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特許7228076ガス供給装置、真空処理装置及びガス供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ガス供給装置、真空処理装置及びガス供給方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230215BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230215BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230215BHJP
   F16K 7/12 20060101ALI20230215BHJP
   F17D 1/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/205
C23C16/455
F16K7/12 Z
F17D1/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022506182
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004546
(87)【国際公開番号】W WO2022168301
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 芳文
(72)【発明者】
【氏名】高妻 豊
(72)【発明者】
【氏名】秋永 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】廣實 一幸
(72)【発明者】
【氏名】園田 靖
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129386(JP,A)
【文献】特開2008-159905(JP,A)
【文献】特開2002-222770(JP,A)
【文献】特開2008-069918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
C23C 16/455
F16K 7/12
F17D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され
前記パージ用ガスを流出させる最上流のガスバルブは、ダイヤフラムの開の動作により流量制御済のパージガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、前記処理用ガスが前記集合配管に流出したときの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、前記集合配管の最上流終端として、デッドボリュームを有しないことを特徴とするガス供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス供給装置において、
ダイヤフラムにより開閉動作を行う3方弁が前記集合配管上に配置され、
前記3方弁は、ガス流れを遮断すること無くガスが通過できるダイヤフラム側のガス流路で前記集合配管そのものを形成し、
前記3方弁のダイヤフラムの開の動作により流出させる前記処理用ガスを前記集合配管に合流させるように構成されていることを特徴とするガス供給装置。
【請求項3】
試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され、
ダイヤフラムにより開閉動作を行う3方弁と、処理用ガスの流量制御器と、当該処理用ガスを希釈する希釈ガスの流量制御器を個別に有し、
処理用ガスの流量制御を行うために、前記3方弁には、ダイヤフラム側にガス流れを遮断すること無く希釈ガスが通過できるガス流路が形成されており、前記3方弁のダイヤフラムの開の動作により処理用ガスを流出させて前記希釈ガスが通過できる前記ガス流路に合流させるように構成され
前記希釈ガスを流出させる前記流量制御器の下流のガスバルブは、
流量制御済の希釈ガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、前記ガス流路に合流された前記処理用ガスの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、前記ガス流路の最上流終端として、デッドボリュームを有しないことを特徴とするガス供給装置。
【請求項4】
請求項1または3に記載のガス供給装置において、
前記集合配管は、前記パージ用ガスと前記処理用ガスを前記処理室へ供給する第一のガスラインと、前記パージ用ガスと前記処理用ガスを排気する第二のガスラインとを別個に設けたことを特徴とするガス供給装置。
【請求項5】
試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され、
共通の前記集合配管内、およびガスを供給する共通の供給配管内で混合できないガス種ごとにガス供給ブロックを形成し、前記集合配管はそれぞれのガス供給ブロックごとに設けたことを特徴とするガス供給装置。
【請求項6】
請求項1,3又は5に記載のガス供給装置と、前記ガス供給装置からガスを供給される処理室とを備えることを特徴とする真空処理装置。
【請求項7】
請求項に記載のガス供給装置を用いたガス供給方法において、
前記試料のプロセス処理中は、全ての前記ガス供給ブロックの前記処理室に供給する側の前記集合配管の上流側から常にパージ用ガスを流し、所定の処理用ガスを各処理ステップの進行状況に従って、前記集合配管を形成する各処理用ガスのバルブの開閉で使用するガス種を選択しながら処理を施すことによって、いずれの前記ガス供給ブロックの前記処理室への供給配管にも、常にガスを流すことを特徴とするガス供給方法。
【請求項8】
請求項に記載のガス供給装置を用いたガス供給方法において、
前記ガス供給ブロックで間欠的にガスを前記処理室に供給する場合において、前記パージ用ガスおよび使用するガス種の流量制御器により常にガスの流量制御をさせながら、前記処理室に至る供給配管に繋がる前記集合配管に配設したバルブ、もしくは捨てガスのため排気系に繋がる前記集合配管に配置したバルブを交互に開閉して、前記処理室への当該ガスの間欠供給を行い、かつ前記集合配管の最上流に配設した前記パージ用ガス用のバルブから、当該ガスの供給配管とは異なる供給配管側に前記パージ用ガスを流すことによって、両方の前記集合配管、両方の前記供給配管に常にガスを流すことを特徴とするガス
供給方法。
【請求項9】
請求項に記載のガス供給方法において、
前記処理用ガスを間欠供給する前記ガス供給ブロックが2つ以上存在し、それぞれの前記ガス供給ブロックから供給される前記処理用ガスを前記処理室、もしくは前記排気系に対して同時に供給されないように、前記集合配管を形成している前記処理用ガスの供給バルブの同時開閉を禁止することを特徴とするガス供給方法。
【請求項10】
請求項1,3又は5に記載のガス供給装置を用いたガス供給方法において、
前記集合配管の最上流から前記パージ用ガスを供給しながら、前記処理用ガスを前記集合配管の途中に流出させることを特徴とするガス供給方法。
【請求項11】
請求項1,3又は5に記載のガス供給装置を用いたガス供給方法において、
前記試料の処理後、前記処理用ガスの供給を止めて、前記パージ用ガスを前記処理室へ供給する供給配管、排気系へ同時に流す工程を有することを特徴とするガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給装置、真空処理装置及びガス供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置は、例えば、半導体素子や、液晶素子、太陽電池、MEMSの計測器といった電気部品の製作に、それぞれさまざまなガス特性を有する高純度プロセスガスを用いて、ウエハ等の被加工材料を処理するものであるため、今や世の中で欠くことのできない重要な産業機械である。
【0003】
これらの半導体製造装置では、設定された処理レシピの各々のステップの処理情報に従って、プロセスガスの供給が制御されている。例えば、サーマルセンサー方式の質量流量制御器(MASS FLOW RATE CONTROLLER、以下MFCという)や、圧力式流量制御器(PRESSURE FLOW RATE CONTROLLER、以下PFCという)などを用いてガス流量が制御される。
【0004】
通常は、これらの流量制御器の前後に配置されたガスバルブの開閉の制御でプロセスガスの供給/停止が制御される。かかる制御を介して、単体のプロセスガス、もしくは複数種のプロセスガスの混合比率をガス流量で制御されている混合ガスが、被加工物が収納された処理室や反応リアクター(チャンバー)に導入される。そこで、さらに他のプロセスガスと混合されることもある。
【0005】
これらのチャンバー内に導入されたガスは、プラズマ化されたり、高温で活性にされたり、イオン化され電界内で加速されたりすることにより、被加工材料に対して表面反応を生じさせる。ここで、表面反応とは、さまざまな材料のエッチング、不要になった表面の有機物含有マスク材のアッシング(灰化)、物理的なイオンによるスパッターエッチングなどによる被加工物の表面材料のドライ除去、またターゲット材をスパッター処理したりCVD(chemical vapor deposition)法で材料を反応させたりすることによる付着物の形成を介した被加工物の表面への成膜、被加工物の(疎水性、親水性等の)表面改質、被加工物の表面から内部へ特定元素や分子の打ち込み、もしくは熱拡散といった現象をさす。使うガス種や活性化の方法によって、これらのさまざまな表面処理にプロセスガスが利用される。
【0006】
通常プロセスガスの供給は、以下に示すように制御される。例えばチャンバーに対して当該プロセスガスを供給または停止するために、ノーマリークローズのエアーオペレートバルブの開閉制御が通常多用されている。
【0007】
当該プロセスガスを供給するステップでは、その当該プロセスガスに割り当てたソレノイドバルブに給電し、ソレノイドバルブを開くことにより、エアー源からの加圧エアーが当該プロセスガスの供給配管に設けられたエアーオペレートバルブに供給される。さらにエアーオペレートバルブが開放されて、当該プロセスガスがチャンバーへ供給される。当該プロセスガスを供給停止するステップでは、ソレノイドバルブをオフ制御して加圧エアーの供給を止め、残留した空気も排出させて当該プロセスガスのエアーオペレートバルブを閉じるので、当該ガスが供給されなくなる。
【0008】
圧力調整のエラーやガス流量低下等のレシピ制御で許容できない等の不具合の発生を検知した場合は、そのレシピの当該ステップの処理を中断する。かかる検知に応動して、ソレノイドバルブをオフ制御し、エアーオペレートバルブへの加圧エアー供給を遮断し、エアーオペレートバルブが閉じ、当該プロセスガスの注入を停止することができる。
【0009】
当該ステップの処理によっては、危険なプロセスガスや反応性の高いプロセスガスのエアーオペレートバルブのみ閉じるのに対し、アルゴンガス(以下Ar)や窒素ガス(以下N)等のパージや希釈に用いる不活性で比較的安全なガスは、不具合を検知しても被加工物への異物(パーティクル)付着を避けるために流し続けることもある。
【0010】
さらに給電エラーや停電等が発生したときには、ソレノイドバルブが一斉に閉じて加圧エアーの供給断つので、全てのエアーオペレートバルブが閉じ、チャンバーへの全てのプロセスガスの供給を止めることで、半導体製造装置を安全に制御することができる。
【0011】
また、プロセスガスの流量制御については、MFCは、ガス分子によって伝達される熱をサーマルセンサーでモニターして、その熱に従ってオリフィスの開度を制御して所望のガス流量を得る方式である。これに対して最近多用されるPFCは、通常オリフィスに流れるガスを音速制御(ガス速度が音速になるようにオリフィスの上流の圧力をオリフィス下流の圧力の約2倍以上に制御)することで、オリフィスより上流側圧力と流量が比例すること(臨界膨張条件)を利用して、所定の流量を得る方式である。
【0012】
実際にPFCでは、上流側にガスを送り込むバルブを開閉させてオリフィス上流側圧力を制御し所望のガス流量を得ている。PFCの中には、オリフィスではなく内部にガスを流すための抵抗体を設けて、それぞれのガスの特性を加味した圧力をもとに流量制御する方式もある。
【0013】
これらMFCやPFCの方式を採用した制御システムにおいて、それぞれのプロセスガス流量を制御する前または後に、エアーオペレートバルブを配置し、その制御されたプロセスガスがチャンバーに導入される。
【0014】
ところで、半導体素子製造における微細加工の進展にともない、より高精度の加工を目指してプロセスガス制御の進化が求められている。具体的には、金属汚染(メタルコンタミネーション)や異物(パーティクル)の発生をさらに低レベルに抑制し、加工寸法精度や加工膜厚制御、エッチングにおいては高選択比(対象材料以外は極力削らず除去しないこと)で加工することが要求されている。
【0015】
これらの要求に応えるために、従来は使用しなかった、より反応性の高いガスを用いて複雑な反応を制御して加工すること、逆にArやHe、Nといった不活性なガスでプロセスガスをより高精度で希釈して加工速度を抑制すること、さらにはサイクリックにガス種を切り替えて段階的に反応を進行させること、使用後に腐食性ガスのパージをより厳密に実施すること等の方策がとられる。このため、コンタミネーションや異物の付着が抑制できるガス供給のためのバルブユニットの構造と、その制御が必要になってきた。
【0016】
かかる課題を、具体的に説明する。最近の装置では可燃性ガスや支燃性のガス、あるいは自燃性のガスを混在して同一チャンバー内で使うことが増えており、より複雑な反応系で制御しないと目的の加工性能が得難くなってきている。このようなガスを用いると、特に反応を推進させるためのエネルギーを与えなくても、単にガス配管内で2種類のガスを混合しただけで固形物を形成することがある。かかる場合、形成された固形物が逆流して流量制御器を故障させたり、ガス配管の閉塞を起こしたり、被加工物に異物(パーティクル)として付着したりするなどの不具合がより発生しやすくなる。
【0017】
かかる不具合に対する安全の確保、および不具合を回避する観点から、可燃性ガスや支燃性のガス、あるいは自燃性のガス、さらには2種混合できないガスをそれぞれの特性ごとにまとめて異なるプロセスガス配管でチャンバーに分けて導入する必要がある。チャンバーは加温されているので、チャンバーの内壁では固形物の付着が抑制され、清浄に保つように配慮されている。またチャンバーに導入されたガスは、例えば反応により爆発的燃焼が生じた場合に反応後も大気圧を超えないように、つまりはチャンバーが破壊されないような真空状態の圧力を維持、監視することで管理される。被加工物の搬入搬出の搬送中や、加工のための圧力調整の前処理や、残ガスを排出する後処理では、被加工物の表面を層流状態のガスフロー下におくことで異物の付着を抑制する。
【0018】
ガス処理を行うために当該プロセスガスを流す際の課題について述べる。ガス処理を行うとき、プロセスガスを単独(100%)で流す場合と、他のガス(Ar等)で希釈して(当該プロセスガスの割合が100%未満で)流す場合と、もしくはこれらと別のプロセスガスとを混合して流す場合とがある。
【0019】
さらに、当該プロセスガスを一定時間だけ流し、その後は不活性ガスのプロセスガスでパージを目的に流し、このパージの間には他のガス供給ラインを使って別のプロセスガスを流し、次にこの別のプロセスガスラインにはパージガスを流すという一連の工程を行うこともある。チャンバーに供給するこれらガス種の時間的な変化を伴うガス流しを1サイクルとして、複数回サイクリックに繰り返す、ALD(Atomic Layer Deposition)やALE(Atomic Layer Etching)と呼ばれる処理の手法も考慮する必要がある。
【0020】
レシピに従った処理中に、複数種のガスを混合/希釈して流す、もしくはサイクリックにガスを切り替えて流すというこれらメインの処理以外に、被処理物の搬送中にガスをパージしたり、プラズマや加熱に先立ちチャンバー内の圧力調整をしたり、被処理物の表面の水分を除去するための前処理をしたり、被処理物を取り出す前にチャンバー内に残った残ガスを排出したりするなどの後処理の工程も存在する。
【0021】
当該ガスをチャンバーに導入する必要のない、使用しないステップのときには、通常ガス流量の制御をせず、前出の当該プロセスガスの流量制御器の下流のエアーオペレートバルブ、もしくは上流と下流の双方のエアーオペレートバルブを閉じる。このエアーオペレートバルブは、チャンバーの壁に直接取り付けられているわけではなく、多くの装置では、流量制御器とともにチャンバーとは別に設置されるガスユニット(ガスボックス)内に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】特開2008-533731号公報
【文献】特開2004-183743号公報
【文献】国際公開第2009/122683号
【文献】国際公開第2013/046660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
特許文献1には、プロセスガスの供給ラインの構成が模式的に示されている。この構成は、チャンバーを迂回して、酸化性ガス系やSi基を含むガス系をそれぞれ個別に排気系へ流す(ガス捨て用の)ラインを有しており、またチャンバーには常にガスを流し続けることができる構造を有し、バルブの切り替えで、被加工物であるチャンバー内のウエハに対して供給されるガスを、パルス的にサイクリックに切り替えができる。また、その制御手法も特許文献1に開示がある。
【0024】
しかしながら、ガス捨て用のラインのガス配管には、当該ガスを捨てるときにはガスが流れるが、当該ガスをチャンバー側に流したときにはガスが流れない。そのため、ガス捨て用のラインのバルブを閉じても、このバルブと捨て先の排気配管をつなぐ配管には、排気系のガスが逆拡散してくるという課題がある。
【0025】
この逆拡散してくるガスの中にも未反応のプロセスガスや、活性種(ラジカル等)や反応生成物が含まれており、それらが配管内に付着し、反応し、蓄積する。実際にこれと同じ構成を有する装置で、捨てガスのために設けたエアーオペレートバルブのシート面に異物が付着して、開閉動作でチャンバーへの供給ラインの配管内までパーティクルが拡散し、ウエハ上のパーティクルになるトラブルを発生させ、被加工物の良品加工比率(加工収率)を低下させてしまうという不具合が確認された。
【0026】
またこの特許文献1では、複数のプロセスガスがチャンバー供給の最終段のガスバルブより上流側で、チャンバーに入るより以前に混合して流されたり、共通のガス配管を用いて交互に流されたりしているので、前出した混合して流せないようなガス種の組み合わせでは使用できないことは明白である。
【0027】
混合して流せないようなガスは、特許文献1のガス供給系とは別の供給系を併設して、チャンバーへの供給ラインを独立で設けることが一案である。ところが、チャンバーに2系統の供給ラインを設けて、それぞれに特許文献1にあるチャンバー供給の最終段のバルブをそれぞれに設置しても、厳密には他のプロセスガスの逆拡散は抑制できない。
【0028】
その理由は、これらプロセスガスを用いて加工する装置では、被加工物に対して適切なガス流れやガスの混合状態を作りだすために、チャンバー空間に接したガスの流れの上流側に予備空間(前室)、バッフル板、もしくはガスシャワープレートと呼ばれる部材を設けており、前出の最終段のエアーオペレートバルブよりも下流にも、当該プロセスガスが単独で流れるガスルートが存在するからである。
【0029】
このような部材に向かって他のプロセスガス、なかでも腐食性の高いガスが逆拡散してくると、大気開放時に空気中の水分と反応して、腐食性ガスとは通常接しないはずの予備空間(前室)、バッフル板、シャワープレートを腐食させ、金属汚染(メタルコンタミネーション)を引き起こしたり、メンテ時の交換対象パーツを増大させたりするという問題がある。
【0030】
また、処理後に配管内に溜まったプロセスガスを効率よく、短時間で追い出すためのパージが重要になることもある。またサイクリックに短時間の内にガスを切り替える処理を実施するときは、このプロセスガスの切り替えが素早く行う必要がある。
【0031】
例えば特許文献2には、集積弁に連通する集合配管を設けて、それぞれのバルブの反ダイヤフラム側の配管長をできるだけ小さくして配置する方法が記載されている。バルブの構成要素が集積弁ブロックに直接組み込まれていて独立交換のできない特殊な例ではあるが、デッドボリュームを減じる工夫がなされている。デッドボリュームを少なくしてガス置換性をあげる重要性が示されている。しかしながらこのブロック接続したガスラインでは、実際にはまだデッドボリュームが存在し、ゼロにはできていない。
【0032】
また特許文献3には、特殊3方弁の構造が示されている。この特殊3方弁は、電磁弁に応用した例であるが、接ガス部の構造はエアーオペレートバルブに応用される場合は、特段変わるところはない。この構造で、デッドスペースフリーな(ガス)フローが実現できるとされているが、プロセスガスを混合するときのそれぞれのガスバルブの配置構成、流量の制御の仕方については明確にされていない。
【0033】
また特許文献4には、圧力式の流量制御器を用いて、複数のガスを供給する集積弁の構造が示されている。この集積弁には表裏両側に機器を配設して、パージをするためのラインも共通で設けられているが、ガス切り替えでは、エアーオペレートの特殊3方弁を用いているにも係わらずデッドボリュームが存在する。
【0034】
通常、ガス処理を施すチャンバーからのガス排出口(排気口)には、処理圧力調整用の圧力調整バルブが設けられる。このため当然ながらチャンバーの圧力より圧力調整バルブの下流の方がチャンバーより低い圧力になっている。チャンバーへのガス供給量を変えずに、この圧力調整弁の下流にガス放出目的でガス排出を実施すると、下流側の圧力が上昇して、チャンバーの圧力も上昇する。このため、捨てガスがチャンバー内へ逆流するか、ガスの排出速度が低下して、チャンバー内で実施されるガス処理に影響を与えるおそれがある。
【0035】
製造装置の中には、チャンバーからのガスの排出口に、メカニカル・ブースター・ポンプやターボ分子ポンプを配置して、排気能力を高めているものもある。このような製造装置では、前出の捨てガスのタイミングでも、チャンバーへの逆流や排気速度の低下の影響を無視できる程度にまでに減じることができる。しかしながら、前出のエアーオペレートバルブの開動作と、MFCやPFCのガス流量調整を同時に始めた場合は、流量が安定するまで一定時間(通常数秒)を要する。その影響を受けてチャンバーの圧力が安定するまでに更に時間を要することになる。
【0036】
ここで示したように、プロセスガスラインにデッドボリュームを設けずにガス制御性、すなわち供給/停止時の当該プロセスガスの含有/排除の時間制御性をあげ、かつ清浄なガスライン、ガス供給系を提供することが課題である。
【0037】
本発明は、チャンバー内でプロセスガスを用いて処理を行う際に、プロセスガスの上流側への逆流による不具合を有効に抑制できるガス供給装置、真空処理装置及びガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
上記課題を解決するために、代表的な本発明にかかるガス供給装置の一つは、試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され
前記パージ用ガスを流出させる最上流のガスバルブは、ダイヤフラムの開の動作により流量制御済のパージガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、前記処理用ガスが前記集合配管に流出したときの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、前記集合配管の最上流終端として、デッドボリュームを有しないことにより達成される。
代表的な本発明にかかるガス供給装置の一つは、試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され、
ダイヤフラムにより開閉動作を行う3方弁と、処理用ガスの流量制御器と、当該処理用ガスを希釈する希釈ガスの流量制御器を個別に有し、
処理用ガスの流量制御を行うために、前記3方弁には、ダイヤフラム側にガス流れを遮断すること無く希釈ガスが通過できるガス流路が形成されており、前記3方弁のダイヤフラムの開の動作により処理用ガスを流出させて前記希釈ガスが通過できる前記ガス流路に合流させるように構成され、
前記希釈ガスを流出させる前記流量制御器の下流のガスバルブは、
流量制御済の希釈ガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、前記ガス流路に合流された前記処理用ガスの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、前記ガス流路の最上流終端として、デッドボリュームを有しないことにより達成される。
代表的な本発明にかかるガス供給装置の一つは、試料が処理される処理室へガスを供給するガス供給装置において、
パージ用ガスと処理用ガスを含む複数種のガスのガス源の各々に接続されたポートと、
前記ポートから供給された前記複数種のガスの各々が合流して流れる集合配管とを備え、
前記パージ用ガスのガス源に接続されたポートから供給されたガスが流れるガス流路が前記集合配管の最上流側に形成され、
共通の前記集合配管内、およびガスを供給する共通の供給配管内で混合できないガス種ごとにガス供給ブロックを形成し、前記集合配管はそれぞれのガス供給ブロックごとに設けたことにより達成される。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、チャンバー内でプロセスガスを用いて処理を行う際に、プロセスガスの上流側への逆流による不具合を有効に抑制できるガス供給装置、真空処理装置及びガス供給方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、本発明における実施形態にかかるガス供給装置と真空処理装置を示す模式図である。
図2図2は、図1から抽出したガス供給装置のバルブを含むブロックの構成図である。
図3図3は、図2に示す構成の一部を取り除きガス経路を明確にした構造図である。
図4図4は、図2のブロックにおいてX-X線で切断した断面図である。
図5図5は、ガス処理の例を示すフローチャートである。
図6図6は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図7図7は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図8図8は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図9図9は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図10図10は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図11図11は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図12図12は、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックにおける、ガスの流れを示す図である。
図13図13は、他の実施形態を示す図1と同様な図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
従来技術の課題を克服するため、本実施形態ではプロセスガスの性質に対してガス配管をブロック化し、パージガスをそれぞれセットで用いる。希釈用のガス流量制御部は希釈のみのため、パージ用のガス流量制御部とは別に設けた。もちろんプロセスガスを希釈せずに常に単体で使用する場合は、希釈側流量制御部は不要である。
【0042】
パージ用のガスにはArやその他希ガス類、目的のガス処理によっては窒素などの配管内で不活性なガスを用いる。これらのパージ用のガス流量制御器は、ガスが共通に流れる集合配管の最上流側に設置する。また、処理に応じてサイクリックに流すプロセスガスが合流する合流部を、集合配管の下流に設ける。サイクリックにガスを流すときには、パージガス(パージ用ガスともいう)とプロセスガス(処理用ガスともいう)とは同時には流さないことにして、配管パージだけの役割を持たせることにした。
【0043】
サイクリックにガスを切り替える場合の逆拡散や排気速度低下、さらにはガス流量の安定化に時間を要する課題に対しては、このガスのグループ単位で、チャンバーへの供給ライン(供給配管または第一のガスラインともいう)、共通の排気系への捨てガスライン(排気系または第二のガスラインともいう)をそれぞれ設けることで解決を目指す。そうすることで、プロセスガスを被処理物の加工時間中に常にどちらかのラインに流し、そのラインとは異なるラインにはパージガスを流すことができる。好ましくは、プロセスガスの流量制御するMFCやPFCの下流にも、パージ用のガス流量制御するMFCやPFCの下流にも、それぞれ2個のエアーオペレートバルブを設け、一方がチャンバー供給ラインに、他方が排気系への捨てガスラインに接続される。
【0044】
プロセスガスもパージガスもガス流量制御器でガス流量を一定にした安定に制御がされたままで、短時間(サブセコンド)内のエアーオペレートバルブの切り替えだけでガスの供給先(チャンバー内)、捨て先(チャンバー外)の切り替えができる。さらに互いのガスを切り替えても、それぞれの流量が適切に調整されていれば、チャンバー側の圧力変動をバルブ切り替え時間だけの極めて短時間内に抑制して、ガス処理の目標の圧力にすることができる。
【0045】
ガス処理に応じてサイクリックにガスを切り替えて流す場合は、全てのチャンバーへの供給ライン、全ての排気系への捨てガスラインには常時ガスが満たされ、流出先より陽圧に管理されるので逆拡散は起こらない。
【0046】
次に、このガス供給装置の構成で、デッドボリュームを抑制できるバルブの構成を検討する。プロセスガスとパージガスを交互に切り替えて流す場合、真にデッドボリュームが無いガス流れを確立すべきか、タイミングをどうすべきか等を決める。
【0047】
プロセスガスもしくは既に希釈ガスと混合されたあとのプロセスガスに対して、デッドボリュームを無くすことは重要である。そこで、プロセスガスの供給が早急に断たれることを重視する。パージガスには普通アルゴンやその他希ガスもしくは窒素等の反応性が低く、表面の反応への寄与が低いガスが選ばれる。パージガスが停止後に流出しても、もともと反応性が弱いので表面反応への影響は小さい。従って、プロセスガス(または希釈済のプロセスガス)に対してデッドボリュームが無くなる構成を考えることがより重要である。
【0048】
集合配管の最上流側から供給するパージガスは、詳細は後述する特殊3方弁において、ダイヤフラム側から中央の孔の反ダイヤフラム側に流れるようにする。プロセスガス(または希釈済のプロセスガス)はその逆で、特殊3方弁において、中央の孔の反ダイヤフラム側からダイヤフラム側へ流れ出るようにする。こうすれば、パージガスに切り替わった際に最上流から流れだしたパージガスが、プロセスガスをデッドボリュームなしに下流に押し流すことができる。すなわち、特殊3方弁は、ガス流れを遮断すること無くガスが通過できるダイヤフラム側のガス流路で集合配管そのものを形成し、特殊3方弁のダイヤフラムの開の動作により流出させるプロセスガスを集合配管に合流させるように構成されている。
【0049】
このような構成にすることで、プロセスガス(または希釈済のプロセスガス)に対してデッドボリュームを抑制しつつガスパージできるガス供給装置を構築できる。パージガスを流出させる最上流のガスバルブは、ダイヤフラムの開の動作により流量制御済のパージガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、プロセスガスが集合配管に流出したときの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、集合配管の最上流終端として、デッドボリュームを有しない。
【0050】
また、ガス供給装置は、ダイヤフラムにより開閉動作を行う3方弁と、処理用ガスの流量制御器と、当該処理用ガスを希釈する希釈ガスの流量制御器を個別に有し、処理用ガスの流量制御を行うために、前記3方弁には、ダイヤフラム側にガス流れを遮断すること無く希釈ガスが通過できるガス流路が形成されており、前記3方弁のダイヤフラムの開の動作により処理用ガスを流出させて前記希釈ガスが通過できる前記ガス流路に合流させるように構成されていることが望ましい。このとき、希釈用のガス(希釈ガスともいう)を流出させる流量制御器の下流のガスバルブは、流量制御済の希釈ガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ流出させる向きに配置され、ガス流路に合流されたプロセスガスの接ガス部をダイヤフラムの中央押しつけ部だけにして、ガス流路の最上流終端として、デッドボリュームを有しない。ここで、接ガス部とは、反応ガスが拡散して表面に接する部位である。
【0051】
さらに、ガス供給ブロックで間欠的(サイクリック)にガスを処理室に供給する場合において、パージガスおよび使用するガス種の前記流量制御器では常にガス流量制御をさせながら、処理室に至る供給配管に繋がる集合配管に配設したバルブ、もしくは捨てガスのため排気系に繋がる集合配管に配置したバルブを交互に開閉して、処理室への当該ガスの間欠供給を行い、かつ集合配管の最上流に配設した前記パージガス用のバルブから、当該ガスの供給ラインとは異なる供給ライン側にパージガスを流すことによって、両方の集合配管、両方の供給配管に常にガスを流すことができる。
【0052】
特に、処理用ガスを間欠供給するガス供給ブロックが2つ以上存在する場合、それぞれのガス供給ブロックから供給される処理用ガスを、処理室、もしくは排気系に対して同時に供給されないように、例えばインターロックなどにより、集合配管を形成している処理用ガスの供給バルブの同時開閉を禁止してもよい。
【0053】
また、集合配管の最上流からパージ用ガスを供給しながら、処理用ガスを前記集合配管の途中に流出させることもできる。試料の処理後、処理用ガスの供給を止めて、パージ用ガスを、供給ラインと排気ラインへ同時に流す工程を行ってもよい。
【0054】
プロセスガスの希釈部の構成について以下に述べる。希釈ガス用の2方弁は、ダイヤフラム側に希釈ガスを導入し、中央の孔の反ダイヤフラム側に流出させる。その下流のプロセスガス用の特殊3方弁では、流出させた希釈ガスをダイヤフラム側で連通して流し、プロセスガスを中央の孔の反ダイヤフラム側から希釈ガスの流れるダイヤフラム側に流出させる。構成はパージガス用の場合と同様であるが、プロセスガス用バルブと希釈ガス用バルブは同時に開くことができるように制御する。むしろ希釈用のバルブを先に開き、プロセス用のバルブを後で開くことにより、高濃度の十分に希釈されていないプロセスガスの流出が抑制できる。この構成でプロセスガスに対してプロセスガスのデッドボリュームからの流出なしに希釈ガスを添加することが可能となる。
【0055】
また処理の最終ステップで、これ以上プロセスガスを流す必要のない段階にきたら、プロセスガスのバルブを先に閉じ、希釈ガスだけを流すような処理を実施してもよい。特に腐食性を有するガスについては、ダイヤフラム側を清浄に保ち、腐食性ガスの濃度を低下させるのに効果が得られるガスの制御方法である。
【0056】
本発明のガス供給装置によれば、パージが必要なプロセスガスにはパージガスを、希釈が必要なプロセスガスには希釈ガスをそれぞれデッドボリュームなしに供給可能とし、真空処理装置として必要なガスの置換速度をバルブ切り替え時間(通常サブセカンド内)で制御でき、ガス処理性能(加工精度の向上や処理時間の低下)の向上に貢献できる。さらにチャンバーライン(供給配管)と排気ライン(排気系)の双方とも常にガスが流されること、また、これらラインの最終段にガスバルブを設けることにより、他ガスや反応生成物の逆拡散を抑制できる。すなわち、試料のプロセス処理中は、全てのガス供給ブロックの処理室に供給する側の集合配管の上流側から常にパージガスを流し、所定のプロセスガスを各処理ステップの進行状況に従って、集合配管を形成する各プロセスガス用の処理室供給バルブの開閉で使用ガスを選択しながら処理を施すことによって、いずれのガス供給ブロックの処理室への供給配管にも、常にガスを流すことができる。
【0057】
このため最先端のデバイスのエッチングや成膜、アッシング、更にはALDやALEによる加工を行う真空処理装置に対してガスを供給する際に、ガスラインからのパーティクルを抑制しつつ高精度のガス切り替えの制御ができるガス供給装置を提供できる。その結果、真空処理装置の高精度な加工によるデバイスの性能向上や、毎回の加工の再現性を確保でき、かつパーティクル低減による歩留の改善を図ることができる。
【0058】
以下、本発明の各実施形態を、図1図12を用いて、具体的に説明する。
【0059】
[実施形態1]
本実施形態にかかるガスの流れや流路を制御するガス供給装置及びガス供給方法について説明する。図1において、ガス供給装置に連結された真空処理装置(全体を図示せず)は、被加工物1(試料)が搭載されるステージ2を内部に収蔵し、大気とは隔絶し所定の内圧に設定されるチャンバー3(リアクター等)を備える。
【0060】
ステージ2に対向したチャンバー3の上部には、ガス分散室4(副室)が設けられている。そのガス分散室4の内部には、上方より天板5、スペーサ6a、ガス分散板7a、スペーサ6b、ガス分散板7b、スペーサ6c、シャワープレート8がこの順序で設けられている。チャンバー3の上端外周近傍の大気側には、赤外光の発生源であるハロゲンランプ10がシャワープレート8の周囲を取り巻くように備えられている。外方をカバー12で覆われたハロゲンランプ10から照射された赤外光は、透過窓11を介して、被加工物1を含めたチャンバー3の内部に入射する。被加工物1を搬入、搬出するためのゲートバルブ15が、チャンバー3の側壁に取り付けられており、ゲートバルブ駆動軸16により開閉される。
【0061】
チャンバー3の内部のガスは、チャンバー3から複数の排気口(20a、20bにて図示)を介してステージ2の裏面(下方)側で排気配管20に集められ、被加工物1の周辺から均等に排気するように設計されている。排気配管20に集められたガスは、圧力調整弁21でその排気速度が調整されたのち、接続配管26を通ってメインバルブ22に至る。メインバルブ22は、ガス処理中や、被加工物1の搬送中や、被加工物1の投入を待つアイドリング状態のときは開いて、排気通路の一部を構成している。
【0062】
チャンバー3内部の清掃やパーツ交換、メンテナンス等において、チャンバー3を大気開放する場合には、メインバルブ22は閉じられる。メインバルブ22の下流には、ドライポンプ25が接続されており、ガスを排気するために駆動される。ドライポンプ25から排気されたガスは、更に排ガス処理装置等(図示せず)で無害化されたあと、大気中に放出される。チャンバー3の内部、またメインバルブ22とドライポンプ25をつなぐ排気配管27の圧力は、それぞれに接続された圧力計28、29でモニターされている。
【0063】
図1において、真空処理装置に接続されたガスボックス30を破線で囲って示す。ガス供給装置であるガスボックス30は、図示していないエアーオペレートバルブの開閉を制御する複数のソレノイドバルブや、ガス漏洩時の検知機能、さらにガス漏洩時にダクトで筐体排気する機能や、常時ガスボックス30内部空間の陰圧(排気されていること)をモニターする機能、およびこれらの機能を発揮するための部品を有する。図1のガスボックス30では、プロセスガスに直接接触する要素部品のみを記号で記載しており、◎印は、本プロセス装置が設置される建屋以外から供給されるガス源を示しており、12個のガス源のポートには、A~F、L~Qの符号を付した。
【0064】
図1の真空処理装置は、ハロゲンランプ10によって被加工物1に熱エネルギーを供給してガスを活性化させ反応を促進させるプロセス装置である。しかしながら、他のガス励起手段、例えば高周波電源によって発生させるプラズマを利用したり、ガス分散室4内を加熱したりして予め活性なガスを形成して被加工物1に吹き付けるタイプの真空処理装置であってもよい。また、その加工のための励起のタイミングなどが異なっていてもよい。
【0065】
また、チャンバー3からの排気手段については、本実施形態においてはドライポンプ25単体を用いて排気したが、チャンバー3との間にターボ分子ポンプ(図示せず)などの更に大排気量を有する排気手段を採用してもよい。またメカニカル・ブースター・ポンプ等の他の排気手段を用いてもよい。
【0066】
さらに、ガスの導入配管やチャンバー、排気口20a,20b等,排気配管20,接続配管26,排気配管27、および圧力調整弁21やメインバルブ22等を加熱することにより、それらの表面への反応生成物や蒸気圧の低いガス(特に室温で液化しており、加熱してガス化するような材料)の付着そのものを低減させ、ひいては被加工物1への付着低減を行える。本実施形態においても、これらの部品を加熱する手段(図示せず)を有する。具体的は、100℃~250℃で、ガスの流れていく下流に従ってより高温になるように加熱温度を調整した。
【0067】
なお、可燃性ガスのブロックに設けた圧力計38,39、および支燃性ガス制御ブロックに設けた圧力計48、49は、それぞれが取り付けられた集合配管のそれぞれの供給圧が一定の圧力(多くの場合は大気圧)を越えないか、またガスが流れているかをモニターしており、それにより反応生成物等による配管内閉塞やバルブ開閉の不具合を検知することができる。
【0068】
図2に、図1に示したガスボックス30の上側半分のブロック、すなわち可燃性ガスのブロックを集積弁化したガス供給装置を示す。図2では各エアーオペレートバルブを駆動させるためのエアー配管や、流量制御器に必要な電力や電気信号の電線を図示せずに省略した。規格に則って各集積弁用の機器が取り付けられるベース35の上に各機器が取付けられている。
【0069】
また個々の機器の判別を容易にするため、機器に直接器具番号を付した。チャンバー側へガスを供給する集合配管内の圧力を監視する圧力計38、および排気配管側に捨てるガス用の集合配管内の圧力を監視する圧力計39も、この集積弁のベースブロック上に配設されている。取り付け機器の存在しない空きポート42、43では、機器の代わりにガスを通過させるための上フタを取りつけたが、直接上下を連通させただけの規定ブロックを取りつけたり、ベースブロック側に貫通孔を設けたりしてもよい。
【0070】
図3は、図2に取り付けた各機器を取り外し、各機器の取り付け受け側のガス孔の接続を模式的に表した図である。二重丸で示す加工孔はガス流路であり、各孔の下部でつながる流路は破線で示した。特殊3方弁の設置部は3つの二重丸を有し、2方弁の設置部は2つの二重丸を有する。特殊3方弁では中央の孔がダイヤフラムで開閉させる通路であり、周囲の孔がガス流のイン及びアウト用であり、ダイヤフラム側で常に連通している。2方弁では、中央の孔が反ダイヤフラム側でダイヤフラムの開閉で連通させる通路あり、周辺の孔がダイヤフラム側である。C、E系列で流量制御され、それぞれB、D系列からの希釈ガスに混合されたプロセスガス、およびF系列で流量制御されたプロセスガスが、最上流側のA系列の下流に特殊3方弁で形成されたそれぞれの集合配管(ガスマニホールド)に導入される。
【0071】
本実施形態において、ガスボックス30の上半分のブロック(ポートA~Fを含む)と、下半分のブロック(ポートL~Qを含む)については同じ構成を採用するが、上半分のブロック(ガス供給ブロック)を可燃性ガスの制御に、下半分のブロック(ガス供給ブロック)を支燃性ガスの制御に用いた。各ポートに供給されるガス種を具体的に記すと、可燃性ガスのブロックではA:Ar、B:Ar、C:NH、D:Ar、E:CH、およびF:Hである。一方、支燃性ガスのブロックでは、各ポートに供給されるガス種は、L:Ar、M:Ar、N:NF、O:Ar、P:Cl、およびQ:Oである。さらに混合できないガス種をまとめて、3系統、4系統とブロックと供給ラインを増設させてもよいが、本図では2系統の場合を例として記載した。すなわち、共通の集合配管内および供給配管内で混合できないガス種ごとにガス供給ブロックを形成し、集合配管はそれぞれのガス供給ブロックごとに設けている。
【0072】
図1で、それぞれのガス源からポートA~F、L~Qを経てガスボックス30内に導入された各プロセスガスは、手動バルブHV*(ただし、*は各ポートに対応するA~F、L~Qのいずれかの符号とする、以下同じ)を経て、上流側のバルブG3*を経由し、流量コントローラFC*で流量コントロールされて、下流側のバルブG2*へと導かれる。そしてそれぞれのプロセスガスは、チャンバーに向かうラインのバルブG1C*、もしくは捨てガスで排気ラインへの向かうラインのバルブG1E*を介して流出させられる。ここで、ガス源からポート*を経て下流に流れるガスの流路を、*系列という。
【0073】
図1のバルブ表記ではバルブの取り付けの方向を明確にするために、ダイヤフラム側接続ポートを常時(ノーマル)閉(ソレノイドバルブ非励起時、エアー供給の無いときは閉じている)側のポートとして黒塗り三角(▲)で示した。従って駆動のためのエアー記号の丸で囲んだAは、この黒塗り三角(▲)の頂点側に表記されている。一方常時ダイヤフラムの周辺で連通しているバルブのポート側を白抜き三角(△)で示した。従って、2方弁も90度の角度で黒塗り三角(▲)と白抜き三角(△)が表記されているが、通常の90度で表記されるL型バルブとなるとは限らない。
【0074】
図1の可燃性ガスのブロックは、A系列からF系列を通過するガスが混合して流れる2つの集合配管(チャンバーライン及び排気ライン)を有し、また支燃性ガスのブロックは、L系列からQ系列までガスが混合して流れる2つの集合配管(チャンバーライン及び排気ライン)を有する。
【0075】
可燃性ガスのブロックにおいて、バルブG1CAからガスバルブGCF1までをチャンバーラインの集合配管(または第1供給配管)といい、バルブG1EAから排気バルブGEF1までを排気ラインの集合配管(または第1捨てガス配管)という。ガスバルブGCF1を介して、ガスがチャンバー3に供給されてガス処理が行われる。また、排気バルブGEF1を介して、ガスが排気配管27に排気されチャンバーを経由せずに流出する。
【0076】
また、支燃性ガスのブロックにおいて、バルブG1CLからガスバルブGCF2までをチャンバーラインの集合配管(または第2供給配管)といい、バルブG1ELから排気バルブGEF2までを排気ラインの集合配管(または第2捨てガス配管)という。ガスバルブGCF2を介して、ガスがチャンバー3に供給されてガス処理が行われる。また、排気バルブGEF2を介して、ガスが排気配管27に排気されチャンバーを経由せずに流出する。
【0077】
可燃性ガスのブロックにおける集合配管の最上流側のA系列、並びに支燃性ガスのブロックにおける集合配管の最上流側のL系列は、ガス処理中、もしくは被加工物1の搬入/搬出中に常時流出させるパージガス(本実施形態ではArガス)の流路として設けた。なお、可燃性ガスのブロックと、支燃性ガスのブロックはほぼ同様であるため、主に可燃性ガスのブロックについて、以下説明する。
【0078】
可燃性ガスのブロックのバルブには、空圧で駆動させるダイヤフラムを用いて流路を開閉するエアーオペレートバルブを採用しており、これらのバルブは不図示の制御装置を介してレシピに従い自動的に開閉される。
【0079】
図4は、図2のブロックにおいてX-X線で切断した断面図である。図4において、特殊3方弁(単に3方弁ともいう)である2つのバルブGC1E、GC1Fが、流路を有するベース35に、ベースブロック35a、ベースブロック35bを用いて取り付けられている。図示していないが、ベース35には、その他のバルブGC1*も、ベースブロック35a、ベースブロック35bを用いて、同様に取りつけられている。バルブGC1E、GC1Fは共通する構成を有するため、バルブGC1Eについて、以下説明する。
【0080】
エアーオペレートバルブであるバルブGC1Eは、不図示のエア源からのエア圧を受けて駆動軸DSを上下に移動させるエアーシリンダーの駆動部DRが、バルブブロック36に固定されている。駆動軸DSの先端で中央の孔に対して開閉する周囲で固定保持されたダイヤフラムKが配設されている。
【0081】
駆動軸DSがスプリングで下方に押されており、制御信号に応じて変位してダイヤフラムKを押圧する。押圧されたダイヤフラムKが中央の孔を閉鎖することで、実線の矢印で示すE系列のガスの流れを中断する。一方、点線で示す集合配管(マニホールド)側は、ダイヤフラムKの下方周囲で常時連通している。エアーが供給されて、駆動軸DSが上方に変位すると、ダイヤフラムKの中央が浮き上がり、中央の孔が開放されるため、実線の矢印で示すE系列のガスが、点線の矢印で示すように集合配管側へと流れ出る。
【0082】
図4から明らかなように、バルブGC1Eの下流側の通路は、バルブGC1Fの上流側の通路と連通している。したがって、バルブGC1E、バルブGC1Fの動作に関わらず、バルブGC1Eの上流側の通路からバルブGC1Fの下流側の通路まで常時連通しており、点線の矢印で示すように、A系列のガスは常時、通路内を流れることとなる。これら通路により集合配管の一部を形成する。
【0083】
可燃性ガスのブロックにおいて、ガスの合流部として配置されたバルブG1CC,G1CE,G1CF,G1EA,G1EC,G1EE,G1EF,G2C,G2E,が特殊3方弁となる。それ以外のバルブ(2方弁ともいう)は、ベース35に入口流路と下流側の流路のみが形成された箇所に取り付けられ、駆動軸の変位によってダイヤフラムが入口流路を開閉する構造を備える。バルブとして、本実施形態ではダイヤフラムによるシール方法を用いたダイヤフラムバルブで示したが、ベローズ駆動で軸の先端そのものにより中央の孔の入口流路をシールするベローズバルブを用いてもよい。
【0084】
ここで、ダイヤフラムを用いたバルブにおいては、周囲の孔側をダイヤフラム側とし、中央の孔側を反ダイヤフラム側として定義する。
【0085】
図1において、B系列は、プロセスガスCの希釈ガス制御流路、またD系列はプロセスガスEの希釈ガス制御流路である。B系列、D系列の流量コントローラFCB,FCDの下流に設けたバルブG2BおよびG2Dは、ダイヤフラム側から希釈ガスB,Dが入り、バルブ開状態のときに反ダイヤフラム側へ流出させる配置とした。C系列、E系列の流量コントローラの下流に設けたバルブG2CおよびG2Eについては、プロセスガスC,Eがバルブ開状態でダイヤフラム側から反ダイヤフラム側に流れ出る配置とした。
【0086】
バルブG2CおよびG2Eの周囲の孔のダイヤフラム側は、希釈ガスB,D用のバルブG2BおよびG2Dのそれぞれの反ダイヤフラム側と常時繋がっている。この構成にすることで、レシピ設定におけるそれぞれのステップの制御において、希釈ガスを用いないときはB系列もしくはD系列を起動させずに、バルブG2BもしくはG2Dは閉じておけばよい。これにより、C系列およびE系列のプロセスガスC,Eを使うステップでは、ガスが希釈されずに使用される。
【0087】
このとき使用されるプロセスガスC,Eは、バルブG2BもしくはG2Dの反ダイヤフラム側まで逆流して、拡散される。次のステップ制御で希釈が開始される場合には、B系列が起動されバルブG2Bが開き、もしくはD系列が起動されてバルブG2Dが開く。このとき前のステップ制御で、バルブG2BもしくはG2Dの反ダイヤフラム側まで拡散してきていたそれぞれのプロセスガスC,Eは、希釈ガスB.Dの供給開始とともに下流に押し戻されるが、一切の合流配管やデッドボリュームなしに希釈が開始できる。希釈が無いステップの制御を開始した場合は、バルブG2BもしくはG2Dの中央の孔の反ダイヤフラム側に希釈ガスB、D(ここではAr)が残留するが、一般的にパージガスであり反応性がないので何らガス処理に影響を与えることはない。
【0088】
次に、可燃性ガスのブロックの最上部に設けたパージラインの役割と、その制御について説明する。ガス分散室4の上部に設けた一方のガスバルブGCF1は、可燃性ガスのチャンバー供給のための最終段のバルブである。また他方のガスバルブGCF2は、支燃性ガスのチャンバー供給のための最終段のバルブである。
【0089】
これらのガスバルブGCF1,GCF2からノズル9b、9aを介してチャンバー3に流出させられるプロセスガスは、スペーサ6a~6cやガス分散板7a、7bを経て、被加工物1に対向するシャワープレート8の外周に至るまで径方向に均等に分散される。被加工物1の加工に適切な径のガス流出面積を得るために用いられる一般的な手法である。
【0090】
ただし本実施形態の場合は、可燃性ガスがシャワープレート8の外周側から、支燃性ガスがシャワープレート8の中央側からそれぞれ分かれて流出するようにした。ガス分散室4は、実際の真空処理装置の場合も模式図である本図と同様に、上部のガスバルブGCF1,GCF2を出たプロセスガスは、他方のガスと混在することなく、シャワープレート8の裏面までガス流路を拡大させる構造を有する。
【0091】
このような構成の真空処理装置において、チャンバー3の内部空間にプロセスガスが導入されて、そこで初めて他の性質を有するプロセスガスと混合するように制御することが望ましい。例えば可燃性のガスを流さない場合、使用している支燃性ガスが逆拡散するおそれがある。具体的には、ガスバルブGCF1が閉じられた状態では、その反ダイヤフラム側まで支燃性ガスが拡散し、ガスバルブGCF1が閉じられてない場合は、さらに上流の可燃性ガスの集合配管部まで拡散するおそれがある。また、支燃性のプロセスガスのみならず、反応生成物も逆拡散で可燃性のガスラインに侵入してくるおそれもある。
【0092】
また、可燃性ガスの供給を止めて、次に可燃性ガスの供給を再開した場合、このガス分散室4の中やガス供給ラインの中でガス混合が起こってしまうおそれがある。かかる場合、支燃性ガス侵入による腐食や、反応生成物の持ち込みや反応生成物の新たな形成によるメタルコンタミネーションや異物(パーティクル)発生等の不具合を招く。
【0093】
この問題を解決するためには、可燃性ガスのブロックから、可燃性ガスを使用しないときも常時パージガスを流し続けることが有効である。本実施形態においては、まずガス処理中には、それぞれのブロックの最上流に設けたパージラインからパージガスを流し続ける制御を基本にした。このガス制御を実施する場合は、A系列のガス制御ラインを起動させて、常時バルブG1CAを開いて、集合配管にパージガスを流すことになる。
【0094】
レシピ設定のステップ制御に従って、必要な可燃性ガスのプロセスガス、もしくはその希釈ガスが、可燃性ガスのブロックにおける集合配管にてパージガスと混合される。C系列のガスはバルブG1CCで、E系列のガスはバルブG1CEで、F系列のガスはバルブG1CFで、上流側のバルブG1CAを通って供給されるパージガスと混合される。可燃性ガスを一切流さないときは、前出のように、パージガスだけが流されることとなる。下側の支燃性ガスのブロックの制御においても同様である。
【0095】
次に同じ図1の装置において、ALDやALE、ボッシュプロセスなどのガスをサイクリックに切り替えてガス処理をする場合の制御を考える。これらのガス処理の制御においては、チャンバー3の内容積や被加工物1の表面積、その被加工物1での反応速度等を勘案しながら、ガス流量やガスを流す時間、切り替えの回数や順番を配慮する。多くのガス処理においては、チャンバー3の圧力が極端に変化しないように工夫することが肝要である。
【0096】
ガス圧がガス切り替え等で極端に変わるような場合は、全体のガス流れに変化が生じて、処理毎の再現ある性能が得られなかったり、被加工物1へのパーティクル付着を招いたりすることになり好ましくない。
【0097】
本実施形態において、ガスをサイクリックに切り替える場合には、最上流側に設置したパージガスのラインと、プロセスガスライン(1系列、もしくは複数系列ガス)とにガスを同時に流して、チャンバーへの供給ラインと捨てガスのための排気ラインの互いに反対のラインにそれぞれ流すことにした。
【0098】
基本的には、ガスを流し始めたらガス流量の調整はできるだけ抑制して、パージガスもプロセスガスも一定流量で制御して流す。パージガスをチャンバー側に流している内は、プロセスガスは排気ラインの集合配管を介してチャンバーより下流に流出させる。プロセスガスをチャンバー側に流す場合は、パージガスは排気ラインの集合配管を介してチャンバーより下流に流出させる。
【0099】
本実施形態によれば、ほぼ同時に4個(もしくは6個、8個)のガスバルブの開閉を切り替えるだけで、それぞれのガスの供給先をチャンバーか、チャンバーより下流かに切り替えることができ、被加工物1に対してはサイクリックにガスの切り替えが実施されることになる。前出の制御方式と同じで、チャンバー供給ラインにおいては、ガスを流さない時間が無いように制御する。排気ラインについても同様にガスを流さない時間は設けないように制御することは同じである。
【0100】
以上、本実施形態について、整理して記載する。性質が異なるガスを共通に供給可能な集合配管を有するブロックの最上流にパージガスのラインを設置して、ガス処理を行うチャンバーにガスを供給するチャンバーラインと、チャンバー外へガスを流出させる排気ラインを設ける。また、パージガスを最上流から流すそれぞれの供給先の集合配管に、プロセスガスを供給添加できるバルブを設ける。
【0101】
このプロセスガスを供給添加するガスバルブに特殊3方弁を用いて、ダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へプロセスガスを流すことができるようにする。特殊3方弁のダイヤフラム側の周辺部は、全てのプロセスガスを供給添加するためのバルブ間で連通させて、集合配管を形成している。
【0102】
同様に、希釈が必要なプロセスガスについては、プロセスガスをダイヤフラム側から反ダイヤフラム側へ供給する3方弁のダイヤフラム側に、希釈ガスを供給する上流の2方弁の反ダイヤフラム側を接続する。こうして、プロセスガスに対してデッドボリュームなしに流し始めることのできる希釈ラインを構築することを基本としている。
【0103】
以下、具体的なガス供給方法の例を説明する。図5は、処理レシピにおけるガス処理のステップを示すフローチャートである。被加工物1であるウエハの搬送中は、一切のガスを流さない真空引きの下で実施されても良いし、不活性なガスを処理室3にパージングされた下で実施されても良い。本実施形態においては、被加工物1であるウエハの搬送中(搬入時、搬出時)にも継続してガスパージする場合について記載する。
【0104】
またサイクリックにガスを切り替える処理以外の処理ステップの詳細は記載しなかったが、このサイクリックにガスを切り替えるためのステップS102の前処理を実施する以前に、すなわちステップS101のウエハ搬入後に、異なる別処理ステップが挿入されて実施されていても良い。更に同様に、ステップS103~S106によるサイクリックに繰り返されたステップが規定回数、もしくはエッチングの終点を検出して終了し、再びステップS101においてガスパージステップが実施される前に、すなわち後処理のステップS107の完了後に、異なる別処理のステップが挿入されて実施されても良い。
【0105】
また本実施形態では、サイクリックにガスを切り替える処理ステップは、全体の処理の中で1ランの実施として記載したが、ガスの種類を切り替えたりして複数回のサイクリックにガスを切り替える処理を、1枚の被加工物1であるウエハの処理の中で実施してもなんら問題はない。
【0106】
図6図12は、可燃性ガスのブロックと支燃性ガスのブロックにおけるそれぞれのステップS101~S107でのガスの流れを矢印で示した図である。ここでは、A系列のパージガスA(Ar)と、D系列の希釈プロセスガス(Ar)、E系列のプロセスガスE(CH)と、L系列のパージガスL(Ar)と、P系列のプロセスガスP(Cl)を用いて、ガスをサイクリックに切り替えて処理をする場合のガス処理の制御の様子を示すもので、それ以外の図6図12で示される他の系列のガスバルブは閉じている。
【0107】
まず、図5のステップS101でのガスパージステップの設定は、被加工物1であるウエハの処理完了後にチャンバー3からの搬出を行う前に設定された状態を引き継いでいる。バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御されている。
A系列:G1CA(開)、G1EA(閉)、G2A(開)、FCA(300ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(閉)、FCD(0ml/min)、G3D(閉)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(閉)、G2E(閉)、FCE(0ml/min)、G3E(閉)
L系列:G1CL(開)、G1EL(閉)、G2L(開)、FCL(300ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(閉)、G2P(閉)、FCP(0ml/min)、G3P(閉)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(閉)
チャンバー3の圧力は100Paとなるように制御されている。
【0108】
以上の制御により、図6に示すように、パージガスA(Ar)、パージガスL(Ar)がチャンバー供給ラインを介してチャンバー3に提供されてパージが実施されるが、プロセスガスE(CH),P(Cl)は供給されない。この間に被加工物1である処理前のウエハがチャンバー3内のステージ2の上に搬入される。搬入後はゲートバルブ15が閉じて、処理を実施されるチャンバー3は、搬送系(図示せず)と隔絶される。この搬入操作完了後に、処理ステップが起動されて、まずこのステップS101でのガスパージステップが数秒間継続される。
【0109】
次に、図5のステップS102において、ガスをサイクリックに切り替える場合の前処理を行う。かかる場合、ステップS102の前処理においては、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、チャンバー3のガスの制御圧力は200Paで制御される。
A系列:G1CA(開)、G1EA(閉)、G2A(開)、FCA(150ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(開)、FCD(120ml/min)、G3D(開)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(開)、G2E(開)、FCE(30ml/min)、G3E(開)
L系列:G1CL(開)、G1EL(閉)、G2L(開)、FCL(150ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(開)、G2P(開)、FCP(150ml/min)、G3P(開)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(開)
【0110】
以上の制御により、図7に示すように、パージガスA(Ar)、L(Ar)がチャンバーラインを介してチャンバー3に供給されてパージを継続するとともに、希釈プロセスガスD(Ar)で希釈されたプロセスガスE(CH)とプロセスガスP(Cl)が捨てガスとして、排気ラインを介してチャンバー3より下流に排気される。約3秒の制御時間の内にFC*で制御される流量コントローラは、ほぼ安定な流量に到達する。流し始めの制御が不安定な間のガスは、排気系に捨てられるので、被加工物1であるウエハの処理に寄与しない。
【0111】
次に、図5のステップS103において、1回目のプロセスガス供給1を行う。かかる場合、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、チャンバー3のガスの制御圧力は200Paで、ステップ時間は2.0秒である。
A系列:G1CA(開)、G1EA(閉)、G2A(開)、FCA(150ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(開)、FCD(120ml/min)、G3D(開)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(開)、G2E(開)、FCE(30ml/min)、G3E(開)
L系列:G1CL(閉)、G1EL(開)、G2L(開)、FCL(150ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(開)、G1EP(閉)、G2P(開)、FCP(150ml/min)、G3P(開)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(開)
【0112】
以上の制御により、図8に示すように、可燃性のブロック側は、ステップS102の状態を保っているが、一方支燃性のブッロック側では、プロセスガスP(Cl)がチャンバー供給ラインを介してチャンバー3に提供されてガス処理を行うとともに、パージガスL(Ar)が排気ラインをパージする。
【0113】
次に、図5のステップS104において、1回目のパージ1を行う。かかる場合、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、ガスの制御圧力は200Paで、ステップ時間は2.7秒である。
A系列:G1CA(開)、G1EA(閉)、G2A(開)、FCA(150ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(開)、FCD(120ml/min)、G3D(開)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(開)、G2E(開)、FCE(30ml/min)、G3E(開)
L系列:G1CL(開)、G1EL(閉)、G2L(開)、FCL(150ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(開)、G2P(開)、FCP(150ml/min)、G3P(開)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(開)
【0114】
以上の制御により、図9に示すように、ステップS102と同じ状態に戻る。支燃性ブロック側では、パージガスL(Ar)がチャンバー供給ラインに残留するプロセスガスP(Cl)を配管内からパージする。チャンバー3内の残留ガスもパージされる。
【0115】
次に、図5のステップS105において、2回目のガス供給2を行う。かかる場合、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、ガスの制御圧力は200Paで、ステップ時間は0.5秒である。
A系列:G1CA(閉)、G1EA(開)、G2A(開)、FCA(150ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(開)、FCD(120ml/min)、G3D(開)
E系列:G1CE(開)、G1EE(閉)、G2E(開)、FCE(30ml/min)、G3E(開)
L系列:G1CL(開)、G1EL(閉)、G2L(開)、FCL(150ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(開)、G2P(開)、FCP(150ml/min)、G3P(開)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(開)
【0116】
以上の制御により、図10に示すように、希釈プロセスガスD(Ar)で希釈されたプロセスガスE(CH)がチャンバー供給ラインを介してチャンバー3に提供されてガス処理(表面付着)を行うとともに、パージガスA(Ar)が排気ラインをパージして、排気系からの逆流を防止する。一方支燃性ブロック側は、ステップS104の状態を保っている。
【0117】
次に、図5のステップS106において、2回目のパージ2を行う。かかる場合、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、ガスの制御圧力は200Paで、ステップ時間は9.8秒である。
A系列:G1CA(開)、G1EA(閉)、G2A(開)、FCA(150ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(開)、FCD(120ml/min)、G3D(開)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(開)、G2E(開)、FCE(30ml/min)、G3E(開)
L系列:G1CL(開)、G1EL(閉)、G2L(開)、FCL(150ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(開)、G2P(開)、FCP(150ml/min)、G3P(開)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(開)
【0118】
以上の制御により、図11に示すように、ステップS104と同様に制御される。この間に、ハロゲンランプ10を一定時間(約5秒)稼働させて、被加工物1であるウエハを加温して反応を促進させて揮発性の高い反応生成物を発生させ飛散させることでエッチングが進行する。
【0119】
このように、ガスの供給量を制御することで反応を制御し、所望のエッチング量になるまでステップS103~S106を順に繰り返して実行する。1サイクルの所要時間は、本実施形態においては約15秒であった。
【0120】
次に、サイクリックなガス供給によるエッチングが終了したら、図5のステップS107において、後処理を行う。かかる場合、バルブの開閉と流量コントローラの調整流量は、以下のように制御する。ただし、ガスの制御圧力は200Paである。
A系列:G1CA(開)、G1EA(開)、G2A(開)、FCA(300ml/min)、G3A(開)
D系列: G2D(閉)、FCD(0ml/min)、G3D(閉)
E系列:G1CE(閉)、G1EE(閉)、G2E(閉)、FCE(0ml/min)、G3E(閉)
L系列:G1CL(開)、G1EL(開)、G2L(開)、FCL(300ml/min)、G3L(開)
P系列:G1CP(閉)、G1EP(閉)、G2P(閉)、FCP(0ml/min)、G3P(閉)
チャンバー供給ガスバルブ:GCF1、GCF2(開)
排気捨てガスバルブ :GEF1、GEF2(閉)
【0121】
以上の制御により、図12に示すように、パージガスA(Ar)、パージガスL(Ar)がチャンバーラインを介してチャンバー3に供給されパージを行うとともに、排気ライン中に残留したプロセスガスE(CH)、プロセスガスP(Cl)をパージすることができる。この間に、被加工物1であるウエハの温度調整等を実施しても良い。
【0122】
被加工物1であるウエハの処理が全て終わったら、ステップS101における搬出のためのガス流量の制御を実施する。この状態は図6と同様で既に述べた通りである。
【0123】
[実施形態2]
他の実施形態について図13を用いて説明する。本実施形態が、図1に示す実施形態と異なる点は、バルブの設置態様である。具体的には、排気ラインへプロセスガスを流すための特殊3方弁であるバルブG1EC’、G1EE’、G1EF’、G1EN’、G1EP’、G1EQ’において、反ダイヤフラム側を排気ラインの集合配管に接続している。
【0124】
これらのバルブでは、ダイヤフラム側にプロセスガスを導き、そこからG1C*バルブの反ダイヤフラム側へガスを送り出している。これらのバルブが駆動して開くと、反ダイヤフラム側へプロセスガスを導き、ベース35で形成された捨てガス排気ラインの集合配管に合流させている。従って集合配管には模式図である図13からも明らかなように、枝配管によるデッドスペースが存在する。捨てガスの集合配管におけるデッドスペースを許容できる場合は、この図13の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1: 被加工物
2: ステージ
3; チャンバー
4: ガス分散室
5: 天板
6a、6b、6c: スペーサ
7a、7b: ガス分散板
8: シャワープレート
9a、9b: ノズル
10: ハロゲンランプ
11: 透過窓
15: ゲートバルブ
16: ゲートバルブ駆動軸
20a、20b: 排気口
20: 排気配管
21: 圧力調整弁
22: メインバルブ
25: ドライポンプ
26: 接続配管
27: 排気配管
28: 圧力計(チャンバーライン用)
29: 圧力計(排気ライン用)
30: ガスボックス
35: ベース
38: 圧力計(可燃性/チャンバーライン集合配管)
39: 圧力計(可燃性/排気ライン集合配管)
48: 圧力計(支燃性/チャンバーライン集合配管)
49: 圧力計(支燃性/排気ライン集合配管)
42: 空きポート
43: 空きポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13