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特許7228110生分解性樹脂組成物及び当該組成物の成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】生分解性樹脂組成物及び当該組成物の成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230216BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230216BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230216BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08K3/013
C08L101/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022554338
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2022006297
(87)【国際公開番号】W WO2022185934
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2021032417
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】三浦 友理佳
(72)【発明者】
【氏名】野口 崇史
(72)【発明者】
【氏名】所 寛樹
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-122131(JP,A)
【文献】特開2014-139264(JP,A)
【文献】特開2010-149025(JP,A)
【文献】特開2008-045071(JP,A)
【文献】特開2006-052342(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/00
C08K 3/013
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンテレフタレートサクシネートからなる群から選択される1種以上である生分解性樹脂、無機フィラー及び流動性改質剤を含有する生分解性樹脂組成物であって、
前記流動性改質剤が、下記一般式(1)で表されるポリエステル及び/又は下記一般式(2)で表されるポリエステルであり、数平均分子量が300~4,000の範囲であり、酸価が50超であるポリエステルである生分解性樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)及び(2)中、
1、及びAは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基であり、
及びGは、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、
nは、繰り返し数を表し、0~20の範囲の整数である。
但し、括弧で括られた繰り返し単位毎にA及びGはそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記脂肪族二塩基酸残基がコハク酸残基、セバシン酸残基、マレイン酸残基又はアジピン酸残基であり、
前記脂肪族ジオール残基が、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、1,2-プロパンジオール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、1,5-ペンタンジオール残基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール残基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール残基、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、シクロヘキサンジメタノール残基、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール残基、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール残基、2-メチル-1,8-オクタンジオール残基、1,9-ノナンジオール残基である請求項1に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族二塩基酸残基がコハク酸残基又はセバシン酸残基であり、
前記脂肪族ジオール残基が、エチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、1,2-プロパンジオール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、又は1,3-ブタンジオール残基である請求項1又は2に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーが、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルク、チタン酸バリウム、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上である請求項1~のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラー100質量部に対して前記流動性改質剤を0.1~30質量部の範囲で含有する請求項1~のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の生分解性樹脂組成物の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂組成物及び当該組成物の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨て容器、使い捨て包装材料などは、一般に汎用プラスチックと無機フィラーを含む樹脂組成物から成形されており、無機フィラーによって耐衝撃性、耐屈曲性、寸法安定性、透湿性等の様々な機能が付与されている。
【0003】
上記無機フィラーを含む樹脂組成物は、機能性向上及びプラスチック量の低減のため、無機フィラーの充填量をさらに増やすことが求められている。一方で、無機フィラーを増量すると組成物の流動性が低下して成形性が低下するという問題があった。当該問題に対しては、流動性改質剤の添加によって問題解決が図られている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-154594号公報
【文献】国際公開第08/078413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
持続可能性が重視される昨今では、汎用プラスチックを生分解性樹脂に切り替える動きが加速しているが、生分解性樹脂は一般に高極性であるために流動性が悪く、無機フィラーとも馴染みずらい傾向がある。そして、特許文献1及び2の流動性改質剤であっても、流動性改善効果は十分ではない問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高い流動性を有する生分解性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定の構造と物性を有するポリエステルを流動性改質剤として用いることで、無機フィラーと生分解性樹脂を含有する生分解性樹脂組成物に高い流動性を付与することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、生分解性樹脂、無機フィラー及び流動性改質剤を含有する生分解性樹脂組成物であって、前記流動性改質剤が、少なくとも一方の末端にカルボキシル基を有し、酸価が50超であるポリエステルである生分解性樹脂組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高い流動性を有する生分解性樹脂組成物提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[生分解性樹脂組成物]
本発明の生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂、無機フィラー及び流動性改質剤を含有し、前記流動性改質剤は、少なくとも一方の末端にカルボキシル基を有し、酸価が50超であるポリエステルである。
【0012】
本発明において「生分解性樹脂」とは、土壌中、水中、海洋中等に存在する微生物の働きによって分子レベルまで分解可能な樹脂を意味する。当該生分解性樹脂は一般に高極性であり、分子鎖の絡み合いによって高粘度化し易い性質を有する。
本発明の生分解性組成物では、特定の酸価を有し、少なくとも一方の末端にカルボキシル基を有するポリエステルを流動性改質剤として含有する。このポリエステルは、カルボキシル基が無機フィラーに吸着し、それと同時にポリエステル自体の酸価によって高極性な生分解性樹脂との相溶性を担保することで、無機フィラーの流動性を高めるものと考えられる。
以下、本発明の生分解性樹脂が含む各成分について説明する。
【0013】
(流動性改質剤)
本発明の生分解性樹脂組成物が含有する流動性改質剤(以下、「本発明の流動性改質剤」という場合がある)は、少なくとも一方の末端にカルボキシル基を有し、酸価が50超であるポリエステルであり、好ましくは下記一般式(A)で表される繰り返し単位と、下記一般式(G)で表される繰り返し単位とを有するポリエステル、又は、下記一般式(L)で表される繰り返し単位と、下記一般式(A)で表される繰り返し単位と、下記一般式(G)で表される繰り返し単位とを有するポリエステルである。
【0014】
【化1】
(前記一般式(A)、(G)及び(L)中、
Aは、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基であり、
Gは、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、
Lは、炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基である。)
【0015】
本発明の流動性改質剤であるポリエステル(以下、「本発明のポリエステル」という場合がある)の重合形式は特に限定されず、上記繰り返し単位を含むランダム共重合体でもよく、上記繰り返し単位を含むブロック共重合体でもよい。
【0016】
本発明のポリエステルは、より好ましくは下記一般式(1)で表されるポリエステル及び/又は下記一般式(2)で表されるポリエステルである。
【0017】
【化2】
(前記一般式(1)及び(2)中、
、A及びAは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基又は炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基であり、
及びGは、それぞれ独立に、炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基であり、
nは、繰り返し数を表し、0~20の範囲の整数である。
但し、括弧で括られた繰り返し単位毎にA及びGはそれぞれ同じでもよく、異なっていてもよい。)
【0018】
本発明において「二塩基酸残基」とは、二塩基酸から塩基酸官能基を除いた有機基である。例えば二塩基酸残基がジカルボン酸残基である場合、前記ジカルボン酸残基とは、ジカルボン酸が有するカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。ジカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
本発明において「ジオール残基」とは、ジオールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
本発明において「ヒドロキシカルボン酸残基」とは、ヒドロキシカルボン酸から水酸基及びカルボキシル基をそれぞれ除いた残りの有機基を示すものである。ヒドロキシカルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
【0019】
A、A、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、脂環構造及び/又はエーテル結合(-O-)を含んでもよい。
A、A、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、当該炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基としては、コハク酸残基、アジピン酸残基、マレイン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、アゼライン酸残基、セバシン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基、ドデカンジカルボン酸残基、ヘキサヒドロフタル酸残基等が挙げられる。
【0020】
A、A、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数2~10の脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくはコハク酸残基、セバシン酸残基、マレイン酸残基、アジピン酸残基であり、さらに好ましくはコハク酸残基、セバシン酸残基、マレイン酸残基である。
【0021】
A、A、A及びAの炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基は、好ましくは炭素原子数6~15の芳香族ジカルボン酸残基であり、これらとしては、フタル酸残基等が挙げられる。
【0022】
A、A、A及びAは、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基であり、より好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、さらに好ましくは炭素原子数2~10の脂肪族ジカルボン酸残基である。
【0023】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、エチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロピレングリコール残基、1,2-プロパンジオール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、1,5-ペンタンジオール残基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)残基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロ-ルペンタン)残基、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール残基、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール残基、2-メチル-1,8-オクタンジオール残基、1,9-ノナンジオール残基等が挙げられる。
【0024】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、脂環構造及び/又はエーテル結合(-O-)を含んでもよい。
前記脂環構造を含む炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、1,3-シクロペンタンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジオール残基、1,3-シクロヘキサンジオール残基、1,4-シクロヘキサンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジメタノール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基等が挙げられる。
前記エーテル結合を含む炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基としては、例えば、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基等が挙げられる。
【0025】
G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基は、好ましくは炭素原子数3~8の脂肪族ジオール残基であり、より好ましくはエチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール又は1,3-ブタンジオール残基である。
【0026】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基としては、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、カプリル酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の炭素原子数3~19の脂肪族カルボン酸の脂肪鎖に水酸基が1つ置換したヒドロキシカルボン酸の残基が挙げられ、具体例としては乳酸残基、9-ヒドロキシステアリン酸残基、12-ヒドロキシステアリン酸残基、6-ヒドロキシカプロン酸残基等が挙げられる。
【0027】
Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基は、好ましくは炭素原子数4~18の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基であり、より好ましくは12-ヒドロキシステアリン酸残基である。
【0028】
nの繰り返し数は、0~20の範囲の整数であり、好ましくは1~20の範囲の整数であり、より好ましくは5~20の範囲の整数である。
【0029】
本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)は、例えば100~5,000の範囲であり、好ましくは300~4,000の範囲であり、より好ましくは500~3,000の範囲の範囲であり、さらに好ましくは800~2,400の範囲である。
上記数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値であり、実施例に記載の方法により測定する。
【0030】
本発明のポリエステルの酸価は、50超であればよく、好ましくは51以上である。
本発明のポリエステルの酸価の上限は特に制限されないが、例えば400以下であり、200以下、150以下、120以下、100以下、95以下の順に好ましい。
上記ポリエステルの酸価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0031】
本発明のポリエステルの水酸基価は、例えば0以上であればよく、好ましくは10~100の範囲であり、より好ましくは20~80の範囲であり、さらに好ましくは30~70の範囲である。
上記ポリエステルの水酸基価は実施例に記載の方法にて確認する。
【0032】
本発明のポリエステルの性状は、数平均分子量や組成などによって異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0033】
本発明の流動性改質剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して本発明の流動性改質剤0.1~30質量部の範囲であり、好ましくは無機フィラー100質量部に対して本発明の流動性改質剤0.1~10質量部の範囲であり、より好ましくは無機フィラー100質量部に対して本発明の流動性改質剤0.1~5.0質量部の範囲である。
【0034】
本発明のポリエステルは、脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含む反応原料を用いて得られる。ここで反応原料とは、本発明のポリエステルを構成する原料という意味であり、ポリエステルを構成しない溶媒や触媒を含まない意味である。また、「任意のヒドロキシカルボン酸」とはヒドロキシカルボン酸を用いてもよく、用いなくてもよいという意味である。
本発明のポリエステルの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができ、後述する製造方法により製造することができる。
【0035】
本発明のポリエステルの反応原料は、脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を含めばよく、その他の原料を含んでもよい。
本発明のポリエステルの反応原料は、反応原料の全量に対して好ましくは90質量%以上が脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸であり、より好ましくは脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸のみからなる。
【0036】
本発明のポリエステルの製造に用いる脂肪族二塩基酸は、A、A、A及びAの炭素原子数2~12の脂肪族二塩基酸残基に対応する脂肪族二塩基酸であり、使用する脂肪族二塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いる芳香族二塩基酸は、A、A、A及びAの炭素原子数6~15の芳香族二塩基酸残基に対応する芳香族二塩基酸であり、使用する芳香族二塩基酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いる脂肪族ジオールは、G、G及びGの炭素原子数2~9の脂肪族ジオール残基に対応する脂肪族ジオールであり、使用する脂肪族ジオールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるヒドロキシカルボン酸は、Lの炭素原子数2~18のヒドロキシカルボン酸残基に対応するヒドロキシカルボン酸であり、使用するヒドロキシカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
使用する反応原料は、上記のエステル化物、上記の酸塩化物、上記の酸無水物等の誘導体も含む。例えばヒドロキシカルボン酸は、ε-カプロラクトン等のラクトン構造を有する化合物も含む。
【0037】
本発明のポリエステルは、本発明のポリエステルの各残基を構成する脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれるカルボキシル基の当量が水酸基の当量よりも多くなる条件下で反応させることによって製造できる。
本発明のポリエステルは、本発明のポリエステルの各残基を構成する脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸、脂肪族ジオール、並びに任意のヒドロキシカルボン酸を、反応原料に含まれる水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で反応させて主鎖の末端に水酸基を有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルにさらに脂肪族二塩基酸及び/又は芳香族二塩基酸を反応させることによっても製造できる。
【0038】
本発明のポリエステルは、好ましくはコハク酸、セバシン酸、マレイン酸及びアジピン酸残基からなる群から選択される1種以上の脂肪族二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールから選択される1種以上の脂肪族ジオールとを反応原料とするポリエステルである。
【0039】
本発明のポリエステルは、より好ましくはコハク酸及びセバシン酸からなる群から選択される1種以上の脂肪族二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,3-ブタンジオールから選択される1種以上の脂肪族ジオールとを反応原料とするポリエステルである。
これら反応原料はいずれもバイオマス由来とすることができ、得られるポリエステルをバイオマス度100%のポリエステルとすることできる。生分解性樹脂にバイオマス度100%のポリエステルを用いることはサステナビリティの観点から好ましい。
【0040】
本発明のポリエステルの製造において、前記反応原料の反応は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば180~250℃の温度範囲内で10~25時間の範囲でエステル化反応させるとよい。
尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0041】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0042】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、反応原料の全量100質量部に対して、0.001~0.1質量部の範囲で使用する。
【0043】
(無機フィラー)
本発明の生分解性樹脂組成物が含有する無機フィラーとしては、特に限定されず、例えば炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、珪酸カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、二酸化マンガン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
前記無機フィラーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記無機フィラーは、好ましくは炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、タルク、窒化ホウ素及び窒化アルミニウムからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、タルクからなる群から選択される1種以上である。
【0045】
前記無機フィラーの粒径、繊維長、繊維径等の形状は特に限定されず、目的とする用途に応じて適宜調整するとよい。また、前記無機フィラーの表面処理状態も特に限定されず、目的とする用途に応じて例えば飽和脂肪酸等で表面修飾をしてもよい。
【0046】
前記無機フィラーの含有量は、生分解性樹脂100質量部に対して例えば1~200質量部の範囲であり、1~100質量部の範囲、5~70質量部の範囲、10~60質量部の範囲又は15~55質量部の範囲としてもよい。
【0047】
(生分解性樹脂)
本発明の生分解性樹脂組成物が含有する生分解性樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリエチレンテレフタレート-サクシネート(PETS)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンアジペート-テレフタレート(PEAT)、ポリブチレンサクシネート-テレフタレート(PBST)、ポリエチレンサクシネート-テレフタレート(PEST)、ポリブチレンサクシネート-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-カーボネート(PEC)、ポリブチレンサクシネート-アジペート-テレフタレート(PBSAT)、ポリエチレンサクシネート-アジペート-テレフタレート(PESAT)、ポリテトラメチレンアジペート-テレフタレート(PTMAT)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸(PHBH)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン-ブチレンサクシネート(PCLBS)、酢酸セルロース等が挙げられる。
使用する生分解性樹脂は目的とする用途に応じて決定すればよく、上記生分解性樹脂を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
生分解性樹脂は、好ましくはポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリエチレンテレフタレートサクシネートからなる群から選択される1種以上である。
【0049】
生分解性樹脂について説明したが、本発明の生分解性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で非生分解性樹脂を含有してもよい。
前記非生分解性樹脂としては、特に限定されず、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリサルファイド、ポリ塩化ビニル、変成ポリサルファイド、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0050】
(可塑剤)
本発明の生分解性樹脂組成物は、可塑剤をさらに含んでもよい。
前記可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル;フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)等のフタル酸エステル;テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のテレフタル酸エステル;イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOIP)等のイソフタル酸エステル;ピロメリット酸テトラ-2-エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル;アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル;リン酸トリ-2-エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル;ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800~4,000のポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル;ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル等の脂環式二塩基酸;ジカプリン酸1.4-ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル;アセチルクエン酸トリブチル(ATBC);パラフィンワックスやn-パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン;塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル;オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
使用する可塑剤は目的とする用途に応じて決定すればよく、上記可塑剤を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記可塑剤の含有量は、特に限定されないが、例えば無機フィラー100質量部に対して可塑剤5~300質量部の範囲であり、好ましくは無機フィラー100質量部に対して可塑剤10~200質量部の範囲である。
【0052】
(その他添加剤)
本発明の生分解性樹脂組成物が含有する添加剤は、前記流動性改質剤、前記可塑剤に限定されず、これら以外のその他添加剤を含んでもよい。
前記その他添加剤としては、例えば、減粘剤、難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、架橋助剤等を例示することができる。
【0053】
[生分解性樹脂組成物の製造方法]
本発明の生分解性樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。
例えば、生分解性樹脂、無機フィラー及び流動性改質剤、並びに必要に応じて可塑剤、上記その他添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて溶融混練する方法により得ることができる。
【0054】
[生分解性樹脂組成物の成形品]
本発明の生分解性樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形方法により成形することができる。
上記成形方法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。
射出成形、押出成形、圧縮成形、又は熱プレス成形が好適に適用される。具体的な形状としては、シート、フィルム、容器への適用が好ましい。
【0055】
上記で得られた成形品に二次加工を施してもよい。当該二次加工としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
【0056】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られる成形品は、無機フィラーを高充填で含むことができるので、優れた耐熱性、耐薬品性及び耐衝撃性を示すことができ、プラスチック量をそのものの減量もできる。また、当該成形品は生分解性樹脂で構成され分解可能であるため、環境負荷が小さい成形品である。
【0057】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られる成形品は、液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等の幅広い用途に好適に用いられる。
具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、コーヒーカプセルの容器、カトラリー、野外レジャー製品等)、押出成形品(例えば、フィルム、シート、釣り糸、漁網、植生ネット、2次加工用シート、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。
【0058】
用途は上記に限定されず、農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、育苗ポット、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル、創傷被覆材等にも使用可能である。
【実施例
【0059】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0060】
本願実施例において、酸価及び水酸基価の値は、下記方法により評価した値である。
[酸価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
[水酸基価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
【0061】
本願実施例において、ポリエステルの数平均分子量は、GPC測定に基づきポリスチレン換算した値であり、測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0062】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0063】
(合成例1:流動性改質剤Aの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、コハク酸を649.0g、ジエチレングリコールを726.6g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.043g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計19.5時間縮合反応させた。得られた反応物のうち250gについて、無水マレイン酸26.2gをさらに仕込み、120℃で反応を完結させ、流動性改質剤A(酸価:52、水酸基価:60、数平均分子量:1,072)を得た。
【0064】
(合成例2:流動性改質剤Bの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸を876.8g、1,3-ブタンジオールを612.7g、ネオペンチルグリコールを78.7g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.047g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計14時間縮合反応させた。得られた反応物のうち250gについて、無水マレイン酸26.2gをさらに仕込み、120℃で反応を完結させ、流動性改質剤B(酸価:54、水酸基価:50、数平均分子量:1,250)を得た。
【0065】
(合成例3:流動性改質剤Cの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、セバシン酸を1618.0g、プロピレングリコールを814.6g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.146g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計18.5時間縮合反応させた。得られた反応物のうち300gについて、無水マレイン酸31.5gをさらに仕込み、125℃で反応を完結させ、流動性改質剤C(酸価:55、水酸基価:68、数平均分子量:1,300)を得た。
【0066】
(合成例4:流動性改質剤Dの合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、コハク酸を649.0g、ジエチレングリコールを726.6g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.043g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計19.5時間縮合反応させた。得られた反応物のうち250gについて、無水マレイン酸39.3gをさらに仕込み、120℃で反応を完結させ、流動性改質剤D(酸価:74、水酸基価:47、数平均分子量:1,053)を得た。
【0067】
(比較合成例1:流動性改質剤A’の合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、コハク酸を649.0g、ジエチレングリコールを726.6g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.043g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計19.5時間縮合反応させた。得られた反応物のうち210gについて、無水マレイン酸を11.0g仕込み、120℃で反応を完結させ、流動性改質剤A’(酸価:27、水酸基価:85、数平均分子量:1,319)を得た。
【0068】
(比較合成例2:流動性改質剤B’の合成)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、アジピン酸を876.8g、1,3-ブタンジオールを612.7g、ネオペンチルグリコールを78.7g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネートを0.047g仕込み、窒素気流下で攪拌しながら220℃になるまで段階的に昇温することで、合計14時間縮合反応させた。得られた反応物250gについて、無水マレイン酸13.1gをさらに仕込み、120℃で反応を完結させ、流動性改質剤B’(酸価:29、水酸基価:73、数平均分子量:1,290)を得た。
【0069】
(実施例1:生分解性樹脂組成物の調製と評価)
ポリブチレンサクシネート(三菱ケミカル株式会社製「Bio-PBS FZ71PM/PB」)を100質量部、重炭酸カルシウム(丸尾カルシウム株式会社製「スーパーS」)を30質量部及び合成例1の流動性改質剤Aを1質量部を120℃で10分間ミキサーで混練したのち、熱プレス機で1mm厚のプレスシートとした。得られたシートを5mm角に切断し、ギアオーブンで80℃2時間乾燥させて生分解性樹脂組成物ペレットサンプルAを作製した。
【0070】
得られた生分解性樹脂組成物ペレットサンプルAをメルトインデックサ(東洋精機株式会社製「F-F01」、オリフィス内径:2.090mm、シリンダー温度:190℃)に投入し、2160gの荷重をかけて、4分間の予熱後にメルトフローレートを測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例2-4及び比較例1-3)
生分解性樹脂組成物ペレットサンプルAの代わりに、実施例1と同様にして表1に示す組成の生分解性樹脂組成物ペレットサンプルを調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1-4では、末端にカルボキシル基を有し、酸価が50超のポリエステルを流動性改質剤として添加することで高いMFRが得られていることが分かる。一方、比較例1では流動性改質剤を含まないためにMFRが低い。また、比較例2、3では、流動性改質剤が末端にカルボキシル基を有するポリエステルであるものの、酸価が50以下であるために高いMFRは得られていない。