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  • 特許-スライド構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】スライド構造体
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/25 20060101AFI20230216BHJP
【FI】
B23Q1/25
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018234622
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020093372
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】上河原 敦
(72)【発明者】
【氏名】若宮 篤史
(72)【発明者】
【氏名】杉田 直彦
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-155167(JP,A)
【文献】特開2015-042475(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117187(WO,A1)
【文献】特開2005-139612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01、1/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械にスライド可能に設けられた構造体であって、
板材及び角材と短形断面形状のパイプ材で構成され、
前記板材及び角材は鋼材で製作され、前記パイプ材は鋼材製であるとともに前記板材及び角材と前記パイプ材が相互に溶接接合され、
前記鋼材製のパイプ材は内側に繊維強化樹脂製の中空断面形状からなるフレーム材が挿入されていることを特徴とするスライド構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に主軸頭,主軸台,刃物台等の移動構造物を据え付けるためのスライド構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、多軸制御された立形(縦型)マシニングセンター,横型マシニングセンター,門形マシニングセンター,複合加工機等や、旋盤,フライス盤,削り盤,ボール盤,中ぐり盤等の特定の用途に特化したもの等、多くの種類がある。
これらの工作機械には、主軸頭,ツール等を移動制御するためのラム等のスライド構造体、主軸を移動制御する主軸台等のスライド構造体、バイトやタレット等を移動制御するための刃物台、テーブルを移動制御するサドル等のスライド構造体等、用途に応じて各種スライド構造体が採用されている(特許文献1,2)。
これらのスライド構造体は、主軸,ツール,ワーク(加工物)等の移動を制御するためのものであり、そのスライド精度を確保するのに高い静剛性、動剛性としての高い減衰性、小さい熱変位等の特性が要求されるとともに、コンパクト設計のための軽量化が要求されている。
これらの構造体に従来は、ねずみ鋳鉄が採用されていたが、高剛性を確保するには重くなり、軽量化が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-202555号公報
【文献】特開平02-185301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軽量で高剛性,高減衰特性,低熱変位特性を有するスライド構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、工作機械にスライド可能に設けられた構造体であって、板材及び角材と短形断面形状のパイプ材で構成され、前記パイプ材は内側に繊維強化樹脂が挿入又は充填されていることを特徴とする。
【0006】
ここで、スライド構造体は、ラム,サドル等と称される移動構造物をいい、各種主軸台や刃物台も含まれる。
【0007】
本発明において、繊維強化樹脂はパイプ材にて包み込んであるので、板材及び角材は鋼材で製作され、前記パイプ材は鋼材製であるとともに前記板材及び角材と前記パイプ材が相互に溶接接合されていてよい。
短形断面形状のパイプ材の内側に繊維強化樹脂(FRP)を挿入又は充填したので、軽量,小型断面でありながら高剛性となる。
【0008】
FRP材としては、炭素繊維を用いたCFRP,ガラス繊維を用いたGFRP等が例として挙げられる。
これらのCFRP,GFRPは、パイプ材を金型として内側に充填成型することもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る工作機械のスライド構造体は、CFRP,GFRP等の繊維強化樹脂を挿入又は充填した短形断面形状のパイプ材を採用したので、静剛性が向上し減衰性に優れ、熱変位を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るスライド構造体の例を示す。
図2図1に示したスライド構造体の断面図を示す。
図3】従来のねずみ鋳鉄製の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明に係る工作機械のスライド構造体を模式的に示し、図2に断面構造を示す。
鋼材からなる板材11,角材13と複数のパイプ材12a~12dを相互に溶接接合して、全体としてスライド構造体10を形成してある。
鋼材としては、骨材として使用されている一般的なものを採用することが出来る。
例えば、SS400(一般構造用圧延銅材)とSTKR400(一般構造用角形鋼管)を組み合せて製作することができる。
【0012】
図1,2に示したスライド構造体10の実施例は、立形マシニングセンターのラムとして図3に示すように、従来のねずみ鋳鉄製のものを鋼材とCFRPとの組合せにて製作した例である。
図1,2に示すように、中央部を板材11とパイプ材12bで形成し、その両側に左右対称となるようにパイプ材12cと、このパイプ材12cにパイプ材12aを相互に溶接接合してある。
上部側の両側のパイプ材12aには、それぞれ角材13を溶接し、図示を省略した主軸頭の連結部を形成した例になっている。
また、パイプ材12cの下側は左右の角材13aと、パイプ材12dにてスライド部15との連結部を形成し、ボールネジ機構等により上下移動制御されている。
パイプ材12a~12dの内側(内部)には、CFRPの中空断面形状からなるフレーム材又は板材14a~14dを挿入してある。
このCFRPは、パイプ材を金型として充填成型してもよい。
本実施例に係るスライド構造体10を図3に示した従来のねずみ鋳鉄のものと比較したところ、静剛性50%向上,減衰比50%向上,熱変位20%低減を達成することができた。
【符号の説明】
【0013】
10 スライド構造体
11 板材
12a パイプ材
13 角材
14a~14d CFRP
図1
図2
図3