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特許7227350基板処理装置、処理容器、反射体及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】基板処理装置、処理容器、反射体及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20230214BHJP
【FI】
H01L21/316 S
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021506112
(86)(22)【出願日】2019-03-20
(86)【国際出願番号】 JP2019011875
(87)【国際公開番号】W WO2020188816
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】保井 毅
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06598559(US,B1)
【文献】特開2000-182799(JP,A)
【文献】特開2008-053489(JP,A)
【文献】特開2009-088348(JP,A)
【文献】特開2010-080706(JP,A)
【文献】特開2017-028001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室を構成する処理容器と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力が供給されることにより、前記処理容器内に電磁界を発生させるように構成された電磁界発生電極と、
前記処理室内に収容された基板を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構と、
前記処理容器と前記電磁界発生電極との間に配置され、前記加熱機構から放射された赤外線を反射するように構成された反射体と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記加熱機構は、前記基板を前記処理室内で支持するサセプタに設けられたサセプタヒータにより構成されている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記加熱機構は、ランプヒータにより構成されている、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理容器及び前記反射体は電磁波を透過する材料で構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記電磁波を透過する材料は非金属材料である、請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記反射体は、前記処理容器の前記外周面に接して形成されるとともに前記赤外線を反射する反射膜として構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記反射体は、前記処理容器の前記外周面を囲うようにして該外周面から離間して配置される支持筒と、前記支持筒の表面に接して形成されるとともに赤外線を反射する反射膜とにより構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記反射膜は、前記支持筒の内側面に接して形成されている、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記反射膜は、Al及びYのいずれか一方又は両方により構成されている、請求項6~8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記反射体は、前記処理容器の前記外周面を囲うようにして該外周面から離間して配置され、前記赤外線を反射する材料で形成された反射筒により構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記反射体は、前記処理容器の前記外周面を全て囲うように設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記電磁界発生電極は、前記処理容器内に発生させた電磁界により前記処理ガスを前記処理容器内でプラズマ励起するよう構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記電磁界発生電極は、前記処理容器の外周面に沿って巻き回されるように形成されたコイル状電極により構成されている、請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
基板処理装置の処理室を構成する処理容器であって、
前記基板処理装置は、前記処理容器の内部に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力が供給されることにより、前記内部に電磁界を発生させるように構成された電磁界発生電極と、前記処理室内に収容された基板を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構と、を備え、
前記加熱機構から放射された赤外線を反射する反射体が前記外周面に接して形成されている、処理容器。
【請求項15】
処理室を構成する処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力が供給されることにより、前記処理容器内に電磁界を発生させるように構成された電磁界発生電極と、前記処理室内に収容された基板を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構と、を備える基板処理装置に用いられ、
前記処理容器と前記電磁界発生電極との間に配置され、前記加熱機構から放射された赤外線を反射するように構成された、反射体。
【請求項16】
処理室を構成する処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力が供給されることにより、前記処理容器内に電磁界を発生させるように構成された電磁界発生電極と、前記処理室内に収容された基板を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構と、前記処理容器と前記電磁界発生電極との間に配置され、前記加熱機構から放射された赤外線を反射するように構成された反射体と、を備える基板処理装置の前記処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記処理容器内に前記処理ガスを供給する工程と、
前記電磁界発生電極に高周波電力を供給して前記処理容器内に電磁界を発生させることにより、前記処理ガスをプラズマ励起する工程と、
前記プラズマ励起された前記処理ガスにより前記基板を処理する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は基板処理装置、処理容器、反射体及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッシュメモリ等の半導体装置のパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
たとえば、特許文献1には、プラズマ励起した処理ガスを用いて基板上に形成されたパターン表面を改質処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-75579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような処理が行われる処理容器が赤外線の透過率の高い部材で構成されていると、基板を加熱するヒータなどから放射される赤外光が透過し処理容器の外部に漏れる場合がある。また、処理容器が赤外線の吸収率の高い部材で構成されていると、ヒータや基板などから放射される赤外光の多くが処理容器に吸収される場合がある。これらの場合、ヒータによって基板を効率良く加熱することが難しいことがある。
【0006】
本開示の目的は、基板処理装置のヒータによる基板の加熱効率を向上させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、処理室を構成する処理容器と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力が供給されることにより、前記処理容器内に電磁界を発生させるように構成された電磁界発生電極と、前記処理室内に収容された基板を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構と、前記処理容器と前記電磁界発生電極との間に配置され、前記加熱機構から放射された赤外線を反射するように構成された反射体と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、ヒータによる処理容器内の基板の加熱効率を向上させ、基板処理時間を短縮して生産性を向上させることや、高温化により高品質な膜の形成を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置の概略断面図。
図2】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置のプラズマ生成原理を説明する説明図。
図3】本開示の第1実施形態に係る基板処理装置の制御部(制御手段)の構成を示す図。
図4】本開示の第1実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図。
図5】本開示の第2実施形態に係る基板処理装置の概略断面図。
図6】本開示の第3実施形態に係る基板処理装置の概略断面図。
図7】本開示の第4実施形態に係る基板処理装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本開示の第1実施形態に係る基板処理装置について、図1及び図2を用いて以下に説明する。本実施形態に係る基板処理装置は、主に基板面上に形成された膜に対して酸化処理を行うように構成されている。
【0011】
(処理室)
基板処理装置100は、基板200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、電磁波を透過する材料、たとえば純度が高い石英(SiO)等の非金属材料で形成されている。また、上側容器210は、とりわけ赤外線の透過率が90%以上の透明石英で構成されていることが望ましい。これにより、後述する反射体220により反射された赤外線が上側容器210で反射や吸収される量を抑え、基板200に供給される赤外線の量を更に増やすことができる。
【0012】
下側容器211は、たとえばアルミニウム(Al)で形成されている。また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。
【0013】
処理室201は、周囲に共振コイルにより構成された電磁界発生電極212が設けられているプラズマ生成空間201a(図2参照)と、プラズマ生成空間201aに連通し、基板200が処理される基板処理空間201b(図2参照)を有する。プラズマ生成空間201aはプラズマが生成される空間であって、処理室の内、電磁界発生電極212の下端より上方であって、かつ電磁界発生電極212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、電磁界発生電極212の下端より下方の空間を言う。
【0014】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、基板200を載置する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217はたとえば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料により構成されている。
【0015】
基板200を処理室201内で処理するサセプタ217の内部には、処理室201内に収容された基板200を加熱するよう赤外線を放射するように構成された加熱機構110としてのサセプタヒータ217bが一体的に埋め込まれて設けられている。サセプタヒータ217bは、電力が供給されると、基板200表面をたとえば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。なお、サセプタヒータ217bは、たとえばSiC(炭化ケイ素)ヒータで構成することができる。この場合、SiCヒータから放射される赤外線のピーク波長は、たとえば5μm近傍である。
【0016】
インピーダンス調整電極217cは、サセプタ217に載置された基板200上に生成されるプラズマの密度の均一性をより向上させるために、サセプタ217内部に設けられており、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275によって、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、基板200の電位(バイアス電圧)を制御できる。
【0017】
サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられるとともに、下側容器211の底面には基板突上げピン266が設けられている。貫通孔217aと基板突上げピン266とは互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、基板突上げピン266が貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0018】
主に、サセプタ217及びサセプタヒータ217b、インピーダンス調整電極217cにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0019】
(ランプヒータ)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上面には、光透過窓278が設けられている。また、光透過窓278上の外側(すなわち上面側)には、処理室201内に収容された基板200を赤外線を放射して加熱するよう構成された加熱機構110としてのランプヒータ280が設置されている。ランプヒータ280は、サセプタ217と対向する位置に設けられ、基板200の上方から基板200を加熱するよう構成されている。ランプヒータ280を点灯することで、サセプタヒータ217bのみを用いる場合と比較してより短時間で、且つ高い温度まで基板200を昇温させることができるよう構成されている。なお、ランプヒータ280は、近赤外線(ピーク波長が望ましくは800~1300nm、より望ましくは1000nmの光)を放射するものを使用するのが好適である。このようなランプヒータ280としては、たとえばハロゲンヒータを用いることができる。
【0020】
本実施形態では、加熱機構110としてサセプタヒータ217bとランプヒータ280との両方を備えている。このように加熱機構110としてサセプタヒータ217bとランプヒータ280とを併用することで、基板表面の温度をより高温、たとえば900℃程度にまで昇温することができる。
【0021】
(処理ガス供給部)
処理容器203内に処理ガスを供給する処理ガス供給部120は、以下のように構成される。
【0022】
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0023】
ガス導入口234には、酸素含有ガスとしての酸素(O)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aと、水素含有ガスとしての水素(H)ガスを供給する水素含有ガス供給管232bと、不活性ガスとしてのアルゴン(Ar)ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。酸素含有ガス供給管232aには、Oガス供給源250a、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、Hガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、Arガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した供給管232の下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234に接続されている。バルブ253a、253b、253c、243aを開閉させることによって、MFC252a、252b、252cによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232cを介して、酸素含有ガス、水素ガス含有ガス、不活性ガスが合流した処理ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0024】
主に、ガス供給ヘッド236、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a、252b、252c、バルブ253a、253b、253c、243aにより、本実施形態に係る処理ガス供給部120(ガス供給系)が構成されている。
【0025】
(排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0026】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部に含めても良い。
【0027】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、螺旋状の共振コイルにより構成された電磁界発生電極212が設けられている。電磁界発生電極212には、RFセンサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。電磁界発生電極212は、処理容器203の外周面と離間して該外周面に沿って配置され、高周波電力(RF電力)が供給されることにより、処理容器203内に電磁界を発生させるように構成されている。すなわち、本実施形態の電磁界発生電極212は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)方式の電極である。
【0028】
高周波電源273は、電磁界発生電極212にRF電力を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力されるRF電力の周波数を制御するものである。
【0029】
電磁界発生電極212としての共振コイルは、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、この共振コイルの電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍に相当する長さに設定される。
【0030】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度又は適用する装置の外形などを勘案し、電磁界発生電極212としての共振コイルは、たとえば、800kHz~50MHz、0.5~5KWの高周波電力によって0.01~10ガウス程度の磁場を発生し得るように、50~300mmの有効断面積であってかつ200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201aを形成する処理容器203の外周面に沿って2~60回程度巻回される。なお、本明細書における「800kHz~50MHz」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。例えば、「800kHz~50MHz」とは「800kHz以上50MHz以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0031】
本実施形態では、高周波電力の周波数を27.12MHz、共振コイルの電気的長さを1波長の長さ(約11メートル)に設定している。共振コイルの巻回ピッチは、たとえば、24.5mm間隔で等間隔となるように設けられる。また、共振コイルの巻径(直径)は基板200の直径よりも大きくなるように設定される。本実施形態では、基板200の直径を300mmとし、共振コイルの巻径は基板200の直径よりも大きい500mmとなるように設けられる。
【0032】
電磁界発生電極212としての共振コイルを構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプ、アルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅又はアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。共振コイルは、ベースプレート248の上端面に鉛直に立設された、絶縁性材料により形成された複数のサポート(図示せず)によって支持される。
【0033】
電磁界発生電極212としての共振コイルの両端は電気的に接地され、そのうちの少なくとも一端は、当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップ213を介して接地される。共振コイルの他端は、固定グランド214を介して設置される。可動タップ213は、共振コイルの共振特性を高周波電源273と略等しくするように位置が調整される。さらに、共振コイルのインピーダンスを微調整するため、共振コイルの接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。
【0034】
遮蔽板223は、電磁界発生電極212としての共振コイルの外側の電界を遮蔽するために設けられる。遮蔽板223は、一般的には、アルミニウム合金などの導電性材料を使用して円筒状に構成される。遮蔽板223は、共振コイルの外周から5~150mm程度隔てて配置される。
【0035】
主に、電磁界発生電極212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273を含めても良い。
【0036】
ここで、本実施形態に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について図2を用いて説明する。
【0037】
電磁界発生電極212によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。上記プラズマ発生回路においては、プラズマを発生させた場合、共振コイルの電圧部とプラズマとの間の容量結合の変動や、プラズマ生成空間201aとプラズマとの間の誘導結合の変動、プラズマの励起状態、等により、実際の共振周波数は僅かながら変動する。
【0038】
そこで、本実施形態においては、プラズマ発生時の電磁界発生電極212としての共振コイルにおける共振のずれを電源側で補償するため、プラズマが発生した際の共振コイルからの反射波電力をRFセンサ272において検出し、検出された反射波電力に基づいて整合器274が高周波電源273の出力を補正する機能を有する。
【0039】
具体的には、整合器274は、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の電磁界発生電極212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となるように高周波電源273のインピーダンス又は出力周波数を増加又は減少させる。
【0040】
かかる構成により、本実施形態における電磁界発生電極212では、図2に示すように、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので(あるいは、プラズマを含む当該共振コイルの実際のインピーダンスに整合するように高周波電力が供給されるので)、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される。電磁界発生電極212としての共振コイルの電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。したがって、電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合がほとんどなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマが形成される。
【0041】
なお、電磁界発生電極212は上記したようなICP方式の共振コイルに限定されず、たとえば、変形マグネトロン(Modified Magnetron Typed:MMT)方式の筒状電極を用いてこれに充ててもよい。
【0042】
(反射体)
反射体220は、処理容器203を構成する上側容器210と電磁界発生電極212との間に配置され、加熱機構110から放射された赤外線や、基板200から間接的に放射された赤外線を反射するように構成されている。本実施形態の反射体220は、上側容器210の外周面を全て囲うように接して形成される、赤外線を反射する反射膜220aとして構成されている。反射膜220aは、電磁波を透過し、かつ赤外線を反射する非金属材料、具体的にはAl及び酸化イットリウム(Y)のいずれか一方又は両方により、上側容器210の外周面への溶射皮膜処理により被膜形成されることで構成されている。
【0043】
反射体220は、特に、波長が0.8~100μmの領域の赤外線を反射するものであることが望ましい。また、反射体220および反射膜220aの赤外線の反射率は70%以上であることが望ましく、80%以上であることがより望ましい。また、反射体220および反射膜220aの赤外線の吸収率は25%以下であることが望ましく、15%以下であることがより望ましい。好適な例として、反射膜220aはAlの200μm以上の膜として形成される。このように形成されることで、反射膜220aの赤外線の反射率を80%以上とすることができる。
【0044】
なお、本実施形態における赤外線の反射率及び吸収率とは、例えば波長1000nm近傍の赤外線に対する値である。ただし、加熱機構110から放射される赤外線のピーク波長や、基板200が吸収しやすい波長等に応じて、考慮すべき反射率や吸収率の対象となる波長は異なっていてもよい。
【0045】
(制御部)
制御部としてのコントローラ291は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276及びインピーダンス可変機構275を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c、243aを、それぞれ制御するように構成されている。
【0046】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ291は、CPU(Central Processing Unit)291a、RAM(Random Access Memory)291b、記憶装置291c、I/Oポート291dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM291b、記憶装置291c、I/Oポート291dは、内部バス291eを介して、CPU291aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ291には、たとえばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置292が接続されている。
【0047】
記憶装置291cは、たとえばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置291c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ291に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。また、RAM291bは、CPU291aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0048】
I/Oポート291dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c、243a、243b、ゲートバルブ244、APC242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275、ヒータ電力調整機構276、等に接続されている。
【0049】
CPU291aは、記憶装置291cからの制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置292からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置291cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU291aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート291d及び信号線Aを通じてAPC242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるサセプタヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)や、インピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c、243aの開閉動作、等を制御するように構成されている。
【0050】
コントローラ291は、外部記憶装置293に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置291cや外部記憶装置293は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置291c単体のみを含む場合、外部記憶装置293単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置293を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0051】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について、主に図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。本実施形態に係る基板処理工程は、たとえばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、上述の基板処理装置100により実施される。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ291により制御される。
【0052】
なお、本実施形態に係る基板処理工程で処理される基板200の表面にはシリコンの層があらかじめ形成されている。本実施形態においては、当該シリコン層に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。
【0053】
(基板搬入工程S110)
まず、サセプタ昇降機構268が基板200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aに基板突上げピン266を貫通させる。続いて、ゲートバルブ244を開き、処理室201に隣接する真空搬送室から、基板搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内に基板200を搬入する。搬入された基板200は、サセプタ217の表面から突出した基板突上げピン266上に水平姿勢で支持される。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、基板200はサセプタ217の上面に支持される。
【0054】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理室201内に搬入された基板200の昇温を行う。ここで、サセプタヒータ217bはあらかじめ加熱されており、ランプヒータ280を点灯(ON)させることで、サセプタ217上に保持された基板200を、たとえば700~900℃の範囲内の所定値にまで昇温する。ここでは、基板200の温度がたとえば800℃となるように加熱される。このとき、基板200を加熱するサセプタヒータ217b及びランプヒータ280から放射される赤外線と、加熱された基板200から放射される赤外線は上側容器210を透過するが、上側容器210の外周面に接して形成されている反射体220としての反射膜220aによって、大部分が吸収されることなく再び処理容器203内へ反射され、基板200に吸収されることで基板200の効率良い加熱に寄与することとなる。また、基板200の昇温を行う間、真空ポンプ246によりガス排気管231を介して処理室201内を真空排気し、処理室201内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S160が終了するまで作動させておく。
【0055】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、酸素含有ガスであるOガスと水素含有ガスであるHガスの供給を開始する。具体的には、バルブ253a及び253bを開け、MFC252a及び252bにて流量制御しながら、処理室201内へOガス及びHガスの供給を開始する。
【0056】
また、処理室201内の圧力が所定の値となるように、APC242の開度を調整して処理室201内の排気を制御する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S140の終了時までOガス及びHガスの供給を継続する。
【0057】
(プラズマ処理工程S140)
処理室201内の圧力が安定したら、電磁界発生電極212に対して高周波電源273から高周波電力の印加を開始する。これにより、Oガス及びHガスが供給されているプラズマ生成空間201a内に高周波電界が形成され、かかる電界により、プラズマ生成空間の電磁界発生電極212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状のOガス及びHガスを含む処理ガスはプラズマ励起されて解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)や酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)や水素イオン、等の反応種が生成される。
【0058】
基板処理空間201bでサセプタ217上に保持されている基板200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルと加速されない状態のイオンが基板200の表面に均一に供給される。供給されたラジカル及びイオンは表面のシリコン層と均一に反応し、シリコン層をステップカバレッジが良好なシリコン酸化層へと改質する。
【0059】
その後、所定の処理時間、たとえば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の出力を停止して、処理室201内におけるプラズマ放電を停止する。また、バルブ253a及び253bを閉めて、Oガス及びHガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程S140が終了する。
【0060】
(真空排気工程S150)
ガス及びHガスの供給を停止したら、ガス排気管231を介して処理室201内を真空排気する。これにより、処理室201内のガスを処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する真空搬送室と同じ圧力に調整する。
【0061】
(基板搬出工程S160)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217を基板200の搬送位置まで下降させ、基板突上げピン266上に基板200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、基板搬送機構を用いて基板200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0062】
以上の本実施形態によれば、加熱機構110から放射された赤外線を電磁界発生電極212よりも内側(すなわち、処理容器203側)に閉じ込めるように反射して、基板200に照射される赤外線の密度を増大させ、基板200の加熱効率を向上させることができる。すなわち、基板200の高温化、昇温速度の向上、エネルギーの省力化等の効果を得ることができる。また、特に電磁界発生電極212と処理容器203を構成する上側容器210との間に反射体220を配置するので、電磁界発生電極212よりも外側に配置する場合に比べて、電磁界発生電極212に遮蔽されて熱吸収されることがなく、赤外線を内側に反射することができるので、より効率よく加熱機構110から放射された赤外線を内側に反射させて加熱効率を向上させることができる。
【0063】
本実施形態のように、加熱機構110としてのサセプタヒータ217bにより基板200を加熱する場合、サセプタヒータ217bから放射される赤外線を処理容器の内側に反射させることで、上述した基板200の高温化、昇温速度の向上、エネルギーの省力化等の効果、さらには加熱効率の向上といった効果を得ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のように、加熱機構110として、サセプタヒータ217bに加えてランプヒータ280を備え、サセプタヒータ217bとランプヒータ280との両方によって基板200を加熱する場合、サセプタヒータ217bとランプヒータ280の両方から放射される赤外線を処理容器の内側に反射させることで、上述した基板200の高温化、昇温速度の向上、エネルギーの省力化等の効果、さらには加熱効率の向上といった効果をさらにより顕著に得ることができる。
【0065】
また、前記したように上側容器210及び反射体220は電磁波を透過する材料、とりわけ非金属材料で構成されているので、電磁界発生電極212から発生した電磁波が反射体220及び上側容器210を透過して、処理室201内の処理ガスをプラズマ励起することを妨げないようにすることができる。
【0066】
また、前記したように上側容器210の外周面上に反射体220としての反射膜220aを形成することにより、処理容器203よりも内側に加熱機構110から放射された赤外線を閉じ込めるように反射することができるので、より顕著に基板200の加熱効率を向上させることができる。
【0067】
ここで、上側容器210の真空側である内側に反射膜220aを形成した場合、プラズマによって膜剥がれが発生し、基板200の異物となり基板製造の歩留まりが悪くなる。そこで、上側容器210の外周面上に反射膜220aを形成することにより、反射膜220aの剥がれや、反射膜220aを構成する材料による処理容器203内の汚染を防止することができる。また、上側容器210をクリーニングする際にも、反射膜220aを除去することなく、上側容器210の内側のみを選択的にクリーニングすることができる。
【0068】
なお、反射膜220aがAl及びYのいずれか一方又は両方により構成されていることで、電磁界発生電極212で発生した電磁波の透過を妨げずに、処理室201から上側容器210を透過した赤外線を再び処理室201へ反射させることができる。
【0069】
また、反射膜220aの厚さを200μm以上とすることで、反射膜220aの赤外線の反射率を80%以上とする。反射膜220aの反射率を80%以上とすることで、上述した基板200の高温化等の効果を顕著に得ることができる。また、反射膜220aの赤外線の吸収率を15%以下とすることで、反射膜220aやそれに接触している処理容器203の温度が過度に上昇するのを防止し、処理容器203の周辺に設けられる部品や装置(例えば、Oリング等の樹脂素材の部品等)が熱により劣化するのを抑制することができる。また、本実施形態では、上側容器210を熱伝導率が比較的低い石英により構成し、その外周面に、上側容器210よりも薄く、熱容量の小さい反射膜220aを形成している。そのため、熱伝導率や赤外線の吸収率が比較的高いAlで反射体220を構成したとしても、上側容器210の温度が過度に上昇するのを抑制することができる。
【0070】
なお、反射膜220aの材質としては、金属は電磁波がシールドされ処理容器内にプラズマが励起されなくなるためふさわしくない。
【0071】
また、反射体220は、電磁界発生電極と対向する上側容器210(すなわち処理容器203の透明部分)の外周面を全て囲うように設けられているので、処理容器203の側壁からの赤外線の透過及び漏れを全て遮断して、上述のような赤外線の処理容器203内での閉じ込め効果を顕著に得ることができる。また、電磁界発生電極212への赤外線の照射を抑制して、電磁界発生電極212やその周辺部材の温度上昇を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0072】
<第2実施形態>
図5は、本開示の第2実施形態に係る基板処理装置100である。本実施形態では、反射体220の構造が第1実施形態とは異なるが、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0073】
ここで、上側容器210は繰り返しの使用により内面が汚染される場合がある。その場合、上側容器210を取り外して洗浄し再利用することがある。その際に、第1実施形態の上側容器210では、その外周面に接して反射膜220aが形成されているため、洗浄により反射膜220aが剥離し、再利用時の反射率が劣化してしまう可能性がある。
【0074】
そこで、本実施形態では、上側容器210と電磁界発生電極212との間に、上側容器210の外周面を囲うようにして該外周面から離間して反射体220を配置することとしている。この反射体220は、支持筒220bと、この支持筒220bの内側面に接して形成される反射膜220aとにより構成される。支持筒220bは、電磁波を透過する非金属材料、具体的には石英を材質とする筒状部材として形成される。また、反射膜220aは、第1実施形態と同様、電磁波を透過し、かつ赤外線を反射する非金属材料、具体的にはAl及びYのいずれか一方又は両方により、支持筒220bの内周面への溶射皮膜処理により被膜形成されることで構成されている。望ましくは、反射膜220aはAlの200μm以上の膜として形成される。このように形成されることで、反射膜220aの赤外線の反射率を80%以上とすることができる。
【0075】
この基板処理装置100においても、第1実施形態と同様、図4に示した各工程により基板200の処理が行われ、半導体装置が製造される。
【0076】
特に、昇温・真空排気工程S120において、処理室201内に搬入された基板200の昇温を行う。具体的には、サセプタヒータ217b及びランプヒータ280により、サセプタ217上に保持された基板200を所定の温度まで昇温する。このとき、基板200を加熱するサセプタヒータ217b及びランプヒータ280から放射される赤外線と、加熱された基板200から放射される赤外線は、上側容器210を透過するが、上側容器210の外周面を囲うようにして配置されている支持筒220bの内面の反射膜220aによって、大部分が吸収されることなく再び処理容器203内へ反射され、基板200に吸収されることで基板200の効率良い加熱に寄与することとなる。
【0077】
以上の本実施形態によれば、上側容器210の外周面へ直接コーティングするなどして反射膜220aを形成することなく、上記のような反射膜220aが形成されている支持筒220bを挿入することによって、処理容器203よりも内側に加熱機構110から放射された赤外線を閉じ込めるように反射させることができる。また、処理容器203の外部に支持筒220bを設けることにより、反射膜220aの剥がれや、反射膜220aを構成する材料による処理容器203内の汚染を防止することができる。また、上側容器210をクリーニングする際にも、特に反射膜220aを剥離する等の処理を不要とすることができる。また、筒状の簡易な形状の支持筒220bに反射膜220aを形成することができるので、上側容器210の外周面に反射膜220aを形成する場合よりも上側容器210の製作が容易である。さらに、支持筒220bを石英で形成した場合、反射膜220aのみを反射材料で形成すれば足りるので、支持筒220b全体を反射材料で形成する場合に比べてコストや製作難易度を下げることができる場合がある。
【0078】
さらには、支持筒220bの内側に反射膜220aを構成することにより、処理室201内から放射された赤外線が支持筒220bに到達する前に反射膜220aで再び処理室201内へ反射されることで、支持筒220bによる熱吸収の発生を抑制し、加熱効率をより向上させることができる。支持筒220bによる熱吸収の発生を抑えるため、支持筒220bは赤外線を透過しやすい透明石英等で構成されることが望ましいが、反射膜220aを支持筒220bの内側に設けることにより、赤外線が透過しにくい材料を支持筒220bに用いても同等の効果を得ることができる。
【0079】
なお、反射膜220aの材質、厚さ、赤外線の反射率及び吸収率は、第1実施形態と同様とすることができ、それらの効果も同様である。
【0080】
<第3実施形態>
図6は、本開示の第3実施形態に係る基板処理装置100である。本実施形態では、加熱機構110としてのランプヒータ280は設けられず、サセプタヒータ217bのみが加熱機構である点で第1実施形態とは異なるが、上側容器210の外周面に接して形成される反射膜220aとして反射体220が構成される点を含め、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0081】
また、この基板処理装置100においても、第1実施形態と同様、図4に示した各工程により基板200の処理が行われ、半導体装置が製造される。
【0082】
特に、昇温・真空排気工程S120において、処理室201内に搬入された基板200の昇温を行う。具体的には、サセプタヒータ217bにより、サセプタ217上に保持された基板200を、たとえば150~750℃の範囲内の所定値にまで昇温する。ここでは、基板200の温度がたとえば600℃となるように加熱される。このとき、基板200を加熱するサセプタヒータ217bから放射される赤外線と、加熱された基板200から放射される赤外線は、処理容器203を透過するが、処理容器203の外周面に接して形成されている反射体220としての反射膜220aによって、大部分が吸収されることなく再び処理容器203内へ反射され、基板200に吸収されることで基板200の効率良い加熱に寄与することとなる。
【0083】
<第4実施形態>
図7は、本開示の第4実施形態に係る基板処理装置100である。本実施形態では、加熱機構110としてのランプヒータ280は設けられず、サセプタヒータ217bのみが加熱機構である点と、反射体220の構成とが第1実施形態とは異なるが、その他の点は第1実施形態と同様である。
【0084】
本実施形態では、処理容器203と電磁界発生電極212との間に、処理容器203の外周面を囲うようにして該外周面から離間して反射体220を配置することとしている。この反射体220は、電磁波を透過し、かつ赤外線を反射する非金属材料、具体的にはAl及びYのいずれか一方又は両方を材質とする筒状部材としての反射筒220cとして構成されている。望ましくは、反射筒220c全体がAl及びYのいずれか一方又はその複合材料によって構成されている。
【0085】
また、より望ましくは、反射筒220cは厚さ200μm以上のAl製の筒状部材として形成される。このように形成されることで、反射筒220cの赤外線の反射率を80%以上とすることができる。但し、反射筒220cの機械的強度を確保するため、実用上はその厚さを10mm以上とすることが望ましい。
【0086】
この基板処理装置100においても、第1実施形態と同様、図4に示した各工程により基板200の処理が行われ、半導体装置が製造される。
【0087】
特に、昇温・真空排気工程S120において、処理室201内に搬入された基板200の昇温を行う。具体的には、第3実施形態と同様に、サセプタヒータ217bにより、サセプタ217上に保持された基板200を所定の温度まで昇温する。このとき、基板200を加熱するサセプタヒータ217bから放射される赤外線と、加熱された基板200から放射される赤外線は、処理容器203を透過するが、処理容器203の外周面を囲うようにして配置されている反射筒220cの内面によって、大部分が吸収されることなく再び処理容器203内へ反射され、基板200に吸収されることで基板200の効率良い加熱に寄与することとなる。
【0088】
以上の本実施形態によれば、処理容器203の外周面へ直接コーティングするなどして反射膜220aを形成することなく、上記のような赤外線を反射する材料で形成された反射筒220cを挿入することによっても、処理容器203よりも内側に加熱機構110から放射された赤外線を閉じ込めるように反射することができる。また、処理容器203の外部に反射筒220cを設けることにより、反射膜220aの剥がれや、反射膜220aを構成する材料による処理容器203内の汚染を防止することができる。また、処理容器203をクリーニングする際にも、特に反射膜220aを剥離する等の処理を不要とすることができる。また、赤外線を反射する材料で筒状の簡易な形状の反射筒220cを形成することができるので、処理容器203の外周面に反射膜220aを形成する場合よりも処理容器203の製作が容易である場合がある。さらに、反射筒220cという筒状形状の全体が赤外線を反射する材料で形成されるので、反射率をより高めるのに好適である。
【0089】
<本開示の他の実施形態>
上述の実施形態では、プラズマを用いて基板表面に対して酸化処理や窒化処理を行う例について説明したが、これらの処理に限らず、プラズマを用いて基板に対して処理を施すあらゆる技術に適用することができる。たとえば、プラズマを用いて行う基板表面に形成された膜に対する改質処理やドーピング処理、酸化膜の還元処理、当該膜に対するエッチング処理、レジストのアッシング処理、等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本開示に係る技術によれば、基板処理装置のヒータによる基板の加熱効率を向上させることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7