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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】インダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20230220BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20230220BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20230220BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20230220BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20230220BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F27/28 147
H01F27/29 P
H01F27/32 103
H01F27/32 170
H01F41/04 C
H01F41/12 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018166255
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038940
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】中西 元
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208480(JP,A)
【文献】特開平06-077755(JP,A)
【文献】特開平07-022244(JP,A)
【文献】特開2018-082092(JP,A)
【文献】実開昭59-189215(JP,U)
【文献】特開2016-009854(JP,A)
【文献】特開2016-072615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0239467(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0061547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28-27/29、27/32
H01F 30/10、37/00、41/04、41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体と、
前記磁性体に埋め込まれ、周囲が前記磁性体に被覆された導体と、
絶縁層と、を有し、
前記導体は、
第1導体と、
前記第1導体の周囲を被覆する第2導体と、を含み、
前記絶縁層は、前記第2導体の周囲を被覆し、
前記第1導体は金属板からなり、前記第2導体は電解めっき層からなり、
前記電解めっき層の厚さは、20μm以上60μm以下であり、
前記導体は、所定の平面形状にパターニングされた導体パターンを含み、
隣接する前記導体パターンの間隔は、前記第1導体の厚さよりも小さいインダクタ。
【請求項2】
記導体は、
前記導体パターンの一端と電気的に接続された第1端子部と、
前記導体パターンの他端と電気的に接続された第2端子部と、を含み、
前記第1端子部及び前記第2端子部は、前記磁性体から部分的に露出している請求項に記載のインダクタ。
【請求項3】
渦巻き状にパターニングされた前記導体パターンと、
前記導体パターンの一端に前記導体パターンと一体に形成された前記第1端子部と、
前記導体パターン及び前記第1端子部とは独立して配置された前記第2端子部と、を含み、
前記導体パターンの他端は、金属線を介して、前記第2端子部と電気的に接続されている請求項に記載のインダクタ。
【請求項4】
前記磁性体の外側に形成された一対の電極を有し、
前記一対の電極の一方は、前記第1端子部の前記磁性体から露出する部分と電気的に接続され、
前記一対の電極の他方は、前記第2端子部の前記磁性体から露出する部分と電気的に接続されている請求項又はに記載のインダクタ。
【請求項5】
前記導体の幅方向の断面形状が略矩形状である請求項1乃至の何れか一項に記載のインダクタ。
【請求項6】
第1導体を形成する工程と、
前記第1導体の周囲を第2導体で被覆し、前記第1導体と前記第2導体とを含み、所定の平面形状にパターニングされた導体パターンを含む導体を形成する工程と、
前記第2導体の周囲を被覆する絶縁層を形成する工程と、
前記導体を磁性体に埋め込み、前記絶縁層の周囲を前記磁性体で被覆する工程と、を有し、
前記第1導体を形成する工程では、金属板をパターニングして前記第1導体を形成し、
前記導体を形成する工程では、電解めっき法により厚さが20μm以上60μm以下である前記第2導体を形成し、隣接する前記導体パターンの間隔は前記第1導体の厚さよりも小さくなるインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム機やスマートフォン等の電子機器の小型化が加速化しており、これに伴って、このような電子機器に搭載されるインダクタに対しても小型化の要求がなされており、表面実装型のインダクタが提案されている。
【0003】
このような電子機器に搭載されるインダクタとしては、例えば、フィルムタイプ、積層タイプ、巻き線タイプ等が知られているが、低直流抵抗化するために導体パターンの断面積を確保するには巻き線タイプが有利である。そのため、巻き線タイプのインダクタにおいて、小型化するための様々な検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-168610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のインダクタは、隣接する導体パターンの間隔を狭くすることが困難であり、更なる小型化の障壁となっていた。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、従来よりも小型化が可能なインダクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本インダクタは、磁性体と、前記磁性体に埋め込まれ、周囲が前記磁性体に被覆された導体と、絶縁層と、を有し、前記導体は、第1導体と、前記第1導体の周囲を被覆する第2導体と、を含み、前記絶縁層は、前記第2導体の周囲を被覆し、前記第1導体は金属板からなり、前記第2導体は電解めっき層からなり、前記電解めっき層の厚さは、20μm以上60μm以下であり、前記導体は、所定の平面形状にパターニングされた導体パターンを含み、隣接する前記導体パターンの間隔は、前記第1導体の厚さよりも小さいことを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、従来よりも小型化が可能なインダクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るインダクタを例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るインダクタを例示する図である。
図3】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その1)である。
図4】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その2)である。
図5】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その3)である。
図6】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その4)である。
図7】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その5)である。
図8】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その6)である。
図9】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その7)である。
図10】第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図(その8)である。
図11】インダクタを構成する導体の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
[インダクタの構造]
図1は、第1実施形態に係るインダクタを例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係るインダクタを例示する図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0012】
図1及び図2を参照するに、インダクタ1は、導体10と、絶縁層20と、磁性体30と、電極41及び42とを有する表面実装型のインダクタである。インダクタ1の平面形状は、例えば、3mm×3mm程度の略矩形状とすることができる。インダクタ1の厚さは、例えば、1.0mm程度とすることができる。なお、図1では、絶縁層20の図示が省略されている。又、図2(a)では、絶縁層20、電極41及び42の図示が省略されており、磁性体30は外縁のみを図示している。
【0013】
導体10は、平面形状が渦巻き状にパターニングされた導体パターン11と、平面形状が略三角状にパターニングされた第1端子部12と、平面形状が略矩形状にパターニングされた第2端子部13とを含む。なお、平面視とは対象物を磁性体30の上面30aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を磁性体30の上面30aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0014】
第1端子部12は、導体パターン11の一端に導体パターン11と一体に形成されている。第2端子部13は、導体パターン11及び第1端子部12とは独立して配置されている。導体パターン11の他端は、金属線50を介して、第2端子部13と電気的に接続されている。金属線50は、例えば、金線、銅線、アルミニウム線等であり、例えば、超音波接合、溶接、はんだ付け等により接続することができる。
【0015】
導体パターン11は、第1導体111と、第1導体111の周囲を被覆する第2導体112とを含んでいる。又、第1端子部12は、第1導体121と、第1導体121の周囲を被覆する第2導体122とを含んでいる。又、第2端子部13は、第1導体131と、第1導体131の周囲を被覆する第2導体132とを含んでいる。
【0016】
第1導体111、第1導体121、及び第1導体131は、エッチング工法や打ち抜き工法でパターニングされた金属板からなる。第1導体111、第1導体121、及び第1導体131の材料としては、例えば、銅、銅合金、Fe-Ni合金(42アロイ等)等が挙げられる。第1導体111、第1導体121、及び第1導体131の各々の厚さTは、例えば、60~120μm程度とすることができる。第1導体111の幅Wは、例えば、140~200μm程度とすることができる。
【0017】
第2導体112、第2導体122、及び第2導体132は、電解めっき層からなる。第2導体112、第2導体122、及び第2導体132の材料としては、例えば、銅等が挙げられる。第2導体112、第2導体122、及び第2導体132の厚さTは、導体パターン11において隣接する第1導体111を被覆する第2導体112同士が接触しない範囲内で適宜選択できるが、例えば、20~60μm程度とすることができる。なお、電解めっき法で形成された第2導体112、第2導体122、及び第2導体132の各々の厚さは、第1導体111、第1導体121、及び第1導体131の各々の周囲において略均一となる。ここで、厚さが略均一とは、厚さが完全に均一である場合のみならず、製造上の誤差程度は許容されることを意味し、具体的には、平均厚さに対する厚さバラツキが±10%以下である場合を含むものとする。
【0018】
隣接する導体パターン11の間隔Pは、第1導体111の厚さTよりも小さくすることができる。隣接する導体パターン11の間隔Pは、例えば、10μm程度とすることができる。
【0019】
導体パターン11において、第1導体111の幅方向の断面形状(図2(b)における断面形状)は略矩形状である。又、第2導体112の厚さが略均一であるため、導体パターン11全体の幅方向の断面形状(図2(b)における断面形状)も略矩形状である。ここで、略矩形状とは、正方形、長方形に加えて、正方形や長方形の角部が丸みを帯びた形状を含むものとする。
【0020】
第2導体112(電解めっき)により、導体パターン11の幅方向に狭い間隔で密に導体パターン11同士を配置することが可能となる。よって、インダクタ1では、第2導体を設けない場合のインダクタに比較し、同一外形サイズで、インダクタンス値の増加が可能となる。又、インダクタ1では、第2導体を設けない場合のインダクタと同一のインダクタンス値を得る場合、インダクタ1の外形サイズの減少(小型化)が可能となる。又、導体パターン11の断面積が増加するため、導体パターン11の直流抵抗を小さくでき、より多くの電流を流すことが可能なインダクタを得ることができる。
【0021】
絶縁層20は、導体10の周囲(導体パターン11、第1端子部12、及び第2端子部13の各々の周囲)を被覆している。導体10の周囲を絶縁層20で被覆することで、導体10と磁性体30との短絡、及び隣接する導体10同士の短絡を防止することができる。絶縁層20の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層20の厚さTは、例えば、10μm程度とすることができる。
【0022】
絶縁層20は、例えば電着コート法で形成することで、導体10の周囲において略均一な厚さとなる。
【0023】
磁性体30は、絶縁層20を被覆している。言い換えれば、絶縁層20に被覆された導体10が磁性体30に埋め込まれている。但し、第1端子部12の一部は、絶縁層20に被覆されていなく、磁性体30の側面30cから露出している。又、第2端子部13の一部は、絶縁層20に被覆されていなく、磁性体30の側面30dから露出している。
【0024】
磁性体30は、例えば、磁性体粉末と絶縁性樹脂とを含有する構成とすることができる。磁性体30において、磁性体粉末と絶縁性樹脂との配合比率を調整することで、必要な透磁率や成型性を確保することができる。
【0025】
磁性体粉末としては、例えば、軟磁性体の粉末を用いることができる。軟磁性体の粉末としては、例えば、鉄基アモルファス合金の粉末、カルボニル鉄粉、フェライトやパーマロイ等の粉末が挙げられる。絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0026】
電極41及び42は、磁性体30の外側に形成された一対の電極である。電極41は、磁性体30の上面30aの側面30c側に形成され、上面30aから側面30cの全体に延伸している。電極42は、磁性体30の上面30aの側面30d側に形成され、上面30aから側面30dの全体に延伸している。電極41は、第1端子部12の磁性体30の側面30cから露出する部分と電気的に接続されている。又、電極42は、第2端子部13の磁性体30の側面30dから露出する部分と電気的に接続されている。電極41及び42の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。電極41及び42は、複数の金属層を積層した構造としてもよい。
【0027】
[インダクタの製造方法]
次に、第1実施形態に係るインダクタの製造方法について説明する。図3図10は、第1実施形態に係るインダクタの製造工程を例示する図である。なお、図4図7では図2(a)に対応する平面図及び/又は図2(b)に対応する断面図を参照しながら説明し、図8図10では図3に対応する平面図を参照しながら説明する。
【0028】
まず、図3に示す工程では、例えば、平面形状が矩形状の金属板10Sを準備する。金属板10Sは、例えば、リードフレーム用の金属板である。金属板10Sの材料としては、例えば、銅、銅合金、42アロイ等のFe-Ni合金が挙げられる。金属板10Sの厚さは、例えば、60~120μm程度とすることができる。金属板10Sには、最終的に破線に沿って切断されて個片化され、各々がインダクタ1となる複数の製品領域Rが画定されている。各々の製品領域Rは、例えば、縦横に配列することができるが、個数は6個には限定されない。なお、図4図7では、図3に示す製品領域Rの1つについて、平面や断面を図示しながら説明を行う。
【0029】
次に、図4及び図5に示す工程では、金属板10Sをパターニングして、第1導体111、第1導体121、及び第1導体131を形成する。ここでは、金属板10Sをエッチング工法でパターニングする例を示すが、金属板10Sを打ち抜き工法でパターニングしてもよい。
【0030】
具体的には、まず、図4(a)に示すように、金属板10Sの上面の全体に感光性のレジスト層300を形成し、下面の全体に感光性のレジスト層310を形成する。そして、図4(b)に示すように、レジスト層300及び310を露光及び現像して開口部300x及び310xを形成し、第1導体111、第1導体121、及び第1導体131を形成する領域のみをレジスト層300及び310で被覆する。開口部300xと開口部310xとは、金属板10Sを介して互いに対向する位置に形成される。そして、図4(c)に示すように、レジスト層300及び310をマスクとして、開口部300x及び310xから露出する金属板10Sを両側からエッチングする。
【0031】
その後、図5(a)及び図5(b)に示すように、レジスト層300及び310を除去する。これにより、平面形状が渦巻き状にパターニングされた第1導体111と、平面形状が略三角状にパターニングされた第1導体121と、平面形状が略矩形状にパターニングされた第1導体131が形成される。第1導体121は第1導体111の一端に第1導体111と一体に形成され、第1導体131は第1導体111及び第1導体121とは独立して形成される。第1導体121及び第1導体131は、製品領域Rの外側に位置する金属板10Sの外枠(図示せず)に支持されている。
【0032】
なお、金属板10Sをエッチング工法でパターニングする場合、金属板10Sの厚さと第1導体111の最小間隔との比率は約1:1となる。又、金属板10Sを打ち抜き工法でパターニングする場合、金属板10Sの厚さと第1導体111の最小間隔との比率は約1:0.5となる。
【0033】
次に、図6(a)及び図6(b)に示す工程では、第1導体111の周囲を被覆する第2導体112、第1導体121の周囲を被覆する第2導体122、及び第1導体131の周囲を被覆する第2導体132を形成する。第2導体122は第2導体112の一端に第2導体112と一体に形成され、第2導体132は第2導体112及び第2導体122とは独立して形成される。これにより、第1導体111と第2導体112とを含む導体パターン11、第1導体121と第2導体122とを含む第1端子部12、及び第1導体131と第2導体132とを含む第2端子部13が形成され、導体10が完成する。第2導体112、第2導体122、及び第2導体132は、例えば、金属板10Sの外枠から第1導体111、第1導体121、及び第1導体131に給電する電解めっき法により形成することができる。
【0034】
次に、図7(a)に示す工程では、導体パターン11の他端を、金属線50を介して、第2端子部13と電気的に接続する。金属線50は、例えば、金線、銅線、アルミニウム線等であり、例えば、超音波接合、溶接、はんだ付け等により接続することができる。ここで、金属線50は、他端以外の導体パターン11部分と接触しないように設ける。例えば、インダクタ1の断面方向から見て上方に突出するアーチ状に金属線50を設けることで、金属線50と他端以外の導体パターン11部分との接触を避けることができる。なお、金属線50に替えて、金属のリボンにより接続を行ってもよい。リボンの材質としては、金属線50と同様のものを用いることができる。
【0035】
次に、図7(b)に示す工程では、導体10の周囲(導体パターン11、第1端子部12、及び第2端子部13の各々の周囲)を被覆する絶縁層20を形成する。金属線50の表面にも絶縁層20が形成される。絶縁層20は、例えば、電着コート法、スピンコート法、ディップコート法等により形成することができる。絶縁層20の材料や厚さは、前述の通りである。
【0036】
次に、図7(c)に示す工程では、絶縁層20を被覆する磁性体30を形成する。磁性体30は、例えば、前述の磁性体粉末と絶縁性樹脂(バインダ)とを混練した粉体で図7(b)に示す構造体の周囲を充填し、粉体を160℃程度に加熱しながら上下から15KN程度で加圧することで成型できる。
【0037】
なお、絶縁性樹脂(バインダ)の材料や配合比率を調整することにより、磁性体30の成型に、トランスファーモールド法やコンプレッションモールド法等の低圧成型法を用いることも可能である。
【0038】
例えば、金型のキャビティ内に図7(b)の構造体と磁性体粉末と絶縁性樹脂(バインダ)とを混錬した粉体を入れ、金型で加熱及び加圧し磁性体30を成型することができる(コンプレッションモールド法)。この際、例えば、粉体を160℃程度に加熱しながら金型で上下から15KN程度で加圧することで成型できる。
【0039】
或いは、例えば、金型のキャビティ内に図7(b)の構造体を入れ、キャビティ内に磁性体粉末を含む熱硬化性樹脂を圧入することで、磁性体30を成型することができる(トランスファーモールド法)。
【0040】
次に、図8に示す工程では、図7(c)に示す構造体を支持体500上に配置し、製品領域Rの対向する一対の側面に沿った細長状の貫通溝500xを形成する。貫通溝500xは、例えば、ダイシングブレード等を用いて形成することができる。貫通溝500x内において、各々の製品領域Rの第1端子部12が磁性体30の側面30cから部分的に露出し、第2端子部13が磁性体30の側面30dから部分的に露出する。又、製品領域Rの外側に位置する金属板10Sの外枠が除去される。
【0041】
次に、図9に示す工程では、図8に示す構造体に電極41及び42を形成する。電極41は、各々の製品領域Rに跨って磁性体30の上面30aの側面30c側に形成され、上面30aから側面30cの全体に延伸し、第1端子部12の磁性体30の側面30cから露出する部分と電気的に接続される。電極42は、各々の製品領域Rに跨って磁性体30の上面30aの側面30d側に形成され、上面30aから側面30dの全体に延伸し、第2端子部13の磁性体30の側面30dから露出する部分と電気的に接続される。
【0042】
電極41及び42を形成するには、例えば、各々の製品領域Rに跨って磁性体30の上面30aの側面30c側から側面30cの全体に延伸するシード層と、磁性体30の上面30aの側面30d側から側面30dの全体に延伸するシード層を形成する。シード層は、例えば、チタン層と銅層とをこの順番で積層した積層膜とすることができる。シード層は、例えば、スパッタリングによリ形成することができる。次に、シード層を給電層とする電解めっき法により、シード層上に銅層等を形成することで、電極41及び42が完成する。
【0043】
銅層等の上に、シード層を給電層とする電解めっき法により、更に表面めっき層を形成してもよい。表面めっき層は、例えば、ニッケル層(例えば厚さ2~3μm程度)とスズ層(例えば厚さ4~5μm程度)とをこの順番で積層した積層膜とすることができる。表面めっき層として、ニッケル層と金層とをこの順番で積層した積層膜や、銀層とスズ層とをこの順番で積層した積層膜を用いてもよい。表面めっき層は、電極41及び42の酸化防止層としての機能や、電極41及び42のはんだ濡れ性を向上させる機能を有している。
【0044】
次に、図10に示す工程では、図9に示す構造体において、製品領域Rの対向する他の一対の側面に沿った細長状の貫通溝500yを貫通溝500xと略直交するように形成する。貫通溝500yは、例えば、ダイシングブレード等を用いて形成することができる。これにより、製品領域Rの外側に位置する金属板10Sの外枠が除去され、各々の製品領域Rに個片化された複数のインダクタ1が形成される。
【0045】
このように、第1導体111の周囲を第2導体112で被覆することにより、隣接する導体パターン11の間隔を狭め、導体パターン11を高密度で形成できる。又、第1導体111の周囲を第2導体112で被覆することにより、導体パターン11の幅方向の断面積も増加させることができる。これらにより、従来より小型のインダクタ1を実現することができる。例えば、同じ値のインダクタンスを実現する場合、第1導体111の周囲を第2導体112で被覆しない場合に比べて、インダクタ1では外径サイズで十数%程度の小型化が可能である。
【0046】
又、第1導体111上に一方向に電解めっき層を形成する方法と比べ、第1導体111の周囲に電解めっき層である第2導体112を形成する方法では、めっき時間の大幅な短縮が可能である。
【0047】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、インダクタを構成する導体の変形例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0048】
図11は、インダクタを構成する導体の変形例を示す平面図である。図1及び図2等に示す導体10に代えて、図11(a)に示す導体10Aを用いてもよい。導体10Aでは、平面形状がジグザグ状にパターニングされた導体パターン11Aの一端に平面形状が略矩形状の第1端子部12Aが一体に形成され、他端に平面形状が略矩形状の第2端子部13Aが一体に形成されている。
【0049】
又、図1及び図2等に示す導体10に代えて、図11(b)に示す導体10Bを用いてもよい。導体10Bでは、平面形状がΩ型にパターニングされた導体パターン11Bの一端に平面形状が略矩形状の第1端子部12Bが一体に形成され、他端に平面形状が略矩形状の第2端子部13Bが一体に形成されている。
【0050】
又、図1及び図2等に示す導体10に代えて、図11(c)に示す導体10Cを用いてもよい。導体10Cでは、平面形状が矩形の渦巻き状にパターニングされた導体パターン11Cの一端に平面形状が略矩形状の第1端子部12Cが一体に形成されている。第2端子部13Cは、導体パターン11C及び第1端子部12Cとは独立して配置されており、導体パターン11Cの他端は、金属線50を介して、第2端子部13Cと電気的に接続されている。
【0051】
導体10A、10B、10Cを、第1導体と第1導体の周囲を被覆する第2導体とを含む構造とすることで、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0052】
このように、インダクタを構成する導体の平面形状は、導体10、10A、10B、10Cの何れの形状としてもよいし、その他の形状としてもよい。インダクタを構成する導体の平面形状は、要求仕様に応じて任意に決定することができる。
【0053】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 インダクタ
10、10A、10B、10C 導体
10S 金属板
11、11A、11B、11C 導体パターン
12、12A、12B、12C 第1端子部
13、13A、13B、13C 第2端子部
20 絶縁層
30 磁性体
30a 上面
30c、30d 側面
41、42 電極
50 金属線
111、121、131 第1導体
112、122、132 第2導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11