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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】自己乳化型ポリイソシアネート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/77 20060101AFI20230215BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230215BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230215BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230215BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 175/12 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C08G18/77 050
C08G18/00 C
C08G18/10
C08G18/28 065
C08G18/79 020
C09D5/02
C09D175/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018034656
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147907
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-01-12
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 求
(72)【発明者】
【氏名】陳孫 詩蒙
(72)【発明者】
【氏名】井上 宗宣
(72)【発明者】
【氏名】長岡 正宏
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩明
(72)【発明者】
【氏名】前田 秋生
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/167958(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102206410(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0096385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 75/00- 75/16
C09D175/00-175/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1で表されるアニオン性化合物(a)を含むことを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物製造用親水化剤。
【化1】
【請求項2】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされ、
アミン化合物(c)が、第三級モノアミン、または、二つのアミノ基が何れも第三級アミノ基である第三級ジアミンであり
アミン化合物(c)に含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0であることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化2】
【請求項3】
有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が10~35%であることを特徴とする、請求項2に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
有機ポリイソシアネート(b)が、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化型ポリイソシアネート組成物、それから得られる塗料組成物及びその塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤や塗料等として使用される硬化性組成物としてポリイソシアネートが知られているが、イソシアヌレート構造を有する疎水性ポリイソシアネートをノニオン性親水基含有一官能アルコール化合物により変性させ、水に乳化、分散して使用されている。(例えば特許文献1参照)。このような組成物の場合、高速撹拌等による強い剪断力を適用することによって、ポリイソシアネートを水性媒体に均一に組み込まなければならないといった問題点があった。また、ノニオン性親水基含有一官能アルコール化合物はポリエーテル構造を有しており、これが塗膜の硬度を下げるといった問題点があった。そこで、ノニオン性親水基含有一官能アルコールに代わり、アニオン性親水基含有アミンを用いてポリイソシアネートを変性させることで、水分散が容易な自己乳化型ポリイソシアネートが見出された(例えば特許文献2参照)。しかしながら、得られた塗料は、水分散安定性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-291613号公報
【文献】特表2003-533566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、塗料の水分散安定性、光沢性、硬度に優れる塗膜を得ることができる、自己乳化型ポリイソシアネート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のアニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物により、前記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の[1]~[6]に示す実施形態を含むものである。
【0007】
[1]下記式1で表されるアニオン性化合物(a)を含むことを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物製造用親水化剤。
【0008】
【化1】
【0009】
[2]アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
[3]有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が10~35%であることを特徴とする、上記[2]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0012】
[4]有機ポリイソシアネート(b)が、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含有することを特徴とする上記[2]又は[3]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0013】
[5]上記[2]乃至[4]のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料組成物。
【0014】
[6]上記[5]に記載の塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水分散安定性、光沢性、硬度に優れた塗膜を形成することができる、自己乳化型ポリイソシアネート組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0017】
本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物は、アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる。
【0018】
<アニオン性化合物(a)>
本発明において、アニオン性化合物(a)とは、有機ポリイソシアネート(b)に親水性を付与することができる自己乳化型ポリイソシアネート組成物製造用親水化剤である。
【0019】
本発明におけるアニオン性化合物(a)は、下記式(1)で表される5-(シクロヘキシルアミノ)ペンタンスルホン酸である。
【0020】
【化3】
【0021】
式(1)で表される本発明のアニオン性化合物(a)は、分子内のスルホ基の活性水素が分子内のアミンで中和されて、内部塩(1a)を形成しうるが、本発明のアニオン性化合物(a)は、内部塩(1a)を含むものである。本明細書においては、本発明のアニオン性化合物(a)を式(1)として表記する。
【0022】
【化4】
【0023】
5-(シクロヘキシルアミノ)ペンタンスルホン酸は、対応する塩化物から文献記載の方法(例えば国際公開第2006/085149号)を参考に調製することができる。
【0024】
<有機ポリイソシアネート(b)>
本発明に用いられる有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネートから選択される有機ポリイソシアネートを挙げることができる。また、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、ウレトイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等を単独、又は二種以上で適宜併用することができる。また、耐候性を考慮した場合、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの変性ポリイソシアネートが好ましく、被覆膜の耐久性や基材に対する密着性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。光沢性を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0025】
<芳香族ポリイソシアネート>
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
<芳香脂肪族ポリイソシアネート>
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、又はそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、又はそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0027】
<脂肪族ポリイソシアネート>
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0028】
<脂環族ポリイソシアネート>
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
また、有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が10~35%であることが好ましく、15~24%であることが更に好ましい。
【0030】
<アミン化合物(c)>
本発明に用いるアミン化合物(c)としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の第三級モノアミン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルアミノ)ブタンまたはN,N’-ジメチルピペラジン等の第三級ジアミンを挙げることができる。特にイソシアネートに対する反応性が低い点で、第三級モノアミンが好ましく、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリンが更に好ましい。
【0031】
また、本発明におけるアミン化合物(c)は、アミン化合物(c)に含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0となるように用いることが好ましく、0.5~1.5であることが更に好ましい。
【0032】
<自己乳化型ポリイソシアネート組成物の配合方法>
(a)、(b)、(c)の配合順序、配合比率、配合時の溶剤の使用の有無に特に限定はない。
【0033】
<塗料組成物>
次に、本発明における塗料組成物について説明する。
【0034】
本発明の塗料組成物は、本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる。塗料組成物としては、ウレタン樹脂やポリウレア樹脂があげられる。
【0035】
本発明の塗料組成物の製造における主剤としては、常温液状で水に不溶、或いは親和性を有しない高分子化合物を好ましく使用できる。なお、水に対して溶解性或いはある程度の親和性を有する水溶性樹脂、又は水系エマルジョンを使用することも可能である。これらの高分子化合物は分子内にイソシアネート基と反応する水酸基、カルボキシル基又はアミノ基(以下、「求核基」という。)を含有するものが好ましく、特に一分子あたり2個以上の求核基を含有するものが好ましい。また、これらの高分子化合物が、イソシアネート基と反応しうる求核基を含有していない場合、又はわずかしか含有していない場合でも、最終的には自己乳化型ポリイソシアネート組成物が水と反応してポリウレア化合物となり、硬くて強靭な塗膜を得ることができる。また、イソシアネート基が被着材表面に存在する求核基と反応するため、被着剤との密着性も向上する。なお、常温にてイソシアネート基と反応しうる求核基を含有する高分子化合物を使用した場合は、高分子化合物中の求核基と自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基が反応し架橋構造を形成するため、耐候性、耐溶剤性等が更に向上する。なお、本発明における常温とは5℃~40℃である。
【0036】
このような主剤としては、例えば飽和或いは不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和或いは不飽和の脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、更には飽和或いは不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。
【0037】
また、水溶性樹脂、水系エマルジョンも主剤として好適に使用することができ、水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、水溶性エチレン-酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性リグニン誘導体、水溶性フッ素樹脂、水溶性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0038】
水系エマルジョンとしては、いわゆるラテックス、エマルジョンと表現されるもの全てを包含し、例えば、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス等のゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、或いはこれらのラテックスをカルボキシル変性したもの、また、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコーンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン等が挙げられる。
【0039】
これらのうち、光沢、耐候性等の塗膜性能や接着強度の点で、アクリルポリオール、アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョンを特に好ましく用いることができる。
【0040】
これら主剤としての高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは1000~100万であり、さらに好ましくは1万~10万である。
【0041】
<配合比>
本発明の塗料組成物の製造における自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤との配合比は、本発明の主剤として分子中に活性水素基を含有するものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基と、主剤中の活性水素基とのモル比は、9:1~1:9が好ましく、6:4~4:6が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0042】
また、主剤として分子中に活性水素基を含まない、もしくは、わずかしか含まないものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤の質量比は、1:9~5:5が好ましく、1:9~3:7が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0043】
<配合方法>
主剤と自己乳化型ポリイソシアネート組成物の配合方法は、そのまま添加する、一旦自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水分散させる、又はウレタン分野で常用の溶剤に溶解させる等の方法が挙げられる。本発明においては、自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水に分散させてから、主剤と配合する方法が好ましい。
【0044】
<その他添加剤>
本発明における自己乳化型ポリイソシアネート組成物、または塗料組成物には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤や、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤、造膜助剤といった添加剤を適宜配合することができる。
【0045】
<塗装方法>
本発明の塗料組成物は、従来行なわれている通常の塗装方法によって塗装することで塗膜を得ることができる。塗装にはエアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロールコーター、ナイフコーター、ハケ等を用いることができる。
【実施例
【0046】
以下、合成例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。
【0047】
[アニオン性化合物の製造]
<参考例1>
還流管を取り付けた200mLフラスコ中、シクロヘキシルアミン(52.1mL,455mmol)をメタノール(120mL)に溶解し、5-クロロ-1-ペンタノール(17.7mL,152mmol)を氷冷しながら30分かけて滴下した。反応溶液を徐々に25℃まで昇温させた後、アルゴン雰囲気下、68時間還流した。揮発性成分を除去し、得られた固体に水酸化カリウム水溶液(20質量%,120mL)、飽和食塩水(120mL)及びジエチルエーテル(120mL)を加え、有機相を分離した。水相にジエチルエーテル(60mL)を加え、分液後、再度有機相を回収した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥後、揮発性成分を除去することで白色固体が析出した。析出した白色沈殿をろ取し、ヘキサンで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることにより、5-(シクロヘキシルアミノ)-1-ペンタノールを得た(14.6g,78.8mmol,52%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.64(t,J=6.1Hz,2H),2.64(t,J=7.1Hz,2H),2.40(tt,J=10.6,3.7Hz,1H),1.88(m,2H),1.72(m,2H),1.64-1.55(m,3H),1.54-1.48(m,2H),1.46-1.37(m,2H),1.31-1.12(m,3H),1.10-1.00(m,2H)。
【0048】
<参考例2>
還流管を取り付けた200mLフラスコ中、5-(シクロヘキシルアミノ)-1-ペンタノール(14.6g,79.0mmol)をクロロホルム(80mL)に溶解し、塩化チオニル(7.5mL,100mmol)を氷冷しながら30分かけて滴下した。反応溶液を徐々に25℃まで温めた後、アルゴン雰囲気下、3時間還流した。揮発性成分を除去し、得られた茶色固体を塩化メチレン(30mL)に溶解した後、徐々にジエチルエーテル(100mL)を加えることで、白色沈殿が析出した。析出した白色沈殿をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることにより、N-(5-クロロペンチル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩を得た(18.7g,77.8mmol,99%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):9.39(br,2H),3.54(t,J=6.5Hz,2H),2.98-2.89(m,3H),2.24(m,2H),1.99(m,2H),1.90-1.85(m,2H),1.84-1.79(m,2H),1.69-1.57(m,3H),1.56-1.48(m,2H),1.33-1.20(m,3H)。
【0049】
<実施例1>
還流管を取り付けた50mLフラスコにN-(5-クロロペンチル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩(9.00g,37.5mmol)、亜硫酸ナトリウム(9.44g,74.9mmol)、及び水(35mL)を量り取り、アルゴン雰囲気下、3時間還流した。反応溶液を強酸性イオン交換樹脂(アンバーリスト15JWET,オルガノ社製)に流通させた後、溶液が中性になるまで弱塩基性イオン交換樹脂(アンバーリストA21,オルガノ社製)を加えた。弱塩基性イオン交換樹脂をろ別し、揮発性成分を除去することで5-(シクロヘキシルアミノ)ペンタンスルホン酸(A-1)を得た(5.47g,21.9mmol,59%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.18(br,2H),2.96(m,1H),2.89(m,2H),2.42(m,2H),2.03-1.96(m,2H),1.79-1.72(m,2H),1.63-1.53(m,5H),1.43-1.36(m,2H),1.28-1.18(m,4H),1.10(m,1H)。
【0050】
<参考例3>
還流管を取り付けた300mLフラスコ中、シクロヘキシルアミン(50.2mL,440mmol)をメタノール(105mL)に溶解し、6-クロロ-1-ヘキサノール(19.5mL,146mmol)を氷冷しながら30分かけて滴下した。その後、参考例1と同様の方法で、6-(シクロヘキシルアミノ)-1-ヘキサノールを得た(21.8g,109mmol,75%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):4.32(br,1H),3.37(t,J=6.5Hz,2H),3.32(br,1H),2.48(t,J=7.1Hz,2H),2.30(m,1H),1.80-1.76(m,2H),1.67-1.62(m,2H),1.53(m,1H),1.43-1.32(m,4H),1.28-1.23(m,4H),1.17(m,2H),1.10(m,1H),1.00-0.91(m,2H)。
【0051】
<参考例4>
還流管を取り付けた300mLフラスコ中、6-(シクロヘキシルアミノ)-1-ヘキサノール(20.0g,100mmol)をクロロホルム(100mL)に溶解し、塩化チオニル(9.42mL,130mmol)を氷冷しながら30分かけて滴下した。その後、参考例2と同様の方法で、N-(6-クロロヘキシル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩を得た(23.4g,92.0mmol,92%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):8.64(br,2H),3.64(t,J=6.5Hz,2H),2.92(m,1H),2.87-2.83(m,2H),2.03-2.01(m,2H),1.77-1.68(m,4H),1.65-1.58(m,3H),1.44-1.08(m,9H)。
【0052】
<比較例1>
還流管を取り付けた200mLフラスコにN-(6-クロロヘキシル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩(15.00g,59mmol)、亜硫酸ナトリウム(14.90g,118mmol)、及び水(80mL)を量り取り、実施例1と同様の方法で、6-(シクロヘキシルアミノ)ヘキサンスルホン酸(A-2)を得た(13.8g,52.4mmol,89%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.37(br,2H),2.91(m,1H),2.85(m,2H),2.40(m,2H),2.02-2.00(m,2H),1.75-1.73(m,2H),1.61-1.53(m,5H),1.37-1.18(m,8H),1.11(m,1H)。
【0053】
<参考例5>
還流管を取り付けた200mLフラスコにシクロヘキシルアミン(27.5mL,240mmol)、メタノール(80mL)、8-クロロ-1-オクタノール(13.3mL,80mmol)を量り取り、参考例1と同様の方法で、8-(シクロヘキシルアミノ)-1-オクタノールを得た(4.16g,18.3mmol,23%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):3.64(t,J=6.6Hz,2H),2.60(t,J=7.2Hz,2H),2.39(tt,J=10.6,3.7Hz,1H),1.88(m,2H),1.72(m,2H),1.64-1.53(m,4H),1.49-1.43(m,3H),1.37-1.28(m,8H),1.28-1.12(m,3H),1.10-1.00(m,2H)。
【0054】
<参考例6>
還流管を取り付けた200mLフラスコに8-シクロヘキシルアミノ-1-オクタノール(4.16g,18.3mmol)、クロロホルム(18mL)、塩化チオニル(1.73mL,23.8mmol)を量り取り、参考例2と同様の方法で、N-(8-クロロオクチル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩を得た(4.37g,15.5mmol,84.7%)。H NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):9.31(br,2H),3.53(t,J=6.7Hz,2H),2.97-2.89(m,3H),2.24(m,2H),1.94(m,2H),1.90-1.81(m,2H),1.76(tt,J=6.7,7.0Hz,2H),1.69-1.58(m,2H),1.45-1.20(m,12H)。
【0055】
<比較例2>
還流管を取り付けた50mLフラスコにN-(8-クロロオクチル)-N-シクロヘキシルアミン塩酸塩(4.37g,15.5mmol)、亜硫酸ナトリウム(4.41g,35.0mmol)、及び水(35mL)を量り取り、実施例1と同様の方法で、8-(シクロヘキシルアミノ)オクタンスルホン酸(A-3)を得た(3.77g,12.9mmol,83%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.04(br,2H),2.92(m,1H),2.86(t,J=6.9Hz,2H),2.37(m,2H),2.00-1.96(m,2H),1.77-1.71(m,2H),1.63-1.51(m,5H),1.34-1.07(m,13H)。
【0056】
<比較例3>
還流管を取り付けた200mLフラスコに1,4-ブタンスルトン(9.31g,68.4mmol)及びシクロヘキシルアミン(8.20mL,71.8mmol)を量り取り、1,4-ジオキサン(70mL)に溶解させた。反応溶液を2日間還流することで、白色沈殿が析出した。反応溶液を25℃まで冷ました後、析出した白色沈殿をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることで、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタンスルホン酸(A-4)を得た(15.2g,64.6mmol,94%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.19(br,2H),2.96-2.89(m,3H),2.47(t,J=6.8Hz,2H),2.00(m,2H),1.74(m,2H),1.70-1.58(m,5H),1.28-1.18(m,4H),1.10(m,1H)。
【0057】
<比較例4>
還流管を取り付けた200mLフラスコに2,4-ブタンスルトン(7.60g,55.8mmol)及びシクロヘキシルアミン(6.70mL,58.3mmol)を量り取り、1,4-ジオキサン(60mL)に溶解させた。反応溶液を14時間還流することで、白色沈殿が析出した。反応溶液を25℃まで冷ました後、析出した白色沈殿をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることで、3-(シクロヘキシルアミノ)-1-メチルプロパンスルホン酸(A-5)を得た(12.8g,54.4mmol,97%)。H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.48(br,2H),3.06(m,2H),2.95(m,1H),1.62(m,1H),1.98-1.89(m,3H),1.82-1.71(m,3H),1.59(m,1H),1.27-1.19(m,4H),1.13(d,J=6.9Hz,3H),1.11(m,1H)。
【0058】
[自己乳化型ポリイソシアネートの製造]
<実施例2>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に、有機ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体含有、商品名:コロネートHXLV、イソシアネート含量23.8質量%、東ソー社製)を18.86g、実施例1で得られたA-1を0.75g(3mmol)、ジメチルシクロヘキシルアミンを0.39g(3mmol)仕込み、80℃で5時間ウレア化反応を行い、自己乳化型ポリイソシアネートP-1を得た。P-1のイソシアネート含量は21.1質量%であった。
【0059】
以下、実施例2と同様の方法で合成した硬化剤を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
・CAPS:シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、東京化成工業社製
・ジメチルシクロヘキシルアミン:試薬特級、東京化成工業社製。
【0062】
<光沢性・硬度評価用塗料組成物の調製>
主剤(アクリルエマルジョン、DIC社製、WE-303、固形分45%、水酸基価は固形分換算で84(mg-KOH/g))と、硬化剤(得られた自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~6))とを、イソシアネート基/水酸基=1.5(モル比)になるように配合した。この配合液を全体の固形分が40質量%になるように水を加え、ホモミキサーを用いて2000rpmで30秒間高速撹拌することにより、光沢性/硬度評価用塗料組成物を得た。
【0063】
<光沢性・硬度評価用塗膜の作製>
各光沢性/硬度評価用塗料組成物をアプリケーターにて鋼板に塗布し、温度25℃雰囲気下で1週間養生を行い、乾燥膜厚40μmの塗膜を形成させた。
【0064】
<光沢性試験>
上記で得られた各塗膜をBYK社製Micro-TRI-grossを用い、光沢20°を測定した。結果を表2に示す。光沢20°の値が80以上であれば良好と言える。
【0065】
<硬度試験>
上記で得られた各塗膜をフィッシャーインスツルメンツ社製HM-2000を用い、マルテンス硬度を測定した。結果を表2に示す。マルテンス硬度が25℃で100(N/mm)以上であれば良好と言える。
【0066】
<水分散性評価>
自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~6)と水とをそれぞれ、1:9の質量比で混合し、2000rpmで1分間撹拌して調製した水分散液を25℃で1時間放置し、その時の分散状態を目視により評価した。結果を表2に示す。
・分離、及び沈殿なし:○
・沈殿あり:×
【0067】
【表2】