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特許7229682ループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム
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  • 特許-ループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】ループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/117 20140101AFI20230220BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20230220BHJP
   H04N 19/134 20140101ALI20230220BHJP
   H04N 19/82 20140101ALI20230220BHJP
【FI】
H04N19/117
H04N19/176
H04N19/134
H04N19/82
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018126009
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020005228
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 真也
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰子
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】神田 菊文
【審査官】田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0160239(US,A1)
【文献】特開2015-216626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0156332(US,A1)
【文献】Chih-Ming Fu, et.al.,Sample Adaptive Offset in the HEVC Standard,IEEE Transactions on Circuits and Systems for Video Technology,2012年11月05日,Volume: 22, Issue: 12,pp.1755-1764
【文献】Yu-Wen Huang, et.al.,In-Loop Adaptive Restoration[online], JCTVC-B JCTVC-B077,インターネット<URL:http://phenix.it-sudparis.eu/jct/doc_end_user/documents/20_Geneva/wg11/JCTVC-B077.zip>,2012年10月01日,1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/12
H04N 19/00 - 19/98
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行き情報が付加された2次元画像に対してブロック単位で処理を行う画像処理装置のループフィルタを制御するループフィルタ制御装置であって、
前記奥行き情報に基づいて、前記2次元画像内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第1エッジ判定部と、
前記2次元画像に基づいて、前記ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第2エッジ判定部と、
前記第1エッジ判定部の判定結果及び前記第2エッジ判定部の判定結果に基づいて、前記2次元画像に対するループフィルタ処理を制御する制御部と、を備え
前記第2エッジ判定部は、前記第1エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、当該ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定す
ことを特徴とするループフィルタ制御装置。
【請求項2】
前記ループフィルタ処理は、デブロッキングフィルタ処理を含み、
前記制御部は、
前記第1エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定され、かつ、前記第2エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、前記デブロッキングフィルタ処理を適用するデブロッキングフィルタ制御部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のループフィルタ制御装置。
【請求項3】
前記ループフィルタ処理は、サンプルアダプティブオフセット処理を含み、
前記制御部は、
少なくとも前記第1エッジ判定部の判定結果に基づいて、前記サンプルアダプティブオフセット処理のモードを、エッジオフセット及びバンドオフセットを含む複数のモードの中から選択するモード選択部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のループフィルタ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のループフィルタ制御装置を備える
ことを特徴とする画像符号化装置。
【請求項5】
請求項1に記載のループフィルタ制御装置を備える
ことを特徴とする画像復号装置。
【請求項6】
コンピュータを請求項1に記載のループフィルタ制御装置として機能させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理技術に関し、特にループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、2次元画像と共に奥行き情報を容易に取得することができるカメラが増えてきている。代表的なものとして、赤外線センサーを用いたMicrosoft社製のKinectが挙げられ、将来的には2次元動画像と奥行き情報とがセットになった動画像が飛躍的に増加し、新たなサービスに応用されていくことが予想される。
【0003】
また、従来の2次元符号化の方式としてAVC/H.264やHEVC/H.265があり、その中に量子化処理によって生じる符号化歪み(ブロック歪み)を低減するデブロッキングフィルタが実装されている(例えば非特許文献1参照)。加えて、デブロッキングフィルタの処理の適用後にサンプルアダプティブオフセット(SAO)の処理が行われる。これらはループフィルタと呼ばれ、これらのフィルタを用いることで、視覚的な画質向上を実現でき、また予測画像への画質劣化の伝搬を防ぐことが可能になっている。
【0004】
また、特許文献1には、2次元動画像に付加された奥行き情報を用いて、デブロッキングフィルタの強度を設定するループフィルタ制御装置が記載されている。具体的には、かかるループフィルタ制御装置は、2つの隣接ブロックに含まれる奥行き情報を用いて、当該2つの隣接ブロックが同一のオブジェクト(被写体)に属するか否かを判定する。そして、同一のオブジェクトに属すると判定した場合、当該2つの隣接ブロックのブロック境界に対するデブロッキングフィルタのフィルタ強度を強くするよう設定する。
【0005】
また、特許文献2には、視点画像を符号化した際に発生するブロックノイズを目立たなくする画像符号化装置が記載されている。具体的には、奥行き画像について、視点画像を符号化する際の符号化単位に応じた画素値の分布を分析し、この分析結果に基づき、視点画像の符号化時に適用するデブロッキングフィルタのフィルタ強度を決定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Recommendation ITU-T H.265,(12/2016), “High efficiency video coding”, International Telecommunication Union
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-143515号公報
【文献】特開2013-110532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のループフィルタ制御装置は、2つの隣接ブロックが同一のオブジェクトに属しており、かつ、当該2つの隣接ブロックのブロック境界がエッジ領域である場合であっても、当該ブロック境界に対するデブロッキングフィルタのフィルタ強度を強く設定してしまう。これにより、当該エッジ領域がぼやけて画質の劣化が生じてしまう。
【0009】
このように、特許文献1に記載のループフィルタ制御装置は、エッジ領域の判定精度を高める点において改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明は、エッジ領域の判定精度を高めてループフィルタ処理を適切に制御可能としたループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の特徴に係るループフィルタ制御装置は、奥行き情報が付加された2次元画像に対してブロック単位で処理を行う画像処理装置のループフィルタを制御するループフィルタ制御装置であって、前記奥行き情報に基づいて、前記2次元画像内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第1エッジ判定部と、前記2次元画像に基づいて、前記ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第2エッジ判定部と、前記第1エッジ判定部の判定結果及び前記第2エッジ判定部の判定結果に基づいて、前記2次元画像に対するループフィルタ処理を制御する制御部と、を備えることを要旨とする。
【0012】
ここでエッジ領域とは、2次元画像中の画素値の変化が大きい領域(すなわち、2次元画像中で画素値が大きく切り替わる領域)をいい、ある程度の長さを有する。例えば、2次元画像中のオブジェクトと背景との境界や、2次元画像中のオブジェクト間の境界がエッジ領域であるが、同一のオブジェクト内にもエッジ領域は存在し得る。
【0013】
第1の特徴に係るループフィルタ制御装置によれば、奥行き情報に基づいてエッジ判定を行うことにより、例えばオブジェクトと背景との間のエッジ領域を正しく判定できる。また、2次元画像に基づいてエッジ判定を行うことにより、同一オブジェクト内のエッジ領域や、奥行きが同等なオブジェクト間のエッジ領域も正しく判定できるため、エッジ領域の判定精度を高めることが可能である。よって、第1の特徴に係るループフィルタ制御装置は、ループフィルタ処理をより適切に制御できる。
【0014】
第1の特徴に係るループフィルタ制御装置において、前記ループフィルタ処理は、デブロッキングフィルタ処理を含み、前記制御部は、前記第1エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定され、かつ、前記第2エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、前記デブロッキングフィルタ処理を適用するデブロッキングフィルタ制御部を備えてもよい。
【0015】
かかるループフィルタ制御装置によれば、デブロッキングフィルタ処理を適用すべきブロック境界を適切に限定することができるため、デブロッキングフィルタ処理の演算処理量を削減できる。
【0016】
第1の特徴に係るループフィルタ制御装置において、前記第2エッジ判定部は、前記第1エッジ判定部によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、当該ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定してもよい。
【0017】
かかるループフィルタ制御装置によれば、第2エッジ判定部が全てのブロック境界についてエッジ判定を行うのではなく一部のブロック境界についてのみエッジ判定を行えばよいため、第2エッジ判定部の処理負荷を削減できる。
【0018】
第1の特徴に係るループフィルタ制御装置において、前記ループフィルタ処理は、サンプルアダプティブオフセット処理を含み、前記制御部は、少なくとも前記第1エッジ判定部の判定結果に基づいて、前記サンプルアダプティブオフセット処理のモードを、エッジオフセット及びバンドオフセットを含む複数のモードの中から選択するモード選択部を備えてもよい。
【0019】
かかるループフィルタ制御装置によれば、サンプルアダプティブオフセット処理のモードを適切に選択できる。
【0020】
第2の特徴に係る画像符号化装置は、第1の特徴に係るループフィルタ制御装置を備えることを要旨とする。
【0021】
第3の特徴に係る画像復号装置は、第1の特徴に係るループフィルタ制御装置を備えることを要旨とする。
【0022】
第4の特徴に係るプログラムは、コンピュータを第1の特徴に係るループフィルタ制御装置として機能させることを要旨とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、エッジ領域の判定精度を高めてループフィルタ処理を適切に制御可能としたループフィルタ制御装置、画像符号化装置、画像復号装置、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態に係る画像符号化装置の構成を示す図である。
図2】実施形態に係る画像復号装置の構成を示す図である。
図3】実施形態に係るデブロッキングフィルタ処理を行うブロック境界を示す図である。
図4】実施形態に係るエッジオフセット処理の一例を示す図である。
図5】実施形態に係るループフィルタ制御部の構成を示す図である。
図6】実施形態に係るループフィルタ制御部の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して、一実施形態に係る画像符号化装置及び画像復号装置について説明する。本実施形態に係る画像符号化装置及び画像復号装置は、MPEGに代表される2次元動画像の符号化及び復号を行う。本実施形態において、かかる2次元動画像には奥行き情報が付加されている。本実施形態に係る画像符号化装置及び画像復号装置のそれぞれは、奥行き情報が付加された2次元画像に対してブロック単位で処理を行う画像処理装置に相当する。
【0026】
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0027】
<1.画像符号化装置の構成>
図1は、本実施形態に係る画像符号化装置1の構成を示す図である。
【0028】
図1に示すように、画像符号化装置1は、ブロック分割部100と、減算部110と、変換・量子化部120と、エントロピー符号化部130と、逆量子化・逆変換部140と、合成部150と、ループフィルタ160と、ループフィルタ制御部170と、メモリ180と、予測部190とを備える。
【0029】
ブロック分割部100は、動画像を構成するフレーム(或いはピクチャ)単位の入力画像をブロック状の小領域に分割し、分割により得たブロックを減算部110に出力する。ブロックのサイズは、例えば32×32画素、16×16画素、8×8画素、又は4×4画素等である。ブロックの形状は正方形に限らず、長方形であってもよい。ブロックは、画像符号化装置1が符号化を行う単位及び画像復号装置2が復号を行う単位である。HEVC/H.265の場合、ブロック分割部100は、入力画像を符号化ツリーユニット(CTU)というブロックに分割した後、各CTUを符号化ユニット(CU)というブロックに分割する。
【0030】
減算部110は、ブロック分割部100から入力されたブロックと当該ブロックを予測部190が予測して得た予測画像(予測ブロック)との間の画素単位での差分を示す予測残差を算出する。具体的には、減算部110は、ブロックの各画素値から予測画像の各画素値を減算することにより予測残差を算出し、算出した予測残差を変換・量子化部120に出力する。
【0031】
変換・量子化部120は、ブロック単位で直交変換処理及び量子化処理を行う。変換・量子化部120は、変換部121と、量子化部122とを備える。
【0032】
変換部121は、減算部110から入力された予測残差に対して直交変換を行って変換係数を算出し、算出した変換係数を量子化部122に出力する。直交変換とは、例えば、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)や離散サイン変換(DST:Discrete Sine Transform)、カルーネンレーブ変換(KLT: Karhunen-Loeve Transform)等をいう。
【0033】
量子化部122は、変換部121から入力された変換係数を量子化パラメータ(Qp)及び量子化行列を用いて量子化し、量子化変換係数を生成する。量子化パラメータ(Qp)は、ブロック内の各変換係数に対して共通して適用されるパラメータであって、量子化の粗さを定めるパラメータである。量子化行列は、各変換係数を量子化する際の量子化値を要素として有する行列である。量子化部122は、生成した量子化変換係数情報及び量子化制御情報をエントロピー符号化部130及び逆量子化・逆変換部140に出力する。
【0034】
エントロピー符号化部130は、量子化部122から入力された量子化変換係数に対してエントロピー符号化を行い、データ圧縮を行って符号化データ(ビットストリーム)を生成し、符号化データを画像符号化装置1の外部に出力する。エントロピー符号化には、ハフマン符号やCABAC(Context-based Adaptive Binary Arithmetic Coding;コンテキスト適応型2値算術符号)等を用いることができる。なお、エントロピー符号化部130には、ループフィルタ160からフィルタ処理に関する制御情報が入力され、予測部190から予測に関する制御情報が入力される。エントロピー符号化部130は、これらの制御情報のエントロピー符号化も行う。
【0035】
逆量子化・逆変換部140は、ブロック単位で逆量子化処理及び逆直交変換処理を行う。逆量子化・逆変換部140は、逆量子化部141と、逆変換部142とを備える。
【0036】
逆量子化部141は、量子化部122が行う量子化処理に対応する逆量子化処理を行う。具体的には、逆量子化部141は、量子化部122から入力された量子化変換係数を、量子化パラメータ(Qp)及び量子化行列を用いて逆量子化することにより、変換係数を復元し、復元した変換係数を逆変換部142に出力する。
【0037】
逆変換部142は、変換部121が行う直交変換処理に対応する逆直交変換処理を行う。例えば、変換部121が離散コサイン変換を行った場合には、逆変換部142は逆離散コサイン変換を行う。逆変換部142は、逆量子化部141から入力された変換係数に対して逆直交変換を行って予測残差を復元し、復元した予測残差である復元予測残差を合成部150に出力する。
【0038】
合成部150は、逆変換部142から入力された復元予測残差を、予測部190から入力された予測画像と画素単位で合成する。合成部150は、復元予測残差の各画素値と予測画像の各画素値を加算してブロックを再構成(復号)し、再構成したブロック単位の再構成画像をループフィルタ160に出力する。かかる再構成画像は、復号画像(或いはローカル復号画像)と称されることがある。
【0039】
ループフィルタ160は、合成部150から入力された再構成画像に対して、後処理としてのフィルタ処理であるループフィルタ処理を行い、当該フィルタ処理後の再構成画像をメモリ180に出力する。また、ループフィルタ160は、ループフィルタ処理に関する情報をエントロピー符号化部130に出力する。
【0040】
ループフィルタ160は、デブロッキングフィルタ処理を行うデブロッキングフィルタ部161と、サンプルアダプティブオフセット(SAO)処理を行うSAO部162とを備える。デブロッキングフィルタ処理は、ブロック単位の処理に起因する信号劣化を軽減するための処理であって、隣接するブロックの境界における信号のギャップを平滑化する処理である。一方、SAO処理は、例えばHEVCで採用されている画質改善フィルタ処理であって、ブロック内の画素の隣接画素との相対的な関係により各画素をカテゴリ分けし、それぞれのカテゴリについて画質を向上させるためのオフセット値を算出し、同じカテゴリに属する各画素にオフセット値を付与する処理である。SAO処理の具体例については後述する。
【0041】
ループフィルタ制御部170は、ループフィルタ160を制御するループフィルタ制御装置に相当する。ループフィルタ制御部170の詳細については後述する。
【0042】
メモリ180は、ループフィルタ160から入力された再構成画像を記憶する。メモリ180は、再構成画像をフレーム単位で記憶する。メモリ180は、記憶している再構成画像を予測部190に出力する。
【0043】
予測部190は、ブロック単位で予測を行う。予測部190は、イントラ予測部191と、インター予測部192と、切替部193とを備える。
【0044】
イントラ予測部191は、メモリ180に記憶された再構成画像のうち、予測対象のブロックに隣接する復号済み参照画素を参照してイントラ予測画像を生成し、生成したイントラ予測画像を切替部193に出力する。また、イントラ予測部191は、予め規定された複数のイントラ予測モードの中から、対象ブロックに適用する最適なイントラ予測モードを選択し、選択したイントラ予測モードを用いてイントラ予測を行う。
【0045】
インター予測部192は、メモリ180に記憶された再構成画像を参照画像として用いて、ブロックマッチングなどの手法により動きベクトルを算出し、予測対象のブロックを予測するインター予測によりインター予測画像を生成し、生成したインター予測画像を切替部193に出力する。インター予測部192は、複数の参照画像を用いるインター予測(典型的には、双予測)や、1つの参照画像を用いるインター予測(片方向予測)の中から最適なインター予測方法を選択し、選択したインター予測方法を用いてインター予測を行う。
【0046】
切替部193は、イントラ予測部191から入力されるイントラ予測画像とインター予測部192から入力されるインター予測画像とを切り替えて、いずれかの予測画像を減算部110及び合成部150に出力する。
【0047】
<2.画像復号装置の構成>
図2は、本実施形態に係る画像復号装置2の構成を示す図である。
【0048】
図2に示すように、画像復号装置2は、エントロピー符号復号部200と、逆量子化・逆変換部210と、合成部220と、ループフィルタ230と、ループフィルタ制御部240と、メモリ250と、予測部260とを備える。
【0049】
エントロピー符号復号部200は、画像符号化装置1により生成された符号化データを復号し、量子化変換係数を逆量子化・逆変換部210に出力する。また、エントロピー符号復号部200は、予測(イントラ予測及びインター予測)に関する制御情報を取得し、取得した制御情報を予測部260に出力する。さらに、エントロピー符号復号部200は、ループフィルタ処理に関する制御情報を取得し、取得した制御情報をループフィルタ230に出力する。
【0050】
逆量子化・逆変換部210は、ブロック単位で逆量子化処理及び逆直交変換処理を行う。逆量子化・逆変換部210は、逆量子化部211と、逆変換部212とを備える。
【0051】
逆量子化部211は、画像符号化装置1の量子化部122が行う量子化処理に対応する逆量子化処理を行う。逆量子化部211は、エントロピー符号復号部200から入力された量子化変換係数を、量子化パラメータ(Qp)及び量子化行列を用いて逆量子化することにより、変換係数を復元し、復元した変換係数を逆変換部212に出力する。
【0052】
逆変換部212は、画像符号化装置1の変換部121が行う直交変換処理に対応する逆直交変換処理を行う。逆変換部212は、逆量子化部211から入力された変換係数に対して逆直交変換を行って予測残差を復元し、復元した予測残差(復元予測残差)を合成部220に出力する。
【0053】
合成部220は、逆変換部212から入力された予測残差と、予測部260から入力された予測画像とを画素単位で合成することにより、元のブロックを再構成(復号)し、ブロック単位の再構成画像をループフィルタ230に出力する。
【0054】
ループフィルタ230は、エントロピー符号復号部200から入力された制御情報に基づいて、合成部220から入力された再構成画像に対して、画像符号化装置1のループフィルタ160が行うループフィルタ処理と同様なループフィルタ処理を行い、当該フィルタ処理後の再構成画像をメモリ250に出力する。ループフィルタ230は、デブロッキングフィルタ処理を行うデブロッキングフィルタ部231と、SAO処理を行うSAO部232とを備える。
【0055】
ループフィルタ制御部240は、ループフィルタ230を制御するループフィルタ制御装置に相当する。ループフィルタ制御部240の詳細については後述する。
【0056】
メモリ250は、ループフィルタ230から入力された再構成画像を記憶する。メモリ250は、再構成画像をフレーム単位で記憶する。メモリ250は、フレーム単位の再構成画像(復号画像)を画像復号装置2の外部に出力する。
【0057】
予測部260は、ブロック単位で予測を行う。予測部260は、イントラ予測部261と、インター予測部262と、切替部263とを備える。
【0058】
イントラ予測部261は、メモリ250に記憶された再構成画像を参照し、エントロピー符号復号部200から入力された制御情報に従ってイントラ予測を行うことによりイントラ予測画像を生成し、生成したイントラ予測画像を切替部263に出力する。
【0059】
インター予測部262は、メモリ250に記憶された再構成画像を参照画像として用いて予測対象のブロックを予測するインター予測を行う。インター予測部262は、エントロピー符号復号部200から入力された制御情報(動きベクトル情報等)に従ってインター予測を行うことによりインター予測画像を生成し、生成したインター予測画像を切替部263に出力する。
【0060】
切替部263は、イントラ予測部261から入力されるイントラ予測画像とインター予測部262から入力されるインター予測画像とを切り替えて、いずれかの予測画像を合成部220に出力する。
【0061】
<3.デブロッキングフィルタ処理の一例>
デブロッキングフィルタ処理の一例として、HEVC/H.265におけるデブロッキングフィルタ処理について説明する。ここでは画像符号化装置1のデブロッキングフィルタ部161を例に挙げて説明するが、画像復号装置2のデブロッキングフィルタ部231も同様な動作を行う。
【0062】
図3は、デブロッキングフィルタ処理を行うブロック境界を示す図である。図3に示すように、デブロッキングフィルタ部161がデブロッキングフィルタ処理を行うブロックサイズは8×8画素である。デブロッキングフィルタ部161は、まずブロックごとに平滑化処理の強さを示す境界強度Bs(Boundary Strength)値を求める。Bs値は0,1,2のいずれかとする。
【0063】
表1に、Bs値を決定する方法を示す。
【0064】
【表1】
【0065】
図3及び表1に示すように、ブロックP又はQがイントラ予測を行うブロックである場合には、Bs値を2とする。ブロックP及びQがインター予測を行うブロックであり、且つ少なくとも以下の1つの条件を満たす場合には、Bs値を1とし、その他の場合には、Bs値を0とする。
・ブロックP又はQが有意な(非ゼロの)直交変換係数を含み、変換ユニットTUの境界であること。
・ブロックP及びQの動きベクトルの差の絶対値が1画素以上であること。
・ブロックP及びQの動きベクトルの数又は参照画像が異なること。
【0066】
デブロッキングフィルタ部161は、Bs値が0の場合にはフィルタ処理を行わない。以下、図3に示す垂直ブロック境界を例に説明する。
【0067】
また、デブロッキングフィルタ処理を行う際には、デブロッキングフィルタ部161は、下記の式(1)~(6)を全て満たす場合に強いフィルタを適用し、それ以外の場合に弱いフィルタを適用する。
【0068】
【数1】
【0069】
ここで、閾値β及びtの値は、隣接するブロックPとブロックQの量子化パラメータの平均値Qavに応じて変わる。
【0070】
なお、デブロッキングフィルタ部161がデブロッキングフィルタ処理を行う場合、その処理量は非常に多い。
【0071】
<4.SAO処理の一例>
SAO処理の一例として、HEVC/H.265におけるSAO処理について説明する。ここでは画像符号化装置1のSAO部162を例に挙げて説明するが、画像復号装置2のSAO部232も同様な動作を行う。
【0072】
SAO部162は、CTU単位でSAO処理を行い、画素ごとにオフセット値を加算することで画質を向上させる。SAOには4種類のエッジ方向に応じてオフセットを行うエッジオフセットと、32種類のバンドに分割した画素値のレンジに対してオフセットをかけるバンドオフセットの2種類のモードがある。SAO処理は、CTUごとに、エッジオフセット、バンドオフセット、又は非適用の切り替えが可能である。
【0073】
エッジオフセット処理は、ある画素cとそれに隣接する2つの画素b、cとに応じて、画素ごとに画素値を調整する処理である。かかる隣接2画素の配置については、図4に示すように4つの画素配列の候補(クラス)があり、このクラスから選択される。選択されたクラスに対して、隣接2画素との相対関係によって求められる4種類のカテゴリ(カテゴリ1乃至カテゴリ4)ごとにオフセットの絶対値が4つ与えられる。カテゴリ1及び2は画素値にオフセットを加算するものであり、カテゴリ3及び4は画素値からオフセットを減算するものである。
【0074】
バンドオフセット処理は、画素値の階調を32個のバンドに分割し、その中から画素値が連続する4つのバンドに属する画素に対して、バンドごとに設定したオフセット値により画素値を調整する処理である。
【0075】
エッジオフセットによれば、オフセット値の加減算により画素系列の平滑化処理を行うことになるため、エッジ周辺の変動を抑圧することにより、リンギング歪みを緩和できる。一方、バンドオフセットによれば、特定の連続する階調を補正することにより、グラデーション劣化を緩和できる。各モード(エッジオフセット、バンドオフセット)の選択が高精度に行われることで。更なる画質向上が見込まれる。
【0076】
<5.ループフィルタ制御部の構成>
図5は、本実施形態に係る画像符号化装置1のループフィルタ制御部170の構成を示す図である。画像復号装置2のループフィルタ制御部240は、画像符号化装置1のループフィルタ制御部170と同様な構成を有する。
【0077】
図5に示すように、ループフィルタ制御部170は、第1エッジ判定部171と、第2エッジ判定部172と、制御部173とを備える。
【0078】
第1エッジ判定部171には奥行き情報が入力される。奥行き情報とは、再構成画像中の各オブジェクトまでの距離(奥行き)を画素単位で数値化したものをいう。但し、奥行き情報は、画素単位での奥行きを表す場合に限らず、複数の画素からなるグループ単位での奥行きを表す情報であってもよい。
【0079】
第1エッジ判定部171は、入力された奥行き情報に基づいて、再構成画像内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定し、判定結果を第2エッジ判定部172及び制御部173に出力する。ここでエッジ領域とは、画像中の画素値の変化が大きい領域(すなわち、画像中で画素値が大きく切り替わる領域)をいい、ある程度の長さを有する。例えば、画像中のオブジェクトと背景との境界や、画像中のオブジェクト間の境界がエッジ領域であるが、同一のオブジェクト内にもエッジ領域は存在し得る。エッジ領域は画像中に元々存在する境界領域であるため、かかるエッジ領域に対してデブロッキングフィルタ処理を行うと、エッジがぼやけて画質劣化が生じる。
【0080】
なお、第1エッジ判定部171及び第2エッジ判定部172のそれぞれは、デブロッキングフィルタ部161がデブロッキングフィルタ処理を行うブロックサイズ(8×8画素)と同じサイズのブロックのブロック境界を対象としてエッジ領域を判定する。すなわち、第1エッジ判定部171及び第2エッジ判定部172がエッジ領域の判定対象とするブロック境界の位置は同じである。
【0081】
例えば、第1エッジ判定部171は、隣接する2つのブロックのブロック境界付近の複数の画素それぞれの奥行き情報に基づいて、当該複数の画素の奥行き情報の変動度合いを算出し、変動度合いが大きい場合に当該2つのブロックのブロック境界がエッジ領域であると判定する。或いは、第1エッジ判定部171は、隣接する2つのブロックのそれぞれについて奥行き情報の代表値を求めて、各ブロックの奥行き代表値の差が所定値以上である場合に、当該2つのブロックのブロック境界がエッジ領域であると判定してもよい。第1エッジ判定部171は、エッジ領域であると判定したブロック境界の位置を示す情報及び/又はエッジ領域でないと判定したブロック境界の位置を示す情報を第2エッジ判定部172及び制御部173に出力する。
【0082】
第2エッジ判定部172は、合成部150から入力された再構成画像(2次元画像)に基づいて、再構成画像内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定し、判定結果を制御部173に出力する。本実施形態において、第2エッジ判定部172は、第1エッジ判定部171によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、当該ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する。
【0083】
具体的には、第2エッジ判定部172は、隣接する2つのブロックのブロック境界付近の複数の画素それぞれの画素値(輝度値)に基づいて、当該複数の画素の画素値の変動度合いを算出し、変動度合いが大きい場合に当該2つのブロックのブロック境界がエッジ領域であると判定する。例えば、第2エッジ判定部172は、下記の式(7)が満たされない場合に、2つのブロックP及びQ(図3参照)のブロック境界がエッジ領域であると判定する。
【0084】
【数2】
【0085】
ここで、閾値βの値は、隣接するブロックPとブロックQの量子化パラメータの平均値Qavに応じて変わる。
【0086】
そして、第2エッジ判定部172は、エッジ領域であると判定したブロック境界の位置を示す情報及び/又はエッジ領域でないと判定したブロック境界の位置を示す情報を第2エッジ判定部172及び制御部173に出力する。
【0087】
制御部173は、第1エッジ判定部171の判定結果及び第2エッジ判定部172の判定結果に基づいて、再構成画像に対するループフィルタ処理を制御する。具体的には、制御部173は、デブロッキングフィルタ部161を制御するデブロッキングフィルタ制御部173aと、SAO部162におけるモードを選択するSAOモード選択部173bとを備える。
【0088】
デブロッキングフィルタ制御部173aは、第1エッジ判定部171によりエッジ領域ではないと判定され、かつ、第2エッジ判定部172によりエッジ領域ではないと判定されたブロック境界に対してのみ、デブロッキングフィルタ処理を適用する。
【0089】
すなわち、デブロッキングフィルタ制御部173aは、第1エッジ判定部171によりエッジ領域であると判定されたブロック境界に対してデブロッキングフィルタ処理を適用しないようデブロッキングフィルタ部161を制御する。また、デブロッキングフィルタ制御部173aは、第2エッジ判定部172によりエッジ領域であると判定されたブロック境界に対してデブロッキングフィルタ処理を適用しないようデブロッキングフィルタ部161を制御する。
【0090】
SAOモード選択部173bは、少なくとも第1エッジ判定部171の判定結果に基づいて、サンプルアダプティブオフセット処理のモードを、エッジオフセット及びバンドオフセットを含む複数のモードの中から選択する。
【0091】
例えば、SAOモード選択部173bは、CTU内のブロック境界のうちエッジ領域が占める割合が所定値(例えば、50%)よりも大きい場合に、当該CTUに対するSAO処理のモードとしてエッジオフセットを選択する。一方、SAOモード選択部173bは、CTU内のブロック境界のうちエッジ領域が占める割合が所定値以下である場合に、当該CTUに対するSAO処理のモードとしてバンドオフセットを選択する、又は当該CTUに対してSAO処理を適用しないことを選択してもよい。
【0092】
<6.ループフィルタ制御部の動作例>
図6は、本実施形態に係る画像符号化装置1のループフィルタ制御部170の動作例を示す図である。画像復号装置2のループフィルタ制御部240は、画像符号化装置1のループフィルタ制御部170と同様に動作する。
【0093】
図6に示すように、ステップS1において、第1エッジ判定部171は、奥行き情報に基づいて、再構成画像(2次元画像)内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定(取得)し、判定結果を第2エッジ判定部172及び制御部173に出力する。
【0094】
制御部173のデブロッキングフィルタ制御部173aは、奥行き情報に基づいてブロック境界がエッジ領域と判定された場合(ステップS2:YES)、ステップS3において、当該ブロック境界に対してデブロッキングフィルタ処理を適用しない(オフする)ようデブロッキングフィルタ部161を制御する。
【0095】
一方、奥行き情報に基づいてブロック境界がエッジ領域と判定されなかった場合(ステップS2:NO)、ステップS4において、第2エッジ判定部172は、再構成画像(2次元画像)に基づいて当該ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定(検出)し、判定結果を制御部173に出力する。
【0096】
デブロッキングフィルタ制御部173aは、再構成画像に基づいて当該ブロック境界がエッジ領域と判定された場合(ステップS5:YES)、ステップS3において、当該ブロック境界に対してデブロッキングフィルタ処理を適用しない(オフする)ようデブロッキングフィルタ部161を制御する。
【0097】
一方、再構成画像に基づいて当該ブロック境界がエッジ領域と判定されなかった場合(ステップS5:NO)、ステップS6において、デブロッキングフィルタ制御部173aは、当該ブロック境界に対してデブロッキングフィルタ処理を適用する(オンする)ようデブロッキングフィルタ部161を制御する。
【0098】
次に、ステップS7において、制御部173のSAOモード選択部173bは、第1エッジ判定部171の判定結果に基づいて、CTU内のブロック境界のうちエッジ領域が占める割合が所定値(例えば、50%)よりも大きいか否かを判定する。
【0099】
CTU内のブロック境界のうちエッジ領域が占める割合が所定値(例えば、50%)よりも大きい場合、ステップS8において、SAOモード選択部173bは、当該CTUに対するSAO処理のモードとしてエッジオフセットを選択する。
【0100】
一方、エッジオフセットが選択されなかった場合、ステップS9において、SAOモード選択部173bは、他の判断基準に基づいて、当該CTUに対するSAO処理のモードを選択する。例えば、SAOモード選択部173bは、第2エッジ判定部172の判定結果に基づいて、当該CTU内のブロック境界のうちエッジ領域が占める割合が所定値(例えば、50%)よりも大きいか否かを判定し、所定値よりも大きい場合にはエッジオフセットを選択し(ステップS8)、所定値以下である場合にはバンドオフセットを選択する(ステップS10)又はSAO処理を適用しないことを選択する(ステップS11)。
【0101】
<7.実施形態のまとめ>
上述したように、ループフィルタ制御部170は、奥行き情報に基づいて、2次元画像(再構成画像)内のブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第1エッジ判定部171と、2次元画像に基づいて、ブロック境界がエッジ領域であるか否かを判定する第2エッジ判定部172と、第1エッジ判定部171の判定結果及び第2エッジ判定部172の判定結果に基づいて、2次元画像に対するループフィルタ処理を制御する制御部173とを備える。
【0102】
奥行き情報に基づいてエッジ判定を行うことにより、例えばオブジェクトと背景との間のエッジ領域を正しく判定できる。また、2次元画像に基づいてエッジ判定を行うことにより、同一オブジェクト内のエッジ領域や、奥行きが同等なオブジェクト間のエッジ領域も正しく判定できるため、エッジ領域の判定精度を高めることが可能である。よって、ループフィルタ処理をより適切に制御できる。
【0103】
奥行き情報はオブジェクトの形状を正確に捉えるという特徴があり、その奥行き情報が大きく変化している領域はエッジ領域であるとみなすことができる。オブジェクトと背景との境界のエッジ領域に対しては、奥行き情報に基づくエッジ判定によって正確にエッジ領域を検出し、奥行き情報を用いた方がエッジ領域の検出精度は高くなる。
【0104】
一方、同一オブジェクト内のエッジ領域に対しては、2次元画像に基づくエッジ判定によって正確にエッジ領域を検出し、奥行き情報を用いるよりも2次元画像を用いた方が高精度であると考えられる。
【0105】
本実施形態では、奥行き情報に基づきエッジ領域と判定されたブロック境界にはデブロッキングフィルタ処理を適用しない。また、奥行き情報に基づきエッジ領域と判定されなかったブロック境界に対しては、2次元動画像に基づくエッジ判定を行い、このエッジ判定でエッジ領域と判定されたブロック境界にはデブロッキングフィルタ処理を適用しない。そして、奥行き情報に基づくエッジ判定及び2次元動画像に基づくエッジ判定のいずれにおいてもエッジ領域と判定されなかったブロック境界に対してのみデブロッキングフィルタ処理を適用する。これにより、高精度なエッジ領域の検出を実現しつつ、デブロッキングフィルタ処理の演算処理量を削減できる。
【0106】
さらに、奥行き情報に基づいて取得したエッジ情報をもとにSAOのモードを選択することにより、SAOのモードを適切に選択できる。
【0107】
<8.その他の実施形態>
上述した実施形態において、HEVC/H.265におけるデブロッキングフィルタ処理及びSAO処理の例を挙げて説明したが、本発明はHEVC/H.265に限定されるものではなく、次世代の画像符号化方式等の他の符号化方式にも適用可能である。
【0108】
上述した実施形態において、デブロッキングフィルタ制御部173aがデブロッキングフィルタ処理を適用するか否か(すなわち、デブロッキングフィルタON/OFF)を制御する一例について説明したが、デブロッキングフィルタ制御部173aは、強いフィルタ及び弱いフィルタのどちらを適用するかの制御を行ってもよい。
【0109】
画像符号化装置1が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラム及び画像復号装置2が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。また、画像符号化装置1が行う各処理を実行する回路を集積化し、画像符号化装置1を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。同様に、画像復号装置2が行う各処理を実行する回路を集積化し、画像復号装置2を半導体集積回路として構成してもよい。
【0110】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 :画像符号化装置
2 :画像復号装置
100 :ブロック分割部
110 :減算部
120 :量子化部
121 :変換部
122 :量子化部
130 :エントロピー符号化部
140 :逆変換部
141 :逆量子化部
142 :逆変換部
150 :合成部
160 :ループフィルタ
161 :デブロッキングフィルタ部
162 :SAO部
170 :ループフィルタ制御部
171 :第1エッジ判定部
172 :第2エッジ判定部
173 :制御部
173a :デブロッキングフィルタ制御部
173b :SAOモード選択部
180 :メモリ
190 :予測部
191 :イントラ予測部
192 :インター予測部
193 :切替部
200 :エントロピー符号復号部
210 :逆変換部
211 :逆量子化部
212 :逆変換部
220 :合成部
230 :ループフィルタ
231 :デブロッキングフィルタ部
232 :SAO部
240 :ループフィルタ制御部
250 :メモリ
260 :予測部
261 :イントラ予測部
262 :インター予測部
263 :切替部
図1
図2
図3
図4
図5
図6