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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20230216BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20230216BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230216BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20230216BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/16
A61K47/02
A61P35/00
A61K33/243
A61K31/7048
A61K31/704
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019553415
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2018057877
(87)【国際公開番号】W WO2018178134
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】17163830.7
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ガイスラー,シモン
(72)【発明者】
【氏名】イェシュケ,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】ボーニフォルテ,パトリツィア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイガント,マルクス
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522190(JP,A)
【文献】特表2017-505306(JP,A)
【文献】特表2011-509283(JP,A)
【文献】特開2016-098179(JP,A)
【文献】国際公開第2015/128298(WO,A1)
【文献】Med Chem (Los Angeles),2017年08月28日,Vol. 7, No. 6,pp. 172-177
【文献】Drugs of the Future,2016年12月01日,2017, Vol. 42, No. 2,pp. 125-129
【文献】International Journal of Radiation Oncology,2016年,Vol. 94, No. 4,pp. 940-941,280
【文献】World J Gastroenterol,2016年,Vol. 22, No. 32,pp. 7275-7288
【文献】Abstract 1658: M3814, a novel investigational DNA-PK inhibitor: enhancing the effect of fractionated radiotherapy leading to complete regression of tumors in mice,CANCER RESEARCH (AACR 107th Annual Meeting 2016),2016年,DOI: 10.1158/1538-7445.AM2016-1658
【文献】AAPS PharmSciTech,2015年04月,Vol. 16, No. 2,pp. 444-454
【文献】MOLECULAR PHARMACEUTICS,2008年,Vol. 5, No. 6,pp. 1003-1019
【文献】Journal of Pharmaceutics,2013年,Article ID 151432,pp. 1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスにおける固体分散体であって、
ここでポリマーマトリックスは、
ポリビニルピロリドンおよびポリ酢酸ビニルのコポリマーを含むか、またはからなる、または、
ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含むか、またはからなるものであり、
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩の前記固体分散体。
【請求項2】
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールが、その遊離形態において存在する、請求項1に記載の固体分散体。
【請求項3】
ポリマーマトリックスが、ポリビニルピロリドンおよびポリ酢酸ビニルのコポリマーからなる、請求項1または2に記載の固体分散体。
【請求項4】
固体分散体が固溶体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項5】
ポリマーマトリックスにおける、
ここでポリマーマトリックスは、
ポリビニルピロリドンおよびポリ酢酸ビニルのコポリマーを含むか、またはからなる、または、
ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含むか、またはからなる、
固体分散体が、ホットメルトエクストルージョンによって得られる、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体。
【請求項6】
ポリマーマトリックスにおける、
ここでポリマーマトリックスは、
ポリビニルピロリドンおよびポリ酢酸ビニルのコポリマーを含むか、またはからなる、または、
ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含むか、またはからなる、
固体分散体が、スプレー乾燥によって得られる、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体。
【請求項7】
ポリマーマトリックスにおける遊離形態においてまたは薬学的に許容し得る塩として存在してもよい、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの濃度が、固体分散体の総重量に基づいて4~50重量パーセント、好ましくは10~30重量パーセントの間の範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項8】
1000μm以下、好ましくは400μm以下のd50値によって特徴づけられる粒径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の固体分散体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の固体分散体を含む、医薬組成物。
【請求項10】
経口投与のための医薬組成物である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
即時放出組成物である、請求項9または10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
15分以下、好ましくは10分以下の崩壊時間によって特徴づけられる、請求項9~11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
固体分散体および任意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含む充填剤を包含するカプセルである、請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
カプセルであり、充填剤の総重量に基づいて、40~100重量%の請求項1~6のいずれか一項に記載の固体分散体;および0~60重量%の少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤であって、好ましくは充填剤、崩壊剤、潤滑剤、細孔ビルダー(a pore builder)、および無機アルカリ金属塩から選択される賦形剤からなる充填剤を包含する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含み、ならびに錠剤および顆粒から選択される、請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
充填剤、崩壊剤、潤滑剤、細孔ビルダー、および無機アルカリ金属塩から選択される、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含む錠剤である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項15または16に記載の医薬組成物であって:
錠剤の総重量に基づいて、
i.25~95重量%の固体分散体;
ii.15~72.5重量%の充填剤;
iii.2.5~40重量%の崩壊剤;
iv.任意に、0~5重量%の潤滑剤;
v.任意に、0~20重量%の無機アルカリ金属塩;および
vi.任意に、総量0~20重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤、
を含む錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物であって:
錠剤の総重量に基づいて、
i.40~60重量%の固体分散体;
ii.25~55重量%の充填剤;
iii.5~30重量%の崩壊剤;
iv.任意に、0~5重量%の潤滑剤;
v.任意に、0~15重量%の無機アルカリ金属塩;および
vi.任意に、総量0~10重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤、
を含む錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一項に記載の医薬組成物であって:
錠剤の総重量に基づいて、
i.35~55重量%の固体分散体;
ii.30~55重量%の充填剤;
iii.5~20重量%の崩壊剤;
iv.0.25~2.5重量%の潤滑剤;
v.2.5~15重量%の無機アルカリ金属塩;および
vi.任意に、総量0~10重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤、
を含む錠剤である、前記医薬組成物。
【請求項20】
充填剤が微結晶セルロースであり、ならびに/または、崩壊剤がクロスポビドン、カルボキシメチルセルロースおよびその塩および誘導体から選択され、ならびに/または、無機アルカリ金属塩が無機ナトリウム塩である、請求項14または16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
ホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体を製造する方法。
【請求項22】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体を製造する方法であって、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩、および形成するべきポリマーマトリックスのポリマー、および任意に少なくとも1種の薬学的に許容し得る賦形剤を混合して溶解すること、混合物をホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒して固体分散体を形成すること、任意に形成された固体分散体を粉砕することを含む、前記方法。
【請求項23】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体を製造する方法であって、
溶媒において、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールまたはその薬学的許容し得る塩、および形成するべきポリマーマトリックスのポリマー、および任意に1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤を溶解して溶液を形成すること、
溶液をスプレー乾燥して固体分散体を形成すること、
任意に、好ましくは減圧下で、固体分散体を乾燥すること、
を含む、前記方法。
【請求項24】
請求項1~4のいずれか一項に記載の固体分散体を含む医薬組成物を製造する方法であって、
固体分散体を形成するための請求項21~23のいずれか一項に記載の方法;
固体分散体および1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤を混合すること;
任意に固体分散体および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤の混合物を粒状にすること、およびカプセルに混合物を充填するかまたは混合物を錠剤化することのいずれか、
を含む、前記方法。
【請求項25】
がんの処置における使用のための、請求項9~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
処置がさらに放射線治療を含む、請求項25に記載のがんの処置における使用のための医薬組成物。
【請求項27】
処置がさらに化学療法を含む、請求項25または26に記載のがんの処置における使用のための医薬組成物。
【請求項28】
化学療法が、シスプラチン、エトポシドもしくはドキソルビシンまたはシスプラチンとエトポシドもしくはドキソルビシンとの組み合わせの投与を含む、請求項27に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景技術
【背景技術】
【0002】
本発明は、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの医薬製剤、およびそれを作成する方法、およびその医薬の使用に関する。
【0003】
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールは、WO2014/183850における例136として、重要な薬理学特性を有することが見いだされているアリールキナゾリンのファミリーの一要素として開示される。それは、in vitroおよびin vivoデータにより両方実証されている、がん細胞株におけるDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)自動リン酸化の強い阻害に翻訳するDNA-PK活性の強く且つ選択的な阻害である。したがって、それは特に、がん細胞の抗がん剤および/またはイオン化放射線への増感のために使用され得る。
【0004】
DNAの形態におけるヒト遺伝物質は、酸化的代謝の副生成物として主に形成される活性酸素種(ROS)による攻撃に常にさらされる。ROSは一重鎖切断の形態におけるDNA損傷を引き起こすことを可能にする。二重鎖切断(DSB)は、初めの一重鎖切断が近接近において生じる場合に起こり得る。さらに、一重鎖および二重鎖切断は、DNA複製フォークが損傷した塩基パターンに遭遇する場合に引き起こされ得る。さらに、外的影響、例えばイオン化放射線(例えば、ガンマまたは粒子放射線)、および一定の抗がん薬(例えばブレオマイシン)は、DNA二重鎖切断を引き起こすことを可能にする。さらに、DSBは全ての脊椎動物の機能的な免疫システムの形成のために重要であるプロセスである、体細胞組換えの中間体として生じてもよい。
【0005】
DNA二重切断が修復されないか、または不正確に修復される場合、突然変異および/または染色体異常が生じ得、それは結果として細胞死をもたらし得る。DNA二重鎖切断に起因する深刻な危険に対抗するために、真核細胞はそれらを修復するために多くのメカニズムを発達させてきた。高等真核生物はDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)が重要な役割を引き受ける、いわゆる非相同末端結合を使用する。DNA依存性プロテインキナーゼ(DNA-PK)は、DNAと共に活性化するセリン/スレオニンプロテインキナーゼである。生化学的研究は、DNA-PKが、DNA-DSBの出現によって最も効果的に活性化されるということを示している。DNA-PK構成要素が突然変異し、および無機能である細胞株は、放射線感受性であることが証明されている(Smith and Jackson, 1999)。DSBは、修復しないまま放置した場合、最も致命的なタイプのDNA損傷であると考えられる。
【0006】
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールは、水および疑似胃液に難溶性である。また、アモルファス形態において、化合物は体積が大きく、および静電気的に帯電しており、したがってそれ自身を固体製剤への加工することに容易に導かない。さらに、鏡像異性の薬学的に活性である成分の固体製剤を製造することは、通常、ユートマーのディストマーへの所望でない変換のリスクを有する。
したがって、十分なバイオアベイラビリティ―およびエナンチオマー安定性、ならびにその製造に適したプロセスを提供する、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イル-キナゾリン-4-イル)-フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの薬の剤形を提供することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本発明は、ポリマーマトリックス中における、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体を含む複合物を指す。
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールを以下に図示する:
【化1】
【0008】
本明細書を通して言及は化合物の(S)-エナンチオマーについてであるが、本文脈における用語(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)-メタノールは、一定のパーセントのディストマー不純物を許容するとみなされるものとし、好ましくは最大10重量%、より好ましくは最大5重量%、さらにより好ましくは最大2重量%、および最も好ましくは最大1重量%以下のディストマー不純物を包含する。それゆえ、例えば本明細書における分散または医薬製剤などにおける、(S)-エナンチオマーの任意の量または重量または重量パーセントは、(S)-エナンチオマーと任意の(R)-エナンチオマーの回避できない不純物を含む。任意の形態において、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)-メタノールは、以下において単に「製剤原料」と称されてもよい。
【0009】
エナンチオマー不純物の程度を、例えば例11に記載されたとおりの、定量的キラルHPLCを使用して評価できる。
【0010】
さらに本発明は、単独または放射線治療および/もしくは化学療法との組み合わせのいずれかでの、当該複合物を含む医薬組成物、複合物の製造方法および医薬組成物の製造方法、ならびにがんの処置における各医薬組成物の複合物の使用に関連する。
【0011】
上に記載の通り、第1の側面において、本発明は、ポリマーマトリックス中における、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩の固体分散体を含む複合物を提供する。いくつかの態様において、複合物は固体分散体および1以上の薬学的に許容し得る賦形剤、例えば充填剤(例えば、多糖類、二糖類、ポリアルコール)、崩壊剤(例えば、ポリビニルポリピロリドン)、非イオン性およびイオン性界面活性剤(例えば、ポロキサマー、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム)、可塑剤(例えば、ポリアルキレングリコール)および無機吸収剤(例えば、シリカ)から選択される、を含んでもよい。
【0012】
本明細書において使用されているとおり、固体分散体は、本発明に従うポリマーマトリックスである分散媒において分散または分配される、製剤原料を指す。製剤原料およびポリマーの物理的状態の可能な組み合わせに基づいて、製剤原料は結晶またはアモルファスのいずれかになることができ、ポリマーマトリックスもまた結晶およびアモルファスになることができ、結果として4つの可能な組み合わせ:結晶製剤原料-結晶ポリマー(固体懸濁);アモルファス製剤原料-アモルファスポリマー;結晶薬剤(drug)-アモルファスポリマー;およびアモルファス薬剤-結晶ポリマー、
をもたらす。
【0013】
本明細書における例示の態様は、ポリマーマトリックスにおけるアモルファス製剤原料に関する。アモルファス製剤原料は、アモルファスポリマーマトリックスにおいてアモルファス(微)粒子の形態において分散されることができ、それはその後アモルファス懸濁として言及されるか、あるいはそれは、(結晶またはアモルファス)ポリマーまたはポリマーマトリックスに分子的に分散されて固溶体を形成することができる。本明細書の意味における「固溶体」は、製剤原料のごく一部が溶液から出てくるかまたは溶解しないままであり得、ただし、例えば(体積で)製剤原料の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%および最も好ましくは少なくとも約95%または少なくとも約99%が、分子的に分散された状態になるだろう。かかる固溶体において、製剤原料の個々の物理的性質はもはや認識できない。
【0014】
好ましい態様において、本発明に従う複合物は、ポリマーマトリックス中における、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールまたはその薬学的許容し得る塩の固体分散体からなる。したがって、言うまでもなく、それは単に固体分散体と称されてもよい。
【0015】
最も好ましくは、固体分散体は固溶体であり、すなわち最も好ましくは、製剤原料はポリマーマトリックス中に分子的に分散される。
本明細書において記載される例示の態様から明らかなとおり、得られた固体分散体はアモルファスである。
【0016】
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールが任意の適切な塩形態において存在し得る一方、最も好ましくはそれは塩形態よりもその遊離形態で存在する。
薬学的に許容し得る塩は、本明細書においてその全体において参照により組み込まれるWO2014/183850の開示において言及されるものを含む。
【0017】
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールまたはその薬学的に許容し得る塩の量また重量または重量パーセントに対する任意の参照は、本明細書において他に特定しない限り、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの無水の遊離形態(上記に設定した通り、該当する場合、ディストマーを包含する)を参照して解されるものとする。
【0018】
固体分散体を形成するために、ポリマーマトリックスを形成するポリマー(単数)またはポリマー(複数)は一般に、とりわけ、とくに融解造粒または融解押出プロセスにおいて融点より上に加熱したとき、あるいは溶媒に溶解し、スプレー乾燥プロセスなど、霧化したとき、製剤原料を埋め込むことができるポリマーである。したがって、ポリマーマトリックスを形成するポリマーは、好ましくは熱可塑性挙動を提示する。それゆえ、最も好ましくは分子レベルで、製剤原料を埋め込むことができ、およびその溶解を高める任意のポリマーは、本発明の文脈に使用され得る。したがって、親水性のポリマーが好ましい。
【0019】
好ましい態様において、ポリマーマトリックスは、ポリビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーを含むか、またはからなる。より好ましくは、ポリマーマトリックスは、ポリビニルピロリドンのコポリマー、最も好ましくはポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーを含むか、またはからなる。最も好ましくは、固体分散体は、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)-メタノールからなり、最も好ましくはポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーのポリマーマトリックスにおける、その遊離形態にある。例示の態様に関して示されるだろうとおり、この態様は、それが(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールからディストマー((R)-エナンチオマー)への最小限の変換で調製されることができるという点で特に有益である。長期貯蔵後でさえ、ユートマー:ディストマー比は高度に満たしている。臨床的有効量の現在の推定値に基づいて、患者によって接種され、したがって薬の剤形に組み込まれる量が実質的であることを考慮すると、これは検討するべきである高度に重要な要因である。好ましくは、固体分散体はホットメルトエクストルージョンによって得られ得る。
【0020】
ポリビニルピロリドンとポリ酢酸ビニルとのコポリマーはまた、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーとコポリマー、コポビドン(USP)、コポリビドン(JPE)、PVP-VAc-コポリマー、または:酢酸エテニルエステル、1-エテニル-2-ピロリジノン(IUPAC)を有するポリマーを言っても/含んでもよい。任意のこれらの用語は以下で使用され得るが、単純化のためにコポビドンが用いられる。コポリマーのCAS番号は25086-89-9である。適切な市販のコポビドンの例は、Kollidon(登録商標)VA64(BASF)である。製造者情報に従い、Kollidon(登録商標)VA64グレードは、鎖状構造を有する水溶性のポリマーを産生する、cGMP調整に従う、2-プロパノール中の6部のN-ビニルピロリドンと4部のビニルアセタートのフリーラジカル重合によって製造される。25.2-30.8(通常28)の範囲におけるK-値を有することがさらに報告され、K-値は欧州薬局方に従って決定され、すなわち25℃で水中1%の溶液の相対粘度(動粘性)から計算される。Kollidon(登録商標)VA64のガラス転移温度は、湿度に依存し、乾燥Kollidon(登録商標)VA64に対して103℃である。
【0021】
別の好ましい態様において、ポリマーマトリックスは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーを含むか、またはからなる。適切な市販のポリマーはSoluplus(登録商標)(BASF)を指定される。製造者の情報によると、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるとおりのその製品の平均分子量は、典型的に90.000~140.000g/molの範囲である。コポリマーのCAS番号は402932-23-4である。
【0022】
別の態様において、ポリマーマトリックスは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含むか、またはからなる。ポリマーはまた、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートサクシネート、または:セルロース、2-ヒドロキシプロピルメチルエーテル、アセタート、水素ブタンジオアート(IUPAC)、またはHPMCASと略されるものとして言及されてもよい。CAS登録番号は、71138-97-1である。ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルの市販されている適切な例の例はAqoat(登録商標)(Shin-Etsu)である。融解加工、とりわけホットメルトエクストルージョンにおいて、本明細書において特に好ましいのは、微粉末化異形体、例えばAqoat(登録商標)AS-LFであり、それは製造者情報に従い、8%のアセチル基と15%のスクシニル基を含み、重量平均分子量は18.000(SEC-MALSで測定された)、平均粒径5μmを有する。他の製造プロセス、とりわけスプレー乾燥のために本明細書において好ましいのは、別の微粉末化異形体、例えばAqoat(登録商標)AS-HFであり、それは製造者情報に従い、12%のアセチル基と6%のスクシニル基を含み、平均粒径は5μmを有する。
【0023】
特にスプレー乾燥により得られる固体分散体から明らかになるだろうとおり、ポリマーマトリックスが、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを含むか、またはからなる態様は、同様に非常に有利であり、したがって本明細書において好ましい。
【0024】
さらなる別の態様において、ポリマーマトリックスは、基本のブチル化メタクリルコポリマー(USP:アミノメタクリラートポリマー)を含むか、またはからなる。かかるポリマーの適切な例は、Eudragit(登録商標)、例えば(CAS番号24938-16-7)、例えばEudragit(登録商標)E100またはE POである。製造者の仕様(specification)によると、Eudragit(登録商標)E100は、ジメチルアミノエチルメタクリラート、ブチルメタクリラートおよびメチルメタクリラートが2:1:1の比である、に基づくカチオン性ポリマーである。モノマーは、コポリマー鎖にそって無作為に分布する。SEC法に基づき、Eudragit(登録商標)E100またはEPOの重量平均分子質量はおおよそ47,000g/molである。Eudragit(登録商標)EPOは、Ph.Eur.2.9.31/光回折測定USP<429>のDv50<50μmによるレーザー光回折によって決定される粒径を有する。
【0025】
さらなる例示の態様において、ポリマーマトリックスは、HPMCPを含むかまたはからなり得る。HPMCPは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのモノフタル酸エステルである、ヒプロメロースフタラートの略称である。それは、メトキシ、ヒドロキシプロポキシ、およびフタリル基を包含する。HPMCPはCAS登録番号9050-31-1を有する。適切な例はShin-Etsuから入手可能なHPMCPグレードである。
【0026】
さらに、マクロゴール、PEOホモポリマーまたはコポリマー、ポリアクリラートホモポリマーまたはコポリマー、セルロースエーテルおよび多糖類などの技術分野において公知であるポリマーは、さらにポリマーマトリックスを形成し得る、さらに考えられるポリマーである。
【0027】
本発明による固体分散体におけるポリマーマトリックスは、マトリックスを形成する1より多いポリマーを含み得る。しかしながら、好ましい態様において、ポリマーマトリックスは1つのポリマーのみを含む。さらに、1以上の添加物、例えば1以上の可塑剤などを含んでよく、または含まなくてもよい。技術分野で公知である例示の可塑剤は、ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、Kolliphor(登録商標)P188、P338、P407)、ポリソルベート(例えば、Tween(登録商標))、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、トリエチルクエン酸アセチル、トリブチルクエン酸アセチル、クエン酸一水和物、トリアセチン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、セバシン酸ジエチル、ヒマシ油およびそれらの誘導体、例えばPEG-40水素化ヒマシ油を含む。
【0028】
いくつかの例示の態様において、さらなる薬学的に許容し得る賦形剤は既にポリマーマトリックスを形成するためのポリマーとの混和物において提供されている。しかしながら、本明細書において用いられる「ポリマー」は、ポリマーの添加物とのブレンドとして理解されるべきではなく、それはかかるとおりのポリマーをいうものとする。
好ましい態様において、固体分散体、より好ましくは固溶体は、ポリマーマトリックスにおける製剤原料のみからなり、それは任意のさらなる添加物なしの1つのポリマーによって形成される(2-構成要素システム)。
【0029】
本発明に従う固体分散体は、例えば、ホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒によって得られ得る。ホットメルトエクストルージョンは、それが最も有益な分散物、特に複合物の特性を提供するために見いだされるので特に好ましい。それゆえ、好ましくは、固体分散体はホットメルト押出物である。
別の例示の態様において、本発明に従う固体分散体は、溶媒ベースのプロセス、最も好ましく且つ有利にはスプレー乾燥によって得られ得る。
【0030】
共沈、凍結乾燥または溶媒キャスティングは、本発明に従う固体分散体を生産するのに一般に利用可能であるさらなるプロセスである。
【0031】
好ましくは、本発明の複合物において、特に固体分散体そのものにおいて、ポリマーマトリックス中において遊離形態で、または薬学的に許容し得る塩の形態で存在し得る、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの濃度は、固体分散体の総量に基づいて、4~60重量パーセント、例えば4~50重量パーセント、好ましくは10~40重量パーセント、例えば15~30重量%、または17.5~25重量%の範囲である。
【0032】
明確化のために、重量パーセントは、製剤原料が遊離形態かその薬学的に許容し得る塩の1つの形態に包含されているかに関わらず、無水の遊離形態をいうことを繰り返すものとする。
【0033】
異なる表現をすると、例えば、固体分散体は、少なくとも4重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、少なくとも10重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、少なくとも15重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールまたは少なくとも17.5重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールを含み得る。さらに、上の通り、製剤原料は、無水の遊離形態を想定して計算される重量パーセントを用いる遊離形態または塩形態において存在し得る。
【0034】
例示の態様において、固体分散体は、15~35重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび65~85重量%の、好ましくは任意のさらなる添加物なしのただ一つのポリマーによって作りあげられるポリマーマトリックスからなる。他の例示の態様において、固体分散体は15~30重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび70~85重量%の、好ましくは任意のさらなる添加物なしのただ一つのポリマーによって作りあげられる、ポリマーマトリックスからなる。
【0035】
さらなる例示の態様において、固体分散体は、15~25重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび75~85重量%の、好ましくは、任意のさらなる添加物なしのただ一つのポリマーによって作りあげられるポリマーマトリックスからなる。
例示の態様において、固体分散体は、20重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび80重量%の、好ましくは任意のさらなる添加物なしのただ一つのポリマーによって作りあげられるポリマーマトリックスからなる。
【0036】
別の例示の態様において、固体分散体は、25重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび75重量%の、好ましくは任意のさらなる添加物内に1つのみのポリマーによって作りあげられるポリマーマトリックスからなる。
【0037】
別の例示の態様において、固体分散体は、30重量%の(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールおよび70重量%の、好ましくは任意のさらなる添加物なしのただ一つのポリマーによって作りあげられるポリマーマトリックスからなる。全体から見て、および例から明らかだろう通り、本発明に従う固体分散体は良好なバイオアベイラビリティを提供する。固体分散体は乏しい溶解性の活性成分のバイオアベイラビリティを増強するために潜在的に有益であることが知られている一方、科学の根底にあるこの技術は、いまだ十分に理解されず、小スケールのスクリーニング方法がより大きいスケールの生産方法への良好な相互関係を必ずしも提供しない。なお、本発明の発明者は固体分散体、とりわけ、任意のこれまでに知られている塩および多形相よりもより良好なバイオアベイラビリティを提供する製剤原料のアモルファスの固体分散体を提供することに成功した。
【0038】
コポビドンは、良好な安定性、生成する非常に少量のディストマーおよび分解生成物、ならびに優れた長期間安定性によって特徴づけられる、結果としてもたらされるアモルファスの固体分散体を用いて、スプレー乾燥またはホットメルトエクストルージョンのいずれかによって作られ得るので、固体分散体におけるポリマーマトリックスとして/において具体的に有用であることが証明されている。ポリマーマトリックスにおける製剤原料の分子分散はそれらの利点を提供する。小スケールスクリーニングの努力はこれらの結果を何ら示唆せず、むしろこのポリマーをさらなる検討から排除しているため、これらの利点はよりいっそう驚くべきものである。
【0039】
とりわけスプレー乾燥により製造された固体分散体に対して、さらなる好ましいポリマーは、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルである。
【0040】
本発明に従う複合物は、とりわけホットメルトエクストルージョンなどの融解加工によって得られるとき、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、300μm以下、例えば200μm~300μmの間のd50値によって特徴づけられる粒径を有し得る。一般に、より小さい粒径は、より高い表面領域と関連しており、それは溶解に関して有益であり得、しかし典型的に最初の粒子の機械的な減少を必要とし、それは頻繁に熱の生成と関連し、したがって例えば密度、しかしまたマトリックス内の製剤原料の分散、およびさらに不純物レベルなどの粒子の他の物理的パラメータに負の影響を有し得る。本明細書において言及されるd50値はMalvern Mastersizer 2000(乾燥方法;マイクロ体積トレイ;サンプル量200mg;分散的な空気圧0.1bar;供給速度50%;測定時間4s;不明瞭さ1-5%;66分散的スチールボール2mmの使用;MIE理論で見積もられる測定)でのレーザー回折によって測定される。本明細書において言及されるd50値は、この直径の上半分と下半分で分布を分割するマイクロメートルにおける大きさである。d50は体積分布に対する平均でありおよび頻繁にDv50(またはDv0.5)ともいう。
【0041】
複合物、より特に分散がスプレー乾燥によって得られるこれらの態様において、粒径は通常1μm~300μm、好ましくは20μm~200μmおよびより好ましくは30~100μmのd50値によって特徴づけられる範囲にある。結果的に、本発明の一態様はまた複合物が200μm未満、例えば100μm未満、例えば1μm~300μm、好ましくは20μm~200μm、およびより好ましくは30μm~100μmの範囲であるd50値によって特徴づけられる平均粒径を有する、複合物を指す。
【0042】
粒径が所望よりも小さい場合、例えば小さい粒径は最終組成物へのその後の加工ステップのための流動性または密度に関して理想ではなくてよく、粒径は適切な技術、例えば造粒またはローラー圧縮などを使用して増大し得る。かかる技術は1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、300μm以下、例えば200μm~300μmのd50値によって特徴づけられる粒径を有し得る顆粒を製造するために使用される。
【0043】
結果的に、本発明はまた顆粒の形態における複合物を指し、ここでかかる顆粒は、1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは400μm以下、300μm以下、例えば200μm~300μmの間のd50値によって特徴づけられる粒径を有する。
【0044】
本発明はまた、本発明に従う複合物を含む医薬組成物を提供する。最も好ましくは、医薬組成物は、経口投与用である。
【0045】
なおより好ましくは、医薬組成物は即時放出組成物である。例示の態様において、医薬組成物、最も好ましくは錠剤は、30分以下、例えば20分以下、好ましくは15分以下およびより好ましくは10分以下の崩壊時間によって特徴づけられる。上に言及される崩壊時間は、USP-NF<701>(USP39-NF34 Page 537;Pharmacopeial Forum:Volume No.34(1)Page 155)に従った崩壊装置において、37℃で0.01N HClにおいて測定される。
崩壊:装置は、バスケットラックアセンブリ(basket-rack assembly)、1000mLの浸漬液のための低-形態ビーカー、加熱のためのサーモスタッド配置、および浸漬液におけるバスケットを大きくするおよび低くするための装置からなる。バスケットラックアセンブリは、その軸に沿って垂直に移動し、6つの開口(open-ended)の透明なチューブからなり;チューブは2つの板によって垂直な位置に保持される。下側の板の下面には、織られたステンレススチールワイヤークロスが取り付けられている。各チューブは筒状のディスクを備えている。ディスクは適切な透明なプラスチック材料から作られている。バスケットの各6つのチューブに1投与単位を置き、ディスクを加える。37℃±2℃で維持された、浸漬液として特定の媒質を使用して装置を操作する。制限時間の最後に、または事前調整した間隔で、バスケットを液から持ち上げて、錠剤が完全に崩壊したかどうかを観察する。
【0046】
一態様において、本発明に従う医薬組成物は、複合物および任意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含む充填物を包含するカプセルである。カプセルそのものは任意の薬学的に許容し得るカプセル、例えば硬いゼラチンカプセルであるが、好ましくは容易に溶解できるべきであるカプセルであり得る。
【0047】
一態様において、医薬組成物は、充填物の総重量に基づいて、40~100重量%、例えば少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも70、80、90、95または99重量%の本発明に従う複合物;および0~60重量%、すなわち充填物の残り(100重量%との差)の、好ましくは充填剤、崩壊剤、潤滑剤、細孔ビルダー(pore builder)および無機アルカリ金属塩から選択される、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤、からなる充填物を包含するカプセルである。言い換えれば、カプセルは、本明細書で与えられるとおりの重量%の計算において数えない。
【0048】
例の方法により示されるだろうとおり、カプセル製剤は、例えば、複合物が固体分散体からなるか、あるいは以下の値:50~100重量%、50~99.5重量%、50~99重量%、50~90重量%、50~80重量%、50~75重量%、50~70重量%、50~60重量%;60~100重量%、60~9.5重量%、60~99重量%、60~90重量%、60~80重量%、60~75重量%、60~70重量%;70~100重量%、70~99.5重量%、70~99重量%、70~90重量%、70~80重量%;75~100重量%、75~99.5重量%、75~99重量%、75~90重量%、75~80重量%;80~100重量%、80~99.5重量%、80~99重量%、80~90重量%;90~100重量%、90~99.5重量%、または90~99重量%の任意の組み合わせに含まれる任意の範囲にある、これらの態様における複合物の各固体分散体の100、99.5、99、90、80、75、70、60または50重量%の複合物を含み得る。充填物(100重量%との差)の残りは、上に記載した通り、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤によって作り上げられる。
【0049】
例示の態様において、医薬組成物は、
錠剤の総重量に基づいて:
50~100重量%の本発明に従う複合物;
2.5~75重量%の崩壊剤;
0~60重量%の充填剤;
0~5重量%の潤滑剤;
0~30重量%の細孔ビルダー;
0~20重量%の無機アルカリ金属塩;および
総量0~20重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤、
を含む充填物を包含するカプセルである。言うまでもなく総量は、100重量%を意味する。
【0050】
上の例示の態様における崩壊剤の重量パーセントは、例えば5~60重量%の範囲、例えば7.5~55重量%の範囲、または例えば7.5~25重量%の範囲であり得る。
上の例示の態様における潤滑剤の重量範囲は、例えば0.25重量%~5重量%、または0.5重量%~4重量%、または0.5重量%~2.5重量%の範囲であり得る。
【0051】
細孔ビルダーは、上の例示の態様において存在する場合、例えば、2.5~50重量%、または5~25重量%、または7.5~20重量%の量において含まれ得る。
充填剤は、上の例示の態様において存在する場合、例えば、60重量%までの範囲、例えば5~60重量%、または7.5~55重量%の範囲、または50重量%まで、または10~50重量%の範囲において存在し得る。
充填剤なしのカプセルの態様がまた実現可能であることが見出された。
【0052】
無機アルカリ金属塩は、好ましくは上の例示の態様において存在し、2.5~20重量%、または5~17.5重量%、例えば、または少なくとも7.5重量%、例えばおおよそ10または15重量%の量において含まれ得る。
上のカテゴリーの適切な薬学的に許容し得る賦形剤の例は、以下を含む:
【0053】
充填剤は一般に、錠剤およびカプセル充填物の製造における所望のバルク(bulk)、流動性、および圧縮特性を創出するのに役立つ。適切な充填剤は数例だが名前を挙げると(to name but a few):微結晶セルロース、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などのセルロースエーテル、ラクトース、およびデキストロースなどの修飾されたセルロースを含むセルロースを含む。微結晶セルロースが具体的に好ましい。
【0054】
崩壊剤は錠剤または顆粒などを崩壊するのに役立ち、それゆえ液体溶出媒質との接触での固体剤形の溶解を増強する。適切な崩壊剤はクロスポビドン(架橋ポリビニルN-ピロリドン)、カルボキシメチルセルロースならびにそれらの塩および誘導体、例えばクロスカルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウムの架橋ポリマー)、カルボキシメチルグリコール酸ナトリウム、グリコール酸でん粉ナトリウム、カラギーナン、寒天、およびペクチンなどの架橋誘導体を含む。クロスポビドンおよびクロスカルメロースナトリウムが具体的に好ましい。
【0055】
潤滑剤は、カプセル充填または錠剤圧縮機の互いへの成分の粘着を妨げるのに役立つ。流動促進剤と厳密に同じでなくてさえ、それは粒子内の摩擦を減らすのに役立ち、それゆえ錠剤またはカプセルの製造における粒子混合物の流動性を増強し、流動促進剤と潤滑剤は合わせて本明細書における潤滑剤という。本発明の文脈において使用され得る潤滑剤は、以下の1以上から選択される:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ステアリン、シリカ、例えば親水性ヒュームドシリカまたはコロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、デンプン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、(Ca(PO)、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸アルミニウム。ステアリン酸マグネシウムが具体的に好ましい。
【0056】
細孔ビルダーまたは細孔形成剤、マンニトール、スクロースおよびそれらのエステルの中で、トレハロースまたはシクロデキストリンが本発明における使用に適しているものとして言及されてもよく、マンニトールが具体的に好ましい。
無機アルカリ金属塩、すなわちアルカリ金属のイオンおよび無機酸アニオンから作り上げられる塩は、溶解性を高めるのに有用であることが比較的最近見出され、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、および重炭酸カリウムを含む。塩化ナトリウムが具体的に好ましい。
【0057】
好ましい態様において、医薬組成物は錠剤および顆粒から選択され、したがって典型的に少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含む。少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤は、好ましくは、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、細孔ビルダー、無機アルカリ金属塩、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0058】
例示の態様において、医薬組成物は、
錠剤の総重量に基づいて、
25~95重量%の本発明に従う複合物;
15~72.5重量%の充填剤;
2.5~40重量%の崩壊剤;
0~5重量%の潤滑剤;
0~20重量%の無機アルカリ金属塩;および
総量0~20重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤、
を含む錠剤である。
【0059】
1以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤は、細孔ビルダー、保存料、酸化防止剤、甘味料、フレーバー、染料、界面活性剤、およびウィッキング剤から選択される1以上を含み得る。
多くの賦形剤は、薬の剤形の他の構成要素に依存して、1より多い機能を発揮し得る。明確化のために、とりわけ、重量パーセントを計算することにおいて、本発明にしたがう医薬組成物において用いられる各薬学的に許容し得る賦形剤は、好ましくは関連する1つの機能性のみ、すなわち崩壊剤か、または潤滑剤のいずれか、とみなされる。
【0060】
別の例示の態様において、医薬組成物は:
錠剤の総重量に基づいて、
40~60重量%の本発明に従う複合物;
25~55重量%の充填剤;
5~30重量%の崩壊剤;
0~5重量%の潤滑剤;
0~15重量%の無機アルカリ金属塩;および
総量0~10重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤
を含む錠剤である。
【0061】
さらなる例示の態様において、医薬組成物は:
錠剤の総重量に基づいて、
35~55重量%の本発明に従う複合物;
30~55重量%の充填剤;
5~20重量%の崩壊剤;
0.25~2.5重量の潤滑剤;
2.5~15重量%の無機アルカリ金属塩;および
総量0~10重量%の1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤
を含む錠剤である。
【0062】
好ましくは、それらの態様において、充填剤は微結晶セルロースでありおよび/または崩壊剤は、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースならびにそれらの塩および誘導体、例えばクロスカルメロースナトリウム、ならびに/または無機アルカリ金属塩は無機ナトリウム塩、例えば塩化ナトリウム、から選択される。
好ましくは、1種以上のさらなる薬学的に許容し得る賦形剤の総量は、0~10重量%、0~7.5重量%、0~5重量%、0~2.5重量%または0~1重量%、例えば0重量%である。
【0063】
言うまでもなく、錠剤を被覆して味覚および/または外観を改善し、ならびに/または湿気などの外部環境から錠剤を保護してもよい。上で列挙した通り、任意の被覆は、錠剤を作り上げる薬学的活性成分および製剤原料の100重量%の総量に対して数えないものとする。フィルム-コーティングに対して、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリメタクリラート、およびゼインを含む、修飾セルロースなどの高分子物質が用いられてもよい。コーティングの厚さは好ましくは100μm未満である。
【0064】
別の態様において、医薬組成物は、本発明に従う固体分散体の各複合物を組み込むことに適した任意の他の形態をとってよい。トローチ剤(lozenges)、カプレット、トローチ(pastilles)が言及されてもよい。
【0065】
本発明はまた、好ましくは固溶体である固体分散体を含むか、またはからなる複合物を製造する第一の方法であって、方法がホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒を含む、前記方法を提供する。ホットメルトエクストルージョンは固体分散体にとって最高の物理的特性を提供することが見出され、したがって本明細書において特に好ましい。
【0066】
例示的な態様において、方法は:
(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩、および形成されるポリマーマトリックスのポリマー、および任意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を混合することおよび融解すること、
複合物を形成するために混合物をホットメルトエクストルージングすることまたは融解造粒すること、
ならびに任意に形成された複合物を粉砕すること、
を含む。
【0067】
言うまでもなく、混合することおよび融解することはポリマーおよび製剤原料を混合した後で融解することを含んでもよく、それは必然的にさらなる混合、または混合および融解の単一ステップを含む。本技術分野で知られているとおり、混合することおよび融解することは、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩、および形成されたポリマーマトリックスのポリマー、および任意に少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を混合し、一方でポリマーを融解することの意味に解されるべきである。それゆえ、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩は、融解すること自体より融解物中に溶解されるかまたは分散される。
【0068】
適切なホットメルトエクストルーダーは技術分野において公知である。適切なエクストルーダーは、数例だが、名前を挙げるとHAAKE MiniLab II(Thermo Fisher Scientific)などの小スケールエクストルーダーあるいはPharmaLab16(Thermo Fisher Scientific、スクリュー径16mm)、またはZSE 18 HP-PH(Leistritz、スクリュー径18mm)などの大スケール共回転ツインスクリューエクストルーダーを含む。
融解温度、融解圧力、回転力(torque)などのプロセスパラメータ、ならびに温度プロファイル、スループット、スクリューデザインおよびスクリュー速度などのエクストルージョン入力パラメータの適切な調整は、当業者の技術常識に基づいて日常の実験により容易に達成され得る。
【0069】
任意の粉砕するステップの適切な粉砕はまた技術分野で公知である。適切に、ハンマー粉砕(例えば、FitzpatrickによるFitzMill L1A)が使用され得る。
別の態様において、本発明はまた、複合物を製造する第二の方法であって、複合物が好ましくは固溶体である固体分散体を含むかまたはからなり、方法が以下
a)製剤原料、およびポリマーマトリックスを形成するポリマー、および任意に1以上の薬学的に許容し得る賦形剤を、溶液を形成する溶媒中において溶解すること、
b)複合物を形成するために溶液をスプレー乾燥すること、
c)任意に複合物を、好ましくは減圧下で乾燥すること、
を含む、前記方法を提供する。
【0070】
本発明に従う用いられる製剤原料およびポリマーのために、適切な溶媒は、ジクロロメタン、メタノールおよび最も好ましくはそれらの混合物である。他の適切な溶媒システムはそれ自体が、製剤原料の溶解性を考慮に入れる当業者に存在するだろうし、その示唆は製造者の情報により例1およびポリマーマトリックスを形成するポリマーの溶解性から理解できる。
【0071】
言うまでもなく、溶解することは、製剤原料およびポリマーを溶媒中に溶解することを含み得、それは第一に製剤原料を溶解して製剤原料の溶液を形成することおよび第二にポリマーを添加および溶解して製剤原料の溶液とすることにより、またはその逆、すなわち、第一にポリマーを溶媒に溶解してその後ポリマーを添加することにより、連続的になされ得る。
代わりに、製剤原料とポリマーの溶液を別々に製造し、その後両方の溶液を1つの溶液にまとめることができる。
【0072】
粒子の製造のために使用され得る適切なスプレー乾燥技術は公知であり、例えば、K. Masters in「Spray-drying Handbook」John Wiley & Sons, New York, 1984に記載されている。例示の態様において、溶液の噴霧化はノズルを使用することによって達成される。適切なスプレー乾燥機の例は、実験室スケールのスプレー乾燥機、例えばMini Spray Dryer 290(Buchi)または4M8-TriX(ProCepT);またはGEA NiroからのMOBILE MINOR(登録商標)、a Pharma Spray Dryer PharmaSD(登録商標)を含む。
【0073】
スプレー乾燥の条件は生成物の特性、溶媒含有量、粒径、形態ならびに製剤原料とポリマーの分解の程度に主要な影響を有する。製品原料およびポリマーの高温への曝露は分解を引き起こし得るので、温度は最も重要なプロセスパラメータである。スプレー乾燥機のために、2つの温度:入口温度および出口温度が制御されなければならない。前者は独立したプロセスパラメータであり、それはオペレーターにより設定されることができ、後者は、例えば液体供給速度、噴霧ガス体積流量(使用する場合)、乾燥ガス体積流量、および選ばれた入口温度に依存している。プロセスパラメータは、当業者の技術常識に基づいて日常の実験により容易に達成され得る。
【0074】
任意の乾燥ステップを使用することができる適切な乾燥技術は、ドラム、ベルトおよびトレイ乾燥などの技術分野で公知の普通の技術を含む。かかる技術は常圧または減圧、例えば真空下で空気または窒素雰囲気下で行われ得る。減圧下の乾燥が好ましい。
アモルファスの性質、製剤の完全性(integrity)およびユートマー-ディストマー比を評価するための適切な分析方法は、例11に記載される。
【0075】
好ましくは、ホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒プロセス、あるいはスプレー乾燥または共沈のための出発材料として、製剤原料の結晶形態が使用される。最も好ましくは、遊離の製剤原料の結晶形態が使用され、それは以下における形態Iとして言及されるものとされ、それは、4.1、5.2、6.1、8.3、8.5、10.1、10.9、12.7、13.0、13.8、14.7、15.0、18.6、19.2、20.0、20.5、20.8、21.3、22.0、22.4、22.8、23.4、24.4、各々±0.2度2シータ、から選択される2シータ(2θ)度で少なくとも2つのピークを有するX線粉末回折パターンによって特徴づけられ、ここで少なくとも2つのピークの少なくとも1つは、4.1、5.2、8.3、8.5、10.1、10.9、12.7、13.0および21.3度2シータ(2θ)度、各々ピーク±0.2度2シータ、から選択される。この結晶形態は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、およびそれらの2以上の混合物などの加熱した溶媒または溶媒混合物からの遅い結晶化により得られる。該結晶形態を製造する適切な方法の例は、例1に記載される。
【0076】
結晶形態Iは、格子パラメータa=4.8A、b=27.5A、c=33.3Aおよびα=s=γ=90°を有する斜方晶空間群P2において結晶化する。形態はさらに単位セルごとに8個の式単位があり、単位セル体積が4436Aであることを特徴とし得る。さらに結晶形態は1.44g/cmの計算密度によって記載され得る。これらのデータは、200KでCu-K・・放射線を使用するCCD検出器を備えた、Rigaku SuperNova回折計を使用する単結晶X線構造データに基づいて生成された。形態Iは、200℃を超える融解/分解前の熱イベント(thermal events)を全く示さない。
【0077】
それゆえ、本発明はまた本発明に従う複合物を製造する方法における形態Iの使用に関する。
本発明はさらに本発明に従う複合物を含む医薬組成物を製造する方法を提供し、該方法は、
上に記載された通りの複合物を形成する方法;
複合物と1以上の薬学的に許容し得る賦形剤とを混合すること;
任意に複合物と1以上の薬学的に許容し得る賦形剤との混合物を顆粒化すること;および
混合物をカプセルに充填(任意に顆粒化)するか、または混合物を錠剤化すること;
を含む。
【0078】
複合物および賦形剤を混合することおよび混合物を顆粒化することは同じステップの、すなわち同時に生じる部分であり得る。
錠剤に各々圧縮する錠剤化は、共通に使用された偏心プレスまたは回転プレスを用いて行われ得る。
導入部において上に記載のとおり、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールは、がんの処置における適用を見出すDNA-PK阻害剤としての価値ある特性を提示することが見出された。それは現在臨床試験において研究されている。
【0079】
結果的に、本発明はがんの処置における使用のための、上記各医薬組成物の複合物を提供する。
任意に、がんの処置はさらに放射線治療を含む。適切な放射線治療の処置はWO2014/183850に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
任意に、放射線治療とは別のまたは放射線治療に加えて、がんの処置は化学療法を含み得る。(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールとの組み合わせにおける化学療法において用いられ得る適切な薬学的活性成分は、一例だが名前を挙げると、シスプラチンおよびエトポシドまたはそれらの組み合わせを含む。
【0081】
結果的に、本発明はまた本発明に従う医薬組成物を患者に投与することを含み、任意に放射線治療または化学療法または両方との組み合わせにおいて、それを必要とする患者においてがんを処置する方法を提供する。例示の態様において、本発明は、本発明に従う複合物または医薬組成物における、それを必要とする患者において、(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノール、またはその薬学的許容し得る塩をエトポシドおよび白金製剤(platin)から選択される少なくとも1つのさらなる治療薬との組み合わせにおいて、該患者に投与することを含む、結腸、肺、頭および首、すい臓、およびそれらの組織学的サブタイプから選択されるがんを処置する方法を提供する。さらなる態様において、ドキソルビシンが、単独または白金製剤との組み合わせのパートナーとして使用され得る。
【0082】
以下において、本発明は本発明を限定それらの例示の態様を参照により記載するが、それが本発明を限定するものとみなさないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図面の簡単な説明
図1図1は、ホットメルトエクストルージョンによって得られる本発明に従う固体分散体の様々な態様の溶解曲線を示す。
図2図2は、結晶形態Iの粉末X線回折を示し、それは好ましくは本発明における出発材料として使用される。
図3図3は、スプレー乾燥によって得られる本発明に従う固体分散体の様々な態様の溶解曲線を示す。
【0084】
発明の詳細な説明
例1:ホットメルトエクストルージョンまたは融解造粒またはスプレー乾燥または共沈における出発材料としての使用のための、結晶無水物(S)-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(7-モルホリン-4-イルキナゾリン-4-イル)フェニル]-(6-メトキシ-ピリダジン-3-イル)メタノールの製造
【0085】
およそ20mgの製剤原料を50℃で複数の溶媒(下記表2参照)に溶解するかまたは懸濁した。溶液/懸濁液を0.2μmのシリンジフィルターを通して濾過した。得られた透明な溶液をおよそ0.05K/minの傾斜で5℃まで冷却した。冷却しながら、溶液をマグネチックスターラーによってPTFE被覆されたスターラーバーを用いて撹拌した。得られた懸濁液の固体-/液体-分離は遠心分離によってなされ、固体材料を乾燥窒素流を用いて室温で一晩乾燥した。これらの実験に使用される溶媒を以下の表にまとめる。
【0086】
【表1】
【0087】
X線粉末回折(XRPD)は、European Pharmacopeia 7th Edition chapter 2.9.33 (Cu-K・.放射線、・=1.5406A、周辺温度)において記載されるとおりの標準技術により得られ、とりわけ:Mythen1K Si-ストリップ検出器(PSD)を備えたStoe StadiP 611回折計上のCu-Kα1照射を用いた透過幾何学において実行された。およそ10~100mgのサンプルがアモルファスフィルムの間で製造された。測定は、以下のパラメータを設定することにより行われた:
角度範囲: 1 2q-41 2q
角度分解能: 0.015 2q
0.49 2q:を有するPSDステップ
測定時間: 15s/PSD-ステップ
発電機設定: 40mA、40kV
【0088】
ディフラクトグラムは、図2に説明され、および以下のピークを提示する:
【表2】
【0089】
例2:ホットメルトエクストルージョンによって製造される固体分散体
20または30重量%のいずれかの製剤原料(上記の無水結晶形態Iから出発する)および80または70重量%のいずれかのポリマーマトリックスを含む固体分散体は、実験室スケールのエクストルーダー(HAAKE MiniLab II (Thermo Fisher Scientific))を使用する5または10gの材料から出発してホットメルトエクストルージョンによって製造された。使用されるポリマーは:上に詳細に記載されている、Aqoat(登録商標)、Soluplus(登録商標)およびKollidon(登録商標)VA64であり、以下の条件下であった:
70または80重量%のKollidon(登録商標)VA64:出発温度エクストルージョン:160℃、温度上昇5-10℃、エクストルージョン温度:200℃(80%VA64)または195℃(70%VA64)、エクストルージョン速度:100rpm(rounds per minute)。
70または80重量%のAqoat(登録商標):出発温度エクストルージョン:160℃、温度上昇5℃(80重量%Aqoat(登録商標))または5-10℃(70重量%Aqoat(登録商標))、エクストルージョン温度:175°(80%Aqoat(登録商標))または178℃(70%Aqoat(登録商標))、エクストルージョン速度:100rpm(rounds per minute)。
70または80重量%のSoluplus(登録商標):出発温度エクストルージョン:130℃(80重量%Soluplus(登録商標))または188℃(70重量%Soluplus(登録商標))、温度上昇5℃(80重量%Soluplus(登録商標))または2-5℃(70重量%Soluplus(登録商標))、エクストルージョン温度:188℃(80%Soluplus(登録商標))または200℃(70%Soluplus(登録商標))、エクストルージョン速度:100rpm(rounds per minute)。
【0090】
押出物は、Pulverisette 23 LabScale mill (Fritsch)を使用して粉砕される。すぐに押出物の一本を、2つの10mm酸化ジルコニウムのすり潰しボールを使用して30振動/秒(oscillations/s)で2分間粉砕した。
【0091】
溶解試験は上記サンプルすべてに対して以下の試験条件を使用して行った:粉砕された押出物およそ30mgを37℃で振動させることにより、7mLのFaSSIF(組成物例4参照)において分散される。一致した時間点で(At the according time points)、1mLが採取され、遠心分離され、HPLCを使用して分析した。サンプリング時間点:5、10、15、30、60および120分。
【0092】
もたらされる溶解曲線を図1において説明する。グラフから明らかな通り、Aqoat(登録商標)マトリックスにおける製剤原料の固体分散体は20および30重量%の両方の製剤原料分散の最高の溶解を提供した。Kollidon(登録商標)VA64は、Soluplus(登録商標)ベースの製剤よりも80重量%のポリマーマトリックスでより良好な溶解を提供するが、70重量%Kollidon(登録商標)VA64では約当量の溶解のみである。
【0093】
しかしながら、固体分散体の品質を評価するとき、しかし固体分散体の溶解性は考慮に入れるべき1つの要因である。ユートマー:ディストマー比に関して、Kollidon(登録商標)VA64ベースの固体分散体は、これらの最初の実験製剤が40℃、75%の相対湿度で26週間の貯蔵後でさえ95%より多いユートマー含有量を有するという最高の結果を驚くべきことに提供した。ユートマー:ディストマー比に関して、Soluplus(登録商標)ベースの固体分散体は、Kollidon(登録商標)VA64ベースの分散体より明らかには有益ではないが、しかしなおAqoat(登録商標)ベースの固体分散体よりかなり良好である。
したがって、Kollidon(登録商標)VA64、すなわちコポビドンのポリマーマトリックスにおける固体分散体は、具体的に好ましく、とりわけ約80重量%コポビドンにおける約20重量%の製剤原料の固体分散体が好ましい。
サンプルのX線回折分析は、製剤原料を分子的に分散した、アモルファス材料のみを明らかにした。
【0094】
例3:ホットメルトエクストルージョンによって製造される固体分散体のさらなる例
さらなるエクストルージョン実験は、より大きいスケールのエクストルーダー(PharmaLab16;Thermo Fisher Scientific)を使用する、固体分散体(すなわち、上記の無水結晶形態Iから出発する、20重量%の製剤原料))に基づいて、好ましいKollidon(登録商標)VA64(80重量%)上で行われた。エクストルーダーにおける温度プロファイルは、ゾーン2の60℃からダイゾーン(die zone)の150℃までの範囲であった。スクリューデザインは2つのニ―ディングブロックを有する要素を調べることを含んだ。スクリュー速度は300rpm(rounds per minute)に設定され、スループットは1.6kg/hであった。融解温度は約154℃で融解圧力は約2barと推定された。結果として得られる固体分散体は0.5重量%未満のディストマーを含んだ。結果として得られる分散体は約103℃のガラス転移温度を有し、25μg/mLより大きい所望の飽和溶解性が良好に達成された。ハンマー粉砕は、100~355μmの範囲の大きさを有する粒子の最も大きいまとまりを有する、適切な粒径分布を有する粒子を生産した。
【0095】
さらなるエクストルージョン実験は、さらにより高い薬物負荷:30重量%の製剤原料(上記のとおり)および70重量%のKollidon(登録商標)VA64、を有するより大きいスケールのエクストルーダーを使用する、好ましいKollidon(登録商標)VA64ベースの固体分散体上で行われた。エクストルーダーにおける温度プロファイルは、ゾーン2の60℃からダイゾーンの160℃までの範囲であった。スクリューデザインは2つのニ―ディングブロックを有する要素を調べることを含んだ。スクリュー速度は350rpm(rounds per minute)に設定され、スループットは1.0kg/hであった。融解温度は約160℃で融解圧力は1bar未満と推定された。結果として得られる固体分散体は、1.5重量%未満のディストマーを含んだ。結果として得られる分散体は、約81~83℃のガラス転移温度を有した。ハンマー粉砕は、100~355μmの範囲の大きさを有する粒子の最も大きいまとまりを有する、適切な粒径分布を有する粒子を生産した。
【0096】
それゆえ、ホットメルトエクストルージョンは、好ましく高い薬物負荷、良好なバイオアベイラビリティ―および好ましく高いユートマー含有量で、一層のアモルファス固体分散体、すなわち重合体マトリクスにおいて分子的に分散した製剤原料を有する固溶体を提供した。
【0097】
例4:ホットメルトエクストルージョンによって製造される固体分散体のさらなる例
共回転ツインスクリューエクストルーダー(ZSE 18 HP-PH;Leistritz)およびハンマー粉砕を使用するさらなるプロセスの最適化は、80重量%のKollidon(登録商標)VA64および20重量%の製剤原料の固体分散体におけるより有利なユートマー:ディストマー比(0.3重量%ディストマーに至るまで)、ガラス転移温度109℃、アモルファス外観および好ましい溶解特性を提供するさらなるプロセス最適化を許容した。各(スクリュー速度、プロセス温度、および供給速度)の若干異なるプロセス条件で得られた様々なサンプルの溶解測定からの結果は以下の表に表される:
【表3】
AUC90: 90分(後)での曲線下の領域
C90:90分後の濃度
Cmax90:90分以内の最大濃度
【0098】
溶解試験は以下のとおり行われた:50mgの活性錠剤を100mLの溶解容器に添加した。溶解媒体(FaSSIF pH6.5)を37℃に予熱した。ハネ(paddle)を250rpmで運転した。タイマーをスタートし、100mLの溶解媒質を容器に添加した。1分後、ハネの速度を200rpmに下げた。各サンプル採取前3分の時点で、1mLのサンプルを10μmのフィルターを有するシリンジおよびカニュラを用いて除去し、その後それを0.45μmPTFEフィルターで置き換えて、サンプルをHPLCバイアルに浸透させた。50μLの濾液を250μLの希釈液を用いて新しいバイアルに移した。サンプルを4、10、15、20、30、40および90分で採取した。
FaSSIF:3mMタウロコール酸ナトリウム;0.75mMレクチン;105.9mM塩化ナトリウム;28.4mM一塩基性リン酸ナトリウムおよび8.7mM水酸化ナトリウム,pH6.5
【0099】
例5:例示のカプセル製剤
硬いゼラチンカプセルが示された重量パーセントの充填物で以下の成分を含む充填物を伴って提供された:

【表4】
【0100】
例6:例示の錠剤製剤(w/oコーティング)
錠剤を錠剤重量の示唆された重量パーセントで以下の成分を含む組成物を用いて生産した。1.0~2.0MPaの引張強度を前提とした。

【表5】
【0101】
例7:治療効果
製剤原料によるDNA-PK阻害の治療妥当性がイオン化する放射線
かかるとおりの製剤原料によるDNA-PK阻害の治療妥当性は、in vivoでイオン化放射線(IR)、臨床的に確立されたDSB-誘導処置との組み合わせで調査された。製剤原料は6匹のヒトのがんのマウス異種移植モデルにおいて活性を試験された。モデルは異なるがん症状(結腸、肺、頭および首、膵臓)、および組織学的サブタイプ(腺、扁平上皮、大細胞)から選択された。イオン化放射線は一日2Gyの画分されたスケジュールを使用して連続5日にわたって投与され(総放射線量=10Gy)、放射線の各画分前10分に経口で与えられた(ONC397-1-2AZ、ONC397-1-3AZ、ONC397-1-4AZ、ONC397-1-5AZ、ONC397-1-8AZ)。
全てのモデルにおいて、製剤原料の経口投与は放射線効果の強い増強をもたらした。効果を増強する放射線治療は、150mg/kgの治験群の最初の容量の400%に達するまでの時間による試験モデルにわたって定量化された。結果としてもたらされたKaplan-Meierプロットはログランク検定によって比較された。この処置設定における増強比は、1.5(A549、HCT116)~2.6(NCI-H460)の間に見出された。
【0102】
例8:スプレー乾燥によって製造される固体分散体
10、25または50重量%のいずれかの製剤原料(上に記載される無水結晶形態Iから出発する)および50、75または90重量%のいずれかのポリマーマトリックスを含む固体分散体は、実験室スケールのスプレー乾燥機(4M8-TriX(ProCepT))を使用する1.5gの材料から出発するスプレー乾燥によって製造された。使用されるポリマーは:Aqoat(登録商標)、Eudragit(登録商標)E POおよびKollidon(登録商標)VA64であり、それは上に詳細に記載されており、以下の条件下である:
50、75または90重量%Aqoat(登録商標):スプレー溶液:ジクロロメタン:メタノール90:1中1%(m/m)の固体、入口温度:80℃、空気流量:0,3m/min、噴霧する空気:10L/min、ノズルの大きさ:1mm、供給速度:2mL/min。
50、75または90重量%Kollidon(登録商標)VA64:スプレー溶液:ジクロロメタン:メタノール90:1中2%(m/m)の固体、入口温度:80℃、空気流量:0,3m/min、噴霧する空気:10L/min、ノズルの大きさ:1mm、供給速度:2mL/min。
50、75または90重量%Eudragit(登録商標)EPO:スプレー溶液:ジクロロメタン:メタノール90:1中2%(m/m)の固体、入口温度:50℃、空気流量:0,3m/min,噴霧する空気:10L/min、ノズルの大きさ:1mm、供給速度:2mL/min。
【0103】
スプレー乾燥材料の第2の乾燥は200mbarでデシケーター内でなされた。材料は完全にアモルファスであった。
溶解試験は上記サンプル全てに対して以下の試験条件を使用して行った:10重量%の製剤原料のためのおよそ6.5mgの固体分散体、25重量%の製剤原料のためのおよそ2.6mgの固体分散体および50重量%の製剤原料のためのおよそ1.3mgの固体分散体(全ての試験したサンプルを650μgの量の製剤原料に正規化(normalization))を1.5mLのエッペンドルフキャップ(cap)に量り取った。溶解媒質(FaSSIF pH6.5)を37℃に予熱した。1.3mLの予熱した溶解媒質をエッペンドルフキャップに添加した。サンプルを1分間ボルテックスし、その後37℃で貯蔵した。各サンプルを採取する時点前2.5分に、サンプルを1分間10000rpmで遠心分離した。50μLの上澄みを150μLの希釈液を用いてHPLCバイアルに移し、HPLCを使用して分析した。手順が繰り返されるとき、残りのサンプルを25秒間ボルテックスして次の時間点まで37℃で貯蔵した。サンプリング時間点:5、10、15、30、60、90および120分。
【0104】
結果としてもたらされる溶解曲線は図3に説明される。
‐Eudragit(登録商標)E POマトリックスにおける製剤原料の固体分散体は、10重量%の製剤原料の分散のための最高の溶解を提供する。しかしながら、製剤内の製剤原料の量の溶解挙動のクリアな依存が検出された。
‐Aqoat(登録商標)マトリックスにおける製剤原料の固体分散体は沈殿しないクリアな超飽和を提供した。製剤内の製剤原料の量のほんの少しの影響のみが検出された。
‐Kollidon(登録商標)VA64マトリックスにおける製剤原料の固体分散体は、続く沈殿を有するクリアな超飽和を提供した。製剤内の製剤原料の量のほんの少しの影響のみが検出された。10重量%の製剤原料の分散が最も高い超飽和を示したのに対し、25重量%および50重量%の製剤原料の分散は、ほとんど同じ超飽和および沈殿を示した。
【0105】
しかしながら、固体分散体の溶解性は、しかし固体分散体の品質を評価するとき考慮されるべき1つの要因である。
安定性に関して:
‐Aqoat(登録商標)マトリックスにおける製剤原料の固体分散体は、溶解性能において無視できる程度の損失のみを示した。40℃且つ75%の相対湿度で12週間貯蔵後に、サンプルのX線回折分析がアモルファス材料のみを露わにした。許容できる増大する不純物のみが検出された。
‐Kollidon(登録商標)VA64マトリックスにおける製剤原料の固体分散体は経時的に溶解性能において変化を示さなかった。25℃且つ60%の相対湿度で12週間貯蔵後に、サンプルのX線回折分析がアモルファス材料のみを露わにした。不純物の非常に少量の増大のみが検出された(Aqoatマトリックスよりなお少ない)。
‐Eudragit(登録商標)E POマトリックスにおける製剤原料の固体分散体が最高の溶解を示した一方、40℃且つ75%の相対湿度で12週間貯蔵後の溶解性能および不純物レベルは、Kollidon(登録商標)VA64およびAqoat(登録商標)マトリックス分散体と比較して著しく劣った。
【0106】
したがって、スプレー乾燥により製造される、HPMCASのポリマーマトリックスにおける固体分散体、本明細書におけるAqoat(登録商標)は、特に好ましい態様の中にあり、とりわけ約75重量%のHPMCASにおける約25重量%製剤原料の固体分散体である。
【0107】
例9:さらなるスプレー乾燥による固体分散体の例
さらなるスプレー乾燥実験は、特注の実験室スケールのスプレー乾燥機を使用して、固体分散体に基づくAqoat(登録商標)(75重量%)上で行われた。スプレー乾燥は以下の条件下で行われた:
スプレー溶液:ジクロロメタン:メタノール90:10において6重量%の固体、温度:96℃、ガス流量:450g/min、噴霧圧力:120psi、噴霧器:圧力Swirl Schlick2.0、供給速度:27g/min。
【0108】
スプレー乾燥材料の第2の乾燥は40℃で22時間の対流トレイ乾燥機においてなされた。
サンプルのX-線回折分析はアモルファス材料のみを露わにした。
ユートマー:ディストマー比に関して、得られたAqoat(登録商標)ベースの固体分散体は、40℃で75%の相対湿度で、26週間の貯蔵後でさえ95%を超えるユートマー含有量を提供した。有利には、総分解生成物の合計は2%より小さかった。
【0109】
例10:共沈によって製造される固体分散体
20または35重量%のいずれかの製剤原料(製造において上記無水結晶形態Iを使用する)および80または65重量%のいずれかのポリマーマトリックスを含む固体分散体を共沈スクリーニングによって製造した。使用されるポリマーは:上に詳細に記載されている、HPMCASおよびHPMCPである。
【0110】
DMA中の化合物およびポリマー(約20または35重量%の化合物からポリマー)の透明溶液を製造する。70μLの透明なDMA溶液をマルチチャンネルピペットによって、冷却し1mLのガラスバイアル中で激しく撹拌した逆溶剤(700μL HCl溶液、0.01N、pH2)に滴加注入した。結果としてもたらされた懸濁液を濾過し、得られたケーキを水で洗浄し、真空下で乾燥する。
固体分散体のX線回折分析はHMPCASおよびHPMCPにおける両方の製剤原料濃度のために結晶材料の証拠を示さなかった。
【0111】
例11:分析方法
固体状態、とりわけ結果としてもたらされる固体分散体のアモルファスの性質(nature)は、以下に記載される前述の例の分析を用いる適切な方法を用いて、X線回折測定によっておよび/またはDSC測定によって評価され得る。ある態様に対して、分析方法の修飾が必要であるか有利であり得ることを当業者に明らかにするだろう。加熱速度のかかる適合などの、かかる修飾は、当業者に容易に確認されるだろう。
XRD:
測定は、以下のパラメータを設定することによるMythen1K Si-strip検出器(PSD)を備えたStoe StadiP 611回折計上のCu-Kα放射線を用いて透過幾何学において行われた。:
・アモルファスフィルム間の製造
・角度範囲:1°2θ-41°2θ
・角度分解能:0.03°2θ
・有するPSDステップ 0.09 2θ
・測定時間:60s/PSD-ステップ
・発電機設定 40mA、40kV
【0112】
DSC:
DSC研究はDSC1(Mettler Toledo、Switzerland)上で行われた。20mgの固体分散体、例えば粉砕された押出物を、100μLのDSCアルミニウム坩堝に量りとり、蓋で密封し、それは測定前に手動で穴をあけられた。3つの加熱サイクルが行われた:25~180℃まで5K/minの傾斜で、その後180℃で5分間維持し、その後-5K/minで、180~25℃まで冷却した。4つの加熱サイクルの間、25~180℃までの加熱は、10K/minのみの傾斜で達成された。ガラス転移温度Tgは、第2、3および4の加熱サイクルで決定された。
【0113】
単一のガラス転移温度は一相のアモルファスシステムの兆候である。
HPLC:
製剤原料、とりわけ可能な分解生成物に関する完全性を、以下の通りHPLCにより評価することができる:
システム:Agilent Technologies (USA) 1260 HPLC system
方法:10μLのサンプルを注入し、298nmで働くダイオードアレイ検出器によって定量化した。使用される溶離液はMilliQ水と0.1%トリフルオロ酢酸およびACNとの95:5~5:95(v/v)の二元混合物であった。線型勾配は13分以内で90%相A~100%Bまでで実行した。YMC Triart逆相カラム(3μmパッキングを有する4.6x50mm)を使用し、35℃まで一定に加熱した。
【0114】
エナンチオマー不純物の程度を、定量的キラルHPLCを使用して以下の通り評価できる:
システム:Agilent Technologies (USA) 1260 HPLC system
方法:5μLのサンプルを注入し、273nmで働くダイオードアレイ検出器によって定量化した。使用される溶離液は、0.1%ギ酸を有するn-ヘキサン(相A)および0.1%ギ酸を有するイソプロパノール(相B)であった。80%の相Aおよび20%の相Bを有するアイソクラチック勾配は40分以内で実行した。A Luxセルロース-1カラム(5μmパッキングを有する4.6x150mm)が使用し、35℃まで一定に加熱した。
図1
図2
図3