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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】複合半透膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/70 20060101AFI20230214BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20230214BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20230214BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20230214BHJP
   C08G 77/04 20060101ALI20230214BHJP
   C08G 77/48 20060101ALI20230214BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B01D71/70
B01D71/70 500
B01D69/10
B01D69/12
B01D69/00
C08G77/04
C08G77/48
C08J9/36 CER
C08J9/36 CEZ
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018242769
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2019130518
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】P 2018013477
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24~28年度,国立研究開発法人科学技術振興機構,戦略的創造研究推進事業,チーム型研究(CREST),研究領域「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」,研究課題「多様な水源に対応できるロバストRO/NF膜の開発」,研究題目「シリコン系Robust膜の開発」,委託研究,産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 敏行
(72)【発明者】
【氏名】井上 真一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】大下 浄治
(72)【発明者】
【氏名】都留 稔了
(72)【発明者】
【氏名】山本 一樹
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245419(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136029(WO,A1)
【文献】特開2016-203132(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113541(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/029985(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C08G 77/04
C08G 77/48
C08J 9/36
C01B 33/12
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液と、水又は水溶液とを多孔性支持体上で接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させることにより、シロキサン結合を有する架橋縮合体を含む分離層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む複合半透膜の製造方法であって、 前記複合半透膜は、多孔性支持体の表面に分離層を有する複合半透膜であって、
前記分離層は、シロキサン結合及び-Si-Y-Si-結合(Yは複素環を有する官能基である)を有する架橋縮合体を含む、製造方法
【請求項2】
前記加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、及びイソシアネート基である請求項1に記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項3】
前記有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物を含む請求項1又は2に記載の複合半透膜の製造方法。
【化1】

〔式中、R~Rはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアルケニルオキシ基、炭素数2~12のアシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アミノヒドロキシ基、又はイソシアネート基であり、Xは炭素数1~12の飽和炭化水素基、炭素数2~12の不飽和炭化水素基、複素環を有する官能基、又は-R-NR-R-(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和炭化水素基、又は炭素数2~12の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数2~12のアルケニル基である)である〕
【請求項4】
前記水溶液は、界面活性剤を含む請求項1~3のいずれかに記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項5】
多孔性支持体の表面に分離層を有する複合半透膜であって、
前記分離層は、シロキサン結合及び-Si-Y-Si-結合(Yは複素環を有する官能基である)を有する架橋縮合体を含むことを特徴とする複合半透膜。
【請求項6】
前記分離層の厚みは、400nm以下である請求項5に記載の複合半透膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機-無機ハイブリッド型の分離層が多孔性支持体の表面に形成されている複合半透膜及びその製造方法に関する。かかる複合半透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適であり、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮、浄水や下水用途等での有害成分の除去などの高度処理に用いることができる。また、油田やシェールガス田などにおける排水処理に用いることができる。また、かかる複合半透膜は、混合ガスから特定のガス種を選択的に分離するガス分離膜として用いることができる。また、かかる複合半透膜は、アルコール水溶液からアルコールと水を分離するPV法(浸透気化法)又はVP法(蒸気透過法)用の分離膜として用いることができる。
【背景技術】
【0002】
複合半透膜はその濾過性能や処理方法に応じてRO(逆浸透)膜、NF(ナノ濾過)膜、FO(正浸透)膜と呼ばれ、超純水の製造、海水の淡水化、かん水の脱塩処理、排水の再利用処理などに使用されている。
【0003】
工業的に利用される複合半透膜としては、例えば、ポリアミド系樹脂を含むスキン層が多孔性支持体の表面に形成されている複合半透膜が挙げられる。
【0004】
しかし、前記複合半透膜は、スキン層がポリアミド系樹脂で形成されているため、耐熱性、耐薬品性、及び耐摩耗性に問題がある。
【0005】
一方、シリカなどのセラミック材料から形成される無機膜は、耐熱性、耐薬品性、及び耐摩耗性に優れるため、ロバスト分離膜として期待されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、Si元素などを有する有機-無機ハイブリッド構造を有する分離機能層を備えた水処理分離膜が提案されている。当該分離機能層は、エチレン性不飽和基と加水分解性基を有するケイ素化合物と、エチレン性不飽和基を有する化合物とを含む反応液を多孔質層上に塗布し、加水分解性基を縮合させ、かつエチレン性不飽和基を重合させることによって、これら化合物を高分子量化することにより形成することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2では、(RO)Si-X-Si(OR)で表される化合物と水を含む溶媒とを混合してポリマーゾルを調製するポリマーゾル調製工程と、前記ポリマーゾルを膜状又は中空状の多孔質から構成される耐熱性高分子支持体上に塗布する塗布工程と、焼成して前記耐熱性高分子支持体上に-Si-X-Si-結合を有する無機有機ハイブリッド膜を形成する焼成工程と、を含む分離フィルタの製造方法が提案されている。
【0008】
一方、高分子化合物からなる材料には、その材料ごとに特有のガス透過性がある。その性質に基づいて、特定の高分子化合物から構成された膜によって、特定のガス成分(例えば、二酸化炭素、水素、酸素、窒素、及びメタンなど)を選択的に透過させて分離することができる。当該技術は、例えば、油田のオフガス、ゴミ焼却又は火力発電の排ガス、天然ガス、あるいは石炭をガス化して得られる混合ガス等から二酸化炭素を分離回収する際に利用することができる。
【0009】
例えば、特許文献3では、シロキサン結合を有する化合物を含む樹脂層を有するガス分離膜であって、前記シロキサン結合を有する化合物を含む樹脂層の表面から陽電子を1keVの強さで打ち込んだ場合の第三成分の陽電子寿命τ3が3.40~4.20nsとなるガス分離膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第5110227号明細書
【文献】特開2015-110218号公報
【文献】特開2016-163872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1~3に記載の分離膜(分離フィルタ)の製造方法では、非常に薄くかつ分離性能に優れる分離層を再現性よく支持体上に形成することは難しい。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、非常に薄くかつ分離性能に優れる分離層を再現性よく多孔性支持体の表面に形成することができる複合半透膜の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、多孔性支持体の表面に、非常に薄くかつ分離性能に優れる有機-無機ハイブリッド型の分離層を有する複合半透膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液と、水又は水溶液とを多孔性支持体上で接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させることにより、シロキサン結合を有する架橋縮合体を含む分離層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む複合半透膜の製造方法、に関する。
【0014】
前記加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、及びイソシアネート基であることが好ましい。
【0015】
また、前記有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化1】
〔式中、R~Rはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアルケニルオキシ基、炭素数2~12のアシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アミノヒドロキシ基、又はイソシアネート基であり、Xは炭素数1~12の飽和炭化水素基、炭素数2~12の不飽和炭化水素基、複素環を有する官能基、又は-R-NR-R-(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和炭化水素基、又は炭素数2~12の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数2~12のアルケニル基である)である〕
【0016】
また、前記水溶液は、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明は、多孔性支持体の表面に分離層を有する複合半透膜であって、
前記分離層は、シロキサン結合及び-Si-R-NR-R-Si-結合(R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和炭化水素基、又は炭素数2~12の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数2~12のアルケニル基である)を有する架橋縮合体を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、多孔性支持体の表面に分離層を有する複合半透膜であって、
前記分離層は、シロキサン結合及び-Si-Y-Si-結合(Yは複素環を有する官能基である)を有する架橋縮合体を含むことを特徴とする。
【0019】
前記分離層の厚みは、500nm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の複合半透膜の製造方法は、前記有機ケイ素化合物を、有機溶液と、水又は水溶液との界面で重縮合させることを特徴としている。それにより、非常に薄くかつ分離性能に優れる分離層を多孔性支持体の表面に形成することができる。また、本発明の複合半透膜の製造方法は、複雑でテクニカルな工程を必要とせず、簡易な方法で分離層を形成することができるため、複合半透膜を安価で大量生産できるだけでなく、複合半透膜の性能のばらつきを抑制することができるという利点がある。また、本発明の複合半透膜の分離層は、非常に薄く、シロキサン結合及び-Si-R-NR-R-Si-結合を有する架橋縮合体、又はシロキサン結合及び-Si-Y-Si-結合(Yは複素環を有する官能基である)を有する架橋縮合体で形成されているため、本発明の複合半透膜は、分離性能、耐熱性、耐薬品性、及び耐摩耗性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で作製した複合半透膜の断面のSEM写真である。
図2】実施例2で作製した複合半透膜の断面のSEM写真である。
図3】比較例1で作製した複合半透膜の断面のSEM写真である。
図4】実施例1で作製した複合半透膜の表面のEDX測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の複合半透膜の製造方法は、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液と、水又は水溶液とを多孔性支持体上で接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させることにより、シロキサン結合を有する架橋縮合体を含む分離層を多孔性支持体の表面に形成する工程を含む。
【0023】
本発明においては、分離層の材料として、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を使用する。前記有機ケイ素化合物は、1種用いてもよく、反応性官能基が異なるものを2種以上用いてもよい。
【0024】
前記有機ケイ素化合物は、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を3つ以上有するものであればよく、その他の構造は特に制限されない。
【0025】
前記加水分解性基は特に制限されず、公知の加水分解性基であってよく、例えば、水素、ハロゲン、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、及びイソシアネート基が挙げられる。ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられるが、好ましくは塩素である。アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~12のものが挙げられ、好ましくは炭素数1~4のものである。アルケニルオキシ基としては、例えば、炭素数2~12のものが挙げられ、好ましくは炭素数2~4のものである。アシルオキシ基としては、例えば、炭素数2~12のものが挙げられ、好ましくは炭素数2~5のものである。アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などが挙げられる。ケトオキシム基としては、例えば、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、及びジエチルケトオキシム基などが挙げられる。アミノヒドロキシ基としては、例えば、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、及びメチルエチルアミノヒドロキシ基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、例えば、炭素数1~4のモノアルキルアミノ基、炭素数1~4のジアルキルアミノ基が挙げられる。これらのうち、反応性等の観点から、塩素、アルコキシ基、アミノ基、及びアシルオキシ基が特に好ましい。
【0026】
前記有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。特に、前記有機ケイ素化合物として下記一般式(1)で表され、かつXが-R-NR-R-である化合物を用いることにより、シロキサン結合及び-Si-R-NR-R-Si-結合を有する架橋縮合体を含む分離層を形成することができ、分離性能、耐熱性、耐薬品性、及び耐摩耗性がより優れる複合半透膜を得ることができる。また、前記有機ケイ素化合物として下記一般式(1)で表され、かつXが複素環を有する官能基である化合物を用いることにより、シロキサン結合及び-Si-Y-Si-結合(Yは複素環を有する官能基である)を有する架橋縮合体を含む分離層を形成することができ、分離性能、耐熱性、耐薬品性、及び耐摩耗性がより優れる複合半透膜を得ることができる。
【化2】
〔式中、R~Rはそれぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアルケニルオキシ基、炭素数2~12のアシルオキシ基、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、アミノヒドロキシ基、又はイソシアネート基であり、Xは炭素数1~12の飽和炭化水素基、炭素数2~12の不飽和炭化水素基、複素環を有する官能基、又は-R-NR-R-(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~12の飽和炭化水素基、又は炭素数2~12の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、炭素数1~12のアルキル基、又は炭素数2~12のアルケニル基である)である〕
【0027】
前記式中、アルキル基は炭素数2~4であることが好ましく、アルコキシ基は炭素数1~4であることが好ましく、アルケニルオキシ基は炭素数2~4であることが好ましく、アシルオキシ基は炭素数2~5であることが好ましい。ハロゲン、アリールオキシ基、ケトオキシム基、アルキルアミノ基、及びアミノヒドロキシ基としては、前記で例示したものが挙げられる。また、前記Xにおいて、透水性の観点から、飽和炭化水素基は炭素数1~4であることが好ましく、不飽和炭化水素基は炭素数2~4であることが好ましい。
【0028】
また、前記複素環を有する官能基において、複素環は特に制限されず、公知の複素環であってよく、例えば、ピロリジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、トリアゾール環、ピペリジン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、インドール環、ベンゾトリアゾール環、及びキノリン環などの窒素含有複素環;テトラヒドロフラン環、フラン環、ジオキソラン環、テトラヒドロピラン環、及びジオキサン環などの酸素含有複素環;テトラヒドロチオフェン環、チオフェン環、及びテトラヒドロチオピラン環などの硫黄含有複素環;オキサゾール環、及びモルホリン環などの窒素及び酸素含有複素環などが挙げられる。これらのうち、反応性と親水性の観点から、窒素含有複素環が好ましい。前記官能基は、前記複素環とSiとを連結する連結基を有してもよい。前記連結基は特に制限されず、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基、アルケニレン基、及びアルケニレンオキシ基などが挙げられる。
【0029】
また、前記-R-NR-R-において、透水性の観点から、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1~4の飽和炭化水素基、又は炭素数2~4の不飽和炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~4の飽和炭化水素基である。また、前記-R-NR-R-において、透水性の観点から、Rは水素、又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素である。
【0030】
前記一般式(1)で表される化合物において、R~Rのうちの2つ以上が炭素数1~4のアルコキシ基であり、かつR~Rのうちの2つ以上が炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましく、R~Rのすべてが炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0031】
前記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、ビス((トリメトキシシリル)メチル)アミン、ビス((トリエトキシシリル)メチル)アミン、ビス((2-トリメトキシシリル)エチル)アミン、ビス((2-トリエトキシシリル)エチル)アミン、ビス((3-トリメトキシシリル)プロピル)アミン、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン、ビス((トリメトキシシリル)メチル)メチルアミン、ビス((トリエトキシシリル)メチル)メチルアミン、ビス(1-(トリメトキシシリル)エチル)アミン、ビス(1-(トリエトキシシリル)エチル)アミン、ビス((4-トリメトキシシリル)ブチル)アミン、ビス((4-トリエトキシシリル)ブチル)アミン、1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール、4,6-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)ピリミジン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、及び1,2-ビス(トリエトキシシリル)エテンなどが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、本発明においては、緻密な架橋構造を有する架橋縮合体を得るために、前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物のみを用いることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を2つ有する有機ケイ素化合物を併用してもよい。前記有機ケイ素化合物は、加水分解性基及び水酸基から選択される少なくとも1種の反応性官能基を2つ有するものであればよく、その他の構造は特に制限されない。前記反応性官能基は特に制限されず、前記で例示したものが挙げられる。
【0033】
前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物と前記反応性官能基を2つ有する有機ケイ素化合物とを併用する場合は、これらの全体中に前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を20重量%以上用いることが好ましく、より好ましくは50重量%以上であり、更に好ましくは70重量%以上であり、より更に好ましくは80重量%以上であり、特に好ましくは90重量%以上である。
【0034】
前記多孔性支持体は、分離層を支持しうるものであれば特に限定されない。多孔性支持体の形成材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ボリフッ化ビニリデンなど種々のものを挙げることができるが、特に化学的、機械的、熱的に安定である点からポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンが好ましく用いられる。かかる多孔性支持体の厚さは、通常50~500μm程度、好ましくは100~200μmであるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。なお、多孔性支持体は織布、不織布等の基材による裏打ちにて補強されていてもよい。
【0035】
前記多孔性支持体は、対称構造でも非対称構造でもよいが、分離層の支持機能と通液性を両立させる観点から、非対称構造が好ましい。なお、多孔性支持体の分離層形成側面の平均孔径は0.01~0.5μmであることが好ましい。
【0036】
また、多孔性支持体として、エポキシ樹脂多孔シートを用いてもよい。エポキシ樹脂多孔シートの平均孔径は0.01~0.4μmであることが好ましい。
【0037】
前記分離層は、界面重縮合法により前記多孔性支持体の表面に形成する。具体的には、前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液と、水又は水溶液とを前記多孔性支持体上で接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させる。それにより、シロキサン結合を有する架橋縮合体を含む分離層を前記多孔性支持体の表面に形成することができる。
【0038】
本発明の製造方法においては、水又は水溶液と前記多孔性支持体とを接触させて前記多孔性支持体上に水被膜を形成し、次いで当該水被膜と前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液とを接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させる方法(方法A)を採用してもよく、前記反応性官能基を3つ以上有する有機ケイ素化合物を含む有機溶液と前記多孔性支持体とを接触させて前記多孔性支持体上に有機溶液被膜を形成し、次いで当該有機溶液被膜と、水又は水溶液とを接触させて前記有機ケイ素化合物を界面重縮合させる方法(方法B)を採用してもよいが、好ましくは方法Aである。前記接触方法は特に制限されず、例えば、前記多孔性支持体上又は前記形成した被膜上に前記溶液や水を塗布、噴霧、又はシャワーする方法、前記多孔性支持体表面又は前記形成した被膜表面を、前記溶液や水を含む浴中に浸漬する方法などが挙げられる。
【0039】
前記有機溶液の有機溶媒としては、水に対する溶解度が低く、多孔性支持体を劣化させず、前記有機ケイ素化合物を溶解するものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びノナン等の飽和炭化水素、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン等のハロゲン置換炭化水素などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、飽和炭化水素を用いることが好ましい。
【0040】
前記有機溶液中の前記有機ケイ素化合物の濃度は特に制限されないが、1~20重量%であることが好ましく、より好ましくは3~5重量%である。前記有機ケイ素化合物の濃度が1重量%未満の場合には、塩阻止率が低くなる傾向にある。一方、前記有機ケイ素化合物の濃度が20重量%を超える場合には、水透過係数が低くなる傾向にある。
【0041】
前記有機溶液及び/又は水溶液には、界面重縮合を促進させたり、得られる複合半透膜の分離性能を向上させるために、各種の添加剤を加えてもよい。前記添加剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、触媒、中和剤などが挙げられる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の製造方法においては、前記有機溶液と、水又は水溶液との接触後、多孔性支持体上の過剰な溶液を除去し、多孔性支持体上の形成膜を加熱することが好ましい。それにより、前記有機ケイ素化合物の重縮合を促進させることができ、分離層の機械的強度や耐熱性等を高めることができる。加熱温度は、通常60~150℃程度であり、好ましくは100~150℃であり、より好ましくは130~150℃である。加熱時間は、通常1~60分程度であり、好ましくは1~30分であり、より好ましくは5~15分である。
【0043】
分離層の厚みは特に制限されないが、400nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下であり、さらに好ましくは200nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは60nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。
【0044】
本発明の複合半透膜はその形状になんら制限を受けるものではない。すなわち平膜状、あるいはスパイラルエレメント状など、考えられるあらゆる膜形状が可能である。また、複合半透膜の塩阻止性、透水性、及び耐酸化剤性等を向上させるために、従来公知の各種処理を施してもよい。
【0045】
また、加工性や保存性に優れているという観点から、乾燥タイプの複合半透膜としてもよい。乾燥処理を行う際に、複合半透膜はその形状になんら制限を受けるものではない。すなわち平膜状、あるいはスパイラル状など、考えられるあらゆる膜形状において乾燥処理を施すことが可能である。例えば、複合半透膜をスパイラル状に加工して膜ユニットを作製し、該膜ユニットを乾燥してドライスパイラルエレメントを作製してもよい。
【実施例
【0046】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0047】
〔測定方法〕
(RO試験における水透過係数及び塩阻止率の測定)
作製した平膜状の複合半透膜を所定の形状、サイズに切断し、平膜評価用のセルにセットした。2000mg/LのNaClを含みかつNaOHを用いてpH6.5~7に調整した水溶液を25℃で膜の供給側と透過側に1.5MPaの差圧を与えて膜に30分接触させた。この操作によって得られた透過水の透過速度および電導度を測定し、水透過係数(m/m・Pa・s)および塩阻止率(%)を算出した。塩阻止率は、NaCl濃度と水溶液電導度の相関(検量線)を事前に作成し、それらを用いて下式により算出した。
塩阻止率(%)={1-(透過液中のNaCl濃度[mg/L])/(供給液中のNaCl濃度[mg/L])}×100
【0048】
(ガス透過試験における単ガス透過速度及びガス分離係数の測定)
作製した平膜状の複合半透膜を所定の形状、サイズに切断し、平膜ガス透過試験セルにセットした。単ガス(窒素、水素、メタン、炭酸ガス)を供給ガス圧力105kPaで供給し、透過ガスの体積を測定した。操作温度は25℃であった。この操作によって得られた値から、各単ガスの透過速度(mol/m・Pa・s)及び膜のガス分離係数(対CO)を算出した。
ガス分離係数(対CO)=(単ガス透過速度/COの単ガス透過速度)
【0049】
(VP試験における水透過速度及び分離係数の測定)
作製した平膜状の複合半透膜を所定の形状、サイズに切断し、平膜VP評価用のセルにセットした。供給液タンクに水10wt%及びIPA90wt%のIPA水溶液を入れた。IPA水溶液の一部を105℃に加熱してガス状にして、当該ガスを複合半透膜の表面に連続的に供給した。非透過ガスは冷却液化させて供給液タンクに戻して循環させた。供給液タンクはベント口により大気圧解放を維持させた。また、透過側を真空ポンプにて1kPaにて吸引し、透過ガスを液体窒素を用いたトラップに捕集し、所定時間に捕集された液体の重量を測定した。供給側及び透過側の濃度測定はガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-14B)を用いて組成分析を行った。この操作によって得られた値から水透過速度(kg/m・h)及び膜の分離係数を算出した。
分離係数=(透過側水濃度/透過側IPA濃度)/(供給側水濃度/供給側IPA濃度)
【0050】
実施例1
多孔性ポリスルホン支持体(Psf)(日東電工株式会社製、非対称膜、薄膜形成側平均孔径20nm)をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン(BTESPA)(和光純薬工業(株)製)5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは約20nmであった(図1参照)。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された(図4参照)。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
実施例2
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン(BTESPA)(和光純薬工業(株)製)5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは約60nmであった(図2参照)。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記各試験を行った。結果を表1~3に示す。
【0052】
実施例3
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.15重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン(BTESPA)(和光純薬工業(株)製)5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは約100nmであった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
実施例4
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン(BTESPA)(和光純薬工業(株)製)2.5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは約100nmであった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
ビス(トリエトキシシリル)エタン(BTESE)を含有するエタノール溶液に60当量の水を加え、室温で2時間撹拌して、ビス(トリエトキシシリル)エタン5重量%を含有するゾルを調製した。DLSで前記ゾルの粒子径が2~3nmであることを確認した。その後、ビス(トリエトキシシリル)エタンの濃度が1重量%になるようにエタノールで前記ゾルを希釈し、密閉して4℃の冷蔵庫に保管した。その後、前記ゾルを多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))上にコートし、窒素気流下で150℃で10分間加熱して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは約470nmであった(図3参照)。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
実施例5
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリメトキシシリル)プロピル)アミン(和光純薬工業(株)製)5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは120nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0059】
実施例6
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、ビス((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミン(和光純薬工業(株)製)と1,2-ビス(トリエトキシシリル)エテン(Gelest社製)のモル比1:1の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0060】
実施例7
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール(K. Yamamoto, M. Kanezashi, T. Tsuru, J. Ohshita, Polymer Journal, 2017, 49, 401-406)と1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(和光純薬工業(株)製)のモル比1:10の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0061】
実施例8
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール(K. Yamamoto, M. Kanezashi, T. Tsuru, J. Ohshita, Polymer Journal, 2017, 49, 401-406)と1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(和光純薬工業(株)製)のモル比1:5の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0062】
実施例9
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール(K. Yamamoto, M. Kanezashi, T. Tsuru, J. Ohshita, Polymer Journal, 2017, 49, 401-406)と1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン(和光純薬工業(株)製)のモル比1:3の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0063】
実施例10
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール(K. Yamamoto, M. Kanezashi, T. Tsuru, J. Ohshita, Polymer Journal, 2017, 49, 401-406)と1,2-ビス(トリエトキシシリル)エテン(Gelest社製)のモル比1:5の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0064】
実施例11
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した1,4-ビス((トリエトキシシリル)メチル)-1,2,3-トリアゾール(K. Yamamoto, M. Kanezashi, T. Tsuru, J. Ohshita, Polymer Journal, 2017, 49, 401-406)とトリエトキシビニルシラン(和光純薬工業(株)製)のモル比1:3の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0065】
実施例12
多孔性ポリエーテルスルホン支持体(日東電工株式会社製、NTR7430、非対称膜、NaCl阻止率30%(評価条件:0.2%NaCl水溶液、操作圧力10kgf/cm、pH6.5、25℃))をステンレス製の型枠に装着した。ドデシル硫酸ナトリウム(SLS)(和光純薬工業(株)製)0.03重量%を含有する水溶液を前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に塗布した後、型枠を傾けて余分な水溶液を除去して前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に水被膜を形成した。次に、文献に従って合成した4,6-ビス(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)ピリミジン(L. Yu, M. Kanezashi, H. Nagasawa, J. Ohshita, A. Naka, T. Tsuru, Industrial & Engineering Chemistry Research, 2017, 56, 1316-1326)とトリエトキシビニルシラン(和光純薬工業(株)製)のモル比1:1の混合物5重量%を含有するヘキサン溶液を前記水被膜上に塗布し、5分間静置した。その後、型枠を傾けて余分な溶液を除去し、ドライヤーで形成膜の表面を乾燥させ、さらに150℃の乾燥機中で10分間静置して、前記多孔性ポリエーテルスルホン支持体上に分離層を形成して複合半透膜を作製した。SEMで観察したところ、前記分離層の厚さは100nm以下であった。前記分離層の表面をEDXで測定したところ、Siの存在が確認された。作製した複合半透膜を用いて前記RO試験を行った。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の複合半透膜は、超純水の製造、かん水または海水の脱塩などに好適であり、また染色排水や電着塗料排水などの公害発生原因である汚れなどから、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去・回収し、排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途などで有効成分の濃縮、浄水や下水用途等での有害成分の除去などの高度処理に用いることができる。また、油田やシェールガス田などにおける排水処理に用いることができる。また、本発明の複合半透膜は、混合ガスから特定のガス種を選択的に分離するガス分離膜として用いることができる。また、かかる複合半透膜は、アルコール水溶液からアルコールと水を分離するPV法(浸透気化法)又はVP法(蒸気透過法)用の分離膜として用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1:分離層
2:多孔性ポリスルホン支持体
3:ポリエーテルスルホン層(NF膜)
図1
図2
図3
図4