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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-15
(45)【発行日】2023-02-24
(54)【発明の名称】処理チャンバのためのナノ粒子測定
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20230216BHJP
   G01N 15/10 20060101ALI20230216BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20230216BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20230216BHJP
   B82Y 35/00 20110101ALI20230216BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N15/10 Z
H01J49/26
H01J49/10 500
B82Y35/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020561055
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019019168
(87)【国際公開番号】W WO2019212624
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】62/667,080
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン, チエンション
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170428(WO,A1)
【文献】特開2001-077158(JP,A)
【文献】特開2012-032270(JP,A)
【文献】特表2008-506530(JP,A)
【文献】特開2009-076747(JP,A)
【文献】特開2008-078642(JP,A)
【文献】特開2002-289660(JP,A)
【文献】特開2004-347543(JP,A)
【文献】特開2016-044988(JP,A)
【文献】特開2009-038224(JP,A)
【文献】特開2008-004603(JP,A)
【文献】特表2007-511882(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0036874(US,A1)
【文献】特開2011-095016(JP,A)
【文献】国際公開第2016/144107(WO,A1)
【文献】特開2003-017538(JP,A)
【文献】特開2004-069502(JP,A)
【文献】特表2014-514743(JP,A)
【文献】特開2008-132401(JP,A)
【文献】特開平11-344428(JP,A)
【文献】特開2006-013234(JP,A)
【文献】Mey-Ami, L. M. et al.,Single Nanoparticle ICP-MS Analysis of Process Chemicals and UPW Used in Surface Cleaning and Preparation,SPCC Conference,Poster session,2018年04月11日,pp. 1-16,https://www.linx-consulting.com/wp-content/uploads/2018/04/03-09-L_Mey-Ami-Air_Liquide-Single_Nano_PC-ICP-MS-Analysis.pdf
【文献】Wilbur, S. et al.,Characterization of nanoparticles in aqueous samples by ICP-MS,White paper, Agilent Technologies,2017年07月31日,Publication number: 5991-5516EN,pp. 1-10,https://www.agilent.com/us/library/whitepaper/public/ICP-MS_5591-5516EN-nanoparticles.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
H01J 49/00 - H01J 49/48
G01N 15/00 - G01N 15/14
G01N 1/00 - G01N 1/44
B82Y 5/00 - B82Y 99/00
H01L 21/00 - H01L 21/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(spICPMS)を使用して試料からナノ粒子を測定する方法において、
前記試料の1つの表面の第1の部分のみを、曝露容器の開放した上面に形成された、前記曝露容器に満たされた第1の液体媒体の第1の露出面であって、前記試料の前記表面よりも小さい第1の露出面と接触させることによって、前記試料の前記表面の前記第1の部分から前記ナノ粒子を分離すること、及び
spICPMSを使用して前記第1の液体媒体を測定すること
を含み、
前記第1の部分から前記ナノ粒子を分離することが、前記第1の部分を前記第1の露出面と接触させた後に、前記第1の液体媒体を振動させることをさらに含み、
前記第1の液体媒体を振動させることが、前記第1の液体媒体を含む前記曝露容器をソニケータ上に配置することを含む、方法。
【請求項2】
spICPMSを使用して前記第1の液体媒体を測定することが、前記試料に由来する前記ナノ粒子のサイズ、組成、及び濃度のうちの少なくとも1つを決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が処理チャンバ構成要素を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料の前記表面が、粗い及び非平面的のうちの少なくとも一方である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の部分を前記第1の露出面と接触させて前記第1の部分から前記ナノ粒子を分離した後に、前記試料を前記第1の露出面に対して横方向に移動すること、及び前記試料の前記表面の第2の部分を前記第1の液体媒体の前記第1の露出面と接触させることをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料の前記表面の前記第1の部分を前記第1の液体媒体の前記第1の露出面と接触させるのと同時に、前記試料の前記表面の第2の部分を、前記曝露容器とは別の曝露容器の開放した上面に形成された、前記別の曝露容器に満たされた第2の液体媒体の第の露出面と接触させることをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料の前記表面の前記第1の部分を前記第1の露出面と接触させている間、前記試料の少なくとも第2の表面が前記第1の液体媒体に曝露されない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の液体媒体が、脱イオン水、超純水、有機溶媒、界面活性剤、共溶液、及び反応物質のうちの少なくとも1つを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子が銅を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
処理チャンバ内の少なくとも第1の構成要素について、少なくとも第1のナノ粒子によるナノ粒子汚染を検出する方法であって、
処理動作の後に、前記処理チャンバから前記第1の構成要素を取り出すこと;及び
前記第1の構成要素に由来する前記第1のナノ粒子のサイズ、組成、及び濃度のうちの少なくとも1つを決定するために、単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(spICPMS)を使用して、前記第1の構成要素に由来する前記第1のナノ粒子を測定すること
を含み、
前記測定することが、前記第1の構成要素の第1の表面の第1の部分のみを、曝露容器の開放した上面に形成された、前記曝露容器に満たされた第1の液体媒体の第1の露出面であって、前記第1の表面よりも小さい第1の露出面と接触させることによって、前記第1の構成要素の前記第1の表面の前記第1の部分から前記第1のナノ粒子を分離することを含み、
前記第1の部分から前記第1のナノ粒子を分離することが、前記第1の部分を前記第1の露出面と接触させた後に、前記第1の液体媒体を振動させることをさらに含み、前記第1の液体媒体を振動させることが、前記第1の液体媒体を含む前記曝露容器をソニケータ上に配置することを含む、方法。
【請求項11】
未使用の処理チャンバから、前記第1の構成要素と同じサイズ及び同じ形状を有する第2の構成要素を取り出すこと;
spICPMSを使用して前記第2の構成要素に由来する第2のナノ粒子を測定すること;及び
前記第1のナノ粒子の測定結果を前記第2のナノ粒子の測定結果と比較すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記処理動作中に第3の構成要素を遮蔽すること;
前記処理動作の後に、前記処理チャンバから前記第3の構成要素を取り出すこと;
spICPMSを使用して前記第3の構成要素に由来する第3のナノ粒子を測定すること;及び
前記第1のナノ粒子の測定結果を前記第3のナノ粒子の測定結果と比較すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、処理チャンバ内でナノ粒子を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子(すなわち、約1から500ナノメートル(nm)のサイズの粒子)は、処理チャンバ内に、及び/又はそこで処理されたウエハ上に汚染の一形態として、生じる可能性がある。ナノ粒子汚染の検出及び/又は制御は、半導体製造において非常に重要である。チャンバ構成要素は、ウエハ上にナノ粒子を放出することが一般的に理解されているが、多くの疑問が残っている。例えばシャワーヘッド、フェースプレート、ライナ、ガスライン等のチャンバ構成要素は、さまざまな材料(例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、セラミック、コーティング等)で作られている。洗浄後のチャンバ構成要素からの粒子の濃度を測定するために、レーザ-液中粒子計数(LPC)が用いられている。しかしながら、粒子サイズが100nm未満、とりわけ50nm未満など、小さくなると、レーザをベースとした光散乱技術は回折の課題にますます直面することとなる。
【0003】
ナノ粒子汚染について、滑らかで平坦な表面を有する試料を測定するための現在の方法には、エネルギー分散型X線(EDX)分光法と組み合わせた走査型電子顕微鏡法(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)が含まれうる。例えば、ウエハ表面は、米国カリフォルニア州所在のKLA Tencor社から入手可能なSurfscan(登録商標)SP5非パターン化ウエハ検査システムを使用して検査することができる。しかしながら、約100nm未満のサイズの粒子は、一部には鏡面反射のため、粗い表面及び/又は曲面上では検出が困難である。
【0004】
誘導結合プラズマ質量分析(ICPMS)は、非干渉の低バックグラウンド同位体において、金属及び幾つかの非金属を1015分の1(パーツ・パー・クアッドリリオン、ppq)の低い濃度で検出することができる質量分析の一種である。これは、誘導結合プラズマで試料をイオン化し、次に、質量分析計を使用してこれらのイオンを分離及び定量することによって実現される。一般に、ネブライザが試料を含む液体をエアロゾルへと変換するために用いられ、その後、そのエアロゾルはプラズマへと掃引されてイオンを生成する。ネブライザは、単純な液体試料(すなわち溶液)で最適に機能する。
【0005】
処理チャンバ構成要素からナノ粒子をより良好に測定するためのツール及び技術(較正及び品質保証手順を含む)は有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(single particle inductively coupled plasma mass spectrometry;spICPMS)を使用して試料からナノ粒子を測定する方法は、表面を第1の液体媒体の第1の露出面に曝露すること;第1の液体媒体を機械的に操作すること;及び、spICPMSを使用して第1の液体媒体を測定することによって、試料の表面からナノ粒子を分離することを含む。
【0007】
一実施形態では、処理チャンバ内のナノ粒子汚染を検出する方法は、処理動作の後に処理チャンバから第1の構成要素を取り出すこと;及び、単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(spICPMS)を使用して第1の構成要素由来の第1のナノ粒子を測定することを含み、該測定することは、第1の表面の第1の部分を第1の液体媒体の第1の露出面に曝露すること;及び、第1の液体媒体を機械的に操作することによって、第1の構成要素の第1の表面から第1のナノ粒子を分離することを含む。
【0008】
本開示の上記の特徴を詳細に理解できるように、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が実施形態を参照することによって得られ、その一部は、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示しているにすぎず、したがって、その範囲を限定するとみなすべきではなく、他の等しく有効な実施形態も許容されうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】例示的な処理チャンバの概略的な断面図
図2A図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するための配置
図2B図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するための配置
図3A図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するための代替的な配置
図3B図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するための代替的な配置
図4A図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するためのさらなる代替的な配置
図4B図1の処理チャンバから採取した試料からナノ粒子を分離するためのさらなる代替的な配置
図5】表面の複数の部分の測定結果
図6】ガスラインの試料の測定結果
図7】イットリア被覆カソードスリーブの試料の測定結果
図8】熱処理動作後のAlクーポン上のCuナノ粒子の測定結果
図9】ウエハ上のAlナノ粒子の測定結果
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするため、可能な場合には、図面に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号が用いられる。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込むことができることが企図されている。
【0011】
単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(spICPMS)は、ナノ粒子を検出、特徴付け、及び定量化するための創発的なICPMS法である。spICPMSは、環境に関連する曝露レベルでナノ粒子のサイズ、組成、及び濃度を決定するための定量的方法として急速に進化してきた。例えば、spICPMSは、生物学的、環境的、及び化学的などの複雑なマトリクス内のナノ粒子を特徴付けるために用いられてきた。しかしながら、spICPMS試料は通常、一般的なサンプル導入システム(例えば、液体媒体への懸濁)と相容性になるように変更する必要がある。これまでのspICPMSのほとんどの研究及び進歩は、テストケースとしてプリスチンなナノ粒子を使用して行われてきた。
【0012】
本明細書に開示される単一粒子誘導結合プラズマ質量分析(spICPMS)装置及び方法を使用して、滑らかな、粗い、平面的な、及び非平面的な表面上のナノ粒子のサイズ、組成、及び濃度を測定することができる。例えば、spICPMSは、基板(例えば、ウエハ)の表面など、滑らかで平坦な表面上のナノ粒子を測定(例えば、検出、特徴付け、カウント、分析)するために使用することができる。さらには、本明細書に開示されるように、spICPMSはまた、チャンバ構成要素の表面などの粗い非平面的な表面からナノ粒子を測定するためにも使用することができる。限られた数のチャネルでレーザ光を散乱させることによって粒子を検出するレーザ-液中粒子計数(LPC)とは異なり、spICPMSは、粒子の数を検出するだけでなく、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、及びイットリウム(Y)などの材料を含む粒子の組成を特定することもできる、イオン/質量ベースの技術である。従来の技術とは異なり、本明細書に開示される実施形態は、特定のチャンバ構成要素、及び/又は該チャンバ構成要素の特定の表面(又はその一部)上のナノ粒子汚染を検出することができる。特定の表面は、粗い及び/又は非平面でありうる。
【0013】
新規のナノ粒子の抽出及び/又は分離方法を使用することにより、本開示のspICPMS技術は、約10nmから約200nmのサイズのナノ粒子を検出し(約1nmの分解能)、ナノ粒子濃度を測定し、ナノ粒子の数を測定し、滑らかな、粗い、平面的な、及び非平面的な表面からのナノ粒子の組成を、それぞれ特定することができる。
【0014】
処理チャンバ内のナノ粒子を測定するためのspICPMS技術の適用は、チャンバの設計、製造、及び動作に役立ちうる。例えば、非Cu処理チャンバ内のウエハの銅(Cu)汚染は重要な問題であった。Cuナノ粒子は、チャンバ構成要素から「再懸濁」することができ、及び/又は、熱及び/又はプラズマ処理条件下でウエハ上に堆積及び拡散することができる。開示されたspICPMS技術を使用して、ウエハ上で検出されたナノ粒子汚染とさまざまなチャンバ構成要素との間の潜在的な相関関係をよりよく理解することができる。
【0015】
図1は、例示的な処理チャンバ10の概略的な断面図である。処理チャンバ10は、単独で、あるいは、集積半導体基板処理システム又はクラスタツールの処理モジュールとして利用することができる。処理チャンバ10は本体20を有する。処理チャンバ10の本体20は、1つ以上の側壁(例えば円筒形)、蓋、及び底面を有する。側壁、蓋、及び底面は内部容積を画成する。さまざまな構成要素が処理チャンバ10の本体20内に配置される。例えば、ガス分配器30(例えば、シャワーヘッド)を蓋に近接して内部容積内に配置することができる。ガスライン60をガス分配器30に結合し、該ガス分配器30を介して1つ以上のガスを処理チャンバ10の内部容積に導入することができる。基板支持体50もまた、ガス分配器30に面する基板支持面55を伴って、内部容積内に配置される。1つ以上のチャンバ側壁は、基板支持体50を取り囲むライナ40を囲む。これらの構成要素のいずれかが、処理中のナノ粒子汚染の原因となる可能性がある。
【0016】
試料上のナノ粒子の測定は、試料からのナノ粒子の抽出及び/又は分離から開始することができる。例えば、図2Aに示されるように、チャンバ構成要素などの試料100は、浸漬容器140を使用して液体媒体150に浸漬することができる。液体媒体150は、有意義なspICPMS測定を可能にするために十分に純粋であるか、又は既知の組成のものでなければならない。幾つかの実施形態では、液体媒体150は、脱イオン水又は超純水(例えば、ドイツ国ダルムシュタット所在のMerck KGaA社から入手可能なMilli-Q(登録商標)一体型浄水システムによって生成されたMilli-Q水)である。他の実施形態では、液体媒体150は、試料100の表面化学に影響を及ぼすため、及び/又は試料100からナノ粒子をより良好に分離するために、有機溶媒、界面活性剤、共溶液、反応物質、又は他の薬剤を含むことができる。幾つかの実施形態では、浸漬容器140、液体媒体150、及び/又は試料100は、ナノ粒子を試料100からより良好に分離するために、攪拌又は超音波処理などの機械的操作にさらされうる。例えば、図2Bに示されるように、浸漬容器140をソニケータ160(例えば、ウルトラソニケータ又はメガソニケータ)上に配置し、試料100に対して液体媒体150を機械的に操作して(例えば、振動させて)、ナノ粒子110(本明細書では説明の目的で誇張されたサイズで示されている)を試料100からより良好に分離することができる。液体中で形成されたジェットが試料100の表面に衝突してナノ粒子を緩めて取り除くジェット循環などの他の機械的操作技術も使用することができる。分離されたナノ粒子110を有する得られた液体媒体150は、試料100上のナノ粒子のサイズ、組成、及び/又は濃度を決定するために、spICPMSを使用して測定されうる。試料100は、滑らか、粗い、平面的、及び非平面的な表面を有しうることが理解されるべきである。
【0017】
同様の技術を利用して、試料の特定の表面からナノ粒子を分離することができる。図3Aに示されるように、試料200の表面220は、曝露容器240内の液体媒体150に曝露されうる。試料200は、表面220が液体媒体150に接触するように、支持体210によって保持することができる。試料200の他の表面は、表面220の曝露中、液体媒体150の外に保持することができる。幾つかの実施形態では、曝露容器240、液体媒体150、及び/又は試料200は、表面220が液体媒体150に曝露されて、ナノ粒子を試料200からより良好に分離する間、機械的操作にさらされうる。ナノ粒子を有する得られた液体媒体150は、試料200の表面220上のナノ粒子のサイズ、組成、及び/又は濃度を決定するために、spICPMSを使用して測定されうる。試料200の表面220は、滑らかでも粗くてもよいものと認識されたい。
【0018】
同様の技術を利用して、試料の特定の表面の特定の部分からナノ粒子を分離することができる。図3Bに示されるように、曝露容器240は、液体媒体150の露出面245が試料200の表面220よりも小さくなるような寸法を有しうる。この場合、表面220の曝露部分225は、液体媒体150の露出面245と接触している。(曝露部分225は、露出面245と同一又は同様の面積を有するものと認識されたい)。例えば、矢印235によって示されるように、試料200は、表面220の曝露部分225が液体媒体150の露出面245と接触するように、下降されうる。表面220の他の部分及び試料200の他の表面は、表面220の曝露部分225の曝露中、液体媒体150から離れて保持されうる。幾つかの実施形態では、曝露容器240、液体媒体150、及び/又は試料200は、表面220の曝露部分225が液体媒体150の露出面245に曝露されて、ナノ粒子を試料200からより良好に分離する間、機械的操作にさらされうる。ナノ粒子を有する得られた液体媒体150は、試料200の表面220の曝露部分225上のナノ粒子のサイズ、組成、及び/又は濃度を決定するために、spICPMSを使用して測定されうる。試料200の表面220は、滑らかであるか又は粗く、平面的又は非平面的でありうるものと認識されたい。
【0019】
同様の技術を利用して、試料の特定の表面の複数の曝露部分からナノ粒子を分離することができる。図4Aに示されるように、曝露容器340は、液体媒体350の第1の露出面345-aが試料300の表面320よりも小さくなるような寸法を有しうる。表面320の第1の曝露部分325-aは、液体媒体350の第1の露出面345-aに曝露されうる。例えば、曝露容器340は、表面320の第1の曝露部分325-aが液体媒体350の第1の露出面345-aと接触するように、矢印335の方向に(すなわち、試料300に向かって)移動させることができる。本明細書では、第1の露出面345-aは、曝露容器340から突出するメニスカスとして示されている。メニスカスは表面320と接触させられ、容器340と表面320との間にクリアランスが維持される。液体媒体350の表面張力を使用して、第1の露出面345-aと第1の曝露部分325-aとの接触を維持することができる。表面320の他の部分及び試料300の他の表面は、表面320の第1の曝露部分325-aの曝露中、液体媒体350から離れて保持されうる。
【0020】
幾つかの実施形態では、曝露容器340、液体媒体350、及び/又は試料300は、表面320の第1の曝露部分325-aが液体媒体350の第1の露出面345-aに曝露されて、ナノ粒子を試料300からより良好に分離する間、機械的操作にさらされうる。図4Bに示されるように、ナノ粒子は、表面320の他の部分から連続的に分離されうる。例えば、試料300は、曝露容器340に対して横方向に(すなわち、第1の露出面345-aに平行に)試料300を移動させることによって、表面320の他の曝露部分を第1の露出面345-aに接触させるように配置することができる。図4Bは、曝露容器340が横方向337に移動し、それによって表面320の曝露部分と液体媒体350の露出面との間にらせん状の接触パターンを生成する間、露出面に垂直な軸の周りで回転336する試料300を示している。他の実施形態は、表面320の一部又は全部を走査するために、おそらくは曝露容器340の横方向運動と組み合わされた、試料300の線形の横方向運動を含みうる。試料の多くの領域又は表面全体からナノ粒子が回収される可能性のある、得られた液体媒体350は、試料300の表面320の複数の部分上のナノ粒子のサイズ、組成、及び/又は濃度を決定するために、spICPMSを使用して処理されうる。試料300の表面320は、滑らかであるか又は粗く、平面的又は非平面的でありうるものと認識されたい。液体媒体350への曝露は、表面との液体接触を通じて、さまざまな表面形態からナノ粒子を回収することができる。
【0021】
同様の技術を利用して、試料の特定の表面の複数の曝露部分からナノ粒子を分離及び測定することができる。例えば、表面320の各曝露部分325-iで対応する液体媒体350-iを特定することによって、各曝露部分325-iについて別個のspICPMS測定を行うことができる。一実施形態では、曝露容器340及び/又は該曝露容器340内の液体媒体350-iが測定され、及び/又は、各曝露間で交換される。別の実施形態では、複数の曝露容器340を利用して、曝露部分325-iの各々をそれぞれの液体媒体350-iに同時に曝露することができる。表面の複数部分のこのようなspICPMS測定の結果が図5に示されている。
【0022】
他の実施形態は、表面320と(一又は複数の)曝露容器340との間のさまざまな動きを含みうる。例えば、曝露容器の第1のサブセットは、第1の時点で表面320の一部分の第1のサブセットを曝露するために上昇させることができ、曝露容器340の第2のサブセット(おそらくは第1のサブセットと重複する)は、表面320に対して並進的に移動することができ、曝露容器340の第3のサブセット(おそらくは第1のサブセット及び/又は第2のサブセットと重複する)は、第2の時点で表面320の一部分の第3のサブセットを曝露するために上昇させることができる。例えば、個々の上昇アクチュエータ(例えば、エレベータ)を、各曝露容器340に関連付けることができる。したがって、曝露容器の第1のサブセットは、第1の時点で上昇しうるが、残りの曝露容器は上昇しない。幾つかの実施形態では、表面320と(一又は複数の)曝露容器340との間の動きは、流体振動を生成する機械的操作を含みうる。このような動きは、基板表面に垂直な動き、基板表面を横切る動き、又はその間のあらゆる動きを含みうる。このような操作は、流体力の特定のベクトルに対して脆弱なナノ粒子の分離の改善をもたらすことができる。
【0023】
試料上のナノ粒子を測定するための上記spICPMS技術を利用して、処理チャンバ内のナノ粒子汚染をより良好に検出することができる。例えば、チャンバ構成要素は、(処理動作の後に)処理チャンバから取り出すことができ、次いで、構成要素又はその表面を、上記spICPMS技術を使用して測定することができる。幾つかの実施形態では、使用した(すなわち、処理動作中の)構成要素を測定することができ、同様の新しい(すなわち、処理動作中に使用していない)構成要素を、対照試料として測定することができる。例えば、新しい構成要素は、使用した構成要素と同じサイズ及び形状を有していてよく、あるいは、新しい構成要素は、使用した構成要素と同じサイズ、形状、及び組成を有していてよい。使用した構成要素によってナノ粒子の普及が異なる場合、その違いは、チャンバ構成要素が処理チャンバに取り付けられている間に、使用中に発生した構成要素への/構成要素からのナノ粒子汚染を示していると見なすことができる。
【0024】
他の実施形態では、試料上のナノ粒子を測定するための上記spICPMS技術は、複数のチャンバ構成要素とともに利用することができる。例えば、3つの構成要素を(処理動作の後に)第1の処理チャンバから取り出し、上記spICPMS技術を使用して測定することができる(おそらくは同様の新しい対照試料も測定される)。同様の第2の処理チャンバは、3つの構成要素のうちの1つが取り出され、遮蔽され、又は不活性な(例えば、セラミック)構成要素と交換されることを伴って動作するように適合させることができる。処理動作は第2のチャンバで行われ、第2のチャンバから3つの構成要素が取り出され、測定される。第1のチャンバと第2のチャンバとの間のナノ粒子の普及の違いは、取り出され、遮蔽され、又は交換された1つの構成要素に起因すると見なすことができる。
【0025】
例えば、第1の処理チャンバは、3つのチャンバ構成要素を含む第1の処理キットを有することができ、第2の処理チャンバは、第1の処理キットと同一の第2の処理キットを有することができる。3つの構成要素の1つを第2の処理チャンバから取り出すことができる。同一の処理を第1及び第2の処理チャンバで実行することができる。第1の処理キットは、spICPMSに従って取り出し、処理することができる。第2の処理キットもまた、spICPMSに従って取り出し、処理することができる。第1の処理キットの構成要素と第2の処理キットの構成要素におけるナノ粒子の違いは、第2の処理チャンバからの構成要素の取り出しに起因する可能性がある。各試験中に(一又は複数の)どの構成要素を取り出し、遮蔽し、又は置き換えるかを変えて、追加の試験を実施することができる。結果の比較は、処理チャンバ内のナノ粒子汚染の検出に役立てることができる。例えば、特定の構成要素は、本明細書に記載される方法を使用してナノ粒子汚染の実質的な原因として特定することができ、その後、(例えば、特定された汚染源を除去、遮蔽、又は交換することによって)汚染を軽減するように、処理チャンバを再設計することができる。
【0026】
試料上のナノ粒子を測定するための上記spICPMS技術は、処理チャンバ動作(例えば、チャンバ洗浄操作)のための較正及び/又は品質保証手順として実施することができる。例えば、対照試料は、既知のタイプのナノ粒子及び/又は既知の濃度のナノ粒子を含みうる。ナノ粒子の測定は、試験試料のspICPMS結果を対照試料の結果と比較することを含みうる。幾つかの実施形態では、液体媒体のタイプ及び/又は機械的操作は、比較に基づいて後続の試験において調整することができる。幾つかの実施形態では、比較及び/又は調整は、ナノ粒子の異なる元素の選択された比率に適合させることができる。(異なる元素では密度も異なり、したがって、所与のサイズの粒子では溶出が異なる。)
【0027】
実験結果
spICPMSの輸送効率及び他のパラメータの決定は、希釈された米国国立標準技術研究所の金ナノ粒子RM8013(すなわち、直径60nm)を使用して行われた。spICPMS機器は、Yではm/z89、Cuではm/z63などの単一元素モードで動作させた。機器の製造元の指示に従い、ナノ粒子測定のためにNIST微量金属較正を実施した。RM8011(金の公称10nm直径)及びRM8012(金の公称20nm直径)を含む、他のNIST標準ナノ粒子を使用してもよい。予想されるナノ粒子汚染と可能な限り寸法が類似している標準を選択することにより、より良好な結果を得ることができると現在は考えられている。較正は、spICPMS機器が試料内の複数の元素を分解する多元素モードで実行することができる。標準的なナノ粒子には、例えば、金と鉄の両方が含まれうる。
【0028】
次の図のデータは、滑らかな表面及び粗い表面、及び/又は平面的な表面及び非平面的な表面からナノ粒子を測定するspICPMSの能力を示している。このような測定は、ウエハ上のナノ粒子と処理チャンバ構成要素上のナノ粒子と間の潜在的な相関関係をより良好に検出するために利用することができる。
【0029】
(1)ガスライン(滑らかな、非平面的な表面)からの鉄(Fe)ナノ粒子の測定
図6は、試料ガスラインの測定結果を示している。ナノ粒子は、ガスラインの内部を液体媒体に曝露して、ガスラインの内部の液体媒体からナノ粒子を収集することによって、ガスラインから分離した。この事例では、ガスラインを超純水で満たし、超純水を収集し、spICPMSで測定した。結果は、20nmから150nmのFeナノ粒子の濃度を示している。現在、ガスラインが処理チャンバ内のナノ粒子汚染の原因でありうると考えられている。
【0030】
(2)チャンバ構成要素(粗い、非平面的な表面)からのナノ粒子の測定
図7は、イットリア被覆カソードスリーブの試料の測定結果を示している。ナノ粒子は、脱イオン水中への浸漬を含む、上記分離技術によってカソードスリーブから分離された。結果は、10nmから500nmのナノ粒子の濃度を示している。LPCの結果では、粒子タイプを区別できず、100nmから500nmまでのサイズの5つのチャネルが特定されている。spICPMSの結果(グラフ形式と表形式の両方)は、陽極酸化されたAlスリーブからのAlナノ粒子と、イットリアコーティングからのYナノ粒子とを示している。spICPMSの結果は、1nmの分解能で>10nmから約100nmのサイズ分布を有するナノ粒子の測定値を示している。これらの粒子は金属酸化物の形態であると考えられている。spICPMSの結果は、ナノ粒子の大部分が金属酸化物の形態のY、Al、及びMgであることを示している。
【0031】
(3)Al6061(粗い、平坦な表面)からのCuナノ粒子
図8は、熱処理動作後のAlクーポン上のCuナノ粒子の測定結果を示している。ナノ粒子は、脱イオン水中への浸漬及び超音波処理を含めた上記分離技術によってAlクーポンから分離された。880で示されるように、300~350℃に複数回加熱後、Al6061クーポンからかなりの数のCuナノ粒子が検出された。890で示されるように、対照クーポンは1桁低い強度を示した。Cuナノ粒子のこの発見は、バルクAl中のCuが高温下でAl表面に移動したかもしれないという仮説を裏付けている。spICPMS測定技術により、このような粗い非平面的な表面上でのナノ粒子測定が可能となった。
【0032】
(4)ウエハ(滑らかで平坦な表面)上でのAl汚染
図9は、ウエハ上のAlナノ粒子の分析結果を示している。ナノ粒子は上記分離技術によってウエハから分離された。
【0033】
上記は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態を考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9