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特許7227950基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230215BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230215BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20230215BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 X
C23C16/52
C23C16/44 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158263
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052085
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】八幡 橘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 直史
(72)【発明者】
【氏名】高崎 唯史
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-242875(JP,A)
【文献】特開2009-249662(JP,A)
【文献】特開昭63-017520(JP,A)
【文献】特開2017-069315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する複数の処理室と、
前記処理室へのガス供給を行うガス供給部と、
前記複数の処理室のそれぞれに個別に接続される複数の処理室排気管と、
前記複数の処理室排気管の下流側に各処理室排気管を合流させるように配される共通ガス排気管と、
前記処理室排気管における圧力の状態を検出する圧力検出部と、
前記圧力検出部の検出箇所よりも前記処理室排気管の上流側であって、前記複数の処理室排気管のそれぞれに個別に接続し、当該処理室排気管の管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管と、
前記圧力検出部で検出された圧力の状態に基づき、前記不活性ガス供給管からの不活性ガスの供給を制御する調整部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記圧力検出部は、前記複数の処理室排気管のそれぞれに設けられている
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記共通ガス排気管には、前記圧力検出部の一部である合流管圧力検出部が設けられている
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理室排気管は、縦方向に沿って配される縦配管と、横方向に沿って配される横配管と、を有し、
前記不活性ガス供給管は、前記横配管に接続されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記調整部は、前記圧力検出部で検出された前記複数の処理室排気管の間の圧力差が所定範囲内となるように、前記不活性ガス供給管からの不活性ガスの供給を調整するよう構成されている
請求項1から4のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記圧力検出部での検出結果を履歴情報として記録する圧力記録部と、
前記圧力検出部で得られる検出結果と前記圧力記録部に既に記録されている前記履歴情報との差が所定値よりも大きい場合に警告情報を報知する制御部と、
を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
基板を処理する複数の処理室のそれぞれに個別に接続し、かつ、下流側が共通ガス排気管によって合流される複数の処理室排気管について、当該処理室排気管における圧力の状態を検出し、その検出結果に基づき、前記処理室排気管における圧力の状態を検出する圧力検出部の検出箇所よりも前記処理室排気管の上流側であって、前記複数の処理室排気管のそれぞれに個別に接続する不活性ガス供給管から不活性ガスを供給する際の制御データを設定する排気調整工程と、
前記複数の処理室に前記基板が存在する状態で当該処理室に処理ガスを供給するとともに、前記排気調整工程で設定された前記制御データに基づき前記不活性ガス供給管から前記処理室排気管の管内に不活性ガスを供給する膜処理工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項8】
基板を処理する複数の処理室のそれぞれに個別に接続し、かつ、下流側が共通ガス排気管によって合流される複数の処理室排気管について、当該処理室排気管における圧力の状態を検出し、その検出結果に基づき、前記処理室排気管における圧力の状態を検出する圧力検出部の検出箇所よりも前記処理室排気管の上流側であって、前記複数の処理室排気管のそれぞれに個別に接続する不活性ガス供給管から不活性ガスを供給する際の制御データを設定する排気調整手順と、
前記複数の処理室に前記基板が存在する状態で当該処理室に処理ガスを供給するとともに、前記排気調整手順で設定された前記制御データに基づき前記不活性ガス供給管から前記処理室排気管の管内に不活性ガスを供給する膜処理得順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置として、例えば、基板を処理する処理室を複数備え、各処理室で排気系が共通化されたものがある。具体的には、複数の処理室のそれぞれに排気管が接続され、さらにその下流側で各排気管が合流するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構成の基板処理装置では、各処理室で基板に対して同様の処理を行うことで、生産性を向上させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5947435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の処理室では、使用している部品の加工精度や組み立て精度等の問題から、処理性能にばらつきが発生することがある。処理性能のばらつきは、各処理室での処理結果のばらつきを招き得るため、基板に対する処理の歩留まりが低下して、生産性向上の妨げとなるおそれがある。
【0005】
本開示は、複数の処理室を備える場合に、高い生産性を維持することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する複数の処理室と、
前記処理室へのガス供給を行うガス供給部と、
前記複数の処理室のそれぞれに個別に接続される複数の処理室排気管と、
前記複数の処理室排気管の下流側に各処理室排気管を合流させるように配される共通ガス排気管と、
前記処理室排気管における圧力の状態を検出する圧力検出部と、
前記複数の処理室排気管のそれぞれに個別に接続し、当該処理室排気管の管内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給管と、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術によれば、複数の処理室を備える場合において、高い生産性を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
図2】第一実施形態に係る基板処理装置のチャンバの構成図である。
図3】第一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成図である。
図4】第一実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
図5】第一実施形態に係る排気調整工程のフロー図である。
図6】第一実施形態に係る膜処理工程のフロー図である。
図7】第二実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の実施の形態について説明する。
【0010】
<第一実施形態>
まず、本開示の第一実施形態を図面に即して説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
図1は、第一実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
図1に示すように、基板処理装置10は、大別すると、プロセスモジュール110と、プロセスモジュール110に繋がるガス供給部およびガス排気部と、を備えて構成されている。
【0012】
(プロセスモジュール)
プロセスモジュール110は、基板200に対して所定の処理を行うためのチャンバ100を有する。チャンバ100としては、チャンバ100aとチャンバ100bとを含む。つまり、プロセスモジュール110は、複数のチャンバ100a,100bを有している。各チャンバ100a,100bの間には隔壁150が設けられており、それぞれのチャンバ100a,100b内の雰囲気が混在しないように構成されている。チャンバ100の詳細構造については後述する。
【0013】
処理対象となる基板200は、例えば、半導体集積回路装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体ウエハ基板(以下、単に「ウエハ」ともいう。)が挙げられる。なお、処理対象となる基板200については、後述するダミー基板に対して、製品基板とも呼ぶこともある。
【0014】
(ガス供給部)
プロセスモジュール110には、各チャンバ100a,100bのそれぞれに処理ガス等を供給するガス供給部が接続されている。ガス供給部は、第1ガス供給部(処理ガス供給部)、第2ガス供給部(反応ガス供給部)、第3ガス供給部(第1不活性ガス供給部)を有している。また、これらに加えて、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)も設けられている。以下、各ガス供給部の構成について説明する。
【0015】
(第1ガス供給部)
各チャンバ100a,100bには第1処理ガス供給管111a,111bが接続されており、さらに第1処理ガス供給管111a,111bには第1処理ガス共通供給管112が接続されている。第1処理ガス共通供給管112の上流側には、第1処理ガス源113が配されている。第1処理ガス源113とチャンバ100a,100bとの間には、上流側から順に、マスフローコントローラ(MFC)115a,115bと、処理室側バルブ116a,116bとが、それぞれ設けられている。これら、第1処理ガス共通供給管112、MFC115a,115b、処理室側バルブ116a,116b、第1ガス供給管としての第1処理ガス供給管111a,111bで、第1ガス供給部(処理ガス供給部)が構成される。なお、第1処理ガス源113を第1ガス供給部に含めるように構成しても良い。
【0016】
第1処理ガス源113からは、処理ガスの一つである第1処理ガスとしての原料ガスが供給される。ここで、第1元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、原料ガスは、例えばシリコン含有ガスである。具体的には、シリコン含有ガスとして、ジクロロシラン(SiHCl、以下DCSとも呼ぶ。)ガスが用いられる。
【0017】
(第2ガス供給部)
各チャンバ100a,100bには第2処理ガス供給管121a,121bが接続されており、さらに第2処理ガス供給管121a,121bには第2処理ガス共通供給管122が接続されている。第2処理ガス共通供給管122の上流側には、第2処理ガス源123が配されている。第2処理ガス源123とチャンバ100a,100bとの間には、上流側から順に、MFC125a,125bと、活性化部としてのリモートプラズマユニット(RPU)124a,124bと、処理室側バルブ126a,126bとが、それぞれ設けられている。RPU124a、124bに代わって、第2処理ガス共通供給管122上にRPU124が設けられていてもよい。これら、RPU124,124a,124b、MFC125a,125b、処理室側バルブ126a,126b、第2処理ガス共通供給管122、第2ガス供給管としての第2処理ガス供給管121a,121bで、第2ガス供給部(反応ガス供給部)が構成される。なお、第2処理ガス源123を第2ガス供給部に含めるように構成しても良い。
【0018】
第2処理ガス源123からは、処理ガスの一つである第2処理ガスとしての反応ガスが供給される。反応ガスは、例えば酸素含有ガスである。具体的には、酸素含有ガスとして、例えば酸素(O)ガスが用いられる。
【0019】
(第3ガス供給部)
第1処理ガス供給管111a,111bおよび第2処理ガス供給管121a,121bには、第1不活性ガス供給管131a,131bが接続されている。さらに、第1不活性ガス供給管131a,131bには、第1不活性ガス共通供給管132が接続されている。第1不活性ガス共通供給管132の上流側には、第1不活性ガス(パージガス)源133が配されている。第1不活性ガス源133とチャンバ100a,100bとの間には、上流側から順に、MFC135a,135bと、処理室側バルブ136a,136bと、バルブ176a,176b,186a,186bとが、それぞれ設けられている。これら、MFC135a,135b、処理室側バルブ136a,136b、バルブ176a,176b,186a,186b、第1不活性ガス共通供給管132、第1不活性ガス供給管131a,131bで、第3ガス供給部(第1不活性ガス供給部)が構成される。なお、第1不活性ガス源133を第3ガス供給部に含めるように構成しても良い。また、基板処理装置10に設けられるプロセスモジュールの数に応じて、同様の構成を増減させて構成しても良い。
【0020】
第1不活性ガス源133からは、不活性ガス(パージガス)が供給される。不活性ガスとしては、例えば窒素(N)ガスを用いる。
【0021】
(第4ガス供給部)
後述するガス排気部の排気管224,226には、第2不活性ガス供給管141a,141bが接続されており、さらに第2不活性ガス供給管141a,141bには第2不活性ガス共通供給管142が接続されている。第2不活性ガス共通供給管142の上流側には、第2不活性ガス源143が配されている。第2不活性ガス源143と排気管224,226との間には、上流側から順に、MFC145a,145bと、バルブ146a,146bとが、それぞれ設けられている。これら、MFC145a,145b、バルブ146a,146b、第2不活性ガス共通供給管142、第2不活性ガス供給管141a,141bで、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)が構成される。なお、第2不活性ガス源143を第4ガス供給部に含めるように構成しても良い。
【0022】
第2不活性ガス源143からは、不活性ガスが供給される。不活性ガスとしては、例えば窒素(N)ガスを用いる。なお、ここでは、第3ガス供給部と第4ガス供給部のガス源を別々に構成したが、まとめて1つだけ設けるように構成しても良い。
【0023】
(ガス排気部)
プロセスモジュール110には、チャンバ100a内の雰囲気とチャンバ100b内の雰囲気とをそれぞれ排気するガス排気部が接続されている。具体的には、チャンバ100aには処理室排気管224が接続されており、チャンバ100bには処理室排気管226が接続されている。つまり、複数のチャンバ100aのそれぞれに対して、複数の処理室排気管224,226が個別に接続されている。そして、処理室排気管224,226には、共通ガス排気管225が接続されている。つまり、処理室排気管224,226の下流側には、各処理室排気管224,226を合流させるように共通ガス排気管225が配されている。これにより、処理室排気管224と処理室排気管226とは、下流端の合流部230にて合流され、さらに共通ガス排気管225に接続されることになる。
【0024】
共通ガス排気管225の下流側には、排気ポンプ223が配されている。排気ポンプ223とチャンバ100a,100bとの間には、下流側から順に、APC(Auto Pressure Controller)222と、バルブ221と、バルブ228a,228bとが、それぞれ設けられている。これら、APC222、バルブ221、バルブ228a,228b、処理室排気管224,226、共通ガス排気管225で、ガス排気部が構成される。このように、チャンバ100a内の雰囲気とチャンバ100b内の雰囲気とは、1つの排気ポンプ223によって排気が行われるようになっている。
【0025】
処理室排気管224には、圧力検出部227aが設けられている。圧力検出部227aは、処理室排気管224内の圧力を検出するものであり、例えば圧力センサを用いて構成することができる。処理室排気管224のうち、圧力検出部227aの上流側に、第2不活性ガス供給管141aが接続されている。
また、処理室排気管226には、圧力検出部227bが設けられている。圧力検出部227bは、処理室排気管226内の圧力を検出するものであり、例えば圧力センサを用いて構成することができる。処理室排気管226のうち、圧力検出部227bの上流側に、第2不活性ガス供給管141bが接続されている。
圧力検出部227a,227bのいずれか、またはその組み合わせを、排気管圧力検出部と呼んでもよい。
【0026】
処理室排気管224は、基板処理装置10を設置した状態での縦方向に沿って配される縦配管224aと、同じく横方向に沿って配される横配管224bと、を有して構成されている。ここでいう縦方向とは、垂直(鉛直)方向、または、垂直方向から所定の許容傾斜角の分だけ傾いた方向のことをいう。また、横方向とは、水平方向、または、水平方向から所定の許容傾斜角の分だけ傾いた方向のことをいう。
縦配管224aの長さは、第2不活性ガス供給管141aから供給される不活性ガスが、後述する処理空間305の雰囲気に影響を与えない距離とする。このような構成とすることで、処理空間305の処理条件(例えば処理空間305の圧力)に影響が及んでしまうことがない。
不活性ガス供給管141aは、横配管224bに接続されている。これにより、圧力検出部227aは、横配管224bにおける第2不活性ガス供給管141aと合流部230との間に設けられることになる。
【0027】
処理室排気管226は、基板処理装置10を設置した状態での縦方向に沿って配される縦配管226aと、同じく横方向に沿って配される横配管226bと、を有して構成されている。縦方向および横方向については、上述のとおりである。
縦配管226aの長さは、第2不活性ガス供給管141bから供給される不活性ガスが、後述する処理空間305の雰囲気に影響を与えない距離とする。このような構成とすることで、処理空間305の処理条件(例えば処理空間305の圧力)に影響が及んでしまうことがない。
不活性ガス供給管141bは、横配管226bに接続されている。これにより、圧力検出部227bは、横配管226bにおける第2不活性ガス供給管141bと合流部230との間に設けられることになる。
【0028】
各圧力検出部227a,227bが第2不活性ガス供給管141a,141bと合流部230との間に設けられる構成により、次の効果を導き出せる。
一つは、第2不活性ガス供給管141a,141bから供給された不活性ガスと、処理室排気管224,226により処理空間305から排気される処理ガスとについて、それぞれが混合されたガスが流れている状態の圧力を検出できる点である。したがって、後述する排気調整工程S102では、より正確な設定が可能となる。
他の一つは、第2不活性ガス供給管141a,141bよりも下流側に位置することで、圧力検出部227a,227bの目詰まりを防止できる点である。仮に、不活性ガス供給管141a、141bとの接続点よりも上流側に設けた場合、処理室排気管224、226に排気された処理ガスの濃度が高いために、圧力検出部227a,227bが目詰まりを引き起こすおそれがある。これに対して、本構成では不活性ガス供給管141a、141bの下流側に設けられるため、処理ガスの濃度を薄くすることができ、そのため目詰まりの発生を抑制することができる。
【0029】
(チャンバ)
続いて、プロセスモジュール110におけるチャンバ100a,100bの詳細構造について説明する。ここでは、複数のチャンバ100a,100bのそれぞれが同様の構成であるため、一つのチャンバ100a(以下、単にチャンバ100と記す。)を例に挙げて説明する。
【0030】
図2は、第一実施形態に係る基板処理装置のチャンバの構成図である。
チャンバ100は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料により、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器302として構成されている。密閉容器302は、上部容器302aと下部容器302bを有しており、上部容器302aと下部容器302bの間に仕切り板308が設けられている。下部容器302bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した基板搬入出口148が設けられており、基板200は基板搬入出口148を介して図示しない真空搬送室との間を移動する。下部容器302bの底部には、リフトピン307が複数設けられている。さらに、下部容器302bは接地されている。
【0031】
密閉容器302として構成されるチャンバ100内には、基板200を支持する基板支持部310が設けられている。基板支持部310は、基板200を載置する基板載置面311と、基板載置面311を表面に持つ基板載置台312と、基板載置台312に内包された加熱源としてのヒータ313と、を主に有している。基板載置台312には、リフトピン307が貫通する貫通孔314が、リフトピン307と対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0032】
基板載置台312は、シャフト317によって支持されている。シャフト317の支持部は、チャンバ100の底壁に設けられた穴を貫通しており、さらには支持板316を介してチャンバ100の外部で昇降機構318に接続されている。昇降機構318を作動させてシャフト317および基板載置台312を昇降させることにより、基板載置面311上に載置される基板200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト317下端部の周囲はベローズ319により覆われており、これによりチャンバ100内は気密に保持されている。
【0033】
昇降機構318が基板載置台312を上昇させると、基板載置台312は、図中に示す基板処理ポジションに位置することになる。基板処理ポジションでは、リフトピン307は基板載置面311の上面から埋没して、基板載置面311が基板200を下方から支持するようになっている。なお、基板200を処理する際には、基板載置台312は、基板処理ポジションに維持される。また、昇降機構318が基板載置台312を下降させると、基板載置台312は、基板載置面311が基板搬入出口148に対向する基板搬送ポジション(図1中の破線参照)に位置することになる。基板搬送ポジションでは、リフトピン307の上端部が基板載置面311の上面から突出して、リフトピン307が基板200を下方から支持するようになっている。
【0034】
チャンバ100内には、基板200を処理する処理空間305と、基板200を処理空間305に搬送する際に基板200が通過する搬送空間306と、が形成されている。
【0035】
処理空間305は、基板処理ポジションにおける基板載置台312と、チャンバ100の天井330との間に形成される空間である。処理空間305を構成する構造体のことを処理室301ともいう。つまり、処理室301内には、処理空間305が設けられている。
【0036】
搬送空間306は、主に、下部容器302bと、基板処理ポジションにおける基板載置台312の下部構造とで構成される空間である。搬送空間306を構成する構造体のことを搬送室ともいう。搬送室は、処理室301の下方に配される。なお、搬送室は、搬送空間306を構成する構造体であればよく、上記構造にとらわれないことは言うまでもない。
【0037】
処理空間305に面する天井330には、第1ガス供給部の第1処理ガス供給管111と、第2ガス供給部の第2処理ガス供給管121と、が接続されている。さらに詳しくは、チャンバ100aにおける天井330には第1処理ガス供給管111aおよび第2処理ガス供給管121aが接続され、チャンバ100bにおける天井330には第1処理ガス供給管111bおよび第2処理ガス供給管121bが接続されている。これにより、処理空間305内に第1処理ガス、第2処理ガスまたは不活性ガスが供給されるようになっている。
【0038】
処理空間305に面する密閉容器302の側壁部分には、ガス排気部の処理室排気管224,226が接続されている。さらに詳しくは、チャンバ100aにおける密閉容器302の側壁部分には処理室排気管224が接続され、チャンバ100bにおける密閉容器302の側壁部分には処理室排気管226が接続されている。これにより、処理空間305内に供給されたガスが処理室排気管224,226を通じて排気されるようになっている。
【0039】
(コントローラ)
基板処理装置10は、基板処理装置10の各部の動作を制御する制御部(制御手段)としてのコントローラ380を有している。
【0040】
図3は、第一実施形態に係る基板処理装置のコントローラの構成図である。
コントローラ380は、演算部(CPU)380a、一時記憶部(RAM)380b、記憶部380c、送受信部380dを少なくとも有するコンピュータとして構成されている。コントローラ380は、送受信部380dを介して基板処理装置10の各構成に接続され、送受信部383を介して接続する上位装置370や入出力装置381を操作する使用者の指示に応じて記憶部380cからプログラムやレシピを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御するようになっている。
【0041】
演算部380aは、調整部391としての機能を有している。記憶部380cは、圧力記録部392および制御データ記録部393としての機能を有している。
調整部391は、圧力検出部227a,227bで検出されたガス排気部の圧力の状態に基づき、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)の第2不活性ガス供給管141a,141bからの不活性ガスの供給を制御するものである。具体的には、調整部391は、圧力記録部392における記録データを参照しつつ、その記録データに応じて第4ガス供給部によるガス供給についての制御データを設定し、設定した制御データを制御データ記録部393に記録するように構成されている。
圧力記録部392は、圧力検出部227a,227bによる検出結果(例えば、圧力値)を記録するものである。
制御データ記録部393は、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)によるガス供給を制御するための制御データを記録するものである。制御データは、例えば、MFC145a,145bの制御パラメータや、バルブ146a,146bの開度を制御するパラメータである。
【0042】
なお、コントローラ380は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)382を用意し、外部記憶装置382を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ380を構成することができる。
【0043】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置382を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用いても良いし、上位装置370から送受信部383を介して情報を受信し、外部記憶装置382を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。また、キーボードやタッチパネル等の入出力装置381を用いて、コントローラ380に指示をしても良い。
【0044】
また、記憶部380cや外部記憶装置382は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されていてもよい。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部380c単体のみを含む場合、外部記憶装置382単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0045】
(2)基板処理工程の手順
次に、上述した構成の基板処理装置10を用いて行う基板処理工程の手順を説明する。基板処理工程は、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として行うもので、処理対象となるウエハ200に対して所定の処理を行うためのものである。所定の処理として、以下の説明では、第1処理ガスとしてDCSガスを用い、第2処理ガスとしてOガスを用い、ウエハ200の表面に膜を形成する例について説明する。ここでは、異なる処理ガスを交互に供給する交互供給処理を行うものとする。
【0046】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された処理の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0047】
以下、基板処理工程について、図4図5および図6を用いて説明する。図4は、基板処理工程の全体の手順を説明するものである。図5は、基板処理工程のうち、排気調整工程S102の詳細を説明するものである。図6は、基板処理工程のうち、膜処理工程S104の詳細を説明するものである。
【0048】
なお、以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作は、コントローラ380により制御される。
【0049】
図4に示すように、基板処理工程では、排気調整工程S102と、膜処理工程S104とを行う。以下、各工程について順に説明する。
【0050】
(排気調整工程:S102)
まず、排気調整工程S102を行う理由について説明する。
半導体装置の製造工程で用いられる基板処理装置10は、様々な部品を搭載して構成されている。そのため、基板処理装置10は、部品の加工や組み立て等の精度により、性能に個体差が生じてしまうことがある。具体的には、例えば、処理室排気管224の径と処理室排気管226の径とが異なる、といったことが生じ得る。また、例えば、チャンバ100aから合流点230までの距離とチャンバ100bから合流点230までの距離とが異なる、といったことが生じ得る。
【0051】
本実施形態のように、基板処理装置10が複数のチャンバ100a,100bを備え、各チャンバ100a,100bでガス排気部(具体的には、共通ガス排気管225や排気ポンプ223等)を共通化した構成の場合、排気流量制御に関する部品の性能に個体差があると、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れ、各処理室301に排気ガスが逆流するおそれがある。ここでいう排気バランスとは、各処理室排気管224、226の排気状態のバランスが良好であることを示すものであり、例えば各処理室排気管224、226の圧力が実質的に等しいことを示す。
【0052】
排気バランスが崩れると、各処理空間305の圧力にもばらつきが生じ、生産性が低下するおそれがある。具体的には、例えば処理室排気管224の圧力が処理室排気管226の圧力よりも高い場合、処理室排気管224内を流れるガスが処理室排気管226におけるガス流れを邪魔するなどして、排気バランスが崩れる。
【0053】
そこで、本実施形態においては、排気調整工程S102を行うことで、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが良好となるよう制御するのである。
【0054】
次に、図5を用いて排気調整工程S102の詳細を説明する。なお、排気調整工程S102の間、ポンプ223は、稼働し続けるものとする。また、APC222は、処理空間305が所望の圧力となるよう開度が調整されるものとする。
【0055】
(基板処理ポジション移動工程:S202)
基板処理ポジション移動工程S202を説明する。
排気調整工程S102で最初に行う基板処理ポジション移動工程S202では、基板載置面311上に基板200が無い状態、または、基板200のダミー品となるダミー基板が基板載置面311上に載置された状態で、各チャンバ100a,100bにおける基板載置台312を基板処理ポジションに移動する。これにより、各チャンバ100a,100bについて、後述する膜処理工程S104のときと同様の排気条件とする。
【0056】
(ガス供給調整工程:S204)
ガス供給調整工程S204を説明する。
ガス供給調整工程S204では、基板処理ポジション移動工程S202で基板載置台312を基板処理ポジションに移動させた後に、各チャンバ100a,100bの処理空間305へのガス供給を開始する。ここでは、処理空間305に処理ガスや不活性ガスを供給する。また、後述する設定工程S212の後であれば、制御データ記録部393から第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを読み出し、その制御データを基にガス供給制御を行いつつ、処理室排気管224,226に不活性ガスを供給する。
【0057】
このとき、後述する膜処理工程S104のときと同様の条件で、処理空間305へのガス供給を行うことが好ましい。例えば、膜処理工程S104で供給する処理ガス(例えば、DCSガスやOガス)を供給する。また、ヒータ313を膜処理工程S104と同様に加熱し、膜処理工程S104の温度条件に近づけてもよい。これらの処理は、特にガスの分解度や粘性等のガスの性質によって排気状況が変わる場合に有効である。
【0058】
(排気管圧力検出工程:S206)
排気管圧力検出工程S206を説明する。
排気管圧力検出工程S206では、ガス供給調整工程S204においてガスを処理空間305に供給している間、圧力検出部227aによって処理室排気管224内の圧力を検出し、圧力検出部227bによって処理室排気管226内の圧力を検出する。そして、各圧力検出部227a,227bによるそれぞれの検出結果(例えば、管内の圧力値)を、コントローラ380の圧力記録部392に記録する。
【0059】
(判定工程:S208)
判定工程S208を説明する。
判定工程S208において、調整部391は、圧力記録部392を参照し、処理室排気管224,226についての圧力検出結果を読み出す。そして、それぞれの圧力検出結果の圧力差が所定範囲内であるか否かを判定する。つまり、調整部391は、処理室排気管224,226の間の圧力差が所定の閾値(以下、第一閾値とも呼ぶ。)よりも小さいか否かを判定する。圧力差が所定範囲内であれば、後述する膜処理工程S104での基板処理に影響する程度の圧力のばらつきが無いと判断し、次に説明する基板搬送ポジション移動工程S210の実行に移る。一方、圧力差が所定範囲内ではない場合、すなわち圧力差が第一閾値以上である場合には、後述する設定工程S212を経た上で、ガス供給調整工程S204に戻る。
【0060】
(基板搬送ポジション移動工程:S210)
基板搬送ポジション移動工程S210を説明する。
判定工程S208にてYes(すなわち圧力差が所定範囲内)と判断されたら、その後は、次に行う膜処理工程S104で基板200を搬入するための準備として、各チャンバ100a,100bにおける基板載置台312を基板搬送ポジションに移動する。
【0061】
(設定工程:S212)
設定工程S212を説明する。設定工程S212は、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを設定する工程である。
【0062】
既述のように、処理室排気管224,226の圧力差が所定範囲内にないと、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れるおそれがある。その場合に、排気バランスを良好にするためには、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)における第2不活性ガス供給管141a,141bからの不活性ガスの供給を適宜調整して、処理室排気管224,226の圧力差が所定範囲内に収まるように制御すればよい。第2不活性ガス供給管141a,141bからの不活性ガスの供給は、コントローラ380がバルブ146a,146b、MFC145a,145bを個別に制御することによって、調整することが実現可能である。
【0063】
そこで、設定工程S212において、調整部391は、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好にすべく、処理室排気管224,226の圧力差に応じて、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを適宜設定する。例えば、処理室排気管224の圧力が処理室排気管226の圧力よりも高い場合であれば、第2不活性ガス供給管141bから処理室排気管226に不活性ガスを供給して、差圧分だけ処理室排気管226の圧力が高くなるように、MFC145a,145bやバルブ146a,146b等についての制御データを設定する。このような制御データに基づいて第4ガス供給部による不活性ガスの供給制御を行えば、処理室排気管224,226の圧力差が緩和されて所定範囲内に収まるようになるので、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好にすることが実現可能となる。
【0064】
つまり、調整部391は、圧力検出部227a,227bで検出された圧力の状態に基づき、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを設定する。そして、調整部391は、設定した制御データを、制御データ記録部393に記録することで、その後に行うガス供給調整工程S204または膜処理工程S104で利用可能にする。このようにして、調整部391は、第2不活性ガス供給管141a,141bから処理室排気管224,226への不活性ガスの供給を制御可能にするのである。
【0065】
このときの不活性ガス供給の制御態様は、処理室排気管224,226の圧力差を緩和してそれぞれを同等にし得るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、処理室排気管224,226の圧力差に応じて、処理室排気管224,226のいずれか一方に不活性ガスを供給するように制御してもよいし、処理室排気管224,226の両方に異なる圧力で不活性ガスの供給するように制御してもよい。
【0066】
以上に説明した一連の各工程S202~S212を経ることで、排気調整工程S102では、膜処理工程S104に先立って、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが良好となるようにする。
【0067】
その際に、排気調整工程S102では、既述のように、基板載置面311上に基板200が無い状態、または、ダミー基板が基板載置面311上に載置された状態とする。以下、その理由を説明する。
仮に、製品基板である基板200が基板載置面311上に載置された状態で排気調整工程S102を実施した場合を考える。その場合、不活性ガスを調整する際に、処理ガスと不活性ガスとがぶつかり、その結果、処理空間305に処理ガスが逆流することがあり得る。このような処理ガスの逆流が生じると、製品基板である基板200上には余計な膜が形成されてしまい、これにより生産性が低下してしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態で説明したように、基板200が無い状態またはダミー基板が載置された状態で排気調整工程S102を実施すれば、仮に処理ガスの逆流が生じたとしても、製品基板である基板200への処理に影響が無く、高い生産性を維持することができる。
【0068】
なお、排気調整工程S102は、膜処理工程S104と同様の条件で行われることが望ましい。詳細を後述するように、膜処理工程S104は、第1処理ガス供給工程S302、第1パージ工程S304、第2処理ガス供給工程S306、第2パージ工程S308を有する。そして、それぞれの工程S302~S308において処理空間305の雰囲気を変更するので、それぞれにおいてガスの供給条件が変更される。例えば、各工程S302~S308での処理空間305の圧力が異なる場合がある。
【0069】
そこで、排気調整工程S102においては、第1処理ガス供給工程S302、第1パージ工程S304、第2処理ガス供給工程S306、第2パージ工程S308に相当する工程を行うようにしてもよい。具体的には、それぞれに相当する各工程において、圧力検出部227が各処理室排気管224、226の圧力を検出し、調整部391が第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを設定する。そして、設定した制御データを、各工程、すなわち第1処理ガス供給工程S302、第1パージ工程S304、第2処理ガス供給工程S306、第2パージ工程S308毎に、制御データ記録部393に記録しておくようにする。
【0070】
(膜処理工程:S104)
次に、膜処理工程S104を説明する。
膜処理工程S104では、製品基板である基板200をチャンバ100内に搬入し、ガス供給部からガスを供給して、基板200に対する処理を行う。そして、処理が終了したら、基板200をチャンバ100内から搬出する。この動作を、所定枚数分の基板200について繰り返し行う。このような膜処理工程S104の詳細は後述する。
【0071】
ところで、膜処理工程S104を行う間においても、排気調整工程S102と同様に、圧力検出部227aが処理室排気管224内の圧力を検出し、圧力検出部227bが処理室排気管226内の圧力を検出し、それぞれの検出結果を圧力記録部392に記録することが好ましい。
【0072】
より好ましくは、圧力検出部227a,227bのそれぞれでの圧力検出結果の圧力差が所定範囲内でない場合、排気調整工程S102と同様の処理動作を行うようにしてもよい。ここでいう所定の範囲内は、圧力差が所定の閾値(以下、第二閾値とも呼ぶ。)よりも小さいか否かによって判定する。
【0073】
その理由を以下に説明する。
膜処理工程S104を行うと、処理室排気管224,226内に膜が堆積されることがある。処理室排気管224,226の温度が処理空間305に比べて低かったり、あるいは処理空間305に比べて処理室排気管224,226が狭小のため圧力が高くなったりするためである。
【0074】
処理室排気管224,226内に堆積される膜厚は、それぞれが接続するチャンバ100a,100bに関連する部品の個体差等によって異なる。膜厚が厚いと各処理室排気管224,226内の圧力にも影響を及ぼし得るが、その膜厚が各処理室排気管224,226で異なると排気バランスが崩れてしまうおそれがある。
【0075】
そこで、上述した排気調整工程S102のみならず、膜処理工程S104を行う間においても、圧力検出部227aが処理室排気管224内の圧力を検出し、圧力検出部227bが処理室排気管226内の圧力を検出し、それぞれの検出結果の圧力差が所定範囲内でない場合に、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを再設定して制御データ記録部393に記録する、といった処理動作を行うことが好ましい。
【0076】
(膜処理工程S104の詳細)
続いて、図6を用いて膜処理工程S104の詳細を説明する。
【0077】
(基板搬入・載置工程)
膜処理工程S104では、まず、基板搬入・載置工程を行う。なお、図6中においては、本工程の図示を省略している。
基板搬入・載置工程では、チャンバ100内の基板載置台312を基板搬送ポジションまで下降させて、基板載置台312の貫通孔314にリフトピン307を貫通させる。これにより、リフトピン307は、基板載置台312の表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。そして、その状態で、ゲートバルブ149を開いて搬送空間306を真空搬送室(図示せず)と連通させ、真空搬送室から基板移載機(図示せず)を用いて基板200を搬送空間306に搬入し、その基板200をリフトピン307上に移載する。これにより、基板200は、基板載置台312の表面から突出したリフトピン307上に水平姿勢で支持される。
【0078】
チャンバ100内に基板200を搬入したら、基板移載機をチャンバ100の外へ退避させ、ゲートバルブ149を閉じてチャンバ100内を密閉する。その後、基板載置台312を上昇させることにより、基板載置面311上に基板200を載置させ、さらに基板載置台312を基板処理ポジションまで上昇させ、基板載置面311上の基板200を処理空間305内に位置させる。
【0079】
このとき、基板載置台312の内部に埋め込まれたヒータ313に電力を供給し、基板載置面311上の基板200の表面が所定の温度となるよう制御する。基板200の温度は、例えば室温以上800℃以下であり、好ましくは例えば室温以上500℃以下である。その際に、ヒータ313の温度は、図示せぬ温度センサにより検出された温度情報に基づいてコントローラ380が制御値を抽出し、ヒータ313への通電具合を制御することによって調整される。
【0080】
以上の処理動作は、各チャンバ100a,100bのそれぞれにおいて同様に行われるものとする。
【0081】
(第1処理ガス供給工程:S302)
第1処理ガス供給工程S302を説明する。
処理空間305内の基板200が所定の温度に達すると、まず、第1処理ガス供給工程S302を行う。第1処理ガス供給工程S302では、バルブ116a,116bを開くとともに、DCSガスが所定流量となるようにMFC115a,115bを調整する。なお、DCSガスの供給流量は、例えば100sccm以上800sccm以下である。このとき、第3ガス供給部からはNガスを供給する。第3ガス供給部から供給されるNガスは、DCSガスのキャリアガスとして用いられる。
【0082】
さらに、第1処理ガス供給工程S302では、バルブ221,228a,228bを開き、ポンプ223を稼働させつつ、APC222の開度を調整して、チャンバ100内が所望の圧力となるようにする。具体的には、処理空間305、搬送空間306のそれぞれの圧力を、例えば50~300Paのうちの所定の値となるよう制御する。所定の値は、例えば、250Paとする。
【0083】
このとき、制御データ記録部393に記録された制御データに基づき、バルブ146a,146bを開くとともに、第2不活性ガス供給管141a,141bから供給する不活性ガスの流量が所定の流量となるようにMFC145a,145bを調整する。制御データ記録部393からの制御データの読み出しにあたり、排気調整工程S102にて第1処理ガス供給工程S302に相当する工程を実施して制御データを算出し設定した場合であれば、その第1処理ガス供給工程S302に対応した制御データを読み出すものとする。
【0084】
このような処理動作により、処理室排気管224と処理室排気管226のいずれか一方、またはその両方に不活性ガスが供給され、各処理室排気管224,226の間の圧力差が緩和されて実質的に同じ圧力となる。したがって、本工程において、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。
【0085】
DCSガスが供給される処理空間305では、そのDCSガスが熱によってシリコン成分等に分解され、基板200上に供給される。これにより、基板200の表面には、「第1元素含有層」としてのシリコン含有層が形成されることになる。シリコン含有層は、形成する薄膜の前駆体に相当する。
【0086】
そして、本工程の開始から所定時間経過後、バルブ116a,116bを閉じて、DCSガスの供給を停止する。より好ましくは、DCSガスの供給を停止する際に、それと同期して、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)からの不活性ガスの供給についても停止する。このように同期して停止することで、処理室排気管224,226内のパーティクルを処理空間305に逆流させることを防ぐことができる。
【0087】
(第1パージ工程:S304)
第1パージ工程S304を説明する。
第1処理ガス供給工程S302の終了後は、次いで、第1パージ工程S304を行う。第1パージ工程S304では、バルブ136a,136b,176a,176bの開状態を維持し、さらにバルブ186a,186bを開き、処理空間305にNガスを供給しつつ、ポンプ223等による排気を継続することで、雰囲気のパージを行う。
【0088】
さらに、第1パージ工程S304では、制御データ記録部393に記録された制御データに基づき、バルブ146a,146bを開くとともに、第2不活性ガス供給管141a,141bから供給する不活性ガスの流量が所定の流量となるようにMFC145a,145bを調整する。制御データ記録部393からの制御データの読み出しにあたり、排気調整工程S102にて第1パージ工程S304に相当する工程を実施して制御データを算出し設定した場合であれば、その第1パージ工程S304に対応した制御データを読み出すものとする。
【0089】
このような処理動作により、処理室排気管224と処理室排気管226のいずれか一方、またはその両方に不活性ガスが供給され、各処理室排気管224,226の間の圧力差が緩和されて実質的に同じ圧力となる。したがって、本工程において、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。
【0090】
そして、本工程の開始から所定時間経過後、バルブ136a,136bを閉じて、Nガスの供給による雰囲気のパージを停止する。より好ましくは、Nガスの供給を停止する際に、それと同期して、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)からの不活性ガスの供給についても停止する。このように同期して停止することで、処理室排気管224,226内のパーティクルを処理空間305に逆流させることを防ぐことができる。
【0091】
(第2処理ガス供給工程:S306)
第2処理ガス供給工程S306を説明する。
バルブバルブ136a,136bを閉じて第1パージ工程S304を終了させたら、次いで、第2処理ガス供給工程S306を行う。第2処理ガス供給工程S306では、バルブ126a,126bを開くとともに、MFC125a,125bで流量調整を行って、処理空間305内へのOガスの供給を開始する。Oガスの供給流量は、例えば100sccm以上6000sccm以下である。このとき、第3ガス供給部からはNガスを供給する。第3ガス供給部から供給されるNガスは、Oガスのキャリアガスまたは希釈ガスとして用いられる。
【0092】
さらに、第2処理ガス供給工程S306では、第1処理ガス供給工程S302の場合と同様に、ポンプ223等による排気を継続して、チャンバ100内が所望の圧力となるようにする。そして、制御データ記録部393に記録された制御データに基づき、バルブ146a,146bを開くとともに、第2不活性ガス供給管141a,141bから供給する不活性ガスの流量が所定の流量となるようにMFC145a,145bを調整する。制御データ記録部393からの制御データの読み出しにあたり、排気調整工程S102にて第2処理ガス供給工程S306に相当する工程を実施して制御データを算出し設定した場合であれば、その第2処理ガス供給工程S306に対応した制御データを読み出すものとする。
【0093】
このような処理動作により、処理室排気管224と処理室排気管226のいずれか一方、またはその両方に不活性ガスが供給され、各処理室排気管224,226の間の圧力差が緩和されて実質的に同じ圧力となる。したがって、本工程において、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。
【0094】
処理空間305に供給されるOガスは、RPU124,124a,124bの少なくともいずれかによって、プラズマ状態とされる。プラズマ状態のOガスが供給される処理空間305では、そのOガスが基板200上に供給される。これにより、基板200の表面には、シリコン含有層がOガスによって改質されることにより、シリコン元素および酸素元素を含有する層で構成される薄膜が形成されることになる。
【0095】
そして、本工程の開始から所定時間経過後、バルブ126a,126bを閉じて、Oガスの供給を停止する。より好ましくは、Oガスの供給を停止する際に、それと同期して、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)からの不活性ガスの供給についても停止する。このように同期して停止することで、処理室排気管224,226内のパーティクルを処理空間305に逆流させることを防ぐことができる。
【0096】
(第2パージ工程:S308)
第2パージ工程S308を説明する。
第2処理ガス供給工程S306の終了後は、次いで、第2パージ工程S308を行う。第2パージ工程S308では、第1パージ工程S304と同様に、第1不活性ガス供給管131a,131bからNガスを供給し、処理空間305の雰囲気のパージを行う。
【0097】
さらに、第2パージ工程S308では、制御データ記録部393に記録された制御データに基づき、バルブ146a,146bを開くとともに、第2不活性ガス供給管141a,141bから供給する不活性ガスの流量が所定の流量となるようにMFC145a,145bを調整する。制御データ記録部393からの制御データの読み出しにあたり、排気調整工程S102にて第2パージ工程S308に相当する工程を実施して制御データを算出し設定した場合であれば、その第2パージ工程S308に対応した制御データを読み出すものとする。
【0098】
このような処理動作により、処理室排気管224と処理室排気管226のいずれか一方、またはその両方に不活性ガスが供給され、各処理室排気管224,226の間の圧力差が緩和されて実質的に同じ圧力となる。したがって、本工程において、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。
【0099】
そして、本工程の開始から所定時間経過後、バルブ136a,136bを閉じて、Nガスの供給による雰囲気のパージを停止する。より好ましくは、Nガスの供給を停止する際に、それと同期して、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)からの不活性ガスの供給についても停止する。このように同期して停止することで、処理室排気管224,226内のパーティクルを処理空間305に逆流させることを防ぐことができる。
【0100】
(判定工程:S310)
判定工程S310を説明する。
第2パージ工程S308が終了したら、コントローラ380は、順に行われる第1処理ガス供給工程S302、第1パージ工程S304、第2処理ガス供給工程S306、第2パージ工程S308を1サイクルとし、そのサイクルを所定回数(n cycle)実施したか否かを判定する。
【0101】
所定回数実施していないとき(S310でNoの場合)は、第1処理ガス供給工程S302、パージ工程S304、第2処理ガス供給工程S306、パージ工程S308のサイクルを繰り返す。所定回数実施したとき(S310でYesの場合)は、図6に示した一連の処理を終了する。
【0102】
(基板搬出工程)
その後は、基板搬出工程を行う。なお、図6中においては、本工程の図示を省略している。
基板搬出工程では、チャンバ100内の基板載置台312を基板搬送ポジションまで下降させて、基板載置台312の表面から突出させたリフトピン307上に基板200を支持させる。これにより、基板200は、基板処理ポジションから基板搬送ポジションに移送される。そして、その状態で、ゲートバルブ149を開き、基板移載機(図示せず)を用いて基板200をチャンバ100の外へ搬出する。
【0103】
(3)本実施形態の効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果を奏する。
【0104】
(a)本実施形態によれば、複数の処理室排気管224,226のそれぞれに個別に第2不活性ガス供給管141a,141bが接続しており、第2不活性ガス供給管141a,141bから処理室排気管224,226の管内に不活性ガスを供給する。これにより、各処理室排気管224,226の間の圧力差を緩和して、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。したがって、複数のチャンバ100a,100bを備える場合であっても、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好なものとすることができ、その結果として高い生産性を維持することが可能となる。
【0105】
(b)本実施形態によれば、圧力検出部227a,227bが複数の処理室排気管224,226のそれぞれに設けられている。したがって、各処理室排気管224,226の間の圧力差を適切に検出し得るようになり、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好なものとする上で非常に有用である。
【0106】
(c)本実施形態によれば、圧力検出部227a,227bで検出された圧力の状態に基づき、第2不活性ガス供給管141a,141bから処理室排気管224,226の管内への不活性ガスの供給を制御する。したがって、各処理室排気管224,226の間の圧力差を確実に緩和して、実質的に同じ圧力とすることが実現可能となるので、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好なものとする上で非常に有用である。
【0107】
(d)本実施形態によれば、圧力検出部227a,227bの検出箇所よりも処理室排気管224,226の上流側に第2不活性ガス供給管141a,141bが接続されている。処理ガスと不活性ガスとの混合ガスが流れている状態の圧力を検出でき、排気調整工程S102での正確な設定が可能となる。また、圧力検出部227a,227bの目詰まりを防止することもできようになる。
【0108】
(e)本実施形態によれば、処理室排気管224,226が縦配管224a,226aと横配管224b,226bとを有しており、第2不活性ガス供給管141a,141bが横配管224b,226b接続されている。これにより、圧力検出部227a,227bが第2不活性ガス供給管141a,141bと合流部230との間に設けられ、圧力検出部227a,227bよりも上流側に第2不活性ガス供給管141a,141bが接続されることになる。この点によっても、排気調整工程S102での正確な設定が可能となり、また圧力検出部227a,227bの目詰まりを防止することもできようになる。
【0109】
(f)本実施形態によれば、複数の処理室排気管224,226の間の圧力差が所定範囲内となるように、第2不活性ガス供給管141a,141bからの不活性ガスの供給を行う。つまり、各処理室排気管224,226の間の圧力差を所定範囲内に抑えることで、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスが崩れることを抑制できる。その結果として、各チャンバ100a,100bの間の排気バランスを良好にする上で非常に有用なものとなる。
【0110】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態を、図7を用いて説明する。
図7は、第二実施形態に係る基板処理装置の概略構成図である。
第一実施形態との相違点は、共通ガス排気管225に圧力検出部229を設けた点、排気管圧力検出工程S206、判定工程S208、設定工程S212の内容が異なるが、その他の点は第一実施形態の場合と同様である。以下、相違点を中心に説明する。
【0111】
本実施形態においては、共通ガス排気管225に圧力検出部229が設けられている。好ましくは、APC222の下流側、すなわちAPC222とポンプ223との間に、圧力検出部229が設けられる。
【0112】
圧力検出部229は、共通ガス排気管225内の圧力を検出する合流管圧力検出部として機能するものであり、圧力検出部227a、2227bと同様に、例えば圧力センサを用いて構成することができる。つまり、共通ガス排気管225には、圧力検出部の一部である合流管圧力検出部としての圧力検出部229が設けられている。以下、圧力検出部229のことを、合流管圧力検出部とも呼ぶ。圧力検出部227a、圧力検出部227b、圧力検出部229のいずれか、またはその組み合わせを、排気管圧力検出部と呼んでもよい。
【0113】
このように、圧力検出部229を設けてAPC222の下流側の圧力を検出可能とすれば、圧力検出部229が予め想定される通常の検出値と大きく異なる値を検出した場合に、APC222の破損が生じたり、排気管224、排気管226等で何かしらの異常が起きたりしたことを、判定することが可能となる。圧力検出部229で検出された検出値は、圧力記録部392に記録されるものとする。
【0114】
続いて、本実施形態における排気管圧力検出工程S206、判定S208、設定工程S212について説明する。
【0115】
(排気管圧力検出工程:S206)
排気管圧力検出工程S206を説明する。
排気管圧力検出工程S206では、処理空間305にガスを供給している間、圧力検出部227aで処理室排気管224内の圧力を検出し、圧力検出部227bで処理室排気管226内の圧力を検出することに加えて、さらに圧力検出部229で共通ガス排気管225の圧力を検出する。そして、各圧力検出部227a,227b,229によるそれぞれの検出結果(例えば、管内の圧力値)を、圧力記録部392に記録する。
【0116】
(判定工程:S208)
判定工程S208を説明する。
判定工程S208において、調整部391は、圧力記録部392を参照し、圧力検出部227aと圧力検出部229による圧力検出結果を読み出し、それぞれの間の圧力差を算出する。この差は、図7中の左側部分の圧力差であることから、ΔPLと表現する。
これと同様に、調整部391は、圧力記録部392を参照し、圧力検出部227bと圧力検出部229による圧力検出結果を読み出し、それぞれの間の圧力差を算出する。この差は、図7中の右側部分の圧力差であることから、ΔPRと表現する。
【0117】
次に、調整部391は、圧力差ΔPLと圧力差ΔPRとの差が所定範囲内であるか否かを判定する。つまり、調整部391は、圧力差ΔPL,ΔPRの間の差が所定の閾値(以下、第三閾値とも呼ぶ。)よりも小さいか否かを判定する。そして、差が所定範囲内であれば、膜処理工程S104での基板処理に影響する程度の圧力のばらつきが無いと判断し、基板搬送ポジション移動工程S210の実行に移る。一方、差が所定範囲内ではない場合、すなわち圧力差ΔPL,ΔPRの間の差が第三閾値以上である場合には、不活性ガス供給量調整工程S212に移動する。
【0118】
(設定工程:S212)
設定工程S212を説明する。ここでは、第4ガス供給部(第2不活性ガス供給部)についての制御データを設定する。
【0119】
調整部391は、圧力差ΔPL,ΔPRの間の差に応じて、第4ガス供給部についての制御データを設定し、処理室排気管224,226の圧力差が緩和されて、処理室排気管224内の圧力と処理室排気管226内の圧力とが同等になるようにする。そして、設定した制御データを制御データ記録部393に記録する。
【0120】
その後、膜処理工程S104では、設定された制御データに基づき、第4ガス供給部を制御して、基板200を処理する。
【0121】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、上述した第一実施形態による効果に加えて、以下に示す効果を奏する。
【0122】
本実施形態によれば、共通ガス排気管225に圧力検出部229を設けることで、その上流の部品の異常の検知が容易となる。また、圧力検出部227aと圧力検出部229との圧力差ΔPLと、圧力検出部227bと圧力検出部229との圧力差ΔPRとの差分を検出することで、チャンバ100aまたはチャンバ100bの異常をより正確に検出できる。
【0123】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態を説明する。
第一実施形態または第二実施形態との相違点は、圧力記録部392が履歴情報を記録する点である。以下、相違点を中心に説明する。
【0124】
本実施形態において、圧力記録部392は、圧力検出部での検出結果を履歴情報として記録する。履歴情報は、圧力検出部による過去の検出結果に相当するもので、第一実施形態のように圧力検出部227a,227bによるものであってもよいし、第二実施形態のように圧力検出部227a,227b,229によるものであってもよい。
【0125】
このように、圧力記録部392が履歴情報を記録する場合、新たに検出した圧力値と過去に検出した圧力値との差が所定値(第四閾値)よりも大きい場合、基板処理装置10に何らかの異常が発生したと判断できる。第四閾値としては、例えば、通常想定される圧力値の差分よりも著しく大きい値を設定しておくことが考えられる。
【0126】
つまり、本実施形態においては、圧力検出部で新たに得られる検出結果と、圧力記録部392に既に記録されている履歴情報との差が所定値(第四閾値)よりも大きい場合に、何らかの異常が発生したと判断し、コントローラ380が異常状態を知らせるための警告情報を報知したり、あるいは基板処理装置10を停止させたりする。
【0127】
したがって、本実施形態によれば、警告情報の報知や装置停止等によって、異常状態で基板200を処理することを抑制でき、その結果として高い生産性を維持できるようになる。
【0128】
<他の実施形態>
以上、本開示の第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態を説明したが、本開示は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0129】
上述の各実施形態では、原料ガスと反応ガスを交互に供給して成膜する方法について記したが、原料ガスと反応ガスの気相反応量や副生成物の発生量が許容範囲内であれば、他の方法にも適用可能である。例えば、原料ガスと反応ガスの供給タイミングが重なるような方法である。
【0130】
また、上述の各実施形態では、成膜処理について記したが、他の処理にも適用可能である。例えば、拡散処理、酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、還元処理、酸化還元処理、エッチング処理、加熱処理等が有る。例えば、反応ガスのみを用いて、基板表面や基板に形成された膜をプラズマ酸化する処理や、プラズマ窒化処理する際にも、本開示を適用することができる。また、反応ガスのみを用いたプラズマアニール処理にも、本開示を適用することができる。
【0131】
また、上述の各実施形態では、原料ガスとしてシリコン含有ガス、反応ガスとして酸素含有ガスを用いて、シリコン酸化膜を形成する例を示したが、他のガスを用いた成膜にも適用可能である。例えば、酸素含有膜、窒素含有膜、炭素含有膜、ホウ素含有膜、金属含有膜とこれらの元素が複数含有した膜等が有る。なお、これらの膜としては、例えば、SiN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、HfAlO膜、ZrAlO膜、SiC膜、SiCN膜、SiBN膜、TiN膜、TiC膜、TiAlC膜等が有る。これらの膜を成膜するために使われる原料ガスと反応ガスそれぞれのガス特性(吸着性、脱離性、蒸気圧など)を比較して、供給位置や処理室内の構造を適宜変更することにより、同様の効果を得ることができる。
【0132】
また、上述の各実施形態では、不活性ガスとしてNガスを例に説明したが、処理ガスと反応しないガスであれば、それに限るものではない。例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0133】
また、上述の各実施形態では、圧力差について、同等、実施的に同じ等の表現を用いているが、それぞれの圧力値が全く同じ場合に限られないことは言うまでもない。例えば、基板処理の品質を維持できる程度に実質等しい状態も当然に含む。
【符号の説明】
【0134】
100・・・チャンバ
110・・・プロセスモジュール
141・・・不活性ガス供給管
200・・・基板
224、226・・・処理室排気管
227・・・圧力検出部
301・・・処理室
302・・・処理容器
305・・・処理空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7