは0~10の整数である。)
で示されるものである請求項1~3のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項5】
式(1)において、Z
2が以下の式
-(CH
2)
w-
(式中、wは2~20の整数である。)
で表されるものである請求項1~4のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項6】
式(1)において、Q
1がそれぞれ独立に少なくとも(a+1)個のケイ素原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合わせからなる(a+1)価の連結基である請求項1~5のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項7】
式(1)において、Q
1が環状シロキサン構造である請求項1~6のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項8】
式(1)において、Z
1が以下の群
-CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2CH
2-
【化1】
から選ばれるいずれかである請求項1~7のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項9】
表面改質成分(B)が、さらにフッ素原子を含まない揮発性有機溶剤(b3)を(b1)成分100質量部に対して10~2,000質量部含むものである請求項1~8のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項10】
硬化性成分(A)が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、熱又は湿気により反応し硬化するものである請求項1~9のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項11】
硬化性成分(A)が、フッ素原子を含まない加水分解性シラン化合物、加水分解性シロキサン化合物又はシラノール基含有シリコーン樹脂を含むものである請求項1~10のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項12】
硬化性成分(A)が、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランの少なくとも1つもしくはこれらの部分加水分解縮合物、又は該部分加水分解縮合物の加水分解・部分縮合物を含むものである請求項1~11のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項13】
硬化性成分(A)が、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物及び1分子中にヒドロキシル基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物を含むものである請求項1~12のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項14】
硬化性成分(A)が、フッ素原子を含まないエポキシ化合物を含むものである請求項1~13のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項15】
硬化物の表面の水接触角が100°以上である請求項1~14のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の含フッ素硬化性組成物の硬化被膜を表面に有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質成分を含む含フッ素硬化性組成物に関する。特には熱硬化性樹脂、熱硬化型ハードコート剤もしくは熱硬化型塗料等の熱又は湿気により硬化物を与える硬化性組成物に、特定の表面改質成分を添加することにより、得られる硬化物表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性等のフルオロポリエーテル構造に由来する効果を付与することができる含フッ素硬化性組成物、及び含フッ素硬化性組成物の硬化被膜を表面に有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコート剤(あるいはハードコートとしての役割を有する塗料)は、プラスチック樹脂に代表される各種物品表面に塗工され硬化されることで、物品の表面を保護し、物品の表面に新たな機能を付与することができる素材として非常に幅広い用途で用いられている。
【0003】
これらハードコート剤には、その用途の広がりに応じて、従来求められてきた硬度、耐摩耗性、耐薬品性、及び耐久性等に加え、撥水性、撥油性、防汚性、耐指紋性、指紋除去性、滑り性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性、液滴滑落性、着雪滑落性、着氷滑落性、防曇性、表面レベリング性、低屈折率性、及び反射防止性等の更なる高機能が求められている。
【0004】
ハードコート剤には、大きく分けて紫外線・電子線硬化型ハードコート剤と熱硬化型ハードコート剤がある。紫外線・電子線硬化型ハードコート剤として、例えば、アクリル基含有ハードコート剤が挙げられる。近年、紫外線硬化型ハードコート剤にごく少量添加することで、添加前のハードコート剤が有していた特性に加え、得られる硬化表面に撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性などを付与することができる、含フッ素化合物が検討されている。
【0005】
含フッ素化合物の特性を硬化性組成物表面に付与するには、できるだけフッ素含有率が高い、あるいは長鎖フルオロポリエーテル構造を有するほうがよいと考えられるが、このような化合物は非フッ素の化合物との相溶性が悪く、フッ素系化合物を含有する揮発性成分を配合したり、組成物としての濁りを抑えるため非フッ素系成分全体に対しての配合量を非常に低く抑えたりする必要がある。
【0006】
一方、近年、環境面また作業者への健康への懸念、安全に扱うために一般有機溶剤とは異なる専用の除外設備を必要とすることなどから、含フッ素溶剤は使用を避けられる傾向にあり、含フッ素溶剤を使用せずに硬化物表面に優れた特性を付与できる防汚添加剤が求められている。
【0007】
本発明者らは、特許文献1~4(特開2010-053114号公報、特開2010-138112号公報、特開2010-285501号公報、特開2011-241190号公報)にて、非フッ素の有機溶剤に可溶で紫外線又は電子線硬化型ハードコート剤用の添加剤として好適に使用でき、得られる硬化物に良好な撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性を付与し得る含フッ素化合物を提案している。
しかし、紫外線以外の硬化システムによる硬化性組成物で、含フッ素溶剤を必須とせず、硬化性組成物に容易に溶解し、上記紫外線硬化型ハードコート剤と同等以上に、得られる硬化物表面に撥水撥油性及び防汚性、耐指紋性等の性能を付与できる表面改質剤については十分な検討がなされておらず、このような条件の上で使用しやすく性能が出やすい表面改質剤の要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-053114号公報
【文献】特開2010-138112号公報
【文献】特開2010-285501号公報
【文献】特開2011-241190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、熱又は湿気により硬化することが可能で、含フッ素溶剤を含まなくても、物品表面に塗工でき、硬化物表面に優れた表面特性を付与することができる表面改質成分を含む含フッ素硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、後述する一般式(1)で示される特定構造のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなり、かつ揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)が0.005~50質量部である含フッ素硬化性組成物が、含フッ素溶剤を含まなくても、物品表面に塗工でき、硬化物表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性等のフルオロポリエーテル構造に由来する表面特性を付与することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記の含フッ素硬化性組成物及び物品を提供する。
[1]
加水分解性シリル基、シラノール基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物(但し、加水分解性シリル基を有する化合物は、分子中にフッ素原子を含まない。)から選ばれる少なくとも1種の化合物、あるいは、上記化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する、ウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、アルキッド樹脂組成物及びシリコーン樹脂組成物から選ばれる樹脂組成物を含む、熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、下記一般式(1)
[M
cR
bSi-Z
2]
a-Q
1-Z
1-Rf-Z
1-Q
1-[Z
2-SiR
bM
c]
a (1)
(式中、Rfは数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。
Z
1はそれぞれ独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造及び/又は不飽和結合を有する基であってもよい。
Z
2はそれぞれ独立に炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
Q
1はそれぞれ独立に(a+1)価の連結基であり、水素原子、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子のいずれか2種類以上の原子を含む構造であり、環状をなしていてもよい。
aはそれぞれ独立に1~10の整数であり、bはそれぞれ独立に0~2の整数であり、cはそれぞれ独立に1~3の整数であり、かつ同一ケイ素原子上のb、cにおいてb+c=3を満たす。式(1)における[ ]で括られたa個のZ
2はすべてQ
1構造中のケイ素原子と結合している。
Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基である。
Mはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなり、かつ揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)が0.005~50質量部である含フッ素硬化性組成物。
[2]
熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、下記一般式(1)
[M
c
R
b
Si-Z
2
]
a
-Q
1
-Z
1
-Rf-Z
1
-Q
1
-[Z
2
-SiR
b
M
c
]
a
(1)
(式中、Rfは数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。
Z
1
はそれぞれ独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造及び/又は不飽和結合を有する基であってもよい。
Z
2
はそれぞれ独立に炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
Q
1
はそれぞれ独立に(a+1)価の連結基であり、水素原子、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子のいずれか2種類以上の原子を含む構造であり、環状をなしていてもよい。
aはそれぞれ独立に1~10の整数であり、bはそれぞれ独立に0~2の整数であり、cはそれぞれ独立に1~3の整数であり、かつ同一ケイ素原子上のb、cにおいてb+c=3を満たす。式(1)における[ ]で括られたa個のZ
2
はすべてQ
1
構造中のケイ素原子と結合している。
Rはそれぞれ独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基である。
Mはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなり、かつ揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中のパーフルオロポリエーテル化合物(b1)が0.005~50質量部である含フッ素硬化性組成物であって、
表面改質成分(B)が、さらに下記一般式(2)
F-Rf’-F (2)
(式中、Rf’は数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基である。)
で示される無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)を、一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)と上記(b2)成分の合計100モル%に対して5モル%未満含み、揮発性成分を除外した硬化性成分(A)100質量部に対して、表面改質成分(B)中の(b1)成分と(b2)成分の合計が0.005~50質量部であり、かつ、常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤の含有量が(B)成分全体の1質量%未満であ
る含フッ素硬化性組成物。
[3]
式(1)、(2)において、Rf及びRf’が、それぞれ以下の2価パーフルオロエーテル基群
-CF
2O-
-CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2O-
-CF(CF
3)CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
-CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
から選ばれる少なくとも1つの構造からなる繰り返し単位と、炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基からなるものである[1]又は[2]に記載の含フッ素硬化性組成物。
[4]
式(1)、(2)において、Rf及びRf’が、以下のいずれか
-CF
2O(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
qCF
2-
-CF
2CF
2O(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
qCF
2CF
2-
(式中、pは10~290の整数、qは5~170の整数、p+qは15~295の整数である。-CF
2O-と-CF
2CF
2O-の各繰り返し単位の配列はランダムである。)
-CF(CF
3)[OCF
2CF(CF
3)]
sO(C
uF
2uO)
v[CF(CF
3)CF
2O]
tCF(CF
3)-
-CF
2CF
2CF
2O[CF(CF
3)CF
2O]
tCF
2CF
2-
(式中、s、tは独立に1~120の整数であり、かつs+tは4~121の整数であり、uは1~6の整数であり、vは0~10の整数である。)
で示されるものである[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[5]
式(1)において、Z
2が以下の式
-(CH
2)
w-
(式中、wは2~20の整数である。)
で表されるものである[1]~[4]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[6]
式(1)において、Q
1がそれぞれ独立に少なくとも(a+1)個のケイ素原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合わせからなる(a+1)価の連結基である[1]~[5]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[7]
式(1)において、Q
1が環状シロキサン構造である[1]~[6]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[8]
式(1)において、Z
1が以下の群
-CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2CH
2-
【化1】
から選ばれるいずれかである[1]~[7]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[9]
表面改質成分(B)が、さらにフッ素原子を含まない揮発性有機溶剤(b3)を(b1)成分100質量部に対して10~2,000質量部含むものである[1]~[8]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[10]
硬化性成分(A)が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、加水分解性シリル基、シラノール基、又はカルボン酸無水物基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、熱又は湿気により反応し硬化するものである[1]~[9]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[11]
硬化性成分(A)が、フッ素原子を含まない加水分解性シラン化合物、加水分解性シロキサン化合物又はシラノール基含有シリコーン樹脂を含むものである[1]~[10]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[12]
硬化性成分(A)が、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランの少なくとも1つもしくはこれらの部分加水分解縮合物、又は該部分加水分解縮合物の加水分解・部分縮合物を含むものである[1]~[11]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[13]
硬化性成分(A)が、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物及び1分子中にヒドロキシル基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物を含むものである[1]~[12]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[14]
硬化性成分(A)が、フッ素原子を含まないエポキシ化合物を含むものである[1]~[13]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[15]
硬化物の表面の水接触角が100°以上である[1]~[14]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物の硬化被膜を表面に有する物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素硬化性組成物は、含フッ素溶剤を含まなくても、物品表面に塗工でき、硬化物表面に優れた撥水撥油性、防汚性、及び耐指紋性等のフルオロポリエーテル構造に由来する表面特性を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の含フッ素硬化性組成物は、熱又は湿気により硬化物を与える硬化性成分(A)と、後述する一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含む表面改質成分(B)とからなるものである。
【0014】
[(A)成分]
本発明の含フッ素硬化性組成物の1つの構成要素である硬化性成分(A)は、熱又は湿気により硬化物を与えるものであり、後述する(b1)及び(b2)成分に該当しない成分によって構成され、常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤の含有量が硬化性成分(A)全体の1質量%未満であり、(b1)成分と混合塗工もしくは成型可能であり、かつ硬化後に(b1)成分を硬化物表面に固定可能なものであれば、組成や硬化機構については制限されないが、硬化後に化学結合により(A)成分中の少なくとも1種類の化合物と(b1)成分が固定されることが望ましく、このような(A)成分に含まれる化合物は、後述する一般式(1)のM基である、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基及びハロゲン基のいずれかと反応する官能基を有し、熱又は湿気により硬化するものが好ましい。またフッ素原子を含む場合は、揮発成分とならないため、1つの化合物中に上記Mと反応する官能基を有することが望ましい。
【0015】
硬化性成分(A)に含まれる、(b1)成分である一般式(1)のM基と反応可能な官能基を有する化合物における官能基としては、加水分解性シリル基、シラノール基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、又はカルボン酸無水物基を挙げることができる。
中でも特に、加水分解性シリル基、シラノール基、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基を持つ化合物が好ましい。シリル基に結合する加水分解性基として、具体的には、アルコキシ基、オキシム基、イソプロペノキシ基、アセトキシ基を挙げることができる。
【0016】
さらに硬化性成分(A)に含まれる加水分解性シリル基を有する化合物(加水分解性シラン化合物又は加水分解性シロキサン化合物)としては、フッ素原子を含まないものが好ましく、具体的には、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン等のアルキルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、エチルトリイソプロペノキシシラン等のアルキルトリアルケニルオキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン等のジアルキルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ジメチルジイソプロペノキシシラン、ジエチルジイソプロペノキシシラン等のジアルキルジアルケニルオキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン等のトリアルキルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルイソプロポキシシラン、トリエチルブトキシシラン等のトリアルキルアルコキシシラン、トリメチルイソプロペノキシシラン、トリエチルイソプロペノキシシラン等のトリアルキルアルケニルオキシシラン、フェニルトリクロロシラン等のアリールトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン、フェニルメチルジクロロシラン等のアルキルアリールジクロロシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のアルキルアリールジアルコキシシラン、ジフェニルジクロロシラン等のジアリールジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルフェニルクロロシラン等のジアルキルフェニルクロロシラン、ジメチルフェニルジメトキシシラン等のジアルキルフェニルジアルコキシシラン、及びこれらの加水分解性シラン化合物の1種又は2種以上の部分(共)加水分解縮合物(例えば、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン、1,3-ジメトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,5-ジメチル-1,1,3,3,5,5-ヘキサメトキシトリシロキサン、1,5-ジメトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン、1,3,5-トリメチル-1,3,5-トリメトキシトリシロキサンなどのアルキルアルコキシシロキサンオリゴマー)などが挙げられる。
【0017】
その他、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、5-ヘキセニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-(4-ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、4-ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどの反応性官能基を有する加水分解性シラン化合物を使用してもよい。またこれらの加水分解縮合物、これらから得られるシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等汎用的な樹脂が挙げられる。これらは、1種類だけでなく、2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。
【0018】
これらの中で、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジアルコキシシランの少なくとも1つもしくはこれらの部分加水分解縮合物を含むものが好ましく、特にメトキシ基含有シランあるいはエトキシ基含有シラン及びこれらの部分加水分解縮合物からなるシリコーン樹脂を使用するのがより好ましい。
【0019】
上記加水分解性シラン化合物を(部分)加水分解、縮合して、本発明に使用可能なシリコーン樹脂を得る方法としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘキサン、オクタンなどの炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系化合物、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系化合物、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールなどのアルコール類から選ばれる有機溶剤中で(部分)加水分解、縮合することにより、加水分解性シリル基及び/又はシラノール基を含有するシリコーン樹脂を得ることができる。
【0020】
ここで、加水分解時に、使用する水の添加量を原料のアルコキシ基の全てを加水分解するために必要な量よりも少なくすることで、縮合後の最終的に得られるシリコーン樹脂は加水分解性シリル基であるメトキシ基やエトキシ基を多く含むシリコーン樹脂となる。
また、得られたシリコーン樹脂のアルコキシ基の全てを加水分解するために、該シリコーン樹脂に、さらに必要な量よりも多く水を添加することで、後述するシラノール基を含むシリコーン樹脂を得ることができる。
【0021】
加水分解、縮合を実施するに際し、加水分解触媒を使用してもよい。加水分解触媒としては、従来公知の触媒を使用することができ、その水溶液がpH2~7の酸性を示すものを使用するのがよい。特に酸性のハロゲン化水素、カルボン酸、スルホン酸、酸性あるいは弱酸性の無機塩、イオン交換樹脂などの固体酸などが好ましい。例としては、フッ化水素、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、マレイン酸に代表される有機カルボン酸、メチルスルホン酸(別名:メタンスルホン酸)、表面にスルホン酸基又はカルボン酸基を有するカチオン交換樹脂などが挙げられる。加水分解触媒の量は、ケイ素原子上の加水分解性基1モルに対して0.001~10モルの範囲内であることが好ましい。反応温度は通常0~120℃であり、反応時間は反応が進行するのに十分な時間であればよいが、通常30分~24時間程度である。
【0022】
上記シリコーン樹脂は、上記溶剤に均一に溶解した溶液として調製することもできる。この場合、均一溶液が得られる範囲であれば溶液中のシリコーン樹脂の濃度は特に制限されないが、好ましくは5~100質量%、より好ましくは20~60質量%程度である。
【0023】
本発明に用いられる硬化性成分(A)において、加水分解性シリル基を有する化合物(加水分解性シラン化合物)を用いる場合には、硬化させるための硬化触媒や、被膜形成性を向上する目的でレベリング剤を使用することも可能である。硬化触媒としては、無機酸あるいは有機酸、アミン化合物あるいはアルカリ物質、有機スズ化合物や後述する有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物のほか、塩化白金酸等のヒドロシリル化触媒、UV硬化剤等、従来公知の各種材料を応用することができる。レベリング剤としては、ポリエーテル変性オイル、フッ素含有界面活性剤等を使用することができる。触媒の添加量としては、通常、加水分解性シリル基を有する化合物の0.1~15質量%、好ましくは1~12質量%である。
【0024】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるシラノール基を有する化合物としては、1分子中にシラノール基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、前記した加水分解性シリル基を有する化合物(加水分解性シラン化合物又は加水分解性シロキサン化合物)の一部又は全ての加水分解性基を加水分解したものや、該加水分解性シリル基を有する化合物(加水分解性シラン化合物又は加水分解性シロキサン化合物)の1種又は2種以上の(共)加水分解・部分縮合物(即ち、該加水分解した1種又は2種以上の化合物のシラノール基の一部を部分縮合して生成する分子中に残存シラノール基を有するオルガノポリシロキサン樹脂(シリコーン樹脂))等が挙げられる。中でもメチルトリメトキシシランあるいはメチルトリエトキシシランの部分加水分解縮合物(例えば、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラメトキシジシロキサン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラエトキシジシロキサン等)と、ジメチルジメトキシシランあるいはジメチルジエトキシシランとを共加水分解・部分縮合させたシラノール基を含有するシリコーン樹脂が好ましい。
【0025】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれる水酸基を有する化合物としては、1分子中に水酸基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン/オキシプロピレン共重合グリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の長鎖ポリエーテルポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、グリセリンにプロピレン付加重合させたポリオキシプロピレントリオール、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合などにより合成できるポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールA、エチレンジアミン等のアミン化合物等へのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物;ポリテトラメチレンエーテルグリコール、水酸基を持つアクリル酸エステル誘導体の重合体、水酸基を持たないアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル誘導体と水酸基を有するアクリル酸エステル誘導体及び/又はメタクリル酸エステル誘導体の共重合体、例えばメタクリル酸メチル(MMA)と2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート(HEMA)のランダム共重合体が挙げられる。中でもポリエーテルポリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0026】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるカルボキシル基を有する化合物としては、1分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等の4価以上のカルボン酸等が挙げられる。中でも脂肪族のジカルボン酸類が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるアミノ基を有する化合物としては、1分子中にアミノ基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としてはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、フェニレンジアミン、ペンタメチレンヘキサミン、ヘキサメチレンヘプタミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるエポキシ基を有する化合物としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物が好ましい。特には、非フッ素化エポキシ化合物であるのが好ましい。該化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、水添・非水添の芳香族グリシジルエーテル型のエポキシ樹脂(例えばビスフェノールAやビスフェノールF等の各種ビスフェノール誘導体のジグリシジルエーテル型誘導体、ノボラック型)等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるメルカプト基を有する化合物としては、1分子中にメルカプト基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、1,4-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビス(チオグリコラート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコラート)、ペンタエリトリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)が挙げられる。中でもメルカプト基を3個以上有するものが好ましい。
【0030】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるイソシアネート基を有する化合物としては、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物が好ましい。該化合物としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの内では脂肪族又は脂環式のイソシアネート類に分類されるものが特に好ましい。
中でも、上記1分子中にイソシアネート基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物と、1分子中に水酸基を2個以上有するフッ素原子を含まない化合物を併用することが好ましい。
【0031】
本発明に用いられる硬化性成分(A)に含まれるカルボン酸無水物基を有する化合物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる硬化性成分(A)には、必要に応じて触媒等の硬化促進剤を含有することができる。特に硬化性成分(A)が加水分解性シリル基を有する化合物を含む場合、テトラブトキシチタン、テトラ-i-プロポキシチタン、ジブトキシ-(ビス-2,4-ペンタンジオネート)チタン、ジ-i-プロポキシ(ビス-2,4-ペンタンジオネート)チタンなどの有機チタンエステル、テトラブトキシジルコニウム、テトラ-i-プロポキシジルコニウム、ジブトキシ-(ビス-2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウム、ジ-i-プロポキシ(ビス-2,4-ペンタンジオネート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウムエステル、アルミニウムトリイソプロポキシド等のアルコキシアルミニウム化合物、アルミニウムアセチルアセトナート錯体等のアルミニウムキレート化合物、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Zn、Ga、In、Ge、Sn等の加水分解性誘導体等を使用することができる。中でも、アルミニウムアセチルアセトナート錯体が安定性、硬化性を両立させる点で好ましい。
【0033】
また硬化性成分(A)がイソシアネート基を有する化合物を含む場合、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、n-ヘキシルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジシアンジアミド等の塩基性化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタンアセチルアセトナート、アルミニウムトリイソブトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート、モノアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート、コバルトオクチレート、コバルトアセチルアセトナート、鉄アセチルアセトナート、スズアセチルアセトナート、ジブチルスズオクチレート、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズジラウレート、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の含金属化合物類、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物等を用いることができる。
【0034】
硬化性成分(A)がイソシアネート基を有する化合物を含む場合、ピペリジン、N,N-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどの2級及び3級アミン、BF3、ZnCl2、SnCl4、FeCl3、AlCl3などのルイス酸、及びこれらルイス酸のアミン錯体、ジシアンジアミド等を用いることもできる。
【0035】
さらに硬化性成分(A)がエポキシ基を有する化合物を含む場合、カチオン重合開始剤として、加熱によりカチオンを発生させる熱酸発生剤あるいは熱光酸発生剤等を使用することができる。
【0036】
硬化性成分(A)中のこれら硬化促進剤の配合量は、本発明の含フッ素硬化性組成物を硬化させるための有効量であればよく、特に限定されない。
【0037】
また本発明における硬化性成分(A)には、必要に応じて、従来公知の添加剤をさらに配合することができる。このような添加剤としては、例えば、フィラー、染顔料、レベリング剤、反応性希釈剤、非反応性高分子樹脂、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、分散剤、帯電防止剤、チキソトロピー付与剤が挙げられる。
【0038】
さらに本発明に用いられる硬化性成分(A)には、必要に応じて常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤以外の溶剤を含有してもよい。好ましい溶剤としては、1-プロパノール、2-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどのエステル類、トルエン、キシレン、トリエチルベンゼン、アルキルベンゼン類の芳香族類などを挙げることができる。上記溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤の配合量は特に制限されないが、好ましくは上記(A)成分に含まれる溶剤を除いた成分の合計100質量部に対して、溶剤の合計が20~10,000質量部、特には50~1,000質量部であるのがよい。
【0039】
さらに本発明の形態として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、もしくはこれらの混合物を含む塗料、又は熱硬化型ハードコート剤を(A)成分とし、ここに表面改質成分(B)を添加して使用することができる。すなわち各社から発売、もしくは公開済みの特許等各種文献で組成が示されている既存の硬化性組成物を(A)成分又は(A)成分中の一成分として使用し、各硬化性組成物(硬化性成分)から揮発成分を除いた量を元に、適正な量の(B)成分を加えることで、本発明の含フッ素硬化性組成物及びそれを硬化させた硬化物を得ることができる。これらの既存の硬化性組成物としては、特にウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、メラミン樹脂組成物、アルキッド樹脂組成物、及びシリコーン樹脂組成物として市販されている、熱硬化あるいは湿気硬化型の樹脂、塗料、ハードコート剤として市販されている任意のものを使用することができる。
【0040】
例えば、(A)成分に該当する市販されている加水分解性シリル基やシラノール基含有化合物の例として、信越化学工業株式会社のKRシリーズ、X-40シリーズ、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilFORTシリーズのThermal Cureタイプ、ワッカー社のSILRESシリーズ等を例示することができる。
【0041】
また、上記のように市販品の硬化性組成物を(A)成分として用いる場合であっても、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、レベリング剤、及びフィラー等の公知の樹脂添加剤や各種官能基を有する有機・無機化合物を追加して配合することができる。
【0042】
[(B)成分]
本発明を構成する表面改質成分(B)は、パーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含むものであり、該パーフルオロポリエーテル化合物(b1)は、下記一般式(1)で示されるものである。
[McRbSi-Z2]a-Q1-Z1-Rf-Z1-Q1-[Z2-SiRbMc]a
(1)
【0043】
ここで、上記式(1)において、Rfは数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基であり、数平均分子量として上記範囲を満たしていれば、これより分子量の大きい化合物、小さい化合物を含んでいてもよい。なお、本発明において、数平均分子量は、19F-NMRスペクトルから得られる末端構造と繰り返し単位構造の比率から計算により算出できる(以下、同じ)。
【0044】
上記式中、Rfは炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基と酸素原子によって構成される分子量1,500~20,000、好ましくは分子量2,000~18,000、より好ましくは分子量3,000~10,000の2価パーフルオロポリエーテル基であり、具体的には、以下に示す構造のいずれか1つ又は複数からなる繰り返し単位と、炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基からなるものが示される。
-CF2O-
-CF2CF2O-
-CF2CF2CF2O-
-CF(CF3)CF2O-
-CF2CF2CF2CF2O-
-CF2CF2CF2CF2CF2O-
-CF2CF2CF2CF2CF2CF2O-
【0045】
特に以下の炭素数1~4のパーフルオロオキシアルキレン構造を主な繰り返し単位として有するものが好適である。
-CF2O-
-CF2CF2O-
-CF(CF3)CF2O-
-CF2CF2CF2O-
-CF2CF2CF2CF2O-
【0046】
また、炭素数1~6のパーフルオロアルキレン基としては、例えば、下記に示すものが例示できる。
-CF2-
-CF2CF2-
-CF(CF3)-
-CF2CF2CF2-
-CF(CF3)CF2-
-CF2CF2CF2CF2-
【0047】
特に好ましいRfの構造としては、以下の4つの構造を挙げることができる。
-CF2O(CF2O)p(CF2CF2O)qCF2-
-CF2CF2O(CF2O)p(CF2CF2O)qCF2CF2-
(式中、pは10~290、好ましくは15~90、より好ましくは20~60の整数、qは5~170、好ましくは10~120、より好ましくは15~50の整数、p+qは15~295、好ましくは20~210、より好ましくは30~100の整数であり、p、qの組み合わせは、表面改質成分(B)の(b1)成分全体としてのRfの数平均分子量が1,500~20,000を満たす範囲である。-CF2O-と-CF2CF2O-の各繰り返し単位の配列はランダムである。)
-CF(CF3)[OCF2CF(CF3)]sO(CuF2uO)v[CF(CF3)CF2O]tCF(CF3)-
-CF2CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]tCF2CF2-
(式中、s、tは独立に1~120、好ましくは2~60、より好ましくは4~20の整数であり、かつs+tは4~121、好ましくは4~100、より好ましくは8~80の整数であり、uは1~6、好ましくは2~4の整数であり、vは0~10、好ましくは0~4の整数である。これらのs、t、u、vの組み合わせは、表面改質成分(B)の(b1)成分全体としてのRfの数平均分子量が1,500~20,000を満たす範囲である。)
【0048】
上記式(1)において、Z
1はそれぞれ独立に2価の連結基であり、酸素原子、窒素原子、フッ素原子又はケイ素原子を含んでいてもよく、また環状構造及び/又は不飽和結合を有する基であってもよい。このような構造として、具体的には、以下の構造を示すことができる。なお、下記の構造において、左側の結合手はRfと、右側の結合手はQ
1中のケイ素原子と結合することが好ましい。
-CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2CH
2-
【化2】
【0049】
上記式(1)において、Z2はそれぞれ独立に炭素数2~20の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
【0050】
具体的には、以下の式で示されるものが挙げられる。なお、下記の構造において、左側の結合手はQ
1中のケイ素原子と、右側の結合手はRあるいはMと結合するケイ素原子と結合することが好ましい。
-(CH
2)
w-
-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2-
-CH
2CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2-
【化3】
(式中、wは2~20の整数である。)
【0051】
特に好ましくは
-(CH2)w-
であり、さらに好ましくは上記式においてwが3~12の整数のものである。
ここで、式(1)における[ ]で括られたa個のZ2はすべてQ1構造中のケイ素原子と結合している。
【0052】
上記式(1)において、aはそれぞれ独立に1~10の整数であり、好ましくは1~8の整数であり、さらに好ましくは1~4の整数である。
【0053】
Q
1はそれぞれ独立に(a+1)価の連結基であり、水素原子、炭素原子、酸素原子、ケイ素原子、窒素原子のいずれか2種類以上の原子を含む構造であり、環状構造をなしていてもよい。特に好ましくは少なくとも(a+1)個のケイ素原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合わせからなる(a+1)価の連結基である。
このようなQ
1として、具体的には、下記の構造が例示できる。
【化4】
【化5】
【化6】
(式中、破線の結合手はZ
1又はZ
2に結合し、aは上記式(1)のaと同じであり、それぞれ独立に1~10の整数であり、好ましくは1~8の整数であり、さらに好ましくは1~4の整数である。yは0~5の整数であり、好ましくは1~3の整数である。)
【0054】
ここで、Tは(a+1)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【化7】
【0055】
上記Q
1としては、例えば下記の構造が挙げられる。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【0056】
上記Q
1の中でも、環状シロキサン構造が好ましく、特には以下の構造が好ましい。
【化14】
【0057】
上記式(1)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1~6、好ましくは1~4の1価の炭化水素基である。1価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基などが挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0058】
上記式(1)において、Mはそれぞれ独立に炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルコキシアルキル基、炭素数2~10のアルコキシアルコキシ基、炭素数1~10のアシロキシ基、炭素数2~10のアルケニルオキシ基及びハロゲン基からなる群より選ばれる基である。Mとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等の好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基等の好ましくは炭素数2~4のアルコキシアルキル基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基、エトキシエトキシ基等の好ましくは炭素数2~4のアルコキシアルコキシ基、アセトキシ基などの好ましくは炭素数1~7のアシロキシ基、イソプロペノキシ基などの好ましくは炭素数2~6のアルケニルオキシ基、クロル基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基などが挙げられ、これらの中でも特にメトキシ基、エトキシ基、メトキシメチル基が好適である。
【0059】
上記式(1)において、bはそれぞれ独立に0~2の整数、好ましくは0又は1であり、cはそれぞれ独立に1~3の整数、好ましくは2又は3であり、かつ同一ケイ素原子上のb、cにおいてb+c=3を満たす。
【0060】
このような(b1)成分として、好適な構造を一般化したものとして、以下のものを示すことができる。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
(式中、R、M、b、c、b+cは前記の通りであり、Rf''は-CF
2O(CF
2O)
p1(CF
2CF
2O)
q1CF
2-であり、p1は10~300の整数、q1は5~170の整数、q1+p1は15~470を満足する数であり、-CF
2O-と-CF
2CF
2O-の各繰り返し単位の配列はランダムである。Rf'''は下記式
【化21】
で示される基であり、r1、r2はそれぞれ2~60、好ましくは4~20の整数であり、r1+r2は4~120を満足する数である。nはそれぞれ独立に2~20、好ましくは3~10の整数である。)
【0061】
さらに特に望ましい構造として以下のものを示す。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
(式中、Rf''は前述の通りであるが、特にRf''の分子量として1,500~18,000のものが望ましい。)
【0062】
パーフルオロポリエーテル化合物(b1)は、例えば公知の下記一般式(3)で表される2a個の(多官能)Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物に、下記一般式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物をヒドロシリル化によって付加反応させることで得ることができる。
[H]a-Q1-Z1-Rf-Z1-Q1-[H]a (3)
(式中、Rf、Z1、Q1、aは前記の通りである。)
CH2=CR2-(Z3)x-SiRbMc (4)
(式中、R、M、b、c、b+cは前記の通りであり、xは0又は1であり、Z3は炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、環状構造をなしていてもよく、途中エーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。R2は水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基であり、Z3の炭素数とR2の炭素数の合計は0~18、好ましくは1~10を満たす。)
【0063】
ここで、上記式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
(式中、Rf''、r1、r2、r1+r2は上記と同じである。)
【0064】
上記式(4)において、Z
3としては、以下の式で示されるものが挙げられる。なお、下記の構造において、左側の結合手は炭素原子と、右側の結合手はケイ素原子と結合することが好ましい。
-(CH
2)
w’-
-CH
2OCH
2CH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2-
-CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
2CH
2CH
2-
【化44】
(式中、w’は1~18の整数である。)
特に好ましくは
-(CH
2)
w’-
であり、さらに好ましくは上記式においてw’が1~10の整数のものであり、特に好ましくは上記式においてw’が1~6の整数のものである。
【0065】
上記式(4)において、R2の炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などが挙げられ、R2としては、特に水素原子が好ましい。
【0066】
上記式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物としては、下記のものが例示できる。
CH2=CHSi(OCH3)3
CH2=CHCH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OC2H5)3
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHSi(OC3H7)3
CH2=CHCH2Si(OC3H7)3
CH2=CHCH2CH2Si(OC3H7)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OC3H7)3
CH2=CHSiCH3(OCH3)2
CH2=CHCH2SiCH3(OCH3)2
CH2=CHCH2CH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2
CH2=CHSiCH3(OCH2CH3)2
CH2=CHCH2SiCH3(OCH2CH3)2
CH2=CHCH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2
CH2=CHCH2CH2CH2CH2SiCH3(OCH2CH3)2
【0067】
中でも特に以下のものが好適である。
CH2=CHSi(OCH3)3
CH2=CHCH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OC2H5)3
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
【0068】
このヒドロシリル化(付加)反応は、式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物を混合し、白金族金属系の付加反応触媒存在下、反応温度50~150℃、好ましくは60~120℃で、1分~48時間、特に10分~12時間反応を行うことが望ましい。反応温度が低すぎると反応が十分に進行しないまま停止してしまう場合があり、高すぎるとヒドロシリル化の反応熱による温度上昇で反応が制御できなくなり、突沸や原料の分解などが起こる場合がある。
【0069】
この場合、式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物の反応割合は、式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の[ ]で括られたHの総モル数に対して、式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物の末端不飽和基を0.95~5倍モル、特に1~2倍モル使用して反応させることが望ましい。式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物が、これより少なすぎると目的物を得ることが困難となる場合があり、これより多すぎると反応溶液の均一性が低下して反応速度が不安定となり、また反応後に未反応の式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物の除去を行う場合に加熱、減圧、抽出等の条件を余剰の式(4)で表される末端不飽和基含有反応性シラン化合物が増える分だけ厳しくする必要が出てくる。
【0070】
付加反応触媒は、例えば、白金、ロジウム又はパラジウム等の白金族金属を含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金-シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金-オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。
付加反応触媒の配合量は、式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物に対し、含まれる金属量が0.1~5,000質量ppmとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.2~1,000質量ppmとなる量である。
【0071】
上記の付加反応は、溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。このとき希釈溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど、広く一般に用いられている有機溶剤を利用することができるが、沸点が目的とする反応温度以上でかつ反応を阻害せず、反応に使用する式(3)及び式(4)の化合物が、上記反応温度において可溶であるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、m-キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特にm-キシレンヘキサフロライドが好ましい。
溶剤を使用する場合、その使用量は、式(3)で表される多官能Si-H基を有するパーフルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、好ましくは5~2,000質量部であり、より好ましくは50~500質量部である。これより少なければ溶剤による希釈の効果が薄くなり、多ければ希釈度が高くなりすぎて反応速度の低下を招く場合がある。
【0072】
反応終了後、未反応の式(4)の化合物、及び希釈溶剤を減圧留去、抽出、吸着等の公知の方法で除去することが好ましく、特に常圧における沸点260℃以下の含フッ素溶剤、例えば、m-キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフルオライド、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、3-メトキシパーフルオロ(3-メチルペンタン)、2-(トリフルオロメチル)-3-エトキシドデカフルオロヘキサン等を含む場合は、該含フッ素溶剤が表面改質成分(B)全体の1質量%未満となるように除去することが好ましい。ここで、常圧における沸点260℃以下の含フッ素溶剤の含有量は、例えば反応に使用した各溶剤の19F-NMRスペクトル又は1H-NMRスペクトルをもとに、必要によって(B)成分に内部標準物質を加えたNMR測定結果から算出することにより測定できる。
なお、未反応の式(4)の化合物及びフッ素原子を含まない揮発性溶剤に関しては、(B)成分の構成要素とすることもできる。
【0073】
また、本発明における(b1)成分の別な合成経路としては、本発明の実施形態の別な形として、下記一般式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、下記一般式(6)で表される1つのSi-H基と少なくとも1つの加水分解性シリル基を有する反応性シラン化合物とを反応させることで得ることができる。
Z4-Rf-Z4 (5)
H-Q1-[Z2-SiRbMc]a (6)
(式中、Rf、Q1、Z2、R、M、a、b、c、b+cは前述の通りであり、Z4はそれぞれ独立に末端にSi-H基と付加反応可能な炭素-炭素不飽和結合を1個有する炭素数2~20の酸素原子、窒素原子、フッ素原子及びケイ素原子から選ばれる1種又は2種以上を含んでいてもよい1価の炭化水素基であり、途中環状構造及び/又は不飽和結合を含んでいてもよい。式(6)におけるH及びa個のZ2はすべてそれぞれQ1構造中のケイ素原子と結合している。)
【0074】
ここで、一般式(5)におけるZ
4として、具体的には、以下の構造を挙げることができる。
-CH=CH
2
-CH
2CH=CH
2
-CH
2CH
2CH=CH
2
-CH
2OCH=CH
2
-CH
2OCH
2CH=CH
2
【化45】
【0075】
ここで、上記式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化46】
(式中、Rf''、r1、r2、r1+r2は前述の通りである。)
【0076】
また、上記式(6)で表される1つのSi-H基と少なくとも1つの加水分解性シリル基を有する反応性シラン化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【0077】
式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と式(6)で表される反応性シラン化合物の反応はこれらを混合し、白金族金属系の付加反応触媒存在下、反応温度50~150℃、好ましくは60~120℃で、1分~48時間、特に10分~12時間反応を行うことが望ましい。反応温度が低すぎると反応が十分に進行しないまま停止してしまう場合があり、高すぎるとヒドロシリル化の反応熱による温度上昇で反応が制御できなくなり、突沸や原料の分解などが起こる場合がある。
【0078】
この場合、式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、式(6)で表される反応性シラン化合物との反応割合は、式(5)の末端不飽和基の総モル数に対して、式(6)のHが0.9~2倍モル、特に望ましくは1~1.05倍モルになるように使用して反応させることが好適である。式(6)のHはすべて反応することが望ましい。
【0079】
付加反応触媒は、例えば、白金、ロジウム又はパラジウム等の白金族金属を含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金-シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金-オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。
付加反応触媒の配合量は、式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物に対し、含まれる金属量が0.1~5,000質量ppmとなることが好ましく、より好ましくは1~1,000質量ppmである。
【0080】
上記の付加反応は、溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。このとき希釈溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど、広く一般に用いられている有機溶剤を利用することができるが、沸点が目的とする反応温度以上でかつ反応を阻害せず、反応後に生成する式(1)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物が、上記反応温度において可溶であるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、m-キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特にm-キシレンヘキサフロライドが好ましい。
溶剤を使用する場合、その使用量は、式(5)で表される末端不飽和基を有するパーフルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、好ましくは5~2,000質量部であり、より好ましくは50~500質量部である。これより少なければ溶剤による希釈の効果が薄く、多ければ希釈度が高くなりすぎて反応速度の低下を招く場合がある。
【0081】
反応終了後、未反応の式(6)で表される反応性シラン化合物、及び希釈溶剤を減圧留去、抽出、吸着等の公知の方法で除去することが好ましく、特に上述した常圧における沸点260℃以下の含フッ素溶剤を含む場合は、該含フッ素溶剤が表面改質成分(B)全体の1質量%未満となるように除去することが好ましい。未反応の式(6)で表される反応性シラン化合物及びフッ素原子を含まない揮発性溶剤に関しては、(B)成分の構成要素とすることもできる。
【0082】
本発明における表面改質成分(B)には、さらに無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)を含むことができる。該無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)は、下記一般式(2)で表される。
F-Rf’-F (2)
【0083】
ここで、上記式(2)において、Rf’は数平均分子量1,500~20,000の2価パーフルオロポリエーテル基であり、数平均分子量として上記範囲を満たしていれば、これより分子量の大きい化合物、小さい化合物を含んでいてもよい。
Rf’としては、Rfに示したものと同様の構造を取ることができるが、その構造及び数平均分子量、分子量分布はRfと一致していても異なっていてもよい。
【0084】
無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)としては、以下のものを示すことができる。
CF3O(CF2O)p(CF2CF2O)qCF3
CF3CF2O(CF2O)p(CF2CF2O)qCF2CF3
CF3CF2[OCF2CF(CF3)]sO(CuF2uO)v[CF(CF3)CF2O]tCF2CF3
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]tCF2CF3
(式中、p、q、p+q、s、t、s+t、u、vは前述の通りであり、-CF2O-と-CF2CF2O-の各繰り返し単位の配列はランダムである。)
【0085】
無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)は、(b1)成分あるいは(b1)成分の原料となるパーフルオロポリエーテル化合物に副生成物あるいはパーフルオロポリエーテル化合物(b1)の工程混入物として予め含まれている場合があり、この場合は吸着処理、抽出、薄膜蒸留等の任意の公知の分離方法で(b1)成分に対する(b2)成分の含有量が後述する範囲となるように調整すればよい。具体的には、(b1)成分と(b2)成分の分子量の差が大きい場合は薄膜蒸留による分離が好適であり、薄膜蒸留による分離が困難な場合は(b1)成分を貧溶媒に溶解させ(b1)成分と(b2)成分の末端基の違いにより吸着性の異なるシリカゲル等の充填剤を使用したカラムクロマトグラフや、末端基の違いによる溶解性の差を利用して抽出溶媒を用い分離する方法等があり、特に超臨界溶媒を移動相に用いたクロマトグラフィーにより、各成分を分離することで調整できる。
一方、撥油性、表面浮上性、滑り性向上等の特性向上のためとなる範囲で(b1)成分に対して意図的に(b2)成分を配合してもよい。この場合、無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)は、上記パーフルオロポリエーテル化合物(b1)及び無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)の合計100モル%に対して0.1モル%以上とすることが好ましい。
【0086】
本発明における無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)は、上記パーフルオロポリエーテル化合物(b1)と無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)の合計100モル%に対して、無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)の含有割合が5モル%未満、好ましくは3.0モル%以下、より好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下となる範囲で含むことが望ましい。無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)の含有割合が上記範囲より多いと非フッ素化合物に対する溶解性が低下し、最終的な硬化性組成物として塗工硬化した場合に均一な塗膜が得られない場合がある。なお、(b2)成分の含有量は、(b1)成分に(b2)成分が予め含まれる場合は、各分離方法により(b1)成分と(b2)成分を単離することで、量を決定することができ、(b1)成分に(b2)に該当する成分が含まれていない場合は配合量によって決定できる。
【0087】
本発明における表面改質成分(B)は、パーフルオロポリエーテル化合物(b1)を含み、さらに無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)を上記(b1)成分と(b2)成分の合計100モル%に対して5モル%未満の含有割合で含むことができ、また、常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤の含有量が表面改質成分(B)全体の1質量%未満のものである。表面改質成分(B)は、無溶剤として使用してもよいが、フッ素原子を含まない揮発性有機溶剤(b3)を含んでいてもよい。
【0088】
このようなフッ素原子を含まない揮発性有機溶剤(b3)としては任意のものが使用できるが、水素原子及び炭素原子のみからなる化合物や、水素原子、炭素原子及び酸素原子のみからなる化合物が好ましく、具体的には、炭化水素系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0089】
炭化水素系有機溶剤の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、へプタン、イソドデカン、イソオクタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
ケトン系有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エーテル系有機溶剤の具体例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(MPEG)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
エステル系有機溶剤の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
アルコール系有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等が挙げられる。
【0090】
これらのフッ素原子を含まない揮発性有機溶剤の中でも、本発明に用いるパーフルオロポリエーテル化合物の溶解性がより優れる点から、炭化水素系有機溶剤が好ましい。
【0091】
上記フッ素原子を含まない揮発性有機溶剤の常圧における沸点としては、0~260℃、好ましくは30~200℃、より好ましくは60~150℃であることが望ましい。
【0092】
上記フッ素原子を含まない揮発性有機溶剤の使用量は特に制限されるものではなく、用途に応じて任意の割合で希釈すればよいが、例えば(b1)成分100質量部に対して、10~2,000質量部含むことが望ましい。
【0093】
本発明は、以上のような(b1)成分、又は(b1)成分と特定量の(b2)成分を表面改質成分(B)として、既存の硬化性組成物等の硬化性成分(A)に添加することで、含フッ素溶剤を使用せずに(b1)成分のパーフルオロポリエーテル化合物によって得られる特性を硬化物表面に付与することができる。
すなわち、上記表面改質成分(B)を上記硬化性成分(A)である硬化性組成物に対する表面改質剤とすることが可能である。
【0094】
(A)成分に対する(B)成分の配合量は、硬化性成分(A)から揮発性成分を除外した成分100質量部に対して、(B)成分中に含まれる(b1)成分と(b2)成分の質量の合計が0.005~50質量部、好ましくは0.05~10質量部である。この量が少なすぎると表面に(b1)成分に由来する性質を十分付与することができなくなり、多すぎれば(A)成分の硬化後の硬度等の物性に必要以上の影響を与えてしまう可能性がある。
なお、本発明においては、(A)成分と(B)成分の配合割合として、(b1)成分である一般式(1)中のM基量が、硬化性成分(A)に含まれる、(b1)成分である一般式(1)のM基と反応可能な官能基を有する化合物中の官能基1モルに対して、0.0001~1.5モル、特に0.005~0.095モルの範囲とすることがより好ましい。
【0095】
上記(A)及び(B)成分は、塗工時に1つの液として混合され、含フッ素硬化性組成物とされていればよく、全てを混合した1液の組成物だけでなく、例えば触媒や安定剤等各種添加剤の有無、各構成成分の官能基の違い、希釈度の違い等、異なる組成を持つ複数の組成物として調製し、これを塗工もしくは成形前に混合する使用形態を取ることもできる。
【0096】
本発明の含フッ素硬化性組成物の調製方法は特に制限されるものでなく、従来公知の方法に従い、上記(B)成分と(A)成分を混合することにより得ることができる。なお、本発明の含フッ素硬化性組成物は、上述したように常圧における沸点が260℃以下である含フッ素溶剤の含有量が組成物全体の1質量%未満であることが好ましい。
【0097】
本発明の含フッ素硬化性組成物の硬化条件は、使用する(A)成分の種類と(b1)成分の組み合わせに応じて、従来公知の方法に従い適宜選択すればよい。特には、20℃~200℃の範囲の温度で5分~48時間程度加熱するのがよいが、例えば25℃で一ヶ月かけて硬化を進行させるような方法でも使用できる。
【0098】
また、本発明の含フッ素硬化性組成物の一般的な使用形態としては、本発明の含フッ素硬化性組成物層が硬化後に密着又は接着するものであればいかなる基材上に塗布することもできるが、紙、布、金属及びその酸化物、皮、合成皮革、木材、ガラス、セラミック、石英など各種材質、及び樹脂基材、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂あるいはこれらの樹脂による塗膜を挙げることができる。これらは、フィルム、板状、及び成形部材等任意の形態をとるものに対してその表面に使用できる。
【0099】
本発明の含フッ素硬化性組成物を用いて形成される硬化被膜(硬化樹脂層)は、タブレット型コンピュータ、ノートPC、携帯電話・スマートフォン等の携帯(通信)情報端末、デジタルメディアプレイヤー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、電子ブックリーダーなど各種機器の筐体及び表示部、操作部、時計型・眼鏡型ウェアラブルコンピュータ、ヘッドマウントディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッションプロジェクションディスプレイ、CRT、トナー系ディスプレイ、量子ドット(QD)ディスプレイなどの各種フラットパネルディスプレイ及びTVの画面などの表示操作機器表面及びこれらの内部に使用される各種光学フィルム類、GPS表示記録機器、自動車用等のナビゲーション装置、自動車用等の制御パネル、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、デジタルサイネージ(電子看板)、セキュリティーシステム端末、POS端末、リモートコントローラなど各種コントローラ、車載装置用パネルスイッチなどの表示入力装置、ピアノや家具の光沢表面、大理石等の建築用石材表面、家具調度の表面、トイレ、風呂、洗面所等の水周りの装飾建材、美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、フォトフレーム用カバー、腕時計、化粧品容器の外装、装飾品の外装、装飾品容器の外装、自動車窓用ガラス、自動車の樹脂及び金属、自動車用塗装のオーバーコート、屋内屋外の看板、広告表示、道路標識、案内板、各種信号機及びLED標識の表示部のコーティング、自動車用電子ミラーの表示部、各種建造物の屋外塗装、列車航空機等の輸送装置の窓ガラス及び内装外装、自動車ヘッドライト・テールランプなどの透明なガラス製又は透明なプラスチック製(アクリル樹脂、ポリカーボネートなど)部材、ミリ波レーダー等の車用センサーのカバー部材、各種ミラー部材等の塗装膜及び表面保護膜として有用である。
【0100】
さらにメガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、各種カメラ用レンズ、各種レンズ用保護フィルター、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイスの表面保護被膜としても有用である。
【0101】
本発明の含フッ素硬化性組成物を基材表面に塗布する場合、その塗布方法としては、グラビアコーター、ロールコーター、バー(ロッド)コーター、ブレードコーター、ナイフコーター、ダイコーター、含浸コーター、スクリーンコーター、スピンコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0102】
なお、本発明の含フッ素硬化性組成物を塗布硬化して得られる硬化膜の厚さは、特に制限されるものではないが、各種保護膜として物品表面に塗布する場合、好ましくは0.1μm~3mm、より好ましくは1μm~1mmである。
【0103】
以上のような、本発明の含フッ素硬化性組成物は、目的とする物品の表面に本発明に係る表面改質成分(B)中の(b1)及び(b2)成分に由来するフルオロポリエーテル構造を、硬化性成分(A)の硬化物表面に配置させることにより、本発明の含フッ素硬化性組成物の硬化物に(A)成分単独の特性に加え、撥水性、撥油性、防汚性、耐指紋性、指紋除去性、滑り性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐溶剤性、耐薬品性、液滴滑落性、着雪滑落性、着氷滑落性、防曇性、表面レベリング性、離型性、低屈折率性、反射防止性等の優れた性質を与えることをその本質としている。このため本発明における硬化性成分(A)が公知の組成及び使用条件の範囲内であれば、本発明の含フッ素硬化性組成物に対して塗工性、硬化性、作業性、密着性、接着性、及び各種硬化後の特性を調整するために、その組成あるいは配合、塗工、硬化条件を選定することは既存技術の組み合わせによるスクリーニング作業により達成できる。
【0104】
このような本発明の含フッ素硬化性組成物を使用する際は、上記範囲内で、配合物の組み合わせ、組成比、どのような特性を重視するかに応じて、適切な使用方法をそれぞれの用途に応じた公知の技術を元に選定すればよい。このような公知の技術は、フッ素を含む組成物に対するものだけでなく、硬化性組成物に用いられている手法を含めて検討の範囲に含めることができる。
【0105】
例えば、本発明の含フッ素硬化性組成物における硬化性成分(A)として、上記範囲内で、各種配合物を組み合わせる際に、目的とする硬化条件に適合するように公知の硬化剤の種類や量を選定すること、低屈折率特性やこれを利用した低反射特性を重視する場合に反応性中空シリカや反応性基を有しない中空シリカを配合すること、硬化前後の体積変化を小さくするため各種無機化合物を配合すること、帯電防止のために帯電防止剤を配合すること、耐UV性のために紫外線吸収剤を配合すること、塗工を行う際干渉縞を防ぐために適切な塗工膜厚となるように調整を行うこと、基材の厚さを調整してカール等抑制しやすくしたり基材の弾性率を調整したりすることで含フッ素硬化性組成物が塗工された塗膜硬化後の変形や塗膜の割れを抑制すること等はそれぞれの特性に応じた既存の条件の組み合わせを元にスクリーニング作業を行って選定させるものであり、本発明と既存技術の組み合わせにより容易に達成可能である。
【0106】
本発明の含フッ素硬化性組成物は、基材表面に塗布して硬化、あるいは単体で硬化させることにより、表面に優れた防汚性、撥水性、撥油性、及び耐指紋性を有する硬化物を提供する。これによって、雨、砂塵、花粉、生物の糞、虫の衝突による汚れ、指紋や皮脂あるいは汗等の人脂、化粧品などの付着、インクや塗料による落書き等により汚れ難くなり、汚れが付着した場合であっても拭き取り性に優れ、またガム、シール等粘着物が貼り付いた場合も容易に除去できる硬化物表面を与える。このため、本発明の含フッ素硬化性組成物は、各種成形物への塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用されるハードコート剤として特に有用である。
【実施例】
【0107】
以下、調製例、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0108】
[硬化性成分(A)の調製]
[調製例A-1]
攪拌装置、リービッヒ冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1リットルのフラスコに、平均組成式がCH3(CH3O)2SiOSi(OCH3)2CH3で表される化合物96.1質量部、(CH3)2Si(OCH3)2で表される化合物18.0質量部及びトルエン76.9質量部を仕込み、メタンスルホン酸3.4gを攪拌しながら投入した後、さらに水27.0質量部を1時間掛けて滴下し、30℃で12時間熟成させた。
得られた液を炭酸水素ナトリウムで中和し、副生したアルコールを留去し、水洗し、脱水・濾過した後、105℃で3時間放置後測定した不揮発分が40質量%となるようにトルエンを用いて希釈し、キャノン・フェンスケにより測定した25℃における粘度が8mm2/sで、グリニャール法により測定した水酸基の量が2.2質量%のシラノール基を含有するシリコーン樹脂を得た。
得られたシリコーン樹脂を250質量部(有効成分100質量部)、
硬化触媒として(C4H9O)Al(OC(CH3)=CHCOOC2H5)2を1質量部、及び
溶剤としてメチルイソブチルケトンを150質量部
混合し、シラノール基を含有する化合物を含む硬化性成分A-1を調製した。
【0109】
[調製例A-2]
(CH3)(CH3O)2SiOSi(OCH3)2(CH3) 50質量部、
(CH3)2Si(OCH3)2 40質量部、及び
(C4H9O)Al(OC(CH3)=CHCOOC2H5)2 10質量部
を混合し、アルコキシ基を含有する化合物を含む硬化性成分A-2を得た。
【0110】
[調製例A-3]
メタクリル酸メチル(MMA)と2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート(HEMA)のランダム共重合体(MMA/HEMA(モル比)=88/12、数平均分子量8,400、OH基含有量0.0011mol/g) 90質量部、
イソホロンジイソシアネート 10質量部、
ジオクチルスズジラウレート 0.1質量部、
テトラヒドロフラン 150質量部、及び
メチルイソブチルケトン 150質量部
を混合し、水酸基を1分子中に平均で9.7個有する化合物とイソシアネート基を2個有する化合物とを含む硬化性成分A-3を得た。
【0111】
[調製例A-4]
ZX-1059(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社)(ビスフェノールA型/F型ジグリシジルエーテル、n=0体の混合物) 100質量部、
熱光酸発生剤(サンアプロ株式会社 TA-100) 1質量部、及び
酢酸ブチル 149質量部
を混合し、エポキシ基を含有する化合物を含む硬化性成分A-4を得た。
【0112】
[(b1)成分の合成]
[合成例1]
乾燥空気雰囲気下、還流装置と攪拌装置を備えた200mL四つ口フラスコ中で、下記式
【化52】
(Rf
1:-CF
2O(CF
2CF
2O)
21.4(CF
2O)
22.5CF
2-、ただし繰り返し単位の値は
19F-NMRより求めた平均値であり、以下の実施例でも同様である。)
で表される化合物と、0.79モル%の下記式
F-Rf
1-F
で表される無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2-1)を含む混合物(I)50.0g(Si-H基0.067mol)、CH
2=CH(CH
2)
6Si(OCH
3)
316.3g(0.070mol)、m-キシレンヘキサフロライド(沸点:116℃)50.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0884g(Pt単体として2.2×10
-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。
1H-NMR及びIRでSi-H基に由来するピークが消失したのを確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。次いで、エバポレーターで100℃/267Paの条件で2時間減圧留去を行うことで、m-キシレンヘキサフロライドと未反応のCH
2=CH(CH
2)
6Si(OCH
3)
3を除去し、下記式で示される化合物(b1-1)と上記無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2-1)0.72モル%とを含む混合物(II-1)56.8gを得た。また、
19F-NMRスペクトルでは-64ppmにm-キシレンヘキサフロライドのCF
3基のピークが観測されず、m-キシレンヘキサフロライド残留量は0質量%であった。
【化53】
【0113】
[合成例2]
合成例1の混合物(II-1)に、下記式の化合物(b2-2)を追加することで、(b2)に該当する成分を混合物中に合計3.0モル%含む混合物(II-2)10.2gを得た。
CF3CF2O(CF2CF2O)20.5(CF2O)22.1CF2CF3
【0114】
[合成例3]
合成例1の混合物(II-1)に、上記式の化合物(b2-2)を追加することで、(b2)に該当する成分を混合物中に合計4.8モル%含む混合物(II-3)10.4gを得た。
【0115】
[合成例4]
乾燥空気雰囲気下、還流装置と攪拌装置を備えた200mL四つ口フラスコ中で、
19F-NMRにより、無官能パーフルオロポリエーテル化合物(b2)に由来するCF
3-基(末端)が検出できないことを確認した下記式
【化54】
(Rf
2:-CF
2O(CF
2CF
2O)
20.9(CF
2O)
21.2CF
2-)
で表される化合物(III)50.0g(Si-H基0.067mol)、CH
2=CH(CH
2)
6Si(OCH
3)
316.3g(0.070mol)、m-キシレンヘキサフロライド50.0g、塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0884g(Pt単体として2.2×10
-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。
1H-NMR及びIRでSi-H基に由来するピークが消失したのを確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。次いで、m-キシレンヘキサフロライドと未反応のCH
2=CH(CH
2)
6Si(OCH
3)
3を除去し、(b2)成分を含まない下記式で表される化合物(IV-I)56.9gを得た。また、ヘキサフルオロベンゼンを標準物質とする
19F-NMRスペクトルのm-キシレンヘキサフロライドのCF
3基のピーク積分値から求めた、m-キシレンヘキサフロライド残留量は0.002質量%であった。
【化55】
【0116】
[表面改質成分(B)の調製]
合成例の混合物(II-1)、(II-2)、(II-3)、化合物(IV-1)及び特開2012-233157号公報に記載の方法に従い合成した下記式で示される化合物(V)を20質量部に対して無希釈もしくは80質量部のMEKを配合して、以下の表1の表面改質成分(B1~7)を調製した。
【化56】
(Rf
2:-CF
2O(CF
2CF
2O)
20.9(CF
2O)
21.2CF
2-)
また、合成例のII-1、II-2及び各溶剤を表2のように配合して、表面改質成分(B8~12)を調製した。
【0117】
【0118】
【0119】
[実施例1~20、比較例1~9]
[含フッ素硬化性組成物の調製及び評価結果]
表3~8に示す配合で本発明の含フッ素硬化性組成物及び本発明に該当しない比較例を調製し、以下に示す方法で、塗工、硬化及び硬化物の評価を行った。なお含フッ素硬化性組成物を調製した時点で白濁が発生したサンプルについては、それ以上の硬化及び評価は行わなかった。
【0120】
[含フッ素硬化性組成物の塗工硬化]
塗工硬化方法(1):
含フッ素硬化性組成物をガラス板上でギャップ24μmのワイヤーバーで塗工し、150℃で1時間静置したのち、室温まで自然冷却させて、硬化被膜を得た。
【0121】
塗工硬化方法(2):
含フッ素硬化性組成物をポリカーボネート板上でギャップ12μmのワイヤーバーで塗工し、25℃の環境下で48時間静置して、硬化被膜を得た。
【0122】
塗工硬化方法(3):
含フッ素硬化性組成物をガラス板上でギャップ18μmのワイヤーバーで塗工し、120℃の環境下で2時間静置したのちに、室温まで自然冷却させて、硬化被膜を得た。
【0123】
塗工硬化方法(4):
含フッ素硬化性組成物をガラス板上に、3,000rpm/30秒でスピンコートし、100℃の環境下で1時間静置したのちに、室温まで自然冷却させて、硬化被膜を得た。
【0124】
評価方法
〔外観〕
目視により塗膜の透明性、欠損の有無を確認した。
【0125】
〔水接触角〕
接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、液量2μLで測定した。
【0126】
〔マジックはじき性〕
マジックはじき性は、ゼブラ社製 ハイマッキー黒 太字を用いて、硬化被膜表面に線を引いたときのはじき具合を目視により確認した。
【0127】
〔指紋拭き取り性〕
指紋を付着させた後、ティッシュペーパーで拭き取った後の外観を目視で判定した。
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】