IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社KOKUSAI ELECTRICの特許一覧

特許7227351半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置
<>
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図1
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図2
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図3
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図4
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図5
  • 特許-半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230214BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
H01L21/31 Z
H01L21/31 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021506892
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2019011468
(87)【国際公開番号】W WO2020188747
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 正憲
(72)【発明者】
【氏名】川岸 隆之
(72)【発明者】
【氏名】侯 鈞
(72)【発明者】
【氏名】山本 一良
(72)【発明者】
【氏名】鍛治 隆一
(72)【発明者】
【氏名】舘 祐太
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-077780(JP,A)
【文献】特開2000-259222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップを含むプロセスレシピを実行させて、装置及び付帯設備のうち少なくともどちらか一方に設けられた様々なセンサからセンサデータにより前記装置の状態を監視しつつ、基板に所定の処理を施す半導体装置の製造方法であって、
前記プロセスレシピを構成する各ステップのうち前記基板を処理する処理室の圧力を大気圧から所定圧力まで減圧させるステップにおける前記センサデータのうち、振動センサにより検出される振動データを取得する工程と、
取得した前記振動データを振動周波数スペクトルに変換する工程と、
変換された前記振動周波数スペクトルの所定範囲の周波数を所定の周波数間隔で抽出し、抽出した周波数毎に、正常時の前記プロセスレシピの所定回数分のデータを使って前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を計算する工程と、
前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を用いて正常モデルを作成し、前記抽出した周波数分、前記正常モデルの振幅値と予め決められた閾値を比較し、所定の個数以上の周波数の前記振幅値が前記閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記閾値は、前記平均値と前記標準偏差を用いて、前記標準偏差を3倍した数値を前記平均値に加算又は減算した範囲で算出される請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記振動周波数スペクトルの振幅の前記平均値と前記標準偏差は、正規分布に従うと仮定されている請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板を処理する処理室の雰囲気を排気する真空ポンプに関連するセンサデータであって、前記真空ポンプの電流データ、温度データ、及び排気圧データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータを更に取得して、前記装置の状態を監視する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記真空ポンプの前記電流データ、前記温度データ、及び前記排気圧データよりなる群から選択された少なくとも一つの前記センサデータの統計量が、所定回数連続して予め設定される閾値から外れると、異常予兆有と判断する請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板を処理する処理室の雰囲気を排気する真空ポンプに関連するセンサデータであって、前記真空ポンプの電流データ、温度データ、及び排気圧データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータの統計量が前記閾値を外れていても、前記真空ポンプの前記振動センサにより検出される振動データから算出される異常予兆を示す指標が前記閾値から外れていなければ、異常予兆有と判断しない請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記振動データから算出される異常予兆を示す指標と、前記真空ポンプの前記電流データ、前記温度データ、及び前記排気圧データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータの統計量の両方が前記閾値から外れると、異常予兆有と判断する請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板を処理する処理室に配置された前記基板を回転させる回転モータに関連するセンサデータであって、前記回転モータのトルク値データ及び電流データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータを更に取得して前記装置の状態を監視する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記トルク値データ及び前記電流データのそれぞれの統計量が所定回数連続して前記閾値から外れると異常予兆有と判断する請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記基板を処理する処理室に配置された前記基板を回転させる回転モータに関連するセンサデータであって、前記回転モータのトルク値データ及び電流データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータの統計量が前記閾値を外れていても、前記回転モータの前記振動センサにより検出される振動データから算出される異常予兆を示す指標が前記閾値から外れていなければ、異常予兆有と判断しない請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記振動データから算出される異常予兆を示す指標と、前記トルク値データ及び前記電流データよりなる群から選択される少なくとも一つの前記センサデータの統計量の両方が前記閾値から外れると、異常予兆有と判断する請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
特異スペクトル変換を用いて前記センサデータから異常の予兆を示す指標を算出し、前記指標が予め設定される閾値から外れると異常予兆有と判断する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
異常予兆有と判断した場合、アラームを発生させるとともに、異常の予兆が認められた装置及び付帯設備のうち少なくともどちらか一方に設けられたセンサのセンサデータの情報を画面に表示する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
複数のステップを含むプロセスレシピを実行させて、基板に所定の処理を施すよう制御する主制御部と、装置及び付帯設備のうち少なくともどちらか一方に設けられた様々なセンサからセンサデータにより前記装置の状態を監視する予兆検知部と、を含む基板処理装置で実行される予兆検知プログラムであって、
前記プロセスレシピを構成する各ステップのうち前記基板を処理する処理室の圧力を大気圧から所定圧力まで減圧させるステップにおける前記センサデータのうち、振動センサにより検出される振動データを取得する手順と、
取得した前記振動データを振動周波数スペクトルに変換する手順と、
変換された前記振動周波数スペクトルの所定範囲の周波数を所定の周波数間隔で抽出し、抽出した周波数毎に、正常時の前記プロセスレシピの所定回数分のデータを使って前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を計算する手順と、
前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を用いて正常モデルを作成し、前記抽出した周波数分、前記正常モデルの振幅値と予め決められた閾値を比較し、所定個数以上の周波数の前記振幅値が前記閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する手順と、
を前記予兆検知部に実行させる、予兆検知プログラム。
【請求項15】
複数のステップを含むプロセスレシピを実行させて、基板に所定の処理を施すよう制御する主制御部と、装置及び付帯設備のうち少なくともどちらか一方に設けられた様々なセンサからセンサデータにより前記装置の状態を監視する予兆検知部と、を含む基板処理装置であって、
前記予兆検知部は、
前記プロセスレシピを構成する各ステップのうち前記基板を処理する処理室の圧力を大気圧から所定圧力まで減圧させるステップにおける前記センサデータのうち、振動センサにより検出される振動データを取得し、
取得した前記振動データを振動周波数スペクトルに変換し、
変換された前記振動周波数スペクトルの所定範囲の周波数を所定の周波数間隔で抽出し、抽出した周波数毎に、正常時の前記プロセスレシピの所定回数分のデータを使って前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を計算し、
前記振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を用いて正常モデルを作成し、
前記抽出した周波数毎に前記正常モデルの振幅値と予め決められた閾値と比較し、
所定個数以上の周波数の前記振幅値が前記閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する、
よう構成されている、
基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ等の基板に薄膜を形成して半導体装置を製造する基板処理装置や半導体装置の製造方法が知られている。例えば特開2014-127702号公報には、基板を収容する処理室に、原料ガスと、原料ガスと反応する反応ガスとを順番に供給して、処理室内に収容された基板に薄膜を形成する半導体装置の製造方法が開示されている。
【0003】
一般的に、このような基板処理装置は、処理室内を真空排気する真空ポンプや、反応性ガス等の流量を制御するマスフローコントローラ、開閉バルブ、圧力計、処理室を加熱するヒータ、及び基板を搬送する搬送機構等、様々な部材で構成されている。
【0004】
この様々な部材のそれぞれは、使用するにつれて徐々に劣化して故障するため、新しい部材への交換が必要となる。交換の仕方としては、部材を故障するまで使用するか、もしくは部材毎に定期的な交換周期を決めて、故障する前に余裕をもって交換するか、のいずれかの方式で運用されることがある。
【0005】
ここで、部材を故障するまで使用する場合、故障時に基板処理装置によって処理していた基板が全て不良品となり、その基板、及び故障時の生産時間が損失となることがある。特に、真空ポンプが故障した場合は、真空ポンプ停止時の逆流によって処理室内が汚染されてしまうため、その交換時間、洗浄時間、費用、及び人手も損失となることがある。また、故障する前に定期的に交換する場合は、故障に至らない期間、すなわち十分余裕を持った短期間毎に交換する必要があるため、部材の交換頻度が多くなり、運用コストの増加につながることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、部材の異常予兆を検知することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、複数のステップを含むプロセスレシピを実行させて、基板に所定の処理を施す技術であって、プロセスレシピを構成する各ステップのうちの指定ステップにおけるセンサデータのうち、振動センサにより検出される振動データを取得し、取得した振動データを振動周波数スペクトルに変換し、変換された振動周波数スペクトルの所定範囲の周波数を所定の周波数間隔で抽出し、抽出した周波数毎に、正常時のプロセスレシピの所定回数分のデータを使って振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を計算し、振動周波数スペクトルの振幅の平均値と標準偏差を用いて正常モデルを作成し、抽出した周波数分、正常モデルの振幅値と予め決められた閾値を比較し、所定の個数以上の周波数の振幅値が閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する技術が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部材の異常予兆を検知することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る基板処理装置の処理炉の概略構成を示す立断面図である。
図3】一実施形態に係る基板処理装置の主制御部の概略構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る基板処理装置を半導体製造装置として使用した場合の基板処理工程を示すフロー図である。
図5】一実施形態に係る基板処理装置の制御システムを示すブロック図である。
図6】一実施形態に係る基板処理装置の制御システムにおける特異スペクトル変換の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態に係る半導体装置の製造方法、予兆検知プログラム、及び基板処理装置ついて説明する。なお、図1において、矢印Fは基板処理装置の正面方向、矢印Bは後面方向、矢印Rは右方向、矢印Lは左方向、矢印Uは上方向、矢印Dは下方向を指す。
【0011】
<処理装置の全体構成>
基板処理装置10の構成について、図1図2を参照しながら説明する。図1に示すように、基板処理装置10は耐圧容器からなる筐体12を備えている。筐体12の正面壁には、メンテナンス可能なように設けられた開口部が開設され、この開口部には、開口部を開閉する立ち入り機構として一対の正面メンテナンス扉14が設けられている。なお、この基板処理装置10では、後述するシリコン等の基板(ウエハ)16(図2参照)を収納したポッド(基板収容器)18が、筐体12内外へ基板16を搬送するキャリアとして使用される。基板16は、例えば半導体装置に用いられるものである。
【0012】
筐体12の正面壁には、ポッド搬入搬出口が、筐体12内外を連通するように開設されている。ポッド搬入搬出口には、ロードポート20が設置されている。ロードポート20上にはポッド18が載置されるとともに、ポッド18の位置合わせが行われるように構成されている。
【0013】
筐体12内の略中央部における上部には、回転式ポッド棚22が設置されている。回転式ポッド棚22上には、複数個のポッド18が保管されるように構成されている。回転式ポッド棚22は、垂直に立設されて水平面内で回転される支柱と、支柱に上中下段の各位置において放射状に支持された複数枚の棚板と、を備えている。
【0014】
筐体12内におけるロードポート20と回転式ポッド棚22との間には、ポッド搬送装置24が設置されている。ポッド搬送装置24は、ポッド18を保持したまま昇降可能なポッドエレベータ24Aとポッド搬送機構24Bとを有している。このポッドエレベータ24Aとポッド搬送機構24Bとの連続動作により、ロードポート20、回転式ポッド棚22、及び後述するポッドオープナ26との間で、ポッド18を相互に搬送するように構成されている。
【0015】
筐体12内の下部には、筐体12内の略中央部から後端にわたってサブ筐体28が設けられている。サブ筐体28の正面壁には、基板16をサブ筐体28内外に搬送する一対のポッドオープナ26がそれぞれ設置されている。
【0016】
各ポッドオープナ26は、ポッド18を載置する載置台と、ポッド18のキャップを着脱するキャップ着脱機構30とを備えている。ポッドオープナ26は、載置台上に載置されたポッド18の蓋をキャップ着脱機構30によって着脱することにより、ポッド18の基板出し入れ口を開閉するように構成されている。
【0017】
サブ筐体28内には、ポッド搬送装置24や回転式ポッド棚22等が設置された空間から流体的に隔絶された移載室32が構成されている。移載室32の前側領域には基板移載機構34が設置されている。基板移載機構34は、基板16を水平方向に回転ないし直動可能な基板移載装置34Aと、基板移載装置34Aを昇降させる基板移載装置エレベータ34Bとで構成されている。
【0018】
基板移載装置エレベータ34Bは、サブ筐体28の移載室32の前方領域右端部と筐体12右側の端部との間に設置されている。また、基板移載装置34Aは、基板16の保持部としての図示しないツイーザを備えている。これら基板移載装置エレベータ34B及び基板移載装置34Aの連続動作により、基板16を基板保持具としてのボート36に対して装填(チャージング)及び脱装(ディスチャージング)することが可能に構成されている。
【0019】
サブ筐体28(移載室32)内には、図2に示すように、ボート36を昇降させるボートエレベータ38が設置されている。ボートエレベータ38の昇降台には、アーム40が連結されており、アーム40には、蓋体(シールキャップ)42が水平に据え付けられている。蓋体42は、ボート36を垂直に支持し、後述する処理炉44の下端部を閉塞可能なように構成されている。
【0020】
主に、図1に示す回転式ポッド棚22、ポッド搬送装置24、基板移載機構34、ボート36、図2に示すボートエレベータ38、及び後述する回転機構46により、基板16を搬送する搬送機構が構成されている。これら回転式ポッド棚22、ボートエレベータ38、ポッド搬送装置24、基板移載機構34、ボート36、及び回転機構46は、それぞれ後述する搬送コントローラ48に電気的に接続されている。
【0021】
図1に示すように、ボート36を収容して待機させる待機部50の上方には、処理炉44が設けられている。また、移載室32の基板移載装置エレベータ34B側とは反対側である左側端部には、クリーンユニット52が設置されている。クリーンユニット52は、清浄化した雰囲気もしくは不活性ガスであるクリーンエア52Aを供給するよう構成されている。
【0022】
クリーンユニット52から吹き出されたクリーンエア52Aは、基板移載装置34A、待機部50にあるボート36の周囲を流通する。その後、クリーンエア52Aは、図示しないダクトにより吸い込まれて筐体12の外部に排気されるか、もしくはクリーンユニット52の吸い込み側である一次側(供給側)にまで循環されてクリーンユニット52によって移載室32内に再び吹き出される。
【0023】
なお、筐体12及びサブ筐体28の外周には、基板処理装置10内への立ち入り機構として、図示しない複数の装置カバーが取り付けられている。これら装置カバーは、メンテナンス作業時に取り外すことで、保守員が基板処理装置10内に立ち入り可能となっている。これら装置カバーと相対する筐体12及びサブ筐体28の端部には、立ち入りセンサとしてのドアスイッチ54(筐体12のドアスイッチ54のみ図示)が設けられている。
【0024】
また、ロードポート20上には、ポッド18の載置を検知する基板検知センサ56が設けられている。これらドアスイッチ54及び基板検知センサ56等のスイッチ、センサ類は、後述する主制御部としての基板処理装置用コントローラ58(図2図3参照)に電気的に接続されている。
【0025】
図2に示すように、基板処理装置10は、筐体12の外に、ガス供給ユニット60と、排気ユニット62とを備えている。ガス供給ユニット60内には、処理ガス供給系統とパージガス供給系統とが格納されている。処理ガス供給系統は、図示しない処理ガス供給源及び開閉バルブと、ガス流量制御器としてのマスフローコントローラ(以下、MFCと略す)64Aと、処理ガス供給管66Aと、を含んでいる。また、パージガス供給系統は、図示しないパージガス供給源及び開閉バルブと、MFC64Bと、パージガス供給管66Bと、を含んでいる。
【0026】
排気ユニット62内には、排気管68と、圧力検知部としての圧力センサ70と、例えばAPC(Auto Pressure Contoroller)バルブからなる圧力調整部72と、により構成されるガス排気機構が格納されている。図示を省略するが、排気ユニット62の下流側において、排気管68には、排気装置としての真空ポンプ74が接続されている。なお、真空ポンプ74もガス排気機構に含めるようにしてもよい。また、排気ユニット62と真空ポンプ74を同じフロアに設置するなど近傍に設置してもよいし、排気ユニット62と真空ポンプ74を異なるフロアにするなど離間して設置するようにしてもよい。
【0027】
図2に示すように、主制御部としての基板処理装置用コントローラ58は、搬送コントローラ48、温度コントローラ76、圧力コントローラ78、ガス供給コントローラ80にそれぞれ接続されている。また、図5に示すように、基板処理装置用コントローラ58は、後述する予兆検知部としての予兆検知コントローラ82に接続されている。
【0028】
<処理炉の構成>
図2に示すように、処理炉44は、反応管(プロセスチューブ)84を備えている。反応管84は、内部反応管(インナーチューブ)84Aと、その外側に設けられた外部反応管(アウターチューブ)84Bと、を備えている。内部反応管84Aは、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されており、内部反応管84A内の筒中空部には、基板16を処理する処理室86が形成されている。処理室86は、ボート36を収容可能なように構成されている。
【0029】
反応管84の外側には、反応管84の側壁面を囲うように、円筒形状のヒータ88が設けられている。ヒータ88は、ヒータベース90に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0030】
外部反応管84Bの下方には、外部反応管84Bと同心円状になるように、円筒形状の炉口部(マニホールド)92が配設されている。炉口部92は、内部反応管84Aの下端部と外部反応管84Bの下端部とを支持するように設けられ、内部反応管84Aの下端部と外部反応管84Bの下端部とにそれぞれ係合している。
【0031】
なお、炉口部92と外部反応管84Bとの間には、シール部材としてのOリング94が設けられている。炉口部92がヒータベース90に支持されることにより、反応管84は垂直に据え付けられた状態となっている。この反応管84と炉口部92とにより反応容器が形成される。
【0032】
炉口部92には、処理ガスノズル96A及びパージガスノズル96Bが処理室86内に連通するように接続されている。処理ガスノズル96Aには、処理ガス供給管66Aが接続されている。処理ガス供給管66Aの上流側には、MFC64Aを介して、図示しない処理ガス供給源等が接続されている。また、パージガスノズル96Bには、パージガス供給管66Bが接続されている。パージガス供給管66Bの上流側には、MFC64Bを介して、図示しないパージガス供給源等が接続されている。
【0033】
炉口部92には、処理室86の雰囲気を排気する排気管68が接続されている。排気管68は、内部反応管84Aと外部反応管84Bとの隙間によって形成される筒状空間98の下端部に配置されて筒状空間98に連通している。排気管68の下流側には、圧力センサ70、圧力調整部72、真空ポンプ74が上流側から順に接続されている。
【0034】
炉口部92の下方には、炉口部92の下端開口を気密に閉塞可能な円盤状の蓋体42が設けられており、蓋体42の上面には、炉口部92の下端と当接するシール部材としてのOリング100が設けられている。
【0035】
蓋体42の中心部付近における処理室86と反対側には、ボート36を回転させる回転機構46が設置されている。回転機構46の回転軸102は、蓋体42を貫通してボート36を下方から支持している。また、回転機構46には、回転モータ46Aが内蔵されており、この回転モータ46Aによって回転機構46の回転軸102を回転させ、ボート36を回転させることで、基板16を回転させるように構成されている。
【0036】
蓋体42は、反応管84の外部に設けられたボートエレベータ38によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。蓋体42を昇降させることにより、ボート36を処理室86内外へ搬送することが可能に構成されている。回転機構46の回転モータ46A及びボートエレベータ38には、搬送コントローラ48が電気的に接続されている。
【0037】
ボート36は、複数枚の基板16を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持するように構成されている。また、ボート36の下部には、断熱部材としての円板形状の断熱板104が水平姿勢で多段に複数枚配置されている。ボート36及び断熱板104は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料により構成されている。断熱板104は、ヒータ88からの熱を炉口部92側に伝えにくくするために設けられている。
【0038】
また、反応管84内には、温度検知器としての温度センサ106が設置されている。このヒータ88と温度センサ106とには、温度コントローラ76が電気的に接続されている。
【0039】
<基板処理装置の動作>
続いて、図1及び図2を参照しながら、半導体デバイスの製造工程の一工程として、基板16上に薄膜を形成する方法について説明する。なお、基板処理装置10を構成する各部の動作は、基板処理装置用コントローラ58により制御される。
【0040】
図1に示すように、ポッド18が工程内搬送装置(図示せず)によってロードポート20に供給されると、基板検知センサ56によりポッド18が検知され、ポッド搬入搬出口がフロントシャッタ(図示せず)によって開放される。そして、ロードポート20の上のポッド18が、ポッド搬送装置24によってポッド搬入搬出口から筐体12内部へと搬入される。
【0041】
筐体12内部へと搬入されたポッド18は、ポッド搬送装置24によって回転式ポッド棚22の棚板上へ自動的に搬送されて一時的に保管される。その後、ポッド18は、棚板上から一方のポッドオープナ26の載置台上に移載される。なお、筐体12内部へと搬入されたポッド18は、ポッド搬送装置24によって直接ポッドオープナ26の載置台上に移載されてもよい。
【0042】
載置台上に載置されたポッド18は、その蓋がキャップ着脱機構30によって取り外され、基板出し入れ口が開放される。その後、基板16(図2参照)は、基板移載装置34Aのツイーザによって基板出し入れ口を通じてポッド18内からピックアップされ、図示しないノッチ合わせ装置にて方位が整合された後、移載室32の後方にある待機部50内へ搬入され、ボート36内に装填(チャージング)される。ボート36に基板16を装填した基板移載装置34Aは、ポッド18が載置された載置台に戻り、ポッド18内から次の基板16を取り出して、ボート36内に装填する。
【0043】
この一方(上段または下段)のポッドオープナ26における基板移載機構34による基板16のボート36への装填作業中に、他方(下段または上段)のポッドオープナ26の載置台上には、別のポッド18が回転式ポッド棚22上からポッド搬送装置24によって搬送される。この別のポッド18が載置台に移載されることで、ポッドオープナ26によるポッド18の開放作業が同時進行される。
【0044】
予め指定された枚数の基板16がボート36内に装填されると、処理炉44の下端部が、図示しない炉口シャッタによって開放される。続いて、基板16群を保持したボート36は、蓋体42がボートエレベータ38によって上昇されることにより処理炉44内へ搬入(ローディング)されていく。
【0045】
上述のように、複数枚の基板16を保持したボート36が処理炉44の処理室86内に搬入(ローディング)されると、図2に示すように、蓋体42はOリング100を介して炉口部92の下端をシールした状態となる。
【0046】
その後、処理室86内が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ74によって真空排気される。この際、圧力センサ70が測定した圧力値に基づき、圧力調整部72(の弁の開度)がフィードバック制御される。また、処理室86が所望の温度となるように、ヒータ88によって加熱される。この際、温度センサ106が検知した温度値に基づき、ヒータ88への通電量がフィードバック制御される。続いて、回転機構46により、ボート36及び基板16が回転させられる。
【0047】
次いで、処理ガス供給源から供給されてMFC64Aにて所望の流量となるように制御された処理ガスは、処理ガス供給管66A内を流通して処理ガスノズル96Aから処理室86内に導入される。導入された処理ガスは処理室86を上昇し、内部反応管84Aの上端開口から筒状空間98に流出して排気管68から排気される。処理ガスは、処理室86を通過する際に基板16の表面と接触し、この際に熱反応によって基板16の表面上に薄膜が堆積される。
【0048】
予め設定された処理時間が経過すると、パージガス供給源から供給されてMFC64Bにて所望の流量となるように制御されたパージガスが処理室86に供給され、処理室86内が不活性ガスに置換されるとともに、処理室86の圧力が常圧に復帰される。
【0049】
その後、ボートエレベータ38により蓋体42が下降されて炉口部92の下端が開口されるとともに、処理済の基板16を保持するボート36が炉口部92の下端から反応管84の外部へと搬出(アンローディング)される。その後、処理済の基板16はボート36より取り出され、ポッド18内へ格納(ディスチャージ)される。
【0050】
ディスチャージ後は、ノッチ合わせ装置での整合工程を除き、上述の手順とほぼ反対の手順で、処理後の基板16を格納したポッド18が筐体12外へと搬出される。
【0051】
<基板処理装置用コントローラの構成>
次に、図3を参照して、主制御部としての基板処理装置用コントローラ58について具体的に説明する。
【0052】
基板処理装置用コントローラ58は、主にCPU(Central Processing Unit)等の演算制御部108と、RAM110、ROM112、及び図示しないHDDを備える記憶部114と、マウスやキーボード等の入力部116と、モニタ等の表示部118と、から構成されている。なお、演算制御部108、記憶部114、入力部116、及び表示部118によって、各データを設定可能に構成されている。
【0053】
演算制御部108は、基板処理装置用コントローラ58の中枢を構成し、ROM112に記憶された制御プログラムを実行し、入力部116からの指示に従って、レシピ記憶部も構成する記憶部114に記憶されているレシピ(例えば、基板処理レシピとしてのプロセスレシピ等)を実行する。
【0054】
ROM112は、フラッシュメモリ、ハードディスク等により構成される記録媒体であり、基板処理装置10の各部材(例えば真空ポンプ74等)の動作の制御を行う演算制御部108の動作プログラム等を記憶する。また、RAM110(メモリ)は、演算制御部108のワークエリア(一時記憶部)として機能する。
【0055】
ここで、基板処理レシピ(プロセスレシピ)は、基板16を処理する処理条件や処理手順等が定義されたレシピである。また、レシピファイルには、搬送コントローラ48、温度コントローラ76、圧力コントローラ78、及びガス供給コントローラ80等に送信する設定値(制御値)や送信タイミング等が、基板処理のステップ毎に設定されている。
【0056】
演算制御部108は、処理炉44内にローディングされた基板16に対し、所定の処理がなされるように、処理炉44内の温度や圧力、処理炉44内に導入される処理ガスの流量等を制御する機能を有している。
【0057】
搬送コントローラ48は、基板16を搬送する搬送機構を構成する回転式ポッド棚22、ボートエレベータ38、ポッド搬送装置24、基板移載機構34、ボート36、及び回転機構46の搬送動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0058】
また、回転式ポッド棚22、ボートエレベータ38、ポッド搬送装置24、基板移載機構34、ボート36、及び回転機構46には、それぞれセンサが内蔵されている。これらのセンサがそれぞれ所定の値や異常な値等を示した際には、基板処理装置用コントローラ58にその旨の通知が行われる。なお、基板処理装置10の各部材の異常予兆の検知システムについては、後に詳述する。
【0059】
記憶部114には、各種データ等が格納されるデータ格納領域120と、基板処理レシピ(プロセスレシピ)を含む各種プログラムが格納されるプログラム格納領域122とが設けられている。データ格納領域120は、レシピファイルに関連する各種パラメータが格納される。また、プログラム格納領域122には、上述の基板処理レシピ(プロセスレシピ)を含む装置を制御するのに必要な各種プログラムが格納されている。
【0060】
また、基板処理装置用コントローラ58の表示部118には、図示しないタッチパネルが設けられている。タッチパネルは、上述の基板搬送系統及び基板処理系統への操作コマンドの入力を受け付ける操作画面を表示するように構成されている。なお、基板処理装置用コントローラ58は、パソコンやモバイル等の操作端末(端末装置)のように、少なくとも表示部118と入力部116を含む構成であればよい。
【0061】
温度コントローラ76は、処理炉44のヒータ88の温度を制御することで処理炉44内の温度を調節する。なお、温度センサ106が所定の値や異常な値等を示した際には、基板処理装置用コントローラ58にその旨の通知が行われる。
【0062】
圧力コントローラ78は、圧力センサ70により検知された圧力値に基づいて、処理室86内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力調整部72を制御する。なお、圧力センサ70が所定の値や異常な値等を示した際には、基板処理装置用コントローラ58にその旨の通知が行われる。
【0063】
ガス供給コントローラ80は、処理室86内に供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC64A、64Bを制御するように構成されている。なお、MFC64A、64B等が備えるセンサ(図示せず)が所定の値や異常な値等を示した際には、基板処理装置用コントローラ58にその旨の通知が行われる。
【0064】
<基板処理工程>
次に、本実施形態の基板処理装置10を半導体製造装置として使用して、基板を処理する基板処理工程の概略について、図4を用いて説明する。この基板処理工程は、例えば、半導体装置(IC、LSI等)の製造方法の一工程である。なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作や処理は、基板処理装置用コントローラ58により制御される。
【0065】
ここでは、基板16に対して、原料ガス(第1の処理ガス)と反応ガス(第2の処理ガス)とを交互に供給することで、基板16上に膜を形成する例について説明する。また、以下、原料ガスとしてヘキサクロロジシラン(SiCl、以下HCDSと略す)ガスを用い、反応ガスとしてアンモニア(NH)を用いて基板16上に薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。なお、例えば、基板16上には、予め所定の膜が形成されていてもよく、基板16又は所定の膜には、予め所定のパターンが形成されていてもよい。
【0066】
(基板搬入工程S102)
まず、基板搬入工程S102では、基板16をボート36に装填し、処理室86内へ搬入する。
【0067】
(成膜工程S104)
成膜工程S104では、次の4つのステップを順次実行して基板16の表面上に薄膜を形成する。なお、ステップ1~4の間は、ヒータ88により、基板16を所定の温度に加熱しておく。
【0068】
[ステップ1]
ステップ1では、処理ガス供給管66Aに設けた図示しない開閉バルブと、排気管68に設けた圧力調整部72(APCバルブ)をともに開けて、MFC64Aにより流量調節されたHCDSガスを処理ガス供給管66Aに通す。そして、HCDSガスを処理ガスノズル96Aから処理室86内に供給しつつ、排気管68から排気する。この際、処理室86内の圧力を所定の圧力に保つ。これにより、基板16の表面にシリコン薄膜を形成する。
【0069】
[ステップ2]
ステップ2では、処理ガス供給管66Aの開閉バルブを閉めてHCDSガスの供給を止める。排気管68の圧力調整部72(APCバルブ)は開いたままとし、真空ポンプ74により処理室86内を排気し、残留ガスを処理室86内から排除する。また、パージガス供給管66Bに設けられた開閉バルブを開けて、N等の不活性ガスを処理室86内に供給して処理室86内のパージを行い、処理室86内の残留ガスを処理室86外に排出する。
【0070】
[ステップ3]
ステップ3では、パージガス供給管66Bに設けられた図示しない開閉バルブと、排気管68に設けられた圧力調整部72(APCバルブ)をともに開け、MFC64Bにより流量調節されたNHガスをパージガス供給管66Bに通す。そして、NHガスをパージガスノズル96Bから処理室86内に供給しつつ、排気管68から排気する。この際、処理室86内の圧力を所定の圧力に保つ。これにより、HCDSガスによって基板16の表面に形成されたシリコン薄膜とNHガスとが表面反応して、基板16上にSiN膜が形成される。
【0071】
[ステップ4]
ステップ4では、パージガス供給管66Bの開閉バルブを閉めて、NHガスの供給を止める。排気管68の圧力調整部72(APCバルブ)は開いたままとし、真空ポンプ74により処理室86内を排気し、残留ガスを処理室86内から排除する。また、N等の不活性ガスを処理室86内に供給し、再び処理室86内のパージを行う。
【0072】
上記のステップ1~4を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによって基板16上に所定膜厚のSiN膜を形成する。
【0073】
(基板搬出工程S106)
基板搬出工程S106では、SiN膜が形成された基板16が載置されたボート36を、処理室86から搬出する。
【0074】
<本実施形態における制御システム>
次に、基板処理装置10の各部材の異常予兆(故障予兆)を検知する制御システムについて、図5及び図6を参照して説明する。なお、以下、基板処理装置10によって基板16上に薄膜を形成する例を用いて説明する。
【0075】
図5に示すように、制御システムは、主制御部としての基板処理装置用コントローラ58と、予兆検知部としての予兆検知コントローラ82と、各種センサ類124と、データ収集ユニット(Data Collection Unit、以下DCUと略す)126と、エッジコントローラ(Edge Controller、以下ECと略す)128と、を備えている。なお、制御システムを構成するこれらは、有線または無線でそれぞれ接続されている。
【0076】
基板処理装置用コントローラ58は、顧客ホストコンピュータを含む図示しない上位コンピュータと、図示しない操作部と、に接続されている。操作部は、基板処理装置用コントローラ58が取得した各種のデータ(センサデータ等)を、上位コンピュータとの間でやり取り可能な構成とされている。
【0077】
予兆検知コントローラ82は、基板処理装置10及びその付帯設備に設けられた様々な部材のセンサからセンサデータを取得して基板処理装置10の状態を監視する。具体的には、予兆検知コントローラ82は、各種センサ類124からのデータを利用して数値指標を算出し、予め決めた閾値と比較して異常予兆(すなわち故障予兆)を検知する。なお、予兆検知コントローラ82は、センサデータの動きを元に、異常予兆の発生を検知する予兆検知プログラムを内蔵している。
【0078】
また、予兆検知コントローラ82は、基板処理装置用コントローラ58に直接接続される系統と、DCU126を経由して基板処理装置用コントローラ58に接続される系統の2つの系統を有している。このため、予兆検知コントローラ82で異常予兆を検知した場合、DCU126を介さずに基板処理装置用コントローラ58に直接信号を出して、アラームを発生させるとともに、異常予兆が認められた部材に設けられたセンサのセンサデータの情報を表示部118(図3参照)の画面に表示することが可能とされている。
【0079】
各種センサ類124は、基板処理装置10及びその付帯設備に設けられた様々な部材に設けられたセンサ(例えば圧力センサ70や温度センサ106等)であり、各部材の流量、濃度、温度、湿度(露点)、圧力、電流、電圧、電圧、トルク、振動、位置、回転速度等を検知する。
【0080】
DCU126は、プロセスレシピの実行中に各種センサ類124のデータを収集して蓄積する。また、EC128は、センサの種類によって必要に応じてセンサデータを一旦取り込み、生データに高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、以下FFTと略す)等の処理を加えた後、予兆検知コントローラ82に送信する。
【0081】
また、各種センサ類124は、送信経路の異なる第1センサ系統124Aと、第2センサ系統124Bとに分けられている。第1センサ系統124Aは、0.1秒単位でリアルタイムに生データを取込む系統であり、第1センサ系統124Aから基板処理装置用コントローラ58及びDCU126を経て予兆検知コントローラ82にリアルタイムで生データが送信される。この第1センサ系統124Aには、例えば温度センサや、圧力センサ、ガス流量センサ等のセンサが含まれる。
【0082】
一方、第2センサ系統124Bは、EC128でFFT等の処理をかけて解析に必要な部分のみ取り出し、加工されたファイル形式でデータが送信される系統であり、第2センサ系統124BからEC128を経て予兆検知コントローラ82に加工したデータが送信される。この第2センサ系統124Bには、例えば振動センサ等のセンサが含まれる。
【0083】
センサが振動センサの場合、ミリ秒単位で振動データが蓄積されるため、データ量が膨大となり、そのままデータを予兆検知コントローラ82に送信すると、予兆検知コントローラ82の記憶部容量の大量消費につながる。この振動センサのデータは、最終的にFFT等の処理をして解析に使用するため、その処理をあらかじめEC128で実施させることで、情報量を減少させ、かつ解析し易いデータの形式として予兆検知コントローラ82へ送信することができる。
【0084】
(第1実施形態)
以下、上述した制御システムを用いた基板処理装置10の各部材の異常予兆の検知工程の第1実施形態について、具体的に説明する。
【0085】
[非正常度の算出]
まず、異常予兆検知対象の部材に直接設置してあるセンサが検出した値と、その部材の状態が直接又は間接的に影響する他の部材のセンサが検出した値とを複数使用して、「非正常度」を算出する。本実施形態では、例えば異常予兆検知対象の部材が異常状態に近づくと、非正常度の値が概ね増加する性質を持つように構成する。なお、非正常度は、異常予兆検知対象の部材が異常状態に近づくと、値が減少する性質を持つように構成してもよい。
【0086】
[非正常度を構成する元データ]
基板処理のシーケンスは、例えば、基板16の処理室86内への搬入、処理室86内の真空引き、昇温、不活性ガスによるパージ、昇温待ち、基板16の処理(例えば成膜)、処理室86内のガス置換、大気圧へ戻す、処理後の基板16の搬出等、それぞれの目的を持った多くのイベントで構成されている。なお、上記のイベントは基板処理シーケンスの一例であり、各イベントはさらに細かく分割されているケースがある。
【0087】
本実施形態では、シーケンス中のセンサデータをすべて使うことなく、これらのイベントの中の1つ以上の特定のイベントにおける、1つ以上のセンサの値を、アルゴリズム内の数値指標である「非正常度」を算出する元データとして使用している。また、Run毎の非正常度値を監視して、基板処理装置10の各部材の異常予兆を検知する。このように、特定のイベントのデータだけを使用することで、データ蓄積量を節約することが可能となる。
【0088】
例えば、真空ポンプ74の異常予兆検知は、真空ポンプ74に大きな負荷がかかるタイミングで検知し易い状態となる。処理室86の圧力を大気圧から所定圧力まで減圧させるステップ、すなわち真空引き開始時や、真空引き開始後数分間の大気圧に近い圧力帯が、真空ポンプ74に大きな負荷がかかるタイミングに該当する。
【0089】
具体的には、基板処理装置10は1台で複数の工程を担当しており、成膜条件が異なるもの等、異なった処理レシピが入り混じって着工される場合がある。基板16の成膜時には原料ガスが流れるため、原料ガスが反応又は熱分解して固形物を作る場合があり、それが真空ポンプ74に負荷をかける場合があるため、成膜イベント中を監視することも異常予兆検知にとっては有効である。
【0090】
しかし、成膜イベントが異なるRunが混じっていると、異なる成膜イベント同士では条件が異なるため、直接の比較が困難となり、成膜イベントが同じもの同士のみで経時変化を監視することになり、監視対象が分散され、傾向が分かり難くなる虞がある。
【0091】
一方、基板処理前の真空引きのイベントは、その後の基板処理イベントが異なっても、共通な場合が多い。つまり、同一装置で複数の異なる成膜条件のレシピが着工される場合でも、この各Runで共通の真空引き開始時の状態を監視してセンサデータを取得することで、基板処理内容に依存せず、同一の状態の経時変化を知ることができ、精度の高い予測が可能となる。
【0092】
[非正常度の計算例]
ここで、振動センサのセンサデータを用いる場合、及び振動センサ以外のセンサ(例えば電流センサ、温度センサ、排気圧センサ、トルク値データ、及び電流データ等)のセンサデータを用いる場合の非正常度の計算例をそれぞれ示す。
【0093】
まず、振動センサのセンサデータ(振動データ)を用いて個別周波数毎に異常の有無を判断する場合は、以下の手順となる。
【0094】
(1)プロセスレシピを構成する各ステップのうちの指定ステップにおけるセンサデータのうち、振動センサにより検出される振動データ(生データ)を取得する。
(2)取得した振動データをFFT等の処理によって振動周波数スペクトルに変換し、変換された振動周波数スペクトルの所定範囲(例えば10Hz~5000Hz)の周波数を所定の周波数間隔(例えば10Hz毎)で抽出する(数値は振動の振幅(包絡線)であり、例示の場合500次元になる)。
(3)抽出した周波数毎に、正常時のプロセスレシピの所定回数分のデータ(例えば30Run分)を使って振動周波数スペクトルの振幅の平均値μと標準偏差σを計算し、正常時の振幅は正規分布N(μ、σ)に従うと仮定し、これを正常モデルとする。
(4)正常モデル作成後の(2)の数値を非正常度ベクトルとして、抽出した周波数毎に正常モデルの振幅値と予め決められた閾値と比較し、所定個数以上(例えばm(m≧1)個以上)の周波数の振幅値が閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する。なお、閾値は、例えば(3)で求めた平均値μと標準偏差σを用い、標準偏差σを3倍した数値を平均値μに加算又は減算した範囲(μ±3σ)で算出される。
【0095】
また、振動センサのセンサデータ(振動データ)を用いて各周波数の振幅の和で判断する場合は、以下の手順となる。
【0096】
(1)プロセスレシピを構成する各ステップのうちの指定ステップにおけるセンサデータのうち、振動センサにより検出される振動データ(生データ)を取得する。
(2)取得した振動データをFFT等の処理によって振動周波数スペクトルに変換し、変換された振動周波数スペクトルの所定範囲(例えば10Hz~5000Hz)の周波数を所定の周波数間隔(例えば10Hz毎)で抽出する(数値は振動の振幅(包絡線)であり、例示の場合500次元になる)。
(3)抽出した周波数毎の振幅の総和を正常時のRun毎にすべて足し算する(1Run毎に1つの振幅の和が得られるため、30Runなら30個の数字が得られる)。
(4)Run毎に求まった数値群から、その平均値μと標準偏差σを計算し、Run毎に求めた和が正規分布N(μ、σ)に従うと仮定し、これを正常モデルとする。
(5)正常モデル作成後の(3)の値を非正常度として、正常モデルの振幅値と予め決められた閾値と比較し、振幅値が閾値を外れた場合、異常予兆有りと判断する。なお、閾値は、例えば(3)で求めた平均値μと標準偏差σを用い、標準偏差σを3倍した数値を平均値μに加算又は減算した範囲(μ±3σ)で算出される。
【0097】
また、振動データ以外のセンサデータを用いて基本統計量毎に判断する場合は、以下の手順となる。
【0098】
(1)正常時の対象イベントのセンサデータの平均値、標準偏差、N分位点、最大値、最小値の基本統計量の中から、1つ以上のデータを選択する。
(2)選択した正常時の基本統計量の統計量毎に平均値μ、標準偏差σを求め、各基本統計量が正規分布に従うと仮定する。これをセンサの各基本統計量の正常モデルとする。
(3)正常モデル作成後の、(1)の値を非正常度として、基本統計量毎にその値が予め決めた所定の閾値を外れた場合、異常予兆有りと判断する。なお、閾値は、例えば(2)で求めた平均値μと標準偏差σを用い、標準偏差σを3倍した数値を平均値μに加算又は減算した範囲(μ±3σ)で算出される。
【0099】
また、図6に示すように、振動データ以外のセンサデータを用いて特異スペクトル変換を用いて判断する場合は、以下の手順となる。なお、以下の手順では、Run pの周り窓幅nの部分時系列を使って過去と現在側において2つのデータ行列XとZを作成する。以下の手順は、特異スペクトル変換の一般的なやり方である。
【0100】
(1)それぞれM次元縦ベクトルとみて、それらを一番上S(p-n+1、1)から一番下S(p、M)までn個縦につなげてできるMn次元の縦ベクトルを準備する。
Run p-n+1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p-n+1、1)、S(p-n+1、2)、・・・・、S(p-n+1、M)}
・・・
Run p-1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p-1、1)、S(p-1、2)、・・・・、S(p-1、M)}
Run pの対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p、1)、S(p、2)、・・・・、S(p、M)}
(2)それぞれM次元縦ベクトルとみて、それらを一番上S(p-n+1、1)から一番下S(p、M)までn個縦につなげてできるMn次元の縦ベクトル((1)と比較して1つ古いRun群にシフトしたもの)を準備する。
Run p-nの対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p-n、1)、S(p-n、2)、・・・・、S(p-n、M)}
・・・
Run p-2の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p-2、1)、S(p-2、2)、・・・・、S(p-2、M)}
Run p-1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p-1、1)、S(p-1、2)、・・・・、S(p-1、M)}
(3)上記(1)、(2)と同様に、順に構成された縦ベクトルをK個準備し、古いものから新しいものへと左から右へそれらの縦ベクトルを並べてできるMn×K次元の行列X(p)を作成する。以上で特異スペクトル変換を実施するための履歴行列を作成したことになる。
(4)それぞれM次元縦ベクトルとみて、それらを一番上S(p+L、1)から一番下S(p+L-n+1、M)までn個縦につなげてできるMn次元の縦ベクトルを準備する。なお、Lを正の整数とする。
Run p+Lの対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L、1)、S(p+L、2)、・・・・、S(p+L、M)}
・・・
Run p+L-n+2の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L-n+2、1)、S(p+L-n+2、2)、・・・・、S(p+L-n+2、M)}
Run p+L-n+1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L-n+1、1)、S(p+L-n+1、2)、・・・・、S(p+L-n+1、M)}
(5)それぞれM次元縦ベクトルとみて、それらを一番上S(p+L-1、1)から一番下S(p+L-n、M)までn個縦につなげてできるMn次元の縦ベクトル((4)と比較して1つ古いRun群にシフトしたもの)を準備する。
Run p+L-1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L-1、1)、S(p+L-1、2)、・・・・、S(p+L-1、M)}
・・・
Run p+L-n+1の対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L-n+1、1)、S(p+L-n+1、2)、・・・・、S(p+L-n+1、M)}
Run p+L-nの対象イベントの時刻1、2、・・・・、Mにおけるセンサデータ
{S(p+L-n、1)、S(p+L-n、2)、・・・・、S(p+L-n、M)}
(6)上記(4)、(5)と同様に、順に構成された縦ベクトルをR個準備し、古いものから新しいものへと左から右へそれらの縦ベクトルを並べてできるMn×R次元の行列Z(p)を作成する。以上で特異スペクトル変換のテスト行列を作成したことになる。
(7)上記の行列X(p)と行列Z(p)に特異値分解を実施し、特異スペクトル変換を実施する。
(8)特異値分解で得られる左特異ベクトルを、X(p)においてr本、Z(p)においてm本選び、それぞれU(r)、Q(m)と行列を構成して、それらの積U(r)Q(m)の最大特異値を求める。それをλとし(0≦λ≦1)、1-λを非正常度(変化度)とする。この非正常度が予め決めた所定の閾値を外れた場合、異常予兆有と判断する。
【0101】
[非正常度を使っての異常予兆判断]
また、非正常度を使った異常予兆の有無の判断方法としては、例えば以下の方法が考えられる。なお、異常予兆有と判断した場合には、基板処理装置用コントローラ58へ通知する。
【0102】
(1)少なくとも1つのセンサデータの非正常度が閾値を外れた場合に、異常予兆有と判断する方法。
(2)2つ以上のセンサデータの非正常度が閾値を外れた場合に、異常予兆有と判断する方法。
(3)1つ又は2つ以上のセンサデータの非正常度が閾値を所定回数(例えば3回)外れた場合に、異常予兆有と判断する方法。
(4)振動データ以外のセンサデータの非正常度が、所定回数(例えば3回)連続して閾値から外れた場合に、異常予兆有と判断する方法。
(5)振動データ以外のセンサデータの非正常度が閾値から外れていても、振動データの非正常度が閾値から外れていない場合に、異常予兆有と判断しない方法。
(6)振動データの非正常度と、振動データ以外のセンサデータの非正常度の両方が閾値から外れた場合に、異常予兆有と判断する方法。
【0103】
例えば上記(2)、(5)、(6)の方法では、複数のセンサデータを用いて異常予兆を判断するため、センサの誤検知を減らすことができる。また、非正常度の動きは必ずしも単調ではないため、上記(3)、(4)の方法では、非正常度の値が閾値前後をふらつく場合の誤判断を減らすことができる。なお、非正常度の算出式と閾値、プログラムは、部材毎及び装置毎に異なり、事前に予兆検知コントローラ82内に組み込まれる。
【0104】
[異常予兆検知の解析画面の表示]
異常予兆検知の解析画面は、基板処理装置用コントローラ58の表示部118(図3参照)で表示可能とされている。このため、非正常度の推移と閾値、及び閾値を超えた回数等を目視することでき、部材の状態を非正常度で確認することができる。
【0105】
[ECが介在するケース]
ここで、図5に示す第2センサ系統124Bのケース、すなわちセンサと予兆検知コントローラ82との間にEC128が介在するケースについて説明する。
【0106】
[時刻同期]
振動センサのデータはEC128で変換されるため、EC128の時刻を持った形で予兆検知コントローラ82に送信される。この振動センサのデータと、DCU126及び基板処理装置用コントローラ58側の時刻を持つ他のセンサデータとを同時に解析に用いるには、両者の時刻を同期させて解析する必要がある。このため、EC128、DCU126、及び予兆検知コントローラ82は、基板処理装置用コントローラ58の時刻を基準時刻として、時刻を定期的に取り込み、時刻を同期させている。これにより、すべての部材の時刻が同期され、正確な解析が可能となる。
【0107】
ここで、具体例1として真空ポンプ74(図2参照)を例に、具体例2として回転モータ46A(図2参照)を例に、基板処理装置10の部材の異常予兆の検知方法についてそれぞれ具体的に説明する。
【0108】
[具体例1]
基板処理装置10の処理室86では、処理ガスの反応副生成物が内部に堆積し、この反応副生成物の量や高さが一定のレベルに達すると、真空ポンプ74の回転が急停止する。
【0109】
ここで、真空ポンプ74の電流データ、温度データ、排気圧データ、及び振動データの少なくとも一つのセンサデータをモニタし続け、それらのセンサデータの挙動の変化を予兆検知コントローラ82内の予兆検知プログラムで解析することで、真空ポンプ74の異常予兆を検知することが可能である。異常予兆が検知された場合は、基板処理装置用コントローラ58へその情報を送信し、真空ポンプ74の交換や、メンテナンスをするように作業者に通知する。
【0110】
[具体例2]
バッチ式の基板処理装置10では、基板16の面内の膜厚均一性を改善するため、基板16の外周に均等に処理ガス、反応ガスが当たるよう、成膜中にボート36を回転機構46によって回転させている。この回転機構46を構成する回転モータ46Aは、長期間の使用による劣化や、成膜副生成物が微量に徐々に混入することで、回転困難になり、故障することがある。
【0111】
ここで、この回転モータ46Aのトルク値データ、電流データ、及び振動データの少なくとも一つのセンサデータをモニタし続け、それらのセンサデータの挙動の変化を予兆検知コントローラ82内の予兆検知プログラムで解析することで、回転モータ46Aの異常予兆を検知することが可能である。異常予兆が検知された場合は、基板処理装置用コントローラ58へその情報を送信し、回転モータ46Aの交換や、メンテナンスをするように作業者に通知する。
【0112】
(第2実施形態)
次に、上述した制御システムを用いた基板処理装置10の各部材の異常予兆の検知工程の第2実施形態について、具体的に説明する。なお、予兆検知コントローラ82等の構成や、非正常度を使っての異常予兆判断は、第1実施形態と同様とされている。
【0113】
[非正常度の算出]
本実施形態では、異常予兆検知対象の部材に直接設置してあるセンサの値と、その部材の状態が直接又は間接的に影響する他の部材のセンサの値とを複数使用して、正常時のセンサデータを学習し、学習したデータと稼働中のデータを使って「非正常度」を算出する。
【0114】
本実施形態では、例えば異常予兆検知対象の部材が異常状態に近づくと、非正常度の値が概ね増加する性質を持つように構成する。なお、非正常度は、異常予兆検知対象の部材が異常状態に近づくと、値が減少する性質を持つように構成してもよい。
【0115】
ここで、具体例1として真空ポンプ74(図2参照)を例に、基板処理装置10の部材の異常予兆の検知方法について具体的に説明する。
【0116】
[具体例1]
一般的に、真空ポンプ74によって処理室86内を真空引きしている状態では、真空ポンプ74に不活性ガスや成膜ガスが流れて負荷が高い状態となり、異常予兆を検知し易い状態となる。一方、真空ポンプ74が処理室86を真空引きしていない状態では、真空ポンプ74の負荷は小さい状態となり、異常予兆を検知し難い、もしくは異常が発生し難い状態となる。このため、従来は、処理室86内を真空引きしている状態で真空ポンプ74を監視していた。
【0117】
これに対し、本実施形態では、真空ポンプ74によって処理室86内を真空引きしておらず、かつ、基板16が処理室86内に無い状態のイベントにおいて、意図的に大量のガスを真空ポンプ74に流して真空ポンプ74への負荷を高める。そして、その状態で真空ポンプ74の電流データ、振動データ、温度データ、背圧データ等を監視することで、異常予兆を検知し易くする。
【0118】
このように、処理室86内を真空引きしていない状態で真空ポンプ74に負荷をかけることにより、負荷をかけたときに真空ポンプ74が停止したとしても、基板16に損失が生じることを防ぐことができる。また、処理室86内を真空引きしていない状態で負荷をかけた程度で真空ポンプ74が停止した場合には、真空ポンプ74は故障する直前の状態であったと考えられる。このため、結果的に処理室86内を真空引きしている状態、すなわち基板処理時に真空ポンプ74が停止するという事態を回避することができる。
【0119】
(作用、効果)
上記実施形態によれば、基板処理装置10が、部材の異常予兆を検知する制御システムを備えているため、制御システムによって部材の異常予兆を検知した時点で、その部材を交換又はメンテナンスすることができる。
【0120】
これにより、部材が故障する前に交換等の対処をすることができるとともに、部材を故障する直前まで使用することで交換頻度を下げることができる。また、基板処理中の故障を防ぐことで、装置稼働率の向上、製品(基板16)の歩留まり低下防止、及び無駄なメンテナンス時間の削減が可能となる。
【0121】
また、上記実施形態によれば、異常予兆を検知する予兆検知コントローラ82が、基板処理装置用コントローラ58に接続されている。このため、異常予兆を検知し易い特定の基板処理シーケンスに限定して、データを取得、分析することが可能となる。
【0122】
また、真空ポンプ74の故障予兆検知に関しては、真空ポンプ74の電流データ、温度データ、排気圧データ、及び振動データを継続的に監視することに加えて、処理室86を真空引きしていない状態で真空ポンプ74を高負荷状態にして真空ポンプ74に異常が発生し易い状態を意図的に作り、上記の各センサデータを監視することで、異常予兆の確度を上げることが可能となる。
【0123】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0124】
例えば、上述の実施形態では、基板16上に薄膜を形成する例について説明した。しかし、本開示はこのような態様に限定されず、例えば基板16上に形成された薄膜等に対して、酸化処理、拡散処理、アニール処理、及びエッチング処理等の処理を行う場合にも、好適に適用可能である。
【0125】
また、上述の実施形態では、ホットウォール型の処理炉44を有する基板処理装置10を用いて薄膜を形成する例について説明したが、本開示はこれに限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて薄膜を成膜する場合にも、好適に適用できる。さらに、上述の実施形態では、一度に複数枚の基板16を処理するバッチ式の基板処理装置10を用いて薄膜を形成する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。
【0126】
また、本開示は、上述の実施形態に係る基板処理装置10のような半導体基板を処理する半導体製造装置等に限らず、ガラス基板を処理するLCD(Liquid Crystal Display)製造装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0127】
10 基板処理装置
16 基板
58 基板処理装置用コントローラ(主制御部の一例)
74 真空ポンプ
82 予兆検知コントローラ(予兆検知部の一例)
86 処理室
μ 平均値
σ 標準偏差
図1
図2
図3
図4
図5
図6