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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 647A
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2018234734
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2019212889
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018105630
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】安田 周一
(72)【発明者】
【氏名】金松 泰範
(72)【発明者】
【氏名】上田 大
(72)【発明者】
【氏名】張 松
(72)【発明者】
【氏名】長原 達郎
(72)【発明者】
【氏名】絹田 貴史
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036012(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶質および溶媒を有する処理液を基板の表面に供給する処理液供給工程と、
前記基板の表面に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の表面に形成する処理膜形成工程と、
前記基板の表面に剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜を剥離する剥離工程とを含み、
前記剥離工程が、前記剥離液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を含み、
前記処理液の前記溶質が、第1成分と前記第1成分よりも前記剥離液に対する溶解性が低い第2成分とを有し、
前記処理膜形成工程が、前記第1成分によって形成される第1固体と前記第2成分によって形成される第2固体とを有する前記処理膜を形成する工程を含み、
前記貫通孔形成工程が、前記剥離液で前記第1固体を溶解して前記処理膜に前記貫通孔を形成する工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記剥離工程が、前記貫通孔を介して前記処理膜と前記基板の表面との間に前記剥離液を進入させる剥離液進入工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が多い、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が少ない、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記溶質が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分をさらに有し、
前記処理膜形成工程が、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成する工程を含む、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給工程をさらに含み、
前記処理膜形成工程が、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成する工程を含む、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給工程と、
前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液を固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される前処理膜を前記基板の表面に形成する前処理膜形成工程とをさらに含み、
前記剥離工程が、前記基板の表面に前記剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜および前記前処理膜を剥離する工程を含む、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2成分が、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル
酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1成分が、クラック促進成分であり、
クラック促進成分が、炭化水素と、ヒドロキシ基および/またはカルボニル基とを含む、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1成分が、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法;
(B-1)は、化学式1を構成単位として1~6つ含み、各前記構成単位が連結基Lで結合される化合物、
【化1】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれ、CyはC5~30の炭化水素環であり、Rはそれぞれ独立にC1~5のアルキルであり、nb1は1、2または3であり、nb1’は0、1、2、3または4である;
(B-2)は、化学式2で表される化合物であり、
【化2】
ここで、R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、L21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C 2~4 のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、nb2は0、1または2である;
(B-3)は、化学式3で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量(Mw)が500~10,000であるポリマーであり、
【化3】
25は-H、-CH、または-COOHである。
【請求項11】
5.0質量%アンモニア水に対する前記第2成分の溶解性が100ppm未満であり、5.0質量%アンモニア水に対する前記第1成分の溶解性が100ppm以上である、請求項10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記処理液の全質量と比較して、前記第2成分の質量が0.1~50質量%である、請求項11のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記第2成分の重量平均分子量(Mw)が150~500,000である、請求項12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第1成分および前記第2成分が、合成樹脂である、請求項のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記処理液供給工程が、水平に保持された前記基板の表面に前記処理液の液膜を形成する液膜形成工程を含み、
前記基板の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させることによって、前記基板の表面から前記処理液を排除して前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記処理膜形成工程が、前記処理膜の内部に前記溶媒が残留した前記処理膜を形成する工程を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記処理膜形成工程が、前記基板の表面に供給された前記処理液から前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
溶質および溶媒を有する処理液を基板の表面に供給する処理液供給ユニットと、
前記処理液を固化または硬化させる固体形成ユニットと、
前記基板の表面に剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、
前記処理液供給ユニット、前記固体形成ユニットおよび前記剥離液供給ユニットを制御するコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記処理液供給ユニットから前記基板の表面に前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の表面に供給された前記処理液を前記固体形成ユニットに固化または硬化させることによって、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の表面に形成する処理膜形成工程と、前記基板の表面に前記剥離液供給ユニットから前記剥離液を供給することによって、前記処理膜を剥離する剥離工程とを実行し、前記剥離工程において、前記剥離液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を実行するようにプログラムされており、
前記処理液の前記溶質が、第1成分と前記第1成分よりも前記剥離液に対する溶解性が低い第2成分とを有し、
前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記第1成分によって形成される第1固体と前記第2成分によって形成される第2固体とを含む前記処理膜を形成し、前記貫通孔形成工程において、前記剥離液で前記第1固体を溶解して前記処理膜に前記貫通孔を形成するようにプログラムされている、基板処理装置。
【請求項19】
前記コントローラが、前記剥離工程において、前記貫通孔を介して前記処理膜と前記基板の表面との間に前記剥離液を進入させるようにプログラムされている、請求項18に記載の基板処理装置。
【請求項20】
前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が多い、請求項18または19に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が少ない、請求項18または19に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記溶質が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分をさらに有し、
前記コントローラが、前記基板の表面に供給された前記処理液が前記固体形成ユニットによって固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成するようにプログラムされている、請求項1821のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項23】
前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給ユニットをさらに含み、
前記コントローラが、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液供給ユニットから前記基板の表面に前処理液を供給する前処理液供給工程を実行し、前記処理膜形成工程において、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成するようにプログラムされている、請求項1821のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項24】
前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給ユニットをさらに含み、
前記コントローラが、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液供給ユニットから前記基板の表面に前記前処理液を供給する前処理液供給工程と、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記固体形成ユニットによって前記前処理液を固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される前処理膜を前記基板の表面に形成する前処理膜形成工程とをさらに実行し、前記剥離工程において、前記剥離液供給ユニットから前記基板の表面に剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜および前記前処理膜を剥離するようにプログラムされている、請求項1821のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項25】
前記第2成分が、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む、請求項1824のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項26】
前記第1成分が、クラック促進成分であり、
クラック促進成分が、炭化水素と、ヒドロキシ基および/またはカルボニル基とを含む、請求項1825のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項27】
前記第1成分が、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される請求項1826のいずれか一項に記載の基板処理装置;
(B-1)は、化学式4を構成単位として1~6つ含み、各前記構成単位が連結基Lで結合される化合物、
【化4】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれ、CyはC5~30の炭化水素環であり、Rはそれぞれ独立にC1~5のアルキルであり、nb1は1、2または3であり、nb1’は0、1、2、3または4である;
(B-2)は、化学式5で表される化合物であり、
【化5】
ここで、R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、L21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C 2~4 のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、nb2は0、1または2である;
(B-3)は、化学式6で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量 (Mw)が500~10,000であるポリマーであり、
【化6】
25は-H、-CH、または-COOHである。
【請求項28】
5.0質量%アンモニア水に対する前記第2成分の溶解性が100ppm未満であり、5.0質量%アンモニア水に対する前記第1成分の溶解性が100ppm以上である、請求項1827のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項29】
前記処理液の全質量と比較して、前記第2成分の質量が0.1~50質量%である、請求項1828のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項30】
前記第2成分の重量平均分子量(Mw)が150~500,000である、請求項1829のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項31】
前記第1成分および前記第2成分が、合成樹脂である、請求項1824のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項32】
前記基板を水平に保持する基板保持ユニットをさらに含み、
前記固体形成ユニットが、前記基板の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットを含み、
前記コントローラが、前記処理液供給工程において、前記基板保持ユニットによって保持された前記基板の表面に前記処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理膜形成工程において、表面に前記液膜が形成された前記基板を前記基板回転ユニットによって回転させることによって前記基板の表面から前記処理液を排除し、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程を実行するようにプログラムされている、請求項1831のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項33】
前記コントローラが、前記固体形成ユニットによって前記処理膜が形成される際、前記処理膜の内部に前記溶媒を残留させるようにプログラムされている、請求項1832のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項34】
前記固体形成ユニットが、前記基板上の液体の蒸発を促進する蒸発促進ユニットを含み、
前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記蒸発促進ユニットによって、前記基板の表面に供給された前記処理液から前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程を実行するようにプログラムされている、請求項1833のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等の基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、基板に付着した各種汚染物、前工程で使用した処理液やレジスト等の残渣、あるいは各種パーティクル等(以下「除去対象物」と総称する場合がある。)を除去するために、洗浄工程が実施される。
洗浄工程では、脱イオン水(DIW:Deionized Water)等の洗浄液を基板に供給することにより、除去対象物を洗浄液の物理的作用によって除去したり、除去対象物と化学的に反応する薬液を基板に供給することにより、当該除去対象物を化学的に除去したりすることが一般的である。
【0003】
しかし、基板上に形成される凹凸パターンの微細化および複雑化が進んでいる。そのため、凹凸パターンの損傷を抑制しながら除去対象物を洗浄液または薬液によって除去することが容易でなくなりつつある。
そこで、基板の上面に、溶質および揮発性を有する溶媒を含む処理液を供給し、当該処理液を固化または硬化させた処理膜を形成した後に、当該処理膜を溶解して除去する手法が提案されている(特許文献1および特許文献2を参照)。
【0004】
この手法では、処理液が固化または硬化して処理膜が形成される際に、除去対象物が基板から引き離される。そして、引き離された除去対象物が処理膜中に保持される。
次いで、基板の上面に溶解処理液が供給される。これにより、処理膜が基板上で溶解されて除去されるので、除去対象物が、処理膜の溶解物とともに基板の上面から除去される(特許文献1を参照)。
【0005】
あるいは、基板の上面に剥離処理液が供給される場合もある。これにより、処理膜が基板の上面から剥離される。次いで溶解処理液が供給されることにより、処理膜が基板上で溶解される(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-197717号公報
【文献】特開2015-119164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1、2の方法では、いずれも、処理膜を基板上で溶解させるため、基板上において処理膜から除去対象物が脱落し、その脱落した除去対象物が基板に再付着するおそれがある。したがって、基板上から除去対象物を効率良く除去できないおそれがある。
そこで、この発明の1つの目的は、基板の表面に存在する除去対象物を効率良く除去することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一実施形態は、溶質および溶媒を有する処理液を基板の表面に供給する処理液供給工程と、前記基板の表面に供給された前記処理液を固化または硬化させて、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の表面に形成する処理膜形成工程と、前記基板の表面に剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜を剥離する剥離工程とを含み、前記剥離工程が、前記剥離液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、基板の表面に供給された処理液を固化または硬化させることによって、除去対象物を保持する処理膜が形成される。その後、基板の表面に剥離液を供給することによって、処理膜が部分的に溶解して処理膜に貫通孔が形成される。処理膜に貫通孔が形成されることによって、剥離液が基板の表面付近に到達しやすくなる。そのため、剥離液を処理膜と基板との界面に剥離液を作用させて、処理膜を基板の表面から効率良く剥離することができる。その一方で、処理膜は、貫通孔の形成のために部分的に剥離液によって溶解されるものの、残りの部分は、固体状態で維持される。その結果、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記剥離工程が、前記貫通孔を介して前記処理膜と前記基板の表面との間に前記剥離液を進入させる剥離液進入工程を含む。そのため、処理膜と基板との界面に剥離液を作用させて処理膜を基板の表面から一層効率良く剥離することができる。
この発明の一実施形態では、前記処理液の前記溶質が、第1成分と前記第1成分よりも前記剥離液に対する溶解性が低い第2成分とを有する。そして前記処理膜形成工程が、前記第1成分によって形成される第1固体と前記第2成分によって形成される第2固体とを有する前記処理膜を形成する工程を含む。そして、前記貫通孔形成工程が、前記剥離液に前記第1固体を溶解させて前記処理膜に前記貫通孔を形成する工程を含む。
【0011】
この方法によれば、第1成分は剥離液に対する溶解性が第2成分よりも高い。そのため、第1成分によって形成される第1固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすい。
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成しつつ、剥離液に第2固体を溶解させずに第2固体の固体状態を維持することができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が多い。この方法によれば、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が少ない構成と比較して、処理膜において剥離液によって溶解される部分を少なくすることができる。そのため、処理膜の部分的な溶解に伴って処理膜から離脱する除去対象物を少なくできる。したがって、大部分の除去対象物を処理膜とともに基板の表面から除去できるので、基板への除去対象物の再付着を抑制しながら、除去対象物を効率的に基板外に排除できる。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が少ない。この方法によれば、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が多い構成と比較して、処理膜において剥離液によって溶解される部分を多くすることができる。そのため、処理膜を比較的細かい膜片に分裂させることができる。処理膜が比較的細かい膜片に分裂されるので、膜片は、剥離液の流れから受ける力を受けて浮きやすく剥離液の流れに乗って基板外に排出されやすい。したがって、処理膜とともに除去対象物を基板から効率良く除去することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記溶質が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分をさらに有する。そして、前記処理膜形成工程が、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成する工程を含む。
この方法によれば、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
【0015】
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0016】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給工程をさらに含む。そして、前記処理膜形成工程が、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成する工程を含む。
【0017】
この方法によれば、基板の表面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給される。基板の表面に前処理液が存在する状態で基板の表面に処理液が供給される。そのため、基板上で前処理液と処理液とが混合されて、第1固体、第2固体および第3固体を有する処理膜が形成される。この場合、先に基板上に前処理液が存在しているため、基板の表面付近に第3固体が形成されやすい。したがって、少なくとも基板の表面に隣接する部分に第3固体を有する処理膜を簡単に形成することができる。
【0018】
また、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0019】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給工程と、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液を固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される前処理膜を前記基板の表面に形成する前処理膜形成工程とをさらに含む。そして、前記剥離工程が、前記基板の表面に前記剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜および前記前処理膜を剥離する工程を含む。
【0020】
この方法によれば、基板の表面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給され、前処理液が固化または硬化される。そのため、基板の表面に前処理膜が形成された状態で基板の表面に処理液が供給され、処理膜が形成される。したがって、第3成分によって形成される前処理膜を、基板の表面に隣接する部分に簡単に形成することができる。
また、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される前処理膜は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
【0021】
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0022】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の一実施形態では、前記第2成分が、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記第1成分が、クラック促進成分であり、クラック促進成分が、炭化水素と、ヒドロキシ基および/またはカルボニル基とを含む。
この発明の一実施形態では、前記第1成分が、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は、下記化学式1を構成単位として1~6つ含み、各前記構成単位が連結基Lで結合される化合物である。
【0024】
【化1】
【0025】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれ、CyはC5~30の炭化水素環であり、Rはそれぞれ独立にC1~5のアルキルであり、nb1は1、2または3であり、nb1’は0、1、2、3または4である。
(B-2)は、下記化学式2で表される化合物である。
【0026】
【化2】
【0027】
ここで、R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、L21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C 2~4 のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、nb2は0、1または2である。
【0028】
(B-3)は、下記化学式3で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量(Mw)が500~10,000であるポリマーである。
【0029】
【化3】
25は-H、-CH、または-COOHである。
【0030】
この発明の一実施形態では、5.0質量%アンモニア水に対する前記第2成分の溶解性が100ppm未満であり、5.0質量%アンモニア水に対する前記第1成分の溶解性が100ppm以上である。
この発明の一実施形態では、前記処理液の全質量と比較して、前記第2成分の質量が0.1~50質量%である。
【0031】
この発明の一実施形態では、前記第2成分の重量平均分子量(Mw)が150~500,000である。
この発明の一実施形態では、前記第1成分および前記第2成分が、合成樹脂である。
この発明の一実施形態では、前記処理液供給工程が、水平に保持された前記基板の表面に前記処理液の液膜を形成する液膜形成工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記基板の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させることによって、前記基板の表面から前記処理液を排除して前記液膜を薄膜化する薄膜化工程をさらに含む。
【0032】
この方法によれば、基板上の処理液の液膜が薄膜化されているので、処理液を固化または硬化することによって、薄膜化された処理膜が形成される。そのため、剥離工程において、剥離液が処理膜を貫通する距離(膜厚)を短くすることができる。その結果、剥離液が処理膜を基板表面との間に速やかに進入するので、処理膜を速やかに剥離でき、それにより、除去対象物を効率的に基板外に除去できる。
【0033】
この発明の一実施形態では、前記処理膜形成工程が、前記処理膜の内部に前記溶媒が残留した前記処理膜を形成する工程を含む。そのため、処理膜内に溶媒が残留していない場合と比較して、その後の剥離工程において剥離液を処理膜になじませやすい。したがって、処理膜の表面上で均等に分布した貫通孔が形成されやすい。その結果、剥離液が処理膜の至るところで処理膜と基板の表面との界面に到達するので、処理膜を速やかに剥離できる。
【0034】
この発明の一実施形態では、前記処理膜形成工程が、前記基板の表面に供給された前記処理液から前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程を含む。この方法によれば、溶媒を蒸発させることによって、処理膜の形成を促進することができる。そのため、処理膜の形成に必要な時間を短縮することができる。
この発明の他の実施形態は、溶質および溶媒を有する処理液を基板の表面に供給する処理液供給ユニットと、前記処理液を固化または硬化させる固体形成ユニットと、前記基板の表面に剥離液を供給する剥離液供給ユニットと、前記処理液供給ユニット、前記固体形成ユニットおよび前記剥離液供給ユニットを制御するコントローラとを含む基板処理装置を提供する。
【0035】
そして、前記コントローラが、前記処理液供給ユニットから前記基板の表面に前記処理液を供給する処理液供給工程と、前記基板の表面に供給された前記処理液を前記固体形成ユニットに固化または硬化させることによって、前記基板の表面に存在する除去対象物を保持する処理膜を前記基板の表面に形成する処理膜形成工程と、前記基板の表面に前記剥離液供給ユニットから前記剥離液を供給することによって、前記処理膜を剥離する剥離工程とを実行し、前記剥離工程において、前記剥離液に前記処理膜を部分的に溶解させて前記処理膜に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を実行するようにプログラムされている。
【0036】
この構成によれば、基板の表面に供給された処理液を固化または硬化させることによって、除去対象物を保持する処理膜が形成され、その後、基板の表面に剥離液を供給することによって、処理膜が部分的に溶解して処理膜に貫通孔が形成される。処理膜に貫通孔が形成されることによって、剥離液が基板の表面付近に到達しやすくなる。そのため、剥離液を処理膜と基板との界面に剥離液を作用させて、処理膜を基板の表面から効率良く剥離することができる。その一方で、処理膜は、貫通孔の形成のために部分的に剥離液によって溶解されるものの、残りの部分は、固体状態で維持される。その結果、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0037】
この発明の他の実施形態では、前記コントローラが、前記剥離工程において、前記貫通孔を介して前記処理膜と前記基板の表面との間に前記剥離液を進入させるようにプログラムされている。そのため、処理膜と基板との界面に剥離液を作用させて処理膜を基板の表面から一層効率良く剥離することができる。
この発明の一実施形態では、前記処理液の前記溶質が、第1成分と前記第1成分よりも前記剥離液に対する溶解性が低い第2成分とを有する。前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記第1成分によって形成される第1固体と前記第2成分によって形成される第2固体とを含む前記処理膜を形成し、前記貫通孔形成工程において、前記第1固体に前記貫通孔を形成するようにプログラムされている。
【0038】
この構成によれば、第1成分は剥離液に対する溶解性が第2成分よりも高い。そのため、第1成分によって形成される第1固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすい。そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成しつつ、剥離液に第2固体を溶解させずに第2固体の固体状態を維持することができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
【0039】
この発明の他の実施形態では、前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が多い。この構成によれば、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が少ない構成と比較して、処理膜において剥離液によって溶解される部分を少なくすることができる。そのため、処理膜の部分的な溶解に伴って処理膜から離脱する除去対象物を少なくできる。したがって、大部分の除去対象物を処理膜とともに基板の表面から除去できるので、基板への除去対象物の再付着を抑制しながら、除去対象物を効率的に基板外に排除できる。
【0040】
この発明の他の実施形態では、前記処理液中の前記第1成分の含有量よりも前記処理液中の前記第2成分の含有量の方が少ない。この構成によれば、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が多い構成と比較して、処理膜において剥離液によって溶解される部分を多くすることができる。そのため、処理膜を比較的細かい膜片に分裂させることができる。処理膜が比較的細かい膜片に分裂されるので、膜片は、剥離液の流れから受ける力を受けて浮きやすく剥離液の流れに乗って基板外に排出されやすい。したがって、処理膜とともに除去対象物を基板から効率良く除去することができる。
【0041】
この発明の他の実施形態では、前記溶質が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分をさらに有する。そして、前記コントローラが、前記基板の表面に供給された前記処理液が前記固体形成ユニットによって固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成するようにプログラムされている。
【0042】
この構成によれば、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0043】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給ユニットをさらに含む。前記コントローラが、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液供給ユニットから前記基板の表面に前処理液を供給する前処理液供給工程を実行し、前記処理膜形成工程において、前記第3成分によって形成される第3固体を少なくとも前記基板の表面に隣接する部分に有する前記処理膜を形成するようにプログラムされている。
【0044】
この構成によれば、基板の表面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給される。基板の表面に前処理液が存在する状態で基板の表面に処理液が供給される。そのため、基板上で前処理液と処理液とが混合されて、第1固体、第2固体および第3固体を有する処理膜が形成される。この場合、先に基板上に前処理液が存在しているため、基板の表面付近に第3固体が形成されやすい。したがって、少なくとも基板の表面に隣接する部分に第3固体を有する処理膜を簡単に形成することができる。
【0045】
また、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0046】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記剥離液に対する溶解度が前記第2成分よりも高く前記第1成分よりも低い第3成分を有する溶質を含む前処理液を、前記基板の表面に供給する前処理液供給ユニットをさらに含む。そして、前記コントローラが、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記前処理液供給ユニットから前記基板の表面に前記前処理液を供給する前処理液供給工程と、前記基板の表面に前記処理液が供給される前に、前記固体形成ユニットによって前記前処理液を固化または硬化させることによって、前記第3成分によって形成される前処理膜を前記基板の表面に形成する前処理膜形成工程とをさらに実行し、前記剥離工程において、前記剥離液供給ユニットから前記基板の表面に剥離液を供給して、前記基板の表面から前記除去対象物とともに前記処理膜および前記前処理膜を剥離するようにプログラムされている。
【0047】
この構成によれば、基板の表面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給され、前処理液が固化または硬化される。そのため、基板の表面に前処理膜が形成された状態で基板の表面に処理液が供給され、処理膜が形成される。したがって、第3成分によって形成される前処理膜を、基板の表面に隣接する部分に簡単に形成することができる。
また、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される前処理膜は、第2成分によって形成される第2固体よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体よりも剥離液に溶解しにくい。
【0048】
そのため、剥離液によって第1固体を溶解して貫通孔を確実に形成することができる。そして、貫通孔を介して基板の表面付近に進入した剥離液によって、処理膜において基板の表面に隣接する部分に位置する第3固体を溶解することができる。第3固体は第2固体よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜において基板の表面に隣接する部分に第3固体が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜が剥離されやすい。
【0049】
その一方で、第2固体を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体で除去対象物を保持しながら、第2固体と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜を基板の表面から速やかに剥離しつつ、処理膜とともに除去対象物を基板の表面から効率良く除去することができる。
この発明の他の実施形態では、前記第2成分が、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む。
【0050】
この発明の他の実施形態では、前記第1成分が、クラック促進成分であり、クラック促進成分が、炭化水素と、ヒドロキシ基および/またはカルボニル基とを含む。
この発明の他の実施形態では、前記第1成分が、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は、化学式4を構成単位として1~6つ含み、各前記構成単位が連結基Lで結合される化合物である。
【0051】
【化4】
【0052】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれ、CyはC5~30の炭化水素環であり、Rはそれぞれ独立にC1~5のアルキルであり、nb1は1、2または3であり、nb1’は0、1、2、3または4である。
(B-2)は、化学式5で表される化合物である。
【0053】
【化5】
【0054】
ここで、R21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、L21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C 2~4 のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はC1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、nb2は0、1または2である。
【0055】
(B-3)は、化学式6で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量 (Mw)が500~10,000であるポリマーである。
【0056】
【化6】
25は-H、-CH、または-COOHである。
【0057】
この発明の他の実施形態では、5.0質量%アンモニア水に対する前記第2成分の溶解性が100ppm未満であり、5.0質量%アンモニア水に対する前記第1成分の溶解性が100ppm以上である。
この発明の他の実施形態では、前記処理液の全質量と比較して、前記第2成分の質量が0.1~50質量%である。
【0058】
この発明の他の実施形態では、前記第2成分の重量平均分子量(Mw)が150~500,000である。
この発明の他の実施形態では、前記第1成分および前記第2成分が、合成樹脂である。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が前記基板を水平に保持する基板保持ユニットをさらに含む。そして、前記固体形成ユニットが、前記基板の中央部を通る鉛直軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットを含む。そして、前記コントローラが、前記処理液供給工程において、前記基板保持ユニットによって保持された前記基板の表面に前記処理液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記処理膜形成工程において、表面に前記液膜が形成された前記基板を前記基板回転ユニットによって回転させることによって前記基板の表面から前記処理液を排除し、前記液膜を薄膜化する薄膜化工程を実行するようにプログラムされている。
【0059】
この構成によれば、基板上の処理液の液膜が薄膜化されているので、処理液を固化または硬化することによって、薄膜化された処理膜が形成される。そのため、剥離工程において、剥離液が処理膜を貫通する距離(膜厚)を短くすることができる。剥離液が処理膜を基板表面との間に速やかに進入するので、処理膜を速やかに剥離でき、それにより、除去対象物を効率的に基板外に除去できる。
【0060】
この発明の他の実施形態では、前記コントローラが、前記固体形成ユニットによって前記処理膜が形成される際、前記処理膜の内部に前記溶媒を残留させるようにプログラムされている。そのため、処理膜内に溶媒が残留していない場合と比較して、その後の剥離工程において剥離液を処理膜になじませやすい。したがって、処理膜の表面上で均等に分布した貫通孔が形成されやすい。その結果、剥離液が処理膜の至るところで処理膜と基板の表面との界面に到達するので、処理膜を速やかに剥離できる。
【0061】
この発明の他の実施形態では、前記固体形成ユニットが、前記基板上の液体の蒸発を促進する蒸発促進ユニットを含む。そして、前記コントローラが、前記処理膜形成工程において、前記蒸発促進ユニットによって、前記基板の表面に供給された前記処理液から前記溶媒を蒸発させる溶媒蒸発工程を実行するようにプログラムされている。この構成によれば、溶媒を蒸発させることによって、処理膜の形成を促進することができる。そのため、処理膜の形成に必要な時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置のレイアウトを示す模式的な平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
図3図3は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を示すブロック図である。
図4図4は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図5A図5Aは、前記基板処理の処理液供給工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
図5B図5Bは、前記基板処理の薄膜化工程(ステップS6)の様子を説明するための模式図である。
図5C図5Cは、前記基板処理の加熱工程(ステップS7)の様子を説明するための模式図である。
図5D図5Dは、前記基板処理の緩衝工程(ステップS8)の様子を説明するための模式図である。
図5E図5Eは、前記基板処理の剥離工程(ステップS9)の様子を説明するための模式図である。
図5F図5Fは、前記基板処理の第2リンス工程(ステップS10)の様子を説明するための模式図である。
図5G図5Gは、前記基板処理の第2有機溶剤供給工程(ステップS11)の様子を説明するための模式図である。
図5H図5Hは、前記基板処理のスピンドライ工程(ステップS12)の様子を説明するための模式図である。
図6A図6Aは、前記加熱工程(ステップS7)後の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図6B図6Bは、前記剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図6C図6Cは、前記剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図7A図7Aは、第1実施形態の変形例に係る基板処理の加熱工程(ステップS7)後の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図7B図7Bは、第1実施形態の変形例に係る基板処理の剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図7C図7Cは、第1実施形態の変形例に係る基板処理の剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図8図8は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る処理ユニットによる基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図10A図10Aは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の前処理液供給工程(ステップS20)の様子を説明するための模式図である。
図10B図10Bは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の前処理液膜薄膜化(ステップS21)の様子を説明するための模式図である。
図10C図10Cは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の前処理液膜加熱工程(ステップS22)の様子を説明するための模式図である。
図10D図10Dは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の処理液供給工程(ステップS5)の様子を説明するための模式図である。
図11A図11Aは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の前処理液膜加熱工程(ステップS22)後の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図11B図11Bは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の加熱工程(ステップS7)後の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図11C図11Cは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図11D図11Dは、第2実施形態に係る基板処理装置による基板処理の剥離工程(ステップS9)実行中の基板表面付近の様子を説明するための模式的な断面図である。
図12図12は、第3実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの概略構成を示す模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、この発明の第1実施形態にかかる基板処理装置1のレイアウトを示す模式的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハなどの基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。
【0064】
基板処理装置1は、基板Wを流体で処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを含む。
搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。詳しくは後述するが、処理ユニット2内で基板Wに供給される処理流体には、薬液、リンス液、処理液、剥離液、熱媒、不活性ガス等が含まれる。
【0065】
各処理ユニット2は、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
【0066】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、スピンチャック5と、対向部材6と、処理カップ7と、第1移動ノズル8と、第2移動ノズル9と、第3移動ノズル10と、中央ノズル11と、下面ノズル12とを含む。
スピンチャック5は、基板Wを水平に保持しながら基板Wを回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに回転させる。回転軸線A1は、基板Wの中央部を通る鉛直な軸線である。スピンチャック5は、複数のチャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0067】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、基板Wの周縁を把持する複数のチャックピン20が、スピンベース21の周方向に間隔を空けて配置されている。スピンベース21および複数のチャックピン20は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットを構成している。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。
【0068】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。スピンモータ23は、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例である。
【0069】
対向部材6は、スピンチャック5に保持された基板Wに上方から対向する。対向部材6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向部材6は、基板Wの上面(上側の表面)に対向する対向面6aを有する。対向面6aは、スピンチャック5よりも上方でほぼ水平面に沿って配置されている。
対向部材6において対向面6aとは反対側には、中空軸60が固定されている。対向部材6において平面視で回転軸線A1と重なる部分には、対向部材6を上下に貫通し、中空軸60の内部空間60aと連通する連通孔6bが形成されている。
【0070】
対向部材6は、対向面6aと基板Wの上面との間の空間内の雰囲気を当該空間の外部の雰囲気から遮断する。そのため、対向部材6は、遮断板とも呼ばれる。
処理ユニット2は、対向部材6の昇降を駆動する対向部材昇降ユニット61をさらに含む。対向部材昇降ユニット61は、下位置から上位置までの任意の位置(高さ)に対向部材6を位置させることができる。下位置とは、対向部材6の可動範囲において、対向面6aが基板Wに最も近接する位置である。上位置とは、対向部材6の可動範囲において対向面6aが基板Wから最も離間する位置である。
【0071】
対向部材昇降ユニット61は、たとえば、中空軸60を支持する支持部材(図示せず)に結合されたボールねじ機構(図示せず)と、当該ボールねじ機構に駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。対向部材昇降ユニット61は、対向部材リフタ(遮断板リフタ)ともいう。
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード71と、複数のガード71によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ72と、複数のガード71と複数のカップ72とを取り囲む円筒状の外壁部材73とを含む。
【0072】
この実施形態では、2つのガード71(第1ガード71Aおよび第2ガード71B)と、2つのカップ72(第1カップ72Aおよび第2カップ72B)とが設けられている例を示している。
第1カップ72Aおよび第2カップ72Bのそれぞれは、上向きに開放された環状溝の形態を有している。
【0073】
第1ガード71Aは、スピンベース21を取り囲むように配置されている。第2ガード71Bは、第1ガード71Aよりも基板Wの回転径方向外方でスピンベース21を取り囲むように配置されている。
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、それぞれ、ほぼ円筒形状を有しており、各ガード71A,71Bの上端部は、スピンベース21に向かうように内方に傾斜している。
【0074】
第1カップ72Aは、第1ガード71Aによって下方に案内された液体を受け止める。第2カップ72Bは、第1ガード71Aと一体に形成されており、第2ガード71Bによって下方に案内された液体を受け止める。
処理ユニット2は、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bをそれぞれ別々に昇降させるガード昇降ユニット74を含む。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第1ガード71Aを昇降させる。ガード昇降ユニット74は、下位置と上位置との間で第2ガード71Bを昇降させる。
【0075】
第1ガード71Aおよび第2ガード71Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aが下位置に位置し、第2ガード71Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する液体は、第2ガード71Bによって受けられる。
ガード昇降ユニット74は、たとえば、第1ガード71Aに結合された第1ボールねじ機構(図示せず)と、第1ボールねじに駆動力を与える第1モータ(図示せず)と、第2ガード71Bに結合された第2ボールねじ機構(図示せず)と、第2ボールねじ機構に駆動力を与える第2モータ(図示せず)とを含む。ガード昇降ユニット74は、ガードリフタともいう。
【0076】
第1移動ノズル8は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて薬液を供給(吐出)する薬液供給ユニットの一例である。
第1移動ノズル8は、第1ノズル移動ユニット36によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第1移動ノズル8は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第1移動ノズル8は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。基板Wの上面の回転中心とは、基板Wの上面における回転軸線A1との交差位置である。
【0077】
第1移動ノズル8は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第1移動ノズル8は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第1ノズル移動ユニット36は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0078】
回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直な回動軸線まわりに回動させることによってアームを揺動させる。さらに、回動軸駆動ユニットは、回動軸を鉛直方向に沿って昇降することにより、アームを上下動させる。第1移動ノズル8はアームに固定される。アームの揺動および昇降に応じて、第1移動ノズル8が水平方向および鉛直方向に移動する。
第1移動ノズル8は、薬液を案内する薬液配管40に接続されている。薬液配管40に介装された薬液バルブ50が開かれると、薬液が、第1移動ノズル8から下方に連続的に吐出される。
【0079】
第1移動ノズル8から吐出される薬液は、たとえば、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液である。これらを混合した薬液の例としては、SPM液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、SC1液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)等が挙げられる。
【0080】
第2移動ノズル9は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて処理液を供給(吐出)する処理液供給ユニットの一例である。
第2移動ノズル9は、第2ノズル移動ユニット37によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第2移動ノズル9は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第2移動ノズル9は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。
【0081】
第2移動ノズル9は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第2移動ノズル9は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第2ノズル移動ユニット37は、第1ノズル移動ユニット36と同様の構成を有している。すなわち、第2ノズル移動ユニット37は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸および第2移動ノズル9に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0082】
第2移動ノズル9は、処理液を案内する処理液配管41に接続されている。処理液配管41に介装された処理液バルブ51が開かれると、処理液が、第2移動ノズル9から下方に連続的に吐出される。
第2移動ノズル9から吐出される処理液は、溶質および溶媒を含んでいる。この処理液は、溶媒の少なくとも一部が揮発することによって固化または硬化される。この処理液は、基板W上で固化または硬化することによって、基板W上に存在するパーティクル等の除去対象物を保持する処理膜を形成する。
【0083】
ここで、「固化」とは、たとえば、溶媒の揮発(蒸発)に伴い、分子間や原子間に作用する力等によって溶質が固まることを指す。「硬化」とは、たとえば、重合や架橋等の化学的な変化によって、溶質が固まることを指す。したがって、「固化または硬化」とは、様々な要因によって溶質が「固まる」ことを表している。
第2移動ノズル9から吐出される処理液中の溶質には、第1成分および第2成分が含まれている。処理液に含まれる第1成分の量(含有量)は、処理液に含まれる第2成分の量(含有量)よりも少ない。
【0084】
第1成分および第2成分は、たとえば、互いに性質が異なる合成樹脂である。第2移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶媒は、第1成分および第2成分を溶解させる液体であればよい。
溶質として用いられる合成樹脂の例としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等が挙げられる。
【0085】
合成樹脂を溶解させる溶媒としては、たとえば、IPA、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、PGMEA(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート)、EL(乳酸エチル)等が挙げられる。
第3移動ノズル10は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて剥離液を供給(吐出)する剥離液供給ユニットの一例であり、この実施形態では、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて緩衝液を供給(吐出)する緩衝液供給ユニットの一例でもある。
【0086】
第3移動ノズル10は、第3ノズル移動ユニット38によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第3移動ノズル10は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
第3移動ノズル10は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第3移動ノズル10は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第3移動ノズル10は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0087】
第3ノズル移動ユニット38は、第1ノズル移動ユニット36と同様の構成を有している。すなわち、第3ノズル移動ユニット38は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸および第3移動ノズル10に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0088】
第3移動ノズル10は、第3移動ノズル10に剥離液を案内する上側剥離液配管42に接続されている。上側剥離液配管42に介装された上側剥離液バルブ52が開かれると、剥離液が、第3移動ノズル10の吐出口から下方に連続的に吐出される。
第3移動ノズル10は、第3移動ノズル10に緩衝液を案内する上側緩衝液配管43にも接続されている。上側緩衝液配管43に介装された上側緩衝液バルブ53が開かれると、緩衝液が、第3移動ノズル10の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0089】
剥離液は、基板W上の処理膜を基板Wの上面から剥離するための液体である。剥離液としては、処理液の溶質に含まれる第2成分よりも処理液の溶質に含まれる第1成分を溶解させやすい液体が用いられる。言い換えると、剥離液としては、剥離液に対する第1成分の溶解性(溶解度)が、剥離液に対する第2成分の溶解性(溶解度)よりも高い液体が用いられる。剥離液は、処理液に含有される溶媒と相溶性を有する(混和可能である)液体であることが好ましい。
【0090】
剥離液は、たとえば、水系の剥離液である。水系の剥離液の例としては、DIW、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(例えば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水、アルカリ水溶液等が挙げられる。アルカリ水溶液の例としては、SC1液、アンモニア水溶液、TMAH等の4級水酸化アンモニウムの水溶液、コリン水溶液等が挙げられる。
【0091】
緩衝液は、処理膜に対する剥離液の剥離作用が緩衝するための液体である。剥離液に先立って処理膜に緩衝液を供給することによって、処理膜の一部に高濃度の剥離液が作用することを回避できる。これにより、処理膜に対して剥離液の供給に先立って緩衝液を供給しておくことで、処理膜の全体に対して満遍なく剥離液を作用させることができる。
緩衝液の例としては、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)のアンモニア水、還元水(水素水)等が挙げられる。
【0092】
中央ノズル11は、対向部材6の中空軸60の内部空間60aに収容されている。中央ノズル11の先端に設けられた吐出口11aは、基板Wの上面の中央領域に上方から対向する。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面において基板Wの回転中心を含む領域のことである。
中央ノズル11は、流体を下方に吐出する複数のチューブ31~33(第1チューブ31、第2チューブ32および第3チューブ33)と、複数のチューブ31~33を取り囲む筒状のケーシング30とを含む。複数のチューブ31~33およびケーシング30は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。中央ノズル11の吐出口11aは、複数のチューブ31~33の吐出口でもある。
【0093】
第1チューブ31は、リンス液を基板Wの上面に供給するリンス液供給ユニットの一例である。第2チューブ32は、気体を基板Wの上面と対向部材6の対向面6aとの間に供給する気体供給ユニットとしての一例である。第3チューブ33は、IPA等の有機溶剤を基板Wの上面に供給する有機溶剤供給ユニットの一例である。
第1チューブ31は、リンス液を第1チューブ31に案内する上側リンス液配管44に接続されている。上側リンス液配管44に介装された上側リンス液バルブ54が開かれると、リンス液が、第1チューブ31(中央ノズル11)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続的に吐出される。
【0094】
リンス液の例としては、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm~100ppm程度)のアンモニア水、還元水(水素水)等が挙げられる。すなわち、リンス液としては、緩衝液と同様の液体を用いることができる。リンス液は、緩衝液と同様の液体であるため、第1チューブ31は、緩衝液供給ユニットの一例でもある。
【0095】
第2チューブ32は、気体を第2チューブ32に案内する気体配管45に接続されている。気体配管45に介装された気体バルブ55が開かれると、気体が、第2チューブ32(中央ノズル11)から下方に連続的に吐出される。
第2チューブ32から吐出される気体は、たとえば、窒素ガス(N)等の不活性ガスである。第2チューブ32から吐出される気体は、空気であってもよい。不活性ガスとは、窒素ガスに限られず、基板Wの上面や、基板Wの上面に形成されたパターンに対して不活性なガスのことである。不活性ガスの例としては、窒素ガスの他に、アルゴン等の希ガス類が挙げられる。
【0096】
第3チューブ33は、有機溶剤を第3チューブ33に案内する有機溶剤配管46に接続されている。有機溶剤配管46に介装された有機溶剤バルブ56が開かれると、有機溶剤が、第3チューブ33(中央ノズル11)から基板Wの上面の中央領域に向けて連続的に吐出される。
第3チューブ33から吐出される有機溶剤は、剥離液によって処理膜を除去した後の基板Wの上面に残る残渣を除去する残渣除去液である。第3チューブ33から吐出される有機溶剤は、処理液およびリンス液との相溶性を有することが好ましい。
【0097】
第3チューブ33から吐出される有機溶剤の例としては、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2-ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液等が挙げられる。
また、第3チューブ33から吐出される有機溶剤は、単体成分のみからなる必要はなく、他の成分と混合した液体であってもよい。第3チューブ33から吐出される有機溶剤は、たとえば、IPAとDIWとの混合液であってもよいし、IPAとHFEとの混合液であってもよい。
【0098】
下面ノズル12は、スピンベース21の上面中央部で開口する貫通孔21aに挿入されている。下面ノズル12の吐出口12aは、スピンベース21の上面から露出されている。下面ノズル12の吐出口12aは、基板Wの下面の中央領域に下方から対向する。基板Wの下面の中央領域とは、基板Wの下面において基板Wの回転中心を含む領域のことである。
【0099】
下面ノズル12には、リンス液、剥離液、および熱媒を下面ノズル12に共通に案内する共通配管80の一端が接続されている。共通配管80の他端には、共通配管80にリンス液を案内する下側リンス液配管81と、共通配管80に剥離液を案内する下側剥離液配管82と、共通配管80に熱媒を案内する熱媒配管83とが接続されている。
下側リンス液配管81に介装された下側リンス液バルブ86が開かれると、リンス液が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続的に吐出される。下側剥離液配管82に介装された下側剥離液バルブ87が開かれると、剥離液が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続的に吐出される。熱媒配管83に介装された熱媒バルブ88が開かれると、熱媒が、下面ノズル12から基板Wの下面の中央領域に向けて連続的に吐出される。
【0100】
下面ノズル12は、基板Wの下面にリンス液を供給する下側リンス液供給ユニットの一例である。リンス液として用いられる液体は、緩衝液としても用いることができるので、下面ノズル12は、下側緩衝液供給ユニットの一例でもある。
また、下面ノズル12は、基板Wの下面に剥離液を供給する下側剥離液供給ユニットの一例である。また、下面ノズル12は、基板Wを加熱するための熱媒を基板Wに供給する熱媒供給ユニットの一例である。下面ノズル12は、基板Wを加熱する基板加熱ユニットでもある。
【0101】
下面ノズル12から吐出される熱媒は、たとえば、室温よりも高く、処理液に含まれる溶媒の沸点よりも低い温度(たとえば、60℃~80℃)の高温DIWである。下面ノズル12から吐出される熱媒は、高温DIWには限られず、室温よりも高く、処理液に含有される溶媒の沸点よりも低い温度(たとえば、60℃~80℃)の高温不活性ガスや高温空気等の高温気体であってもよい。
【0102】
図3は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を示すブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0103】
とくに、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、第1ノズル移動ユニット36、第2ノズル移動ユニット37、第3ノズル移動ユニット38、対向部材昇降ユニット61、ガード昇降ユニット74、バルブ50,51,52,53,54,55,56,86,87,88を制御するようにプログラムされている。
図4は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図である。図4には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。図5A図5Hは、前記基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
【0104】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、図4に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、薬液供給工程(ステップS2)、第1リンス工程(ステップS3)、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)、処理液供給工程(ステップS5)、薄膜化工程(ステップS6)、加熱工程(ステップS7)、緩衝工程(ステップS8)、剥離工程(ステップS9)、第2リンス工程(ステップS10)、第2有機溶剤供給工程(ステップS11)、スピンドライ工程(ステップS12)および基板搬出工程(ステップS13)がこの順番で実行される。
【0105】
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(図1参照)によってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5による基板Wの保持は、スピンドライ工程(ステップS12)が終了するまで継続される。基板Wの搬入時には、対向部材6は、上位置に退避している。
【0106】
次に、搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、薬液供給工程(ステップS2)が開始される。具体的には、スピンモータ23が、スピンベース21を回転させる。これにより、水平に保持された基板Wが回転される(基板回転工程)。そして、ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを上位置に移動させる。
そして、第1ノズル移動ユニット36が第1移動ノズル8を処理位置に移動させる。第1移動ノズル8の処理位置は、たとえば中央位置である。そして、薬液バルブ50が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第1移動ノズル8から薬液が供給(吐出)される。薬液供給工程において、基板Wは、所定の薬液回転数、たとえば、800rpmで回転される。
【0107】
基板Wの上面に供給された薬液は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板Wの上面が薬液によって処理される。第1移動ノズル8からの薬液の吐出は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。
次に、第1リンス工程(ステップS3)が開始される。第1リンス工程では、基板W上の薬液がリンス液によって洗い流される。
【0108】
具体的には、薬液バルブ50が閉じられる。これにより、基板Wに対する薬液の供給が停止される。そして、第1ノズル移動ユニット36が第1移動ノズル8をホーム位置に移動させる。そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置と下位置との間の処理位置に移動させる。対向部材6が処理位置に位置するとき、基板Wの上面と対向面6aとの間の距離は、たとえば、30mmである。第1リンス工程において、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bの位置は、上位置に維持されている。
【0109】
そして、上側リンス液バルブ54が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11からリンス液が供給(吐出)される。また、下側リンス液バルブ86が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12からリンス液が供給(吐出)される。第1リンス工程において、基板Wは、所定の第1リンス回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
【0110】
中央ノズル11から基板Wの上面に供給されリンス液は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板Wの上面の薬液が基板W外に洗い流される。
下面ノズル12から基板Wの下面に供給されたリンス液は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの下面の全体に行き渡る。薬液供給工程によって基板Wから飛散した薬液が下面に付着した場合であっても、下面ノズル12から供給されたリンス液によって、下面に付着した薬液が洗い流される。中央ノズル11および下面ノズル12からのリンス液の吐出は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。
【0111】
次に、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)が開始される。第1有機溶剤供給工程では、基板W上のリンス液が有機溶剤によって置換される。
具体的には、上側リンス液バルブ54および下側リンス液バルブ86が閉じられる。これにより、基板Wの上面および下面に対するリンス液の供給が停止される。そして、ガード昇降ユニット74が、第2ガード71Bを上位置に維持した状態で、第1ガード71Aを下位置に移動させる。対向部材6は、処理位置に維持される。
【0112】
第1有機溶剤供給工程において、基板Wは、所定の第1有機溶剤回転速度、たとえば、300rpm~1500rpmで回転される。基板Wは、第1有機溶剤供給工程において一定の回転速度で回転する必要はない。たとえば、スピンモータ23は、有機溶剤の供給開始時に基板Wを300rpmで回転させ、基板Wに有機溶剤を供給しながら基板Wの回転速度が1500rpmになるまで基板Wの回転を加速させてもよい。
【0113】
そして、有機溶剤バルブ56が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11から有機溶剤が供給(吐出)される。
中央ノズル11から基板Wの上面に供給された有機溶剤は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上のリンス液が有機溶剤によって置換される。中央ノズル11からの有機溶剤の吐出は、所定時間、たとえば、10秒間継続される。
【0114】
次に、処理液供給工程(ステップS5)が開始される。具体的には、有機溶剤バルブ56が閉じられる。これにより、基板Wに対する有機溶剤の供給が停止される。そして、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を上位置に移動させる。そして、ガード昇降ユニット74が、第1ガード71Aを上位置に移動させる。処理液供給工程において、基板Wは、所定の処理液回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。
【0115】
そして、図5Aに示すように、第2ノズル移動ユニット37が、第2移動ノズル9を処理位置に移動させる。第2移動ノズル9の処理位置は、たとえば、中央位置である。そして、処理液バルブ51が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第2移動ノズル9から処理液が供給(吐出)される(処理液供給工程、処理液吐出工程)。これにより、基板W上の有機溶剤が処理液によって置換されて、基板W上に処理液の液膜(処理液膜101)が形成される(処理液膜形成工程)。第2移動ノズル9からの処理液の供給は、所定時間、たとえば、2秒~4秒の間継続される。
【0116】
次に、処理膜形成工程(ステップS6およびステップS7)が実行される。処理膜形成工程では、基板W上の処理液が固化または硬化されて基板Wの上面に処理膜100(図5C参照)が形成される。
処理膜形成工程では、薄膜化工程(スピンオフ工程)(ステップS6)が実行される。薄膜化工程では、まず、処理液バルブ51が閉じられる。これにより、基板Wに対する処理液の供給が停止される。そして、第2ノズル移動ユニット37によって第2移動ノズル9がホーム位置に移動される。
【0117】
図5Bに示すように、薄膜化工程では、基板W上の処理液膜101の厚さが適切な厚さになるように、基板Wの上面への処理液の供給が停止された状態で遠心力によって基板Wの上面から処理液の一部が排除される。薄膜化工程では、対向部材6、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが上位置に維持される。
薄膜化工程では、スピンモータ23が、基板Wの回転速度を所定の薄膜化速度に変更する。薄膜化速度は、たとえば、300rpm~1500rpmである。基板Wの回転速度は、300rpm~1500rpmの範囲内で一定に保たれてもよいし、薄膜化工程の途中で300rpm~1500rpmの範囲内で適宜変更されてもよい。薄膜化工程は、所定時間、たとえば、30秒間実行される。
【0118】
処理膜形成工程では、薄膜化工程後に、基板Wを加熱する加熱工程(ステップS7)が実行される。加熱工程では、基板W上の処理液の溶媒の一部を揮発(蒸発)させるために、基板W上の処理液膜101(図5B参照)を加熱する。
具体的には、図5Cに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を、上位置と下位置との間の近接位置に移動させる。近接位置は、下位置であってもよい。近接位置は、基板Wの上面から対向面6aまでの距離がたとえば1mmの位置である。加熱工程では、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが上位置に維持される。
【0119】
そして、気体バルブ55が開かれる。これにより、基板Wの上面(処理液膜101の上面)と、対向部材6の対向面6aとの間の空間に気体が供給される(気体供給工程)。
そして、熱媒バルブ88が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12から熱媒が供給(吐出)される(熱媒供給工程、熱媒吐出工程)。下面ノズル12から基板Wの下面に供給された熱媒は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの下面の全体に行き渡る。基板Wに対する熱媒の供給は、所定時間、たとえば、60秒間継続される。加熱工程において、基板Wは、所定の加熱回転速度、たとえば、1000rpmで回転される。
【0120】
基板Wの下面に熱媒が供給されることによって、基板Wを介して、基板W上の処理液膜101が加熱される。これにより、処理液膜101中の溶媒の蒸発が促進される(溶媒蒸発工程、溶媒蒸発促進工程)。そのため、処理膜100の形成に必要な時間を短縮することができる。下面ノズル12は、処理液中の溶媒の蒸発させる蒸発ユニット(蒸発促進ユニット)として機能する。
【0121】
薄膜化工程および加熱工程が実行されることによって、処理液が固化または硬化されて、基板W上に処理膜100が形成される。このように、基板回転ユニット(スピンモータ23)および下面ノズル12は、処理液を固化または硬化させて固体(処理膜100)を形成する固体形成ユニットに含まれる。
加熱工程では、基板W上の処理液の温度が溶媒の沸点未満となるように、基板Wが加熱されることが好ましい。処理液を、溶媒の沸点未満の温度に加熱することにより、処理膜100中に溶媒を適度に残留させることができる。これにより、処理膜100内に溶媒が残留していない場合と比較して、その後の剥離工程において、処理膜100中に残留した溶媒と、剥離液との相互作用によって、剥離液を処理膜100になじませやすい。したがって、剥離液で処理膜100を剥離しやすくなる。
【0122】
遠心力によって基板W外に飛散した熱媒は、第1ガード71Aによって受けられる。第1ガード71Aによって受けられた熱媒は、第1ガード71Aから跳ね返る場合がある。しかしながら、対向部材6は、基板Wの上面に近接しているため、第1ガード71Aから跳ね返った熱媒から基板Wの上面を保護することができる。したがって、処理膜100の上面への熱媒の付着を抑制することができるので、第1ガード71Aからの熱媒の跳ね返りに起因するパーティクルの発生を抑制できる。
【0123】
さらに、中央ノズル11からの気体の供給によって、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間には、基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流Fが形成される。基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流Fを形成することによって、第1ガード71Aから跳ね返った熱媒を第1ガード71Aに向けて押し戻すことができる。したがって、処理膜100の上面への熱媒の付着を一層抑制することができる。
【0124】
次に、緩衝工程(ステップS8)が実行される。具体的には、熱媒バルブ88が閉じられる。これにより、基板Wの下面に対する熱媒の供給が停止される。そして、気体バルブ55が閉じられる。これにより、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間への気体の供給が停止される。
そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置に移動させる。そして、図5Dに示すように、第3ノズル移動ユニット38が、第3移動ノズル10を処理位置に移動させる。第3移動ノズル10の処理位置は、たとえば、中央位置である。緩衝工程において、基板Wは、所定の緩衝回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
【0125】
そして、上側緩衝液バルブ53が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第3移動ノズル10から緩衝液が供給(吐出)される(緩衝液供給工程、緩衝液吐出工程)。基板Wの上面に供給された緩衝液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。基板Wの上面への緩衝液の供給は、所定時間、たとえば、60秒間継続される。
【0126】
次の剥離工程(ステップS9)で基板Wに供給される剥離液は、その濃度が高い場合に、とりわけ、剥離液の供給開始時に、基板Wの上面に局所的に作用することがある。そこで、剥離液に先立って緩衝液を基板Wの上面に供給することによって、処理膜100に対する剥離液の作用が緩衝される。これにより、基板Wの上面に剥離液が局所的に作用することを回避できるため、基板Wの上面の全体に万遍なく剥離液を作用させることができる。
【0127】
次に、剥離工程(ステップS9)が実行される。剥離工程において、基板Wは、所定の剥離回転速度、たとえば、800rpmで回転される。
そして、上側緩衝液バルブ53が閉じられる。これにより、基板Wの上面に対する緩衝液の供給が停止される。そして、図5Eに示すように、上側剥離液バルブ52が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第3移動ノズル10から剥離液が供給(吐出)される(上側剥離液供給工程、上側剥離液吐出工程)。基板Wの上面に供給された剥離液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。基板Wの上面への剥離液の供給は、たとえば、所定時間、たとえば、60秒間継続される。
【0128】
基板Wの上面に剥離液が供給されることによって、基板Wの上面から処理膜100が剥離される。処理膜100は、基板Wの上面から剥離される際に分裂して膜片となる。そして、分裂した処理膜100の膜片は、基板Wの回転に伴う遠心力を受け、剥離液とともに基板W外へ排除される。これにより、基板Wの上面から処理膜100とともに除去対象物が除去される(除去工程)。
【0129】
ここで、図5Aに示す処理液供給工程(ステップS5)で基板Wの上面に供給された処理液は、基板Wの周縁を伝って基板Wの下面に回り込むことがある。また、基板Wから飛散した処理液が、第1ガード71Aから跳ね返って基板Wの下面に付着することがある。このような場合であっても、図5Cに示すように、加熱工程(ステップS7)において基板Wの下面に熱媒が供給されるので、その熱媒の流れによって、基板Wの下面から処理液を排除することができる。
【0130】
さらに、処理液供給工程(ステップS5)に起因して基板Wの下面に付着した処理液が固化または硬化して固体を形成することがある。このような場合であっても、図5Eに示すように、剥離工程(ステップS9)において基板Wの上面に剥離液が供給されている間、下側剥離液バルブ87を開いて下面ノズル12から基板Wの下面に剥離液を供給(吐出)することによって、その固体を基板Wの下面から剥離することができる(下側剥離液供給工程、下側剥離液吐出工程)。
【0131】
さらに、図5Dに示すように緩衝工程(ステップS8)において基板Wの上面に緩衝液が供給されている間、下側リンス液バルブ86を開いて下面ノズル12から基板Wの下面に緩衝液としてのリンス液を供給(吐出)すれば、基板Wの下面に供給される剥離液の剥離作用を緩衝することができる(下側緩衝液供給工程、下側緩衝液吐出工程)。
剥離工程(ステップS9)の後、第2リンス工程(ステップS10)が実行される。具体的には、上側剥離液バルブ52および下側剥離液バルブ87が閉じられる。これにより、基板Wの上面および下面に対する剥離液の供給が停止される。そして、第3ノズル移動ユニット38が、第3移動ノズル10をホーム位置に移動させる。そして、図5Fに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を処理位置に移動させる。第2リンス工程において、基板Wは、所定の第2リンス回転速度、たとえば、800rpmで回転される。第1ガード71Aおよび第2ガード71Bは、上位置に維持される。
【0132】
そして、上側リンス液バルブ54が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(第2上側リンス液供給工程、第2上側リンス液吐出工程)。基板Wの上面に供給されたリンス液は、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面に付着していた剥離液がリンス液で洗い流される。
【0133】
そして、下側リンス液バルブ86が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12からリンス液が供給(吐出)される(第2下側リンス液供給工程、第2下側リンス液吐出工程)。これにより、基板Wの下面に付着していた剥離液がリンス液で洗い流される。基板Wの上面および下面へのリンス液の供給は、所定時間、たとえば、35秒間継続される。
【0134】
次に、第2有機溶剤供給工程(ステップS11)が実行される。具体的には、図5Gに示すように、ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aを下位置に移動させる。そして、対向部材6は、処理位置に維持される。第2有機溶剤供給工程において、基板Wは、所定の第2有機溶剤回転速度、たとえば、300rpmで回転される。
そして、上側リンス液バルブ54および下側リンス液バルブ86が閉じられる。これにより、基板Wの上面および下面に対するリンス液の供給が停止される。そして、図5Gに示すように、有機溶剤バルブ56が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、中央ノズル11から有機溶剤が供給(吐出)される(第2有機溶剤供給工程、第2有機溶剤吐出工程、残渣除去液供給工程)。基板Wの上面への有機溶剤の供給は、所定時間、たとえば、30秒間継続される。
【0135】
基板Wの上面に供給された有機溶剤は、遠心力を受けて放射状に広がり、基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面のリンス液が有機溶剤で置換される。基板Wの上面に供給された有機溶剤は、基板Wの上面に残る処理膜100の残渣を溶解したのち、基板Wの上面の周縁から排出される(残渣除去工程)。
次に、スピンドライ工程(ステップS12)が実行される。具体的には、有機溶剤バルブ56が閉じられる。これにより、基板Wの上面への有機溶剤の供給が停止される。そして、図5Hに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を処理位置よりも下方の乾燥位置に移動させる。対向部材6が乾燥位置に位置するとき、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離は、たとえば、1.5mmである。そして、気体バルブ55が開かれる。これにより、基板Wの上面と、対向部材6の対向面6aとの間の空間に気体が供給される。
【0136】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。スピンドライ工程における基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。スピンドライ工程は、所定時間、たとえば、30秒間の間実行される。それによって、大きな遠心力が基板W上の有機溶剤に作用し、基板W上の有機溶剤が基板Wの周囲に振り切られる。スピンドライ工程では、基板Wの上面と、対向部材6の対向面6aとの間の空間への気体の供給によって有機溶剤の蒸発が促進される。
【0137】
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。ガード昇降ユニット74が第1ガード71Aおよび第2ガード71Bを下位置に移動させる。気体バルブ55が閉じられる。そして、対向部材昇降ユニット61が対向部材6を上位置に移動させる。
搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5のチャックピン20から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(ステップS13)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0138】
次に、図6A図6Cを参照して、処理膜100が基板Wから剥離されるときの様子について説明する。図6Aは、加熱工程(ステップS7)後の基板Wの上面付近の様子を示している。図6Bおよび図6Cは、剥離工程(ステップS9)実行中の基板Wの上面付近の様子を示している。
加熱工程では、前述したように、基板W上の処理液膜101が基板Wを介して熱媒によって加熱される。これにより、図6Aに示すように、パーティクル等の除去対象物103を保持した処理膜100が形成される。詳しくは、溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって、処理液の溶質に含まれる第1成分が第1固体110を形成し、処理液の溶質に含まれる第2成分が第2固体111を形成する。
【0139】
そして、図6Bを参照して、剥離工程において、処理膜100が部分的に溶解される。基板Wの上面に剥離液が供給されると、第2成分よりも剥離液に対する溶解性が高い第1成分によって形成されている第1固体110が主に溶解される。これにより、処理膜100において第1固体110が偏在している部分に貫通孔102が形成される(貫通孔形成工程)。貫通孔102は、特に、基板Wの厚さ方向T(処理膜100の厚さ方向でもある)に第1固体110が延びている部分に形成されやすい。貫通孔102は、平面視で、たとえば、直径数nmの大きさである。
【0140】
第2固体111も剥離液に溶解される。しかし、剥離液に対する第2成分の溶解性は第1成分の溶解性よりも低いため、第2固体111は、剥離液によってその表面付近が僅かに溶解されるだけである。そのため、貫通孔102を介して基板Wの上面付近まで到達した剥離液は、第2固体111において基板Wの上面付近の部分を僅かに溶解させる。これにより、図6Bの拡大図に示すように、剥離液が、基板Wの上面付近の第2固体111を徐々に溶解させながら、処理膜100と基板Wの上面との間の隙間G1に進入していく(剥離液進入工程)。
【0141】
そして、たとえば、貫通孔102の周縁を起点として処理膜100が分裂して膜片となり、図6Cに示すように、処理膜100の膜片が除去対象物103を保持した状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、剥離工程)。そして、除去対象物103は、処理膜100によって保持された状態で、処理膜100とともに基板W外に押し出され、基板Wの上面から除去される(除去工程)。
【0142】
なお、剥離液は、第2固体111を殆ど溶解させない場合もあり得る。この場合でも、処理膜100と基板Wの上面との間の僅かな隙間G1に入り込むことによって、処理膜100が基板Wから剥離される。
第1実施形態によれば、基板Wの上面に供給された処理液を固化または硬化させることによって、除去対象物103を保持する処理膜100が形成され、その後、基板Wの上面に剥離液を供給することによって、処理膜100が部分的に溶解して処理膜100に貫通孔102が形成される。処理膜100に貫通孔102が形成されることによって、剥離液が基板Wの上面付近に到達しやすくなる。そのため、剥離液を処理膜100と基板Wとの界面に剥離液を作用させて、処理膜100を基板Wの上面から効率良く剥離することができる。その一方で、処理膜100は、貫通孔102の形成のために部分的に剥離液によって溶解されるものの、残りの部分は、固体状態で維持される。その結果、処理膜100とともに除去対象物103を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0143】
また、第1実施形態によれば、剥離工程において、剥離液は、貫通孔102を介して処理膜100と基板Wの上面との間に進入する。そのため、処理膜100と基板Wとの界面に剥離液を作用させて処理膜100を基板の表面から一層効率良く剥離することができる。
また、第1実施形態によれば、第1成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高い。そのため、第1成分によって形成される第1固体110は、第2成分によって形成される第2固体111よりも剥離液に溶解しやすい。
【0144】
そのため、剥離液によって第1固体110を溶解して貫通孔102を確実に形成しつつ、剥離液に第2固体111を溶解させずに第2固体111の固体状態を維持することができる。したがって、第2固体111で除去対象物を保持しながら、第2固体111と基板Wとの界面に剥離液を作用させることができる。その結果、第2固体111を基板Wの上面から速やかに剥離しつつ、第2固体111とともに除去対象物103を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0145】
また、第1実施形態によれば、処理液中の第1成分の含有量よりも第2成分の含有量の方が多い。処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が少ない構成と比較して、処理膜100において剥離液によって溶解される部分を少なくすることができる。そのため、処理膜100の部分的な溶解に伴って処理膜100から離脱する除去対象物103を少なくできる。したがって、大部分の除去対象物103を処理膜100とともに基板Wの上面から除去できるので、基板Wへの除去対象物103の再付着を抑制しながら、除去対象物103を効率的に基板W外に排除できる。
【0146】
さらに、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が少ない構成と比較して、処理膜100において剥離液によって溶解される部分を少ないため、処理膜100を比較的大きい膜片に分裂させることができる。処理膜100が比較的大きい膜片に分裂されるので、膜片は、剥離液の流れから力を受ける表面積を増やすことができる。したがって、剥離液の流れに乗って基板W外に排出されやすい。したがって、除去対象物103を処理膜100とともに基板Wから効率良く除去することができる。
【0147】
また、第1実施形態によれば、薄膜化工程において基板W上の処理液膜101が薄膜化されている。そのため、加熱工程において処理液を固化または硬化することによって、薄膜化された処理膜100が形成される。そのため、剥離工程において、剥離液が処理膜100を貫通する距離(膜厚)を厚さ方向Tにおいて短くすることができる。その結果、剥離液が処理膜100を基板Wの上面との間に速やかに進入するので、処理膜100を速やかに剥離でき、それにより、除去対象物103を効率的に基板W外に除去できる。
【0148】
また、第1実施形態によれば、内部に溶媒が残留した処理膜100が形成される。そのため、処理膜100内に溶媒が残留していない場合と比較して、その後の剥離工程において剥離液を処理膜100になじませやすい。したがって、処理膜100の表面上で均等に分布した貫通孔102が形成されやすい。その結果、剥離液が処理膜100の至るところで処理膜100と基板Wの上面との界面に到達するので、処理膜100を速やかに剥離できる。
【0149】
第1実施形態では、第2移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶質には、第1成分および第2成分が含有されている。しかしながら、第2移動ノズル9から吐出される処理液に含まれる溶質には、第1成分および第2成分に加えて、剥離液に対する溶解度(溶解性)が第2成分よりも高く第1成分よりも低い第3成分が含有されていてもよい。
第3成分は、たとえば、第1成分および第2成分と同様の合成樹脂である。すなわち、第3成分としては、溶質として用いられる合成樹脂の例としては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等を用いることができる。
【0150】
この場合、処理膜形成工程において形成される処理膜100には、図7Aに示すように、第1固体110および第2固体111に加えて、第3成分によって形成される第3固体112が含まれる。第3固体112は、たとえば、処理膜100の全体に分布している。つまり、第3固体112は、処理膜100において基板Wの上面に隣接する部分にも形成されている。
【0151】
第3固体112は、第2固体111よりも基板Wに対する密着性が低い。言い換えると、第3固体112と基板Wの上面との相互作用は、第2固体111と基板の上面との相互作用よりも弱い。すなわち、第3固体112は、第2固体111よりも基板Wの上面から剥離しやすい。
そして、図7Bに示すように、剥離工程において第1固体110が剥離液によって溶解されて貫通孔102が形成される。そして、剥離液は、貫通孔102を介して基板Wの上面付近まで到達する。第1実施形態と同様に処理膜100において基板Wの上面付近の部分が溶解される。詳しくは、図7Bの拡大図に示すように、剥離液が、基板Wの上面付近の第2固体111および第3固体112を徐々に溶解させながら、処理膜100と基板Wの上面との間の隙間G1に進入していく(剥離液進入工程)。
【0152】
そして、たとえば、貫通孔102の周縁を起点として処理膜100が分裂して膜片となり、図7Cに示すように、処理膜100の膜片が除去対象物103を保持した状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、剥離工程)。そして、除去対象物103は、処理膜100によって保持された状態で、処理膜100とともに基板W外に押し出され、基板Wの上面から除去される(除去工程)。
【0153】
この変形例では、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体112は、第2成分によって形成される第2固体111よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体110よりも剥離液に溶解しにくい。
そのため、剥離液によって第1固体110を溶解して貫通孔102を確実に形成することができる。そして、貫通孔102を介して基板Wの上面付近に進入した剥離液によって、処理膜100において基板Wの上面に隣接する部分に位置する第3固体112を溶解することができる。第3固体112は第2固体111よりも剥離液に溶解しやすいため、処理膜100において基板Wの上面に隣接する部分に第3固体112が存在しない構成と比較して、剥離液によって処理膜100が剥離されやすい。
【0154】
その一方で、第2固体111を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体111で除去対象物103を保持しながら、第2固体111と基板との界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜100(第2固体111)を基板Wの上面から速やかに剥離しつつ、処理膜100(第2固体111)とともに除去対象物103を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0155】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pに備えられる処理ユニット2Pの概略構成を示す模式的な部分断面図である。図8では、今まで説明した部分と同じ部分には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する(後述する図9図10Dにおいても同様)。
図8を参照して、処理ユニット2Pが第1実施形態に係る処理ユニット2(図2参照)と主に異なる点は、第2実施形態に係る処理ユニット2Pが、第4移動ノズル13を含む点である。
【0156】
第4移動ノズル13は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に向けて前処理液を供給(吐出)する前処理液供給ユニットの一例である。
第4移動ノズル13は、第4ノズル移動ユニット39によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第4移動ノズル13は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。第4移動ノズル13は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。
【0157】
第4移動ノズル13は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第4移動ノズル13は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
第4ノズル移動ユニット39は、第1ノズル移動ユニット36と同様の構成を有している。すなわち、第4ノズル移動ユニット39は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸および第4移動ノズル13に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0158】
第4移動ノズル13は、前処理液を案内する前処理液配管47に接続されている。前処理液配管47に介装された前処理液バルブ57が開かれると、前処理液が、第4移動ノズル13から下方に連続的に吐出される。
第4移動ノズル13から吐出される前処理液は、溶質および溶媒を含んでいる。第4移動ノズル13から吐出される前処理液に含まれる溶質には、剥離液に対する溶解度(溶解性)が第2成分よりも高く第1成分よりも低い第3成分が含有されている。第3成分は、たとえば、前述したように、第1成分および第2成分と同様の合成樹脂である。この前処理液は、溶媒の少なくとも一部が揮発することによって固化または硬化される。この前処理液は、基板W上で固化または硬化することによって、基板W上に存在する除去対象物を保持する前処理膜を形成する。
【0159】
第4移動ノズル13から吐出される前処理液に含まれる溶媒は、第3成分を溶解させる液体であればよい。第3成分としての合成樹脂を溶解させる溶媒としては、たとえば、IPA、PGEE、PGMEA、EL等が挙げられる。
前処理液バルブ57および第4ノズル移動ユニット39は、コントローラ3によって制御される(図3参照)。
【0160】
図9は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理の一例を説明するための流れ図である。第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理では、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理とは異なり、前処理液供給工程(ステップS20)および前処理膜形成工程(ステップS21およびステップS22)が実行される。図10A図10Dは、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによる基板処理の一部の工程を説明するための模式図である。
【0161】
詳しくは、基板処理装置1Pによる基板処理では、たとえば、図9に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、薬液供給工程(ステップS2)、第1リンス工程(ステップS3)、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)、前処理液供給工程(ステップS20)、前処理液膜薄膜化工程(ステップS21)、前処理液膜加熱工程(ステップS22)、処理液供給工程(ステップS5)、薄膜化工程(ステップS6)、加熱工程(ステップS7)、緩衝工程(ステップS8)、剥離工程(ステップS9)、第2リンス工程(ステップS10)、第2有機溶剤供給工程(ステップS11)、スピンドライ工程(ステップS12)および基板搬出工程(ステップS13)がこの順番で実行される。
【0162】
より詳しくは、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)までは、第1実施形態に係る基板処理装置1による基板処理と同様に実行される。そして、基板処理装置1Pによる基板処理では、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)の次に、前処理液供給工程(ステップS20)が実行される。
具体的には、前処理液供給工程(ステップS20)では、第1有機溶剤供給工程(ステップS4)において開かれた有機溶剤バルブ56が閉じられる。これにより、基板Wに対する有機溶剤の供給が停止される。そして、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を上位置に移動させる。そして、ガード昇降ユニット74が、第1ガード71Aを上位置に移動させる。前処理液供給工程において、基板Wは、所定の前処理回転速度、たとえば、10rpm~1500rpmで回転される。
【0163】
そして、図10Aに示すように、第4ノズル移動ユニット39が、第4移動ノズル13を処理位置に移動させる。第4移動ノズル13の処理位置は、たとえば、中央位置である。そして、前処理液バルブ57が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて、第4移動ノズル13から前処理液が供給(吐出)される(前処理液供給工程、処理液吐出工程)。これにより、基板W上の有機溶剤が前処理液によって置換されて、基板W上に前処理液の液膜(前処理液膜121)が形成される(前処理液膜形成工程)。
【0164】
次に、前処理膜形成工程(ステップS21およびステップS22)が実行される。前処理膜形成工程では、基板W上の前処理液が固化または硬化されて基板Wの上面に前処理膜120(図10C参照)が形成される。
前処理膜形成工程では、前処理液膜薄膜化工程(前処理液スピンオフ工程)(ステップS6)が実行される。前処理液膜薄膜化工程では、まず、前処理液バルブ57が閉じられる。これにより、基板Wに対する処理液の供給が停止される。そして、第4ノズル移動ユニット39によって第4移動ノズル13がホーム位置に移動される。図10Bに示すように、前処理液膜薄膜化工程では、基板W上の前処理液の液膜の厚さが適切な厚さになるように、基板Wの上面への前処理液の供給が停止された状態で遠心力によって基板Wの上面から前処理液の一部が排除される。前処理液膜薄膜化工程では、対向部材6、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが上位置に維持される。
【0165】
前処理液膜薄膜化工程では、スピンモータ23が、基板Wの回転速度を所定の前処理液膜薄膜化速度に変更する。前処理液膜薄膜化速度は、たとえば、300rpm~1500rpmである。基板Wの回転速度は、300rpm~1500rpmの範囲内で一定に保たれてもよいし、前処理液膜薄膜化工程の途中で300rpm~1500rpmの範囲内で適宜変更されてもよい。
【0166】
前処理膜形成工程では、前処理液膜薄膜化工程後に、基板Wを加熱する前処理液膜加熱工程(ステップS22)が実行される。前処理液膜加熱工程では、基板W上の前処理液の溶媒の一部を揮発させるために、基板W上の前処理液膜121を加熱する。
具体的には、図10Cに示すように、対向部材昇降ユニット61が、対向部材6を、上位置と下位置との間の近接位置に移動させる。加熱工程では、第1ガード71Aおよび第2ガード71Bが上位置に維持される。そして、気体バルブ55が開かれる。これにより、基板Wの上面(前処理液膜121の上面)と、対向部材6の対向面6aとの間の空間に気体が供給される(気体供給工程)。
【0167】
中央ノズル11からの気体の供給によって、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間には、基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流Fが形成される。基板Wの上面の中央領域から基板Wの上面の周縁に向けて移動する気流Fを形成することによって、第1ガード71Aから跳ね返った熱媒を第1ガード71Aに向けて押し戻すことができる。したがって、前処理膜120の上面への熱媒の付着を一層抑制することができる。
【0168】
そして、熱媒バルブ88が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの下面の中央領域に向けて、下面ノズル12から熱媒が供給(吐出)される(熱媒供給工程、熱媒吐出工程)。下面ノズル12から基板Wの下面に供給された熱媒は遠心力によって基板Wの下面の全体に行き渡る。前処理液膜加熱工程において、基板Wは、所定の前処理膜加熱速度、たとえば、1000rpmで回転される。
【0169】
基板Wの下面に熱媒が供給されることによって、基板Wを介して、基板W上の前処理液膜121が加熱される。これにより、前処理液膜121中の溶媒の蒸発が促進される(溶媒蒸発工程、溶媒蒸発促進工程)。そのため、前処理膜120の形成に必要な時間を短縮することができる。
前処理液膜加熱工程の後、第1実施形態に係る処理ユニット2による基板処理と同様に、処理液供給工程(ステップS5)以降の工程が順次に実行される。図10Dに示すように、処理液供給工程では、前処理膜120が形成された基板Wの上面に、処理液が供給される。
【0170】
次に、図11A図11Dを参照して、処理膜100および前処理膜120が基板Wから剥離されるときの様子について説明する。図11Aは、前処理液膜加熱工程(ステップS22)後の基板Wの上面付近の様子を示している。図11Bは、加熱工程(ステップS7)後の基板Wの上面付近の様子を示している。図11Cおよび図11Dは、剥離工程(ステップS9)実行中の基板Wの上面付近の様子を示している。
【0171】
図11Aに示すように、前処理液膜加熱工程では、前述したように、基板W上の前処理液膜121が基板Wを介して熱媒によって加熱される。これにより、図11Aに示すように、前処理膜120が基板Wの上面に形成される。詳しくは、溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって、前処理液の溶質に含有される第3成分が第3固体112を形成する。前処理膜の膜厚は、基板Wの厚さ方向Tにおいて除去対象物103よりも薄いことが好ましい。
【0172】
そして、処理液供給工程(ステップS5)および処理液膜形成工程(ステップS6およびステップS7)を経ることによって、図11Bに示すように、パーティクル等の除去対象物103を保持した処理膜100が、前処理膜120の上に形成される。詳しくは、溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって、処理液の溶質に含有される第1成分が第1固体110を形成し、処理液の溶質に含有される第2成分が第2固体111を形成する。
【0173】
そして、図11Cを参照して、剥離工程において、処理膜100が部分的に溶解される。基板Wの上面に剥離液が供給されると、第2成分よりも剥離液に対する溶解性が高い第1成分によって形成されている第1固体110が主に溶解される。これにより、処理膜100において第1固体110が偏在している部分に貫通孔102が形成される(貫通孔形成工程)。貫通孔102は、基板Wの厚さ方向Tに第1固体110が延びている部分に形成されやすい。
【0174】
第2固体111も剥離液に溶解される。しかし、剥離液に対する第2成分の溶解性は第1成分の溶解性よりも低いため、第2固体111は、剥離液によってその表面付近が僅かに溶解されるだけである。
剥離液は、主に第1固体110を溶解させながら貫通孔102を介して基板Wの上面付近まで到達する。基板Wの上面付近にまで到達した剥離液によって、前処理膜120において基板Wの上面付近の部分が溶解される。これにより、図11Cの拡大図に示すように、剥離液が、基板Wの上面付近の前処理膜120を徐々に溶解させながら、前処理膜120と基板Wの上面との間の隙間G2に進入していく(剥離液進入工程)。
【0175】
そして、たとえば、貫通孔102の周縁を起点として処理膜100および前処理膜120が分裂して膜片となり、図11Dに示すように、処理膜100および前処理膜120の膜片が除去対象物103を保持した状態で基板Wから剥離される(処理膜分裂工程、前処理膜分裂工程、剥離工程)。そして、除去対象物103は、処理膜100によって保持された状態で、処理膜100とともに基板W外に押し出され、基板Wの上面から除去される(除去工程)。
【0176】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。ただし、第2実施形態では、基板Wの上面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給され、前処理液が固化または硬化される。そのため、基板Wの上面に前処理膜120が形成された状態で基板Wの上面に処理液が供給され、処理膜100が形成される。したがって、第3成分によって形成される前処理膜120を、基板Wの上面に隣接する部分に簡単に形成することができる。
【0177】
また、第3成分は剥離液に対する溶解度が第2成分よりも高く第1成分よりも低い。そのため、第3成分によって形成される第3固体112を有する前処理膜120は、第2成分によって形成される第2固体111よりも剥離液に溶解しやすく、第1成分によって形成される第1固体110よりも剥離液に溶解しにくい。
そのため、剥離液によって第1固体110を溶解して貫通孔102を確実に形成することができる。そして、貫通孔102を介して基板Wの上面付近に進入した剥離液によって、処理膜100において基板Wの上面に隣接する部分に位置する第3固体112を溶解することができる。第3固体112は第2固体111よりも剥離液に溶解しやすいため、第2固体111が基板Wの上面に接する構成と比較して、剥離液によって処理膜100が剥離されやすい。
【0178】
その一方で、第2固体111を、剥離液中において固体状態で維持させることができる。したがって、第2固体111で除去対象物103を保持しながら、第2固体111と基板Wとの界面に剥離液を作用させることができる。その結果、処理膜100(第2固体111)を基板Wの上面から速やかに剥離しつつ、処理膜100(第2固体111)とともに除去対象物103を基板Wの上面から効率良く除去することができる。
【0179】
前処理膜120の膜厚が除去対象物103の大きさ(除去対象物103が球体である場合はその直径)よりも小さい場合には、前処理膜120の上端から露出する第3固体112の表面積が増大しやすい。そのため、第3固体112よりも剥離液に対する溶解性が低い第2固体111が除去対象物103に接触する部分を増大させることができる。そのため、基板Wの上面から剥離された処理膜100からの除去対象物103の脱落を抑制することができる。
【0180】
前処理膜形成工程(ステップS21およびステップS22)は、省略することもできる。この場合、基板Wの上面には、処理液が供給される前に、前処理液が供給される。基板Wの上面に前処理液が存在する状態(前処理液膜121が形成された状態)で基板Wの上面に処理液が供給される。そのため、基板W上で前処理液と処理液とが混合されて、図7Aに示すような、第1固体110、第2固体111および第3固体112を有する処理膜100が形成される。この場合、先に基板W上に前処理液が存在しているため、基板Wの上面付近には、第3固体112が形成されやすい。したがって、少なくとも基板Wの上面に隣接する部分に第3固体112を有する処理膜100を簡単に形成することができる。
【0181】
したがって、前処理膜形成工程(ステップS21およびステップS22)を含む基板処理と同様に、処理膜100において基板Wの上面に隣接する部分を剥離液に適度に溶解させることによって、除去対象物103を処理膜100(特に第2固体111)に保持をさせつつ、処理膜100を効率良く剥離させることができる。
【0182】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態に係る基板処理装置1Qに備えられる処理ユニット2Qの概略構成を示す模式的な部分断面図である。図12を参照して、第3実施形態に係る処理ユニット2Qが第1実施形態に係る処理ユニット2(図2参照)と主に異なる点は、第3実施形態に係る処理ユニット2Qが、対向部材6および中央ノズル11の代わりに、第5移動ノズル14を含む点である。
【0183】
第5移動ノズル14は、基板Wの上面に有機溶剤を供給する有機溶剤供給ユニットの一例である。また、第5移動ノズル14は、基板Wの上面に窒素ガス等の気体を供給する気体供給ユニットの一例でもある。
第5移動ノズル14には、第5移動ノズル14に有機溶剤を案内する有機溶剤配管90が接続されている。有機溶剤配管90に介装された有機溶剤バルブ95が開かれると、有機溶剤が、第5移動ズル15から基板Wの上面の中央領域に向けて連続的に吐出される。
【0184】
第5移動ノズル14には、第5移動ノズル14に気体を案内する複数の気体配管(第1気体配管91、第2気体配管92および第3気体配管93)が接続されている。複数の気体配管(第1気体配管91、第2気体配管92および第3気体配管93)には、それぞれ、その流路を開閉する気体バルブ(第1気体バルブ96A、第2気体バルブ97Aおよび第3気体バルブ98A)が介装されている。
【0185】
第5移動ノズル14は、有機溶剤配管90から案内される有機溶剤を、鉛直方向に沿って吐出する中心吐出口14aを有している。第5移動ノズル14は、第1気体配管91から供給される気体を、鉛直方向に沿って直線状に吐出する線状流吐出口14bを有している。さらに、第5移動ノズル14は、第2気体配管92から供給される気体を、水平方向に沿って第5移動ノズル14の周囲に放射状に吐出する水平流吐出口14cを有している。また、第5移動ノズル14は、第3気体配管93から供給される気体を、斜め下方向に沿って第5移動ノズル14の周囲に放射状に吐出する傾斜流吐出口14dを有している。
【0186】
第1気体配管91には、第1気体配管91内を流れる気体の流量を正確に調節するためのマスフローコントローラ96Bが介装されている。マスフローコントローラ96Bは、流量制御バルブを有している。また、第2気体配管92には、第2気体配管92内を流れる気体の流量を調節するための流量可変バルブ97Bが介装されている。また、第3気体配管93には、第3気体配管93内を流れる気体の流量を調節するための流量可変バルブ98Bが介装されている。さらに、各気体配管91.92,93には、それぞれ、異物を除去するためのフィルタ96C,97C,98Cが介装されている。
【0187】
第5移動ノズル14は、第5ノズル移動ユニット35によって、水平方向および鉛直方向に移動される。第5移動ノズル14は、中心位置と、ホーム位置(退避位置)との間で移動することができる。
第5移動ノズル14は、中心位置に位置するとき、基板Wの上面の回転中心に対向する。第5移動ノズル14は、ホーム位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。第5移動ノズル14は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。
【0188】
第5ノズル移動ユニット35は、第1ノズル移動ユニット36と同様の構成を有している。すなわち、第5ノズル移動ユニット35は、たとえば、鉛直方向に沿う回動軸(図示せず)と、回動軸および第5移動ノズル14に結合されて水平に延びるアーム(図示せず)と、回動軸を昇降させたり回動させたりする回動軸駆動ユニット(図示せず)とを含む。
【0189】
第5移動ノズル14から吐出される有機溶剤としては、第1実施形態に係る第3チューブ33(図2参照)から吐出される有機溶剤と同様の有機溶剤が挙げられる。第5移動ノズル14から吐出される気体としては、第1実施形態に係る第2チューブ32(図2参照)から吐出される気体と同様の気体が挙げられる。
気体バルブ96A~98A、マスフローコントローラ96B、流量可変バルブ97B,98B、および第5ノズル移動ユニット35は、コントローラ3によって制御される(図3参照)。
【0190】
第3実施形態に係る基板処理装置1Qを用いることで、第1実施形態に係る基板処理装置1と同様の基板処理が可能である。ただし、第3移動ノズル10から供給される緩衝液は、リンス液でもあるため、第1リンス工程(ステップS3)および第2リンス工程(ステップS4)では、第3移動ノズル10から基板Wの上面にリンス液が供給される。
また、第3実施形態に係る基板処理装置1Qに、さらに、前処理液供給ユニットを設けることで、第2実施形態に係る基板処理装置1Pと同様の基板処理が可能である。
【0191】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
たとえば、基板処理装置1,1P,1Qにおいて、薬液供給工程(ステップS2)、第1リンス工程(ステップS3)および第1有機溶剤供給工程(ステップS4)が省略された基板処理が行われてもよい。
【0192】
また、上述の実施形態における基板処理では、処理膜形成工程(ステップS6およびステップS7)において、熱媒による基板Wの加熱によって処理液の溶媒が蒸発する。また、前処理膜形成工程(ステップS21およびステップS22)においても、熱媒による基板Wの加熱によって前処理液の溶媒が蒸発する。しかしながら、基板Wは、熱媒の供給に限られず、たとえば、スピンベース21や対向部材6に内蔵されたヒータ等(図示せず)によって加熱されてもよい。この場合、当該ヒータが、基板加熱ユニットおよび蒸発ユニット(蒸発促進ユニット)として機能する。
【0193】
また、処理膜100および前処理膜120の形成には、必ずしも基板Wの加熱を行う必要はない。すなわち、薄膜化工程(ステップS6)や前処理液膜薄膜化工程(ステップS21)において、溶媒が充分に揮発した場合には、その後の加熱工程(ステップS7)や前処理液膜加熱工程(ステップS22)は、実行しなくてもよい。とくに、処理膜100や前処理膜120の内部に溶媒を残留させてもよい場合には、基板W加熱させなくても所望の度合まで溶媒を蒸発させやすい。
【0194】
また、上述した各基板処理において、緩衝工程(ステップS8)を省略することも可能である。
また、上述した各実施形態では、処理液における第2成分の含有量は、処理液における第1成分の含有量よりも多い。しかしながら、処理液における第2成分の含有量は、処理液における第1成分の含有量よりも少なくてもよい。この場合、処理液中の第1成分の含有量よりも処理液中の第2成分の含有量の方が多い構成と比較して、処理膜100において剥離液によって溶解される部分を多くすることができる。そのため、処理膜100を比較的細かい膜片に分裂させることができる。処理膜100が比較的細かい膜片に分裂されるので、膜片は、剥離液の流れから受ける力を受けて浮きやすく剥離液の流れに乗って基板W外に排出されやすい。したがって、処理膜100を基板Wから効率良く除去することができる。
【0195】
また、上述した各実施形態では、処理液に含まれる溶質の各成分(第1成分、第2成分および第3成分)は、合成樹脂である。しかしながら、溶質の各成分は、必ずしも合成樹脂である必要はなく、処理液に含まれる溶媒によって溶解され、剥離液による溶解性が第2成分、第3成分、第1成分の順に高くなるものであればよい。そうであるならば、溶質の各成分は、たとえば、金属や塩であってもよい。また、溶質は、剥離液に対する溶解性が互いに異なる4つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0196】
また、上述した各実施形態で説明した処理液および剥離液は、以下に説明するものであっても、上述した各実施形態と同様の効果を奏する。
以下では、「Cx~y」、「Cx~」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
【0197】
以下では、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
【0198】
<処理液>
処理液は(A)不溶または難溶の溶質である第2成分、(B)可溶の溶質である第1成分、および(C)溶媒を含んでいる。処理液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)第2成分が膜化され、(B)第1成分と共に膜として基板上に残され、その後に剥離液によって前記膜が基板上から除去される。好ましくは、(A)第2成分は、剥離液に不溶性または難溶性である。また、好ましくは、(B)第1成分は、剥離液に可溶性である。上記「溶質」とは(C)溶媒に溶解している状態に限定されず、懸濁状態も許容される。好適な一態様として、処理液に含まれる溶質、成分および添加物は(C)溶媒に溶解する。この態様をとる処理液は、埋め込み性能または膜の均一性が良いと考えられる。
【0199】
ここで、好適には「共に膜として」とは1つの膜中に共存する状態となることであり、それぞれが別の層を作ることではない。「膜化」の一態様は、「固化」である。なお、処理液から得られる膜はパーティクルを保持できる程度の固さを有していればよく、(C)溶媒が完全に除去(例えば気化による)される必要はない。前記処理液は(C)溶媒の揮発に伴って徐々に収縮しながら膜となる。前記「膜として基板上に残され」とは、全体と比してごく少量が除去(例:蒸発、揮発)されることは許容される。例えば、元の量と比して0~10質量%(好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~3質量%、さらに好ましくは0~1質量%、よりさらに好ましくは0~0.5質量%)が除去されることは許容される。
【0200】
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、前記の膜が基板上のパーティクルを保持し、剥離液によって剥がされることで除去されると考えられる。また、前記膜に(B)第1成分が残るため、前記膜が剥がれるきっかけとなる部分が生じると考えられる。
【0201】
<第2成分>
(A)第2成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリマレイン酸誘導体、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール誘導体、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含む。好ましくは、(A)第2成分は、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸誘導体、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。さらに好ましくは、(A)第2成分は、ノボラック、ポリヒドロスチレン、ポリカーボネート、およびこれらの組合せの共重合体、の少なくとも1つを含んでいてもよい。ノボラックはフェノールノボラックであってもよい。
【0202】
言うまでもないが、処理液は(A)第2成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(A)第2成分はノボラックとポリヒドロキシスチレンの双方を含んでもよい。
(A)第2成分は乾燥されることで膜化し、前記膜は後述の剥離液で大部分が溶解されることなくパーティクルを保持したまま剥がされることが、好適な一態様である。なお、剥離液によって(A)第2成分のごく一部が溶解される態様は許容される。
【0203】
好ましくは、(A)第2成分はフッ素および/またはケイ素を含有せず、より好ましくは双方を含有しない。
前記共重合はランダム共重合、ブロック共重合が好ましい。
権利範囲を限定する意図はないが、(A)第2成分の具体例として、下記化学式7~化学式13に示す各化合物が挙げられる。
【0204】
【化7】
【0205】
【化8】
【0206】
【化9】
【0207】
【化10】
(RはCアルキル等の置換基を意味する)
【0208】
【化11】
【0209】
【化12】
【0210】
【化13】
【0211】
(A)第2成分の重量平均分子量(Mw)は好ましくは150~500,000であり、より好ましくは300~300,000であり、さらに好ましくは500~100,000であり、よりさらに好ましくは1,000~50,000である。
(A)第2成分は合成することで入手可能である。また、購入することもできる。購入する場合、例として供給先は以下が挙げられる。供給先が(A)ポリマーを合成することも可能である。
ノボラック:昭和化成(株)、旭有機材(株)、群栄化学工業(株)、住友ベークライト(株)
ポリヒドロキシスチレン:日本曹達(株)、丸善石油化学(株)、東邦化学工業(株)
ポリアクリル酸誘導体:(株)日本触媒
ポリカーボネート:シグマアルドリッチ
ポリメタクリル酸誘導体:シグマアルドリッチ
処理液の全質量と比較して、(A)第2成分が0.1~50質量%であり、好ましくは0.5~30質量%であり、より好ましくは1~20質量%であり、さらに好ましくは1~10質量%である。つまり、処理液の全質量を100質量%とし、これを基準として(A)第2成分が0.1~50質量%である。すなわち、「と比較して」は「を基準として」と言い換えることが可能である。特に言及しない限り、以下においても同様である。
【0212】
溶解性は公知の方法で評価することができる。例えば、20℃~35℃(さらに好ましくは25±2℃)の条件において、フラスコに前記(A)または後述の(B)を5.0質量%アンモニア水に100ppm添加し、蓋をし、振とう器で3時間振とうすることで、(A)または(B)が溶解したかで求めることができる。振とうは攪拌であっても良い。溶解は目視で判断することもできる。溶解しなければ溶解性100ppm未満、溶解すれば溶解性100ppm以上とする。溶解性が100ppm未満は不溶または難溶、溶解性が100ppm以上は可溶とする。広義には、可溶は微溶を含む。不溶、難溶、可溶の順で溶解性が低い。狭義には、微溶は可溶よりも溶解性が低く、難溶よりも溶解性が高い。
【0213】
前記5.0質量%アンモニア水を後のプロセスで使用する剥離液に変更しても良い。溶解性の評価で用いる液と剥離液は同じものである必要はなく、溶解性が異なる成分が共に存在すればよい。処理液から形成された処理膜に存在する(B)第1成分が剥離液によって溶けだすことで、処理膜に基板から剥がれるきっかけを与えることができる。よって、剥離液によって(B)第1成分の一部が溶けることができれば、処理膜に剥がれるきっかけを与えることができる。そのため、例えば剥離液は溶解性の評価で用いる液よりアルカリ性が弱くてもよい。
【0214】
<第1成分>
(B)第1成分は(B’)クラック促進成分である。(B’)クラック促進成分は、炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基(-OH)および/またはカルボニル基(-C(=O)-)を含んでいる。(B’)クラック促進成分がポリマーである場合、構成単位の1種が1単位ごとに炭化水素を含んでおり、さらにヒドロキシ基および/またはカルボニル基を有する。カルボニル基とは、カルボン酸(-COOH)、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、エノンが挙げられ、カルボン酸が好ましい。
【0215】
権利範囲を限定する意図はなく、理論に拘束されないが、処理液が乾燥され基板上に処理膜を形成し、剥離液が処理膜を剥離する際に(B)第1成分が、処理膜が剥がれるきっかけとなる部分を生むと考えられる。このために、(B)第1成分は剥離液に対する溶解性が、(A)第2成分よりも高いものであることが好ましい。(B’)クラック促進成分がカルボニル基としてケトンを含む態様として環形の炭化水素が挙げられる。具体例として、1,2-シクロヘキサンジオンや1,3-シクロヘキサンジオンが挙げられる。
【0216】
より具体的な態様として、(B)第1成分は、下記(B-1)、(B-2)および(B-3)の少なくともいずれか1つで表される。
(B-1)は下記化学式14を構成単位として1~6つ含んでなり(好適には1~4つ)、各構成単位が連結基Lで結合される化合物である。
【0217】
【化14】
【0218】
ここで、Lは単結合、およびC1~6アルキレンの少なくとも1つから選ばれる。前記C1~6アルキレンはリンカーとして構成単位を連結し、2価の基に限定されない。好ましくは2~4価である。前記C1~6アルキレンは直鎖、分岐のいずれであっても良い。Lは単結合、メチレン、エチレン、またはプロピレンであることが好ましい。
CyはC5~30の炭化水素環であり、好ましくはフェニル、シクロヘキサンまたはナフチルであり、より好ましくはフェニルである。好適な態様として、リンカーLは複数のCyを連結する。
【0219】
はそれぞれ独立にC1~5アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、プロピル、またはブチルである。前記C1~5アルキルは直鎖、分岐のいずれであっても良い。
b1は1、2または3であり、好ましくは1または2であり、より好ましくは1である。nb1’は0、1、2、3または4であり、好ましくは0、1または2である。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-1)の好適例として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)、2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、1,3-シクロヘキサンジオール、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,6-ナフタレンジオール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、が挙げられる。これらは、重合や縮合によって得てもよい。
【0220】
一例として化学式15に示す2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールを取り上げ説明する。同化合物は(B-1)において、化学式14の構成単位を3つ有し、構成単位はL(メチレン)で結合される。nb1=nb1’=1であり、Rはメチルである。
【0221】
【化15】
【0222】
(B-2)は下記化学式16で表される。
【0223】
【化16】
【0224】
21、R22、R23、およびR24は、それぞれ独立に水素またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルであり、さらに好ましくはメチルまたはエチルである。
21およびL22は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はC1~5のアルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。L21およびL22は、好ましくはC2~4のアルキレン、アセチレン(Cのアルキニレン)またはフェニレンであり、より好ましくはC2~4のアルキレンまたはアセチレンであり、さらに好ましくはアセチレンである。
【0225】
b2は0、1または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-2)の好適例として、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、が挙げられる。別の一形態として、3-ヘキシン-2,5-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノールも(B-2)の好適例として挙げられる。
【0226】
(B-3)は下記化学式17で表される構成単位を含んでなり、重量平均分子量 (Mw)が500~10,000のポリマーである。Mwは、好ましくは600~5,000であり、より好ましくは700~3,000である。
【0227】
【化17】
【0228】
ここで、R25は-H、-CH、または-COOHであり、好ましくは-H、または-COOHである。1つの(B-3)ポリマーが、それぞれ化学式14で表される2種以上の構成単位を含んでなることも許容される。
権利範囲を限定する意図はないが、(B-3)ポリマーの好適例として、アクリル酸、マレイン酸、アクリル酸、またはこれらの組合せの重合体が挙げられる。ポリアクリル酸、マレイン酸アクリル酸コポリマーがさらに好適な例である。
【0229】
共重合の場合、好適にはランダム共重合またはブロック共重合であり、より好適にはランダム共重合である。
一例として、化学式18に示す、マレイン酸アクリル酸コポリマーを挙げて説明する。同コポリマーは(B-3)に含まれ、化学式14で表される2種の構成単位を有し、1の構成単位においてR25は-Hであり、別の構成単位においてR25は-COOHである。
【0230】
【化18】
【0231】
言うまでもないが、処理液は(B)第1成分として、上記の好適例を1または2以上組み合わせて含んでも良い。例えば、(B)第1成分は2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールの双方を含んでも良い。
(B)第1成分は、分子量80~10,000であってもよい。第1成分は、好ましくは分子量90~5000であり、より好ましくは100~3000である。(B)第1成分が樹脂、重合体またはポリマーの場合、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す。
【0232】
(B)第1成分は合成しても購入しても入手することが可能である。供給先としては、シグマアルドリッチ、東京化成工業、日本触媒が挙げられる。
処理液中において、(B)第1成分は、(A)第2成分の質量と比較して、好ましくは1~100質量%であり、より好ましくは1~50質量%である。処理液中において、(B)第1成分は、(A)第2成分の質量と比較して、さらに好ましくは1~30質量%である。
【0233】
<溶媒>
(C)溶媒は有機溶媒を含むことが好ましい。(C)溶媒は揮発性を有していてもよい。揮発性を有するとは水と比較して揮発性が高いことを意味する。例えば、(C)1気圧における溶媒の沸点は、50~250℃であることが好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、50~200℃であることがより好ましく、60~170℃であることがさらに好ましい。1気圧における溶媒の沸点は、70~150℃であることがよりさらに好ましい。(C)溶媒は、少量の純水を含むことも許容される。(C)溶媒に含まれる純水は、(C)溶媒全体と比較して、好ましくは30質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。溶媒に含まれる純水は、よりさらに好ましくは5質量%以下である。溶媒が純水を含まない(0質量%)ことも、好適な一形態である。純水とは、好適にはDIWである。
【0234】
有機溶媒としては、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)等の乳酸エステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0235】
好ましい一態様として、(C)溶媒が含む有機溶媒は、IPA、PGME、PGEE、EL、PGMEA、これらのいかなる組合せから選ばれる。有機溶媒が2種の組合せである場合、その体積比は、好ましくは20:80~80:20であり、より好ましくは30:70~70:30である。
処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、0.1~99.9質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、好ましくは50~99.9質量%であり、より好ましくは75~99.5質量%である。処理液の全質量と比較して、(C)溶媒は、さらに好ましくは80~99質量%であり、よりさらに好ましくは85~99質量%である。
【0236】
<その他の添加物>
本発明の処理液は、(D)その他の添加物をさらに含んでいてもよい。本発明の一態様として、(D)その他の添加物は、界面活性剤、酸、塩基、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、または抗真菌剤を含んでなり(好ましくは、界面活性剤)、これらのいずれの組合せを含んでいてもよい。
【0237】
本発明の一態様として、処理液中の(A)第2成分の質量と比較して、(D)その他の添加物(複数の場合、その和)は、0~100質量(好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~3質量%、よりさらに好ましくは0~1質量%)である。処理液が(D)その他の添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明の態様の一つである。
【0238】
<剥離液>
先述の通り、処理液は、基板上に滴下され、乾燥されることで(C)溶媒が除去され、(A)第2成分が膜化される。これにより、(A)第2成分が、(B)第1成分と共に処理膜として基板上に残され、その後に除去液によって処理膜(パーティクル保持層)が基板上から除去される。処理膜は、基板上に存在するパーティクルを保持することが可能であり、保持したまま剥離液によって除去される。
【0239】
剥離液はアルカリ性、中性または酸性のいずれでもあってもよいが、アルカリ性であることが好ましい。剥離液のpHは7~13であることが好ましい。詳しくは、剥離液のpHは、8~13であることが好ましく、10~13であることがより好ましく、11~12.5であることがよりさらに好ましい。pHの測定は、空気中の炭酸ガスの溶解による影響を避けるために、脱ガスして測定することが好ましい。
【0240】
権利範囲を限定する意図はないが、剥離液の具体例として、アンモニア水、SC-1洗浄液、TMAH水溶液、コリン水溶液、これらのいずれかの組合せが挙げられる(好適にはアンモニア水)。剥離液の溶媒の大部分は純水である。剥離液の溶媒に占める純水の割合が50~100質量%(好ましくは70~100質量%、より好ましくは90~100質量%、さらに好ましくは95~100質量%、よりさらに好ましくは99~100質量%)である。剥離液の溶質の濃度は0.1~10質量%(好ましくは0.2~8質量%、さらに好ましくは0.3~6質量%)である。前記のアルカリ成分を処理液に加えることで、純水(溶質の濃度0.0質量%、好ましくは0.00質量%)を剥離液に使用することも可能である。
【0241】
処理膜の形成の様子、および、基板からの処理膜の剥離の様子は、以下のように説明することもできる。
処理液は、(A)第2成分、(B’)クラック促進成分(第1成分)および(C)溶媒から構成される。基板に本発明の処理液を滴下し、乾燥させることによって、(A)第2成分が膜化する。(A)第2成分が膜化することによって処理膜が形成される。その後、処理膜に剥離液を供給することによって、クラック促進成分が剥離液に溶けだす。クラック促進成分が剥離液に溶けだすことで、処理膜にクラック促進成分が溶出した跡(空孔)が生じる。跡はパーティクル層が剥がれ、基板から剥離される作用を促進する。跡を起点にクラックが広がる。クラックが広がることで分断された処理膜が、パーティクルを保持したまま基板から除去される。
【0242】
剥離液が処理膜を除去(例えば剥離)する際、膜に残る(B)第1成分が、処理膜が剥がれるきっかけになる部分を生むと考えられる。そのため、(B)第1成分は、剥離液に対する溶解性が、(A)第2成分よりも高いものであることが好ましい。処理膜は剥離液により完全に溶解することなく、パーティクルを保持したまま基板上から除去されることが好ましい。処理膜は例えば前記「剥がれるきっかけになる部分」により細かく切れた状態になって、除去されると考えられる。
【0243】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、処理液や剥離液は、これらの例のみに限定されるものではない。
パターン基板の準備
8インチSi基板にKrFレジスト組成物 (AZ DX-6270P、メルクパフォーマンスマテリアルズマテリアルズ株式会社、以下MPM株とする)を滴下し、1500rpmで前記基板にスピンコートする。基板を120℃で90秒ソフトベークする。KrFステッパー(FPA-3000 EX5、Canon)を用い、20mJ/cmで露光し、130℃で90秒 PEB(露光後ベーク)し、現像液(AZ MIF-300、MPM株)で現像する。これにより、ピッチ360nm、デューティー比1:1のライン・スペースのレジストパターンを得る。同レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチ装置(NE-5000N、ULVAC)で基板をエッチングする。その後、ストリッパー(AZ 400T、MPM株)で基板洗浄を行い、レジストパターンおよびレジスト残渣を剥離する。これにより、ピッチ360nm、デューティー比1:1、ライン高さ150nmのパターンを有するパターン基板を作成する。
【0244】
ベア基板の準備
8インチSi基板を用いる。
評価基板の調製
上記のパターン基板およびベア基板にパーティクルを付着させる。
実験用のパーティクルとして超高純度コロイダルシリカ(PL-10H、扶桑化学工業、平均一次粒径90nm)を用いる。シリカ微粒子組成物を50mL滴下し、500rpmで5秒間回転することで、塗布する。その後、1000rpmで30秒間回転することで、シリカ微粒子組成物の溶媒をスピンドライする。これによって、評価基板を得る。
【0245】
溶解性の評価
以降に使用する各成分(例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)4mgを50mLサンプル瓶に入れ、5.0質量%アンモニア水を加えて総量を40gにする。これに蓋をし、3時間振とう攪拌する。これにより、成分濃度100ppmの液を得る。各成分の添加量を40mgに変更する以外は上述同様に行い、1,000ppmの液を得る。
【0246】
これらの溶解性を目視で確認する。評価基準は以下である。
X:成分濃度100ppmおよび1,000ppmでその成分の溶け残りが確認される。この場合、その成分は不溶または難溶と判断される。
Y:成分濃度100ppmでは溶け残りが確認されず、1,000ppmで溶け残りが確認される。この場合、その成分は微溶と判断される。
Z:成分濃度100ppmおよび1,000ppmで溶け残りが確認されない。この場合、その成分は可溶と判断される。
【0247】
評価結果を下記表1~表4に記載する。
洗浄液1の調製例1
(A)第2成分としてノボラック(Mw約300)、(B)第1成分として2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを使用する。
ノボラック(Mw約300)に対して5質量%になるように2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを秤量する。これらを合計5gとなるように取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する。これを1時間、攪拌子で攪拌し、固形成分濃度が5質量%の液を得る。
【0248】
この液をOptimizer UPE(日本インテグリス株式会社、UPE、孔径10nm)でろ過する。これにより、洗浄液1を得る。表1に記載する。
以下の表1~表4において、(B)列における()内の数字は、(A)第2成分と比較した(B)第1成分の濃度(質量%)を意味する。
【0249】
【表1】
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
【0252】
【表4】
【0253】
上記表において以下のように略称する。
ノボラック(Mw約300)をA1、
ノボラック(Mw約500)をA2、
ノボラック(Mw約1,000)をA3、
ノボラック(Mw約10,000)をA4、
ノボラック(Mw約100,000)をA5、
ノボラッ(Mw約500,000)をA6、
フェノールノボラック(Mw約5,000)をA7、
ポリヒドロキシスチレン(Mw約5,000)をA8、
下記化学式19に示す構造からなるポリアクリル酸ブチル (Mw約60,000、シグマアルドリッチ)をA9、
【0254】
【化19】
【0255】
ポリカーボネート(Mw約5,000)をA10、
4,4’-ジヒドロキシテトラフェニルメタン(Mw352)をA11、
ノボラック(Mw約5,000)をA12、
ポリフルオロアルキル酸(TAR-015、ダイキン工業株式会社)をA13、
KF-351A(Si素含有ポリエーテル変性ポリマー、信越シリコーン)をA14、
ポリビニルイミダゾールを(Mw約5,000)をA15、
ポリアリルアミンを(Mw約5,000)をA16、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンをB1、
1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンをB2、
1,3-シクロヘキサンジオールをB3、
2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノールをB4、
2,2’-メチレンビス(4-メチルフェノール)をB5、
4,4’-ジヒドロキシビフェニルをB6、
2,6-ナフタレンジオールをB7、
2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオールをB8、
3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールをB9、
2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンをB10、
ポリアクリル酸(Mw約1,000)をB11、
下記化学式20に示す構造からなるマレイン酸アクリル酸コポリマー(Mw約3,000)をB12、
【0256】
【化20】
ノボラック(Mw約15,000)をB13。
【0257】
比較洗浄液1の比較調製例1
A12を5g取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する以外は、調製例1と同様の調製を行い、比較洗浄液1を得る。表4に記載する。
比較洗浄液2の比較調製例2
B4を5g取り、95gのIPA((C)溶媒)に添加する以外は、調製例1と同様の調製を行い、比較洗浄液2を得る。表4に記載する。
【0258】
洗浄液2~33の調製例2~33、比較洗浄液3~7の比較調製例3~7
(A)第2成分、(B)第1成分、(C)溶媒、濃度を、表1~表4に記載のものに変更する以外は、調製例1と同様にして、洗浄液2~33および比較洗浄液3~7を調製する。表1~表4に記載する。
洗浄液1~33、比較洗浄液1~7のパーティクル残存量の評価
上記の評価基板の調製に記載の通り調製した評価基板を用いる。
【0259】
コータ・デベロッパRF3(株SOKUDO)を用い、各評価基板に、各処理液を10cc滴下し、1,500rpmで60秒回転することで、塗布および乾燥を行う。基板を100rpmで回転させながら5.0質量%アンモニア水を10秒間滴下し、基板全体を5.0質量%アンモニア水で覆い、この状態を20秒間維持する。この基板を1,500rpmで回転することで、膜を剥離・除去し、基板を乾燥させる。
【0260】
これら基板のパーティクル残存量を比較する。パターン基板の評価には明視野欠陥検査装置(UVision 4、AMAT社)を用い、ベア基板の評価には暗視野欠陥検査装置(LS-9110、日立ハイテク社)を用いる。
塗布状況、膜の除去状況を確認し、パーティクル残数をカウントし、以下の基準で評価する。評価結果を表1~表4に記載する。
AA:≦10個
A:>10個、≦100個
B:>100個、≦1,000個
C:>1000個
D:膜が均一に塗布されない、または膜が除去されない
比較洗浄液1~7は溶解度の異なる複数成分を含有しない。比較洗浄液1~7と比べて、洗浄液1~33で洗浄した基板はパーティクル残存量が少ないことが確認される。
【0261】
この明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
【0262】
この明細書において、「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0263】
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
1Q :基板処理装置
3 :コントローラ
9 :第2移動ノズル(処理液供給ユニット)
10 :第3移動ノズル(剥離液供給ユニット)
12 :下面ノズル(固体形成ユニット、基板加熱ユニット、蒸発促進ユニット)
13 :第4移動ノズル(前処理液供給ユニット)
20 :スピンチャック(基板保持ユニット)
21 :スピンベース(基板保持ユニット)
23 :スピンモータ(基板回転ユニット、固体形成ユニット)
100 :処理膜
101 :処理液膜(処理液の液膜)
102 :貫通孔
103 :除去対象物
110 :第1固体
111 :第2固体
112 :第3固体
120 :前処理膜
A1 :回転軸線(鉛直軸線)
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12