(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】層状ペロブスカイト、光吸収層、光吸収層付き基板、光電変換素子、及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230217BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20230217BHJP
H10K 85/50 20230101ALI20230217BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K85/50
(21)【出願番号】P 2020525113
(86)(22)【出願日】2018-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2018023251
(87)【国際公開番号】W WO2019244234
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 治之
(72)【発明者】
【氏名】中島 智彦
(72)【発明者】
【氏名】土屋 哲男
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/025445(WO,A1)
【文献】特開2016-092293(JP,A)
【文献】SANEHIRA, Yoshitaka et al.,"Photovoltaic Properties of Two-dimensional (CH3(CH2)3NH3)2PbI4 Perovskite Crystals Oriented with TiO2 Nanowire Array",Chemistry Letters,2017年,Vol.46,p.1204-1206
【文献】AHMAD, Shahab et al.,"Direct deposition strategy for highly ordered inorganic organic perovskite thin films and their optoelectronic applications",OPTICAL MATERIALS EXPRESS,2014年,Vol.4, No.7,p.1313-1323
【文献】TRAORE, Boubacar et al.,"Composite Nature of Layered Hybrid Perovskites: Assessment on Quantum and Dielectric Confinements and Band Alignment",ACS Nano,2018年02月26日,Vol.12,p.3321-3332
【文献】NIU, Yuwei et al.,"Aggregation-Induced Emission Features of Organometal Halide Perovskites and Their Fluorescence Probe Applications",ADVANCED OPTICAL MATERIALS,2015年,Vol.3,p.112-119
【文献】PRADEESH, K. et al.,"Synthesis, structural, thermal and optical studies of inorganic-organic hybrid semiconductors, R-PbI4",JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,2013年,Vol.113,p.083523-1 - p.083523-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/18
CAplus/REGISTRY(STN)
Wiley Online Library
ACS PUBLICATIONS
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウトオブプレーン法で得られるX線回折ピークから算出される(002)面の面間隔が2.6nm以上5.0nm以下であり、前記X線回折ピークにおける(002)面のX線回折ピーク強度に対する(111)面のX線回折ピーク強度の強度比((111)面/(002)面)が0.03以上であ
り、下記一般式(1)で表される化合物を含む、層状ペロブスカイトを含む光吸収層が、Owens-Wendt式を用いて算出される表面自由エネルギーが40mJ/m
2
以上100mJ/m
2
以下である基板上に形成されている、光吸収層付き基板。
R
2
MX
1
n
X
2
4-n
(1)
(式中、Rは炭素数16以上18以下のアルキルアンモニウムイオンであり、2つのRは同一であり、Mは2価の金属カチオンであり、X
1
及びX
2
はそれぞれ独立に1価のアニオンであり、nはX
1
の平均モル数であり、nは0以上4以下の実数である。)
【請求項2】
前記X
1及びX
2は、それぞれ独立にフッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオンである、請求項
1に記載の
光吸収層付き基板。
【請求項3】
前記Mは、Pb
2+、Sn
2+、及びGe
2+からなる群より選択される1種以上の金属カチオンである、請求項
1又は2に記載の
光吸収層付き基板。
【請求項4】
上記一般式(1)で表される化合物が、(C
16H
33NH
3)
2PbI
4、(C
16H
33NH
3)
2PbI
nBr
4-n、及び、(C
18H
37NH
3)
2PbBr
4からなる群より選択される1種以上の化合物である、請求項
1~3のいずれかに記載の
光吸収層付き基板。
【請求項5】
前記層状ペロブスカイトが、2.0eV以上3.5eV以下のバンドギャップエネルギーを有する、請求項1~
4のいずれかに記載の
光吸収層付き基板。
【請求項6】
請求項
1~5のいずれかに記載の光吸収層付き基板を有する光電変換素子。
【請求項7】
請求項
6に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状ペロブスカイト、当該層状ペロブスカイトを含む光吸収層、当該光吸収層を有する光吸収層付き基板及び光電変換素子、ならびに当該光電変換素子を有する太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光エネルギーを電気エネルギーに変える光電変換素子は、太陽電池、光センサー、複写機などに利用されている。特に、環境・エネルギー問題の観点から、無尽蔵のクリーンエネルギーである太陽光を利用する光電変換素子(太陽電池)が注目されている。
【0003】
近年、シリコン太陽電池にかわる太陽電池として、3次元構造を有するペロブスカイト化合物(以下、3次元ペロブスカイト)を光電変換層とした有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト太陽電池が注目を集めている。現在、前記ペロブスカイト太陽電池のセルの変換効率は20%を超えており、モジュール化や耐久性評価が進められている。
【0004】
しかしながら、3次元ペロブスカイトは耐湿性が低く、構造も不安定であるため、更なる耐久性の改善が望まれており、そのための新たな組成や製法の開発が求められている。さらに、特定の光波長領域を利用することを目的としたタンデム方式や中間バンド型太陽電池等の次世代高効率太陽電池にペロブスカイト太陽電池を応用する場合、一般的に用いられている1.5~1.6eV程度のバンドギャップエネルギーを有する3次元ペロブスカイトでは高い開放電圧が得られないため、より大きなバンドギャップエネルギー、具体的には2eVを超えるバンドギャップエネルギーを有するペロブスカイト化合物が必要となる。
【0005】
耐湿性と大きなバンドギャップエネルギーを兼ね備えたペロブスカイトとして、疎水性のアルキルアンモニウムを1価カチオンとした層状ペロブスカイトの研究が進められている。
【0006】
例えば、ブチルアンモニウムを用いた層状ペロブスカイト((C4H9NH3)2(CH3NH3)n-1PbnI3n+1:n=1~4であり、n=1は積層数1、n=2は積層数2、n=3は積層数3、n=4は積層数4を示す)は3次元ペロブスカイトよりも耐湿性が向上したことが報告されている(JACS 2015, 137, 7843-7850)。
【0007】
また、2次元ペロブスカイトにおいて高いキャリア移動度を実現することを目的として、ハロゲン化アンモニウム基が配列した表面に2次元ペロブスカイトを形成する技術が提案されている(国際公開第2017/086337号)。
【0008】
また、フラーレンC60を含む組成を有する層状ペロブスカイト型構造を含む太陽電池用有機-無機複合材料が提案されている(特開2016-63090号公報)。
【0009】
また、特定の波長領域のみの光を選択的に吸収する層状有機ペロブスカイト材料からなる光電変換層が提案されている(特開2017-5196号公報)。
【0010】
しかし、前記JACSに記載の最も大きなバンドギャップエネルギー(2.24eV)を有するモノレイヤータイプの(C4H9NH3)2PbI4は、キャリア輸送に有利な結晶配向性を有していないため短絡電流密度が小さく、結果として太陽電池の変換効率が低いという課題がある。
【0011】
また、前記各特許文献に記載の2次元ペロブスカイト及び層状ペロブスカイトも、キャリア輸送に有利な結晶配向性を有していないため短絡電流密度が小さく、太陽電池の変換効率が低いという課題がある。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、バンドギャップエネルギーが大きく、かつキャリア輸送能に優れた層状ペロブスカイト、当該層状ペロブスカイトを含む光吸収層、当該光吸収層を有する光吸収層付き基板及び光電変換素子、ならびに当該光電変換素子を有する太陽電池を提供することを目的とする。
【0013】
本発明者らは、特定の結晶配向性を有する層状ペロブスカイトを用いることにより、キャリア輸送能が向上することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、アウトオブプレーン法で得られるX線回折ピークから算出される(002)面の面間隔が2.6nm以上5.0nm以下であり、前記X線回折ピークにおける(002)面のX線回折ピーク強度に対する(111)面のX線回折ピーク強度の強度比((111)面/(002)面)が0.03以上である層状ペロブスカイト、に関する。
【0015】
従来の層状ペロブスカイトは、
図1に示すように、ペロブスカイトの金属カチオンとアニオンで構成される電荷輸送層11が、ペロブスカイトのカチオンで構成される有機層12を介して層状に多重に積層した構造を有している。そして、前記電荷輸送層11は、電極基板13に対して平行に配向しているため(X線回折ピークにおける(002)面に回折ピークを有する)、光電変換によって生じた電子とホールは前記電荷輸送層11の面内でしか移動することができず、前記電荷輸送層11で生じた電子とホールを十分に取り出すことができないため短絡電流密度が小さくなると考えられる。
【0016】
一方、本発明の層状ペロブスカイトは、
図2に示すように、従来の層状ペロブスカイトとは異なり、電極基板13に対して垂直方向に配向した電荷輸送層11を有しており(X線回折ピークにおける(111)面に回折ピークを有する)、光電変換によって生じた電子とホールは前記電荷輸送層11の面内を電極基板13方向に移動することができるため、前記電荷輸送層11で生じた電子とホールを効率的に取り出すことができる。そのため、短絡電流密度が大きくなり、太陽電池の光電変換効率及び量子効率が向上すると考えられる。
【0017】
本発明の層状ペロブスカイトはキャリア輸送能に優れているため、本発明の層状ペロブスカイトを光吸収層として用いれば、光電変換効率及び量子効率に優れる光電変換素子及び太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来の層状ペロブスカイトの構造を示す概略図である。
【
図2】本発明の層状ペロブスカイトの構造を示す概略図である。
【
図3】本発明の光電変換素子の構造の一例を示す概略断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0019】
<層状ペロブスカイト>
本発明の層状ペロブスカイトは、アウトオブプレーン法で得られるX線回折ピークから算出される(002)面の面間隔が2.6nm以上5.0nm以下であり、前記X線回折ピークにおける(002)面のX線回折ピーク強度に対する(111)面のX線回折ピーク強度の強度比((111)面/(002)面)が0.03以上である。
【0020】
前記(002)面の面間隔は、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、好ましくは2.7nm以上、より好ましくは2.8nm以上、更に好ましくは2.9nm以上であり、吸光度を向上させる観点から、好ましくは4.7nm以下、より好ましくは4.4nm以下、更に好ましくは4.1nm以下、より更に好ましくは3.3nm以下である。
【0021】
また、前記強度比((111)面/(002)面)は、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、0.03以上であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1.0以上である。
【0022】
本発明の層状ペロブスカイトは、モノレイヤータイプ、バイレイヤータイプ、トリレイヤータイプ、又はテトラレイヤータイプのいずれでもよいが、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点、及び大きなバンドギャップエネルギーを得る観点から、好ましくはモノレイヤータイプ、又はバイレイヤータイプ、より好ましくはモノレイヤータイプである。
【0023】
前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物は、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物であり、公知の化合物を用いることができる。前記ペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは2.0eV以上、より好ましくは2.2eV以上、更に好ましくは2.4eV以上であり、特定の波長範囲の光を吸収させる観点から、好ましくは3.5eV以下、より好ましくは3.2eV以下、更に好ましくは3.0eV以下である。ペロブスカイト化合物は、1種単独で用いてもよく、バンドギャップエネルギーが異なる2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ペロブスカイト化合物としては、例えば、モノレイヤータイプの層状ペロブスカイトの原料である下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
R2MX1
nX2
4-n (1)
(式中、Rは1価のカチオンであり、2つのRは同一であり、Mは2価の金属カチオンであり、X1及びX2はそれぞれ独立に1価のアニオンであり、nはX1の平均モル数であり、nは0以上4以下の実数である。)
【0025】
前記Rは1価のカチオンであり、例えば、周期表第一族元素のカチオン、及び有機カチオンが挙げられる。周期表第一族元素のカチオンとしては、例えば、Li+、Na+、K+、及びCs+が挙げられる。有機カチオンとしては、例えば、置換基を有するアンモニウムイオン、及び置換基を有するホスホニウムイオンが挙げられる。層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を付与できる限りにおいて、置換基に特段の制限はない。置換基を有するアンモニウムイオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムイオン、ホルムアミジニウムイオン及びアリールアンモニウムイオンが挙げられ、層状ペロブスカイトの(002)面の面間隔の制御のしやすさ、及び層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、好ましくはアルキルアンモニウムイオン、より好ましくはモノアルキルアンモニウムイオンである。
【0026】
アルキルアンモニウムイオンのアルキル基の炭素数は特に制限されないが、層状ペロブスカイトの(002)面の面間隔を2.6nm以上に調整しやすくする観点、及び層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、層状ペロブスカイトの(002)面の面間隔を5.0nm以下に調整しやすくする観点、及び吸光度を向上させる観点から、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下、より更に好ましくは24以下である。
【0027】
前記Mは2価の金属カチオンであり、例えば、Pb2+、Sn2+、Hg2+、Cd2+、Zn2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Y2+、及びEu2+などが挙げられる。前記Mは、目的とするバンドギャップエネルギーを有するペロブスカイト化合物を得る観点から、好ましくはPb2+、Sn2+、及びGe2+からなる群より選択される1種以上、より好ましくはPb2+、及びSn2+からなる群より選択される1種以上、更に好ましくはPb2+である。
【0028】
前記X1及びX2はそれぞれ独立に1価のアニオンであり、目的とするバンドギャップエネルギーを有するペロブスカイト化合物を得る観点から、好ましくはフッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオン、より好ましくは塩化物アニオン、臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオン、更に好ましくは臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオンである。
【0029】
2.0eV以上3.5eV以下のバンドギャップエネルギーを有する上記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、(C16H33NH3)2PbBr4、(C16H33NH3)2PbI4、(C16H33NH3)2PbInBr4-n、(C18H37NH3)2PbBr4、(C18H37NH3)2PbInBr4-n、(C18H37NH3)2PbI4、(C20H41NH3)2PbBr4、(C20H41NH3)2PbI4、(C20H41NH3)2PbInBr4-n、(C22H45NH3)2PbBr4、(C22H45NH3)2PbI4、(C22H45NH3)2PbInBr4-n、(C24H49NH3)2PbBr4、(C24H49NH3)2PbI4、(C24H49NH3)2PbInBr4-n、(C26H53NH3)2PbBr4、(C26H53NH3)2PbI4、(C26H53NH3)2PbInBr4-n、(C28H57NH3)2PbBr4、(C28H57NH3)2PbI4、(C28H57NH3)2PbInBr4-n、(C30H61NH3)2PbBr4、(C30H61NH3)2PbI4、(C30H61NH3)2PbInBr4-nなどが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは(C16H33NH3)2PbI4、(C16H33NH3)2PbInBr4-n、及び(C18H37NH3)2PbI4であり、より好ましくは(C16H33NH3)2PbI4である。
【0030】
本発明の層状ペロブスカイトの形成方法は特に制限されず、例えば、前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体を含む分散液を調製し、基板(例えば、電極基板など)の表面に調製した分散液を塗布し、乾燥する、いわゆるウェットプロセスによる方法が好適に挙げられる。
【0031】
前記ペロブスカイト化合物の前駆体としては、例えば、ペロブスカイト化合物が前記一般式(1)で表される化合物の場合、MX1
2で表される化合物と、RNH3X1で表される化合物との組合せが挙げられる。
【0032】
分散液中の前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体の濃度は特に制限されず、適宜調整すればよいが、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、溶解性の観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0033】
前記基板は特に制限されないが、層状ペロブスカイトの基板表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、Owens-Wendt式を用いて算出される基板の表面自由エネルギーは、好ましくは40mJ/m2以上、より好ましくは50mJ/m2以上、更に好ましくは60mJ/m2以上であり、好ましくは100mJ/m2以下、より好ましくは95mJ/m2以下、更に好ましくは90mJ/m2以下である。
【0034】
基板の表面自由エネルギーを40mJ/m2以上100mJ/m2以下に調整する方法としては、例えば、基板表面に、チタン酸化物、ニッケル酸化物、亜鉛酸化物、錫酸化物、及びバナジウム酸化物などの金属酸化物;ヨウ化銅、及びチオシアン酸銅(I)などの銅化合物;ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリフェニルメチル)アミン](PTAA)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、[6,6]-フェニル-C61-酪酸 n-オクチルエステル(PCBO)、及び[6,6]-フェニル-C61-酪酸ブチルエステル(PCBB)などの有機化合物、を含む下地層を設ける方法が挙げられる。
【0035】
本発明の層状ペロブスカイトの形成方法は、以下の光電変換素子の製造方法において詳しく述べる。
【0036】
<光吸収層>
光吸収層は、光電変換素子の電荷分離に寄与し、光吸収によって生じた電子及び正孔をそれぞれ反対方向の電極に向かって輸送する機能を有しており、電荷分離層又は光電変換層とも呼ばれる。
【0037】
本発明の光吸収層は、光吸収剤として前記層状ペロブスカイトを含む。なお、本発明の光吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で前記層状ペロブスカイト以外の光吸収剤を含有していてもよい。前記層状ペロブスカイト以外の光吸収剤としては、例えば、量子ドットが挙げられる。
【0038】
前記量子ドットは、前記層状ペロブスカイトが有しないバンドギャップエネルギーを補完して、近赤外光領域の光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは0.2eV以上かつ前記層状ペロブスカイトのバンドギャップエネルギー以下のバンドギャップエネルギーを有するものである。量子ドットは、1種単独で用いてもよく、バンドギャップエネルギーが異なる2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記量子ドットの粒径は、安定性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは2.3nm以上であり、成膜性及び光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。前記量子ドットの粒径は、XRD(X線回折)の結晶子径解析や透過型電子顕微鏡観察などの常法によって測定することができる。
【0040】
前記量子ドットは、公知のものを特に制限なく使用できる。前記バンドギャップエネルギーを有する量子ドットとしては、例えば、金属酸化物、金属カルコゲナイド(例えば、硫化物、セレン化物、及びテルル化物など)が挙げられ、具体的には、PbS、PbSe、PbTe、CdS、CdSe、CdTe、Sb2S3、Bi2S3、Ag2S、Ag2Se、Ag2Te、Au2S、Au2Se、Au2Te、Cu2S、Cu2Se、Cu2Te、Fe2S、Fe2Se、Fe2Te、In2S3、SnS、SnSe、SnTe、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、EuS、EuSe、及びEuTeなどが挙げられる。これらは1種用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記量子ドットは、耐久性(耐酸化性)及び光電変換効率に優れる観点から、好ましくはPb元素を含み、より好ましくはPbS又はPbSeを含み、更に好ましくはPbSを含む。
【0041】
光吸収層の厚さは特に制限されないが、光吸収を大きくして光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、正孔輸送剤層や電子輸送剤層へのキャリア移動効率を向上させて光電変換効率を向上させる観点から、好ましくは3000nm以下、より好ましくは1500nm以下、更に好ましくは1000nm以下、より更に好ましくは500nm以下である。なお、光吸収層の厚さは、膜断面の電子顕微鏡観察などの測定方法で測定できる。
【0042】
<光電変換素子>
本発明の光電変換素子は、前記光吸収層(層状ペロブスカイト)を有するものである。本発明の光電変換素子において、前記光吸収層以外の構成は特に制限されず、公知の光電変換素子の構成を適用することができる。また、本発明の光電変換素子は、前記光吸収層以外は公知の方法で製造することができる。
【0043】
以下、本発明の光電変換素子の構成と製造方法を
図3に基づいて説明するが、
図3は順構造型の一例にすぎず、正孔輸送層を光吸収層の下地層とした逆構造型であっても良く、
図3に示す態様に限定されるものではない。
【0044】
図3は、本発明の光電変換素子の構造の一例を示す概略断面図である。光電変換素子1は、透明基板2、透明導電層3、ブロッキング層4、電子抽出層5、光吸収層6、及び正孔輸送層7が順次積層された構造を有する。光10入射側の透明電極基板は、透明基板2と透明導電層3から構成されており、透明導電層3は外部回路と電気的につなげるための端子となる電極(負極)9に接合している。また、正孔輸送層7は外部回路と電気的につなげるための端子となる電極(正極)8に接合している。
【0045】
透明基板2の材料としては、強度、耐久性、光透過性があればよく、合成樹脂及びガラスなどを使用できる。合成樹脂としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムなどの熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリイミド、及びフッ素樹脂などが挙げられる。強度、耐久性、コストなどの観点から、ガラス基板を用いることが好ましい。
【0046】
透明導電層3の材料としては、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、フッ素添加酸化スズ(FTO)、酸化スズ(SnO2)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)、及び高い導電性を有する高分子材料などが挙げられる。高分子材料としては、例えば、ポリアセチレン系、ポリピロール系、ポリチオフェン系、ポリフェニレンビニレン系の高分子材料が挙げられる。また、透明導電層3の材料として、高い導電性を有する炭素系薄膜を用いることもできる。透明導電層3の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、及び分散物を塗布する方法などが挙げられる。
【0047】
ブロッキング層4の材料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミ、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化錫、及び酸化亜鉛などが挙げられる。ブロッキング層4の形成方法としては、上記材料を透明導電層3に直接スパッタする方法、及びスプレーパイロリシス法などが挙げられる。また、上記材料を溶媒に溶解した溶液、又は金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液を透明導電層3上に塗布し、乾燥し、必要に応じて焼成する方法が挙げられる。塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0048】
電子抽出層5は、その表面に光吸収層6を担持する機能を有する層である。太陽電池において光吸収効率を高めるためには、光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましい。電子抽出層5を設けることにより、光を受ける部分の表面積を大きくすることができる。
【0049】
電子抽出層5の材料としては、例えば、金属酸化物、金属カルコゲナイド(例えば、硫化物、及びセレン化物など)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(ただし、前記光吸収剤を除く)、ケイ素酸化物(例えば、二酸化ケイ素及びゼオライト)、フラーレン誘導体、及びカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤ及びカーボンナノロッドなどを含む)などが挙げられる。
【0050】
金属酸化物としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウム、及びタンタルの酸化物などが挙げられ、金属カルコゲナイドとしては、例えば、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、及びセレン化カドミウムなどが挙げられる。
【0051】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、及びチタン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0052】
フラーレン誘導体としては、例えば、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル(PCBM)、[6,6]-フェニル-C61-酪酸 n-オクチルエステル(PCBO)、[6,6]-フェニル-C61-酪酸ブチルエステル(PCBB)などが挙げられる。
【0053】
電子抽出層5は、その形成材料の原料溶液又はその形成材料の微粒子から形成することができる。電子抽出層5の形成材料の微粒子は、好ましくはその微粒子を含有する分散物として用いられる。電子抽出層5の形成方法としては、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、ブロッキング層4の表面に電子抽出層5の形成材料の原料溶液又は分散物(ゾル又はペースト)を塗布した後に、乾燥あるいは焼成することが好ましい。乾燥あるいは焼成により、微粒子同士を密着させることができる。塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0054】
光吸収層となる層状ペロブスカイトの電子抽出層5表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、Owens-Wendt式を用いて算出される電子抽出層5の表面自由エネルギーは、好ましくは40mJ/m2以上、より好ましくは50mJ/m2以上、更に好ましくは60mJ/m2以上であり、好ましくは100mJ/m2以下、より好ましくは95mJ/m2以下、更に好ましくは90mJ/m2以下である。
【0055】
電子抽出層5の表面自由エネルギーを40mJ/m2以上100mJ/m2以下にする方法としては、例えば、電子抽出層5の形成材料としてチタン酸化物、亜鉛酸化物、及び錫酸化物などの金属酸化物、あるいはフラーレン誘導体などを用いる方法が挙げられる。
【0056】
光吸収層6は前述の本発明の光吸収層である。光吸収層6の形成方法は特に制限されず、例えば、前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体を含む分散液を調製し、電子抽出層5の表面に調製した分散液を塗布し、乾燥する、いわゆるウェットプロセスによる方法が好適に挙げられる。
【0057】
前記ウェットプロセスにおいて、ペロブスカイト化合物又はその前駆体を含む分散液は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは溶剤を含有する。溶剤としては、例えば、エステル類(メチルホルメート、エチルホルメートなど)、ケトン類(γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトンなど)、エーテル類(ジエチルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、アルコール類(メタノール、エタノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノールなど)、グリコールエーテル(セロソルブ)類、アミド系溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなど)、ニトリル系溶剤(アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリルなど)、カーボネート系(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルムなど)、炭化水素、及びジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0058】
前記分散液の溶剤は、成膜性、コスト、保存安定性、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは極性溶剤、より好ましくはケトン類、アミド系溶剤、及びジメチルスルホキシドから選ばれる少なくとも1種の溶剤、更に好ましくはアミド系溶剤、より更に好ましくはN,N-ジメチルホルムアミドである。
【0059】
前記分散液中の前記ペロブスカイト化合物又はその前駆体の濃度は特に制限されず、適宜調整すればよいが、層状ペロブスカイトの電子抽出層5表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上であり、溶解性の観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0060】
前記分散液の調製方法は特に限定されない。なお、具体的な調製方法は実施例の記載による。
【0061】
前記ウェットプロセスにおける塗布方法は特に限定されず、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0062】
前記ウェットプロセスにおける乾燥方法としては、製造容易性、コスト、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、例えば、熱乾燥、気流乾燥、真空乾燥などが挙げられ、好ましくは熱乾燥である。熱乾燥の温度は、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、同様の観点及びコストの観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下である。熱乾燥の時間は、優れた性能(例えば、光電変換特性)発現の観点から、好ましくは1分以上、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上であり、同様の観点及びコストの観点から、好ましくは120分以下、より好ましくは60分以下、更に好ましくは30分以下である。
【0063】
正孔輸送層7の材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ヨウ化銅、及びチオシアン酸銅などが挙げられる。正孔輸送層7の形成方法としては、例えば、塗布法、及び真空蒸着法などが挙げられる。塗布方法としては、例えば、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、及びダイコート法などが挙げられる。
【0064】
前記光吸収層6は、電子抽出層5の表面に形成するかわりに正孔輸送層7の表面に形成してもよい。この構造の場合、ブロッキング層4は形成せずに、透明導電層3表面に正孔輸送層7を形成する。前記光吸収層6を正孔輸送層7の表面に形成する方法は特に制限されず、例えば、前記ウェットプロセスによる方法が挙げられる。
【0065】
光吸収層となる層状ペロブスカイトの正孔輸送層7表面に対する垂直配向性を向上させる観点から、Owens-Wendt式を用いて算出される正孔輸送層7の表面自由エネルギーは、好ましくは40mJ/m2以上、より好ましくは50mJ/m2以上、更に好ましくは60mJ/m2以上であり、好ましくは100mJ/m2以下、より好ましくは95mJ/m2以下、更に好ましくは90mJ/m2以下である。
【0066】
正孔輸送層7の表面自由エネルギーを40mJ/m2以上100mJ/m2以下にする方法としては、例えば、正孔輸送層7の形成材料としてポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT:PSS)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9'-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)、ポリ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリフェニルメチル)アミン](PTAA)、ヨウ化銅、及びチオシアン酸銅などを用いる方法が挙げられる。
【0067】
電極(正極)8及び電極(負極)9の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、白金などの金属;スズ添加酸化インジウム(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物;導電性高分子などの有機系導電材料;ナノチューブなどの炭素系材料が挙げられる。電極(正極)8及び電極(負極)9の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及び塗布法などが挙げられる。
【0068】
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、前記光電変換素子を有するものである。本発明の太陽電池において、前記光吸収層以外の構成は特に制限されず、公知の太陽電池の構成を適用することができる。
【0069】
以下に、本発明及び本発明の好ましい実施態様を示す。
<1>
アウトオブプレーン法で得られるX線回折ピークから算出される(002)面の面間隔が2.6nm以上5.0nm以下であり、前記X線回折ピークにおける(002)面のX線回折ピーク強度に対する(111)面のX線回折ピーク強度の強度比((111)面/(002)面)が0.03以上である層状ペロブスカイト。
<2>
前記(002)面の面間隔は、好ましくは2.7nm以上、より好ましくは2.8nm以上、更に好ましくは2.9nm以上であり、好ましくは4.7nm以下、より好ましくは4.4nm以下、更に好ましくは4.1nm以下、より更に好ましくは3.3nm以下である、<1>に記載の層状ペロブスカイト。
<3>
前記強度比((111)面/(002)面)は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.07以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは0.5以上、より更に好ましくは1.0以上である、<1>又は<2>に記載の層状ペロブスカイト。
<4>
好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.7nm以上4.7nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.05以上であり、
より好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.8nm以上4.4nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.07以上であり、
更に好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.9nm以上4.1nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.1以上であり、
より更に好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.9nm以上3.3nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.2以上である、<1>に記載の層状ペロブスカイト。
<5>
前記層状ペロブスカイトは、好ましくはモノレイヤータイプ、又はバイレイヤータイプ、より好ましくはモノレイヤータイプである、<1>~<4>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイト。
<6>
前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、好ましくは2.0eV以上、より好ましくは2.2eV以上、更に好ましくは2.4eV以上であり、好ましくは3.5eV以下、より好ましくは3.2eV以下、更に好ましくは3.0eV以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイト。
<7>
好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.7nm以上4.7nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.05以上であり、前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.0eV以上3.5eV以下であり、
より好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.8nm以上4.4nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.07以上であり、前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.2eV以上3.2eV以下であり、
更に好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.9nm以上4.1nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.1以上であり、前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.4eV以上3.0eV以下であり、
より更に好ましくは、前記(002)面の面間隔は、2.9nm以上3.3nm以下であり、前記強度比((111)面/(002)面)は、0.2以上であり、前記層状ペロブスカイトを構成するペロブスカイト化合物のバンドギャップエネルギーは、2.4eV以上3.0eV以下である、<1>に記載の層状ペロブスカイト。
<8>
下記一般式(1)で表される化合物を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイト。
R2MX1
nX2
4-n (1)
(式中、Rは1価のカチオンであり、2つのRは同一であり、Mは2価の金属カチオンであり、X1及びX2はそれぞれ独立に1価のアニオンであり、nはX1の平均モル数であり、nは0以上4以下の実数である。)
<9>
前記Rは、好ましくはアルキルアンモニウムイオン、ホルムアミジニウムイオン、又はアリールアンモニウムイオン、より好ましくはアルキルアンモニウムイオン、更に好ましくはモノアルキルアンモニウムイオンである、<8>に記載の層状ペロブスカイト。
<10>
前記アルキルアンモニウムイオンのアルキル基の炭素数は、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは28以下、更に好ましくは26以下、より更に好ましくは24以下である。<9>に記載の層状ペロブスカイト。
<11>
前記Mは、好ましくはPb2+、Sn2+、及びGe2+からなる群より選択される1種以上、より好ましくはPb2+、及びSn2+からなる群より選択される1種以上、更に好ましくはPb2+である、<8>~<10>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイト。
<12>
前記X1及びX2は、それぞれ独立に、好ましくはフッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオン、より好ましくは塩化物アニオン、臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオン、更に好ましくは臭化物アニオン、又はヨウ化物アニオンである、<8>~<11>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイト。
<13>
上記一般式(1)で表される化合物は、好ましくは(C16H33NH3)2PbI4、(C16H33NH3)2PbInBr4-n、又は(C18H37NH3)2PbI4であり、より好ましくは(C16H33NH3)2PbI4である、<8>に記載の層状ペロブスカイト。
<14>
<1>~<13>のいずれか1項に記載の層状ペロブスカイトを含む光吸収層。
<15>
前記光吸収層の厚さは、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは80nm以上であり、好ましくは3000nm以下、より好ましくは1500nm以下、更に好ましくは1000nm以下、より更に好ましくは500nm以下である、<14>に記載の光吸収層。
<16>
基板上に、<14>又は<15>に記載の光吸収層が形成されている、光吸収層付き基板。
<17>
Owens-Wendt式を用いて算出される前記基板の表面自由エネルギーは、好ましくは40mJ/m2以上、より好ましくは50mJ/m2以上、更に好ましくは60mJ/m2以上であり、好ましくは100mJ/m2以下、より好ましくは95mJ/m2以下、更に好ましくは90mJ/m2以下である、<16>に記載の光吸収層付き基板。
<18>
<14>又は<15>に記載の光吸収層、あるいは<16>又は<17>に記載の光吸収層付き基板を有する光電変換素子。
<19>
<18>に記載の光電変換素子を有する太陽電池。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。また、評価・測定方法は以下のとおりである。なお、特に断らない限り、測定は25℃で行った。
【0071】
<アウトオブプレーン法によるX線回折の測定方法>
X線回折装置として株式会社リガク製のMiniFlexIIを用いた。測定条件は、Cu‐Kα:30kV、15mA、サンプリング幅:0.02、発散スリット:1.25度、散乱スリット:8°、受光スリット:開放、である。走査範囲2θ=2.5~30°、走査速度10°/minにて連続スキャン法を用い、(002)面及び(111)面の回折ピークを検出し、面間隔はブラッグの式(λ=2d・sinθ)から算出した。なお、ブラッグの式中、λはCu‐Kαの波長、dは面間隔、θはブラッグ角を表す。また、回折ピーク強度は、ピークトップの光子カウント数(cps)を採用した。結果を表2に示す。
【0072】
<バンドギャップの算出方法>
バンドギャップは光吸収スペクトルから算出した。光吸収スペクトル測定にはSolidspec-3700分光光度計(株式会社島津製作所製)を用いた。測定は、スキャンスピード:中速、サンプルピッチ:1nm、測定波長範囲:300~1000nm、スリット幅:(20)、検出器ユニット:積分球の条件で行い、得られた光吸収スペクトルの吸収端からバンドギャップ(1240/光吸収端)を算出した。結果を表2に示す。
【0073】
<下地層付き基板の表面自由エネルギーの算出方法>
接触角の測定には全自動接触角計:DM-SA(協和界面科学株式会社製)を用いた。各下地層付き基板上にジヨードメタン(和光純薬工業株式会社製、和光一級)を1μL滴下し、7秒後の接触角をθ/2法により測定した。同様に、グリセリン(和光純薬工業株式会社製、和光一級)については100秒後の接触角を測定した。これら各液体の下地層に対する接触角と下式に示したOwens-Wendtの理論式から各下地層の表面自由エネルギーを算出した。結果を表1に示す。
γL
total(1+cosθ)=2(γS
d×γL
d)0.5+2(γS
p×γL
p)0.5
γS
d及びγL
dはそれぞれ固体及び液体の分散成分、γS
p及びγL
pはそれぞれ固体及び液体の極性成分を表す。
【0074】
<電池性能及び量子効率の評価方法>
キセノン灯白色光を光源(ペクセル・テクノロジー株式会社製:PEC-L01)とし、太陽電池セルにマスクをして特定エリア(面積0.0363cm2)にのみ光(照射エネルギー100mW/cm2)が当たるようにして太陽電池セルの電流-電圧曲線の測定を行った。測定条件は、測定速度0.1V/s(0.01Vstep)、電圧設定後待ち時間50ms、測定積算時間50ms、開始電圧-0.1V、終了電圧1.1Vとした。得られた電流-電圧曲線から短絡電流密度(mA/cm2)、開放電圧(V)、フィルファクター(ff)、及び変換効率(%)を求めた。また、量子効率(IPCE)の測定は、分光感度測定装置(分光計器株式会社製、CEP-2000MLR)を用い、光照射面積0.0363cm2のマスク下、400nm~800nmの波長範囲を10nm間隔で測定を行った。波長400nmの量子効率を求めた。結果を表3に示す。
【0075】
〔下地層付き基板の作製〕
製造例1
(基板1(FTO基板上にTiO2多孔体下地層を形成した基板)の作製)
(1)FTO基板の洗浄(洗剤による洗浄及びオゾン洗浄)
FTO基板(AGCファブリテック株式会社製、厚み1.8mm(25mm×25mm))をガラス容器(容量600mL)に入れ、1質量%中性洗剤(花王株式会社製、キュキュット(登録商標)2gを198gのイオン交換水により希釈)、アセトン(和光純薬工業株式会社製、和光一級)160g、2-プロパノール(和光純薬工業株式会社製、和光一級)160g、イオン交換水200gで満たし、それぞれの液で10分ずつ超音波洗浄を行った。さらに、オゾン発生装置(メイワフォーシス株式会社製、PC-450 UVオゾンクリーナー)に入れ、30分間UV照射を行った。
(2)TiO2多孔体下地層の作製
PST-18NR(日揮触媒化成株式会社製)404mgにエタノール(和光純薬工業株式会社製、超脱水)1.41gを加え、5分間vortex mixerで撹拌後、1時間超音波分散させて懸濁液を得た。(1)で洗浄したFTO基板をスピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-100)にセットし、ブロワーでほこりを飛ばした後、マイクロピペットでTiO2懸濁液を190μL滴下し、スピンコートした(slope 5s、5000rpm/30s、slope 5s)。その後、FTO基板を125℃のホットプレートに置き、30分間乾燥した。その後、1時間かけて500℃まで昇温し、30分間焼成して基板1(FTO基板上にTiO2多孔体下地層を形成した基板)を作製した。
【0076】
製造例2
(基板2(FTO基板上にPEDOT:PSS下地層を形成した基板)の作製)
(1)FTO基板の洗浄
製造例1(1)と同様にFTO基板を洗浄した。
(2)PEDOT:PSS下地層の作製
(1)で洗浄したFTO基板をスピンコーターにセットし、ブロワーでほこりを飛ばした後、マイクロピペットでPEDOT:PSS分散液(Heraeus製、製品名Clevios P VP AI 4083)を190μL滴下し、スピンコートした(500rpm/5sec→3000rpm/30sec)。その後、FTO基板を120℃のホットプレートに10分間置き、さらに150℃で5分間乾燥して基板2(FTO基板上にPEDOT:PSS下地層を形成した基板)を作製した。
【0077】
製造例3
(基板3(FTO基板上にSpiro-OMeTAD下地層を形成した基板)の作製)
(1)FTO基板の洗浄
製造例1(1)と同様にFTO基板を洗浄した。
(2)Spiro-OMeTAD下地層の作製
Spiro-OMeTAD(和光純薬工業株式会社製、2,2’,7,7’-テトラキス[N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ]-9,9’-スピロビフルオレン)72.3mgにクロロベンゼン(ナカライテスク株式会社製)1mLを加えた溶液を調製し、調製した溶液をPTFEフィルター(0.45μm)でろ過した。(1)で洗浄したFTO基板をスピンコーターにセットし、ブロワーでほこりを飛ばし、マイクロピペットで前記溶液190μLを滴下し、スピンコートした(slope 5s、4000rpm/30s、slope 5s)。その後、FTO基板を70℃のホットプレートに置き、30分乾燥して基板3(FTO基板上にSpiro-OMeTAD下地層を形成した基板)を作製した。
【0078】
〔層状ペロブスカイトの作製〕
実施例1
炭素数16のヘキサデシルアンモニウム(シグマアルドリッチ製のHexadecylamine,98%と、和光純薬工業株式会社製のよう化水素酸との中和品)369mg、及びPbI2(東京化成工業株式会社製、よう化鉛(II)99.99%、trace metals basis ペロブスカイト前駆体用)231mgの混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、超脱水、モレキュラーシーブでさらに脱水したものを使用)を0.5mL加え、70℃のホットスターラー上で溶解するまで撹拌した。製造例1で作製した基板1をスピンコーターにセットし、ブロワーでほこりを飛ばした後、調製した溶液を150μL滴下し、5s待ってからスピンコートした(slope 5s、6500rpm/5s、slope 5s)。スピンコート後、すぐに基板1を70℃のホットプレート上に置いて30分間乾燥して、基板1上に層状ペロブスカイト((C16H33NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。得られた層状ペロブスカイト(光吸収層)の厚さは約2000nmであった。
【0079】
実施例2
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例2で作製した基板2を用いた以外は実施例1と同様にして、基板2上に層状ペロブスカイト((C16H33NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。得られた層状ペロブスカイト(光吸収層)の厚さは約2000nmであった。
【0080】
実施例3
PbI2(231mg)を用いる代わりに、PbI2(東京化成製、よう化鉛(II)99.99%、trace metals basis ペロブスカイト前駆体用)138mg、及びPbBr2(臭化鉛(II) [ペロブスカイト前駆体用])73mgを用いた以外は実施例2と同様にして、基板2上に層状ペロブスカイト((C16H33NH3)2PbI3.2Br0.8を含む光吸収層)を形成した。
【0081】
実施例4
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例3で作製した基板3を用いた以外は実施例1と同様にして、基板3上に層状ペロブスカイト((C16H33NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0082】
実施例5
炭素数16のヘキサデシルアンモニウムに代えて、炭素数18のオクタデシルアンモニウム(和光純薬工業株式会社製のオクタデシルアミンと、和光純薬工業株式会社製のよう化水素酸との中和品)397mgを用いた以外は実施例1と同様にして、基板1上に層状ペロブスカイト((C18H37NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0083】
実施例6
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例2で作製した基板2を用いた以外は実施例5と同様にして、基板2上に層状ペロブスカイト((C18H37NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0084】
実施例7
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例3で作製した基板3を用いた以外は実施例5と同様にして、基板3上に層状ペロブスカイト((C18H37NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0085】
比較例1
炭素数16のヘキサデシルアンモニウムに代えて、炭素数4のブチルアミンよう化水素酸塩(東京化成工業株式会社製)201mgを用いた以外は実施例1と同様にして、基板1上に層状ペロブスカイト((C4H9NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。得られた層状ペロブスカイト(光吸収層)の厚さは約660nmであった。
【0086】
比較例2
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例2で作製した基板2を用いた以外は比較例1と同様にして、基板2上に層状ペロブスカイト((C4H9NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0087】
比較例3
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例3で作製した基板3を用いた以外は比較例1と同様にして、基板3上に層状ペロブスカイト((C4H9NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0088】
比較例4
炭素数4のブチルアミンよう化水素酸塩(東京化成工業製)201mgの代わりに、炭素数8のオクチルアミンよう化水素酸塩(和光純薬工業株式会社製のオクチルアミン和光特級と、和光純薬工業株式会社製のよう化水素酸との中和品)257mgを用いた以外は比較例1と同様にして、基板1上に層状ペロブスカイト((C8H17NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。得られた層状ペロブスカイト(光吸収層)の厚さは約900nmであった。
【0089】
比較例5
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例2で作製した基板2を用いた以外は比較例4と同様にして、基板2上に層状ペロブスカイト((C8H17NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0090】
比較例6
製造例1で作製した基板1に代えて、製造例3で作製した基板3を用いた以外は比較例4と同様にして、基板3上に層状ペロブスカイト((C8H17NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
【0091】
〔太陽電池セルの作製〕
実施例8
FTO基板(旭硝子ファブリテック株式会社製、厚み1.8mm(25mm×25mm))をガラス容器(容量600mL)に入れ、1質量%中性洗剤(花王株式会社製、製品名:キュキュット(登録商標)2gを198gのイオン交換水に希釈)、アセトン(和光純薬工業株式会社製、和光一級)、2-プロパノール(和光純薬工業株式会社製、和光一級)、イオン交換水で満たし、それぞれ10分ずつ超音波洗浄を行った。さらに、オゾン発生装置(メイワフォーシス株式会社製、PC-450 UVオゾンクリーナー)に入れ、30分間UV照射を行った。
ホットプレートに耐熱ガラスを置き、その上に上記FTO基板を並べ、電極を付けるFTO面の上にマスク(1cm幅のステンレス板)を置いた後、450℃に加熱した。エタノール(和光純薬工業株式会社製)39mLにビス(2,4-ペンタンジオナト)ビス(2-プロパノラト)チタニウム(IV)(東京化成工業株式会社製、5%イソプロピルアルコール溶液)1mLを溶解させて、スプレー液を調製した。約30cmの高さからマスクを設けたFTO基板上に前記スプレー液を0.3MPaでスプレーした(20cm×8列を2回繰り返してスプレー量は21~24g程度)。そして、450℃のまま3分間維持した。この操作をもう2回行った後、室温(20℃)まで冷却した。
予め、ホットスターラーを70℃に加熱しておき、また、ポリエチレン容器に氷冷したイオン交換水100mL、及びTiCl4(和光純薬工業株式会社製)440μLを加え、50mMのTiCl4溶液を調製した。FTO基板をTiCl4溶液中に浸漬して30分撹拌し、氷冷したイオン交換水(100mL)を加えた後、取り出してイオン交換水で洗浄した。エアガンで水気を飛ばした後、15分かけて500℃まで昇温し、20分間焼成して緻密TiO2層を形成した。
PST-18NR(日揮触媒化成株式会社製)404mgにエタノール(和光純薬工業株式会社製、超脱水)1.41gを加え、5分間vortex mixerで撹拌した。得られたTiO2懸濁液を1時間超音波分散した。緻密TiO2層を形成したFTO基板をスピンコーター(ミカサ株式会社製、MS-100)にセットし、ブロワーでほこりを飛ばし、マイクロピペットでTiO2懸濁液(190μL)を滴下し、スピンコートした(slope 5s、5000rpm/30s、slope 5s)。エタノールを浸み込ませた綿棒で側面4辺とFTOとのコンタクト部分(エッチングしていない側)のTiO2懸濁液の残留物を拭い取り、125℃のホットプレートに置き、30分間乾燥した。その後、1時間かけて500℃まで昇温し、30分間焼成してTiO2多孔体層付きFTO基板を得た。
次に、炭素数16のヘキサデシルアンモニウム369mg、及びPbI2(東京化成工業株式会社製、よう化鉛(II)99.99%、trace metals basis ペロブスカイト前駆体用)231mgの混合物にN,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、超脱水、モレキュラーシーブでさらに脱水したものを使用)を0.5mL加え、70℃のホットスターラー上で溶解するまで撹拌してペロブスカイト前駆体溶液を調製した。TiO2多孔体層付きFTO基板をスピンコーターにセットし、ブロワーでほこりを飛ばした。その後、TiO2多孔体層付きFTO基板上にペロブスカイト前駆体溶液(150μL)を塗布し、5s待ってから蓋は開けたままでスピンコートした(slope 5s、6500rpm/5s、slope 5s)。スピンコート後、すぐに70℃のホットプレート上に置いて30分間乾燥した。その後、室温まで冷却して、TiO2多孔体層上に層状ペロブスカイト((C16H33NH3)2PbI4を含む光吸収層)を形成した。
次に、Spiro-OMeTAD(和光純薬工業株式会社製、2,2’,7,7’-テトラキス[N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ]-9,9’-スピロビフルオレン)72.3mg、LiTFSI(和光純工業株式会社薬製、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)9.1mg、Co(4-t-Butylpyridyl-2-1H-pyrazole)3・3TFSI(和光純薬工業株式会社製、FK-209([トリス(2-(1H-ピラゾール-1-イル)-4-tert-ブチルピリジン)コバルト(III)トリス(ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド)])8.7mg、クロロベンゼン(ナカライテスク株式会社製)1mL、及びTBP(シグマアルドリッチ製)28.8μLを混合し、撹拌してSpiro-OMeTAD溶液を調製した。その後、Spiro-OMeTAD溶液をPTFEフィルター(0.45μm)でろ過した。前記層状ペロブスカイト(光吸収層)を形成した基板をスピンコーターにセットし、ブロワーでほこりを飛ばし、層状ペロブスカイト上にSpiro-OMeTAD溶液90μLを塗布し、10s待ってからスピンコートした(slope 5s、4000rpm/30s、slope 5s)。その後、前記基板を70℃のホットプレートに置き、30分乾燥して層状ペロブスカイト上に正孔輸送層を形成した。さらに、この基板の裏面をDMFを浸み込ませた綿棒とキムワイプ(日本製紙クレシア株式会社製)で拭き取った。その後、クロロベンゼンを浸み込ませた綿棒でFTOとのコンタクト部分を拭き取った。さらに、真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製、VTR-060M/ERH)を用いて、金線(株式会社ニラコ製、1mm径)2.5cmをタングステンボードに乗せ、真空下(4~5×10-3Pa)、蒸着速度が6Å/secになるように電流値を調整して、膜厚が100nmになるまで金を正孔輸送層上に蒸着して電極を形成し、太陽電池セルを得た。
【0092】
実施例9
炭素数16のヘキサデシルアンモニウム369mgを用いる代わりに、炭素数18のオクタデシルアンモニウム(和光純薬工業株式会社製のオクタデシルアミンと、和光純薬工業株式会社製のよう化水素酸との中和品)397mgを用いた以外は実施例8と同様の方法で太陽電池セルを得た。
【0093】
比較例7
炭素数16のヘキサデシルアンモニウム369mgを用いる代わりに、炭素数4のブチルアミンよう化水素酸塩(東京化成工業株式会社製)201mgを用いた以外は実施例8と同様の方法で太陽電池セルを得た。
【0094】
比較例8
炭素数16のヘキサデシルアンモニウム369mgを用いる代わりに、炭素数8のオクチルアミンよう化水素酸塩(和光純薬工業株式会社製のオクチルアミン和光特級と、和光純薬工業株式会社製のよう化水素酸との中和品)257mgを用いた以外は実施例8と同様の方法で太陽電池セルを得た。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
表3から、強度比((111)面/(002)面)が0.12又は0.07である層状ペロブスカイトを含む光吸収層を有する実施例8又は9の太陽電池セルは、強度比((111)面/(002)面)が0である層状ペロブスカイトを含む光吸収層を有する比較例7又は8の太陽電池セルに比べて光電変換効率及び量子効率に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の層状ペロブスカイトは、太陽電池の光吸収層として有用である。より詳細には、本発明の層状ペロブスカイトを含む光吸収層、光電変換素子及び太陽電池は、光吸収層(層状ペロブスカイト層)のキャリア輸送能に優れており、バンドギャップも大きいため、優れたエネルギー変換効率を実現することができる。さらに、吸収波長制御も可能であり、彩色性に優れた太陽電池を提供できる。本発明の光吸収層及び光電変換素子は、次世代太陽電池の構成部材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1:光電変換素子
2:透明基板
3:透明導電層
4:ブロッキング層
5:電子抽出層
6:光吸収層
7:正孔輸送層
8:電極(正極)
9:電極(負極)
10:光
11:電荷輸送層
12:有機層
13:電極基板