(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】電荷輸送性ポリマーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/02 20060101AFI20230216BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230216BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20230216BHJP
【FI】
C08G73/02
H05B33/14 A
H05B33/22 D
(21)【出願番号】P 2019015514
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】児玉 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】福島 伊織
(72)【発明者】
【氏名】桑原 純平
(72)【発明者】
【氏名】神原 貴樹
(72)【発明者】
【氏名】江 しん
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0171076(US,A1)
【文献】特開2015-74721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックワルド・ハートウィッグ反応
において、下式(1A)及び下式(1B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのアミンと、下式(2)で表されるジハライドとを含むモノマー混合物を反応させて直鎖型ポリマーを得ること、
前記直鎖型ポリマーと、
下式(4)で表されるフェノールエーテルを含む非ハロゲン系溶剤とを混合することを含
み、
前記直鎖型ポリマーと前記非ハロゲン系溶剤との混合において、重金属捕捉剤を加える、電荷輸送性ポリマーの製造方法。
Ar
1-NH
2 (1A)
Ar
2-NH-Ar
3-NH-Ar
4 (1B)
X-Ar
5-X (2)
[式中、Ar
1
、Ar
2
及びAr
4
はそれぞれ独立してアリール基を表し、Ar
3
及びAr
5
はそれぞれ独立してアリーレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
[式中、R
1
は、脂肪族炭化水素基、又はアリール基であり、R
2
は、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、aは1~3の整数であり、bは0~5の整数である。]
【請求項2】
前記バックワルド・ハートウィッグ反応が、パラジウム含有触媒の存在下で実施される、請求項
1に記載の電荷輸送性ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記直鎖型ポリマーと前記非ハロゲン系溶剤との混合において、重金属捕捉剤の水溶液を加える、請求項
1に記載の電荷輸送性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記フェノールエーテルが、少なくともメトキシベンゼン(アニソール)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の電荷輸送性ポリマーの製造方法。
【請求項5】
前記モノマー混合物が、下式(3)で表されるモノハライドをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電荷輸送性ポリマーの製造方法。
Ar
6-X (3)
[式中、Ar
6
は、アリール基を表し、Xはハロゲン原子を表す。]
【請求項6】
前記重金属捕捉剤が、ジチオカルバミン酸塩を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の電荷輸送性ポリマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機エレクトロニクス材料として好適に使用できる電荷輸送性ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロニクス素子は、有機材料を用いて電気的な動作を行う素子であり、省エネルギー、低価格、柔軟性といった特長を発揮できると期待され、従来のシリコンを主体とした無機半導体に替わる技術として注目されている。
【0003】
有機エレクトロニクス素子の一例として、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)、有機光電変換素子、有機トランジスタが挙げられる。有機エレクトロニクス素子の中でも、有機EL素子は、例えば、白熱ランプ、ガス充填ランプ等の代替えとして、大面積ソリッドステート光源用途として注目されている。また、フラットパネルディスプレイ(FPD)分野における液晶ディスプレイ(LCD)に置き換わる最有力の自発光ディスプレイとしても注目されており、製品化が進んでいる。
【0004】
有機EL素子は、素子を構成する有機材料から、低分子型有機EL素子と高分子型有機EL素子とに大別される。低分子型有機EL素子では、低分子化合物が使用され、真空下で成膜を行う乾式プロセスが必要となる。これに対し、高分子型有機EL素子では、高分子化合物が使用され、凸版印刷、凹版印刷等の有版印刷、及びインクジェット等の無版印刷といった湿式プロセスによる簡易成膜が可能である。
【0005】
そのため、簡易成膜が可能な高分子型有機EL素子は、今後の大画面有機ELディスプレイの実現には不可欠な素子として期待されている。しかし、従来の高分子型有機EL素子の各種特性は、十分に満足できるとは言えず、改善が必要とされている。このようなことから、近年、高分子型有機EL素子を構成する高分子化合物として、様々な電荷輸送性ポリマーの開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、電荷輸送性ポリマーの一例として、アリールアミンポリマーが広く知られており、特定の置換基を導入したポリマーの分子設計によって、有機EL素子の各種特性の向上を図ることが検討されている。アリールアミンポリマーの合成方法として、熊田カップリング、スティルカップリング、根岸カップリング、鈴木・宮浦カップリング、檜山カップリング、バックワルド・ハートウィッグ(Bucnwald-Hartwig)反応等のカップリング反応を好適に用いることができる(特許文献1)。
【0008】
なかでも、バックワルド・ハートウィッグ反応は、原料となる化合物の入手が容易であることから、電荷輸送性ポリマー(以下、ポリマーともいう)の分子設計において有益である。しかし、反応時に原料として使用するハロゲン化合物に由来する不純物がポリマー中に残存しやすい傾向がある。また、反応時に触媒として使用される、パラジウムなどの重金属を含む錯体に由来する不純物がポリマー中に残存することがある。
【0009】
有機エレクトロニクス材料として上記反応によって得られたポリマーを使用した場合、ポリマー中に残存する不純物は、発光開始電圧の上昇、発光効率の低下、安定性の低下といった有機エレクトロニクス素子の特性低下の一因となる。そのため、有機エレクトロニクス素子の特性向上に向けて、高純度の電荷輸送性ポリマーを提供することができる簡便な製造方法が望まれている。
【0010】
したがって、本開示は、バックワルド・ハートウィッグ反応を用いたポリマーの製造において、反応時に使用した成分に由来する不純物の量を低減し、有機エレクトロニクス材料として好適な電荷輸送性ポリマーを得ることができる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、バックワルド・ハートウィッグ反応を用いた電荷輸送性ポリマーの製造方法について鋭意検討を行い、非ハロゲン系溶剤を用いてポリマーの分離精製を行うことによって、反応時に使用した成分に由来する不純物を効率良く除去することができ、高純度の電荷輸送性ポリマーが容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の実施形態は以下に関するが、本発明は以下の実施形態に制限されず、様々な実施形態を含む。
一実施形態は、バックワルド・ハートウィッグ反応で直鎖型ポリマーを得ること、上記直鎖型ポリマーと非ハロゲン系溶剤とを混合することを含む、電荷輸送性ポリマーの製造方法に関する。
【0013】
上記バックワルド・ハートウィッグ反応において、下式(1A)及び下式(1B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのアミンと、下式(2)で表されるジハライドとを含むモノマー混合物を反応させることが好ましい。
Ar1-NH2 (1A)
Ar2-NH-Ar3-NH-Ar4 (1B)
X-Ar5-X (2)
式中、Ar1、Ar2及びAr4はそれぞれ独立してアリール基を表し、Ar3及びAr5はそれぞれ独立してアリーレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0014】
上記非ハロゲン系溶剤は、下式(4)で表されるフェノールエーテルを含むことが好ましい。
【化1】
式中、R
1は、脂肪族炭化水素基、又はアリール基であり、R
2は、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、aは1~3の整数であり、bは0~5の整数である。
【0015】
上記バックワルド・ハートウィッグ反応は、パラジウム含有触媒の存在下で実施されることが好ましい。
【0016】
上記直鎖型ポリマーと上記非ハロゲン系溶剤との混合において、重金属捕捉剤を加えることが好ましい。
【0017】
上記直鎖型ポリマーと上記非ハロゲン系溶剤との混合において、重金属捕捉剤の水溶液を加えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、バックワルド・ハートウィッグ反応を用いた電荷輸送性ポリマーの製造において、反応時に使用した成分に由来する不純物を効率良く除去し、有機エレクトロニクス材料として好適な電荷輸送性ポリマーが得られる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
一実施形態は、電荷輸送性ポリマーの製造方法に関し、バックワルド・ハートウィッグ反応で直鎖型ポリマーを得ること(以下、合成工程という)、上記直鎖型ポリマーと非ハロゲン系溶剤とを混合すること(以下、分離精製工程という)を含むことを特徴とする。
【0021】
(合成工程)
バックワルド・ハートウィッグ反応は、アミン化合物とハロゲン化合物とのカップリング反応によって、N-C結合を形成する反応であり、例えば、第1級アミン又はジアミンと、ジハライドとを含むモノマー混合物の反応によってアミンポリマーを得ることができる。
一実施形態において、上記バックワルド・ハートウィッグ反応は、電荷輸送性ポリマーを製造する観点から、下式(1A)及び下式(1B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのアミンと、下式(2)で表されるジハライドとを含むモノマー混合物の反応であることが好ましい。上記モノマー混合物の反応によって直鎖型のアリールアミンポリマーを得ることができる。
【0022】
Ar1-NH2 (1A)
Ar2-NH-Ar3-NH-Ar4 (1B)
X-Ar5-X (2)
式中、Ar1、Ar2及びAr4はそれぞれ独立してはアリール基を表し、Ar3及びAr5はそれぞれ独立してアリーレン基を表し、Xはハロゲン原子を表す。
【0023】
上記ハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。一実施形態において、臭素原子が好ましい。
【0024】
上記アリール基(Ar1、Ar2及びAr4)は、炭素数6~30の芳香族炭化水素から水素原子を1個除いた原子団であって、後述する置換基を有してもよい。上記アリーレン基(Ar2及びAr5)は、炭素数6~30の芳香族炭化水素から水素原子を2個除いた原子団であって、後述する置換基を有してもよい。
上記芳香族炭化水素は、ベンゼンのように単環であってもよく、ナフタレンのように環が互いに縮合した縮合環であってもよい。芳香族炭化水素は、例えば、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼンのように、独立した単環及び縮合環から選択される2個以上が結合した多環構造を有してもよい。芳香族炭化水素の具体例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼン等が挙げられる。
【0025】
一実施形態において、上記アリール基は、単環の芳香族炭化水素から水素原子を1個除いた原子団であることが好ましい。なかでも、上記アリール基は、フェニル基であることが特に好ましい。
一実施形態において、上記アリーレン基は、単環の芳香族炭化水素、又は単環が2個以上結合した多環構造を有する芳香族炭化水素から水素原子を1個除いた原子団であることが好ましい。なかでも、上記アリーレン基は、フェニレン基、又はビフェニレン基であることが特に好ましい。
【0026】
一実施形態において、上式(1A)で表される第1級アミンは、下式(1A-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化2】
式中、Rは、後述する置換基である。nは、0~5の整数であり、0~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。nが1の場合、上記置換基Rは、アミノ基が結合する部位を起点としてパラ位に存在することがより好ましい。また、nが2の場合、2つの置換基Rは、それぞれ、アミノ基が結合する部位を起点としてメタ位に存在することがより好ましい。
【0027】
一実施形態において、上式(1B)で表されるN,N-二置換のジアミンは、下式(1B-1)で表される化合物を含むことが好ましい。式中、R、nは、上式(1A-1)における先の説明と同様である。
【化3】
【0028】
一実施形態において、上記(2)で表されるジハライドは、下式(2-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化4】
式中、Xは、ハロゲン原子であり、Rは、それぞれ独立して、後述する置換基である。nは、それぞれ独立して、0~4の整数であり、0~2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。一実施形態において、上記ジハライドにおける、2つのハロゲン原子は、2つのベンゼン環の結合部位を起点として、それぞれパラ位に位置することが好ましい。
【0029】
上記各式における置換基Rは、それぞれ独立して、炭素数1~22の直鎖、環状又は分岐のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数2~30のヘテロアリール基、あるいは後述する重合性官能基を表す。上記アリール基の詳細は、先に説明したとおりである。上記ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。
【0030】
置換基Rが上記アルキル基である場合、アルキル基は更に、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基により置換されていてもよい。また、置換基Rが上記アリール基又はヘテロアリール基である場合、これらは更に、炭素数1~22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。
【0031】
一実施形態において、置換基Rは、それぞれ独立して、炭素数1~15の直鎖、環状又は分岐のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8の直鎖、環状又は分岐のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
他の実施形態において、置換基Rは、上記アルキル基における少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基であってもよい。
【0032】
さらに他の実施形態において、置換基Rは、重合性官能基であることが好ましい。「重合性官能基」とは、熱及び/又は光を加えることにより、結合を形成し得る官能基を意味する。
重合性官能基の具体例として、炭素-炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、アクリレート基(アクリロイルオキシ基)、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリレート基(メタクリロイルオキシ基)、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基等)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン-イル基、ピロール-イル基、チオフェン-イル基、シロール-イル基)などが挙げられる。重合性官能基は、メチル基、エチル基等の置換基をさらに有してもよい。
好ましい重合性官能基として、オキセタニル基、オキシラニル基、ビニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
バックワルド・ハートウィッグ反応において使用するモノマー混合物において、アミン及びジハライドの少なくとも一方が、上記重合性官能基を有する化合物である場合、上記反応後に得られるアリールアミンポリマーは重合可能となる。重合可能なポリマーは、湿式プロセスによる多層化が容易となる点で好ましい。
【0034】
(ポリマーの構造)
例えば、上式(1A)で表される第1級アミンと、上式(2)で表されるジハライドとを含むモノマー混合物の反応によって得られる直鎖型ポリマーは、下式(P1)で表される構造を含む。
【化5】
【0035】
式中、nは1以上の整数である。Ar1は上式(1A)で表される化合物(芳香族第1級アミン)に由来するアリール基である。Ar5は上式(2)で表される化合物(芳香族ジハライド)に由来するアリーレン基である。
【0036】
一実施形態において、上記反応時に使用するモノマー混合物は、上式(1A)及び上式(1B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのアミンと、上式(2)で表されるジハライドの他に、NH末端処理剤(キャップ剤)として、下式(3)で表されるモノハライドをさらに含んでもよい。
Ar6-X (3)
式中、Ar6は、アリール基を表し、Xはハロゲン原子を表し、それぞれ詳細は先に説明したとおりである。
【0037】
一実施形態において、上記モノハライドは、下式(3-1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化6】
式中、Rは置換基を表し、nは0~5の整数である。置換基Rは、先に説明したとおりである。nは0~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0038】
一実施形態において、上記バックワルド・ハートウィッグ反応におけるモノマー混合物が、上式(1A)で表される化合物と、上式(2)で表される化合物と、上式(3)で表される化合物を含む場合、ポリマーは、下式(P2)で表される構造を含む。
【化7】
式中、nは1以上の整数である。Ar
1及びAr
5は、式(P1)において説明したとおりである。Ar
6は、それぞれ独立して、上式(3)で表される化合物(芳香族モノハライド)に由来するアリール基である。
【0039】
上記製造方法によって得られる直鎖型ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、上記Mwは、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下が更に好ましい。上記ポリマーが上記範囲のMwを有する場合、優れた電荷輸送性を有するため、有機エレクトロニクス材料として好適に使用することができる。また、塗布液を調製するために使用する溶剤への溶解性に優れ、かつ優れた成膜性が得られる点でも好ましい。
【0040】
バックワルド・ハートウィッグ反応は、当業者に周知の条件及び方法に従い実施することができる。例えば、反応は、窒素等の不活性ガス雰囲気下で、触媒として、パラジウム等の重金属を含む化合物を使用して実施することができる。反応時には、触媒と塩基とを併用することが好ましい。
【0041】
上記バックワルド・ハートウィッグ反応では、触媒として、代表的に、パラジウム含有触媒を好適に使用することができる。本明細書において、「パラジウム含有触媒」とは、パラジウムと配位子とを含む触媒を意味し、パラジウムと配位子とを含む錯体化合物又は塩、あるいはパラジウム含有触媒の前駆体と配位子又は配位子前駆体との組合せの形態を含む。
上記配位子は、嵩高い構造を有するものが好ましく、具体例として、ホスフィン配位子、Buchwald配位子が挙げられる。配位子として、N-ヘテロサイクリックカルベン(NHC)を使用することもできる。なかでも、トリ-t-ブチルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン配位子がより好ましい。
【0042】
パラジウム含有触媒は、パラジウム(0)錯体であっても、パラジウム(II)塩であってもよい。パラジウム含有触媒の具体例として、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ-o-トリルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)、ジクロロ[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(II)、及びジクロロ[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(II)が挙げられる。これら化合物は、上記配位子又は配位子前駆体と組合せて使用することもできる。
【0043】
また、パラジウム含有触媒の前駆体を使用し、反応系に存在する有機金属試薬、ホスフィン、アミンなどの成分によって、系中で上記前駆体から活性パラジウムを発生させることもできる。上記前駆体として、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、ジ-μ-クロロビス[(η-アリル)パラジウム(II)]、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)等が挙げられる。
上述のパラジウム含有触媒の前駆体を使用する場合、トリホスホニウム塩等の配位子(リガンド)の前駆体を併用することが好ましい。トリホスホニウム塩の具体例として、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートが挙げられる。この化合物は、系中でトリ-t-ブチルホスフィンを生じ、パラジウムに対する配位子として機能する。
特に限定するものではないが、一実施形態において、パラジウム含有触媒として、ビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)と、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレートとを組合せて使用することが好ましい。
【0044】
触媒の使用量は、特に限定されないが、原料として使用するアミンに対して、代表的に、0.1モル%以上、20モル%以下の範囲であってよい。触媒の使用量を上記範囲内に調整することによって、反応を効率良く進行させ、かつ副生成物の生成を抑制することが容易となる。
【0045】
塩基は、特に限定されず、無機塩基及び有機塩基のいずれであってもよい。特に限定されないが、一実施形態において、有機塩基が好ましく、t-ブトキシナトリウム、n-ブチルリチウム等の有機アルカリ金属化合物を好適に使用することができる。塩基の使用量は、特に限定されないが、原料として使用するアミンのモル数に対して、代表的に、1.0モル当量以上、4モル当量以下の範囲であってよい。塩基の使用量を上記範囲内に調整することによって、反応を効率良く進行させ、かつ副生成物の生成を抑制することが容易となる。
【0046】
反応は、有機溶剤の存在下で実施することが好ましい。有機溶剤(反応溶剤)の一例として、例えば、ベンゼン、及びトルエン等の芳香族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、及びジメトキシエタン等の脂肪族エーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドが挙げられる。なかでも、一実施形態において、反応は、芳香族炭化水素の存在下で実施することが好ましく、トルエンの存在下で実施することがより好ましい。
【0047】
反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は0~200℃の範囲であってよい。一実施形態において、反応温度は、80~180℃の範囲であることが好ましい。
【0048】
原料として使用するモノマー混合物において、アミンとジハライドとの配合比は、特に限定されない。しかし、反応系内に未反応の原料が過剰に残存すると、望ましくない副反応が生じることがあるため、配合比は適切に調整することが好ましい。配合比は、使用するアミン及びジハライドの構造、及び所望とするアリールアミンポリマーの構造を考慮して、適切に調整することができる。
【0049】
一実施形態において、上記モノマー混合物に含まれる上式(1A)及び上式(1B)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1つのアミンと、上式(2)で表されるジハライドとの配合比は、上記アミンの当量数に対して、上記ジハライドの当量数が、0.5~1.5倍の範囲となることが好ましく、0.8~1.2倍の範囲がより好ましい。
【0050】
(分離精製工程)
本実施形態の電荷輸送性ポリマーの製造方法は、上記反応で得た直鎖型ポリマーを非ハロゲン系溶剤と混合することを含む分離精製工程を有する。バックワルド・ハートウィッグ反応によって得られる生成物の分離精製は、当業者に周知の方法に従って実施することができるが、本実施形態の製造方法では、反応後に得られる直鎖型ポリマーと非ハロゲン系溶剤とを混合することを特徴とする。
【0051】
非ハロゲン系溶剤は、分子内にハロゲン原子を含まない溶剤を意味する。非ハロゲン系溶剤は、特に限定されず、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、及び安息香酸n-ブチル等の芳香族エステル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、及びジメトキシエタン等の脂肪族エーテル、アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル(フェノールエーテルともいう)、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシドであってよい。なかでも、フェノールエーテルを好適に使用することができる。
【0052】
一実施形態において、非ハロゲン系溶剤は、下式(4)で表されるフェノールエーテルを含むことが好ましい。
【化8】
式中、R
1は、脂肪族炭化水素基、又はアリール基であり、R
2は、脂肪族炭化水素基、アリール基、又はヘテロアリール基であり、aは1~3の整数であり、bは0~5の整数である。
【0053】
上記脂肪族炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれであってもよいが、飽和であることが好ましい。炭素数1~22のアルキル基であることが好ましく、アルキル基は、直鎖、分岐、又は環状のいずれであってもよい。一実施形態において、上記脂肪族炭化水素基は、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0054】
上記アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1を除いた原子団であって、詳細は先に説明したとおりである。一実施形態において炭素数6~30のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~15のアリール基であることがさらに好ましい。
上記ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団であって、詳細は先に説明したとおりである。一実施形態において炭素数2~30のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素数2~15のヘテロアリール基であることがさらに好ましい。
【0055】
一実施形態において、上式(4)中のR1及びR2は、それぞれ独立して、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも炭素数1~8の直鎖のアルキル基であることが最も好ましい。また、上式(4)中のaは1~3の整数であり、かつbは0~2の整数であることが好ましく、aは1~3の整数であり、かつbは0であることがさらに好ましい。
【0056】
一実施形態において、フェノールエーテルは、アルコキシベンゼン、及びジアルコキシベンゼン、トリアルコキシベンゼンであることが好ましい。アルコキシベンゼンの具体例として、メトキシベンゼン(アニソール)、エトキシベンゼン(フェネトール)、2-メトキシトルエン、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、2,3-ジメチルアニソール、及び2,4-ジメチルアニソール等が挙げられる。また、ジアルコキシベンゼンの具体例として、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、及び1,4-ジメトキシベンゼン等が挙げられる。また、トリアルコキシベンゼンの具体例として、1,3,5-トリメトキシベンゼン等が挙げられる。一実施形態において、非ハロゲン系溶剤として、上記化合物を単独で、又は2種以上組合せて使用することが好ましい。なかでも、少なくともアニソールを使用することが好ましい。
【0057】
バックワルド・ハートウィッグ反応によって得られる生成物(ポリマー)には、反応時に使用した触媒及び原料モノマーなどの成分に由来する不純物が残存しやすい。これに対し、本発明者らは、反応後に得られるポリマーの分離精製について鋭意検討を行い、ポリマーとフェノールエーテル等の非ハロゲン系溶剤とを混合した後にポリマーを回収することによって、ポリマー中に残存する不純物を容易に取り除くことができることを見出した。特に、フェノールエーテルの中でもアニソールを使用した場合、ハロゲン系溶剤を使用した場合と比較して、ポリマー中に残存する不純物の量を効果的に低減することができ、高純度の電荷輸送性ポリマーが容易に得られることを見出した。
【0058】
理論によって拘束するものではないが、上記実施形態によれば、先ず、非ハロゲン系溶剤を使用することによって、反応系にハロゲン成分が存在することによって生じやすい副反応を抑制することができると考えられる。また、バックワルド・ハートウィッグ反応では、反応中に沈殿物が生じやすいため、生成物が不均一となりやすい。これに対し、非ハロゲン系溶剤の中でも、アニソールは、固形物として析出したポリマー成分を良く溶解する。そのため、系中でのポリマーの分散性が向上し、ポリマー中に不純物が残存することを抑制していると考えられる。したがって、アニソール等の非ハロゲン系溶剤の使用量は、反応溶液中の固形物が溶解するように適宜調整することが望ましい。
【0059】
ポリマーと非ハロゲン系溶剤との混合は、例えば、ポリマーを含む反応溶液に非ハロゲン系溶剤を加えて実施してもよい。ポリマーと非ハロゲン系溶剤との混合後にポリマーを回収する方法は特に限定されず、当業者に周知の方法によって実施することができる。例えば、上記混合において得られる混合液を、分液、及びろ過等の方法に従い分離することによって、不純物を除去する一方で、ポリマーを回収することができる。
【0060】
一実施形態として、ポリマーと非ハロゲン系溶剤との混合において、重金属捕捉剤を加えてもよい。上記混合において重金属捕捉剤を加えることによって、触媒等に由来する不純物をより効果的に除去することができる。重金属捕捉剤は、触媒として使用したパラジウム等の重金属をキレート化して捕捉することが可能な化合物、又は重金属と特異的に結合して吸着することが可能な化合物であればよい。例えば、重金属捕捉剤として、特定の官能基を有するシリカ化合物、及びジチオカルバミン酸塩等を使用することができる。
【0061】
重金属捕捉剤の使用量は、特に限定されない。一実施形態において、非ハロゲン系溶剤を用いた分離精製による不純物の除去効果をより高める観点から、パラジウム含有触媒におけるパラジウム(Pd)のモル数を基準として、重金属捕捉剤が1モル当量以上、300モル当量以下となる量で使用されることが好ましい。
【0062】
一実施形態において、反応後の生成物の分離精製は、反応後のポリマーを含む溶液(好ましくは、トルエン溶液)に、アニソールを加えて混合した後に、この混合液にさらに純水を加えて分液することを含む。分液によって得られた有機層から溶剤を留去することによって、所望とするポリマーを得ることができる。
【0063】
上述のように分液によってポリマーを回収する実施形態において、上記混合液に重金属捕捉剤を加える場合、水溶性の重金属捕捉剤を使用することが好ましい。一実施形態において、上記混合液に重金属捕捉剤の水溶液を加えてもよい。
【0064】
上記実施形態において、重金属捕捉剤として、ジチオカルバミン酸塩を好適に使用することができる。ジチオカルバミン酸塩が重金属に配したキレートは、水に溶解しやすいため、純水を加えて分液する時に、触媒に由来するPd等の重金属を水層に移行させることが容易となる。ジチオカルバミン酸塩は、分子内にジチオカルバミル基を有する化合物であれば特に限定されないが、アルキルジチオカルバミン酸塩が好ましい。なかでも、水溶性の観点から、炭素数1~6のアルキル基を有するアルキルジチオカルバミン酸塩がより好ましい。
【0065】
具体例として、ジメチルジチオカルバミン酸塩、ジエチルジチオカルバミン酸塩、ジプロピルジチオカルバミン酸塩、ジブチルジチオカルバミン酸塩、エチレンビスジチオカルバミン酸塩、メチルジチオカルバミン酸塩、エチルジチオカルバミン酸塩、n-プロピルジチオカルバミン酸塩等が挙げられ、それぞれの塩の形態はナトリウム塩およびカリウム塩等であってよい。中でも、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを好適に使用することができる。
【0066】
一実施形態において、ポリマーの分離精製は、ポリマーを含む反応溶液、非ハロゲン系溶剤、及びジメチルジチオカルバミン酸塩の水溶液を混合すること、必要に応じて、この混合液に純水を加えさらに混合することを含む。また、このようにして得た混合液を分液して水層を除去すること、分液後に得られる有機層から溶剤を除去し、所望とするポリマーを得ることを含む。さらに、必要に応じて、有機層から溶剤を除去して得たポリマーを再度非ハロゲン系溶剤に溶解し、再結晶化することを含んでもよい。
【0067】
一実施形態において、有機エレクトロニクス材料として好適に使用できる純度のポリマーを提供する観点から、ポリマー中のパラジウム含有量は、100ppm以下が好ましく、80ppm以下がより好ましく、50ppm以下がさらに好ましい。また、ポリマー中のハロゲン原子の含有量(合計量)は、300ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましく、60ppm以下がさらに好ましい。
【0068】
これに対し、上記実施形態の製造方法によれば、パラジウム含有量、及び臭素原子及び塩素原子等のハロゲン原子の含有量がいずれも上記範囲内となるポリマーを容易に提供することができる。そのため、上記実施形態の製造方法によれば、有機エレクトロニクス材料として好適に使用することができるポリマーを提供することが可能となる。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
1.電荷輸送性ポリマーの製造
(実施例1)
25mlスケールのシュレンク管に、攪拌子、4,4’-ジブロモビフェニル(0.312g、1.00mmol)、及びトリ-t-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(0.0116mg、0.04mmol)を入れた。次いで、シュレンク管内を真空にした後、N2ガスで置換し、4-n-オクチルアニリン(223.2μl、3.00mmol)、及び1-ブロモ-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(34.5μl、0.2mmol)を、それぞれシリンジを用いて加えた。
上述のように原料を入れたシュレンク管をグローブボックス(GB)に移し、t-ブトキシナトリウム(288.4mg、3.00mmol)、及びビス(トリ-t-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(20.6mg、0.04mmol)を加え、さらにトルエン4.0mlを加えた。これらを室温(25℃)で5分間撹拌した後、100℃で24時間反応させた。
次に、反応後の溶液を室温まで冷却した後、分離精製用溶剤としてアニソールを15ml加え、溶液中に析出していた固体を溶解させた。次いで、ジエチレンジチオカルバメートナトリウム水溶液10mlを加え、室温で一晩撹拌した。撹拌後の溶液に純水を加えて分液し、有機層を取り出した後、真空下で溶剤を除去し固体(ポリマー)を得た(収量0.367g、収率85%、Mw21,200)。
【0071】
(不純物量の分析方法)
各ポリマー中のパラジウム(Pd)、Br及びClの含有量について、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(以下、EDX)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりである。
【0072】
装置:島津製作所、EDX-7000
X線管:Rhターゲット
雰囲気:大気
測定時間(秒):Pd:600、 Br:100、 Cl:1000
分析範囲(keV):Pd:20.72~21.52、 Br:11.66~12.16、 Cl:2.42~2.82
【0073】
(比較例1)
実施例1のポリマーの製造において、分離精製用溶剤として用いたアニソールに代えてクロロホルムを使用したことを除き、全て実施例1と同様にして、ポリマーを得た(収量0.380g、収率88%、Mw28,400)。
また、実施例1と同様にして、ポリマーにおける不純物の量を分析した。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
実施例1のポリマーの製造において、分離精製用溶剤として用いたアニソールに代えて0-ジクロロベンゼンを使用したことを除き、全て実施例1と同様にして、ポリマーを得た(収量0.350g、収率81%、Mw22,800)。
また、実施例1と同様にして、ポリマーにおける不純物の量を分析した。結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
表1に示すように、ハロゲン系溶剤を使用した比較例1及び2との対比において、アニソールを使用した実施例1のポリマーは、不純物の量が格段に少ないことが分かる。そもそも比較例1及び2では、分離精製用溶剤として使用したハロゲン系溶剤に由来してポリマー中のCl含有量が多いと推測される。しかし、触媒に由来するPd含有量、及び原料として使用したモノマー化合物に由来するBr含有量についても、実施例1のポリマーと顕著な違いが見られる。このことから、アニソール等の非ハロゲン系溶剤を使用してポリマーの分離精製を行うことによって、反応時に使用した成分に由来する不純物の量を効果的に低減できることが分かる。