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特許7228086導電性ペーストを用いた導電性ピラーの製造方法
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  • 特許-導電性ペーストを用いた導電性ピラーの製造方法 図1
  • 特許-導電性ペーストを用いた導電性ピラーの製造方法 図2
  • 特許-導電性ペーストを用いた導電性ピラーの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】導電性ペーストを用いた導電性ピラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
H01L21/92 604E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018140211
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020017656
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮太
(72)【発明者】
【氏名】千手 康弘
(72)【発明者】
【氏名】矢田 真
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/173059(WO,A1)
【文献】特開2016-018915(JP,A)
【文献】特開2003-59958(JP,A)
【文献】特開2009-302511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1μm以下の銅微粒子を40以上95質量%濃度未満の範囲で含有する導電性ペーストを用いて電極部を有する基板上に導電性ピラーを製造する方法であって、
大気圧10kPa以下の雰囲気中で、電極部を有する基板上に開口パターンが形成された樹脂表面に導電性ペーストを塗布する第一工程と、
導電性ペーストを塗布した後に標準気圧に戻し、開口部に導電性ペーストを充填させる第二工程と、
樹脂表面に残った前記導電性ペーストを除去する第三工程と、
さらに、300℃以下の範囲でピラーを焼結し、銅微粒子同士をネッキングさせる工程と、
を有する導電性ピラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電性ペーストを塗布する工程及び導電性ペーストを除去する工程に、ゴム製又は金属製スキージを使用することを特徴とする請求項1記載の導電性ピラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の導電性ペーストを塗布する工程を、スクリーン印刷により行うことを特徴とする請求項1記載の導電性ピラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の電極部を有する基板上に形成された開口パターンの直径が50μm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の導電性ピラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ内において、半導体チップとパッケージインターポーザの接続方式であるフリップチップ実装の端子である、導電性ピラー(Pillar)あるいは導電性ポスト(Post)の製造方法に関する。本発明の製造方法は、金属微粒子を含有する導電性ペーストを使用することを特徴としている。
【背景技術】
【0002】
半導体装置においては、半導体チップ上に電子回路を製造し、半導体チップ上の電極と半導体パッケージ上の電極とを接続して製造される。従来、半導体チップ上の電極と半導体パッケージ上の電極との間は、金あるいは銅製のボンディングワイヤを用いて電気的に接続されていた。また、半導体チップと半導体パッケージの間の電気的な接続方法としてフリップチップ法が用いられている。フリップチップ法における代表的な接続方法として、金バンプやはんだバンプが用いられている。
【0003】
しかしながら、近年のチップの高集積化に伴い、最近は導電性ピラーを用いたフリップチップ実装技術が注目されている。導電性ピラーは、半導体チップ上に製造し、ピラー先端を半導体パッケージの電極と接続する。導電性ピラーとしては、ピラー直径70μm以下、ピラー高さが50~60μmのものが一般に用いられている。
【0004】
導電性ピラーには、様々な金属種(金、はんだ、銅などの各種金属や合金等)を用いることができる。金属種に金や銅を用いた場合には、はんだに比べて低電気抵抗であることから、大電流にも対応できる。また、導電性ピラーは、はんだバンプと比較して、はんだ供給量を抑えることができるため、バンプピッチの微細化が可能であり、高集積化にも対応可能である。加えて、導電性ピラーは、半導体チップ上の電極から半導体パッケージ上の電極に至るまで同じ断面積を維持できることからも、大電流に対応可能であるという利点をも有する。
【0005】
上記理由により、導電性ピラーの作製は半導体実装において重要であり、導電性ピラーを歩留まり良く、かつ、簡便に製造する方法が望まれている。
【0006】
基板上に導電性ピラーを製造する方法として、メッキ技術を利用した方法が知られている。
特許文献1、2によると、シード層と呼ばれるメッキ層を電極パッド上に作製し、電解メッキにより銅製の導電性ピラー(銅ピラー)を製造する方法が開示されている。しかしながら、メッキにより導電性ピラーを製造する場合、全面にシード層を設けるため、ピラー作製後にパターニングされたレジスト層及びシード層を除去する工程が必要となる。シード層をエッチングにより除去する工程は、銅ピラーのアンダーカットを生じさせることとなる(特許文献3)。したがって、メッキ法により微細な導電性ピラーを作製することは困難である、という課題が存在する。
また、メッキ技術により導電性ピラーを製造する方法として、無電解メッキを使用する方法も知られている。半導体チップ上にフォトレジスト層を製造し、導電性ピラーを製造する部分のフォトレジスト層を開口し、開口部分に無電解メッキを用いて銅ピラーを製造し、さらに銅ピラーの頂部にはんだメッキ層を製造する方法である。しかしながら、無電解メッキ方法により導電性ピラーの高さ/直径比(アスペクト比)が大きい、すなわち細長い導電性ピラーを製造するためには、直径が小さく深い穴にメッキを成長させる必要が生じる。この場合、開口部に十分な濃度のメッキ液を送り続けなければならず、導電性ピラーの成長が遅くなり、スループットが悪化する。結果、導電性ピラーの直径が目標より細くなる、形状が不安定になる、析出する金属内部にボイドが生じる、等の問題を生じさせる。これら問題は、品質及び再現性の低下を招くという課題がある(特許文献4)。
【0007】
加えて、メッキ法は大量の廃液を再生又は処分する必要があり、環境負荷が大きく設備維持にコストも要することから代替手段が望まれている。
【0008】
メッキ法の代替としてスキージ等であらかじめ導電性ペーストをパターニングされたレジスト層の開口部分に充填し、ピラーを製造する方法を考えることができる。しかし、半導体実装の高密度化・高精細化により、導電性ピラーの直径が小さくなった場合、開口部深くまで導電性ペーストを充填することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2011-029636号公報
【文献】特開2012-532459号公報
【文献】特開2012-015396号公報
【文献】WO2016/031989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、従来方法である電解メッキ法においてはアンダーカットの影響を受けずに微細な導電性ピラーを製造することが困難であるという問題があった。また、無電解メッキ法においてはボイドなく同一形状のピラーを製造することが困難であるという問題があった。
【0011】
アンダーカットを防止できるとともに、再現性良く同一形状の導電性ピラーを提供することが求められる。本発明は、ピラー製造用導電性ペーストを用いて、微細な導電性ピラーを埋め込み法により作製する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金属微粒子を含有する導電性ペーストを減圧状態で塗布した後、大気圧状態に開放することにより、微細かつ高アスペクト比の導電性ピラーを電極部を有する基板上に容易に製造可能であることを見出した。
本発明は、フリップチップ実装の端子である、導電性ピラーの製造に特段の効果を有することを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、
(1)金属微粒子を含有する導電性ペーストを用いて電極部を有する基板上に導電性ピラーを製造する方法であって、
大気圧10kPa以下の雰囲気中で、電極部を有する基板上に開口パターンが形成された樹脂表面に導電性ペーストを塗布する第一工程と、
導電性ペーストを塗布した後に標準気圧に戻し、開口部に導電性ペーストを充填させる第二工程と、
樹脂表面に残った前記導電性ペーストを除去する第三工程と、
を有する導電性ピラーの製造方法。
(2)(1)記載の導電性ペーストを塗布する工程及び導電性ペーストを除去する工程に、ゴム製又は金属性スキージを使用することを特徴とする(1)記載の導電性ピラーの製造方法。
(3)(1)記載の導電性ペーストを塗布する工程を、スクリーン印刷により行うことを特徴とする(1)記載の導電性ピラーの製造方法。
(4)(1)記載の電極部を有する基板上に形成された開口パターンの直径が50μm以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか一記載の導電性ピラーの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、金属微粒子を含有する導電性ペーストを用いて電極部を有する基板上に導電性ピラーを製造する方法である。
本発明を用いることにより、従来技術であるメッキ技術を使用することなく、スキージ等であらかじめ導電性ペーストをパターニングされたレジスト層の開口部分に充填させることでピラーを簡便に製造することができる。
導電性ペーストを用いて電極部を有する基板上に直接ピラーを製造することにより、従来方法による課題であったエッチング時のアンダーカットを解決することができ、微細な銅ピラーの製造が可能となる。
導電性ペーストによるピラー作製は、メッキ液の劣化や、イオンの拡散律速などの制限を受けないため、無電解メッキ法の品質や再現性の課題も解決できる可能性があると考えられる。
【0015】
本発明を用いることにより、埋め込み法においても半導体実装の高密度化・高集積化に耐えうる微細な導電性ピラーを簡便に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る導電性ピラーの製造工程(第一工程)を示す断面模式図。
図2】本発明に係る導電性ピラーの製造工程を示す断面模式図。
図3】本発明の方法により作製した導電性ピラーの断面写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
<導電性ペースト>
本発明に用いられれる、金属微粒子を含有する導電性ペーストの製造方法について以下詳細に説明する。
【0019】
(金属微粒子)
金属微粒子として用いることができる金属種は、当該金属種が後述する保護剤中の官能基と化学的に結合できるものであれば特に制限されない。例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、白金、パラジウム、スズ、クロム、鉛、タングステン等を用いることができる。また、金属種は一種類であっても、二種類以上の混合物、または合金であっても良い。
導電性ペースト中の金属微粒子含有率は、特に制限されるものではないが。開口部分に充填させるには、十分な流動性を確保する必要があることから、40以上95質量%濃度未満の範囲で使用することが好ましい。
【0020】
(金属微粒子の合成)
本発明の金属微粒子の合成方法としては、化学還元方法を採用したが、金属微粒子表面を保護剤より保護することができ、かつ、粒子径が1μm以下であれば、任意の方法を採用することができる。例えば、湿式法として化学還元法のほかに熱分解法、電気化学法を採用することもできる。乾式法としてガス中蒸発法、スパッタ法を採用することもできる。
【0021】
(保護剤)
本発明の保護剤は、金属微粒子や溶剤との親和性を有する官能基を有する化合物を任意に選択することができる。また、使用する保護剤は、分子量の大小にかかわらず使用することができる。使用する金属種や所望する物性に応じて保護剤を設計することで高導電性や分散安定性を金属微粒子に付与することが可能である。
【0022】
具体的には、金属に対しやや強い吸着能を有するカルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、複素芳香族基(例えばイミダゾール基)等を有する保護剤を使用することにより、微粒子に高い分散安定性を付加することができる。
また、金属に対し中程度の相互作用を示し分散媒の液性によって吸着能が変化するアミノ基(例、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基)、ヒドロキシ基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、芳香族基(たとえばベンジル基)等を有する保護剤を使用することにより、低温焼結においても低い体積抵抗率を発現する高導電性を付加することができる。
このように種々の目的に応じて金属微粒子用保護剤を選択することで金属微粒子の特性を自在に変更することができる。低分子量の保護剤を用いる場合は、二種以上の化合物を併用することで様々な特性を発現できる。高分子量の保護剤を用いる場合は、化合物中の官能基の数及び種類を変更することで様々な特性を発現できる。
【0023】
導電性ペースト中の保護剤濃度は、全ペースト中15質量%濃度以下の範囲で使用することができる。より、好ましくは10質量%濃度以下の範囲である。保護剤濃度が高すぎる場合には、焼結時に金属粒子同士のネッキング現象が十分に生じず、高い導電性を発現させることが困難となる。
【0024】
(溶媒)
本発明で用いることができる溶媒としては、特に制限されることはなく、水又は/及び有機溶剤を溶媒として用いることが可能である。前記溶媒は、金属微粒子を凝集させない良溶媒を用いることが、均一な粒子系を有する導電性ペーストを製造する上では好ましい。
【0025】
溶媒は、導電性ペースト焼結時に揮発することが望ましい。しかし、高い焼結温度は樹脂膜を変質させ、ダメージを与えてしまう。したがって、樹脂膜へのダメージが生じない温度範囲に沸点を有する有機溶剤を溶媒として使用することがより望ましい。
【0026】
導電性ペースト中の溶媒濃度は、特に制限されるものではないが、60質量%濃度以下の範囲で使用することが好ましい。
【0027】
(導電性ペーストの作製)
本発明のピラー製造用導電性ペーストは、作製した金属微粒子に充填用のペーストとして使い易い溶媒を加え、あるいは、媒体交換することにより、本発明の導電性ペーストとしての適性を付与することができる。
【0028】
本発明のピラー製造用導電性ペーストには、本発明の効果を損なわせない範囲において、必要に応じて、樹脂等のバインダー成分、乾燥防止剤、消泡剤、基板への密着付与剤、酸化防止剤、皮膜製造促進のための各種触媒、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤の様な各種界面活性剤、レベリング剤、離型促進剤等を助剤として添加できる。
【0029】
本発明の導電性ペーストは、本発明の効果を損なわない範囲内でフラックス成分を加えることができる。フラックス成分を加えることにより、一層の還元力を持たせて使用することもできる。フラックスとしては、通常用いられる一般的なフラックスを用いることが可能であり、特に制限するものではない。このフラックス中には、通常用いられるロジン、活性剤、チキソ剤等が含まれていても構わない。
【0030】
<導電性ピラーの製造方法>
以下、図面を参照しながら、本発明に係る導電性ピラーの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0031】
本発明の導電性ピラーの製造方法は、大気圧10kPa以下の雰囲気中で、電極部を有する基板上に開口パターンが形成された樹脂表面に導電性ペーストを塗布する第一工程と、導電性ペーストを塗布した後に標準気圧に戻し、開口部に導電性ペーストを充填させる第二工程と、樹脂表面に残った前記導電性ペーストを除去する第三工程と、を備えることを特徴としている。図1及び2には、本発明の導電性ピラーの製造方法の一実施形態を示した。
【0032】
(第一工程)
本発明の導電性ピラーの製造方法は、大気圧10kPa以下の雰囲気中で、電極部を有する基板上に開口パターンが形成された樹脂表面に導電性ペーストを塗布する第一工程を有することを特徴とする。
本発明においては、大気圧10kPa以下の雰囲気中で、導電性ペーストを樹脂開口部に塗布することができれば、任意の方法を採用することができる。例えば、ゴムスキージ、ドクターブレード、ディスペンサ、インクジェット等を採用することができる。図1では、参考としてゴムスキージにより導電性ペーストを塗布する方法を例示した。
【0033】
電極部を有する基板とは、支持体2上に電極パッド1が形成されている基板であって、当該基板の電極パッド部分1以外の部分に樹脂膜3を形成したものである(図1)。なお、電極ハッド部分は開口部4となっている。
【0034】
前記基板に導電性ペーストを塗布する前に、基板周囲の雰囲気を大気圧10kPa以下に減圧する。基板周囲の大気圧が10kPa以下にできる方法であれば任意の方法を採用することができる。10kPa以下であれば標準気圧に戻した際にも、気泡の混入を防止できる。10kPaを上回る大気圧では、開口部内に空気がたまり、基板とチップを接合した際に電極との接続不良が発生するため、好ましくない。
【0035】
大気圧を10kPa以下にした後、スキージ6を矢印の方向、すなわち基板に対して平行に移動させ、導電性ペースト5を樹脂表面に塗布する(図1図2(a))。塗布する際の膜厚は、とくに制限されるものではないがピラーを製造するのに十分な量の導電性ペーストを残すことが必要である。したがって、おおよそピラー高さの1/2以上の膜厚で塗布することが好ましい(図2(b))。
【0036】
電極パットの材料について得に制限されるものでなく、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、金、アルミニウム/シリコン/銅合金、チタン、窒化チタン、タングステン、ポリシリコン、タンタル、窒化タンタル、金属シリサイド又はこれらの組み合わせの導電材料を用いても良く、これら金属の表面に導電性ペーストとの密着性を確保するために、密着層として種々の金属を導入することもできる。
【0037】
支持体の材料としても、特に制限されるものではなく公知公用の物を用いることができ、支持体上に電極パット、樹脂層、導電性ピラー等を形成できるものであれば特に制限させるものではない。例えば、シリコンをはじめ、ガラス、セラミック、樹脂、各種金属等を例示列挙することができる。
【0038】
開口部4を有する樹脂膜3を作製するためには、公知公用の手法を用いることができる。使用する樹脂の材料は、20~30μmの開口部を有する円柱状の鋳型形状が製造できれば特に制限されるものではない。例えば、フォトレジスト(photo-resist)、ポリイミド、エポキシ、及びエポキシモールディングコンパウンド(Epoxy Molding Compound:EMC)、各種ドライフィルムを用いることもできる。
【0039】
スキージについても素材について得に制限されるものではなく、プラスチック、ゴム、金属性のスキージを用いることができる。スキージの厚さ、長さについても特に制限はない。塗布時の押し込み圧力については、樹脂の開口部パターンを破損させない程度の印圧で使用することが望ましい。
【0040】
(第二工程)
本発明の導電性ピラーの製造方法は、導電性ペーストを塗布した後に標準気圧に戻し、樹脂開口部に導電性ペーストを充填させる第二工程を有することを特徴とする。図2(c)に示すように、開口部を有する樹脂膜上の導電性ペーストが開口部に吸い込まれることにより、導電性ペーストが充填される。
【0041】
標準気圧とは、1気圧の状態をさす。上記工程により電極パット表面まで空間を生じずに導電性ペーストを充填でき、ボイドの発生を抑制できる。ボイドや空隙の発生は、電極パットとの導電性確保を阻害し、接合不良を生じさせる。
【0042】
(第三工程)
本発明の導電性ピラーの製造方法は、樹脂表面に残った導電性ペーストを除去する第三工程を有することを特徴とする。樹脂表面の導電性ペーストを除去することができれば、任意の方法を採用することができる。ブレードや空気圧を用いることもできるし、乾燥又は焼成後に研磨除去する方法も採用できる。図1(d)では、参考としてスキージにより導電性ペーストを除去する方法を例示した。
樹脂表面に残留した導電性ペーストは、樹脂の剥離を阻害する。また、残留した導電性ペーストは、ピラー間で短絡を引き起こす可能性があり、好ましくない。
【0043】
(ピラーの焼結方法)
導電性ペーストに熱硬化性の物を用いる場合、上記方法により作製された導電性ペーストを金属微粒子がネッキングする温度まで加熱し、ピラーを作製することができる。
焼結方法については、特に限定されるものではないが、酸化しやすい金属を材料として用いる場合には、光焼結、水素を含むフォーミングガス下、窒素雰囲気下、又はギ酸等を用いた還元雰囲気下のいずれかで行うことが好ましい。
【0044】
焼結工程を経る場合には、樹脂膜への影響を考えると300℃以下の範囲で焼結することが望ましく、焼結時間は1~60分間の範囲内が望ましい。
【0045】
(ピラー製造後の工程について)
本発明に用いる樹脂膜を除去する場合(図2(e))には、公知公用の任意の方法を採用することができる。
【0046】
本発明のピラー製造方法では、樹脂膜に永久膜を用いることもできる。永久膜を用いる場合には、樹脂膜を剥離する工程を削減することができるという利点がある。
【0047】
本発明のピラー製造方法により作製した導電性ピラーは、フリップチップ実装をはじめとする種々の電子部品・デバイスの実装に用いることができる。
【実施例
【0048】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。ここで「%」は、特に指定がない限り「質量%」である。
【0049】
(導電性ペーストの作製)
<金属微粒子の合成>
酢酸銅(II)一水和物(3.00g、15.0mmol)(東京化成工業社製)、エチル3-(3-(メトキシ(ポリエトキシ)エトキシ)-2-ヒドロキシプロピルスルファニル)プロピオナート〔ポリエチレングリコールメチルグリシジルエーテル(ポリエチレングリコール鎖の分子量2000(炭素数91))への3-メルカプトプロピオン酸エチルの付加化合物〕(0.451g)(DIC社製)、およびエチレングリコール(10mL)(関東化学社製)からなる混合物に、窒素を50mL/分の流量で吹き込みながら加熱し、125℃で2時間通気攪拌して脱気した。この混合物を室温に戻し、ヒドラジン水和物(1.50g、30.0mmol)(東京化成工業社製)を水7mLで希釈した溶液を、シリンジポンプを用いてゆっくり滴下した。約1/4量を2時間かけてゆっくり滴下し、ここで一旦滴下を停止し、2時間攪拌して発泡が沈静化するのを確認した後、残量を更に1時間かけて滴下した。得られた褐色の溶液を60℃に昇温して、さらに2時間攪拌し、還元反応を終結させた。
【0050】
<水分散液の調製>
つづいて、この反応混合物をダイセン・メンブレン・システムズ社製の中空糸型限外濾過膜モジュール(HIT-1-FUS1582、145cm、分画分子量15万)中に循環させ、滲出する濾液と同量の0.1%ヒドラジン水和物水溶液を加えながら、限外濾過モジュールからの濾液が約500mLとなるまで循環させて精製した。0.1%ヒドラジン水和物水溶液の供給を止め、そのまま限外濾過法により濃縮すると、2.85gのチオエーテルを含む有機化合物と銅微粒子との複合体の水分散液が得られた。
得られた銅微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察すると、得られた銅微粒子の一次粒子径は20nmであった。水分散液中の不揮発物含量は16質量%濃度であった。TG-DTA測定による重量減少より、得られた銅微粒子には3%のポリエチレンオキシド構造を含む有機物が存在していた。
【0051】
<導電性ペーストの調製>
上記の水分散液5mLをそれぞれ50mL三口フラスコに封入し、ウォーターバスを用いて40℃に加温を行いながら、減圧下、窒素を5ml/minの流速で流すことで、水を完全に除去し、銅微粒子複合体乾燥粉末1.0gを得た。次に得られた乾燥粉末にアルゴンガス置換したグローブバッグ内で、30分間窒素バブリングしたエチレングリコールを添加し、乳鉢で10分間混合することで金属微粒子含有率80質量%濃度の導電性ペーストを作製した。
【0052】
(実施例1)
<基板>
埋め込みに使用した基板は、厚さ56μmのドライフィルムレジストを用いてステンレス板(t=0.5mm)に、開口部パターンを製造した物を用いた。開口部の形状は、円柱状であり、深さは56μmであった。開口部分の直径は、100、50、40、30、20μmであった。したがって、アスペクト比は、それぞれ0.6、1.1、1.4、1.9、及び2.8である。パターンは、Hole:Space=1:1となるようにデザインした。
【0053】
<塗布・埋込工程>
塗布・埋込工程は、自動グラインドメーター(HOEI DEVICE社製)を用いて、グローブボックス(MIWA製 MDB-1KPHYT)内にて行った。アルゴンガスで満たしたグローブボックス内に、スクリーン印刷用ゴムスキージを装着した自動グラインドメーターを設置した。自動グラインドメーターのグラインドゲージ部分に、横幅5cm程度になるように調製した基板を設置した。設置した基板に作製した導電性ペーストをのせ、グローブボックス内を3kPaに減圧した。3kPaの気圧に達した後、ただちに自動グラインドメーターを用いて基板上に導電性ペーストを塗布した。塗布速度は、3cm/s程度であった。
塗布完了後、導電性ペーストが乾燥しないよう、ただちにアルゴンガスを用いて標準気圧に戻した。
【0054】
<除去工程>
標準気圧に戻した後、再度自動グラインドメーターに設置したゴムスキージを用いて、レジスト表面に残った過剰の導電性ペーストを除去した。
【0055】
<焼結工程>
本実施例の焼結工程は、アルゴン雰囲気下においてホットプレートを用いて行った。得られた基板を、120℃で5分間焼成した後、250℃で10分間焼結した。本実施例においては、焼結後のレジスト剥離は行わなかった。
【0056】
(実施例2)
<基板>
埋め込みに使用した基板は、シリコンウェハー(t=775μm)に、フォトレジスト(SU-8)を用いて開口部パターンを製造した物を用いた。開口部の形状は、円柱状であり、深さ(レジスト厚)は、約50μmであった。開口部分の直径は、100、50、40、30、20μmであった。したがって、アスペクト比は、それぞれ約0.5、1.0、1.3、1.6、及び2.5である。パターンは、Hole:Space=1:1となるようにデザインした。
【0057】
<塗布・埋込工程>
実施例1と同様に、塗布・埋込工程は自動グラインドメーターを用いて、グローブボックス内にて行った。アルゴンガスで満たしたグローブボックス内に、スクリーン印刷用ゴムスキージを装着した自動グラインドメーターを設置した。自動グラインドメーターのグラインドゲージ部分に、横幅5cm程度になるように調製した基板を設置した。設置した基板に作製した導電性ペーストをのせ、グローブボックス内を3kPaに減圧した。3kPaの気圧に達した後、ただちに自動グラインドメーターを用いて基板上に導電性ペーストを塗布した。塗布速度は、3cm/s程度であった。
塗布完了後、導電性ペーストが乾燥しないよう、ただちにアルゴンガスを用いて標準気圧に戻した。
【0058】
<除去工程>
実施例1と同様に、標準気圧に戻した後、再度自動グラインドメーターに設置したゴムスキージを用いて、レジスト表面に残った過剰の導電性ペーストを除去した。
【0059】
<焼結工程>
実施例1と同様に、本実施例の焼結工程は、アルゴン雰囲気下においてホットプレートを用いて行った。得られた基板を、120℃で5分間焼成した後、250℃で10分間焼結した。本実施例においては、焼結後のレジスト剥離は行わなかった。
【0060】
(比較例1)
<基板>
本比較例に用いた基板は、実施例1で用いたものと同様の物を使用した。埋め込みに使用した基板は、厚さ56μmのドライフィルムレジストを用いてステンレス板(t=0.5mm)に、開口部パターンを製造した物を用いた。開口部の形状は、円柱状であり、深さは56μmであった。開口部分の直径は、100、50、40、30、20μmであった。
【0061】
<塗布・埋込工程>
塗布・埋込工程は、自動グラインドメーターを用いて、グローブボックス内にて行った。標準気圧となるようにアルゴンガスで満たしたグローブボックス内に、スクリーン印刷用ゴムスキージを装着した自動グラインドメーターを設置した。自動グラインドメーターのグラインドゲージ部分に、横幅5cm程度になるように調製した基板を設置した。設置した基板に作製した導電性ペーストをのせ、ただちに自動グラインドメーターを用いて基板上に導電性ペーストを塗布した。塗布速度は、3cm/s程度であった。
【0062】
<除去工程>
再度自動グラインドメーターに設置したゴムスキージを用いて、レジスト表面に残った過剰の導電性ペーストを除去した。
【0063】
<焼結工程>
実施例1と同様に、本比較例の焼結工程は、アルゴン雰囲気下においてホットプレートを用いて行った。得られた基板を、120℃で5分間焼成した後、250℃で10分間焼結した。本比較例においては、焼結後のレジスト剥離は行わなかった。
【0064】
(評価・観察)
開口部への導電性ペーストの充填状態を評価した。開口部にペーストを充填し、焼結させた基板を1cm程度の小片に切断し樹脂で包埋した。包埋した試料をカットし断面出しを行った後、光学顕微鏡を用いて観察・評価した。図3には、直径30μmの開口部に導電性ペーストを充填し、焼結した後に得られた基板開口部への導電性ペーストの充填状態を示している。図3(a)は実施例1、図3(b)は比較例1の結果を示している。
図3(a)において、支持体であるSUS基板8上部まで導電性ペースト9が密に充填していることがわかる。また、図に示したすべての開口部分において均一に導電性ペーストが充填されていることがわかる。一方、図3(b)において、レジスト10表面に導電性ペーストが観測されたが、SUS基板界面まで導電性ペーストが充填されておらず、空隙11が観測された。また、(b)においては、焼結による空気の体積膨張に起因すると思われるクラックが導電性ペーストに観測された。
【0065】
・表1
【0066】
表1は、各実施例及び比較例において作製した試料の、断面写真より概算した導電性ペーストの充填率をしてしている。充填率は、レジスト開口部分の体積を100とした場合の割合を示している。電子顕微鏡により確認できるような、粒子間の隙間(1μm以下)は、粒子が充填しているものとみなして計算した。
【0067】
本発明のピラー製造方法を用いることによって、開口部分の直径が50μm以下の場合において、70%以上の充填率を確保できることが明らかとなった。本結果は、標準気圧下においてはレベリング剤や溶媒種の最適化を行わなければ作製困難である、導電性ピラーを容易に作製可能であることを示している。
【符号の説明】
【0068】
1 電極パット、2 支持体、3 樹脂(レジスト等)、4 開口部、5 導電性ペースト、6 スキージ、7 導電性ピラー、8 支持体(SUS製)、9 銅ペースト、10 レジスト、11 空隙。
図1
図2
図3