IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

特許7228899電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法
<>
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図1
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図2
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図3
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図4
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図5
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図6
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図7
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図8
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図9
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図10
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図11
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図12
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図13
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図14
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図15
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図16
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図17
  • 特許-電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】電気伝導率測定用材料、電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに電気抵抗率測定用材料、電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20230217BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20230217BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20230217BHJP
   G01N 21/63 20060101ALI20230217BHJP
   G01N 21/76 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G01R27/02 R
C09K11/64
C09K11/80
G01N21/63 Z
G01N21/76
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019549930
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2018034112
(87)【国際公開番号】W WO2019087589
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2017209596
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100132621
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 孝行
(74)【代理人】
【識別番号】100123364
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 徳子
(72)【発明者】
【氏名】寺崎 正
(72)【発明者】
【氏名】菊永 和也
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-317318(JP,A)
【文献】国際公開第2017/086325(WO,A1)
【文献】特開2008-235373(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015208151(DE,A1)
【文献】特開2009-079932(JP,A)
【文献】特開昭62-195567(JP,A)
【文献】特開昭62-204167(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0062077(KR,A)
【文献】特開2009-119204(JP,A)
【文献】特開2006-010354(JP,A)
【文献】特開2014-059192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01N 21/63
G01N 21/76
C09K 11/64
C09K 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の表面上に配置され、荷電粒子を入射させたり、電圧を印加して発光させることにより、前記計測対象物の電気伝導率分布を測定できる電気伝導率測定用材料であって、
応力発光物質であるSrAl :Eu 2+ を含むことを特徴とする電気伝導率測定用材料。
【請求項2】
前記応力発光物質の重量比率が20wt%~80wt%であることを特徴とする請求項1に記載の電気伝導率測定用材料。
【請求項3】
前記計測対象物の表面に設けられ、請求項1または2に記載の電気伝導率測定用材料を含むことを特徴とする電気伝導率測定膜。
【請求項4】
前記電気伝導率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率が、前記計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいことを特徴とする請求項に記載の電気伝導率測定膜。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電気伝導率測定膜の膜厚が1μm~1mmの範囲にあることを特徴とする電気伝導率測定膜。
【請求項6】
前記計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置であって、
前記計測対象物の表面に設けられた請求項3~5の何れか1項に記載の電気伝導率測定膜と、
前記電気伝導率測定膜に対向する方向に設けられ、前記電気伝導率測定膜に向かって荷電粒子を照射する荷電粒子照射部と
を具備することを特徴とする電気伝導率測定装置。
【請求項7】
前記計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置であって、
前記計測対象物の表面に設けられた請求項3~5の何れか1項に記載の電気伝導率測定膜と、
前記計測対象物に電圧を印加する電圧印加手段と
を具備することを特徴とする電気伝導率測定装置。
【請求項8】
前記計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定方法であって、
前記計測対象物表面に請求項3~5の何れか1項に記載の電気伝導率測定膜を形成する工程と、
前記電気伝導率測定膜に向かって荷電粒子を照射する工程と
を具備することを特徴とする電気伝導率測定方法。
【請求項9】
前記計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定方法であって、
前記計測対象物表面に請求項3~5の何れか1項に記載の電気伝導率測定膜を形成する工程と、
前記計測対象物に電圧を印加する工程と
を具備することを特徴とする電気伝導率測定方法。
【請求項10】
計測対象物の表面上に配置され、荷電粒子を入射させたり、電圧を印加して発光させることにより、計測対象物の電気抵抗率分布を測定できる電気抵抗率測定用材料であって、
応力発光物質であるSrAl :Eu 2+ を含むことを特徴とする電気抵抗率測定用材料。
【請求項11】
前記応力発光物質の重量比率が20wt%~80wt%であることを特徴とする請求項10に記載の電気抵抗率測定用材料。
【請求項12】
前記計測対象物の表面に設けられ、請求項10または11に記載の電気抵抗率測定用材料を含むことを特徴とする電気抵抗率測定膜。
【請求項13】
前記電気抵抗率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率が、前記計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいことを特徴とする請求項1に記載の電気抵抗率測定膜。
【請求項14】
請求項1または1に記載の電気抵抗率測定膜の膜厚が1μm~1mmの範囲にあることを特徴とする電気抵抗率測定膜。
【請求項15】
前記計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定装置であって、
前記計測対象物の表面に設けられた請求項12~14の何れか1項に記載の電気抵抗率測定膜と、
前記電気抵抗率測定膜に対向する方向に設けられ、前記電気抵抗率測定膜に向かって荷電粒子を照射する荷電粒子照射部と
を具備することを特徴とする電気抵抗率測定装置。
【請求項16】
前記計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定装置であって、
前記計測対象物の表面に設けられた請求項12~14の何れか1項に記載の電気抵抗率測定膜と、
前記計測対象物に電圧を印加する電圧印加手段と
を具備することを特徴とする電気抵抗率測定装置。
【請求項17】
前記計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定方法であって、
前記計測対象物表面に請求項12~14の何れか1項に記載の電気抵抗率測定膜を形成する工程と、
前記電気抵抗率測定膜に向かって荷電粒子を照射する工程と
を具備することを特徴とする電気抵抗率測定方法。
【請求項18】
前記計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定方法であって、
前記計測対象物表面に請求項12~14の何れか1項に記載の電気抵抗率測定膜を形成する工程と、
前記計測対象物に電圧を印加する工程と
を具備することを特徴とする電気抵抗率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な部品等の物品表面および内部の電気伝導率を測定することができる電気伝導率測定用材料と、それを用いた電気伝導率測定膜、電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに、様々な部品等の物品表面および内部の電気抵抗率を測定することができる電気抵抗率測定用材料と、それを用いた電気抵抗率測定膜、電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の性質を示す物性値の1つに電気伝導率(電気伝導度)がある。電気伝導率とは、電気の流れ易さ(電気抵抗率の逆数)を示すものであり、その値は物質によって異なっている。そして、この電気伝導率の測定方法としては、例えば、2端子(電極)測定法、4端子(電極)測定法および電磁誘導法がある。
【0003】
2端子測定法とは、計測対象物の両端に接続された端子(2つ)を介して計測対象物を電源に接続し、計測対象物に印加する電圧と、計測対象物を流れる電流とから電気伝導率を測定する方法である。
【0004】
一方、4端子測定法とは、2端子測定法と同様に計測対象物の両端に接続された端子(2つ)を介して計測対象物を電源に接続すると共に、その2つの端子よりも計測対象物の内側に位置する場所に別の2つの端子を設け、その端子間の電位差(電圧)と、計測対象物を流れる電流とから電気伝導率を測定する方法である。
【0005】
また、電磁誘導法とは、溶液をはさむ2つのコイルの間で生じる誘導電流の大小を測定することにより電気伝導率を測定する方法である。なお、電解質水溶液および水(河川水、海水、雨水、蒸留水、脱イオン水等)の電気伝導率の測定方法については、例えばJIS K 0130:2008に詳細に規定されている。
【0006】
この他に、入力電圧の閾値にヒステリシス特性を持ち反転出力を有するコンパレータと、被測定物と接触する1対の電極であってその一方の電極にコンパレータの出力電圧が印加される電極対と、その電極対の他方に一端が接続されており、被測定物と直列回路を形成すると共にコンパレータの出力により被測定物を介して充電されるキャパシタとを備え、キャパシタの一端をコンパレータの入力に接続して発振回路を構成し、その発振回路の発振周期または発振周波数を計測することにより被測定物の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
なお、電気抵抗率は電気伝導率の逆数であることから、上述した測定方法により電気抵抗率も計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平09-281164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような従来の電気伝導率測定装置では、計測対象物の平均電気伝導率(ある面積(体積)における平均伝導率)しか測定することができず、計測対象物の局所的な電気伝導率を測定することができないという問題点があった。すなわち、計測対象物の各部分における電気伝導率を測定することができないという問題点があった。
【0010】
また、従来の電気伝導率測定方法を用いて、大きな形状の計測対象物の電気伝導率を測定するには、材質によっては非常に高い電圧を印加する必要があることから、実質的に電気伝導率を測定することができないという問題点があった。
【0011】
さらに、従来の電気伝導率測定方法は、計測対象物に印加する電圧と流れる電流とから電気伝導率を算出するものであり、電気伝導率を直感的に理解することができないという問題点があった。なお、電気抵抗率についても、同様に上述した問題点があった。
【0012】
本発明は、電子等の荷電粒子を入射させたり、電圧を印加すると、計測対象物の電気伝導率に応じて発光する電気伝導率測定用材料と、その材料を含む電気伝導率測定膜と、その電気伝導率測定膜を用いた電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに、荷電粒子を入射させたり、電圧を印加すると、計測対象物の電気抵抗率に応じて発光する電気抵抗率測定用材料と、その材料を含む電気抵抗率測定膜と、その電気抵抗率測定膜を用いた電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者は、後述する発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質を含む膜が表面に形成された板状部材に荷電粒子を入射させたところ、板状部材を構成する材質の電気伝導率(電気伝導度)に応じて、その膜が発光する(輝度が異なる)という特性を世界で初めて発見した。そして、その特性を利用して、計測対象物表面または内部の電気伝導率の分布を示すことができる以下のような画期的な電気伝導率測定膜と、その電気伝導率測定膜を用いた電気伝導率測定装置および電気伝導率測定方法、並びに、電気抵抗率測定用材料と、その材料を含む電気抵抗率測定膜と、その電気抵抗率測定膜を用いた電気抵抗率測定装置および電気抵抗率測定方法を見出した。
【0014】
本発明の第1の態様は、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする電気伝導率測定用材料にある。
【0015】
ここで、「蛍光物質」とは、照射されたX線、紫外線または可視光線等のエネルギーを吸収することで発光する物質をいう。蛍光物質としては、例えば、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Ag、YS:Eu+Fe、ZnS:Cu,Al、ZnS:Ag+CoAl、Zn2SiO4:Mn、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Zn、(KF,MgF):Mn、(Zn,Cd)S:Ag、(Zn,Cd)S:Cu、ZnO:Zn、(Zn,Cd)S:Cu、ZnS:Cu、ZnS:Cu,Ag、MgF:Mn、(Zn,Mg)F:Mn、ZnSiO:Mn、ZnS:Ag+(Zn,Cd)S:Cu、GdS:Tb、YS:Tb、YS:Tb、YAl12:Ce、Y(Al,Ga)12:Ce、YSiO:Ce、YAl12:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、ZnS:Ag,Al、InBO:Tb、InBO:EU、ZnS:Ag、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、YSiO:Tb、(Zn,Cd)S:Cu、Cl+(Zn,Cd)S:Ag,CL、InBO:Tb+InBO:Eu、ZnS:Ag+ZnS:Cu+YS:Eu、InBO:Tb+InBO:Eu+ZnS:Ag、(Ba,Eu)MgAl1627、(Ce,Tb)MgAl1119、(Y,Eu)、(Sr,Eu,Ba,Cf)(POCL、(La,Ce,Tb)PO、Y:Eu、LaPO:Ce,Tb、(Sr,Cf、Ba)10(POCL:Eu、(La,Ce,Tb)PO:Ce,Tb、ZnSiO:Mn、ZnSiO:Mn、Sb、Ce0.67Tb0.33MgAl1119:Ce,Tb、Y:Eu(III)、Mg(F)GeO:Mn、Mg(F)(Ge,Sn)O:Mn、CaWO、CaWO:Pb、(Ba,Ti):Ti、Sr:Sn、CfF(PO:Sb、SrF(PO:Sb,Mn、BaMgAl1017:Eu,Mn、BaMgAl1627:Eu(II)、BaMgAl1627:Eu(II),Mn(II)、SrCl(PO:Eu(II)、SrBO20:Eu、(Cf,Zn,Mg)(PO:Sn、(Sr,Mg)(PO:Sn、CaSiO:Pb,Mn、CfF(PO:Sb,Mn、Cf(F,Cl)(PO:Sb,Mn、(Cf,Sr,Ba)(POCl:Eu、3Sr(POSrF:Sb,Mn、Y(P,V)O:Eu、(Zn,Sr)(PO:Mn、YS:Eu、(Sr,Mg)(PO:Sn(II)、3.5MgO0.5MgFGeO:Mn、Cf(POCaF:Ce,Mn、SrAl:Pb、BaSi:Pb、SrFB:Eu(II)、SrB:Eu、GdS:Tb、GdS:Eu、GdS:Pr,GdS:Pr,Ce,F、YS:Tb、YS:Tb、YS:Tb、Zn(0.5)Cd(0.4)S:Ag、Zn(0.4)Cd(0.6)S:Ag、CdWO、CaWO、MgWO、YSiO:Ce、YAlO:Ce、YAl12:Ce、Y(Al,Ga)12:Ce、CdS、ZnO:Ga、ZnO:Zn、(Zn、Cd)S:Cu,Al、ZnO:Zn、(Zn,Cd)S:Cu,Al、ZnS:Cu,Al、ZnCdS:Ag、ZnS:Ag、ZnSiO:Mn、ZnS:Cu、CsI:Tl、LiF/ZnS:Ag、LiF/ZnS:Cu,Al,Auや、フルオレセインイソチオシアネートに代表されるフルオレセイン系蛍光物質、ポルフィリン、白金ポルフィリンに代表されるポルフィリン系蛍光物質、ローダミン、アゾベンゼン誘導体、アントラセンに代表される有機色素系蛍光物質、ルテニウムトリスビピリジルに代表される金属錯体系蛍光物質、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(1,4-フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(チオフェン)に代表される発光ポリマー系蛍光物質、その他にY:Eu等が挙げられる。
【0016】
「発光物質」とは、蛍光物質以外の物質であり、X線、紫外線若しくは可視光線等により発光する物質および化学変化または生物酵素により発光する物質をいう。発光物質の具体例としては、例えば、Tris(2-phenylpyridinato)iridium(III)に代表されるイリジウム錯体、白金錯体の燐光性発光材料、ルミノール、ロフィン、ルシゲニン、シュウ酸エステルに代表される化学発光物質と感光発光色素9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、テトラセン、1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、5,12-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、ルブレン、ローダミン6G、ローダミンB、ルミノールに代表される生物発光物質等が挙げられる。
【0017】
「エレクトロルミネセンス物質」とは、電場を加えると発光する物質をいう。エレクトロルミネセンス物質の具体例としては、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)や、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)3(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)、ルベンの様な低分子系の物質、ポリ(p-フェニレンビニレン)や、ポリアルキルチオフェンのようなπ共役高分子等が挙げられる。
【0018】
「破壊発光物質」とは、破壊や摩擦などの力学刺激による破壊に伴って発光する物質をいう。破壊発光物質の具体例としては、例えば、苦灰石、白雲母、石英、トリリチア雲母、ペクトライト、蛍石、ポリリチア雲母等の無機材料や、Eu(TTA)3系、カルバゾール誘導体、アントラニル酸系、砂糖等の有機物等が挙げられる。
【0019】
「フォトクロミック物質」とは、X線や紫外線、可視光線が照射されることで色等の物理的特徴の変化を伴う物質をいう。フォトクロミック物質の具体例としては、例えば、スピロピラン系、ジアリールエテン系、フルギド系に代表される有機色素、バリウムマグネシウムケイ酸塩(BaMgSiO)に代表される無機材料等が挙げられる。
【0020】
「残光物質」とは、照射された可視光や紫外線等の光(電磁波)を蓄えて、照射を止めても発光する物質をいう。残光物質の具体例としては、例えば、ラジウム化合物やプロメチウム化合物、硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl系)等が挙げられ、DyやEu等の1~3価の金属イオンを任意の割合で添加した硫化亜鉛(ZnS系)やアルミン酸ストロンチウム(SrAl系)が好ましい。ここで、「添加」とは、2個以上の物質を同時に添加する「共添加」および「賦活」をも含む概念である。
【0021】
「輝尽発光物質」とは、高いエネルギーを持つレーザーや放射線等の照射後、可視または赤外光の励起により、発光する物質をいう。輝尽発光物質の具体例としては、例えば、BaFX:Eu2+(XはBrまたはIである。)等が挙げられる。
【0022】
「応力発光物質」とは、機械的な外力により生じる変形によって発光(可視光、紫外光、近赤外光を含む。)する物質をいう。応力発光物質としては、例えば、スピネル構造、コランダム構造、βアルミナ構造、ケイ酸塩、欠陥制御型アルミン酸塩、ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有する酸化物、硫化物、セレン化物またはテルル化物を主成分として構成されるもの等や、これらを構成するアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの少なくとも一部が、希土類金属イオンおよび遷移金属イオンの少なくとも1種の金属イオンに置換されているものが挙げられる。
【0023】
応力発光物質としては、例えば、アルミナ系、シリカ系、リン酸系、酸化チタン系、硫化亜鉛系およびその他に分類されるものがある。
【0024】
アルミナ系としては、具体的には、xSrO・yAl・zMO(Mは二価金属、Mg,Ca,Ba,x,y,zは整数である。なお、Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mg,Ca,Baが好ましい。またx,y,zは1以上の整数を表す。)、Al:Tb3+、SrAl:M(M=Eu2+,Dy3+,Ce3+,Ho3+のうち、少なくとも1つ以上を添加(doping)したもの)、ZnAl:M(M=Eu2+,Mn2+,Dy3+,Ce3+,Ho3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、SrAl:Eu2+、SrAl:Ce3+、SrAl:Eu2+,Dy3+、SrAl:Eu2+,Ho3+、SrAl:Ho3+,Ce3+、XAl:M(X=Sr,Ba,Mg,Ca,Znのうち、1~2つを添加、M=Eu2+,Dy3+,Tb3+,Ho3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、SrAl:Eu2+,Cr3+,Nd3+等が挙げられる。
【0025】
また、他のアルミナ系としては、具体的には、一般式Sr{1-(2x+3y+3z)/2}Al:xEu2+,yCr3+, zNd3+(ただし、x,y,zは、0.25~10mol%、好ましくは0.5~2mol%を表す。)、SrAl:Eu2+、CaYAi:Eu2+、CaYAl:M(M=Eu2+,Ce3+,Dy3+,Ce3+,Ho3+のうち1つを添加)、SrMgAl1017:Ce3+等が挙げられる。
【0026】
シリカ系としては、具体的にはxSrO・yAl・zSiO(x,y,zは整数を表す。)、CaAlSi:Ce3+、XAlSiO:M(X=Ca,Srのうち1つを添加、M=Eu2+,Eu3+,Ce3+,Dy3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、CaMgSi;Ce3+、XMgSi:M(X=Ba,Ca,Srのうち1つを添加、またはX=SrCa,SrBaのうち1つ、M=Eu2+,Dy3+,Ce3+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、CaAlSi:Eu2+, SrCaAlSi:Eu2+、CaSi12:RE3+(RE3+=Dy3+,Eu2+のうち、少なくとも1つ以上を添加)、BaSi:Eu2+等が挙げられる。
【0027】
リン酸系としては、具体的には、LiPO:RE(RE=Dy3+,Tb3+,Ce3+,Eu2+)、LiXPO:Eu2+(X=Sr,Brのうち1つ)、LiBaP:Eu2+、CaZr(PO:Eu2+等が挙げられる。
酸化チタン系としては、具体的には、CaTiO:Pr3+、BaCaTiO:Pr3+、BaTiO-CaTiO:Pr3+等が挙げられる。
【0028】
硫化亜鉛系としては、具体的には、ZnS:M(Mは二価金属であれば限定されるものではないが、Mn,Ga,Cu等が望ましい。M=Mn2+,Ga2+,Te2+,Cu2+,CuCl,Alのうち、少なくとも1つ以上を添加)、XZnOS:M(X=Ca,Baのうち1つ、M=Mn2+,Cu2+のうち1つを添加)、ZnMnTe等が挙げられる。
【0029】
また、その他のものとしては、具体的には、CaZrO:Eu3+、CaNb:Pr3+(n=6,7)、(Sr,Ca,Ba)(2)SnO:Sm3+,La3+、Srn+1Sn3n+1:Sm3+(n=1,2,それ以上)、Y:Eu2+、ZrO:Ti、XGa:Mn2+(X=Zr,Mgのどちらか1つ)等が挙げられる。
【0030】
なお、「蛍光物質」、「発光物質」、「エレクトロルミネセンス物質」、「破壊発光物質」、「フォトクロミック物質」、「残光物質」、「輝尽発光物質」および「応力発光物質」は、各物質の特性だけでなく、他の物質の特性を有していてもよい。たとえば、「応力発光物質」が「蛍光物質」の特性を有していてもよい。
【0031】
また、電気伝導率測定用材料には、上述した物質以外の物質が含まれていてもよい。なお、上述した物質以外の物質は特に限定されない。
【0032】
かかる第1の態様では、荷電粒子を照射すると、電気伝導率測定用材料はその近傍にある物質の電気伝導率に応じて発光の強度(輝度)または発光する早さが変化するので、その物質の電気伝導率を視覚的に容易に測定することができる。ここで、「荷電粒子」とは、電荷を帯びた粒子・クラスタ・気体等をいう。荷電粒子としては、例えば、電子、陽子、イオン化した原子(原子核そのものを含む。)、イオン化した分子(錯体を含む。)、電離・イオン化した気体等が挙げられる。
【0033】
また、荷電粒子を照射すると、最初にある部分が発光するが、時間の経過に伴って、その部分の周囲の部分が発光し、最初に発光していた部分の輝度は低くなって行く。このような現象が繰り返される。その結果、あたかも光が移動(伝播)しているように見える。そして、この時の発光する部分(発光部)の移動速度(伝播速度)は、その発光部分に接している計測対象物10の表面およびその周辺の電気伝導率に応じて早くなる。
【0034】
しがたって、この発光部の移動速度を測定することにより、発光部に対応する計測対象物10の表面または内部の電気伝導率(電気伝導率分布)を容易に測定することができる。
【0035】
本発明の第2の態様は、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の重量比率が20wt%~80wt%であることを特徴とする第1の態様に記載の電気伝導率測定用材料にある。
【0036】
かかる第2の態様では、電気伝導率測定用材料が一般的な産業用カメラ等で検出可能なレベルの輝度で発光することができるので、電気伝導率測定用材料の近傍にある物質の電気伝導率をより容易に検出することができる。
【0037】
本発明の第3の態様は、応力発光物質が、SrAlで表される物質にEu2+が添加されているもの、SrAlで表される物質にEu2+、Ho3+、Dy2+、M、MおよびM(M、M、M=1~3価のそれぞれ異なる金属イオン)の少なくとも一つが添加されているもの、またはCaYAlで表される物質にEu2+が添加されているものであることを特徴とする第1または第2の態様に記載の電気伝導率測定用材料にある。
【0038】
かかる第3の態様では、電気伝導率測定用材料がより高い輝度で発光することができるので、電気伝導率測定用材料の近傍にある物質の電気伝導率をさらに容易に検出することができる。
【0039】
本発明の第4の態様は、計測対象物の表面に設けられ、第1~第3の態様の何れかに記載の電気伝導率測定用材料を含むことを特徴とする電気伝導率測定膜にある。
【0040】
ここで、「電気伝導率測定膜」は、上述した物質の少なくとも1種類が含まれている材料で構成されていれば特に限定されない。電気伝導率測定膜としては、たとえばエポキシ樹脂やウレタン樹脂と、これらの樹脂の架橋・硬化反応を制御するための硬化剤と溶剤と、上述した物質およびその物質を均一に分散させるための分散剤・補助剤とを均一に混合し作製したものでもよい。電気伝導率測定膜に含まれる上述した物質の濃度(重量比率)は特に限定されないが、20wt%~80wt%の範囲であれば目視で発光を確認することができるので好ましく、50wt%~70wt%の範囲であれば目視でより明確に発光を確認することができるのでより好ましい。なお、「電気伝導率測定膜」は、計測対象物の表面に直接形成(溶液塗布・硬化)されてもよいし、既に形成されている「電気伝導率測定膜」を計測対象物の表面に貼り付けることによって計測対象物の表面に形成されてもよい。
【0041】
かかる第4の態様では、計測対象物表面または内部の電気伝導率に応じた輝度で電気伝導率測定膜を発光させることができるので、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)を直感的に理解することができる。また、電気伝導率測定膜は、計測対象物の形状の影響を受けることなく容易に形成したり、貼りつけたりすることができる。その結果、計測対象物が曲面等の複雑な3次元形状をしていたとしても、その表面または内部の電気伝導率(分布)を容易に可視化することができる。
【0042】
本発明の第5の態様は、電気伝導率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率が、計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいことを特徴とする第4の態様に記載の電気伝導率測定膜にある。
【0043】
ここで、体積抵抗率とは単位体積当たりの抵抗値をいい、表面抵抗率とは、単位面積当たりの抵抗値をいう。
【0044】
かかる第5の態様では、電気伝導率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率は、計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいので、電気伝導率測定膜に入射した荷電粒子の電荷(電子等)は速やかに計測対象物に移動することになる。その結果、電気伝導率測定膜の発光強度が高くなるので、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)をより容易に可視化することができる。
【0045】
本発明の第6の態様は、第4または第5の態様に記載の電気伝導率測定膜の膜厚が1μm~1mmの範囲にあることを特徴とする電気伝導率測定膜にある。
【0046】
かかる第6の態様では、電気伝導率測定膜の存在が計測対象物の電気伝導率に影響を与えることなく、かつ十分な輝度で電気伝導率測定膜が発光することができる。その結果、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)をさらに容易に可視化することができる
【0047】
本発明の第7の態様は、計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置であって、計測対象物の表面に設けられた第4~第6の態様の何れかに記載の電気伝導率測定膜と、電気伝導率測定膜に対向する方向に設けられ、電気伝導率測定膜に向かって荷電粒子を照射する荷電粒子照射部とを具備することを特徴とする電気伝導率測定装置にある。
【0048】
かかる第7の態様では、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)を容易に測定することができる。
【0049】
本発明の第8の態様は、計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定装置であって、計測対象物の表面に設けられた第4~第6の態様の何れかに記載の電気伝導率測定膜と、計測対象物に電圧を印加する電圧印加手段とを具備することを特徴とする電気伝導率測定装置にある。
【0050】
かかる第8の態様では、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)を容易に測定することができる。
【0051】
本発明の第9の態様は、計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定方法であって、計測対象物表面に第4~第6の態様の何れかに記載の電気伝導率測定膜を形成する工程と、電気伝導率測定膜に向かって荷電粒子を照射する工程とを具備することを特徴とする電気伝導率測定方法にある。
【0052】
かかる第9の態様では、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)を容易に測定することができる。
【0053】
本発明の第10の態様は、計測対象物表面または内部の電気伝導率を測定する電気伝導率測定方法であって、計測対象物表面に第4~第6の態様の何れかに記載の電気伝導率測定膜を形成する工程と、計測対象物に電圧を印加する工程とを具備することを特徴とする電気伝導率測定方法にある。
【0054】
かかる第10の態様では、計測対象物表面または内部の電気伝導率(分布)を容易に測定することができる。
【0055】
本発明の第11の態様は、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の少なくとも1つを含むことを特徴とする電気抵抗率測定用材料にある。電気抵抗率測定用材料には、電気伝導率測定用材料と同様に、上述した物質以外の物質が含まれていてもよい。なお、上述した物質以外の物質は特に限定されない。
【0056】
かかる第11の態様では、荷電粒子を入射させると、電気抵抗率測定用材料がその近傍にある物質の電気抵抗率に応じて発光の強度(輝度)または発光する早さが変化するので、その物質の電気抵抗率(分布)を視覚的に容易に測定することができる。
【0057】
本発明の第12の態様は、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の重量比率が20wt%~80wt%であることを特徴とする第11の態様に記載の電気抵抗率測定用材料にある。
【0058】
かかる第12の態様では、電気抵抗率測定用材料が一般的な産業用カメラ等で検出可能なレベルの輝度で発光することができるので、電気抵抗率測定用材料の近傍にある物質の電気抵抗率(分布)をより容易に検出することができる。
【0059】
本発明の第13の態様は、応力発光物質が、SrAlで表される物質にEu2+が添加されているもの、SrAlで表される物質にEu2+、Ho3+、Dy2+、M、MおよびM(M、M、M=1~3価のそれぞれ異なる金属イオン)の少なくとも一つが添加されているもの、またはCaYAlで表される物質にEu2+が添加されているものであることを特徴とする第11または第12の態様に記載の電気抵抗率測定用材料にある。
【0060】
かかる第13の態様では、電気抵抗率測定用材料がより高い輝度で発光することができるので、電気抵抗率測定用材料の近傍にある物質の電気抵抗率(分布)をさらに容易に検出することができる。
【0061】
本発明の第14の態様は、計測対象物の表面に設けられ、第11~第13の態様の何れかに記載の電気抵抗率測定用材料を含むことを特徴とする電気抵抗率測定膜にある。
【0062】
ここで、「電気抵抗率測定膜」は、上述した物質の少なくとも1種類が含まれている材料で構成されていれば特に限定されない。電気抵抗率測定膜としては、たとえばエポキシ樹脂やウレタン樹脂と、これらの樹脂の架橋・硬化反応を制御するための硬化剤と溶剤と、上述した物質およびその物質を均一に分散させるための分散剤・補助剤とを均一に混合し作製したものでもよい。電気抵抗率測定膜に含まれる上述した物質の濃度(重量比率)は特に限定されないが、20wt%~80wt%の範囲であれば目視で発光を確認することができるので好ましく、50wt%~70wt%の範囲であれば目視でより明確に発光を確認することができるのでより好ましい。なお、「電気抵抗率測定膜」は、計測対象物の表面に直接形成(溶液塗布・硬化)されてもよいし、既に形成されている「電気抵抗率測定膜」を計測対象物の表面に貼り付けることによって計測対象物の表面に形成されてもよい。
【0063】
かかる第14の態様では、計測対象物表面または内部の電気抵抗率に応じた輝度で電気抵抗率測定膜を発光させることができるので、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)を直感的に理解することができる。また電気抵抗率測定膜は、計測対象物の形状の影響を受けることなく容易に形成したり、貼りつけたりすることができる。その結果、計測対象物が曲面等の複雑な3次元形状をしていたとしても、その表面または内部の電気抵抗率(分布)を容易に可視化することができる。
【0064】
本発明の第15の態様は、電気抵抗率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率が、計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいことを特徴とする第14の態様に記載の電気抵抗率測定膜にある。
【0065】
かかる第15の態様では、電気抵抗率測定膜の体積抵抗率または表面抵抗率は、計測対象物の体積抵抗率または表面抵抗率より大きいので、電気抵抗率測定膜に入射した荷電粒子の電荷(電子等)は速やかに計測対象物に移動することになる。その結果、電気伝導率測定膜の発光強度が高くなるので、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)をより容易に可視化することができる。
【0066】
本発明の第16の態様は、第14または第15の態様に記載の電気抵抗率測定膜の膜厚が1μm~1mmの範囲にあることを特徴とする電気抵抗率測定膜にある。
【0067】
かかる第16の態様では、電気抵抗率測定膜の存在が計測対象物の電気抵抗率に影響を与えることなく、かつ十分な輝度で電気抵抗率測定膜が発光することができる。その結果、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)をさらに容易に可視化することができる。
【0068】
本発明の第17の態様は、計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定装置であって、計測対象物の表面に設けられた第14~第16の態様の何れかに記載の電気抵抗率測定膜と、電気抵抗率測定膜に対向する方向に設けられ、電気抵抗率測定膜に向かって荷電粒子を照射する荷電粒子照射部とを具備することを特徴とする電気抵抗率測定装置にある。
【0069】
かかる第17の態様では、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)を容易に測定することができる。
【0070】
本発明の第18の態様は、計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定装置であって、計測対象物の表面に設けられた第14~第16の何れかに記載の電気抵抗率測定膜と、計測対象物に電圧を印加する電圧印加手段とを具備することを特徴とする電気抵抗率測定装置にある。
【0071】
かかる第18の態様では、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)を容易に測定することができる。
【0072】
本発明の第19の態様は、計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定方法であって、計測対象物表面に第14~第16の態様の何れかに記載の電気抵抗率測定膜を形成する工程と、電気抵抗率測定膜に向かって荷電粒子を照射する工程とを具備することを特徴とする電気抵抗率測定方法にある。
【0073】
かかる第19の態様では、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)を容易に測定することができる。
【0074】
本発明の第20の態様は、計測対象物表面または内部の電気抵抗率を測定する電気抵抗率測定方法であって、計測対象物表面に第14~第16の態様の何れかに記載の電気抵抗率測定膜を形成する工程と、計測対象物に電圧を印加する工程とを具備することを特徴とする電気抵抗率測定方法にある。
【0075】
かかる第20の態様では、計測対象物表面または内部の電気抵抗率(分布)を容易に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1図1は実施形態1に係る電気伝導率測定装置の概略斜視図である。
図2図2は実施形態1に係る電気伝導率測定装置の動作フローチャートである。
図3図3は実施例1の複数の銀ナノインク線が形成されたポリ乳酸製のシート(計測対象物)表面の写真である。
図4図4は実施例1の計測対象物上に電気伝導率測定シートを載置した状態の写真である。
図5図5は実施例1の計測対象物に荷電粒子を照射した時の写真である。
図6図6は実施例2の計測対象物上に電気伝導率測定シートを載置した状態の写真である。
図7図7は実施例2の計測対象物に荷電粒子を照射した直後の写真である。
図8図8は実施例2の計測対象物に荷電粒子を照射してからある程度時間が経過した時の写真である。
図9図9は実施例3の静電防止ビニールシート(計測対象物)表面の写真である。
図10図10は実施例3の計測対象物に荷電粒子を照射した直後の写真である。
図11図11は実施例3の計測対象物に荷電粒子を照射してからある程度時間が経過した時の写真である。
図12図12は実施例4の静電防止ビニールシート(計測対象物)表面の写真である。
図13図13は実施例4の計測対象物に荷電粒子を照射した直後の写真である。
図14図14は実施例4の計測対象物に荷電粒子を照射してからある程度時間が経過した時の写真である。
図15図15は実施5の炭素繊維強化プラスチック(計測対象物)表面の写真である。
図16図16は実施例5の計測対象物上に電気伝導率測定膜を貼りつけた状態の写真である。
図17図17は実施例5の計測対象物に荷電粒子を照射した時の写真である。
図18図18は実施形態2に係る電気伝導率測定装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る電気伝導率測定材料と、その材料を用いた電気伝導率測定膜と、その電気伝導率測定膜を用いた電気伝導率測定装置の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
(実施形態1)
【0078】
図1に、本実施形態に係る電気伝導率測定装置の概略斜視図を示す。この図に示すように、本実施形態に係る電気伝導率測定装置1は、矩形の平板状の計測対象物10の表面上に、その全面に亘って、蛍光物質、発光物質、エレクトロルミネセンス物質、破壊発光物質、フォトクロミック物質、残光物質、輝尽発光物質および応力発光物質の少なくとも1つを含む電気伝導率測定膜11が形成されている。
【0079】
そして、電気伝導率測定膜11の上方には、先端部がテーパ状に形成された円筒状の荷電粒子照射部20が治具(図示しない)によって固定されており、電気伝導率測定膜11に荷電粒子を照射することができるようになっている。具体的には、荷電粒子照射部と計測対象物10との間に電界(または電圧)をかけたときに、荷電粒子照射部の近傍に存在する気体がイオン化されることによって生じる荷電粒子(例えば、N、N、O2-、H、電子等)が電気伝導率測定膜11に向かって照射される。
【0080】
さらに、計測対象物10の上方には、電気伝導率測定膜11の発光状態を記録する記録部であるカメラ(図示しない)が、治具(図示しない)により固定されており、電気伝導率測定膜11の発光状態を記録することができるようになっている。
【0081】
ここで、電気伝導率測定膜11は、上述した物質の少なくとも1種類が含まれている材料で構成されていれば特に限定されない。また、電気伝導率測定膜11の厚さは、特に限定されないが、厚さが1μm~1mmの範囲が輝度および取り扱い易さの点から好ましく、厚さが10μm~500μmの範囲が輝度および取り扱い易さの点からより好ましい。
【0082】
電気伝導率測定膜11としては、例えばエポキシ樹脂やウレタン樹脂と、これらの樹脂の架橋・硬化反応を制御するための硬化剤と溶剤と、上述した物質およびその物質を均一に分散させるための分散剤・補助剤とを均一に混合し、この混合液を計測対象物10の表面に塗布・硬化させて作製したものや、上述した物質が分散された、ポリエステル、ナイロン、アクリル、セルロース等からなる不織布、紙またはその他の布状部材等でもよい。そして、このように作製した電気伝導率測定膜を計測対象物表面に直接形成してもよいし、別途作製した電気伝導率測定膜11を計測対象物表面に貼り付けるようにしてもよい。
【0083】
なお、電気伝導率測定膜11に含まれる上述した物質の濃度(合計重量比率)は特に限定されないが、20wt%~80wt%の範囲であれば目視で発光を確認することができるので好ましく、50wt%~70wt%の範囲であれば目視でより明確に発光を確認することができるのでより好ましい。
【0084】
また、荷電粒子照射部20は、荷電粒子を照射することができるものであれば特に限定されないが、1V/mm~3000V/mmの範囲のエネルギーを有する荷電粒子を照射できるものが好ましく、22V/mm~1000V/mmの範囲のエネルギーを有する荷電粒子を照射できるものが特に好ましい。
【0085】
次に、本実施形態に係る電気伝導率測定装置1の動作(電気伝導率測定方法)について説明する。図2は、本実施形態に係る電気伝導率測定装置の動作フローチャートである。
【0086】
まず、計測対象物10の表面に電気伝導率測定膜11を形成する(S1)。次に、荷電粒子照射部20から荷電粒子を照射する(S2)。
【0087】
すると、電気伝導率測定膜11は、接している計測対象物10の表面または内部の電気伝導率に応じて発光する。すなわち、計測対象物10の表面または内部の電気伝導率の分布に対応して電気伝導率測定膜11が発光する。また、この際に発光する電気伝導率測定膜11の輝度は、発光する部分に対応する計測対象物10の電気伝導率の大きさに応じて高くなる。さらに、電気伝導率測定膜11が発光する早さも、発光する部分に対応する計測対象物10の電気伝導率の大きさに応じて早くなる。また、発光する部分の移動速度(伝播速度)は、発光する部分に対応する計測対象物10の電気伝導率の大きさに応じて速くなる。
【0088】
そして、その発光状態を計測対象物10の上方に配置されたカメラで撮影する(S3)。
【0089】
なお、このようにして得られた電気伝導率測定膜11の発光(輝度)データに基づいて、計測対象物10の電気伝導率を算出することができる。具体的には、例えば、電気伝導率測定膜11の輝度と電気伝導率との検量線を予め作成しておく。そして、その検量線と輝度とから、計測対象物表面の各部分(領域)における電気伝導率(電気伝導率分布)を算出することができる。
【0090】
このように、本実施形態に係る電気伝導率測定方法および電気伝導率測定装置1によれば、計測対象物10の局所的な電気伝導率(電気伝導率分布)を測定することができる。
【0091】
また、本発明に係る電気伝導率測定方法および電気伝導率測定装置1は、計測対象物10に直接、電圧を印加する必要がないので、計測対象物の大きさ・形状等に関係なく、電気伝導率を測定することができる。
【0092】
さらに、本発明に係る電気伝導率測定方法および電気伝導率測定装置1では、電気伝導率測定膜11の輝度の高さが電気伝導率の大きさを示すことから、計測対象物10の電気伝導率(電気伝導率分布)を直感的に理解することができる。これは従来の測定方法では不可能である。
【0093】
また、計測対象物10に荷電粒子を照射すると、荷電粒子照射部20の直下に位置する電気伝導率測定膜11の部分が最初に発光するが、時間の経過に伴って、その部分の周囲の部分が発光し、最初に発光していた部分の輝度は低くなっていく。このような現象が繰り返される。その結果、あたかも光の輪が広がっていくように、光が移動(伝播)しているように見える。そして、この時の発光部の移動速度(伝播速度)は、その発光部分に接している計測対象物10の表面または内部およびその周辺の電気伝導率に応じて早くなる。
【0094】
しがたって、例えば、発光部の移動速度と電気伝導率との検量線を予め作成しておき、その検量線と、実際に測定した発光部の移動速度に基づいて、発光部に対応する計測対象物10の表面の電気伝導率(電気伝導率分布)を算出することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、1つの荷電粒子照射部20を用いて電気伝導率測定装置1を構成したが、本発明はこれに限定されない。計測対象物10に形成された電気伝導率測定膜11に対して荷電粒子を一様に照射できるように、複数の荷電粒子照射部を備えた電気伝導率測定装置を構成してもよい。このように構成することにより、電気伝導率測定膜11に対して荷電粒子を一様に照射することができるので、より高い精度で計測対象物10の電気伝導率(電気伝導率分布)を測定することができる。
【0096】
なお、電気伝導率は、電気抵抗率の逆数である。したがって、本実施形態の電気伝導率測定膜11を電気抵抗率測定膜とすることにより、電気伝導率(電気伝導率分布)と同様にして、計測対象物10の電気抵抗率(電気抵抗率分布)についても測定することができる。
(実施例1)
【0097】
ポリ乳酸製のシート(PLAシート)上に、銀インク(DGP-NO、Advanced Nano Products社製)を用いて、図3に示すように、複数の銀ナノインク線を形成した。そして、銀ナノインク線51がストライプ状に形成されたPLAシート50を計測対象物とした。
【0098】
次に、このPLAシート50上に、電気伝導率測定膜である、SrAl:Eu2+を練り込んだ不織布(電気伝導率測定シート53)を載置した。そして、図4に示すように、不織布の上方に荷電粒子照射部である電極55を配置(距離10mm)した。
【0099】
その後、電極55に3kV、1μAの直流電圧を印加してコロナ放電させることによって、計測対象物に荷電粒子を照射した時の結果を図5に示す。ここで、PLAシートの電気伝導率は1.00×10-15Ω-1・m-1以上であり、銀ナノインク線の電気伝導率は1.68×10-2Ω-1・m-1である。
【0100】
図5に示すように、電気伝導率が高い銀ナノインク線からなる部分の輝度がポリ乳酸からなる部分の輝度よりも高いことが分かった。すなわち、電気伝導率測定膜に荷電粒子を照射して発光させることにより、計測対象物内において相対的に電気が流れやすい部分を測定することができ、さらに検量線等を用いて計測対象物の相対的な電気伝導率分布を測定できることが分かった。
(実施例2)
【0101】
図6に示すように、文字等が印字されている包装用箱(計測対象物)上に、電気伝導率測定膜である、SrAl:Eu2+を練り込んだ不織布(電気伝導率測定シート)を載置した。ここで、文字が印字されている部分は、文字が印字されていない部分よりも電気伝導率は高いものとなっている。
【0102】
そして、実施例1と同様に、上方に配置(距離10mm)された電極に電圧・電流(3kV、1μA)を印加してコロナ放電させることによって、計測対象物に荷電粒子を照射した。その時の結果を図7図8に示す。図7は、荷電粒子を照射し始めた段階での写真であり、図8は、荷電粒子を照射してからしばらく時間が経過した段階での写真である。
【0103】
これらの図から分かるように、荷電粒子を照射し始めた段階では、電気伝導率測定膜のうち、印刷されている文字等に対応する部分が、文字等に沿って瞬間的に発光し(文字等に沿って、光が移動していくように発光し)、時間の経過に伴って他の部分がゆっくりと発光(光がゆっくりと移動していくように発光)して行き、最終的に電気伝導率測定膜全体が発光することが分かった。また、文字等に対応する電気伝導率測定膜の部分の発光強度は、他の部分よりも高かった。
【0104】
このことから、電気伝導率測定膜に荷電粒子を照射して発光させることにより、計測対象物の相対的な電気伝導率分布が分かると共に、発光した部分(発光部)の移動速度を測定することにより、検量線等を用いて発光部に対応する計測対象物の表面の電気伝導率(電気伝導率分布)を容易に測定できることが分かった。
(実施例3)
【0105】
計測対象物として、図9に示した、両面の近傍に導電線が格子状にそれぞれ形成された静電防止プラスチックシート(アキレスセイデンF(両面塗工タイプ)、アキレス株式会社)の表面上に、実施例2と同様の電気伝導率測定シートを載置した。ここで、導電線は、プラスチックよりも電気伝導率が高い。
【0106】
そして、実施例2と同様に、上方に配置(距離10mm)された電極に3kV、1μAの直流電圧を印加してコロナ放電させることによって、計測対象物の中央部に荷電粒子を照射した。その時の結果を図10図11に示す。
【0107】
これらの図から分かるように、荷電粒子を照射し始めた段階では、電圧印加された電極の真下付近にある導電線(電気伝導率測定膜が形成された表面近傍の導電線だけでなく、反対側の表面近傍の導電線(計測対象物の内部に相当)を含む)に対応する電気伝導率測定膜の部分が瞬間的に発光し、時間の経過に伴って、導電線の他の部分に対応する電気伝導率測定膜の部分(荷電粒子を照射し始めた段階では発光していなかった部分)が素早く発光(光が素早く移動しているように発光)した。そして、さらに時間が経過すると、導電線がないプラスチックの部分に対応する部分がゆっくりと発光(光がゆっくりと移動していくように発光)することが分かった。また、導電線に対応する電気伝導率測定膜の部分の発光強度(輝度)、導電線がないプラスチックの部分よりも高かった。
【0108】
このことからも、電気伝導率測定膜に荷電粒子を照射して発光させることにより、計測対象物表面および内部の相対的な電気伝導率分布が分かると共に、発光するまでの時間や、発光した部分(発光部)の移動速度を測定することにより、検量線等を用いて発光部に対応する計測対象物の表面の電気伝導率(電気伝導率分布)を容易に測定できることが分かった。
(実施例4)
【0109】
計測対象物として、図12に示した、格子状のメッシュが形成されたプライキャンバスE-3000TFW(石塚株式会社製)の表面上に、実施例2と同様の電気伝導率測定シートを載置した。ここで、メッシュを構成するポリエステル糸は、ポリ塩化ビニルで構成された透明フィルムよりも電気伝導率が高い。
【0110】
そして、実施例2と同様に、上方に配置(距離10mm)された電極に3kV、1μAの直流電圧を印加してコロナ放電させることによって、計測対象物の一部に荷電粒子を照射した。その時の結果を図13図14に示す。
【0111】
これらの図から分かるように、荷電粒子を照射し始めた段階では、格子状に形成されたメッシュに対応する電気伝導率測定シートの格子状の部分が瞬間的に発光し、時間の経過に伴って、メッシュの他の部分に対応する電気伝導率測定シートの部分(荷電粒子を照射し始めた段階では発光していなかった部分)に素早く発光(光が素早く移動しているように発光)した。そして、さらに時間が経過した後に、メッシュがない透明フィルムの部分に対応する部分がゆっくりと発光(光がゆっくりと移動していくように発光)することが分かった。また、メッシュに対応する電気伝導率測定膜の部分の発光強度(輝度)は、メッシュがない透明フィルムの部分よりも高かった。
【0112】
このことからも、電気伝導率測定膜に荷電粒子を照射して発光させることにより、計測対象物の相対的な電気伝導率分布が分かると共に、発光するまでの時間や、発光した部分(発光部)の移動速度を測定することにより、検量線等を用いて発光部に対応する計測対象物の表面の電気伝導率(電気伝導率分布)を容易に測定できることが分かった。
(実施例5)
【0113】
計測対象物として、図15に示した炭素繊維強化プラスチック(CF/PA66、BOND LAMINATES社製)の表面上に、応力発光物質であるSrAl:Eu2+と光硬化アクリル樹脂(マイクロジェット社製)との混合物(SrAl:Eu2+の重量比率:70%)を塗布・硬化させて、図16に示すように、電気伝導率測定膜(厚さ約100μm)を形成した。なお、円で囲んだ部分が荷電粒子を照射する部分である。
【0114】
ここで、炭素繊維強化プラスチックの表面は絶縁体で構成されているが、その内部には導電体であるカーボンファイバーが織り込まれている。なお、炭素繊維強化プラスチックを構成する各長方形状の部分のうち、長手方向が垂直方向に配置された部分は、長手方向が水平に配置された部分よりも電気伝導率が高い構造となっている。
【0115】
そして、実施例2と同様に、上方に配置(距離10mm)された電極に3kV、1μAの直流電圧を印加してコロナ放電させることによって、計測対象物の円で囲んだ部分に荷電粒子を照射した。その時の結果を図17に示す。
【0116】
この図から分かるように、カーボンファイバーが織り込まれた部分が発光していることが分かった。さらにその中でも内部の電気伝導率が高い部分は、他の部分と比較して強く(高い輝度で)発光していることが分かった。
【0117】
このことからも、電気伝導率測定膜に荷電粒子を照射して発光させることにより、計測対象物内部の相対的な電気伝導率分布を容易に測定できることが分かった。
(実施形態2)
【0118】
実施形態1では、表面上に電気伝導率測定膜が設けられた計測対象物に対して、上方に配置した荷電粒子照射部から荷電粒子を照射することによって、電気伝導率測定膜を発光させて計測対象物の電気伝導率(電気伝導率分布)を測定するようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0119】
例えば、電気伝導率測定膜が形成された計測対象物に、電圧を直接印加することによって、電気伝導率測定膜を発光させて計測対象物の電気伝導率(電気伝導率分布)を測定するようにしてもよい。
【0120】
具体的には、図18に示すように、一方の面に電気伝導率測定膜11が形成された計測対象物10の他方の面上に、絶縁膜17を介して、計測対象物10の全面に亘って電極15を設ける。なお、電極15は、電源(図示しない)に接続されている。また、本実施形態では、電極15と電源とで電圧印加手段が構成されている。
【0121】
ここで、電極15および電源は、電圧を印加した際に電気伝導率測定膜11を発光させることができるものであれば特に限定されない。また、計測対象物10に接続される電極の位置も特に限定されず、電気伝導率測定膜11に接続するようにしてもよい。さらに、電極15に印加される電圧も特に限定されず、直流電圧、交流電圧、パルス電圧等を用いることができる。また、絶縁膜17も、電極15から計測対象物10への電荷の移動を防止することができるものであれば特に限定されない。
【0122】
そして、電極15に電圧を印加すると、実施形態1と同様に、計測対象物10の表面または内部の電気伝導率の分布に対応して電気伝導率測定膜が発光する。また、この際に発光する電気伝導率測定膜の輝度は、その近傍の計測対象物の電気伝導率の大きさに応じて高くなる。
【0123】
したがって、実施形態1と同様に、計測対象物10の局所的な電気伝導率(電気伝導率分布)を測定することができると共に、発光部の移動速度を測定することにより、発光部に対応する計測対象物10の表面の電気伝導率(電気伝導率分布)を容易に測定することができる。
【0124】
また、本実施形態では、電極15と電源とで電圧印加手段を構成したが、計測対象物10に電圧を印加することができるものであれば特に限定されない。電圧印加手段としては、この他に、実施形態1に示した荷電粒子照射部と計測対象物とを接触させるように、電源を計測対象物に直接接続するようにしてもよいし、接触帯電、剥離帯電または摩擦帯電等により計測対象物に電圧を印加するように構成してもよい。
【0125】
なお、電気伝導率は、電気抵抗率の逆数である。したがって、本実施形態の電気伝導率測定膜を電気抵抗率測定膜とすることにより、実施形態1と同様に、検量線等を用いて計測対象物10の電気抵抗率(電気抵抗率分布)についても測定することができる。
(その他の実施形態)
【0126】
上述した実施形態では、計測対象物として固体を用いたが、本発明が適用できる計測対象物はこれに限定されない。計測対象物としては、液体やゲル状物質など気体状の物質以外にも本発明を適用することができる。
【0127】
なお、上述した実施形態では、記録部であるカメラを設けて電気伝導率測定膜の発光状態を記録できるようにしたが、カメラを設けなくても肉眼で電気伝導率測定膜の発光状態を観察できるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0128】
1、1A 電気伝導率測定装置
10 計測対象物
11 電気伝導率測定膜
15、55 電極
17 絶縁膜
20 荷電粒子照射部
50 PLAシート
51 銀ナノインク線
53 電気伝導率測定シート

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18