IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7227890感光性樹脂組成物、感光性樹脂皮膜、感光性ドライフィルム、パターン形成方法及び発光素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、感光性樹脂皮膜、感光性ドライフィルム、パターン形成方法及び発光素子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/075 20060101AFI20230215BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230215BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230215BHJP
   C08G 77/50 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G03F7/075 511
G03F7/004 501
G03F7/004 503Z
G03F7/004 502
G03F7/004 512
G02B5/20
C08G77/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019219018
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021089347
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 仁
(72)【発明者】
【氏名】大和田 保
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105832(JP,A)
【文献】特表2018-509510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸架橋性基含有シリコーン樹脂、
(B)光酸発生剤、及び
(C)量子ドット粒子
を含む感光性樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、下記式(A1)~(A6)で表される繰り返し単位を含むシリコーン樹脂を含むものであることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
[式中、R ~R は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。mは、それぞれ独立に、1~600の整数である。mが2以上の整数のとき、各R は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各R は、互いに同一であっても異なっていてもよい。a、b、c、d、e及びfは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦1、0<c+d+e+f≦1、及びa+b+c+d+e+f=1を満たす数である。X は、下記式(X1)で表される2価の基である。X は、下記式(X2)で表される2価の基である。X は、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化2】
(式中、R 11 ~R 14 は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。pは、1~600の整数である。pが2以上の整数のとき、各R 13 は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各R 14 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R 15 及びR 16 は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。xは、それぞれ独立に、0~7の整数である。)
【化3】
(式中、Y は、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R 21 及びR 22 は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立に、0、1又は2である。gが2のとき、各R 21 は、互いに同一であっても異なっていてもよく、hが2のとき、各R 22 は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R 23 及びR 24 は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。yは、それぞれ独立に、0~7の整数である。)
【化4】
(式中、R 31 及びR 32 は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。zは、それぞれ独立に、0~7の整数である。R 33 は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の1価炭化水素基、又は下記式(X3-1)で表される1価の基である。
【化5】
(式中、R 34 は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の2価炭化水素基である。)]
【請求項2】
前記式(A1)、(A3)、(A5)中のa、c及びeが、0.2≦a+c+e≦0.95を満たす数であることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)量子ドット粒子は、赤量子ドット粒子または緑量子ドット粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)量子ドット粒子は、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素またはこれを含む化合物;またはこれらの組合せで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)量子ドット粒子を全固形分中3~80質量%含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
更に、(D)架橋剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(E)酸化防止剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
更に、(F)溶剤を含むものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の乾燥体であることを特徴とする感光性樹脂皮膜。
【請求項10】
支持フィルムと、該支持フィルム上に請求項9に記載の感光性樹脂皮膜を備えるものであることを特徴とする感光性ドライフィルム。
【請求項11】
(i)請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、該基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項12】
(i’)請求項10に記載の感光性ドライフィルムを用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程
を含むパターン形成方法。
【請求項13】
更に、(iv)現像によりパターン形成された樹脂皮膜を、100~250℃の温度で後硬化する工程を含む請求項11又は請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
請求項9に記載の感光性樹脂皮膜を備えるものであることを特徴とする発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、及び該感光性樹脂組成物を用いた感光性樹脂皮膜、感光性ドライフィルム、パターン形成方法及び発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色、緑色および青色のサブピクセルを含むディスプレイを形成するために、様々な方法が提案されている。その中の一つの方法として、色変換構造体を通してLEDアレイからの光を青色であるより短い波長から、赤色および緑色であるより長い波長の光に変換する方法がある。この色変換を担うものとしては量子ドットが用いられている。
【0003】
近年、このLEDアレイはマイクロサイズとなっており、これを用いたマイクロLEDディスプレイが注目されている。色変換構造体をLEDアレイ上に形成する方法としては感光性材料を用いたリソグラフィープロセスがあるが(特許文献1参照)、近年ではより微細化や耐熱性の向上が求められている。またディスプレイの鮮明さという観点では発光特性についても高い要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-53716
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、良好な耐熱性、リソグラフィー解像性、発光特性を有する皮膜を容易に形成できる感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物を用いて得られる感光性樹脂皮膜、感光性ドライフィルム及びこれらを用いるパターン形成方法、並びに前記感光性樹脂組成物を用いて得られる発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)酸架橋性基含有シリコーン樹脂、
(B)光酸発生剤、及び
(C)量子ドット粒子
を含むものであることを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【0007】
このような感光性樹脂組成物であれば、良好な耐熱性(耐熱信頼性)、リソグラフィー解像性、発光特性を有する皮膜(感光性樹脂皮膜)を容易に形成できる。
【0008】
この場合、前記(A)成分が、下記式(A1)~(A6)で表される繰り返し単位を含むシリコーン樹脂を含むものであることが好ましい。
【化1】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。mは、それぞれ独立に、1~600の整数である。mが2以上の整数のとき、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。a、b、c、d、e及びfは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦1、0<c+d+e+f≦1、及びa+b+c+d+e+f=1を満たす数である。Xは、下記式(X1)で表される2価の基である。Xは、下記式(X2)で表される2価の基である。Xは、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化2】
(式中、R11~R14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。pは、1~600の整数である。pが2以上の整数のとき、各R13は、互いに同一であっても異なっていてもよく、各R14は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。xは、それぞれ独立に、0~7の整数である。)
【化3】
(式中、Yは、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立に、0、1又は2である。gが2のとき、各R21は、互いに同一であっても異なっていてもよく、hが2のとき、各R22は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。yは、それぞれ独立に、0~7の整数である。)
【化4】
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。zは、それぞれ独立に、0~7の整数である。R33は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の1価炭化水素基、又は下記式(X3-1)で表される1価の基である。
【化5】
(式中、R34は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の2価炭化水素基である。)]
【0009】
このような感光性樹脂組成物であれば、より良好な耐熱性(耐熱信頼性)、リソグラフィー解像性、発光特性を有する皮膜(感光性樹脂皮膜)を容易に形成できる。
【0010】
また、前記(C)量子ドット粒子は、赤量子ドット粒子または緑量子ドット粒子であってもよいし、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素またはこれを含む化合物;またはこれらの組合せで構成されていてもよい。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物は、このような量子ドット粒子を好適に用いることができる。
【0012】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、前記(C)量子ドット粒子を全固形分中3~80質量%含むことが好ましい。
【0013】
量子ドットの含有率が上記の範囲内であれば良好な発光強度を維持したまま、微細なパターン形成を行うことができる。
【0014】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(D)架橋剤を含むものであることができる。
【0015】
架橋剤を含むものであると、(A)成分のエポキシ基と反応を起こし、パターンの形成が容易になるとともに、光硬化後の樹脂皮膜の強度を更に上げることができる。
【0016】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(E)酸化防止剤を含むものであることができる。
【0017】
酸化防止剤を含むことで、耐熱性を向上させることができる。
【0018】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(F)溶剤を含むものであることができる。
【0019】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含むことで、その塗布性を向上させることができる。
【0020】
また、本発明は、上記感光性樹脂組成物の乾燥体である感光性樹脂皮膜、及び、支持フィルムと、該支持フィルム上に前記感光性樹脂皮膜を備える感光性ドライフィルムを提供する。
【0021】
本発明の感光性樹脂皮膜は、上記感光性樹脂組成物を用いて容易に形成でき、感光性ドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥させて感光性樹脂皮膜を形成することによって製造することができる。特に、感光性ドライフィルムは固体であり、感光性樹脂皮膜が溶剤を含まないため、その揮発による気泡が感光性樹脂皮膜の内部及び凹凸のある基板との間に残留するおそれがない。
【0022】
また、本発明は、
(i)上記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、該基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程
を含むパターン形成方法を提供する。
【0023】
また、本発明は、
(i’)上記感光性ドライフィルムを用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程
を含むパターン形成方法を提供する。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物や感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法により、厚膜で微細なパターン形成を容易に行うことができる。
【0025】
この場合、更に、(iv)現像によりパターン形成された樹脂皮膜を、100~250℃の温度で後硬化する工程を含むことができる。
【0026】
このような後硬化工程を含むことにより、感光性樹脂組成物の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去できるため、基板に対する密着力、耐熱性、強度、電気特性、接合強度の観点から好ましい。
【0027】
また、本発明は、上記感光性樹脂皮膜を備えるものである発光素子を提供する。
【0028】
本発明の感光性樹脂皮膜は良好なドライフィルム性、解像性、発光特性、耐熱性(密着性、耐クラック性、発光強度維持)を有し、発光素子に適する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物は、酸架橋性基含有シリコーン樹脂、光酸発生剤、及び量子ドット粒子を含むことで、容易に皮膜を形成できる。前記皮膜は良好なドライフィルム性、解像性、発光特性、耐熱性(密着性、耐クラック性、発光強度維持)を有し、発光素子に適する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述のように、感光性材料を用いたリソグラフィープロセスにおいては、更なる微細化が求められ、耐熱性や発光特性についても高い要求があるところ、これらの要求を満足する感光性材料の開発が求められていた。
【0031】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、酸架橋性基含有シリコーン樹脂、光酸発生剤及び量子ドットを含む感光性樹脂組成物が、容易に皮膜を形成できること、該皮膜が良好なドライフィルム性、解像性、発光特性、耐熱性(密着性、耐クラック性、発光強度維持)を有し、発光素子に適する硬化膜を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
【0032】
即ち、本発明は、(A)酸架橋性基含有シリコーン樹脂、(B)光酸発生剤、及び(C)量子ドット粒子を含むものであることを特徴とする感光性樹脂組成物である。
【0033】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)酸架橋性基含有シリコーン樹脂、(B)光酸発生剤、及び(C)量子ドット粒子を含むものである。必要に応じて、更に、(D)架橋剤、
(E)酸化防止剤、(F)溶剤などのその他の成分を含んでもよい。以下、感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0035】
[(A)酸架橋性基含有シリコーン樹脂]
(A)成分の酸架橋性基含有シリコーン樹脂は、シロキサン構造及び酸架橋性基を有する樹脂である。ここで、酸架橋性基とは、酸の作用によって化学的結合を結ぶことができる基を意味する。シロキサン構造及び酸架橋性基は特に限定されないが、本発明において前記酸架橋性基としては、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等が好ましく、特にエポキシ基が好ましい。
【0036】
(A)成分の酸架橋性基含有シリコーン樹脂としては、下記式(A1)~(A6)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位A1~A6ともいう。)を含むシリコーン樹脂が好ましく、エポキシ基を含有していることがより好ましい。
【化6】
【0037】
式(A2)、(A4)及び(A6)中、R~Rは、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。mは、それぞれ独立に、1~600の整数である。mが2以上の整数のとき、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、各Rは、互いに同一であっても異なっていてもよい。繰り返し単位A2、A4及びA6中、シロキサン単位が2以上ある場合、各シロキサン単位は、全て同一であってもよく、2種以上の異なるシロキサン単位を含んでいてもよい。2種以上の異なるシロキサン単位を含む場合(すなわち、mが2以上の整数のとき)、シロキサン単位がランダムに結合したものでも交互に結合したものでもよく、同種のシロキサン単位のブロックを複数含むものであってもよい。
【0038】
前記1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基等の1価脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基等の1価芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0039】
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。前記アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。
【0040】
また、前記1価脂肪族炭化水素基にはヘテロ原子が含まれていてもよく、具体的には、前記1価脂肪族炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよく、その炭素原子間に、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合等が介在していてもよい。このようなヘテロ原子を含む1価脂肪族炭化水素基としては、2-オキソシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
前記アリール基としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0042】
また、前記1価芳香族炭化水素基にはヘテロ原子が含まれていてもよく、具体的には、前記1価芳香族炭化水素基の水素原子の一部又は全部が、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数6~20のアリールチオ基等で置換されていてもよい。
【0043】
前記炭素数1~10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、シクロブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-へプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
前記炭素数1~10のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、シクロブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n-へプチルチオ基、n-オクチルチオ基、n-ノニルチオ基、n-デシルチオ基、ノルボルニルチオ基、アダマンチルチオ基等が挙げられる。
【0045】
前記炭素数6~20のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、2-メチルフェニルオキシ基、3-メチルフェニルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、2-エチルフェニルオキシ基、3-エチルフェニルオキシ基、4-エチルフェニルオキシ基、4-tert-ブチルフェニルオキシ基、4-ブチルフェニルオキシ基、ジメチルフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
前記炭素数6~20のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、2-メチルフェニルチオ基、3-メチルフェニルチオ基、4-メチルフェニルチオ基、2-エチルフェニルチオ基、3-エチルフェニルチオ基、4-エチルフェニルチオ基、4-tert-ブチルフェニルチオ基、4-ブチルフェニルチオ基、ジメチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基、ビフェニリルチオ基、ターフェニリルチオ基等が挙げられる。
【0047】
例えば、これらの基で置換されたアリール基としては、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、ビフェニリルオキシフェニル基、ビフェニリルチオフェニル基等が挙げられる。
【0048】
前記1価脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。また、前記1価芳香族炭化水素基の炭素数は、6~14が好ましく、6~10がより好ましい。
【0049】
これらのうち、R~Rとしては、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0050】
式(A2)、(A4)及び(A6)中、mは、それぞれ独立に、1~600の整数であるが、1~300が好ましく、1~100がより好ましい。
【0051】
式(A1)~(A6)中、a、b、c、d、e及びfは、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦1、0<c+d+e+f≦1、及びa+b+c+d+e+f=1を満たす数である。好ましくは、0.2≦a+c+e≦0.95、0.05≦b+d+f≦0.8、0≦a+b≦0.9、0≦c+d≦0.7、及び0<e+f≦1を満たす数であり、更に好ましくは、0.3≦a+c+e≦0.9、0.1≦b+d+f≦0.7、0≦a+b≦0.6、0≦c+d≦0.4、及び0.4≦e+f≦1を満たす数である。
【0052】
式(A1)及び(A2)中、Xは、下記式(X1)で表される2価の基である。
【化7】
【0053】
式(X1)中、R11~R14は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基である。pは、1~600の整数である。pが2以上の整数のとき、各R13は互いに同一であっても異なっていてもよく、各R14は互いに同一であっても異なっていてもよい。R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。xは、それぞれ独立に、0~7の整数である。式(X1)で表される基において、シロキサン単位が2以上ある場合、各シロキサン単位は、全て同一であってもよく、2種以上の異なるシロキサン単位を含んでいてもよい。2種以上の異なるシロキサン単位を含む場合(すなわち、pが2以上の整数のとき)、シロキサン単位がランダムに結合したものでも交互に結合したものでもよく、同種のシロキサン単位のブロックを複数含むものであってもよい。
【0054】
前記ヘテロ原子を含んでいてもよい1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、R~Rの説明において前述したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R11~R14としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、フェニル基等が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
【0055】
式(A3)及び(A4)中、Xは、下記式(X2)で表される2価の基である。
【化8】
【0056】
式(X2)中、Yは、単結合、メチレン基、プロパン-2,2-ジイル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2,2-ジイル基又はフルオレン-9,9-ジイル基である。R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基又はアルコキシ基であり、g及びhは、それぞれ独立に、0、1又は2である。gが2のとき、各R21は互いに同一であっても異なっていてもよく、hが2のとき、各R22は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。yは、それぞれ独立に、0~7の整数である。
【0057】
式(A5)及び(A6)中、Xは、下記式(X3)で表される2価の基である。
【化9】
【0058】
式(X3)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。zは、それぞれ独立に、0~7の整数である。
【0059】
式(X3)中、R33は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の1価炭化水素基、又は下記式(X3-1)で表される1価の基である。好ましくは、式(X3-1)のグリシジル基がよい。
【化10】
【0060】
前記1価炭化水素基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、メチル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、前記1価炭化水素基の炭素原子間に、エステル結合又はエーテル結合が介在していてもよい。
【0061】
式(X3-1)中、R34は、エステル結合若しくはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1~8の2価炭化水素基である。前記2価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基等のアルカンジイル基等が挙げられる。これらのうち、メチレン基又はエチレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。また、前記2価炭化水素基の炭素原子間に、エステル結合又はエーテル結合が介在していてもよい。
【0062】
33としては、メチル基、フェニル基又はグリシジル基が好ましく、メチル基又はグリシジル基がより好ましい。
【0063】
繰り返し単位A1~A6は、ランダムに結合していても、ブロック重合体として結合していてもよい。
【0064】
また、前記酸架橋性基含有シリコーン樹脂において、シリコーン(シロキサン単位)含有率は、30~80質量%であることが好ましい。
【0065】
前記酸架橋性基含有シリコーン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~500,000が好ましく、5,000~200,000がより好ましい。なお、本発明においてMwは、テトラヒドロフランを溶出溶剤として用いるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0066】
(A)成分は、例えば、(A)成分中の各部分に対応するビニル基含有化合物とヒドロシリル基含有有機ケイ素化合物とを必要量混合し、常法に従いヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。
【0067】
(A)成分の酸架橋性基含有シリコーン樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、(A)成分のシリコーン含有率(29Si-NMR測定により求めることができる)は、好ましくは30~80質量%含有したものを用いるとよい。
【0068】
[(B)光酸発生剤]
(B)成分の光酸発生剤は、光照射によって分解し、酸を発生するものであれば特に限定されないが、波長190~500nmの光を照射することによって酸を発生するものが好ましい。(B)光酸発生剤は、硬化触媒として用いられる。前記光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、β-ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、イミド-イル-スルホネート誘導体、オキシムスルホネート誘導体、イミノスルホネート誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0069】
前記オニウム塩としては、下記式(B1)で表されるスルホニウム塩又は下記式(B2)で表されるヨードニウム塩が挙げられる。
【化11】
【0070】
式(B1)及び(B2)中、R101~R105は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、又は置換基を有していてもよい炭素数7~12のアラルキル基である。Aは、非求核性対向イオンである。
【0071】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0072】
前記置換基としては、オキソ基、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~12のアルコキシ基、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~25のアラルキル基、炭素数6~24のアリールオキシ基、炭素数6~24のアリールチオ基等が挙げられる。
【0073】
101~R105としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、2-オキソシクロヘキシル基等の置換基を有していてもよいアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、o-、m-又はp-メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、m-又はp-tert-ブトキシフェニル基、2-、3-又は4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ターフェニリル基、ビフェニリルオキシフェニル基、ビフェニリルチオフェニル基等の置換基を有していてもよいアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の置換基を有していてもよいアラルキル基が好ましい。これらのうち、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基がより好ましい。
【0074】
前記非求核性対向イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハライドイオン;トリフレートイオン、1,1,1-トリフルオロエタンスルホネートイオン、ノナフルオロブタンスルホネートイオン等のフルオロアルカンスルホネートイオン;トシレートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-フルオロベンゼンスルホネートイオン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロベンゼンスルホネートイオン等のアリールスルホネートイオン;メシレートイオン、ブタンスルホネートイオン等のアルカンスルホネートイオン;トリフルオロメタンスルホンイミドイオン等のフルオロアルカンスルホンイミドイオン;トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン等のフルオロアルカンスルホニルメチドイオン;テトラキスフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のボレートイオン等が挙げられる
【0075】
前記ジアゾメタン誘導体としては、下記式(B3)で表される化合物が挙げられる。
【化12】
【0076】
式(B3)中、R111及びR112は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基である。
【0077】
前記アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、R101~R105の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。前記ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、1,1,1-トリクロロエチル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0078】
前記置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基;2-、3-又は4-メトキシフェニル基、2-、3-又は4-エトキシフェニル基、3-又は4-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-、3-又は4-メチルフェニル基、エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基等のアルキルフェニル基;フルオロフェニル基、クロロフェニル基、1,2,3,4,5-ペンタフルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0079】
前記グリオキシム誘導体としては、下記式(B4)で表される化合物が挙げられる。
【化13】
【0080】
式(B4)中、R121~R124は、それぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基である。また、R123及びR124は、互いに結合してこれらが結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、環を形成する場合、R123及びR124が結合して形成される基は、炭素数1~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。
【0081】
前記アルキル基、ハロゲン化アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及びアラルキル基としては、R111及びR112として例示したものと同様のものが挙げられる。前記直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0082】
前記オニウム塩として具体的には、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p-トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p-トルエンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ビス(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p-トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2-オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p-トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル(4-チオフェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、テトラキス(フルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルスルホニウム、テトラキス(フルオロフェニル)ホウ酸トリス[4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル]スルホニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリフェニルスルホニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリス[4-(4-アセチルフェニル)チオフェニル]スルホニウム等が挙げられる。
【0083】
前記ジアゾメタン誘導体として具体的には、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n-ペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec-ペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert-ペンチルスルホニル)ジアゾメタン、1-シクロへキシルスルホニル-1-(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1-シクロヘキシルスルホニル-1-(tert-ペンチルスルホニル)ジアゾメタン、1-tert-ペンチルスルホニル-1-(tert-ブチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0084】
前記グリオキシム誘導体として具体的には、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-α-ジシクロへキシルグリオキシム、ビス-o-(p-トルエンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-(p-トルエンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジフェニルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-α-ジシクロへキシルグリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2,3-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(n-ブタンスルホニル)-2-メチル-3,4-ペンタンジオングリオキシム、ビス-o-(メタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(トリフルオロメタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(1,1,1-トリフルオロエタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(tert-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(パーフルオロオクタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(シクロヘキサンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(ベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-フルオロベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(p-tert-ブチルベンゼンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(キシレンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム、ビス-o-(カンファースルホニル)-α-ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0085】
前記β-ケトスルホン誘導体として具体的には、2-シクロヘキシルカルボニル-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン、2-イソプロピルカルボニル-2-(p-トルエンスルホニル)プロパン等が挙げられる。
【0086】
前記ジスルホン誘導体として具体的には、ジフェニルジスルホン、ジシクロへキシルジスルホン等が挙げられる。
【0087】
前記ニトロベンジルスルホネート誘導体として具体的には、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,4-ジニトロベンジル等が挙げられる。
【0088】
前記スルホン酸エステル誘導体として具体的には、1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0089】
前記イミド-イル-スルホネート誘導体として具体的には、フタルイミド-イル-トリフレート、フタルイミド-イル-トシレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド-イル-トリフレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド-イル-トシレート、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド-イル-n-ブチルスルホネート、n-トリフルオロメチルスルホニルオキシナフチルイミド等が挙げられる。
【0090】
前記オキシムスルホネート誘導体として具体的には、α-(ベンゼンスルホニウムオキシイミノ)-4-メチルフェニルアセトニトリル等が挙げられる。
【0091】
前記イミノスルホネート誘導体として具体的には、(5-(4-メチルフェニル)スルホニルオキシイミノ-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)アセトニトリル、(5-(4-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フェニルスルホニルオキシイミノ)-5H-チオフェン-2-イリデン)-(2-メチルフェニル)-アセトニトリル等が挙げられる。
【0092】
前記トリアジン誘導体として具体的には、2-(メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)―s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0093】
また、2-メチル-2-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1-[(4-メチルチオ)フェニル]-1-プロパン等も好適に使用できる。
【0094】
(B)成分の光酸発生剤としては、特に前記オニウム塩が好ましく、前記スルホニウム塩がより好ましい。
【0095】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~20質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲であれば、十分な光硬化性を得やすい。なお、所望の透明性及び耐光性を得るためには、光吸収性を持つ(B)成分の光酸発生剤の配合量は光硬化性を阻害しない範囲で少ないほうがよい。(B)成分の光酸発生剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
[(C)量子ドット]
量子ドットとは、ナノサイズの半導体物質である。原子が分子を成して、分子は、クラスタという小さい分子の集合体を構成してナノ粒子を形成する。このようなナノ粒子が特に半導体特性を示しているとき、これを量子ドット(量子ドット粒子)と言う。
【0097】
量子ドットは、外部からエネルギーを受けて浮き立った状態に至ると、自体(自律)的に該当するエネルギーバンドギャップによるエネルギーを放出する。
【0098】
赤、緑の量子ドット粒子は、粒径により分類されることができるが、赤、緑の順に粒径が小さくなる。具体的には、赤量子ドット粒子では、粒径が5~10nm、緑量子ドット粒子では、粒径が3~5nmである。光の照射時に、赤色量子ドット粒子は、赤色光を放出し、緑色量子ドット粒子は、緑色光を放出する。
【0099】
量子ドット粒子は、光による刺激によって発光できる量子ドット粒子であれば、特別に限定されず、例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素またはこれを含む化合物;及びこれらの組合せからなる群から選択されることができる。これらは、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0100】
前記II-VI族半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe及びこれらの混合物からなる群から選択される二元化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元化合物;及びCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの混合物からなる群から選択される四元化合物からなる群から選択されることができる。
【0101】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの混合物からなる群から選択される二元化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP及びこれらの混合物からなる群から選択される三元化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの混合物からなる群から選択される四元化合物からなる群から選択されることができる。
【0102】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe及びこれらの混合物からなる群から選択される二元化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe及びこれらの混合物からなる群から選択される三元化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe及びこれらの混合物からなる群から選択される四元化合物からなる群から選択されることができる。
【0103】
前記IV族元素またはこれを含む化合物は、Si、Ge及びこれらの混合物からなる群から選択される元素化合物;及びSiC、SiGe及びこれらの混合物からなる群から選択される二元化合物からなる群から選択されることができる。
【0104】
また、半導体結晶粒子はコアのみであったり、コアシェル構造を有していてもよく、その構造は制限されず、適宜選択できる。さらに半導体結晶粒子は球形であっても良く、また立方体状や棒状でも良く、その形状は制限されず自由に選択できる。
【0105】
量子ドットの配合方法に関しては特には限定されないが、コロイド溶液の状態となっている量子ドットと、その他の成分が混ざり合った溶液を調整した後に、これらを混ぜ合わせることで配合することが望ましい。上記のように混ぜ合わせることで量子ドットの凝集を抑えることができる。
【0106】
量子ドット粒子の固形分含有率は、発光強度および微細パターン形成の観点から、感光性樹脂組成物の全固形分中3~80質量%が好ましく、より好ましくは5~70質量%、さらに好ましくは10~60質量%である。量子ドット粒子の含有率が上記の範囲内であれば良好な発光強度を維持したまま、微細なパターン形成を行うことができる。
【0107】
[(D)架橋剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、更に、(D)成分として架橋剤を含んでもよい。架橋剤は、(A)成分のエポキシ基等と反応を起こし、パターンの形成を容易になし得るための成分であるとともに、光硬化後の樹脂皮膜の強度を更に上げるものである。
【0108】
前記架橋剤としては、1分子中に平均して2個以上のエポキシ基、脂環式エポキシ基、オキセタン基又はビニルエーテル基を有する化合物が好ましい。例えば、下記に挙げる化合物が使用可能である。このような化合物としては、Mwが100~20,000の低分子化合物又は高分子化合物が好ましく、200~10,000のものがより好ましい。Mwが100以上であれば、十分な光硬化性を得ることができ、20,000以下であれば組成物の光硬化後の耐熱性を悪化させるおそれがないために好ましい。
【0109】
【化14】
(上記式中、nは1~50である。)
【0110】
【化15】
【0111】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0~100質量部であるが、含有する場合は0.5~100質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。(D)成分の含有量が、0.5質量部以上であれば光照射時に十分な硬化性が得られ、100質量部以下であれば感光性樹脂組成物中の(A)成分の割合が低下しないため、硬化物に十分な本発明の効果を発現させることができる。(D)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0112】
[(E)酸化防止剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、添加剤として酸化防止剤を含んでもよい。酸化防止剤を含むことで、耐熱性を向上させることができる。前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0113】
前記ヒンダードフェノール系化合物としては、特に限定されないが、以下に挙げるものが好ましい。例えば、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(商品名:Sumilizer BHT)、2,5-ジ-tert-ブチル-ハイドロキノン(商品名:Nocrac NS-7)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール(商品名:Nocrac M-17)、2,5-ジ-tert-ペンチルハイドロキノン(商品名:Nocrac DAH)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS-6)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル(商品名:IRGANOX 1222)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名:Nocrac 300)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS-5)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名:アデカスタブAO-40)、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GM)、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GS)、2,2’-メチレンビス[4-メチル-6-(α-メチル-シクロヘキシル)フェノール]、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)(商品名:シーノックス226M)、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(商品名:IRGANOX 1520L)、2,2’-エチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1076)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO-30)、テトラキス[メチレン-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン(商品名:アデカスタブAO-60)、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)(商品名:IRGANOX 1098)、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、3,9-ビス[2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1-ジメチルエチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA-80)、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:IRGANOX 3114)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム/ポリエチレンワックス混合物(50:50)(商品名:IRGANOX 1425WL)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1135)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)(商品名:Sumilizer WX-R)、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン(商品名:Sumilizer GP)等が挙げられる。
【0114】
前記ヒンダードアミン系化合物としては、特に限定されないが、以下に挙げるものが好ましい。例えば、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン(商品名:IRGANOX 5057)、フェニル-α-ナフチルアミン(商品名:Nocrac PA)、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)(商品名:Nocrac 224、224-S)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(商品名:Nocrac AW)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(商品名:Nocrac DP)、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン(商品名:Nocrac White)、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン(商品名:Nocrac 810NA)、N,N’-ジアリル-p-フェニレンジアミン(商品名:Nonflex TP)、4,4’-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:Nocrac CD)、p,p-トルエンスルフォニルアミノジフェニルアミン(商品名:Nocrac TD)、N-フェニル-N’-(3-メタクロリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン(商品名:Nocrac G1)、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(商品名:Ozonon 35)、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン(商品名:Sumilizer BPA)、N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(商品名:Antigene 6C)、アルキル化ジフェニルアミン(商品名:Sumilizer 9A)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名:Tinuvin 622LD)、ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]](商品名:CHIMASSORB 944)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物(商品名:CHIMASSORB 119FL)、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 123)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 770)、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(商品名:TINUVIN 144)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 765)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA-57)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA-52)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA-62)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA-67)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA-63P)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA-68LD)、(2,2,6,6-テトラメチレン-4-ピペリジル)-2-プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA-82)、(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブLA-87)等が挙げられる。
【0115】
(E)成分の含有量は、特に限定されないが、含有する場合は、本発明の感光性樹脂組成物中、0.01~1質量%が好ましい。(E)成分の酸化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0116】
[(F)溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、その塗布性を向上させるために、(F)成分として溶剤を含んでもよい。(F)溶剤としては、前述した(A)~(E)成分やその他の各種添加剤を溶解、分散することができるものであれば、特に限定されない。
【0117】
(F)溶剤としては、有機溶剤が好ましく、その具体例としては、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコール-モノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0118】
(F)溶剤としては、特に光酸発生剤の溶解性が優れている、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0119】
(F)成分の含有量は、感光性樹脂組成物の相溶性及び粘度の観点から、(A)及び(C)成分の合計100質量部に対し、200~20,000質量部が好ましく、250~10,000質量部がより好ましく、350~3,500質量部が更に好ましい。
【0120】
[その他の添加剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、前述した各成分以外に、その他の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤が挙げられる。
【0121】
前記界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えば、フッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。これらは、市販されているものを用いることができ、例えば、Fluorad(登録商標)「FC-430」(スリーエム社製)、サーフロン(登録商標)「S-141」及び「S-145」(AGCセイミケミカル(株)製)、ユニダイン(登録商標)「DS-401」、「DS-4031」及び「DS-451」(ダイキン工業(株)製)、メガファック(登録商標)「F-8151」(DIC(株)製)、「X-70-093」(信越化学工業(株)製)等が挙げられる。これらの中でも、Fluorad FC-430及びX-70-093が好ましい。前記界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、含有する場合は、本発明の感光性樹脂組成物中、0.01~1質量%が好ましい。
【0122】
また、添加剤として、シランカップリング剤を使用することもできる。シランカップリング剤を含むことにより、感光性樹脂組成物の被接着体への密着性を更に高めることができる。シランカップリング剤としては、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。前記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、含有する場合は、本発明の感光性樹脂組成物中、0.01~5質量%が好ましい。
【0123】
[感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法]
本発明の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法は、
(i)前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、該基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を、現像液を用いて現像する工程
を含むものである。
【0124】
工程(i)は、前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、該基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程である。前記感光性樹脂皮膜は、上記感光性樹脂組成物の乾燥体である。前記基板としては、例えば、シリコンウエハー、ガラスウエハー、石英ウエハー、プラスチック製回路基板、セラミック製回路基板等が挙げられる。
【0125】
塗布方法としては、公知の方法でよく、ディップ法、スピンコート法、ロールコート法等が挙げられる。塗布量は、目的に応じて適宜選択することができるが、得られる感光性樹脂皮膜(感光性樹脂組成物の乾燥体)の膜厚が好ましくは1~5,000nm、より好ましくは50~4,000nmとなるように塗布することが好ましい。
【0126】
基板面における膜厚均一性を向上させる目的で、感光性樹脂組成物を塗布する前に溶剤を基板に滴下してもよい(プリウェット法)。滴下する溶剤は、目的に応じて適宜選択することができる。前記溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール類、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類等が好ましいが、感光性樹脂組成物に使用される溶剤を用いることも可能である。
【0127】
ここで、光硬化反応を効率的に行うため、必要に応じて予備加熱(プリベーク)により溶剤等を予め揮発させておいてもよい。プリベークは、例えば、40~140℃で1分~1時間程度行うことができる。
【0128】
次いで、(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する。このとき、露光は、波長10~600nmの光で行うことが好ましく、波長190~500nmの光で行うことがより好ましい。このような波長の光としては、例えば放射線発生装置により発生された種々の波長の光、例えば、g線、h線、i線等の紫外線光、遠紫外線光(248nm、193nm)等が挙げられる。これらのうち、波長248~436nmの光が特に好ましい。露光量は、10~10,000mJ/cmが好ましい。
【0129】
露光は、フォトマスクを介して行ってもよい。前記フォトマスクは、例えば所望のパターンをくり貫いたものであってもよい。なお、フォトマスクの材質は、特に限定されないが、前記波長の光を遮蔽するものが好ましく、例えば、遮光膜としてクロムを備えるものが好適に用いられるが、これに限定されない。
【0130】
更に、現像感度を高めるために、露光後加熱処理(PEB)を行ってもよい。PEBは、40~150℃で0.5~10分間とすることが好ましい。PEBによって、露光部分が架橋して現像液である有機溶剤に不溶な不溶化パターンが形成される。
【0131】
(iii)露光後又はPEB後、現像液にて現像し、パターンを形成する。現像液としては、例えば、IPA等のアルコール類、シクロヘキサノン等のケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類等の有機溶剤が好ましいが、感光性樹脂組成物に使用される溶剤を用いることも可能である。現像方法としては、通常の方法、例えばパターン形成された基板を前記現像液に浸漬する方法等が挙げられる。このような有機溶剤で現像することにより、非露光部が溶解除去され、パターンが形成される。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有する皮膜が得られる。
【0132】
更に、(iv)パターンを形成した皮膜を、オーブンやホットプレートを用いて、好ましくは100~250℃で、より好ましくは150~220℃で後硬化してもよい。本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、200℃前後の比較的低温の後硬化であっても、各種フィルム特性に優れた樹脂皮膜を得ることができる。なお、後硬化温度が100~250℃であれば、感光性樹脂組成物の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性、強度、電気特性、接合強度の観点から好ましい。後硬化時間は、好ましくは10分間~10時間、より好ましくは10分間~3時間である。後硬化後の樹脂皮膜の膜厚は、通常1~200μm、好ましくは5~50μmである。これらの工程を経て、最終目的の発光素子用の膜を得ることができる。
【0133】
[感光性ドライフィルム]
本発明の感光性ドライフィルムは、支持フィルムと、該支持フィルム上に感光性樹脂組成物から得られる感光性樹脂皮膜とを備えるものである。
【0134】
前記感光性ドライフィルム(支持フィルム及び感光性樹脂皮膜)は固体であり、感光性樹脂皮膜が溶剤を含まないため、その揮発による気泡が前記感光性樹脂皮膜の内部及び凹凸のある基板との間に残留するおそれがない。前記感光性樹脂皮膜の膜厚は、特に限定されないが、1~200μmが好ましく、3~100μmがより好ましい。
【0135】
また、前記感光性樹脂皮膜の粘度と流動性とは密接に関係しており、前記感光性樹脂皮膜は、適切な粘度範囲において適切な流動性を発揮でき、狭い隙間の奥まで入っていったり、樹脂が軟化することにより基板との接着性を強くしたりすることができる。したがって、前記感光性樹脂皮膜の粘度は、前記感光性樹脂皮膜の流動性の観点から、80~120℃において、好ましくは10~5,000Pa・s、より好ましくは30~2,000Pa・s、更に好ましくは50~300Pa・sである。なお、本発明において粘度は、回転粘度計による測定値である。
【0136】
本発明の感光性ドライフィルムは、凹凸のある基板に密着させる際に、感光性樹脂皮膜が前記凹凸に追随して被覆され、高い平坦性を達成できる。特に、本発明の感光性樹脂組成物は、軟化性能が特徴であるため、より高い平坦性を達成できる。更に、前記感光性樹脂皮膜を真空環境下で前記基板に密着させると、それらの隙間の発生をより効果的に防止できる。
【0137】
本発明の感光性ドライフィルムは、前記感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、乾燥させて感光性樹脂皮膜を形成することによって製造することができる。前記感光性ドライフィルムの製造装置としては、一般的に粘着剤製品を製造するためのフィルムコーターが使用できる。前記フィルムコーターとしては、例えば、コンマコーター、コンマリバースコーター、マルチコーター、ダイコーター、リップコーター、リップリバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、3本ボトムリバースコーター、4本ボトムリバースコーター等が挙げられる。
【0138】
支持フィルムを前記フィルムコーターの巻出軸から巻き出し、前記フィルムコーターのコーターヘッドを通過させるとき、前記支持フィルム上に前記感光性樹脂組成物を所定の厚みで塗布した後、所定の温度及び時間で熱風循環オーブンを通過させ、前記支持フィルム上で乾燥させて感光性樹脂皮膜とすることで、感光性ドライフィルムを製造することができる。また、必要に応じて、感光性ドライフィルムを前記フィルムコーターの別の巻出軸から巻き出された保護フィルムとともに、所定の圧力でラミネートロールを通過させて前記支持フィルム上の前記感光性樹脂皮膜と保護フィルムとを貼り合わせた後、前記フィルムコーターの巻取軸に巻き取ることによって、保護フィルム付き感光性ドライフィルムを製造することができる。この場合、前記温度としては25~150℃が好ましく、前記時間としては1~100分間が好ましく、前記圧力としては0.01~5MPaが好ましい。
【0139】
本発明の感光性ドライフィルムにおいて使用される支持フィルムは、単一のフィルムからなる単層フィルムであっても、複数のフィルムを積層した多層フィルムであってもよい。前記フィルムの材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。これらのうち、適度の可撓性、機械的強度及び耐熱性を有するポリエチレンテレフタレートが好ましい。これらのフィルムは、コロナ処理や剥離剤塗布等の各種処理が行われたものでもよい。これらは市販品を使用することができ、例えばセラピールWZ(RX)、セラピールBX8(R)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7302、E7304(以上、東洋紡(株)製)、ピューレックスG31、ピューレックスG71T1(以上、帝人デュポンフィルム(株)製)、PET38×1-A3、PET38×1-V8、PET38×1-X08(以上、ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0140】
前記保護フィルムとしては、前述した支持フィルムと同様のものを用いることができるが、適度の可撓性を有するポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンが好ましい。これらは市販品を使用することができ、ポリエチレンテレフタレートとしてはすでに例示したもの、ポリエチレンとしては、例えばGF-8(タマポリ(株)製)、PEフィルム0タイプ(ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0141】
前記支持フィルム及び保護フィルムの厚みは、感光性ドライフィルム製造の安定性、及び巻き芯に対する巻き癖、いわゆるカール防止の観点から、いずれも好ましくは10~100μm、より好ましくは25~50μmである。
【0142】
[感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法]
本発明の感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法は、
(i’)前記感光性ドライフィルムを用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する工程、
(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、及び
(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程
を含むものである。
【0143】
まず、(i’)感光性ドライフィルムを用いて、基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。つまり、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付けることで基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。また、前記感光性ドライフィルムが保護フィルムを有している場合には、感光性ドライフィルムから保護フィルムを剥がした後、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付ける。貼り付けは、例えばフィルム貼り付け装置を用いて行うことができる。
【0144】
前記フィルム貼り付け装置としては、真空ラミネーターが好ましい。例えば、前記感光性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、露出した前記感光性樹脂皮膜を所定真空度の真空チャンバー内において、所定の圧力の貼り付けロールを用いて、所定の温度のテーブル上で前記基板に密着させる。なお、前記温度としては60~120℃が好ましく、前記圧力としては0~5.0MPaが好ましく、前記真空度としては50~500Paが好ましい。
【0145】
前記感光性樹脂皮膜の光硬化反応を効率的に行うため、及び感光性樹脂皮膜と基板との密着性を向上させるため、必要に応じてプリベークを行ってもよい。プリベークは、例えば、40~140℃で1分間~1時間程度行うことができる。
【0146】
基板に貼り付けた感光性樹脂皮膜は、前記感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法の場合と同様に、(ii)前記感光性樹脂皮膜を露光する工程、(iii)前記露光した感光性樹脂皮膜を現像液にて現像し、非露光部を溶解除去してパターンを形成する工程、及び必要に応じて(iv)後硬化加熱処理をすることでパターンを形成することができる。なお、感光性ドライフィルムの支持フィルムは、プロセスに応じてプリベーク前又はPEB前に剥がすか、他の方法で除去する。
【0147】
本発明の感光性樹脂組成物や感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法により、厚膜で微細なパターン形成を容易に行うことができる。例えば、基板上に数多く敷き詰められた青色のマイクロLEDを被覆するように本発明の感光性ドライフィルムを用いて埋め込みを行い、次いでパターン形成を行うことで部分ごとに赤緑等の量子ドットを含む感光性絶縁膜を青色マイクロLED上に形成することで、赤緑等の発光を生じることが可能となる。
【実施例
【0148】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、Mwは、カラムとしてTSKgel Super HZM-H(東ソー(株)製)を用い、流量0.6mL/分、溶出溶剤テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。
【0149】
下記実施例及び比較例において使用した化合物(S-1)~(S-5)は、以下のとおりである。
【化16】
【0150】
[1]酸架橋性基含有シリコーン樹脂の合成
[合成例1]樹脂A-1の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-5)265.0g(1.00モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)164.9g(0.85モル)及び化合物(S-2)(y=40、信越化学工業(株)製)453.0g(0.15モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-1を得た。樹脂A-1は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-1のMwは65,000、シリコーン含有率は51.3質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=b=c=d=0、e=0.85、f=0.15、z=1、m=41であった。
なお、シリコーン含有率は、29Si-NMR(Bruker社製)により求めた。
【0151】
[合成例2]樹脂A-2の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-3)111.6g(0.60モル)、化合物(S-4)156.8g(0.40モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)135.8g(0.70モル)及び化合物(S-2)(y=40、信越化学工業(株)製)906.0g(0.30モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-2を得た。樹脂A-2は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-2のMwは55,000、シリコーン含有率は77.7質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=0.42、b=0.18、c=0.28、d=0.12、e=f=0、p=1、x=0、y=1、g=h=0、m=41であった。
【0152】
[合成例3]樹脂A-3の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-3)111.6g(0.60モル)、化合物(S-5)106.0g(0.40モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)174.6g(0.90モル)及び化合物(S-2)(y=40、信越化学工業(株)製)302.0g(0.10モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-3を得た。樹脂A-3は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-3のMwは50,000、シリコーン含有率は59.6質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=0.54、b=0.06、c=d=0、e=0.36、f=0.04、p=1、x=0、z=1、m=41であった。
【0153】
[合成例4]樹脂A-4の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-4)392.0g(1.00モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)155.2g(0.80モル)及び化合物(S-2)(y=20、信越化学工業(株)製)317.0g(0.20モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-4を得た。樹脂A-4は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-4のMwは23,000、シリコーン含有率は36.7質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=b=0、c=0.8、d=0.2、e=f=0、y=1、g=h=0、m=21であった。
【0154】
[合成例5]樹脂A-5の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-4)274.4g(0.70モル)、化合物(S-5)79.5g(0.30モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)58.2g(0.30モル)及び化合物(S-2)(y=20、信越化学工業(株)製)1,109.5g(0.70モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-5を得た。樹脂A-5は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-5のMwは42,000、シリコーン含有率は72.9質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=b=0、c=0.21、d=0.49、e=0.09、f=0.21、y=1、g=h=0、z=1、m=21であった。
【0155】
[合成例6]樹脂A-6の合成
攪拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコに、化合物(S-3)55.8g(0.30モル)、化合物(S-4)117.6g(0.30モル)、化合物(S-5)106.0g(0.40モル)を加えた後、トルエン2,000gを加え、70℃まで加熱した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物(S-1)135.8g(0.70モル)及び化合物(S-2)(y=20、信越化学工業(株)製)475.5g(0.30モル)を1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計/アルケニル基の合計=1/1(モル比))。滴下終了後、100℃まで加熱し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、樹脂A-6を得た。樹脂A-6は、H-NMR及び29Si-NMR(Bruker社製)並びにGPC測定により、構造を確認した。樹脂A-6のMwは31,000、シリコーン含有率は59.6質量%であった。また、式(A1)~(A6)中、a=0.21、b=0.09、c=0.21、d=0.09、e=0.28、f=0.12、p=1、x=0、y=1、g=h=0、z=1、m=21であった。
【0156】
[比較合成例1]アクリル樹脂1の合成
攪拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル70g、トルエン70gを仕込み、窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、反応温度を80℃±2℃に保ちながら、メタクリル酸メチル90g、メタクリル酸10g及び2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を4時間かけて均一に滴下した。滴下後、80℃±2℃で6時間攪拌を続け、アクリル樹脂1(樹脂7)の溶液を得た。アクリル樹脂1のMwは、50,000であった。
【0157】
[2]感光性樹脂組成物の調製、及びその評価
[実施例1~12及び比較例1~17]
表1~3に記載の配合量に従って各成分を配合し、その後常温にて攪拌、混合、溶解し、実施例1~12及び比較例1~17の感光性樹脂組成物を得た。
【0158】
【表1】
【0159】
【表2】
樹脂7:アクリル樹脂1
樹脂8:アクリル樹脂2
【0160】
【表3】
【0161】
表1~3中、量子ドットの
Red-1は昭栄化学(株)製S-BE030(粒子サイズ5~10nm、材質InP:ZnS:SeZn=25:50:25コロイド/PGMEA)、
Red-2はAldrich社製900514-1ML(粒子サイズ5~10nm、材質CdSe(コア)/CdS(シェル)コアシェルタイプコロイド/ヘキサン)、
Green-1は昭栄化学(株)製S-BE029(粒子サイズ3~5nm、材質InP:ZnS:SeZn=25:50:25コロイド/PGMEA)、
Green-2はAldrich社製900511-1ML(粒子サイズ3~5nm、材質CdSe(コア)/CdS(シェル)コアシェルタイプコロイド/ヘキサン)である。
また、テトラエトキシシラン及び(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリエトキシシランは信越化学工業(株)製である。
【0162】
また、光酸発生剤PAG-1、架橋剤D-1~D-3、酸化防止剤E-1及びE-2、アクリル樹脂2(樹脂8)、並びに光重合開始剤Irgacure OXE02は、以下のとおりである。
【0163】
・光酸発生剤PAG-1:CPI―210S(サンアプロ社製)
【0164】
・架橋剤D-1:(信越化学工業(株)製)
【化17】
【0165】
・架橋剤D-2:(四国化成工業(株)製)
【化18】
【0166】
・架橋剤D-3:(四国化成工業(株)製)
【化19】
【0167】
・酸化防止剤E-1:CHIMASSORB 119FL(BASF社製)
【化20】
【0168】
・酸化防止剤E-2:IRGANOX 3114(BASF社製)
【化21】
【0169】
・アクリル樹脂2(樹脂8):日本化薬(株)製、商品名「DPCA-20」(ε-カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールのアクリル酸エステル、下記式参照)
【化22】
【0170】
・光重合開始剤Irgacure OXE02:BASF社製(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム))
【0171】
(1)感光性ドライフィルムの作製、ドライフィルム性の評価
フィルムコーターとしてダイコーター、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を用いて、表1~3に記載した感光性樹脂組成物をそれぞれ前記支持フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより乾燥し、支持フィルム上に感光性樹脂皮膜を形成し、感光性ドライフィルムを得た。前記感光性樹脂皮膜の上から、保護フィルムとしてポリエチレンフィルム(厚さ100μm)をラミネートロールで圧力1MPaにて貼り合わせ、保護フィルム付き感光性ドライフィルム50μmを作製した。その後、保護フィルムを剥離した際に泣き別れ等のエラーモードなく剥離できたものを〇、エラーモードのあったものを×とし、表4~6に記載した。
【0172】
(2)パターン形成、及びその評価
ガラス基板上に、スピンコーターを使用して、20μmの膜厚で各感光性樹脂組成物をコートした。組成物から溶剤を除去するため、基板をホットプレートにのせ、110℃で3分間、加熱乾燥させた。得られた感光性樹脂皮膜に対してマスクを介して20mm×20mmのパターン及びコンタクトホールパターンを形成するために、365nmの露光条件でコンタクトアライナ型露光装置を使用して露光した。光照射後、ホットプレートにより120℃で3分間PEBを行った後冷却し、前記基板をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)にて60秒間スプレー現像を行い、パターンを形成した。
【0173】
(3)パターンの耐熱性評価
前記方法によりパターンを形成した基板上の感光性樹脂皮膜をオーブンを用いて150℃で2時間、窒素パージしながら後硬化した。その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により、形成した50μm、30μm、20μm、10μmのコンタクトホールパターン断面を観察し、フィルム底部までホールが貫通している最小のホールパターンの大きさを限界解像性(解像性 限界F)とした。なお、解像力(限界解像性)が50μmに達しなかったものを×とした。結果を表に示す。また、上記の20mm×20mmのパターン部を空気下150℃で100時間放置した(耐熱性評価)後に剥離箇所が生じているものには剥離、割れが発生しているものにはクラックとし、これらが生じなかったものを良好(〇)とし、下記表4~6に示した。
【0174】
(4)発光強度測定および耐熱性評価
(2)で形成した20mm×20mmのパターン部に365nmTube型4W UV照射機(VL-4LC、VILBERLOURMAT)で光を照射し、フォトルミネッセンスによる放出される波長(赤色量子ドットRed-1、Red-2を含むものは、640nm、緑色量子ドットGreen-1、Green-2を含むものは、545nm)領域の発光強度をスペクトラムメートル(Ocean Optics社)で測定した。下記表に示した値は、赤色量子ドットを含有するものに関しては実施例1の発光強度を1.0と規格化した際のそれぞれの発光強度比の値を記載しており、緑色量子ドットを含有するものに関しては実施例7の発光強度を1.0と規格化した際のそれぞれの発光強度比の値を記載している。また、上記のパターン部を空気下150℃で100時間放置した(耐熱性評価)後の発光強度比の値についても同様にして下記表4~6に示した。
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
以上の結果より、本発明の感光性樹脂組成物は、良好なドライフィルム性、解像性、発光特性、耐熱性(密着性、耐クラック性、発光強度維持)を有し、発光素子に適する硬化膜を提供することができることが示された。
【0179】
一方、量子ドットを含まない比較例1は発光せず、本発明の成分(A)に代えてアクリル樹脂を用いた比較例2-9は、フィルム性、解像性、発光特性、耐熱性の全てにおいて本発明より劣っており、シリコーン樹脂を用いた比較例10-17は、ドライフィルム性、解像性に劣るうえ、耐熱性評価においてクラックの発生が認められた。
【0180】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。