(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】干渉計測システムの補償光学系
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02055 20220101AFI20230214BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20230214BHJP
G01B 9/02056 20220101ALI20230214BHJP
【FI】
G01B9/02055
G01B11/24 D
G01B9/02056
(21)【出願番号】P 2020518086
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2018075650
(87)【国際公開番号】W WO2019063437
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】102017217369.6
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン へッツラー
(72)【発明者】
【氏名】ステファン シュルツ
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-011308(JP,A)
【文献】特表2015-535930(JP,A)
【文献】特開平09-033228(JP,A)
【文献】特開平05-034107(JP,A)
【文献】特開2002-257525(JP,A)
【文献】特開平05-034108(JP,A)
【文献】特開平05-001970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00- 9/10
G01B 11/00-11/30
G01M 11/00-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの補償光学ユニットであって、該補償光学ユニットは、前記光学面の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する前記被検物に向けた測定波を、入力波から生成するよう構成され、該補償光学ユニットは、
第1光学素子と、前記入力波のビーム経路内で前記第1光学素子の下流に配置された第2光学素子と
を含み、前記第1光学素子の屈折力及び前記第2光学素子の屈折力は同じ符号を有し、
前記第2光学素子は、少なくとも2つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子を含み且つ前記入力波を前記第1光学素子との相互作用後に測定波及び参照波に分割するよう構成された回折光学素子であり、
前記入力波の波面から前記測定波の前記少なくとも部分的に適合された波面を生成するための該補償光学ユニット全体の屈折力のうち20%以上が、前記第1光学素子に割り当てられ、前記第1光学素子に割り当てられた屈折力は、該補償光学ユニット全体の前記屈折力と同じ符号を有
し、前記第1光学素子を透過した入力波は、前記目標形状に近似的に適合し発散光又は収束光である近似入力波となる補償光学ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の補償光学ユニットにおいて、
前記第2光学素子は、基板と、前記入力波を前記測定波及び前記参照波に分割するよう構成され且つ前記第1光学素子との相互作用により前記光学面の前記目標形状に近似適合された前記入力波の前記波面を前記目標形状によりよく適合させるよう構成された回折構造とを含む補償光学ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の補償光学ユニットにおいて、
前記第2光学素子の前記基板は対向する2つの表面を含み、前記回折構造はさらに前記入力波を前記測定波及び前記参照波に分割するよう構成され、前記回折構造は前記基板の前記2つの表面の一方にのみ配置される補償光学ユニット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の補償光学ユニットにおいて、前記第2光学素子は、前記第1光学素子との相互作用後の前記入力波から反射で前記参照波を生成するよう構成される補償光学ユニット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の補償光学ユニットにおいて、前記第2光学素子は、前記第1光学素子との相互作用後の前記入力波から前記測定波及び前記参照波に加えて較正波の形態の少なくとも2つのさらなる波を生成するよう構成される補償光学ユニット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の補償光学ユニットにおいて、前記第1光学素子は、幾何光学で記述することができる光学素子である補償光学ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の補償光学ユニットにおいて、前記第1光学素子は少なくとも1つの非球面光学面を含む補償光学ユニット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の補償光学ユニットにおいて、前記第1光学素子は回折光学素子である補償光学ユニット。
【請求項9】
干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムであって、請求項1~8のいずれか1項に記載の補償光学ユニットと、入力波を供給する光源と、前記被検物との相互作用後の測定波及び参照波の重畳により生成されるインターフェログラムを取得する取得デバイスとを備えた計測システム。
【請求項10】
請求項9に記載の計測システムにおいて、
前記第2光学素子は、前記第1光学素子との相互作用後の前記入力波から透過で前記参照波を生成するよう構成され、前記参照波は、前記測定波の伝播方向からずれた伝播方向を有し、該計測システムはさらに、前記参照波のビーム経路に配置され且つ前記参照波を再帰反射するよう具現された反射光学素子を備える計測システム。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の計測システムにおいて、
前記入力波は、前記第1光学素子との相互作用後に球面波からの偏差が10μm以下である計測システム。
【請求項12】
干渉法により被検物の光学面の形状を測定する方法であって、
入力波を供給するステップと、
前記入力波を補償光学ユニットに放射することにより参照波及び前記光学面の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する前記被検物に向けた測定波を生成するステップであり、前記補償光学ユニットは、前記入力波のビーム経路に配置された第1光学素子と、前記入力波の前記ビーム経路内で下流に配置された回折光学素子の形態の第2光学素子とを含み、該第2光学素子は、前記第1光学素子との相互作用後に前記入力波が前記回折光学素子により前記測定波及び前記参照波に分割されるように、少なくとも2つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子を含み、
前記第1光学素子の屈折力及び前記第2光学素子の屈折力は同じ符号を有し、且つ
前記測定波の生成に適用される前記補償光学ユニット全体の屈折力のうち20%以上が、前記第1光学素子に割り当てられ、該第1光学素子に割り当てられた屈折力は、前記補償光学ユニット全体の前記屈折力と同じ符号を有
し、前記第1光学素子を透過した入力波は、前記目標形状に近似的に適合し発散光又は収束光である近似入力波となるステップと、
前記被検物との相互作用後の前記測定波と前記参照波との重畳により生成されるインターフェログラムを取得するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年9月29日に出願された独国特許出願第10 2017 217 369.6号の優先権を主張する。この特許出願の全開示を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、干渉法により被検物の光学面の形状を測定するのに用いられる計測システムの補償光学ユニットと、かかる補償光学ユニットを有する計測システムと、干渉法により被検物の光学面の形状を測定する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
被検物、例えばマイクロリソグラフィ露光装置の投影レンズの光学素子の表面形状を高精度で干渉計測するには、いわゆるゼロ光学系又は補償光学ユニットとして回折光学装置を用いることが多い。この場合、測定波の波面は、表面の目標形状に全ての場所で垂直に入射してそのまま反射し戻るような形で回折素子により目標形状に適合される。目標形状からの偏差は、反射したテスト波に参照波を重ねることにより求めることができる。用いられる回折素子は、例えば計算機ホログラム(CGH)であり得る。
【0004】
特許文献1には、複素符号化CGH(complex coded CGH)を有するこのような計測システムが記載されている。最初にフィゾー素子を用いて光波が参照波及びテスト波に分割される。テスト波は、続いて複素符号化CGHにより表面の目標形状に適合された波面を有するテスト波と球面又は平面波面を有する較正波とに分割される。この目的で、CGHは、適当に具現された回折構造を有する。較正波を用いてCGHが較正される。その後、被検物がテスト位置に配置され、テスト波を用いて測定が実行される。テスト波は、被検物の表面で反射してCGHにより変換し戻され、フィゾー素子を通過した後に参照波が重畳される。平面で取得されたインターフェログラムから表面の形状を測定することが可能である。ここで、CGHの較正により非常に高い精度が得られる。
【0005】
しかしながら、既知の干渉計測システムを用いて高精度表面を計測する際の1つの問題は、干渉計のCGH又は他の光学素子の光学特性の変化が較正と被検物のその後の計測との間に起こり得ることである。こうした変化は、特に温度変化により引き起こされる。石英基板を用いたCGHの場合、特に石英の屈折率の温度依存性によりmK範囲の不均一な温度変化さえもが較正後の計測精度の低下を引き起こし得る。
【0006】
さらなる問題は、CGHの回折構造の絶対精度に対する要求が高まり続けていることにある。対応する縞パターンは、限られた精度でしか製造することができない。高開口数の被検面の計測に必要な高いCGH縞密度の場合、例えば略完全な2値ステッププロファイルの場合でも電気磁気効果が起こり続け、回折縞パターンの精度を制限する。これに関して、高開口数の被検面は、開口角αが40°以上、特に70°以上の表面を意味すると理解される。高NAのEUVリソグラフィ装置は、このような高開口数表面を有するミラーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第10 2012 217 800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題を解決し、特に高開口数の被検面の表面形状を高精度で測定することができる、干渉計測システムの補償光学ユニット及び最初に記載したタイプの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的は、本発明によれば、例えば、干渉法により被検物の光学面の形状を測定するのに用いられる計測システムの補償光学ユニットにより達成することができる。上記補償光学ユニットは、光学面の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する被検物に向けた測定波を、入力波から生成するよう構成される。補償光学ユニットは、第1光学素子と、入力波のビーム経路内で第1光学素子の下流に配置された第2光学素子とを含む。第2光学素子は、入力波を第1光学素子との相互作用後に測定波及び参照波に分割するよう構成された回折光学素子である。入力波の波面から測定波の少なくとも部分的に適合された波面を生成するための補償光学ユニット全体の屈折力のうち20%以上、特に50%以上又は90%以上が、第1光学素子に割り当てられ、第1光学素子に割り当てられた屈折力は、補償光学ユニット全体の屈折力と同じ符号を有する。
【0010】
残りの屈折力は、補償光学ユニットの残りの光学素子に、特に第1及び第2光学素子以外の光学素子が補償光学ユニットに設けられていない場合には第2光学素子のみに割り当てられる。第1光学素子に割り当てられた屈折力は、補償光学ユニット全体の屈折力と同じ符号を有する。すなわち、補償光学ユニット全体が測定波の生成時に発散機能(負の屈折力)を有するか収束機能(正の屈折力)を有するかに応じて、第1光学素子も発散機能(発散レンズ素子)又は収束機能(収束レンズ素子)を有する。
【0011】
既知のように、光学ユニットの屈折力Dは、光学素子の焦点距離fの逆数(D=1/f)で定義される。光学素子の焦点距離fの定義は、平面波を放射されたときに光学ユニットが生成する球面波の焦点の、光学ユニットから測定した距離を指す。球面成分及び非球面成分の両方有する波を生成する光学ユニットの場合、光学ユニットの屈折力は、球面成分のみから計算される。結果として、純粋に非球面の光学ユニット、すなわち平面波を放射されたときに球面成分を含まない非球面波を生成する光学ユニットは、屈折力が0である。
【0012】
第2光学素子が入力波のビーム経路内で第1光学素子の下流に配置されるという記載は、入力波の少なくとも個々の光線が両方の光学素子と相互作用するように2つの光学素子が配置されることを意味すると理解されたい。
【0013】
入力波のビーム経路に2つの光学素子を連続して配置すること、及び補償光学ユニット全体のうち第1光学素子の屈折力を20%以上とすることにより、第2光学素子と称する回折光学素子に割り当てられた屈折力が低減される。したがって、回折光学素子の回折構造の縞密度を減らすことができる。このように縞密度が低い回折構造の場合、製造上の不正確さはあまり重要でない。特に、回折構造の精度を制限する電気磁気効果が少ない。したがって、本発明による補償光学ユニットにより高開口数の被検面を精度よく測定することができる。
【0014】
入力波を第1光学素子との相互作用後に測定波及び参照波に分割するよう第2光学素子を構成することにより、入力波を測定波及び参照波に分割するためのフィゾー素子等の別個のビームスプリッタを省くことができる。被検光学面との相互作用後に、同じ回折光学素子を用いて参照波を測定波に重畳させる。結果として、回折光学素子の偏差、例えば石英基板の屈折率の温度起因偏差等が、測定波及び参照波の両方に作用する。参照波が測定波に重畳されると、これらの誤差の大部分が補償されることで、干渉計測システムの計測精度のさらなる改善につながる。
【0015】
一実施形態によれば、第2光学素子は、基板と、入力波を測定波及び参照波に分割するよう構成され且つ第1光学素子との相互作用により光学面の目標形状に近似適合された入力波の波面を目標形状によりよく(improved)適合させるよう構成された回折構造とを含む。よりよい適合とは特に細かい適合であり、この過程で非球面又は球面波面変更を行うことができる。これに関して、よりよい適合又は細かい適合は、近似適合よりもかなり精密な適合、特に少なくとも1オーダ高い精度の適合であると理解されたい。したがって、特に、近似適合は球面成分にのみ影響を及ぼし得るが、よりよい適合は、回転対称及び/又は非回転対称部分を有し得る非球面成分に関する。
【0016】
一変形実施形態によれば、第2光学素子の基板は対向する2つの表面を含み、回折構造はさらに入力波を測定波及び参照波に分割するよう構成され、回折構造は基板の2つの表面の一方にのみ配置される。別の表現をすると、第2光学素子の2つの機能は、基板の単一の表面に配置された回折構造により提供される。
【0017】
さらに別の実施形態によれば、第2光学素子は、第1光学素子との相互作用後の入力波から反射で参照波を生成するよう構成される。特に、参照波は、第1光学素子に入射した入力波のビーム経路を逆戻りするように生成され、すなわち、参照波はリトロー反射で生成される。これに対して、測定波は第2光学素子を通過する。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、第2光学素子は、少なくとも2つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子を含む。別の表現をすると、第2光学素子は、多重符号化(multiply coded)回折光学素子又は多重符号化CGHである。したがって、第2光学素子は、1つの平面で重畳配置された2つの回折構造パターンを有する。特に、第1位相関数は、入力波を第1光学素子との相互作用後に測定波及び参照波に分割するよう構成され、第2位相関数は、測定波の少なくとも部分的に適合された波面を生成するために第2光学素子に割り当てられた屈折力を提供するよう構成される。
【0019】
代替的な実施形態によれば、第2光学素子は、1次の回折次数の測定波を生成し且つ別の回折次数の参照波を生成するよう具現される。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、第2光学素子は、第1光学素子との相互作用後の入力波から透過で参照波を生成するよう構成される。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、第2光学素子は、第1光学素子との相互作用後の入力波から測定波及び参照波に加えて較正波の形態の少なくとも1つのさらなる波を生成するよう構成される。少なくとも1つのさらなる較正波は、第2光学素子の回折構造の誤差の較正に用いられ、一変形実施形態によれば球面波面を有し得る。一変形実施形態によれば、第2光学素子は、それぞれが較正波の形態の少なくとも3つのさらなる波を生成するよう構成される。一変形実施形態によれば、3つの較正波は、それぞれ伝播方向が異なる球面波である。
【0022】
少なくとも1つの較正波を生成するために、第2光学素子は、少なくとも3つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子であり得る。3つの較正波が生成される場合、上記第2光学素子は、5つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子、すなわち5重符号化(five-times coded)回折光学素子であり得る。
【0023】
3つの球面較正波を用いる変形実施形態では、第2光学素子を較正する後述の手順を利用することができる。この場合、球面較正波に適宜適合された較正球面が、較正波の各ビーム経路に連続して配置され、それぞれが干渉法により計測される。干渉計測結果は、続いて球面較正波のそれぞれに関する較正計測データとして評価デバイスに記憶される。測定波による被検物の光学面のその後の計測中に、その過程で得られた計測データは、記憶されている較正計測データを考慮して評価デバイスにより評価される。球面較正波の計測中に得られた較正計測データが考慮されるので、第2光学素子の製造誤差を被検面の計測結果で補正することができ、その結果として被検面の形状を高精度で測定することができる。
【0024】
結果として、第2光学素子の回折構造パターンの歪み誤差の明示的測定をなくすことが可能である。3つの球面波での被検面の形状計測の較正を選択できることで、高精度を達成することが可能になる。その理由は特に、回折構造パターンの形状又はプロファイル偏差が球面較正波及び測定波で非常に似た偏差を発生させるからである。したがって、これらの形状又はプロファイル偏差の大部分を較正することができる。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、第1光学素子は、幾何光学で記述することができる光学素子である。特に、第1光学素子は、レンズ素子又はミラーとして具現される。ここで、幾何光学で記述することができる光学素子は、例えばレンズ素子又はミラーの場合のように光波に対する効果を幾何光学で記述可能な光学素子を意味すると理解されたい。したがって、このような幾何光学で記述可能な光学素子は、波動光学(wavediv optics)を用いて効果を記述可能な回折光学素子ではない。
【0026】
一変形実施形態によれば、第1光学素子は、少なくとも1つの非球面光学面を含む。第1光学素子がレンズ素子である場合、レンズ素子の表面の少なくとも1つは非球面の実施形態を有する。第1光学素子がミラーである場合、ミラーの表面は非球面の実施形態を有する。ここで、非球面は、特に、任意の理想球面からの偏差が10μm以上、特に20μm以上である表面を意味すると理解されたい。別の表現をすると、非球面は、全ての理想球面からの少なくとも1つの点での偏差が10μm以上である。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、第1光学素子は回折光学素子である。一変形実施形態によれば、第1光学素子は多段CGH、すなわち多段位相格子、特にブレーズド格子を有するCGHである。いわゆるブレーズド格子は、そのプロファイルが傾斜面で表されるほど多くの段を有する多段位相格子である。
【0028】
さらに別の変形実施形態によれば、第1光学素子は、露光ホログラム、すなわちホログラフィック露光により作製された回折光学素子である。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、第1光学素子の屈折力及び第2光学素子の屈折力は同じ符号を有する。別の表現をすると、2つの光学素子の対応する屈折力は、いずれの場合も正又はいずれの場合も負であり、すなわち両方の光学素子それぞれが収束又は発散光学効果を有する。
【0030】
本発明によれば、上記実施形態又は変形実施形態の1つによる補償光学ユニットを備えた干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムがさらに提供される。計測システムは、入力波を供給する光源と、被検物との相互作用後の測定波及び参照波の重畳により生成されるインターフェログラムを取得する取得デバイスとを備える。
【0031】
一実施形態によれば、第2光学素子は、第1光学素子との相互作用後の入力波から透過で参照波を生成するよう構成され、上記参照波は、測定波の伝播方向からずれた伝播方向を有し、計測システムはさらに、参照波のビーム経路に配置され且つ参照波を再帰反射する(reflect back)よう具現された反射光学素子を備える。
【0032】
計測システムのさらに別の実施形態によれば、入力波は、第1光学素子との相互作用後に球面波からの偏差が10μm以下、特に5μm以下である。
【0033】
例として、上記問題は、本発明によれば、干渉法により被検物の光学面の形状を測定する方法によっても解決することができる。この方法は、入力波を供給するステップと、入力波を補償光学ユニットに放射することにより参照波及び光学面の目標形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する被検物に向けた測定波を生成するステップとを含み、補償光学ユニットは、入力波のビーム経路に配置された第1光学素子と、入力波のビーム経路内で第1光学素子の下流に配置された回折光学素子の形態の第2光学素子とを含み、第1光学素子との相互作用後に入力波が回折光学素子により測定波及び参照波に分割されるようになる。測定波の生成に適用される補償光学ユニット全体の屈折力のうち20%以上が、第1光学素子に割り当てられ、第1光学素子に割り当てられた屈折力は、補償光学ユニット全体の屈折力と同じ符号を有する。さらに、本発明による方法は、被検物との相互作用後の測定波と参照波との重畳により生成されるインターフェログラムを取得するステップを含む。
【0034】
上記の本発明による補償光学ユニット又は本発明による計測システムの実施形態、実施例、及び変形実施形態等に関して示した特徴は、本発明による測定法に適宜準用することができる。本発明による実施形態のこれら及び他の特徴は、図の説明及び特許請求の範囲に記載される。個々の特徴は、本発明の実施形態として別個に又は組み合わせて実施することができる。さらに、個々の特徴は、独立して保護可能であり必要な場合は本願の係属中又は決定後にのみ保護が求められる有利な実施形態を表すことができる。
【0035】
本発明の上記及び他の有利な特徴を、添付の概略図を参照して本発明による実施例の以下の詳細な説明に示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】連続して配置された2つの光学素子を備えた補償光学ユニットを有する、干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの本発明による第1実施形態を示す。
【
図2】
図1に示す補償光学ユニットの複素符号化CCGとして構成された第2光学素子の回折構造パターンを示す。
【
図3】干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの本発明によるさらに別の実施形態を示す。
【
図4】干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの本発明によるさらに別の実施形態を示す。
【
図5】干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの本発明によるさらに別の実施形態を示す。
【
図6】干渉法により被検物の光学面の形状を測定する計測システムの本発明によるさらに別の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に記載する実施例すなわち実施形態又は変形実施形態において、相互に機能的又は構造的に同様の要素にはできる限り同一又は同様の参照符号を付している。したがって、特定の実施例の個々の要素の特徴を理解するためには、他の実施例の説明又は本発明の概要を参照されたい。
【0038】
説明を容易にするために、デカルトxyz座標系が図示されており、この座標系から図示のコンポーネントの各位置関係が見てとれる。
図1では、y方向が図の平面に対して垂直に延びる、x方向は右向きに延び、z方向は上向きに延びる。
【0039】
図1は、干渉法により被検物14の光学面12の形状を測定する計測システム10の実施例を視覚化したものである。計測装置10を用いて、特に、目標形状からの表面12の実際形状の偏差を求めることができる。計測装置10は、マイクロリソグラフィ投影レンズのミラーの高開口数表面の計測に特に適している。これに関して、高開口数表面は、開口角αが40°以上、特に70°以上の表面を意味すると理解されたい。特に、EUV放射線、すなわち10nm未満の波長、特に約13.5nm又は約6.8nmの波長を有する放射線を反射する球面又は非球面が、被測定表面12として設けられ得る。ミラーの非球面は、各回転対称非球面からの偏差が5μmを超え且つ各球面からの偏差が1mm以上である自由曲面を有し得る。
【0040】
計測システム10は、十分にコヒーレントな測定放射線を入力波18として供給する光源16を備える。この実施例では、光源16は、出射面22を有する光導波路20を含む。光導波路22は、例えばレーザの形態の放射源(
図1には図示せず)に接続される。例として、約532nmの波長を有するNd:Yagレーザ又は約633nmの波長を有するヘリウムネオンレーザがこの目的で設けられ得る。しかしながら、照明放射線は、電磁放射線の可視又は不可視波長域の異なる波長を有する場合もある。光導波路20を有する光源16は、計測装置に用いられ得る光源の一例を構成するにすぎない。代替的な実施形態では、光導波路20ではなく、レンズ素子、ミラー素子等を有する光学装置を入力波18の供給のために設けることができる。
【0041】
計測システム10はさらに、入力波18から測定波44及び参照波42を生成する補償光学ユニット30を含む。光源16により供給された測定放射線は、光導波路20の出射面22から球面波面を有する入力波18の形態で出て、回折光学素子24に向けられた伝播軸24に沿って発散伝播する。この過程で、入力波18は最初にビームスプリッタ26を通過してから補償光学ユニット30に当たる。代替的な実施形態では、平面波面を有する入力波18を生成するコリメータをビームスプリッタ26と補償光学ユニット30との間に設けることができる。
【0042】
補償光学ユニット30は、発散レンズ素子32-1の形態の第1光学素子32と回折光学素子の形態の第2光学素子34とを含む。第2光学素子34は、第1光学素子への入射前の参照符号18及び第1光学素子32を通過後の参照符号40で示される入力波のビーム経路内で、第1光学素子32の下流に配置される。
【0043】
第1光学素子32を用いて、入力波18の波面を被測定光学面12の目標形状に近似的に適合させ、結果として近似入力波40を生成する。近似適合では、入力波18が表面12の目標形状の球面部分に部分的又は完全に適合される。完全適合の場合、近似入力波40は、表面の目標形状から非球面偏差のみを有する。
【0044】
第2光学素子34は、複素符号化CGHとして具現され、板状の基板36と、基板36の2つの表面37a及び37bの一方、この場合は基板36の下側37bに配置された回折構造38とを含み、当該回折構造は、平面内で重畳配置された2つの回折構造パターンを形成する。これら2つの回折構造パターンは、例えば第1構造パターン及び第2構造パターンの重畳により形成され得る。別の表現をすると、第2光学素子34は、少なくとも2つの異なる位相関数を有する複素符号化位相格子を含む。
【0045】
2つの回折構造パターンのうち第1のもの又は2つの位相関数のうち第1のものは、光学面12の形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する測定波44を生成するよう構成される。測定波44は、上記回折構造パターンにおける近似入力波40の、絶対値で1次又は高次回折、例えば1次回折等によりここでは生成される。測定波44の伝播方向は、近似入力波40の伝播方向に対して1°以上傾いている。
【0046】
図2は、回折構造38により形成された2つの異なる位相関数f
1及びf
2を有する複素符号化位相格子の実施例を示し、位相関数f
1及びf
2の重み付き重畳から全位相関数f
Gが得られる。
図2に示す実施例では、f
Gは、f
1に70%の重みを付けf
2に30%の重みを付けることにより形成される。
図2での個々の位相関数f
1及びf
2の表示は、各関数の等値線を示す。これらの等値線は、各回折格子又は構造パターンの格子線に対応する。f
Gの表示は、回折構造38により形成されたパターンを非常に拡大した一部を示す。複素符号化位相格子f
Gは入射近似入力波40に作用して、位相格子f
1及びf
2により規定された各回折構造パターンが、対応する相互に独立した回折波、具体的には透過する位相関数f
1による測定波44及びリトロー反射する位相関数f
2による参照波42を生成するようにする。測定波44及び参照波42の強度は、関連する位相関数の重みに由来する。図は、測定波44に関する70%の重み及び参照波42に関する30%の重みを示す。
【0047】
すでに上述したように、入力波18は、第1光学素子32により表面12の目標形状の球面部分に部分的又は完全に適合される。第1光学素子32が球面成分への部分適合のみを実行する場合、第2光学素子34により行われる適合は、例えば表面12の目標形状の自由曲面形状への適合を実行するためのさらなる球面波面変更及び非球面波面変更を任意に含む。
【0048】
入力波18の波面から測定波44の波面を生成するための補償光学ユニット30全体の屈折力、すなわち、発散レンズ素子として構成された第1光学素子32と位相関数f
1により規定される第2光学素子34の第1回折構造パターンとにより加えられる累積屈折力のうち、20%以上、特に50%以上又は90%以上が、第1光学素子32に割り当てられる。ここで、第1光学素子32に割り当てられた屈折力は、補償光学ユニット30全体の屈折力と同じ符号を有する。すなわち、補償光学ユニット30全体が測定波44の生成時に入力波18に対して発散機能(負の屈折力)を有するか収束機能(正の屈折力)を有するかに応じて、第1光学素子32も発散機能(発散レンズ素子)又は収束機能(収束レンズ素子)を有する。
図1に示す実施形態では、第1光学素子32及び第2光学素子34は、それぞれが発散機能、したがって負の屈折力を有する。
【0049】
既知のように、光学ユニットの屈折力Dは、光学素子の焦点距離fの逆数(D=1/f)で定義される。光学素子の焦点距離fの定義は、平面波を放射されたときに光学ユニットが生成する球面波の焦点の光学ユニットからの距離を指す。球面成分及び非球面成分の両方を生成する光学ユニットの場合、光学ユニットの屈折力は、球面成分のみから計算される。結果として、純粋に非球面の光学ユニット、すなわち平面波を放射されたときに球面成分を含まない非球面波を生成する光学ユニットは、屈折力が0である。補償光学ユニット30全体の屈折力のうち20%以上を第1光学素子32に割り当てる上記仕様は、補償光学ユニット30全体により行われる表面12の目標形状の球面部分への入力波の波面の適合の20%以上が、第1光学素子32により行われることを意味する。
【0050】
すでに上述したように、第2光学素子34の第2回折格子パターン又は第2位相関数f2は、リトロー反射で参照波42を生成し、すなわち参照波42は、近似入力波40のビーム経路を逆戻りし、近似入力波40の波面を有する。参照波42は、第2回折構造パターンにおける近似入力波40の、絶対値で1次又は高次回折、例えば1次回折等により生成される。
【0051】
測定波44は、被検物14の光学面12で反射して、戻り(returning)測定波46として第2光学素子34へ逆戻りし、そこから参照波42と共に伝播軸24に沿って第1光学素子32を通過しながらビームスプリッタ26へ戻る。ビームスプリッタ26は、戻り測定波24及び参照波42の組み合わせを入力波18のビーム経路から導き出す。さらに、計測システム10は、絞り50、接眼レンズ52、及び干渉計カメラ56を有する取得デバイス48を含み、取得デバイス48は、干渉計カメラ56の検出平面58で参照波28に測定波44を重畳することにより生成されたインターフェログラムを取得する。
【0052】
計測システム10の評価デバイス(
図1には図示せず)は、干渉計カメラ56により取得された1つ又は複数のインターフェログラムから被検物14の光学面12の実際形状を測定する。この目的で、評価デバイスは、適当なデータ処理ユニットを有し、当業者に既知の対応する計算法を用いる。代替として又は追加として、計測システムは、データメモリ又はネットワークとのインタフェースを含むことで、外部の評価ユニットによりネットワークを介して記憶又は伝送されたインターフェログラムを用いた表面形状を測定することを可能にすることができる。表面形状を測定する際に、評価ユニットは、回折光学素子として構成された第2光学素子34の較正の結果を特に考慮する。このような較正の実施例は、
図6を参照して以下で説明する。
【0053】
図3は、干渉法により被検物14の光学面12の形状を測定する計測システム10のさらに別の実施例を視覚化したものである。
図3に示す計測システム10が
図1に示す計測システムと異なる点は、補償光学ユニット30の構造、及びさらに参照波42のビーム経路に配置された反射光学素子60が設けられることのみである。
【0054】
図3に示す補償光学ユニット30は、
図1に示す補償光学ユニット30のように、第1光学素子32と回折光学素子の形態の第2光学素子34とを含むが、
図3に示す第1光学素子32は、収束ビームの形態の近似入力波40を生成する収束レンズ素子32-2として具現される。
【0055】
さらに、
図3に示す第2光学素子34には異なる機能性が与えられる。
図1に示す実施形態のように、複素符号化CGHとして構成された第2光学素子34の第1位相関数は、光学面12の形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する測定波44を生成するよう構成される。しかしながら、測定波44は、
図3に示す実施形態では収束ビームにより形成される点が異なり、収束は図示の変形実施形態では近似入力波40に比べて誇張されている。
【0056】
別の表現をすると、第2光学素子34の第1位相関数は、近似入力波40に収束効果を及ぼす。したがって、第1光学素子32-2及び第2光学素子34の両方が正の屈折力を有する。焦点64を通過後に、測定波44は、被測定表面12の場所で十分な寸法の波面(wavefront surface)を有する発散ビームとなる。
図1に示す実施形態では、入力波18の波面から測定波44の波面を生成するための補償光学ユニット30全体の屈折力のうち20%以上、特に50%以上又は90%以上が、第1光学素子32に割り当てられる。
【0057】
図1に示す実施形態のように、
図3に示す第2光学素子34の第2位相関数は、透過ではなく反射ではあるが参照波42を生成するよう構成される。参照波42の伝播方向は、入力波18の伝播方向に対して傾いており、正確には、参照波42の伝播方向と測定波44の伝播方向との間に反射光学素子60を問題なく配置するのに十分なほど大きな角度があるように傾いている。反射光学素子
60は、平面波面を有する参照波42の再帰反射(back-reflection)のために平面ミラーの形態で構成される。別の構成では、参照波
42は球面波面を有することができ、反射光学素子は球面ミラーとして構成することができる。参照波42は、第2光学素子34へ逆戻りし、第2光学素子34により近似入力波40の波面を有するように近似入力波40のビーム経路に結合される。
【0058】
戻り参照波42は、表面12での反射後の同様の戻り測定波46と共に、干渉計カメラ56の取得平面58でインターフェログラムを生成するために
図1を参照してすでに説明した計測システム10のビーム経路を通過する。1つ又は複数のインターフェログラムの評価は、
図1を参照してすでに説明したように実施される。
【0059】
図4は、干渉法により被検物の光学面12の形状を測定する計測システム10のさらに別の実施例を視覚化したものである。
図4に示す計測システム10が
図1に示す計測システムと異なる点は、補償光学ユニット30の第1光学素子32としての発散レンズ素子32-1の代わりにCGHの形態の回折光学素子32-3が用いられることのみである。回折光学素子32-3は、
図1に示す発散レンズ素子32-1の関数を採用するよう構成される。視覚化した実施形態では、発散する近似入力波40が回折光学素子32-3の通過中に生成される。
【0060】
一変形実施形態によれば、回折光学素子32-3は、多段CGHとして、すなわち多段位相格子、特にブレーズド格子を有するCGHとして具現される。いわゆるブレーズド格子は、そのプロファイルが傾斜面で表されるほど多くの段を有する多段位相格子である。当業者には、例えばDonald C. O'Shea他によるテキストブック「Diffractive optics: design, fabrication, and test」(2004, The Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers, pages 29 to 35)から、多段位相格子に関する背景情報が認識されよう。本願の意味の範囲内での多段位相格子は、例えばH. Kleemann他による「Combination of blazed and laterally blazed structures」(Diffractive Optics and Micro-Optics, OSA Technical Digest (Optical Society of America), paper DTuC7, 2004)に記載のような横方向ブレーズド格子を特に意味するとも理解されたい。
【0061】
さらに別の変形実施形態によれば、回折光学素子32-3は、露光ホログラム、すなわちホログラフィック露光により作製された回折光学素子として具現される。
【0062】
図5は、干渉法により被検物の光学面12の形状を測定する計測システム10のさらに別の実施例を視覚化したものである。
図5に示す計測システム10が
図3に示す計測システムと異なる点は、補償光学ユニット30の第1光学素子32としての収束レンズ素子32-2の代わりにCGHの形態の回折光学素子32-4が用いられることのみである。回折光学素子32-4は、
図3に示す収束レンズ素子32-2の関数を採用するよう構成される。視覚化した実施形態では、収束する近似入力波40が回折光学素子32-4の通過中に生成される。回折光学素子32-4は、多段CGH又は露光ホログラムとして
図4に示す回折光学素子32-3のように具現することができる。
【0063】
図6は、干渉法により被検物の光学面12の形状を測定する計測システム10のさらに別の実施例を視覚化したものである。
図6に示す計測システム10が
図1に示す計測システムと異なる点は、補償光学ユニット30の構成、及び較正ミラー66-1~66-3の存在の追加されることのみである。発散ライン(lines)素子31-1とは対照的に、
図6に示す補償光学ユニット30は、収束ビームの形態の近似入力波40を生成するために
図3に視覚化したタイプの収束レンズ素子32-2を備える。
【0064】
第2光学素子34としては、5重(five-fold)複合符号化CGHの形態の回折光学素子が設けられ、その第1位相関数は、光学面12の形状に少なくとも部分的に適合された波面を有する測定波44を生成するための
図3に示す実施形態の第2光学素子34の第2光学素子34の第1位相関数に対応する。
図6の示す第2光学素子34の第2位相関数は、
図1に示す第2光学素子34の第2位相関数に対応し、リトロー反射で参照波42を生成するために用いられる。
【0065】
さらに、
図6に示す第2光学素子34は、較正波64-1、64-2、及び64-3をそれぞれ生成するための3つのさらなる位相関数を含む。原理上、較正波62は、平面又は球面波面を有し得る。ここで視覚化した変形実施形態では、これらのそれぞれが球面波面を有する。較正波64-1、64-2、及び64-3並びに測定波44は、それぞれが他の各波の伝播方向とは異なる伝播方向を有する。
【0066】
測定波44により光学面12を測定する計測モードに加えて、
図6に示す計測システム10は較正モードでも動作することができる。この目的で、一変形実施形態によれば、球面較正波66-1~66-3に適宜適合された球面較正ミラー66-1、66-2、及び66-3が、較正波66-1~66-3の各ビーム経路に連続して配置され、いずれの場合も干渉法により計測される。較正ミラー66-1、66-2、及び66-3は、これらにそれぞれ入射する較正波64-1、64-2、又は64-3がそのまま反射し戻るようにそれぞれ具現される。干渉計測結果は、較正波66-1~66-3のそれぞれに関する較正計測データとして評価デバイスに記憶される。
【0067】
被検物の光学面12が計測モードで測定波44により計測される場合、これは
図1を参照して上述した計測法と同様に実行され、このようにして得られた計測データは、記憶されている較正計測データを考慮して評価される。較正波62-1~62-3の計測中に得られた較正計測データが考慮されるので、回折光学素子34の製造誤差を光学面12の計測結果において高精度で求めることができる。
【0068】
結果として、回折構造38により形成された構造パターンの歪み誤差の明示的測定をなくすことが可能である。3つの球面較正波での光学面12の形状計測の較正を選択できることで、高精度を達成することが可能になる。その理由は特に、構造パターンの形状又はプロファイル偏差が較正波64-1~64-3及び測定波44で非常に似た偏差を生成するからである。したがって、これらの形状又はプロファイル偏差の大部分を較正することができる。
図1及び
図3~
図5の回折光学素子34は、較正波を生成するために
図6に示す実施形態と同様に構成することができる。
【0069】
上記の実施例、実施形態、又は変形実施形態の説明は、例として示すと理解されたい。それにより行われる開示は、第1に当業者が本発明及びそれに関連する利点を理解できるようにし、第2に当業者の理解では自明でもある記載の構造及び方法の変更及び修正を包含する。したがって、添付の特許請求の範囲の記載に従って本発明の範囲内に入る限りの全てのそのような変更及び修正、並びに等価物は、特許請求の範囲の保護の対象となることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
10 計測システム
12 光学面
14 被検物
16 光源
18 入力波
20 光導波路
22 出射面
24 伝播軸
26 ビームスプリッタ
30 補償光学ユニット
32 第1光学素子
32-1 発散レンズ素子
32-2 収束レンズ素子
32-3 回折光学素子
32-4 回折光学素子
34 第2光学素子
36 基板
37a 上側
37b 下側
38 回折構造
40 近似入力
42 参照波
44 測定波
46 戻り測定波
48 取得デバイス
50 絞り
52 接眼レンズ
56 干渉計カメラ
58 取得平面
60 反射光学素子
62 焦点
64-1~64-3 較正波
66-1~66-3 較正ミラー