(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】センサ装置、センサ付き多芯電線、複合ケーブル、及びセンサ付き多芯電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20230216BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
G01D11/24 W
H01B7/00 306
(21)【出願番号】P 2019174235
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】早川 良和
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-289610(JP,A)
【文献】特開2017-207402(JP,A)
【文献】特開2017-227560(JP,A)
【文献】特開2014-135804(JP,A)
【文献】実開平01-173692(JP,U)
【文献】特表2015-526738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24,11/30
H01B 7/00
G01D 5/00- 5/252
G01D 5/39- 5/62
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1検出部、並びに前記第1検出部からそれぞれ延出され
た第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子
を備えた第1センサと、
第2検出部、並びに前記第2検出部からそれぞれ延出され
た第2プラス側接続端子及び第2マイナス側接続端子
を備えた第2センサと、
を備え、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と電気的に同一の側となる前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに電気的に接続されているとともに、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方との間に
絶縁部材が配置されており、
前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記絶縁部材が、モールド樹脂からなるハウジングに覆われている、
センサ装置。
【請求項2】
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに接触している、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに溶接されている、
請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方との間に、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方にともに接触するように配置された電導部が設けられている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記絶縁部と前記電導部とは、一体化された一体構造をなしている、
請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記絶縁部材は、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方、並びに前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方に、接着剤により固定されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記第1プラス側接続端子と前記第2プラス側接続端子とが電気的に接続されている、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記第1センサ及び
前記第2センサは、前記第1プラス側接続端子
と前記第2プラス側接続端子とが対向すると共に前記第1マイナス側接続端子
と前記第2マイナス側接続端子とが対向する方向に積層されている、
請求項
7に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記第1センサ及び
前記第2センサは、互いに接触するように配置されている、
請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ装置を備えるセンサ付き多芯電線であって、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方に共通して接続する1つの電線を含む、
センサ付き多芯電線。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載のセンサ装置と接続可能なケーブルであって、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方
、及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方に共通して接続する1つの電線と、
前記1つの電線よりも大きい外径を有する一対の太径電線と、
を備える、
複合ケーブル。
【請求項12】
第1センサ
の第1検出部から延出され
た第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子の一方と、第2センサ
の第2検出部から延出され
た第2プラス側接続端子及び第2マイナス側接続端子のうち、前記第1プラス側接続端子及び
前記第1マイナス側接続端子の一方と電気的に同一の側となる一方をなす前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、に共通して接続する1つの第1電線を接続する工程と、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方に1つの第2電線を接続する工程と、
前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方に1つの第3電線を接続する工程と、
前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方との間に
絶縁部材を取り付ける工程と、
前記第1プラス側接続端子及び
前記第1マイナス側接続端子の一方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方とを電気的に接続する工程と、
前記第1電線、前記
第2電線及び前記第3電線を含む多芯電線の端部と、前記第1センサ及び前記第2センサを含むセンサ部と、
前記絶縁部材とを
、絶縁性を有するモールド樹脂で覆う工程と、
を含む、センサ付き多芯電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、センサ付き多芯電線、複合ケーブル、及びセンサ付き多芯電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、冗長化や検出の精度の向上のために複数のセンサ(例えば、磁気センサ)を備えたセンサ付き多芯電線が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のセンサ付き多芯電線は、多芯電線と、この多芯電線の端部に設けられたセンサ部と、を有している。
【0003】
センサ部は、被検出部材からの磁界を検出する磁気検出素子、磁気検出素子から出力された信号を処理する信号処理回路、及び磁気検出素子と信号処理回路とを一括して覆う覆い体を有する板状の検出部を有している複数の磁気センサを備え、各検出部は、センサ部と被検出部材との対向方向に積層されている。
【0004】
また、磁気センサは、検出部と、検出部から延出された一対の接続端子と、を有している。そして、センサ付き多芯電線は、複数の磁気センサの一対の接続端子にそれぞれ電気的に接続する複数対の電線を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のセンサ付き多芯電線では、磁気センサを1つ増やすごとに電線を2本増やすことが必要となってしまう。そのため、複数のセンサを備える場合、電線の本数の削減が求められる。
【0007】
本発明は、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減できる構造を有するセンサ装置、これら複数のセンサを備えるセンサ付き多芯電線、複合ケーブル、及びセンサ付き多芯電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、下記の[1]~[9]のセンサ装置、[10]のセンサ付き多芯電線、[11]の複合ケーブル、及び[12]のセンサ付き多芯電線の製造方法を提供する。
[1]第1センサからそれぞれ延出される第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子と、第2センサからそれぞれ延出される第2プラス側接続端子及び第2マイナス側接続端子と、を備え、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と電気的に同一の側となる前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに電気的に接続されているとともに、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方と、が互いに離間して配置され、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方との間に、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方とを電気的に遮断する絶縁部が設けられている、センサ装置。
[2]前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに接触している、前記[1]に記載のセンサ装置。
[3]前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、が互いに溶接されている、前記[2]に記載のセンサ装置。
[4]前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方との間に、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方にともに接触するように配置された電導部が設けられている、前記[1]に記載のセンサ装置。
[5]前記絶縁部と前記電導部とは、一体化された一体構造をなしている、前記[4]に記載のセンサ装置。
[6]前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方、並びに前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方のうち、少なくともいずれかは、延出された方向に互いに略平行に形成されている、前記[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のセンサ装置。
[7]前記第1プラス側接続端子と前記第2プラス側接続端子とが電気的に接続されている、前記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のセンサ装置。
[8]前記第1センサ及び第2センサは、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子とが対向する方向に積層されている、前記[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のセンサ装置。
[9]前記第1センサ及び第2センサは、互いに接触するように配置されている、前記[8]に記載のセンサ装置。
[10]前記[1]から[9]のいずれか1つに記載のセンサ装置を備えるセンサ付き多芯電線であって、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方に共通して接続する1つの電線を含む、センサ付き多芯電線。
[11]前記[1]から[9]のいずれか1つに記載のセンサ装置と接続可能なケーブルであって、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の一方及び前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方に共通して接続する1つの電線と、前記1つの電線よりも大きい外径を有する一対の太径電線と、を備える、複合ケーブル。
[12]第1センサから延出される第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子の一方と、第2センサから延出される第2プラス側接続端子及び第2マイナス側接続端子のうち、前記第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子の一方と電気的に同一の側となる一方をなす前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方と、に共通して接続する1つの第1電線を接続する工程と、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方に1つの第2電線を接続する工程と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方に1つの第3電線を接続する工程と、前記第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と、前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方との間に、該第1プラス側接続端子及び前記第1マイナス側接続端子の他方と第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の他方とに絶縁部を取り付ける工程と、前記第1プラス側接続端子及び第1マイナス側接続端子の一方と前記第2プラス側接続端子及び前記第2マイナス側接続端子の一方とを電気的に接続する工程と、前記第1電線、前記2電線及び前記第3電線を含む多芯電線の端部と、前記第1センサ及び前記第2センサを含むセンサ部と、を絶縁性を有するモールド樹脂で覆う工程と、を含む、センサ付き多芯電線の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減することが可能な構造を有するセンサ装置、これら複数のセンサを備えるセンサ付き多芯電線、複合ケーブル、及びセンサ付き多芯電線の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線の構成の一例を模式的に示す図であり、(a)は、そのハウジングを破面で示した破断図、(b)は、(a)に示すセンサ付き多芯電線からセンサ部を抜き出して示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る複合ケーブルの構成の一例を概略的に示す横断面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一変形例に係るセンサ部を概略的に示す図であり、(a)は、右側面図、(b)は、左側面図である。
【
図5】(a)、(b)及び(c)は、それぞれ本発明の一変形例に係るセンサ部の構成を概略的に示す右側面図である。
【
図6】本発明の一変形例に係るセンサ部の構成を概略的に示す図であり、(a)は、右側面図、(b)は、平面図である。
【
図7】被挟着部材の製造方法の一例を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の一変形例に係るセンサ部を概略的に示す右側面図である。
【
図9】(a)及び(b)は、それぞれ本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線の構成の一例を模式的に示す図であり、そのハウジングを破面で示した破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。また、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際のセンサ装置、センサ付き多芯電線及び複合ケーブルの寸法比と一致するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「一方」及び「他方」とは、電気的に互いに異なることをいい、例えば、プラス側を「一方の側」というときは、マイナス側を「他方の側」といい、逆に、マイナス側を「一方の側」というときは、プラス側を「他方の側」という。また、プラス側同士又はマイナス側同士を「同一の側」ともいい、プラス側とマイナス側との関係を互いに「異なる側」ともいう。
【0013】
(センサ付き多芯電線の説明)
図1は、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線の構成の一例を模式的に示す図であり、(a)は、そのハウジングを破面で示した破断図、(b)は、(a)に示すセンサ付き多芯電線からセンサ部を抜き出して示した斜視図である。
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線100は、センサ装置としてのセンサ部1と、このセンサ部1が取り付けられた多芯電線25と、センサ部1と多芯電線25の端部25aとを一括して被覆する絶縁性を有するモールド樹脂からなるハウジング3と、を有して構成されている。
【0014】
なお、
図1(a)は、後述する
図2に示す複合ケーブル2から一対の第4の電線24を省略して示すとともに、ハウジング3を断面で示す。また、
図1(a)に示す複合ケーブル2は、
図2のA-A’断面に対して略垂直な方向から視たものである。
【0015】
(センサ部1)
センサ部1は、第1センサ11及び第2センサ12とを備えている。この第1センサ11及び第2センサ12は、電流の強弱(例えば、7mA及び14mA)で信号を伝えるタイプのものである。一例として、第1センサ11及び第2センサ12は、自動車の車輪に設置された回転体(磁性体、磁石)の回転に基づき車輪の回転数(すなわち、回転速度)を検知するABS(アンチロックブレーキシステム)センサ等として用いられる。
【0016】
第1センサ11及び第2センサは、ともに同一の機能を有する同一のものである。このように同一のセンサを2つ設けているのは、第1センサ11及び第2センサのいずれかが故障等の何らかの理由で使用できなくなっている場合であっても残りの方を使用してセンシングできるようにする、いわゆる冗長化のためである。なお、以下では、説明の便宜上、センサ部1が2つのセンサを備える場合を例に挙げて説明するが、センサの数は2つに限定されるものではなく、3つ以上でもよい。
【0017】
〔第1センサ11〕
第1センサ11は、第1検出部110と、この第1検出部110から延出された一対(2つ)の接続端子(第1接続端子111及び第2接続端子112)と、を備えている。第1接続端子111は、第1の一方の接続端子としてのプラス側の接続端子(以下、「第1プラス側接続端子111」ともいう。)である。第2接続端子112は、第1の他方の接続端子としてのマイナス側の接続端子(以下、「第1マイナス側接続端子112」ともいう。)である。以下、プラス側を「一方の側」とし、マイナス側を「他方の側」として説明する。
【0018】
第1検出部110は、被検出部材としての磁気エンコーダ(不図示)からの磁界を検出する第1磁気検出素子110aと、この第1磁気検出素子110aから出力された信号を処理する第1信号処理回路(不図示)と、第1磁気検出素子110a及び第1信号処理回路を一括して覆う第1覆い体110dと、を有している。
図1(a)及び(b)では、第1検出部110は、略直方体状の形状を有しているが、円柱形等その他の形状を有しているものでもよい。第1覆い体110dは、樹脂等の絶縁体からなる。
【0019】
第1プラス側接続端子111及び第1マイナス側接続端子112は、それぞれ第1検出部110(第1覆い体110d)の一端110bから延出されている。本実施の形態では、第1プラス側接続端子111及び第1マイナス側接続端子112は、銅等の金属で形成された平角状の形状を有する端子材がクランク状に折り曲げて形成されている。
【0020】
具体的には、第1プラス側接続端子111は、第1検出部110の一端110bから多芯電線20の長手方向と略平行な方向に延出する基端部111aと、基端部111aから折れ曲がって多芯電線20の径方向内側(図示左斜め下方向)に延びる傾斜部111bと、この傾斜部111bから基端部111aの反対側に向かって基端部111aと略平行に延びる先端部111cと、を有して構成されている。
【0021】
第1マイナス側接続端子112は、第1検出部110の一端110bから多芯電線20の長手方向と略平行な方向に延出する基端部112aと、基端部112aから折れ曲がって複合ケーブル2の径方向外側(図示左斜め上方向)に延びる傾斜部112bと、この傾斜部112bから基端部112aの反対側に向かって基端部112aと略平行に延びる先端部112cと、を有して構成されている。
【0022】
〔第2センサ12〕
第2センサ12は、第2検出部120と、この第2検出部120から延出された一対(2つ)の接続端子(第3接続端子121及び第4接続端子122)と、を備えている。第3接続端子121、第2の一方の接続端子としてのプラス側の接続端子(以下、「第2プラス側接続端子121」ともいう。)である。第4接続端子122は、第2の他方の接続端子としてのマイナス側の接続端子(以下、「第2マイナス側接続端子122」ともいう。)122と、を含んで構成されている。
【0023】
第2検出部120は、第1検出部110と同様に、磁気エンコーダからの磁界を検出する第2磁気検出素子120aと、この第2磁気検出素子120aから出力された信号を処理する第2信号処理回路(不図示)と、第2磁気検出素子120a及び第2信号処理回路を一括して覆う第2覆い体120dと、を有している。第2検出部120は、第1検出部110と同様に略直方体状の形状を有しているが、円柱形等その他の形状を有しているものでもよい。第2覆い体120dは、樹脂等の絶縁体からなる。
【0024】
第2プラス側接続端子121及び第2マイナス側接続端子122は、それぞれ第2検出部120(第2覆い体120d)の一端120bから延出されている。第2プラス側接続端子121及び第2マイナス側接続端子122は、銅等の金属で形成された平角状の形状を有する端子材がクランク状に折り曲げて形成されている。
【0025】
具体的には、第2プラス側接続端子121は、第2検出部120の一端120bから多芯電線20の長手方向と略平行な方向に延出する基端部121aと、基端部121aから折れ曲がって多芯電線20の径方向外側(図示左斜め上方向)に延びる傾斜部121bと、この傾斜部121bから基端部121aの反対側に向かって基端部121aと略平行に延びる先端部121cと、を有して構成されている。
【0026】
第2マイナス側接続端子122は、第2検出部120の一端120bから多芯電線20の長手方向と略平行な方向に延出する基端部122aと、基端部122aから折れ曲がって複合ケーブル2の径方向外側(図示左斜め下方向)に延びる傾斜部122bと、この傾斜部122bから基端部122aの反対側に向かって基端部122aと略平行に延びる先端部122cと、を有して構成されている。
【0027】
〔接続端子111,112,121,122の配置関係〕
第1プラス側接続端子111及び第2プラス側接続端子121は、上述したように、それぞれの先端部111c,121cが互いに近づく方向に折り曲げられている。かかる構成により、第1プラス側接続端子111の先端部111cと第2プラス側接続端子121の先端部121cとが互いに接触するようになっている。すなわち、第1プラス側接続端子111と第2プラス側接続端子121とは、電気的に接続されている。
【0028】
具体的には、第1プラス側接続端子111の先端部111cの下面と、第2プラス側接続端子121の先端部121cの上面と、が面接触している。より具体的には、第1プラス側接続端子111の先端部111cの下面と、第2プラス側接続端子121の先端部121cの上面と、が溶接されており、第1プラス側接続端子111の先端部111cと、第2プラス側接続端子121の先端部121cと、が一体化された一体構造をなしている。
【0029】
ここで、「溶接」とは、接触させる部位に電流を流し、接触抵抗により発生するジュール熱で溶融して金属同士を接着させること(「抵抗溶接」ともいう。)をいう。
【0030】
また、第1プラス側接続端子111の先端部111cには、第1中心導体211(
図2参照)が溶接により電気的に接続されている。なお、第1中心導体211(
図2参照)は、必ずしも第1プラス側接続端子111の先端部111cに接続される形態に限定されるものではなく、第2プラス側接続端子121の先端部121cに接続されていてもよい。
【0031】
第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122は、上述したように、それぞれの先端部112c,122cが互いに遠のく方向に折り曲げられている。かかる構成により、第1マイナス側接続端子112の先端部112cと第2マイナス側接続端子122の先端部122cとが互いに離間して配置されている。
【0032】
〔絶縁部材〕
センサ部1は、絶縁部としての絶縁部材15をさらに備えている。絶縁部材15は、互いに離間して配置された第1マイナス側接続端子112と第2マイナス側接続端子122との間に設けられている。具体的には、第1マイナス側接続端子112の先端部112cと、第2マイナス側接続端子122の先端部122cとの間に設けられている。
【0033】
また、絶縁部材15は、第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122にともに接触している。具体的には、絶縁部材15は、第1マイナス側接続端子112の先端部112cの下面及び第2マイナス側接続端子122の先端部122cの上面にともに接触している。
【0034】
絶縁部材15は、例えば、接着剤等により第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122に固定される。かかる構成により、第1マイナス側接続端子112と第2マイナス側接続端子122とが電気的に遮断されるようになっている。
【0035】
また、第1マイナス側接続端子112の先端部112cには、第2中心導体221が溶接により電気的に接続されている。また、第2マイナス側接続端子122の先端部122cには、第3中心導体231が溶接により電気的に接続されている。
【0036】
〔第1センサ11及び第2センサ12の配置関係〕
第1センサ11及び第2センサ12は、第1プラス側接続端子111及び第2プラス側接続端子121が対向する方向(第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122が対向する方向でもあり、第1センサ11及び第2センサ12の厚み方向でもある。図示上下方向。)において、互いに対向するように配置されている。換言すれば、第1センサ11及び第2センサ12は、多芯電線25の長手方向に直交する方向に重なる(積層する)ように配置されている。
【0037】
換言すれば、第1センサ11及び第2センサ12は、互いに略平行に延出された第1プラス側接続端子111の基端部111a及び第1マイナス側接続端子112の基端部112aを含む面(第2プラス側接続端子121の基端部121a及び第2マイナス側接続端子122の基端部122aを含む面でもある。)と直交する方向において互いに対向するように配置されている。
【0038】
また、本実施の形態では、第1センサ11と第2センサ12とは、互いに離間して配置されている。換言すれば、第1センサ11の底面110cと第2センサ12の上面120cとの間には一定の距離が設けられている。すなわち、第1センサ11及び第2センサ12は、第1センサ11の底面110cと第2センサ12の上面120cとが互いに接触しないように配置されている。第1センサ11の底面110cと第2センサ12の上面120cとの間には、ハウジング3を構成するモールド樹脂が充填されている。
【0039】
(複合ケーブル2)
次に、本実施の形態に係る複合ケーブル2について、
図2を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施の形態に係る複合ケーブル2の構成の一例を概略的に示す横断面図である。
図2に示すように、複合ケーブル2は、細径電線としての第1~第3電線21,22,23を含んで構成された1本の多芯電線20と、太径電線としての一対(2本)の第4電線24と、を含む3本の電線24,20が撚られてなる集合体27と、この集合体27の周囲を覆うテープ部材28と、このテープ部材28の外周に被覆されている外部シース29と、を備えている。多芯電線20は、第1~第3電線21,22,23の外周を被覆する内部シース26を有している。
【0040】
なお、ここでは、複合ケーブル2が合計3本の電線を有している構成を例に挙げて説明するが、電線の本数は、3本に限定されるものではなく、4本以上であってもよい。4本の場合、例えば、第1~第3の電線21,22,23のうちのいずれか1つの電線を他の2つの電線と離間して配置してもよい。
【0041】
〔第1電線21、第2電線22及び第3電線23〕
本実施の形態では、第1電線21、第2電線22及び第3電線23は、同一の構成及び形状を有している。そのため、これら第1~第3電線21,22,23をまとめて説明する。第1~第3電線21,22,23は、第1センサ11及び第2センサ12用の信号線として用いられる。
【0042】
第1~第3電線21,22,23は、銅等の良導電性の複数の素線が撚り合わされてなる第1~第3中心導体211,221,231の周囲に、それぞれ、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第1~第3絶縁体212,222,232を被覆して構成される。
【0043】
第1~第3電線21,22,23の外径は、第4電線24の外径よりも小さい。また、第1~第3電線21,22,23の外径は、互いに同一である。ここで「同一」とは、完全に同じであることのみをいうものではなく、多少の誤差(±5%程度)も含む。
【0044】
具体的には、第1~第3電線21,22,23は、1.0mm以上1.8mm以下の外径を有する。また、第1~第3中心導体211,221,231は、0.4mm以上1.0mm以下の外径を有する。
【0045】
第1~第3中心導体211,221,231に用いる素線としては、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。直径0.05mm未満の素線を用いた場合、十分な機械的強度が得られず耐屈曲性が低下する虞があり、直径0.30mmより大きい素線を用いた場合、第1~第3電線21,22,23の可撓性が低下する虞がある。
【0046】
なお、上記にて、第1電線21、第2電線22及び第3電線23は、同一の構成及び形状を有していると説明したが、第1~第3絶縁体212,222,232の色を異ならせてもよい。例えば、プラス側接続端子に接続される第1電線21の第1絶縁体212を黒色とし、マイナス側接続端子に接続される第2電線22の第2絶縁体222及び第3電線23の第3絶縁体232を白色としてもよい。また、第1~第3絶縁体212,222,232をそれぞれ互いに異なる色としてもよい。
【0047】
〔多芯電線20〕
多芯電線20は、第1の電線21、第2の電線22及び第3の電線23が互いに接触して撚り合わされた状態、すなわち対撚線を形成した状態で一括して内部シース26に被覆されて構成されている。多芯電線20の外径は、第4電線24の外径よりも大きい。
【0048】
第1電線21、第2電線22及び第3電線23は、多芯電線20内の周方向に略均等に配置してもよい。すなわち、横断面視において、第1電線21の中心軸O1と、第2電線22の中心軸O2と、第3電線23の中心軸O3と、をそれぞれ結んで囲まれる形状が略正三角形となるように配置してもよい。
【0049】
第1電線21、第2電線22及び第3電線23の撚りピッチ(以下、「第1撚りピッチ」ともいう。)は、第1電線21、第2電線22及び第3電線23の外径を考慮し、これら第1電線21、第2電線22及び第3電線23に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。ここでは、第1撚りピッチを約30mmとしたが、第1撚りピッチは、この値に限定されるものではない。なお、第1撚りピッチとは、第1電線21、第2電線22及び第3電線23のうち任意の一方の電線が多芯電線20の周方向において同じ位置となる多芯電線25の長手方向に沿った間隔をいう。
【0050】
なお、
図2において、内部シース26内に、第1電線21、第2電線22及び第3電線23を囲う破線円が描かれているが、この破線円は、第1の電線21、第2の電線22及び第3の電線23が撚り合わされていることを示すものである。
【0051】
〔第4電線24〕
第4電線24は、例えば、車両の車輪(不図示)等に搭載されたEPB(Erectric Parking Brake(電動パーキングブレーキ))用電気モータ(不図示)に駆動電流を供給するための電源線として用いられる。第4電線24は、銅等の良導電性の複数の素線が撚り合わされてなる第4中心導体241の周囲に、例えば、架橋ポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる第4絶縁体242を被覆して構成される。
【0052】
第4電線24の外径は、第1~第3電線21,22,23の外径よりも大きい。第4中心導体241の外径、及び第4絶縁体242の厚さは、要求される駆動電流の大きさに応じて適宜設定すればよい。例えば、第4電線24がEPB用電気モータに駆動電流を供給するための電源線でとして用いられる場合、第4中心導体241の外径を1.5mm以上3.0mm以下に設定することが好ましい。
【0053】
第4中心導体241に用いる素線としては、第1~第3中心導体211,221,231に用いる素線と同様に、直径0.05mm以上0.30mm以下のものを用いることができる。
【0054】
〔内部シース26〕
内部シース26は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン系の樹脂により形成されている。なお、内部シース26は、省略することも可能である。内部シース26を省略した場合の多芯電線は、第1の電線21、第2の電線22及び第3の電線23が撚り合わされた撚合体のみの構成となる。
【0055】
〔集合体27〕
集合体27とは、1本の多芯電線25と、2本の第4電線24と、を撚り合わせて構成した電線の束をいう。
【0056】
集合体27の外径は、例えば、5mm~9mm程度である。集合体27における多芯電線25及び2本の第4電線24の撚りピッチ(以下、「第2撚りピッチ」ともいう。)は、集合体27の外径を考慮し、これらの電線に不要な負荷がかからない程度に設定するとよい。例えば、第2撚りピッチは、約50mmに設定してよい。なお、第2撚りピッチとは、集合体27を構成する任意の電線(多芯電線25又は第4の電線24)が集合体27の周方向において同じ位置となる集合体27の長手方向に沿った間隔である。
【0057】
〔テープ部材28〕
集合体27の周囲には、テープ部材28が螺旋状に巻き付けられている。テープ部材28は、1本の多芯電線25と、2本の第4電線24と、にともに接触している。テープ部材28は、外部シース29が集合体27側に入り込まないようにして複合ケーブル2の加工性を高めるとともに、集合体27と外部シース29との間に配置され、屈曲時に集合体27と外部シース29と間の摩擦を低減する役割を果たす。
【0058】
テープ部材28は、その幅方向(テープ部材28の長手方向及び厚さ方向と垂直な方向)の一部が重なり合うように、螺旋状に集合体27に巻き付けられる。テープ部材28が重なり合う幅は、例えば、テープ部材28の幅の1/4以上1/2以下である。
【0059】
テープ部材28の幅は、テープ部材28を巻き付けた際にテープ部材28に皺が寄らない程度の幅とすればよく、集合体27全体の外径が小さくなるほど幅の狭いテープ部材28を用いることが望ましい。具体的には、集合体27の外径が5mm~9mmである場合、テープ部材28の幅は、20mm~50mm程度とすればよい。
【0060】
テープ部材28の巻きピッチ、すなわちテープ部材28が周方向の同じ位置となる長手方向に沿った間隔(例えば幅方向の一端部同士の間隔)は、テープ部材28の幅及び重なり幅(テープ部材28の巻き付け角度)等を考慮して適宜調整してよい。なお、テープ部材28は、集合体27に必ずしも螺旋状に巻き付けなくてもよく、例えば、縦添えで巻き付けてもよい。
【0061】
〔外部シース29〕
テープ部材28の外周には、テープ部材28の周囲を覆う外部シース29が設けられている。外部シース29は、例えば、熱可塑性ポリウレタン等のウレタン樹脂からなる。
【0062】
〔シールド層〕
第4電線24の用途等に応じて、テープ部材28と外部シース29との間、あるいは外部シース29の外周にシールド層(不図示)を設けてもよい。シールド層は、例えば、導線を編組して形成される。
【0063】
〔介在〕
2本の第4電線24の間や、第4電線24と多芯電線25との間に形成された隙間Sに、複合ケーブル2の長手方向に延びる糸状(繊維状)の複数の介在を配置し(不図示)、これらの介在を第4電線24と多芯電線25とともに撚り合わせることによって集合体27を構成してもよい。複数の介在を設けることにより、集合体27の外周にテープ部材28を巻き付けた際の断面形状をより円形状に近づけることができる。
【0064】
介在としては、ポリプロピレンヤーンや、スフ糸(レーヨンステープルファイバー)、アラミド繊維、ナイロン繊維、あるいは繊維系プラスチック等の繊維状体や、紙もしくは綿糸を用いることができる。なお、介在は、2本の第4電線24と多芯電線25とで囲まれる谷間Tにさらに配置してもよい。
【0065】
(ハウジング3)
ハウジング3は、センサ部1と多芯電線25の端部25aとを一括して覆う、例えば、略円柱状の形状を有する部材である。ハウジング3の形状は、略円形状のものに限定されるものではなく、例えば、直方体状でもよい。ハウジング3としては、例えばPA(ポリアミド)や、ナイロン(登録商標)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等からなる絶縁性を有する樹脂モールドを用いることができる。また、ハウジング3の外周には、外周を巻き締めて固定する固定部材(不図示)をさらに設けてもよい。
【0066】
また、ハウジング3の多芯電線25側の端部において、ハウジング3の内面3aと内部シース26の外面とが密着している。これにより、ハウジング3の内面3aと内部シース26の外面と間の隙間から液体が浸入することを抑制する効果(すなわち、止水効果)が得られる。
【0067】
(センサ付き多芯電線100の製造方法の説明)
次に、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線100の製造方法について説明する。
図3は、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線100の製造方法の一例を示すフローチャートである。以下では、第1プラス側接続端子111及び第1マイナス側接続端子112が互いに略平行で、かつ、折り曲げられていない状態の第1センサ11と、第2プラス側接続端子121及び第2マイナス側接続端子122が互いに略平行で、かつ、折り曲げられていない状態の第2センサ12と、が予め用意されていることを前提に説明する。
【0068】
図3に示すように、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線100の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)接続端子をクランク状に折り曲げる工程(S1)
(2)接続端子に電線を接続する工程(S2)
(3)他方の接続端子に絶縁部材を取り付ける工程(S3)
(4)一方の接続端子同士を電気的に接続する工程(S4)
(5)多芯電線の端部とセンサ部とをモールド樹脂で覆う工程(S5)
以下、各工程の詳細を説明する。
【0069】
(1)接続端子をクランク状に折り曲げる工程(S1)
本工程では、第1プラス側接続端子111、第1マイナス側接続端子112、第2プラス側接続端子121及び第2マイナス側接続端子122をそれぞれ折り曲げて、上述したクランク状の形状に形成する。
【0070】
(2)接続端子に電線を接続する工程(S2)
本工程では、第1プラス側接続端子111に第1電線21を接続し、第1マイナス側接続端子112に第2電線22を接続し、第2マイナス側接続端子122に第3電線23を接続する。なお、第1電線21は、第2プラス側接続端子121の先端部121cに接続してもよい。
【0071】
より具体的には、本工程では、第1プラス側接続端子111の先端部111cに第1電線21の第1中心導体211を溶接して接続し、第1マイナス側接続端子112の先端部112cに第2電線22の第2中心導体221を溶接して接続し、第2マイナス側接続端子122の先端部122cに第3電線23の第3の中心導体231を溶接して接続する。
【0072】
(3)他方の接続端子に絶縁部材を取り付ける工程(S3)
本工程では、第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122に絶縁部材15を取り付ける。具体的には、第1マイナス側接続端子112の先端部112cの下面及び第2マイナス側接続端子122の先端部122cの上面にともに接触させて絶縁部材15を取り付ける。絶縁部材15は、例えば、接着剤等により第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122に取り付ける。
【0073】
(4)一方の接続端子同士を電気的に接続する工程(S4)
本工程では、第1プラス側接続端子111の先端部111cと、第2プラス側接続端子121の先端部121cとを互いに接触させたうえ、溶接して接続する。
【0074】
(5)多芯電線の端部とセンサ部とをモールド樹脂で覆う工程(S5)
本工程では、多芯電線25の端部25aと、センサ部1の全体とを、モールド樹脂により形成されたハウジング3で覆う。この工程は、例えば、多芯電線25の端部25aとセンサ部1の全体とを金型内に配置し、当該金型内にモールド樹脂を注入(樹脂モールド)することにより行われる。以上の工程により、
図1(a)及び(b)に示すセンサ付き多芯電線100を製造することができる。
【0075】
(実施の形態の作用及び効果)
以上のように、第1の一対の接続端子(第1プラス側接続端子111,第1マイナス側接続端子112)及び第2の一対の接続端子(第2プラス側接続端子121,第2マイナス側接続端子122)において、第1プラス側接続端子111,第2プラス側接続端子121同士を電気的に接続させた構成とすることにより、第1検出部110のプラス側及び第2検出部120のプラス側を共通化することができる。これにより、プラス側に接続する電線を1本の電線(第1電線21)とすることが可能となり、プラス側に接続する電線の本数を1本削減することが可能となる。これに加えて、第1マイナス側接続端子112,第2マイナス側接続端子122同士を絶縁部材15により電気的に遮断することにより、第1センサ11及び第2センサ12から独立して信号を取得することができる。したがって、このようにすれば、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減することができる。
【0076】
<センサ部1の変形例1>
図4は、本発明の一変形例に係るセンサ部1を概略的に示す図であり、(a)は、右側面図、(b)は、左側面図である。接続端子111,112,121,122は、必ずしもクランク状に折り曲げられていなくてもよく、
図4(a)及び(b)に示すように、互いに略平行で、かつ、直線的な形状(折り曲げられていない真っすぐな形状)を有してもよい。
【0077】
この場合、
図4(a)に示すように、第1プラス側接続端子111と第2プラス側接続端子121とを電気的に接続するために、両者の間に電導部としての接続部材13が設けられる。具体的には、第1プラス側接続端子111の先端部111c及び第2プラス側接続端子121の先端部121cに、接続部材13が溶接により電気的に接続されている。
【0078】
接続部材13は、例えば、両接続端子111,121と同一の素材により形成される。具体的には、接続部材13は、銅により形成される。なお、必ずしも銅に限定されるものではなく、鉄、アルミニウム等の金属でもよい。
【0079】
直線的な形状を有する接続端子111,112,121,122を用いることにより、接続端子111,112,121,122を折り曲げる工程(
図3のS1参照)を省くことができる。また、当該工程を省くことで、接続端子111,112,121,122を折り曲げる際に、接続端子111,112,121,122にかけた応力が第1センサ11や第2センサ12の内部に及んで第1磁気検出素子110aや第2磁気検出素子120aに負担をかける虞を低減することができる。
【0080】
<センサ部1の変形例2>
図5各図は、本発明の一変形例に係るセンサ部1の構成を概略的に示す右側面図である。
図5(a)及び(b)に示すように、第1センサ11及び第2センサ12は、第1センサ11の厚み方向(第2センサ12の厚み方向でもある。)に接触させて積層されていてもよい。換言すれば、第1センサ11の底面110cと第2センサ12の上面120cとが接触していてもよい。一例として、第1センサ11が第2センサ12の上に積層されてもよいし、逆に、第2センサ12が第1センサ11の上に積層されてもよい。
【0081】
この場合、
図5(a)に示すように、第1プラス側接続端子111及び第2プラス側接続端子121をクランク状に折り曲げて互いに接触させてもよく、
図5(b)に示すように、第1プラス側接続端子111及び第2プラス側接続端子121を直線的な形状にしつつ両者の間に接続部材13を設けてもよい。
【0082】
また、
図5(c)に示すように、第1センサ11及び第2センサ12の間に板部材16を設けてもよい。
【0083】
図5各図に例示したように第1センサ11と第2センサ12との間に隙間を設けない構成とすることにより、ハウジング3を樹脂モールドする工程(
図3のS5参照)において、第1センサ11及び第2センサ12が互いに近づく方向に応力がかかることによって、ハウジング3内における第1センサ11及び第2センサ12の位置にずれが生じることを抑制することができる。また、第1センサ11及び第2センサ12の位置ズレによって第1プラス側接続端子111と第2プラス側接続端子121とが離間したり、接続部材13や絶縁部材15が剥がれたりすることを抑制することができる。
【0084】
<センサ部1の変形例3>
図6は、本発明の一変形例に係るセンサ部1の構成を概略的に示す図であり、(a)は、右側面図、(b)は、平面図である。
図6(a)及び(b)に示すように、接続部材13と絶縁部材15とが一体化された一体構造をなしている被挟着部材17を設けてもよい。
【0085】
被挟着部材17の寸法や形状は、
図6各図に示したものに限られない。
図6各図では、一例として、
図6(a)に示す右側面視において四角形の形状を有するものを示したが、その他に、例えば、多角形、円形、楕円形等でもよい。
【0086】
また、右側面視において、接続部材13の右側面視における高さは
図6(a)に示したものよりも大きくてもよく、小さくてもよい。この場合、図示はしないが、接続部材13の上面及び下面と接触できるように、第1プラス側接続端子111及び第2プラス側接続端子121をクランプ状に折り曲げて形成してよい。
【0087】
図7は、被挟着部材17の製造方法の一例を模式的に示す図である。
図7(a)及び(b)に示すように、所定の形状を有する平角状の導体130が所定の厚みを有する絶縁被膜150で覆われた電線部材170を用意する。なお、上述したように、170は、必ずしも平角状の形状を有するものに限られない。
【0088】
この電線部材170から絶縁被膜150を剥ぎ落とす。具体的には、
図7(a)の矢印に示すように、上面視において、電線部材170の延在方向における中央部に仮想的に描いた当該延在方向と直交する線(一点鎖線参照)から電線部材170の一方の端部に亘って絶縁被膜150を剥ぎ落す。絶縁被膜150が剥ぎ落された部位では、内部の導体130が露出する。以上のようにして、
図6各図に示す被挟着部材17を形成することができる。
【0089】
<センサ部1の変形例4>
図8は、本発明の一変形例に係るセンサ部1を概略的に示す右側面図である。
図8に示すように、コンデンサ18を設けてもよい。コンデンサ18は、例えば、接続端子111,112,121,122の基端部111a,112a,121a,122aに設けられる。
【0090】
<センサ付き多芯電線100の変形例>
図9各図は、本発明の一実施の形態に係るセンサ付き多芯電線100の構成の一例を模式的に示す図であり、そのハウジングを破面で示した破断図である。センサ部1は、必ずしも絶縁部材15を備えなくてもよい。この場合、
図9(a)に示すように、第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122の間に、ハウジング3を形成する絶縁性のモールド樹脂が介在することにより、第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122は、電気的に遮断される。つまり、ハウジング3を形成するモールド樹脂は、絶縁部の一例である。
【0091】
また、絶縁部材15は、第1マイナス側接続端子112及び第2マイナス側接続端子122のうち一方のみに設けられていてもよい。例えば、
図9(b)に示すように、絶縁部材15は、第1マイナス側接続端子112のみに設けられていてもよい。なお、図示はしないが、絶縁部材15は、第2マイナス側接続端子122のみに設けられていてもよい。この場合、絶縁部材15の高さは、第1マイナス側接続端子112と第2マイナス側接続端子122との間の距離より小さくてよい。
【0092】
(各変形例の作用及び効果)
以上のように、各変形例においても、第1の一対の接続端子111,112及び第2の一対の接続端子121,122において、一方の接続端子111,121同士を電気的に接続させた構成とすることにより、1本の電線(プラス側と接続する第1の電線21)と接続する、第1検出部110のプラス側及び第2検出部120のプラス側を共通化することができる。このようにすれば、複数のセンサを備える場合に電線の本数を削減することができる。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。例えば、上記実施の形態及びその変形例の説明では、プラス側の接続端子を電気的に接続する構成を示したが、マイナス側の接続端子を電気的に接続する構成としてもよい。この場合、マイナス側の接続端子をグランド(GND)として共通化することができる。
【符号の説明】
【0094】
1:センサ部、100:センサ付き多芯電線、11:第1センサ、110:第1検出部、110a:第1磁気検出素子、110b:一端、110c:底面、111:第1プラス側接続端子、111,112:第1の一対の接続端子、111a:基端部、111b:傾斜部、111c:先端部、111c,121c:先端部、112:第1マイナス側接続端子、112a:基端部、112b:傾斜部、112c:先端部、12:第2センサ、120:第2検出部、120a:第2磁気検出素子、120b:一端、120c:上面、121:第2プラス側接続端子、121,122:第2の一対の接続端子、121a:基端部、121b:傾斜部、121c:先端部、122:第2マイナス側接続端子、122a:基端部、122b:傾斜部、122c:先端部、13:接続部材、130:導体、15:絶縁部材、150:絶縁被膜、16:板部材、17:被挟着部材170:電線部材、18:コンデンサ、2:複合ケーブル、2a:端部、21:第1電線、211:第1中心導体、212:第1絶縁体、22:第2電線、221:第2中心導体、222:第2絶縁体、23:第3電線、231:第3中心導体、232:第3絶縁体、24:第4電線、241:第4中心導体、242;第4絶縁体、25:多芯電線、26:内部シース、27:集合体、28:テープ部材、29:外部シース、3:ハウジング、3a:内面、S:隙間、T:谷間