(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230217BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 A
G01N21/49 A
(21)【出願番号】P 2021537571
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2020010994
(87)【国際公開番号】W WO2021024535
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2019143579
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加呂 光
(72)【発明者】
【氏名】西墻 憲一
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102428(JP,A)
【文献】特開平9-101312(JP,A)
【文献】特開2013-134139(JP,A)
【文献】米国特許第10983051(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0142481(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0150106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応容器が周方向に配置され、間欠回転可能な反応ディスクと、
光源と光度計とを含み、前記光源と前記光度計との間を前記反応ディスクに配置された前記反応容器が通過するように配置された光検出系と、
光度計データ処理部とを有し、
前記光度計は、前記光源からの光が前記反応容器に収容された測定対象を透過した透過光を受光する透過光検知器と、前記光源からの光が前記測定対象により散乱した散乱光を受光する散乱光検知器とを備え、
前記光度計データ処理部は、前記反応ディスクが回転することにより前記光源からの光を前記測定対象に対して走査して得られる、前記透過光検知器からの第1の走査波形データ及び前記散乱光検知器からの第2の走査波形データを取得する波形取得部と、前記第1の走査波形データ及び前記第2の走査波形データを用いて、前記測定対象中の気泡の有無、及び前記気泡が存在する場合に、前記第2の走査波形データにおける前記気泡の影響を受ける区間を特定するデータ処理部とを有し、
前記第2の走査波形データから前記データ処理部が特定した前記区間の走査波形データを除いて、前記測定対象の散乱光量に基づく分析を行う自動分析装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記透過光検知器と前記散乱光検知器とは、前記測定対象に対する走査位置が同じになるよう同期されている自動分析装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記データ処理部は、前記透過光検知器が検知する透過光量の透過光下限閾値、前記散乱光検知器が検知する散乱光量の散乱光上限閾値及び散乱光下限閾値を記憶しており、
前記第1の走査波形データのうち透過光量が前記透過光下限閾値以下である、あるいは前記第2の走査波形データのうち散乱光量が前記散乱光上限閾値以上である第1区間を特定し、
前記第2の走査波形データのうち、散乱光量が前記散乱光下限閾値以下である第2区間を特定し、
前記第1区間と前記第2区間とを、前記気泡の影響を受ける前記区間として特定する自動分析装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記データ処理部は、前記散乱光検知器からの走査波形データから前後のサンプリング位置における散乱光量の差分を算出して得られる差分波形について、差分上限閾値及び差分下限閾値を記憶しており、
前記第2の走査波形データについて求めた前記差分波形が、前記差分上限閾値または前記差分下限閾値を超える区間を除去区間として特定し、
前記第1の走査波形データのうち、前記除去区間を除いた区間の透過光量に基づき、透過光量の透過光下限閾値を設定し、
前記第2の走査波形データのうち、前記除去区間を除いた区間の散乱光量に基づき、散乱光量の散乱光上限閾値及び散乱光下限閾値を設定する自動分析装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記データ処理部は、前記第1の走査波形データのうち透過光量が前記透過光下限閾値以下である、あるいは前記第2の走査波形データのうち散乱光量が前記散乱光上限閾値以上である第1区間を特定し、
前記第2の走査波形データのうち、散乱光量が前記散乱光下限閾値以下である第2区間を特定し、
前記第1区間と前記第2区間とを、前記気泡の影響を受ける前記区間として特定する自動分析装置。
【請求項7】
請求項5において、
前記データ処理部は、前記差分上限閾値及び前記差分下限閾値を前記反応容器ごとに記憶する自動分析装置。
【請求項8】
請求項5において、
前記データ処理部は、純水を前記測定対象とした前記散乱光検知器からの走査波形データから前記差分波形を求め、前記差分上限閾値及び前記差分下限閾値を設定する自動分析装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記データ処理部は、純水を前記測定対象とするブランク測定が行われる際に、前記差分上限閾値及び前記差分下限閾値を再設定する自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液、尿等の生体サンプルの定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液、尿等の生体サンプルを試薬と反応させた反応液に光を照射し、透過光あるいは散乱光を測定して得られるデータに基づいて、目的成分の有無や濃度を求めるものである。反応液を収容する反応容器は、回転可能な反応ディスクの円周上に連続的に並べられており、反応ディスクの回転に伴って、検出すべき光の光軸を移動させながら測定が行われる。
【0003】
近年、自動分析装置には、ますます高精度で信頼性の高い分析結果を高速に提供することが求められている。ここで、例えば、分析に用いられる反応容器に気泡が発生した場合、分析結果の誤差の要因となるおそれがある。以下の先行文献には、このような異常の発生を検出する技術が開示されている。
【0004】
特許文献1には、反応液を収容する反応容器の一端から他端までの全区間に亘って透過光の測光を行い、得られた測光データにおける光度の減少に基づいて異物を検出する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2は、1つのセル内の反応液の測光を所定時間行うが、その測光範囲を複数の領域に分割して、その領域に対応した測光量の積分値の演算および比較を行う測定部を備え、測定部は比較した結果から、反応液の異常又はセルの異常を検出する技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、反応容器内の試料を分析する複数の光度検知器を有する自動分析装置において、複数の光度検知器の各光度検知器について、各光度検知器の同一試料に対する複数の検出値から試料の濃度を演算し、演算した濃度の変動幅を算出し、算出した変動幅が予め定めた許容変動幅以内か否かを判断し、複数の光度検知器のうちのいずれかの光度計の検出値から算出した濃度の変動幅が許容変動幅以内でなければ反応過程異常であることを表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-198739号公報
【文献】特開2015-102428号公報
【文献】特開2013-134139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1は、透過光量の減少から気泡などの異物の位置を決定可能とするものである。しかしながら、自動分析装置が散乱光を測定する場合、散乱光は、後述するように気泡などの異物の影響により減少または増加双方の可能性を有するため、同様の技術で位置を検出することはできない。
【0009】
特許文献2では、分割した、いずれの区間に気泡などの異常があるか判定することはできず、気泡の有無を判定できるに過ぎない。
【0010】
特許文献3では、測定対象を同一の測定位置における測定データのばらつきから気泡などの異常の有無を検知するものであり、気泡の位置を決定することはできない。
【0011】
測定対象の散乱光を測定する検知器は、測定対象に発生した気泡により生じる光量変化の影響が測定誤差の要因となる。測定対象の散乱光波形データから気泡の影響を受けている波形区間の把握ができれば、誤差となる気泡の影響が含まれる波形区間を除外して、実質的に気泡のない状態での波形データを得ることができる。これにより、分析の精度や信頼性を向上されることができる。さらに、検体の再分析が不要になれば、分析に要する時間を短縮することも可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施の態様である自動分析装置は、複数の反応容器が周方向に配置され、間欠回転可能な反応ディスクと、光源と光度計とを含み、光源と光度計との間を反応ディスクに配置された反応容器が通過するように配置された光検出系と、光度計データ処理部とを有し、光検出系は、反応容器に収容された測定対象に光源より光を照射し、測定対象を透過した透過光を受光する透過光検知器と、反応容器に収容された測定対象に光源より光を照射し、測定対象により散乱した散乱光を受光する散乱光検知器とを備え、光度計データ処理部は、反応ディスクが回転することにより光源からの光を測定対象に対して走査して得られる、透過光検知器からの第1の走査波形データ及び散乱光検知器からの第2の走査波形データを取得する波形取得部と、第1の走査波形データ及び第2の走査波形データを用いて、測定対象中の気泡の有無、及び気泡が存在する場合に、第2の走査波形データにおける気泡の影響を受ける区間を特定するデータ処理部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
測定対象の散乱光量を気泡の影響を除いて測定し、分析の精度および信頼性を向上することができる。
【0014】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】光検出系と光度計データ処理部の構成例である。
【
図3】反応容器内に気泡が存在する場合の走査波形(散乱光)の例である。
【
図4】反応容器内に気泡が存在する場合の走査波形(散乱光)の例である。
【
図5】反応容器内に気泡が存在する場合の走査波形(散乱光及び透過光)の例である。
【
図6】反応容器内に気泡が存在する場合の走査波形(散乱光及び透過光)の例である。
【
図7】気泡のない波形区間を決定するためのフローチャートである。
【
図8A】気泡が存在する波形区間を判定する閾値設定方法を説明するための図である。
【
図8B】気泡が存在する波形区間を判定する閾値設定方法を説明するための図である。
【
図9】
図5の走査波形に対して平均値及び閾値を追記した図である。
【
図10】
図6の走査波形に対して平均値及び閾値を追記した図である。
【
図11A】気泡のない波形区間を決定するためのフローチャートである。
【
図11B】気泡のない波形区間を決定するためのフローチャートである。
【
図11C】気泡のない波形区間を決定するためのフローチャートである。
【
図12A】差分閾値設定方法を説明するための図である。
【
図12B】差分閾値設定方法を説明するための図である。
【
図13】
図11A~Cのフローチャートにより、走査波形(散乱光及び透過光)から気泡のない波形区間を決定する手順を説明するための図である。
【
図14】
図11A~Cのフローチャートにより、走査波形(散乱光及び透過光)から気泡のない波形区間を決定する手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は自動分析装置の全体構成図である。自動分析装置1は、主要な構成として反応ディスク(反応容器保持機構)30と、サンプルディスク10と、試薬ディスク(試薬容器保持機構)20と、光源40と、光度計41と、コンピュータ54とを備える。
【0017】
反応ディスク30は間欠回転可能であり、この反応ディスク30上に透光性材料からなる多数の反応容器31が周方向に沿って配置されている。反応容器31は、恒温槽32により所定温度(例えば37℃)に維持されている。
【0018】
サンプルディスク10上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器11が、図示の例では二重に周方向に沿って載置されている。また、サンプルディスク10の近傍には、サンプル分注機構(試料分注機構)16が配置されている。このサンプル分注機構16は、可動アーム15とこれに取り付けられたピペットノズル17とを備えている。上記構成により、サンプル分注機構16は、サンプル分注時にはピペットノズル17が可動アーム15により分注位置に移動して、サンプルディスク10の吸入位置に位置する検体容器11から所定量のサンプルを吸入し、そのサンプルを反応ディスク30上の吐出位置にある反応容器31内に吐出する。
【0019】
試薬ディスク20は、試薬保冷庫22が周方向に沿って配置されている。この試薬保冷庫22には、バーコードのような試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の試薬ボトル21が、試薬ディスク20の周方向に沿って載置されている。試薬ボトル21には、自動分析装置1により分析され得る分析項目に対応する試薬液が収容されている。また、各試薬保冷庫22にはバーコード読み取り装置27が付属されており、バーコード読み取り装置27が試薬登録時に各試薬ボトル21の外壁に表示されているバーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、試薬ディスク20上のポジションとともにメモリ53に登録される。
【0020】
試薬ディスク20の近傍には、サンプル分注機構16と概ね同様の機構を有する試薬分注機構25が配置されている。試薬分注時には、試薬分注機構25が備えるピペットノズルにより、反応ディスク30上の試薬受け入れ位置に位置付けられる反応容器31の検査項目に応じた試薬ボトル21から試薬液を吸入し、該当する反応容器31内へ吐出する。
【0021】
反応ディスク30、試薬ディスク20および試薬分注機構25に囲まれる位置に、攪拌機構36が配置されている。反応容器31内に収容されたサンプルと試薬との混合液は、この攪拌機構36により攪拌されて反応が促進される。
【0022】
散乱光検知器43および透過光検知器42から構成される光度計41は反応ディスク30の外周側に配置され、光源40は反応ディスク30の中心部付近に配置されている。攪拌を終えた反応容器31の列は、光源40と光度計41とによって挟まれた測光位置を通るように回転移動する。光源40と光度計41とにより、光検出系が構成される。各反応容器31内のサンプルと試薬との反応液は、反応ディスク30の回転動作中に光度計41の前を横切る度に測光される。サンプル毎に測定された透過光と散乱光のアナログ信号は、光度計データ処理部2に入力される。光度計データ処理部2は波形取得部49、データ処理部48、データ記憶部47を有している。測定が終了した反応容器31は、反応ディスク30の近傍に配置された反応容器洗浄機構38により、その内部が洗浄されることにより繰り返しの使用が可能にされている。
【0023】
次に、自動分析装置1の制御系及び信号処理系について簡単に説明する。コンピュータ54は、インターフェース50を介して、サンプル分注制御部19、試薬分注制御部29、光度計データ処理部2に接続されている。コンピュータ54は、サンプル分注制御部19に対して指令を送り、サンプルの分注動作を制御する。また、コンピュータ54は、試薬分注制御部29に対して指令を送り、試薬の分注動作を制御する。
【0024】
インターフェース50には、印字するためのプリンタ56、記憶装置であるメモリ53や外部出力メディア55、操作指令等を入力するための入力装置52、画面表示するための表示装置51が接続されている。メモリ53は、例えばハードディスクメモリまたは外部メモリにより構成される。メモリ53には、各操作者のパスワード、各画面の表示レベル、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、分析結果等の情報が記憶される。
【0025】
次に、自動分析装置1におけるサンプルの分析動作を説明する。自動分析装置1によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めキーボード等の入力装置52を介して入力されておリ、メモリ53に記憶されている。操作者は、表示装置51の操作機能画面を用いて各サンプルに依頼されている検査項目を選択する。この際に、患者IDなどの情報も入力装置52から入力される。各サンプルに対して指示された検査項目を分析するため、サンプル分注機構16のピペットノズル17は、分析パラメータに従って、検体容器11から反応容器31へ所定量のサンプルを分注する。
【0026】
サンプル(試料)が分注された反応容器31は、反応ディスク30の回転によって移送され、試薬受け入れ位置に停止する。試薬分注機構25のピペットノズルは、該当する検査項目の分析パラメータに従って、反応容器31に所定量の試薬液を分注する。サンプルと試薬の分注順序は、この例とは逆に、サンプルより試薬が先であってもよい。その後、攪拌機構36により、サンプルと試薬との攪拌が行われ、混合される。
【0027】
この反応容器31が、測光位置を横切る時、光度計41により反応液の透過光と散乱光が測光される。測光された透過光と散乱光は、光度計データ処理部2の波形取得部49により光量に比例した数値データに変換され、データ処理部48にて測定対象の光量データを抽出後、インターフェース50を経由して、コンピュータ54に取り込まれる。波形取得部49により取得された数値データは、データ処理部48を介してデータ記憶部47に保存することもできる。データ処理部48とデータ記憶部47における処理はコンピュータ54およびメモリ53にておこなってもよい。
【0028】
この変換された数値を用い、検査項目毎に指定された分析法により予め測定しておいた検量線に基づき、濃度データが算出される。各検査項目の分析結果としての成分濃度データは、プリンタ56や表示装置51の画面に出力される。
【0029】
図2は自動分析装置1における光検出系と光度計データ処理部2の構成例を示す模式図である。光源40からの照射光は、反応容器31に収容された試料と試薬との混合溶液である測定対象132に照射される。照射される透過光は、光軸121上に配置された透過光検知器42により受光される。測定対象132からの散乱光は、光軸121に対して透過光検知器42とは異なる角度で配置される散乱光検知器43により受光される。透過光検知器42と散乱光検知器43とは、測定対象132に対する走査位置が同じとなるように同期されており、波形取得部49はそれぞれの走査波形を取得する。具体的には、透過光検知器42が散乱光検知器43の鉛直線上に配置される、あるいは透過光検知器42が散乱光検知器43に対して光軸121の走査軌道方向にずれて配置されていれば、そのずれを補償するようデータ処理を行ってもよい。データ処理部48は、波形取得部49が取り込んだデータ(走査波形)から、気泡の存在する区間を判定するデータ処理を実行する。また、波形取得部49にて取得したデータは任意にデータ記憶部47に保存され、この場合、データ処理部48は、データ記憶部47から過去の波形データにアクセスすることが可能である。
【0030】
なお、自動分析装置では透過光に基づく分析を行うための透過光検知器を有している場合もあるが、一般に、透過光に基づく分析に用いる光と散乱光に基づく分析に用いる光とは異なっており、光源も通常、別の光源が用いられる。本実施例における透過光検知器42は、散乱光検知器43用の光源40からの光を受光するように設けられる透過光検知器である。
【0031】
まず、自動分析装置1の光検出系において、反応容器31内に気泡が存在することによる、走査波形への影響を説明する。
【0032】
図3は、測定対象132において、気泡101が検知器から見て反応容器31の右側、かつ光軸軌道122上に存在する場合の例を示している。ここでは光源40の光軸121が反応ディスク30の回転により反応容器31上を走査する軌道を、光軸軌道122と称している。上段が側面図であり、中段が正面図、下段が散乱光検知器43において取得される走査波形(散乱光)151である。この場合、気泡101が存在しなければ光軸121上を透過する光が、気泡101の存在により他方向へ散乱する。これにより、散乱光検知器43の走査波形151において、気泡101による散乱光の影響を受けて散乱光の強度が増大する領域が表れる。走査波形151において、気泡101の影響が表れている領域を区間B、それ以外の領域を区間Aとすると、区間Bの散乱光強度は区間Aよりも大きい。
【0033】
図4は、測定対象132において、気泡102が検知器から見て反応容器31の左側、かつ光軸軌道122から上方向にずれた位置に存在する場合の例を示している。上段が側面図であり、中段が正面図、下段が散乱光検知器43において取得される走査波形(散乱光)153である。気泡102が存在しなければ散乱光検知器43に入射する光が、気泡102の存在により他方向へ散乱する。これにより、散乱光検知器43の走査波形153において、気泡102による散乱光の影響を受けて散乱光の強度が減少する領域が表れる。走査波形153において、気泡102の影響が表れている領域を区間C、それ以外の領域を区間Dとすると、区間Cの散乱光強度は区間Dよりも小さい。
【0034】
このように、
図3と
図4の場合で気泡の位置が異なるにも関わらず、散乱光検知器43において取得される走査波形151と走査波形153とは、同様の光量推移を示す。
【0035】
図5に、
図3の気泡位置はそのままに測定対象132を濃度Xの測定対象132xに、
図6に、
図4の気泡位置はそのままに測定対象132を濃度Y(濃度Y>濃度X)の測定対象132yに変更した場合の例を示す。
図5の左上段が側面図であり、左下段が正面図、右上段が散乱光検知器43において取得される走査波形(散乱光)151xであり、右下段が透過光検知器42において取得される走査波形(透過光)161である。また、
図6の左上段が側面図であり、左下段が正面図、右上段が散乱光検知器43において取得される走査波形(散乱光)153yであり、右下段が透過光検知器42において取得される走査波形(透過光)163である。
【0036】
測定対象の濃度が変化することにより、走査波形(散乱光)151x、走査波形(散乱光)153yはそれぞれ濃度変化に対応する散乱光量のシフトが生じる。この結果、走査波形(散乱光)151xと走査波形(散乱光)153yとは、波形推移のみでなく、散乱光量の大きさも同程度となり、その結果、この例では両者はほぼ同等の波形となってしまっている。このように、散乱光検知器43の走査波形のみから、気泡の存在する区間を決定することはできない。
【0037】
一方、
図5、
図6のように散乱光検知器43の走査波形がほぼ同様な場合であっても、透過光検知器42の走査波形には違いが現れる。
図5の場合、気泡101が存在しなければ透過光検知器42へ入射される光が、気泡101の存在により他方向へ散乱する。これにより、透過光検知器42の走査波形161において、気泡101の存在する領域(区間B)においては、気泡の存在しない領域(区間A)に比べて、気泡101による散乱の影響を受けて透過光の強度が減少する。これに対して、
図6の場合、気泡102が存在しなければ散乱光検知器43に入射する光が、気泡102の存在により他方向へ散乱され、その一部が透過光検知器42に入射する。しかし、光軸121に沿って透過光検知器42に入射される光量は、気泡102による散乱によって透過光検知器42に入射する光量に比較して大きく、気泡102の存在する領域(区間C)における透過光検知器42の受光量と存在しない領域(区間D)における透過光検知器42の受光量にはほとんど変化がない。
【0038】
以上をまとめると、透過光検知器42の前方に気泡がある場合、透過光検知器42への入射光は気泡により散乱することで、気泡がない区間と比べて光量は減少する一方、散乱光検知器43への入射光は気泡による散乱光の影響を受け、気泡がない区間と比べて光量は増加する。これに対して、散乱光検知器43の前方に気泡がある場合、散乱光検知器43への入射光は気泡により散乱することで、気泡がない区間と比べて光量は減少する一方、透過光検知器42への入射光は透過光が極めて大きく、気泡による散乱光による影響は無視できる。本実施例では、透過光検知器42の走査波形と散乱光検知器43のこの走査波形との波形推移の違いに基づき、反応容器31内の気泡の存在する領域を決定する。
【0039】
図7に濃度が既知である測定対象に対して、走査波形から気泡の影響がない波形区間を決定するフローチャートを示す。このためには、気泡に起因する光量の増加もしくは減少の判定を、あらかじめ定めた閾値を用いて行う。データ処理部48は、これら閾値をあらかじめ記憶しておく。測定対象の濃度が既知である場合としては、キャリブレーションあるいはブランク測定の場合が挙げられる。キャリブレーションの場合は、検量線を作成するため既知濃度の標準物質についての測定を行い、ブランク測定では反応容器31に純水を入れて測定を行う。閾値設定の例を以下に示す。
図8Aは気泡のない測定対象に対する散乱光検知器43の走査波形171であり、
図8Bは気泡のない測定対象に対する透過光検知器42の走査波形173である。まず、各検知器の走査波形において変動幅Vを計算する。散乱光検知器43で検知した散乱光量の変動幅V
Aの最大値と平均値A
Aとの差を3倍して、平均値A
Aに足した値を上限閾値Th
AU、変動幅V
Aの最小値と平均値A
Aとの差を3倍し、平均値A
Aから引いた値を下限閾値Th
ALとする。同様に、透過光検知器42で検知した透過光量の変動幅V
B及び平均値A
Bに基づき、上限閾値Th
BUおよび下限閾値Th
BLを決定する。なお、上記は一例であり、実際に検出したい気泡に起因する光量の振幅の上限、下限に基づき決定してもよい。
【0040】
反応容器31において
図5に示した位置に気泡が存在した場合を例に、
図7のフローチャートにより気泡の存在する波形区間を決定する手順を説明する。
図9は
図5に示した走査波形に対して、濃度Xでの散乱光量(透過光量)の平均値A
A(A
B)、上限閾値Th
AU(Th
BU)、下限閾値Th
AL(Th
BL)を追記したものである。
【0041】
はじめに、波形取得部49により透過光検知器42および散乱光検知器43により測定対象の走査波形が取得されると、データ処理部48は気泡のない波形区間の決定を開始する(S100)。
【0042】
まず、透過光量の走査波形161を下限閾値ThBLと比較し(S101)、区間Bが下限閾値ThBL以下であるので、区間Bに透過光量減少フラグFlg1を付与する(S102)。続いて、散乱光量の走査波形151xを下限閾値ThALと比較し(S103)、下限閾値ThAL以下の区間はないのでステップS105に移行する。走査波形151xを上限閾値ThAUと比較し、区間Bが上限閾値ThAU以上であるので、区間Bに散乱光量増加フラグFlg4を付与する(S106)。
【0043】
続いて、ステップS107において、区間Bが透過光量減少フラグFlg1と散乱光量増加フラグFlg4の両者が付与された区間であるので、区間Bが気泡の存在する波形区間として抽出し、走査波形のデータより、該当波形区間(ここでは区間B)のデータを除去する(S108)。なお、ステップS107において、透過光量減少フラグFlg1が付与された区間と散乱光量増加フラグFlg4が付与された区間とは、ほぼ重なることが期待されるが、実際には区間の両端にはずれが生じると考えられる。この場合は、透過光量減少フラグFlg1または散乱光量増加フラグFlg4のいずれかが付与された区間は気泡の影響が表れているといえるため、いずれかのフラグが付与されていれば除去の対象とすることが望ましい。続いて、ステップS109において散乱光量減少フラグFlg3が付与された区間はないため、ステップS111に移行し、残った波形区間Aを気泡のない波形区間として決定する。
【0044】
これに対し、反応容器31において
図6に示した位置に気泡が存在した場合を例に、
図7のフローチャートにより気泡の存在する波形区間を決定する手順を説明する。
図10は
図6に示した走査波形に対して、濃度Yでの散乱光量(透過光量)の平均値A
A(A
B)、上限閾値Th
AU(Th
BU)、下限閾値Th
AL(Th
BL)を追記したものである。
【0045】
はじめに、波形取得部49により透過光検知器42および散乱光検知器43により測定対象の走査波形が取得されると、データ処理部48は気泡のない波形区間の決定を開始する(S100)。
【0046】
まず、透過光量の走査波形163を下限閾値ThBLと比較し(S101)、上限閾値ThBL以下の区間はないので、ステップS103に移行する。ステップS103では、散乱光量の走査波形153yを下限閾値ThALと比較し、区間Cが下限閾値ThAL以下であるので、区間Cに散乱光量減少フラグFlg3を付与する(S104)。続いて、走査波形153yを上限閾値ThAUと比較し(S105)、上限閾値ThAU以上の区間はないのでステップS107に移行する。
【0047】
ステップS107において、透過光量減少フラグFlg1と散乱光量増加フラグFlg4の両者が付与された区間がないためステップS109に移行し、区間Cが散乱光量減少フラグFlg3の付与された区間であるので、区間Cが気泡の存在する波形区間として抽出し、走査波形のデータより、該当波形区間(ここでは区間C)のデータを除去し(S110)、残った波形区間Dを気泡のない波形区間として決定する(S111)。
【0048】
図11A~Cに濃度が未知である測定対象に対して、走査波形から気泡がない波形区間を決定するフローチャートを示す。この場合、
図7のフローと異なり、濃度が未知であるためにあらかじめ閾値を定めておくことができない。このため、
図7のフローに加えて、気泡がない波形区間を判定するための閾値を設定するフローが含まれている。測定対象の濃度が未知である場合としては、検体に対する分析における測定の場合が挙げられる。
【0049】
図12Aに示す気泡がない測定対象に対する散乱光検知器43の走査波形271において、前後のサンプリング位置における散乱光量の差分dを計算し、
図12Bに示す差分波形272を求める。測定対象において気泡がない場合、差分波形272の光量推移は位置や測定対象の濃度によらずほぼ一定であるため、受光波形の前後位置のデータで差分は極めて小さくなる。そこで、散乱光検知器43で検知した散乱光量の差分の変動幅DV
Aの最大値を3倍した値を差分上限閾値DTh
AU、変動幅DV
Aの最小値を3倍した値を差分下限閾値DTh
ALとする。
【0050】
データ処理部48はこれら閾値を検体に対する分析に先立ってあらかじめ記憶しておく。散乱光量の差分dの要因は、バックグラウンドノイズに加えて、反応容器31の歪みや傷によるものと考えられる。バックグラウンドノイズはほぼ一定であると想定される一方、反応容器31の歪みや傷は異常値として現れるため、これら異常値の影響を除いて閾値を求めればよい。さらに、各反応容器31に対してブランク測定を行った結果に基づき、これらの閾値を算出することが望ましい。例えば、ブランク測定ごとにこれらの閾値を算出して更新することにより、判定を高精度に保つことができる。また、これら閾値を反応容器31ごとに記憶することによっても、判定を高精度に保つことができる。
【0051】
反応容器31において
図5に示した位置に気泡が存在した場合(ただし、測定対象の濃度は未知)を例に、
図11A~Cのフローチャートにより気泡の存在する波形区間を決定する手順を説明する。
図13の左上段に散乱光検知器43の走査波形151、
図13の左下段に透過光検知器42の走査波形161を示している。それぞれに対して、測定対象の濃度での散乱光量(透過光量)の平均値A
A(A
B)、上限閾値Th
AU(Th
BU)、下限閾値Th
AL(Th
BL)を付記している。ただし、この場合、測定対象の濃度が未知であるため、これらの値も未知である。
【0052】
はじめに、波形取得部49により透過光検知器42および散乱光検知器43により測定対象の走査波形が取得されると、データ処理部48は気泡のない波形区間の決定を開始する(S200)。
【0053】
散乱光検知器43の走査波形151から差分波形152を計算する(S201)。得られた差分波形152を
図13の右上段に示す。散乱光の差分波形を差分上限閾値DTh
AUおよび差分下限閾値DTh
ALと比較し、これを超える区間を求め、波形データの除去区間とする。
図13の右上段の差分波形152において、除去区間は網掛けして示している。なお、
図13の右中段、右下段の散乱光波形、透過光波形についても同様である。
【0054】
続いて、透過光の走査波形から差分上限閾値・下限を超える波形区間(除去区間)を除去する(S203)。この状態を
図13の右下段に示す。同様に散乱光の走査波形から差分上限閾値・下限を超える波形区間(除去区間)を除去する(S204)。除去区間が除去された散乱光の走査波形を
図13の右中段に示す。
【0055】
除去区間が除去された透過光の走査波形における連続する波形区間について、それぞれ平均値を計算する(S205)。この例では、2箇所の連続する波形区間を有するため、平均値203,204が計算される。計算された平均値203,204の中で最も値の大きな平均値203を透過光の走査波形の平均値ABとする(S206)。光源と透過光検知器42との間を遮るように気泡が存在していれば透過光量は低下するためである。
【0056】
続いて、透過光量の下限閾値Th
BLを設定する(S207)。具体的には、
図8Bと同様に、平均値A
Bとした平均値203を算出した透過光の連続波形区間における変動幅Vを求め、平均値A
B及び変動幅Vに基づき、透過光量の下限閾値Th
BLを設定することができる。
【0057】
続いて、透過光の走査波形161(
図13の左下欄)を下限閾値Th
BLと比較し(S208)、区間Bが下限閾値Th
BL以下であるので区間Bに透過光量減少フラグFlg1を付与する(S209)。続いて、散乱光の残った連続区間のうち、透過光量減少フラグFlg1の付与された区間を除去する(S210)。この場合は、区間Bに含まれる連続区間が以降の処理から除外される。
【0058】
除去区間及び透過光量減少フラグFlg1の付与された区間が除去された散乱光の走査波形における連続する波形区間について、それぞれ平均値を計算し(S211)、計算された平均値の中で最も値の大きな平均値を散乱光の走査波形の平均値A
Aとする(S212)。光源と散乱光検知器43との間を遮るように気泡が存在していれば散乱光量は低下するためである。この例では、
図13の右中段に示すように、残る連続区間は1箇所であるので、当該連続区間の平均値201が散乱光の走査波形の平均値A
Aとなる。
【0059】
続いて、散乱光量の上限閾値Th
AUおよび下限閾値Th
ALを設定する(S213)。具体的には、
図8Aと同様に、平均値A
Aとした平均値201を算出した散乱光の連続波形区間における変動幅Vを求め、平均値A
A及び変動幅Vに基づき、散乱光量の上限閾値Th
AUおよび下限閾値Th
ALを設定することができる。
【0060】
以上により、測定対象の散乱光量(透過光量)の平均値A
A(A
B)、上限閾値Th
AU、下限閾値Th
AL(Th
BL)が算出された。ステップS214において散乱光の走査波形151(
図13の左上段)を下限閾値Th
ALと比較し、下限閾値Th
AL以下の波形区間はないのでステップS216に移行し、区間Bが上限閾値Th
AU以上であるので、区間Bに散乱光量増加フラグFlg4を付与する(S217)。
【0061】
続いて、ステップS218において、区間Bが透過光量減少フラグFlg1と散乱光量増加フラグFlg4の両者が付与された区間であるので、区間Bが気泡の存在する波形区間として抽出し、走査波形のデータより、該当波形区間(ここでは区間B)のデータを除去する(S219)。続いて、ステップS220において散乱光量減少フラグFlg3が付与された区間はないため、ステップS222に移行し、残った波形区間Aを気泡のない波形区間として決定する。
【0062】
これに対し、反応容器31において
図6に示した位置に気泡が存在した場合を例に、
図11A~Cのフローチャートにより気泡の存在する波形区間を決定する手順を説明する。
図14の左上段に散乱光検知器43の走査波形153、
図14の左下段に透過光検知器42の走査波形163を示している。それぞれに対して、測定対象の濃度での散乱光量(透過光量)の平均値A
A(A
B)、上限閾値Th
AU(Th
BU)、下限閾値Th
AL(Th
BL)を付記している。ただし、この場合、測定対象の濃度が未知であるため、これらの値も未知である。
【0063】
はじめに、波形取得部49により透過光検知器42および散乱光検知器43により測定対象の走査波形が取得されると、データ処理部48は気泡のない波形区間の決定を開始する(S200)。
【0064】
散乱光検知器43の走査波形153から差分波形154を計算する(S201)。得られた差分波形154を
図14の右上段に示す。散乱光の差分波形を差分上限閾値DTh
AUおよび差分下限閾値DTh
ALと比較し、これを超える区間を求め、波形データの除去区間とする。
図14の右上段の差分波形154において、除去区間は網掛けして示している。なお、
図14の右中段、右下段の散乱光波形、透過光波形についても同様である。
【0065】
続いて、透過光の走査波形から差分上限閾値・下限を超える波形区間(除去区間)を除去する(S203)。この状態を
図14の右下段に示す。同様に散乱光の走査波形から差分上限閾値・下限を超える波形区間(除去区間)を除去する(S204)。除去区間が除去された散乱光の走査波形を
図14の右中段に示す。
【0066】
除去区間が除去された透過光の走査波形における連続する波形区間について、それぞれ平均値を計算する(S205)。この例では、2箇所の連続する波形区間を有するため、平均値207,208が計算される。計算された平均値207,208の中で最も値の大きな平均値207を透過光の走査波形の平均値ABとする(S206)。光源と透過光検知器42との間を遮るように気泡が存在していれば透過光量は低下するためである。
【0067】
続いて、透過光量の下限閾値Th
BLを設定し(S207)、透過光の走査波形163(
図14の左下欄)を下限閾値Th
BLと比較し(S208)、下限閾値Th
BL以下の波形区間はないのでステップS211に移行する。
【0068】
除去区間及び透過光量減少フラグFlg1の付与された区間が除去された散乱光の走査波形における連続する波形区間について、それぞれ平均値を計算し(S211)、計算された平均値の中で最も値の大きな平均値を散乱光の走査波形の平均値A
Aとする(S212)。光源と散乱光検知器43との間を遮るように気泡が存在していれば散乱光量は低下するためである。この例では、
図14の右中段に示すように、残る連続区間は2箇所であるので、平均値205,206が計算され、平均値205,206の中で最も値の大きな平均値206が散乱光の走査波形の平均値A
Aとなる。
【0069】
続いて、散乱光量の上限閾値ThAUおよび下限閾値ThALを設定する(S213)。以上により、測定対象の散乱光量(透過光量)の平均値AA(AB)、上限閾値ThAU、下限閾値ThAL(ThBL)が算出された。
【0070】
ステップS214において散乱光の走査波形153(
図14の左上段)を下限閾値Th
ALと比較し、区間Cが下限閾値Th
AL以下であるので、区間Cに散乱光量減少フラグFlg3を付与する(S215)。一方、上限閾値Th
AU以上の波形区間はない(S216)のでステップS218に移行する。
【0071】
ステップS218において、透過光量減少フラグFlg1と散乱光量増加フラグFlg4の両者が付与された区間はないためステップS220に移行し、区間Cが散乱光量減少フラグFlg3の付与された区間であるため、区間Cが気泡の存在する波形区間として抽出し、走査波形のデータより、該当波形区間(ここでは区間C)のデータを除去する(S221)。続いて、ステップS222に移行し、残った波形区間Dを気泡のない波形区間として決定する。
【0072】
自動分析装置1は、このように散乱光検知器43が検知した散乱光の走査波形から気泡の影響の受けていない区間を抽出し、抽出した波形データを用いて散乱光量に基づく分析を行うことにより、気泡の影響のない分析を行うことにより、分析の精度および信頼性を高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1:自動分析装置、2:光度計データ処理部、10:サンプルディスク、11:検体容器、15:可動アーム、16:サンプル分注機構、17:ピペットノズル、19:サンプル分注制御部、20:試薬ディスク、21:試薬ボトル、22:試薬保冷庫、25:試薬分注機構、27:バーコード読み取り装置、29:試薬分注制御部、30:反応ディスク、31:反応容器、32:恒温槽、36:攪拌機構、38:反応容器洗浄機構、40:光源、41:光度計、42:透過光検知器、43:散乱光検知器、47:データ記憶部、48:データ処理部、49:波形取得部、50:インターフェース、51:表示装置、52:入力装置、53:メモリ、54:コンピュータ、55:外部出力メディア、56:プリンタ、101,102:気泡、121:光軸、122:光軸軌道、132:測定対象、151,153,171,271:散乱光走査波形、161,163,173:透過光走査波形、152,154,272:差分波形、201,203,204,205,206,207,208:平均値。