(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】金属張積層板、回路基板、多層回路基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20230220BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230220BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230220BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20230220BHJP
C09J 179/08 20060101ALI20230220BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20230220BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
H05K1/03 630H
B32B15/08 N
C09J7/29
C09J7/35
C09J179/08 Z
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K3/46 S
(21)【出願番号】P 2018205805
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-09-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 智典
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-253328(JP,A)
【文献】特開平06-112610(JP,A)
【文献】特開2018-140544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
B32B 15/08
C09J 7/29
C09J 7/35
C09J 179/08
C08G 73/10
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、
前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、
を備え、
前記接着層を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であり、下記の条件(i)~(iii);
(i)50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であること;
(ii)180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下であること;
(iii)ガラス転移温度(Tg)が180℃以下であること;
を満たすものであり、
前記接着層の厚みT2が20~200μmの範囲内、前記絶縁樹脂層の厚みT3が12~100μmの範囲内であるとともに、前記接着層の厚みT2と前記絶縁樹脂層の厚みT3との合計厚みT1が50~250μmの範囲内であり、該合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.5~0.8の範囲内である金属張積層板。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂が、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドであり、
前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上含有する請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項3】
前記金属張積層板は、前記金属層を配線に加工してなる回路基板の材料である請求項1に記載の金属張積層板。
【請求項4】
前記接着性ポリイミドは、前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有する請求項2に記載の金属張積層板。
【化1】
[一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを表す。]
【化2】
[上記式において、Zは-C
6H
4-、-(CH
2)n-又は-CH
2-CH(-O-C(=O)-CH
3)-CH
2-を示すが、nは1~20の整数を示す。]
【請求項5】
前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、前記ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有し、
下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有する請求項2に記載の金属張積層板。
【化3】
[式(B1)~(B7)において、R
1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO
2-、-COO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n
1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]
【請求項6】
絶縁樹脂層と、
前記絶縁樹脂層の一方の面に形成された導体回路層と、
前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、
を備えた回路基板であって、
前記接着層を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であり、下記の条件(i)~(iii);
(i)50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であること;
(ii)180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下であること;
(iii)ガラス転移温度(Tg)が180℃以下であること;
を満たすものであり、
前記接着層の厚みT2が20~200μmの範囲内、前記絶縁樹脂層の厚みT3が12~100μmの範囲内であるとともに、前記接着層の厚みT2と前記絶縁樹脂層の厚みT3との合計厚みT1が50~250μmの範囲内であり、該合計厚みT1に対する前記接着層の厚みT2の比率(T2/T1)が0.5~0.8の範囲内である回路基板。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドであり、
前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上含有する請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記接着性ポリイミドは、前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有することを特徴とする請求項7に記載の回路基板。
【化4】
[一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを表す。]
【化5】
[上記式において、Zは-C
6H
4-、-(CH
2)n-又は-CH
2-CH(-O-C(=O)-CH
3)-CH
2-を示すが、nは1~20の整数を示す。]
【請求項9】
前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、前記ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有し、
下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有する請求項7に記載の回路基板。
【化6】
[式(B1)~(B7)において、R
1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO
2-、-COO-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n
1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。]
【請求項10】
複数の回路基板を積層した多層回路基板であって、
前記回路基板として、請求項6~9のいずれか1項に記載の回路基板を、少なくとも1つ以上含むことを特徴とする多層回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属張積層板及び回路基板並びに複数層に積層された導体回路層を有する多層回路基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年,電子機器の高密度化、高機能化の進展に伴い、更なる寸法安定性や優れた高周波特性を有する回路基板材料が求められている。特に、高速信号処理に必要な有機層間絶縁材料の特性には、低誘電率化、低誘電損失化が重要である。高周波化に対応するために、低誘電率、低誘電正接を特徴とした液晶ポリマー(LCP)を誘電体層とした多層配線板が提案されている(例えば、特許文献1)。液晶ポリマーを絶縁層とした多層配線板は、熱可塑性樹脂である液晶ポリマー基材の融点付近まで加熱した状態で加熱圧着することにより製造されるため、液晶ポリマー基材の熱変形により、回路導体の位置ズレがおきやすく、インピーダンスの不整合など電気特性に悪影響が出ることが懸念されている。また、液晶ポリマーを基材層とする多層配線板は、多層接着界面が平滑であるとアンカー効果が発現せず層間接着力が不十分となるため、回路導体と液晶ポリマー基材のそれぞれの表面に粗化処理を必要とし、製造工程が煩雑であるという問題点もあった。
【0003】
ところで、ポリイミドを主成分とする接着層に関する技術として、ダイマー酸などの脂肪族ジアミンから誘導されるジアミン化合物を原料とするポリイミドと、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物と、を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂を、カバーレイフィルムの接着剤層に適用することが提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の架橋ポリイミド樹脂は、環状シロキサン化合物からなる揮発成分を発生させず、優れた半田耐熱性を有し、繰り返し高温にさらされる使用環境でも、配線層とカバーレイフィルムとの接着力を低下させない、という利点を有するものである。しかしながら、特許文献2では、高周波信号伝送への適用可能性については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-317953号公報
【文献】特開2013-1730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今後、多層回路基板において高周波信号伝送への対応を図るための一つの方向性として、導体回路の寸法安定性を維持しながら、絶縁樹脂層や接着層の合計厚みを増大させることによって誘電特性の改善を図ることが考えられる。そのためには、多層回路基板の材料となる金属張積層板や回路基板において、それらの材質だけでなく、構造においても、従来の多層回路基板とは異なる設計思想が求められてきている。
【0006】
従って、本発明の目的は、導体回路の寸法安定性に優れ、高周波信号の伝送においても伝送損失の低減が可能な新規な構造を有する多層回路基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、多層回路基板の材料として、特定構造の金属張積層板を用いることによって、優れた接着性を維持しつつ、導体回路の寸法安定性を維持しながら、高周波信号の伝送への対応が可能となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に積層された金属層と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、を備えている。
また、本発明の回路基板は、絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に形成された導体回路層と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、を備えている。
そして、本発明の金属張積層板又は回路基板は、前記接着層を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であり、下記の条件(i)~(iii);
(i)50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であること;
(ii)180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下であること;
(iii)ガラス転移温度(Tg)が180℃以下であること;
を満たすものである。
【0009】
本発明の金属張積層板又は回路基板は、前記熱可塑性樹脂が、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性ポリイミドであってもよい。この場合、前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基が1級のアミノメチル基又はアミノ基に置換されてなるダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上含有するものであってもよい。
【0010】
本発明の金属張積層板は、前記金属層を配線に加工してなる回路基板の材料であってもよい。
【0011】
本発明の金属張積層板又は回路基板において、前記接着性ポリイミドは、前記テトラカルボン酸残基の全量100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を合計で90モル部以上含有するものであってもよい。
【0012】
【0013】
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを表す。
【0014】
【0015】
上記式において、Zは-C6H4-、-(CH2)n-又は-CH2-CH(-O-C(=O)-CH3)-CH2-を示すが、nは1~20の整数を示す。
【0016】
本発明の金属張積層板又は回路基板において、前記接着性ポリイミドは、前記ジアミン残基の全量100モル部に対して、前記ダイマー酸型ジアミンから誘導されるジアミン残基を50モル部以上99モル部以下の範囲内で含有するものであってもよく、また、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有するものであってもよい。
【0017】
【0018】
式(B1)~(B7)において、R1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO2-、-COO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
【0019】
本発明の多層回路基板は、複数の回路基板を積層したものであって、
前記回路基板として、上記いずれかの回路基板を、少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の観点における多層回路基板の製造方法は、
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に形成された導体回路層と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、を備えた回路基板を複数準備する工程、及び、
一つの前記回路基板の前記導体回路層と、他の一つの前記回路基板の前記接着層とが対向するように重ねて圧着する工程、
を含むものであってもよい。
【0021】
本発明の第2の観点における多層回路基板の製造方法は、
絶縁樹脂層と、前記絶縁樹脂層の一方の面に形成された導体回路層と、前記絶縁樹脂層のもう一方の面に積層された接着層と、を備えた回路基板を複数準備する工程、及び、
一つの前記回路基板の前記接着層と、他の一つの前記回路基板の前記接着層とが対向するように重ねて圧着する工程、
を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の金属張積層板は、絶縁樹脂層の片側に金属層、他の片面に接着層を有する構造であるため、積層することによって多層回路基板を容易に製造することが可能であり、多層回路基板の材料として有用である。また、金属張積層板を使用して多層回路基板を製造した場合に、導体回路の寸法安定性を維持しながら、導体回路層への被覆性と密着性の確保、さらに樹脂層全体の厚みの確保が可能である。そのため、本発明の金属張積層板を用いることによって、良好な層間接続を有し、且つ信頼性の高い多層回路基板が得られる。
また、本発明の多層回路基板により、高周波信号の伝送においても伝送損失の低減が可能であり、電子部品の高密度集積化や、高密度実装化を可能とすることができる。また、本発明の多層回路基板は、耐熱性にも優れているため、発熱量の大きな半導体チップを搭載することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかる金属張積層板の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態にかかる回路基板の構造を示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態にかかる多層回路基板の構造を示す断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態にかかる多層回路基板の製造工程を示す説明図である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態にかかる多層回路基板の構造を示す断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態にかかる多層回路基板の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
[金属張積層板]
図1は、本発明の一実施の形態の金属張積層板の構造を示す断面図である。本実施の形態の金属張積層板100は、絶縁樹脂層10と、絶縁樹脂層10の一方の面に積層された金属層20と、絶縁樹脂層10のもう一方の面に積層された接着層30と、を備えている。つまり、金属張積層板100は、金属層20/絶縁樹脂層10/接着層30が、この順に積層された構造である。別の表現を用いると、金属張積層板100は、絶縁樹脂層10と金属層20とが積層されてなる片面金属張積層板40の裏面側(絶縁樹脂層10側)に、さらに接着層30が付加された構造を有している。なお、接着層30は、絶縁樹脂層10の片側の全面に形成されていてもよく、一部分のみに形成されていてもよい。
【0026】
<片面金属張積層板>
片面金属張積層板40の構成は、特に限定されず、FPC材料として一般的なものを使用可能であり、例えば、市販の銅張積層板などであってもよい。例えば、市販の銅張積層板としては、パナソニック社製のR-F705T(商品名)、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエスパネックス(商品名)などを用いることができる。
【0027】
(金属層)
金属層20の材質としては、特に制限はないが、例えば、銅、ステンレス、鉄、ニッケル、ベリリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、銀、金、スズ、ジルコニウム、タンタル、チタン、鉛、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金等が挙げられる。これらの中でも、特に銅又は銅合金が好ましい。なお、後述する本実施の形態の回路基板における配線層の材質も金属層20と同様である。
【0028】
金属層20の厚みは特に限定されるものではないが、例えば銅箔等の金属箔を用いる場合、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは5~25μmの範囲内がよい。生産安定性及びハンドリング性の観点から金属箔の厚みの下限値は5μmとすることが好ましい。なお、銅箔を用いる場合は、圧延銅箔でも電解銅箔でもよい。また、銅箔としては、市販されている銅箔を用いることができる。
【0029】
また、金属箔は、例えば、防錆処理や、接着力の向上を目的として、例えばサイディング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による表面処理を施してもよい。
【0030】
(絶縁樹脂層)
絶縁樹脂層10としては、電気的絶縁性を有する樹脂により構成されるものであれば特に限定はなく、例えばポリイミド、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ETFE、BTレジンなどを挙げることができるが、ポリイミドによって構成されることが好ましい。なお、本発明でポリイミドという場合、ポリイミドの他、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリシロキサンイミド、ポリベンズイミダゾールイミドなど、分子構造中にイミド基を有するポリマーを意味する。
【0031】
また、絶縁樹脂層10は、単層に限らず、複数の樹脂層が積層されたものであってもよい。また、絶縁樹脂層10は、非熱可塑性ポリイミドによる非熱可塑性ポリイミド層を含むことが好ましい。なお、「非熱可塑性ポリイミド」とは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドのことであるが、本発明では、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×109Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa以上であるポリイミドをいう。
【0032】
絶縁樹脂層10は、例えば、市販のポリイミドフィルム、市販の液晶ポリマーフィルム又は市販の金属張積層板に絶縁性基材として用いられる樹脂の中から選択して用いることができる。ポリイミドフィルムとしては、宇部興産社製のユーピレックス(商品名)、東レ・デュポン社製のカプトン(商品名)、カネカ社製のアピカル(商品名)、同ピクシオ(商品名)、液晶ポリマーフィルムとしてはクラレ社製のベクスター(商品名)、プライマテック社製のBIAC Film(商品名)などを用いることができる。
【0033】
絶縁樹脂層10の熱膨張係数(CTE)は、特に限定されるものではないが、10ppm/K以上がよく、好ましくは10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内である。CTEが10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEに制御できる。
【0034】
なお、絶縁樹脂層10及び接着層30を含む樹脂層の全体の熱膨張係数(CTE)は、特に限定されるものではないが、好ましくは10ppm/K以上30ppm/K以下の範囲内、より好ましくは15ppm/K以上25ppm/K以下の範囲内である。これらの樹脂層全体のCTEが10ppm/K未満であるか、又は30ppm/Kを超えると、反りが発生したり、寸法安定性が低下したりする。
【0035】
絶縁樹脂層10は、例えば多層回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)は、好ましくは0.02以下、より好ましくは0.0005以上0.01以下の範囲内、更に好ましくは0.001以上0.008以下の範囲内がよい。絶縁樹脂層10の10GHzにおける誘電正接が0.02を超えると、多層回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。一方、絶縁樹脂層10の10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されないが、多層回路基板の絶縁樹脂層としての物性制御を考慮している。
【0036】
絶縁樹脂層10は、例えば多層回路基板の絶縁樹脂層として適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける誘電率(ε)が4.0以下であることが好ましい。絶縁樹脂層10の10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、多層回路基板に適用した際に、絶縁樹脂層10の誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0037】
<接着層>
接着層30は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成され、以下の条件;
(i)50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であること、
(ii)180℃から260℃の貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下であること、
及び
(iii)ガラス転移温度(Tg)が180℃以下であること、
を満たすものである。このような樹脂としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン-マレイミド共重合体、マレイミド-ビニル化合物共重合体、又は(メタ)アクリル共重合体、エポキシ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂及びシアネートエステル樹脂等の樹脂が挙げられ、これらの中から、条件(i)~(iii)を満たすものを選択したり、あるいは、条件(i)~(iii)を満たすように設計したりして、接着層30に使用することができる。
【0038】
接着層30が熱硬化性樹脂である場合、有機過酸化物、硬化剤、硬化促進剤等を含有してもよく、必要に応じて、硬化剤と硬化促進剤、又は触媒と助触媒を併用してもよい。上記条件(i)~(iii)の確保できる範囲で、硬化剤、硬化促進剤、触媒、助触媒、及び有機過酸化物の添加量、及び添加の有無を判断すればよい。
【0039】
接着層30は、条件(i)、(ii)に示すとおり、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下であり、180℃から260℃の温度領域での貯蔵弾性率の最大値が800MPa以下である。このような接着層30の特性が、熱圧着時の内部応力を緩和し、回路加工後の寸法安定性を保持する要因であると考えられる。また、接着層30は、前記温度領域の上限温度(260℃)での貯蔵弾性率が、800MPa以下であることが好ましく、500MPa以下の範囲内であることがより好ましい。このような貯蔵弾性率とすることによって、回路加工後の半田リフロー工程を経由した後においても、反りが生じにくい。
【0040】
接着層30は、条件(iii)に示すとおり、ガラス転移温度(Tg)が180℃以下であり、好ましくは160℃以下の範囲内であることがよい。接着層30のガラス転移温度を180℃以下とすることによって、低温での熱圧着が可能になるため、積層時に発生する内部応力を緩和し、寸法変化を抑制できる。接着層30のTgが180℃を超えると、絶縁樹脂層10と任意の回路基板との間に介在させて接着する際の温度が高くなり、寸法安定性を損なう恐れがある。
【0041】
(接着層のCTE)
接着層30を構成する熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂は、高熱膨張性であるが低弾性であり、ガラス転移温度が低いため、CTEが30ppm/Kを超えても、積層時に発生する内部応力を緩和することができる。従って、接着層30のCTEは、好ましくは35ppm/K以上、より好ましくは35ppm/K以上200ppm/K以下の範囲内、更に好ましくは35ppm/K以上150ppm/K以下の範囲内である。使用する原料の組合せ、厚み、乾燥・硬化条件を適宜変更することで所望のCTEを有する接着層30とすることができる。
【0042】
(接着層の誘電正接)
接着層30は、例えば多層回路基板に適用する場合において、誘電損失の悪化を抑制するために、10GHzにおける誘電正接(Tanδ)が、好ましくは0.004以下、より好ましくは0.003以下、更に好ましくは0.002以下がよい。接着層30の10GHzにおける誘電正接が0.004を超えると、多層回路基板に適用した際に、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。一方、接着層30の10GHzにおける誘電正接の下限値は特に制限されない。
【0043】
(接着層の誘電率)
接着層30は、例えば多層回路基板に適用する場合において、インピーダンス整合性を確保するために、10GHzにおける誘電率が4.0以下であることが好ましい。接着層30の10GHzにおける誘電率が4.0を超えると、多層回路基板に適用した際に、接着層30の誘電損失の悪化に繋がり、高周波信号の伝送経路上で電気信号のロスなどの不都合が生じやすくなる。
【0044】
(フィラー)
接着層30は、必要に応じて、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム、有機ホスフィン酸の金属塩等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
(接着性ポリイミド)
次に、接着層30を構成する樹脂が、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基を含有する接着性の熱可塑性ポリイミド(以下、「接着性ポリイミド」と記すことがある)である場合を例に挙げ、接着層30の具体的構成例を説明する。接着性ポリイミドは、特定の酸無水物とジアミン化合物とを反応させて得られる前駆体のポリアミド酸をイミド化して製造されるので、酸無水物とジアミン化合物を説明することにより、接着性ポリイミドの具体例が理解される。なお、本発明において、テトラカルボン酸残基とは、テトラカルボン酸二無水物から誘導された4価の基のことを意味し、ジアミン残基とは、ジアミン化合物から誘導された2価の基のことを意味する。また、「熱可塑性ポリイミド」とは、一般にガラス転移温度(Tg)が明確に確認できるポリイミドのことであるが、本発明では、DMAを用いて測定した、30℃における貯蔵弾性率が1.0×108Pa以上であり、300℃における貯蔵弾性率が3.0×107Pa未満であるポリイミドをいう。
【0046】
(テトラカルボン酸残基)
接着性ポリイミドは、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して、下記の一般式(1)及び/又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基(以下、「テトラカルボン酸残基(1)」、「テトラカルボン酸残基(2)」と記すことがある)を、合計で90モル部以上含有することが好ましい。本発明では、テトラカルボン酸残基(1)及び/又は(2)を、全テトラカルボン酸残基の100モル部に対して合計で90モル部以上含有させることによって、接着性ポリイミドに溶剤可溶性を付与するとともに、接着性ポリイミドの柔軟性と耐熱性の両立が図りやすくより好ましい。テトラカルボン酸残基(1)及び/又は(2)の合計が90モル部未満では、接着性ポリイミドの溶剤溶解性が低下する傾向になる。
【0047】
【0048】
一般式(1)中、Xは、単結合、または、下式から選ばれる2価の基を示し、一般式(2)中、Yで表される環状部分は、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環から選ばれる環状飽和炭化水素基を形成していることを示す。
【0049】
【0050】
上記式において、Zは-C6H4-、-(CH2)n-又は-CH2-CH(-O-C(=O)-CH3)-CH2-を示すが、nは1~20の整数を示す。
【0051】
テトラカルボン酸残基(1)を誘導するためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、2,2-ビス〔4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物(BPADA)、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(TAHQ)、エチレングリコール ビスアンヒドロトリメリテート(TMEG)などを挙げることができる。
【0052】
また、テトラカルボン酸残基(2)を誘導するためのテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、 1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘプタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-シクロオクタンテトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。
【0053】
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記一般式(1)又は(2)で表されるテトラカルボン酸無水物以外の酸無水物から誘導されるテトラカルボン酸残基を含有することができる。
【0054】
(ジアミン残基)
接着性ポリイミドは、全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミンから誘導されるダイマー酸型ジアミン残基を50モル部以上、例えば50モル部以上99モル部以下の範囲内、好ましくは80モル部以上、例えば80モル部以上99モル部以下の範囲内で含有する。ダイマー酸型ジアミン残基を上記の量で含有することによって、接着層30の誘電特性を改善させるとともに、接着層30のガラス転移温度の低温化による熱圧着特性の改善及び低弾性率化による内部応力を緩和することができる。また、ダイマー酸型ジアミン残基を50モル部以上とすることで、溶剤可溶性と熱可塑性を付与し、接着層30の吸水性を低下させ、例えばエッチングによる寸法変化を小さくすることができる。全ジアミン残基の100モル部に対して、ダイマー酸型ジアミン残基が50モル部未満であると、接着性ポリイミドとしての溶剤可溶性が低下する。
【0055】
ここで、ダイマー酸型ジアミンとは、ダイマー酸の二つの末端カルボン酸基(-COOH)が、1級のアミノメチル基(-CH2-NH2)又はアミノ基(-NH2)に置換されてなるジアミンを意味する。ダイマー酸は、不飽和脂肪酸の分子間重合反応によって得られる既知の二塩基酸であり、その工業的製造プロセスは業界でほぼ標準化されており、炭素数が11~22の不飽和脂肪酸を粘土触媒等にて二量化して得られる。工業的に得られるダイマー酸は、オレイン酸やリノール酸などの炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化することによって得られる炭素数36の二塩基酸が主成分であるが、精製の度合いに応じ、任意量のモノマー酸(炭素数18)、トリマー酸(炭素数54)、炭素数20~54の他の重合脂肪酸を含有する。本発明では、ダイマー酸は分子蒸留によってダイマー酸含有量を90重量%以上にまで高めたものを使用することが好ましい。また、ダイマー化反応後には二重結合が残存するが、本発明では、更に水素添加反応して不飽和度を低下させたものもダイマー酸に含めるものとする。
【0056】
ダイマー酸型ジアミンの特徴として、ダイマー酸の骨格に由来する特性をポリイミドに付与することができる。すなわち、ダイマー酸型ジアミンは、分子量約560~620の巨大分子の脂肪族であるので、分子のモル体積を大きくし、ポリイミドの極性基を相対的に減らすことができる。このようなダイマー酸型ジアミンの特徴は、ポリイミドの耐熱性の低下を抑制しつつ、誘電率と誘電正接を小さくして誘電特性を向上させることに寄与すると考えられる。また、2つの自由に動く炭素数7~9の疎水鎖と、炭素数18に近い長さを持つ2つの鎖状の脂肪族アミノ基とを有するので、ポリイミドに柔軟性を与えるのみならず、ポリイミドを非対象的な化学構造や非平面的な化学構造とすることができるので、ポリイミドの低誘電率化及び低誘電正接化を図ることができると考えられる。
【0057】
ダイマー酸型ジアミンは、市販品が入手可能であり、例えばクローダジャパン社製のPRIAMINE1073(商品名)、同PRIAMINE1074(商品名)、同PRIAMINE1075(商品名)、BASFジャパン社製のバーサミン551(商品名)、同バーサミン552(商品名)等が挙げられる。
【0058】
また、接着性ポリイミドは、下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を、全ジアミン残基100モル部に対して、合計で1モル部以上50モル部以下の範囲内で含有することが好ましく、1モル部以上20モル部以下の範囲内で含有することがより好ましい。一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物は、屈曲性を有する分子構造を持つため、これらから選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物を上記範囲内の量で使用することによって、ポリイミド分子鎖の柔軟性を向上させ、溶剤可溶性と熱可塑性を付与することができる。また、一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物を用いることによって、例えば接着層30にレーザー加工によりビアホール(貫通孔)を形成する場合でも、ポリイミド分子構造中の芳香環の割合が高くなることで、例えば紫外線領域の吸収性を高めることができる他、接着層30のガラス転移温度を高めることができ、これによってレーザー光の入熱によるボトム金属の温度上昇に対する耐熱性を向上させることができるため、レーザー加工性をより向上させることができる。下記の一般式(B1)~(B7)で表されるジアミン化合物から選ばれる少なくとも1種のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基の合計量が、全ジアミン残基の100モル部に対して50モル部を超えると、接着性ポリイミドの柔軟性が不足し、またガラス転移温度が上昇するため、熱圧着による残留応力が増加しエッチング後寸法変化率が悪化する傾向になる。
【0059】
【0060】
式(B1)~(B7)において、R1は独立に炭素数1~6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、連結基Aは独立に-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO2-、-COO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-NH-若しくは-CONH-から選ばれる2価の基を示し、n1は独立に0~4の整数を示す。ただし、式(B3)中から式(B2)と重複するものは除き、式(B5)中から式(B4)と重複するものは除くものとする。
なお、「独立に」とは、上記式(B1)~(B7)の内の一つにおいて、または二つ以上において、複数の連結基A、複数のR1若しくは複数のn1が、同一でもよいし、異なっていてもよいことを意味する。また、式(B1)~(B7)において、末端の二つのアミノ基における水素原子は置換されていてもよく、例えば-NR2R3(ここで、R2,R3は、独立してアルキル基などの任意の置換基を意味する)であってもよい。
【0061】
式(B1)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B1)」と記すことがある)は、2つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B1)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B1)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-CO-、-SO2-、-S-、-COO-が好ましい。
【0062】
ジアミン(B1)としては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミン等を挙げることができる。
【0063】
式(B2)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B2)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B2)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B2)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0064】
ジアミン(B2)としては、例えば1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン、3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0065】
式(B3)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B3)」と記すことがある)は、3つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B3)は、1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B3)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0066】
ジアミン(B3)としては、例えば1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4'-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン、4,4'-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ビスオキシ]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0067】
式(B4)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B4)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B4)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結したアミノ基と2価の連結基Aとがメタ位にあることで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B4)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-SO2-、-CO-、-CONH-が好ましい。
【0068】
ジアミン(B4)としては、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4'-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリド等を挙げることができる。
【0069】
式(B5)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B5)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B5)は、少なくとも1つのベンゼン環に直結した、2つの2価の連結基Aが互いにメタ位にあることで、ポリイミド分子鎖が有する自由度が増加して高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B5)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0070】
ジアミン(B5)としては、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]フェノキシ]アニリン、4,4’-[オキシビス(3,1-フェニレンオキシ)]ビスアニリン等を挙げることができる。
【0071】
式(B6)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B6)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B6)は、少なくとも2つのエーテル結合を有することで高い屈曲性を有しており、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B6)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-C(CH3)2-、-O-、-SO2-、-CO-が好ましい。
【0072】
ジアミン(B6)としては、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)等を挙げることができる。
【0073】
式(B7)で表されるジアミン(以下、「ジアミン(B7)」と記すことがある)は、4つのベンゼン環を有する芳香族ジアミンである。このジアミン(B7)は、ジフェニル骨格の両側に、それぞれ屈曲性の高い2価の連結基Aを有するため、ポリイミド分子鎖の柔軟性の向上に寄与すると考えられる。従って、ジアミン(B7)を用いることで、ポリイミドの熱可塑性が高まる。ここで、連結基Aとしては、-O-が好ましい。
【0074】
ジアミン(B7)としては、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニル等を挙げることができる。
【0075】
接着性ポリイミドは、発明の効果を損なわない範囲で、上記ダイマー酸型ジアミン及びジアミン(B1)~(B7)以外のジアミン化合物から誘導されるジアミン残基を含むことができる。
【0076】
また、接着性ポリイミドは、上記テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の種類や、2種以上のテトラカルボン酸残基又はジアミン残基を含有する場合のそれぞれのモル比を選定することにより、熱膨張係数、引張弾性率、ガラス転移温度等を制御することができる。また、ポリイミドの構造単位を複数有する場合は、ブロックとして存在しても、ランダムに存在していてもよいが、ランダムに存在することが好ましい。
【0077】
接着性ポリイミドのイミド基濃度は、20重量%以下であることが好ましい。ここで、「イミド基濃度」は、ポリイミド中のイミド基部(-(CO)2-N-)の分子量を、ポリイミドの構造全体の分子量で除した値を意味する。イミド基濃度が20重量%を超えると、樹脂自体の分子量が小さくなるとともに、極性基の増加によって低吸湿性も悪化し、弾性率が上昇する。
【0078】
接着性ポリイミドの重量平均分子量は、例えば10,000~400,000の範囲内が好ましく、20,000~350,000の範囲内がより好ましい。重量平均分子量が10,000未満であると、接着層30の強度が低下して脆化しやすい傾向となる。一方、重量平均分子量が400,000を超えると、過度に粘度が増加して塗工作業の際に接着層30の厚みムラ、スジ等の不良が発生しやすい傾向になる。
【0079】
接着性ポリイミドは、多層回路基板を形成する場合に、任意の回路基板の導体回路層を被覆するものであることから、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm-1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm-1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出することができる。
【0080】
(架橋形成)
接着性ポリイミドがケトン基を有する場合に、該ケトン基と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させることによって、架橋構造を形成することができる。架橋構造の形成によって、接着性ポリイミドの耐熱性を向上させることができる。ケトン基を有するポリイミドを形成するために好ましいテトラカルボン酸無水物としては、例えば3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を、ジアミン化合物としては、例えば、4,4’―ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等の芳香族ジアミンを挙げることができる。
【0081】
接着性ポリイミドの架橋形成に使用可能なアミノ化合物としては、ジヒドラジド化合物、芳香族ジアミン、脂肪族アミン等を例示することができる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物が好ましい。ジヒドラジド化合物以外の脂肪族アミンは、室温でも架橋構造を形成しやすく、ワニスの保存安定性の懸念があり、一方、芳香族ジアミンは、架橋構造の形成のために高温にする必要がある。ジヒドラジド化合物を使用した場合は、ワニスの保存安定性と硬化時間の短縮化を両立させることができる。ジヒドラジド化合物としては、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ二酸ジヒドラジド、4,4-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物が好ましい。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
【0082】
接着性ポリイミドは、上記のテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶媒中で反応させ、ポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0~100℃の範囲内の温度で30分~24時間撹拌し重合反応させることで接着性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5~50重量%の範囲内、好ましくは10~40重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、2-ブタノン、ジメチルスホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホルアミド、N-メチルカプロラクタム、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム、クレゾール等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。また、このような有機溶媒の使用量としては特に制限されるものではないが、重合反応によって得られるポリアミド酸溶液の濃度が5~50重量%程度になるような使用量に調整して用いることが好ましい。
【0083】
合成されたポリアミド酸は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、ポリアミド酸は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。ポリアミド酸の溶液の粘度は、500cps~100,000cpsの範囲内であることが好ましい。この範囲を外れると、コーター等による塗工作業の際にフィルムに厚みムラ、スジ等の不良が発生し易くなる。
【0084】
ポリアミド酸をイミド化させてポリイミドを形成させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80~400℃の範囲内の温度条件で1~24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
【0085】
以上のようにして得られた接着性ポリイミドを架橋形成させる場合は、ケトン基を有するポリイミドを含む樹脂溶液に、上記アミノ化合物を加えて、接着性ポリイミド中のケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させる。この縮合反応により、樹脂溶液は硬化して硬化物となる。この場合、アミノ化合物の添加量は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル~1.5モルがよく、好ましくは0.005モル~1.2モル、より好ましくは0.03モル~0.9モル、最も好ましくは0.04モル~0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することができる。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物によるポリイミド鎖の架橋が十分ではないため、硬化させた後の接着層30において耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、接着層30の耐熱性を低下させる傾向がある。
【0086】
架橋形成のための縮合反応の条件は、接着性ポリイミドにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成する条件であれば、特に制限されない。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又は接着性ポリイミドの合成後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120~220℃の範囲内が好ましく、140~200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、30分~24時間程度が好ましく、反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm-1付近のポリイミド樹脂におけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm-1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができる。
【0087】
接着性ポリイミドのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、(a)接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱する方法、(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、接着性ポリイミドの合成(イミド化)に引き続き、イミド化若しくはアミド化に関与しない残りのアミノ化合物とともに接着性ポリイミドを加熱する方法、又は、(c)アミノ化合物を添加した接着性ポリイミドの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱する方法、等によって行うことができる。
【0088】
接着層30の耐熱性付与のため、接着性ポリイミドにおける架橋構造の形成でイミン結合の形成を説明したが、これに限定されるものではなく、接着層30の硬化方法として、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を配合し硬化することも可能である。
【0089】
<樹脂層の厚み>
金属張積層板100は、絶縁樹脂層10の厚みT3と接着層30の厚みT2との合計厚みをT1としたとき、該合計厚みT1が50~250μmの範囲内であり、70~150μmの範囲内であることが好ましい。合計厚みT1が50μm未満では、金属張積層板100を用いて多層回路基板を製造した際の伝送損失を低下させる効果が不十分となり、250μmを超えると、生産性低下の恐れがある。
【0090】
また、接着層30の厚みT2は、例えば20~200μmの範囲内にあることが好ましく、20~100μmの範囲内がより好ましい。接着層30の厚みT2が上記下限値に満たないと、高周波基板として伝送損失が大きくなることがある。一方、接着層30の厚みT2が上記上限値を超えると、寸法安定性が低下するなどの不具合が生じることがある。
【0091】
また、合計厚みT1に対する接着層30の厚みT2の比率(T2/T1)は、0.5~0.8の範囲内であり、0.5~0.7の範囲内であることが好ましい。比率(T2/T1)が0.5未満では、合計厚みT1を50μm以上にすることが困難となり、0.8を超えると寸法安定性が低下するなどの不具合が生じる。
【0092】
絶縁樹脂層10の厚みT3は、例えば、12~100μmの範囲内にあることが好ましく、12~50μmの範囲内がより好ましい。絶縁樹脂層10の厚みT3が上記の下限値に満たないと、金属張積層板100の反りなどの問題が生じることがある。絶縁樹脂層10の厚みT3が上記の上限値を超えると、生産性が低下するなどの不具合が生じる。
【0093】
本実施の形態の金属張積層板100では、樹脂層全体の低誘電正接化を図り、高周波伝送への対応を可能にするため、接着層30の厚みT2自体を大きくしている。しかし、一般に弾性率が低い材料は高い熱膨張係数を示すため、層厚を大きくすることは、寸法安定性の低下を招く恐れがある。ここで、金属張積層板100を回路加工して多層回路化する場合に発生する寸法変化は、主に、下記のa)~c)のメカニズムによって発生し、b)とc)の合計量がエッチング後の寸法法変化となって発現する、と考えられる。
a)金属張積層板100の製造時に、樹脂層に内部応力が蓄積される。
b)回路加工時に、金属層20をエッチングすることによって、a)で蓄積した内部応力が開放され、樹脂層が膨張もしくは収縮する。
c)回路加工時に、金属層20をエッチングすることによって、露出した樹脂が吸湿し、膨張する。
【0094】
上記a)の内部応力の要因は、ア)金属層20と樹脂層との熱膨張係数の差、イ)フィルム化によって生じる樹脂内部歪み、である。ここで、ア)に起因する内部応力の大きさは、熱膨張係数の差だけでなく、多層回路化の際の接着時の温度(加熱温度)から冷却固化の温度までの温度差ΔTも影響する。つまり、内部応力は、温度差ΔTに比例して大きくなるため、金属層20と樹脂層との熱膨張係数の差が小さくても、接着に高温が必要な樹脂であるほど、内部応力は大きくなる。本実施の形態の金属張積層板100では、接着層30として、上記条件(i)~(iii)を満たすものを採用することによって、内部応力を小さくして寸法安定性を確保している。また、接着層30は、絶縁樹脂層10に積層されているので、多層回路基板を形成した場合に中間層としての機能を果たし、反りと寸法変化を抑制する。
【0095】
[金属張積層板の製造方法]
金属張積層板100は、例えば以下の方法1、又は、方法2で製造できる。
[方法1]
接着層30となる樹脂組成物をフィルム状に成形して接着フィルムとし、該接着フィルムを、片面金属張積層板40の絶縁樹脂層10に対向するように配置して貼り合わせ、熱圧着させる方法。
[方法2]
接着層30となる樹脂組成物の溶液を、片面金属張積層板40の絶縁樹脂層10上に、所定の厚みで塗布・乾燥する方法。この場合、必要に応じて硬化反応や架橋反応のための加熱等の処理を行ってもよい。
【0096】
方法1で用いる接着フィルムは、例えば、任意の支持基材に、接着層30となる樹脂組成物の溶液を塗布・乾燥した後、支持基材から剥離することによって製造できる。接着フィルムとして、上述の接着性ポリイミドをフィルム状に形成してなる接着性ポリイミドフィルムを使用してもよい。接着性ポリイミドフィルムの製造方法の態様として、例えば、[1]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥し、熱処理してイミド化した後、支持基材から剥がして接着フィルムを製造する方法、[2]支持基材に、ポリアミド酸の溶液を塗布・乾燥した後、ポリアミド酸のゲルフィルムを支持基材から剥がし、熱処理してイミド化して接着フィルムを製造する方法、[3]支持基材に、接着性ポリイミドの溶液を塗布・乾燥した後、支持基材から剥がして接着フィルムを製造する方法、を挙げることができる。上記[1]~[3]の中でも、ポリアミド酸溶液中でイミド化を完結させた接着性ポリイミドの溶液を支持基材上に塗布・乾燥する[3]の方法によって形成することが好ましい。接着性ポリイミドは溶剤可溶性であるので、ポリアミド酸を溶液の状態でイミド化し、接着性ポリイミドの塗布液としてそのまま使用できるので有利である。なお、接着フィルムを構成する接着性ポリイミドについて、上記方法で架橋形成をさせてもよい。
【0097】
上記方法1、方法2において、接着層30となる樹脂組成物の溶液を支持基材や絶縁樹脂層10上に塗布する方法としては、特に制限されず、例えばコンマ、ダイ、ナイフ、リップ等のコーターにて塗布することが可能である。接着層30の形成工程では、形成される接着層30の表面を平坦状に形成することが好ましい。また、接着層30の厚みも均一に形成することが好ましい。接着層30の表面を平坦状に形成し、厚みを均一にすることにより、多層回路基板の製造工程における接着性が向上する。
【0098】
以上のようにして得られる本実施の形態の金属張積層板100は、金属層20を配線回路加工することによって、片面FPCや両面FPCを製造できるほか、さらに、接着層30の接着性を利用したり、任意のボンディングシートを利用するなどして、片面FPCや両面FPCを複数積層することによって、多層回路基板を製造することができる。
【0099】
[回路基板]
図2は、本発明の一実施の形態の回路基板の構造を示す断面図である。この回路基板101は、絶縁樹脂層10と、絶縁樹脂層10の一方の面に積層された導体回路層50と、絶縁樹脂層10のもう一方の面に積層された接着層30と、を備えている。つまり、回路基板101は、導体回路層50/絶縁樹脂層10/接着層30が、この順に積層された構造である。本実施の形態の回路基板101は、金属張積層板100の金属層20を配線回路加工することによって得られる。
【0100】
(導体回路層)
導体回路層50は、絶縁樹脂層10の片面に所定のパターンで導体回路が形成された層である。例えば、金属張積層板100の金属層20上に感光性レジストを塗布し、露光、現像を行い、所定のマスクパターンを形成し、マスクパターンを介して金属層20のエッチングを行った後、マスクパターンを除去することによって、所定パターンの導体回路層50を形成することができる。なお「導体回路層」とは、絶縁樹脂層10の面方向に形成された面内接続電極(ランド電極)を意味し、層間接続電極(ビア電極)と区別している。
【0101】
導体回路層50は、高周波伝送における伝送損失を低減する観点から、絶縁樹脂層10と接する面の最大高さ粗さ(Rz)が1.0μm以下であることが好ましい。伝送損失は、導体損失と誘電損失の和からなるが、導体回路層50のRzが大きいと導体損失が大きくなって、伝送損失に悪影響を及ぼすため、Rzを制御することが好ましい。
【0102】
本実施の形態の回路基板101における絶縁樹脂層10及び接着層30の構成は、金属張積層板100において説明したとおりである。
【0103】
[多層回路基板]
次に、
図3~
図6を参照しながら、本発明の実施の形態にかかる多層回路基板について説明する。一般に、多層回路基板は、複数の絶縁樹脂層を含む積層体と、該積層体の内部に埋め込まれた2層以上の導体回路層とを有するものであり、好ましくは、少なくとも2層以上の絶縁樹脂層及び少なくも2層以上の導体回路層を有するものである。ここでは、多層回路基板について、2つの好ましい実施の形態を挙げて説明する。本実施の形態の多層回路基板200,201は、上記回路基板101を少なくとも1つ以上を含んでいる。また、本実施の形態の多層回路基板200,201は、上記回路基板101に積層される、回路基板101以外の任意の回路基板を1つ以上含むことができる。
【0104】
<第1の実施形態>
図3は、本発明の第1の実施の形態の多層回路基板200の構造を示す積層方向における断面図である。第1の実施の形態の多層回路基板200は、複数の回路基板101と、任意の回路基板110を同じ向きに重ねて積層した構造である。
すなわち、
図3中の上から下へ、一つ目の回路基板101の接着層30が、二つ目の回路基板101の導体回路層50を覆うように接して積層され、さらに、二つ目の回路基板101の接着層30が、接着層30を有しない任意の回路基板110の導体回路層50を覆うように接して積層されている。ここで、任意の回路基板110の構造や材質は限定されるものではなく、例えばパターン化された金属層20によって導体回路層50が形成されているものでもよいし、ダマシン構造の導体回路層50を有するものでもよい。また、任意の回路基板110における導体回路層50は、絶縁樹脂層10にインクジェット、スパッタ、メッキ等によって形成されたものであってもよい。さらに、任意の回路基板110における導体回路層50や絶縁樹脂層10の厚み、材質、物性なども特に限定されるものではない。
【0105】
図3では、2つの回路基板101と1つの任意の回路基板110との積層構造を図示しているが、3つ以上の回路基板101が積層されていてもよい。また、接着層30は、隣接する回路基板101もしくは任意の回路基板110の導体回路層50の全部を被覆してもよいし、一部分を被覆していてもよい。さらに、多層回路基板200は、最上部の回路基板101の表面に導体回路層50が露出しているが、最上部の導体回路層50を覆う任意の保護膜を設けてもよい。また、
図3では、任意の回路基板110として、絶縁樹脂層10の片面に導体回路層50が形成されている場合を例示しているが、絶縁樹脂層10の両面にそれぞれ導体回路層50が形成されているものでもよい。
【0106】
図4は、第1の実施の形態に係る多層回路基板200の製造工程図である。まず、複数の回路基板101と、任意の回路基板110を準備する。そして、一つ目の回路基板101の接着層30が、二つ目の回路基板101の導体回路層50に対向し、二つ目の回路基板101の接着層30が、接着層30を有しない任意の回路基板110の導体回路層50に対向するように重ねて配置し、これらを一括して圧着することによって製造することができる(圧着工程)。なお、
図4では、2つの回路基板101を積層する例を示したが、3つ以上の回路基板101を一度に積層することもできる。また、任意の回路基板110も、1つに限らず、複数を積層することが可能である。
【0107】
回路基板101の接着層30は、その表面が平坦化されているため、圧着工程で接着層30に空隙等が生じることなく、接着性樹脂が導体回路層50における導体回路間に充填された状態で積層することが可能となる。また、必要に応じて、積層して得られた多層回路基板200を、両側から加圧ローラやプレス装置等によって加圧することにより、上記接着層30の厚みを調整する厚み調整工程を行うこともできる。厚み調整工程により、接着層30及び多層回路基板200全体の厚みの精度を向上させることができる。さらに、圧着時には、例えば60~220℃の温度で加熱する加熱処理を行うこともできる。これにより、複数の回路基板が一体的に積層された多層回路基板200が製造される。この加熱処理の際、接着層30において、例えば接着性ポリイミドの加熱縮合によるイミン結合の架橋構造を形成させることもできる。
【0108】
本実施の形態において、各回路基板101の接着層30は、回路基板どうしを接着させるボンディングシートとしての機能と、導体回路を保護する保護膜としての機能を有する。そのため、別途、ボンディングシートや導体回路用保護層を準備して回路基板間に介在させる必要がなく、多層回路形成のためのプロセス及び設備の簡略化と、材料の簡素化及びコスト削減を図ることが可能になる。
【0109】
以上のようにして得られる多層回路基板200は、導体回路層50及び絶縁樹脂層10の間に、絶縁性、柔軟性及び低誘電特性を確保するために十分な厚みを有する接着層30を設けた構成を備えている。なお、本実施の形態の多層回路基板200には、必要に応じて、保護層としてカバーレイフィルム若しくはソルダーレジストなどの層を設けてもよい。また、図示は省略するが、本実施の形態の多層回路基板200の内部には、例えばICチップやチップコンデンサ、チップコイル、チップ抵抗等のチップ型の電子部品を内蔵することもできる。また、本実施の形態の多層回路基板200には、図示しない層間接続電極(ビア電極)が形成されていてもよい。層間接続電極は、絶縁樹脂層10にレーザー加工やドリル加工によりビアホールを形成した後、印刷等により導電性ペーストを充填することにより形成することができる。導電性ペーストは、例えば錫を主成分とする導電性粉末に、有機溶剤やエポキシ樹脂等が混合されたものを用いることができる。また、層間接続電極は、ビアホールを形成した後、ビアホールの内面、及び導体回路層50の表面の一部にメッキ部を形成してもよい。
【0110】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る多層回路基板201の構造を示す積層方向における断面図である。第2の実施の形態の多層回路基板201では、一対の回路基板101を、それらの接着層30どうしが対向するようにして貼り合わせた構造を一つの回路基板ユニット102とし、該回路基板ユニット102を少なくとも1つ以上含んでいる。
すなわち、
図5における上から下へ、一つ目の金属張積層板100、回路基板ユニット102、二つ目の金属張積層板100(ただし、一つ目の金属張積層板100とは逆向き)の順に配置されており、二つの金属張積層板100の接着層30の間に上記回路基板ユニット102が挟み込まれる形で積層されている。一つ目の金属張積層板100の接着層30は、回路基板ユニット102の片面側(図中、上側)の導体回路層50に接するように積層され、さらに、回路基板ユニット102のもう片面側(図中、下側)の導体回路層50に、二つ目の金属張積層板100の接着層30が接するように積層されている。なお、
図5では、回路基板ユニット102を1つだけ含む積層構造を図示しているが、さらにボンディングシートや回路基板101もしくは任意の回路基板110を介在させることによって、複数の回路基板ユニット102を含む積層構造としてもよい。また、上下二つの金属張積層板100の片方又は両方として、上記回路基板101を用いてもよい。
【0111】
図6は、第2の実施の形態に係る多層回路基板201の製造工程図である。まず、一つの回路基板ユニット102と、二つの金属張積層板100を準備する。ここで、回路基板ユニット102は、一対の回路基板101を準備し、一方の回路基板101の接着層30と、他方の回路基板101の接着層30とを貼り合わせることによって作製できる。そして、多層回路基板201は、一つ目の金属張積層板100の接着層30が、回路基板ユニット102の上面側の導体回路層50に対向するように配置し、さらに、回路基板ユニット102の下面側の導体回路層50に、二つ目の金属張積層板100の接着層30が対向するように配置して、これらを一括して圧着することによって製造することができる(圧着工程)。
【0112】
なお、回路基板ユニット102を作製せずに、一つ目の金属張積層板100の接着層30が、上側の回路基板101の導体回路層50に対向するように配置し、上側の回路基板101の接着層30と下側の回路基板101の接着層30が対向するように配置し、さらに、下側の回路基板101の導体回路層50に、二つ目の金属張積層板100の接着層30が対向するように配置して、これらを一括して圧着することもできる。
【0113】
必要に応じて、積層して得られた多層回路基板201を、両側から加圧ローラやプレス装置等によって加圧することにより、接着層30の厚みを調整する厚み調整工程を行うこともできる。厚み調整工程により、接着層30及び多層回路基板201全体の厚みの精度を向上させることができる。さらに、圧着時には、例えば60~220℃の温度で加熱する加熱処理を行うこともできる。これにより、複数の回路基板が一体的に積層された多層回路基板201が製造される。この加熱処理の際、接着層30において、例えば接着性ポリイミドの加熱縮合によるイミン結合の架橋構造を形成させることもできる。
【0114】
本実施の形態においても、各回路基板101の接着層30は、回路基板どうしを接着させるボンディングシートとしての機能を有する。そのため、別途、ボンディングシートを準備して回路基板間に介在させる必要がなく、多層回路形成のためのプロセス及び設備の簡略化と、材料の簡素化及びコスト削減を図ることが可能になる。
【0115】
本実施の形態の多層回路基板201の他の構成及び効果は、第1の実施の形態の多層回路基板200と同様である。
【実施例】
【0116】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
【0117】
[寸法変化率の測定]
寸法変化率の測定は、以下の手順で行った。まず、150mm角の試験片を用い、100mm間隔にてドライフィルムレジストを露光、現像することによって、位置測定用ターゲットを形成する。温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中にてエッチング前(常態)の寸法を測定した後に、試験片のターゲット以外の銅をエッチング(液温40℃以下、時間10分以内)により除去する。温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に24±4時間静置後、エッチング後の寸法を測定する。MD方向(長手方向)及びTD方向(幅方向)の各3箇所の常態に対する寸法変化率を算出し、各々の平均値をもってエッチング後の寸法変化率とする。エッチング後寸法変化率は下記数式により算出した。
【0118】
エッチング後寸法変化率(%)=(B-A)/A×100
A;エッチング前のターゲット間距離
B;エッチング後のターゲット間距離
【0119】
次に、本試験片を250℃のオーブンで1時間加熱処理し、その後の位置ターゲット間の距離を測定する。MD方向(長手方向)及びTD方向(幅方向)の各3箇所のエッチング後に対する寸法変化率を算出し、各々の平均値をもって加熱処理後の寸法変化率とする。加熱寸法変化率は下記数式により算出した。
【0120】
加熱後寸法変化率(%)=(C―B)/B×100
B;エッチング後のターゲット間距離
C;加熱後のターゲット間距
【0121】
[粘度の測定]
E型粘度計(ブルックフィールド社製、商品名;DV-II+Pro)を用いて、25℃における粘度を測定した。トルクが10%~90%になるよう回転数を設定し、測定を開始してから2分経過後、粘度が安定した時の値を読み取った。
【0122】
[熱膨張係数(CTE)の測定]
3mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを、サーモメカニカルアナライザー(Bruker社製、商品名;4000SA)を用い、5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度で30℃から300℃まで昇温させ、更にその温度で10分保持した後、5℃/分の速度で冷却し、250℃から100℃までの平均熱膨張係数(熱膨張係数)を求めた。
【0123】
[貯蔵弾性率及びガラス転移温度(Tg)の測定]
5mm×20mmのサイズの樹脂シートを、動的粘弾性測定装置(DMA:ユー・ビー・エム社製、商品名;E4000F)を用いて、30℃から400℃まで昇温速度4℃/分、周波数11Hzで測定を行った。また、弾性率変化(tanδ)が最大となる温度をガラス転移温度とした。
【0124】
[誘電率および誘電正接の測定]
ベクトルネットワークアナライザ(Agilent社製、商品名E8363C)ならびにSPDR共振器を用いて、10GHzにおける樹脂シートの誘電率および誘電正接を測定した。なお、測定に使用した材料は、温度;24~26℃、湿度45℃~55%RHの条件下で、24時間放置したものである。
【0125】
[銅箔の表面粗度の測定]
AFM(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:Dimension Icon型SPM)、プローブ(ブルカー・エイエックスエス社製、商品名:TESPA(NCHV)、先端曲率半径10nm、ばね定数42N/m)を用いて、タッピングモードで、銅箔表面の80μm×80μmの範囲について測定し、十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。
【0126】
合成例に用いた略号は、以下の化合物を示す。
〇BPDA:3,3',4,4'‐ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
〇BPADA:2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物
〇PMDA:ピロメリット酸二無水物
〇BTDA:3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
〇m‐TB:2,2'‐ジメチル‐4,4'‐ジアミノビフェニル
〇TPE-R:1,3-ビス(4‐アミノフェノキシ)ベンゼン
〇ビスアニリン-M:1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン
〇BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
〇DDA:炭素数36の脂肪族ジアミン(クローダジャパン株式会社製、商品名;PRIAMINE1074、アミン価;205mgKOH/g、環状構造及び鎖状構造のダイマージアミンの混合物、ダイマー成分の含有量;95重量%以上)
〇DMAc:N,N‐ジメチルアセトアミド
〇NMP:N-メチル-2-ピロリドン
〇N-12:ドデカン二酸ジヒドラジド
〇OP935:有機ホスフィン酸アルミニウム塩(クラリアントジャパン社製、商品名;Exolit OP935)
〇R710:(商品名、(株)プリンテック製、ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量170、常温で液状、重量平均分子量:約340)
〇VG3101L:(商品名、(株)プリンテック製、多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量:210、軟化点39~46℃)
〇SR35K:(商品名、株式会社プリンテック製、エポキシ樹脂、エポキシ当量:930~940、軟化点:86~98℃)
〇YDCN-700-10:(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量210、軟化点75~85℃)
〇ミレックスXLC-LL:(商品名、三井化学(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量:175、軟化点:77℃、吸水率:1質量%、加熱質量減少率:4質量%)
〇HE200C-10:(商品名、エア・ウォーター(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量:200、軟化点:65~76℃、吸水率:1質量%、加熱質量減少率:4質量%)
〇HE910-10:(商品名、エア・ウォーター(株)製、フェノール樹脂、水酸基当量:101、軟化点:83℃、吸水率:1質量%、加熱質量減少率:3質量%)
〇SC1030-HJA:(商品名、アドマテックス(株)製、シリカフィラー分散液、平均粒径:0.25μm)
〇アエロジルR972:(商品名、日本アエロジル(株)製、シリカ、平均粒子径:0.016μm)
〇アクリルゴムHTR-860P-30B-CHN:(サンプル名、帝国化学産業(株)製、重量平均分子量:23万、グリシジル官能基モノマー比率:8%、Tg:-7℃)
〇アクリルゴムHTR-860P-3CSP:(サンプル名、帝国化学産業(株)製、重量平均分子量:80万、グリシジル官能基モノマー比率:3%、Tg:-7℃)
〇A-1160:(商品名、GE東芝(株)製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン)
〇A-189:(商品名、GE東芝(株)製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)
〇キュアゾール2PZ-CN:(商品名、四国化成工業(株)製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)
〇RE-810NM:(商品名、日本化薬株式会社製、ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル(性状:液状))
〇フォレットSCS:(商品名、綜研化学株式会社製、スチリル基含有アクリルポリマー(Tg:70℃,重量平均分子量:15000))
〇BMI-1:(商品名、東京化成株式会社製、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン)
〇TPPK:(商品名、東京化成株式会社製、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボラート)
〇HP-P1:(商品名、水島合金鉄株式会社製、窒化ホウ素フィラー)
【0127】
(合成例1)
<接着層用の樹脂溶液Aの調製>
表1に品名及び組成比(単位:質量部)の(a)熱硬化性樹脂としての
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂、(c)無機フィラーからなる組成物にシクロヘキサノンを加え、撹拌混合した。これに、表1に示す、(b)高分子量成分としてのアクリルゴムを加えて撹拌し、更に表1に示す(e)カップリング剤及び(d)硬化促進剤を加えて各成分が均一になるまで撹拌して接着層用の樹脂溶液Aを得た。
【0128】
【0129】
(合成例2)
<ポリイミド樹脂(PI-1)の合成および接着層用の樹脂溶液Bの調製>
温度計、攪拌機、冷却管、及び窒素流入管を装着した300mLフラスコ中に、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:LP-7100)15.53g、ポリオキシプロピレンジアミン(BASF株式会社製、商品名:D400、分子量:450)28.13g、及び、NMP100.0gを仕込んで攪拌して、反応液を調製した。ジアミンが溶解した後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、予め無水酢酸からの再結晶により精製した4,4’-オキシジフタル酸二無水物32.30gを反応液に少量ずつ添加した。常温(25℃)で8時間反応させた後、キ
シレン67.0gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱することにより、水と共にキシレンを共沸除去した。その反応液を大量の水中に注ぎ、沈澱した樹脂を濾過により採取し、乾燥してポリイミド樹脂(PI-1)を得た。得られたポリイミド樹脂(PI-1)の分子量をGPCにて測定したところ、ポリスチレン換算で、数平均分子量Mn=22400、重量平均分子量Mw=70200であった。
上記で得たポリイミド樹脂(PI-1)を用いて、表2に示す組成比(単位:質量部)で各成分を配合して、接着層用の樹脂溶液Bを得た。
【0130】
【0131】
(合成例3)
<接着層用の樹脂溶液Cの調製>
窒素導入管、攪拌機、熱電対、ディーンスタークトラップ、冷却管を付した500mLの4ッ口フラスコに、44.92gのBTDA(0.139モル)、75.08gのDDA(0.141モル)、168gのNMP及び112gのキシレンを装入し、40℃で30分間混合して、ポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、4時間加熱、攪拌し、留出する水及びキシレンを系外に除去した。その後、100℃まで冷却し、112gのキシレンを加え撹拌し、更に30℃まで冷却することでイミド化を完結し、接着層用の樹脂溶液C(固形分;29.5重量%、重量平均分子量;75,700)を得た。
【0132】
(合成例4)
<接着層用の樹脂溶液Dの調製>
42.51gのBPADA(0.082モル)、34.30gのDDA(0.066モル)、6.56gのBAPP(0.016モル)、208gのNMP及び112gのキシレンを原料組成とした以外は、合成例3と同様にしてポリアミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸溶液を合成例3と同様にして処理し、接着層用の樹脂溶液D(固形分;30.0重量%、重量平均分子量;65,000)を得た。
【0133】
(合成例5)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液1の調製>
窒素気流下で、反応槽に、64.20gのm-TB(0.302モル)及び5.48gのビスアニリン-M(0.016モル)並びに重合後の固形分濃度が15重量%となる量のDMAcを投入し、室温で撹拌して溶解させた。次に、34.20gのPMDA(0.157モル)及び46.13gのBPDA(0.157モル)を添加した後、室温で3時間撹拌を続けて重合反応を行い、ポリアミド酸溶液1(粘度;26,500cps)を調製した。
【0134】
(合成例6)
<絶縁樹脂層用のポリアミド酸溶液2の調製>
69.56gのm-TB(0.328モル)、542.75gのTPE-R(1.857モル)、重合後の固形分濃度が12重量%となる量のDMAc、194.39gのPMDA(0.891モル)及び393.31gのBPDA(1.337モル)を原料組成とした以外は、合成例3と同様にしてポリアミド酸溶液2(粘度;2,650cps)を調製した。
【0135】
(作製例1)
<接着層用の樹脂シートAの調製>
接着層用の樹脂溶液Aを乾燥後の厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、さらに120℃で15分乾燥を行った後、離型基材上から剥離することで樹脂シートAを調製した。また、樹脂シートAについて、硬化後の物性を評価するため120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。その際、硬化後樹脂シートAは、Tg95℃であり、50℃での貯蔵弾性率が960MPa、180℃から260℃での貯蔵弾性率の最大値が7MPaであった。
【0136】
(作製例2)
<接着層用の樹脂シートBの調製>
接着層用の樹脂溶液Bを乾燥後の厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、さらに120℃で15分乾燥を行った後、離型基材上から剥離することで樹脂シートBを調製した。また、樹脂シートBについて、硬化後の物性を評価するため120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。その際、硬化後樹脂シートBは、Tg100℃以下であり、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下、180℃から260℃での貯蔵弾性率の最大値が70MPaであった。
【0137】
(作製例3)
<接着層用の樹脂シートCの調製>
接着層用の樹脂溶液Cの169.49g(固形分として50g)に1.8gのN-12(0.0036モル)及び12.5gのOP935を配合し、6.485gのNMPと19.345gのキシレンを加えて希釈して、ポリイミドワニス1を調製した。
【0138】
ポリイミドワニス1を乾燥後の厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シートCを調製した。樹脂シートCのTgは78℃であり、50℃での貯蔵弾性率が800MPa、180℃から260℃での貯蔵弾性率の最大値が10MPaであった。また、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.68、0.0028であった。
【0139】
(作製例4)
<接着層用の樹脂シートDの調製>
接着層用の樹脂溶液Dを乾燥後の厚みが50μmとなるように離型基材(縦×横×厚さ=320mm×240mm×25μm)のシリコーン処理面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、離型基材上から剥離することで樹脂シートDを調製した。樹脂シートDのTgは82℃であり、50℃での貯蔵弾性率が1800MPa以下、180℃から260℃での貯蔵弾性率の最大値が2MPa以下であった。また、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.80、0.0026であった。
【0140】
(作製例5)
<片面金属張積層板の調製>
銅箔1(電解銅箔、厚さ;12μm、樹脂層側の表面粗度Rz;0.6μm)の上に、ポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。次にその上にポリアミド酸溶液1を硬化後の厚みが、約21μmとなるように均一に塗布し、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、その上にポリアミド酸溶液2を硬化後の厚みが約2~3μmとなるように均一に塗布した後、120℃で加熱乾燥し溶媒を除去した。更に、120℃から360℃まで段階的な熱処理を行い、イミド化を完結して、片面金属張積層板1を調製した。片面金属張積層板1の寸法変化率は、次のとおりである。
MD方向(長手方向)のエッチング後寸法変化率;0.01%
TD方向(幅方向)のエッチング後寸法変化率;-0.04%
MD方向(長手方向)の加熱後寸法変化率;-0.03%
TD方向(幅方向)の加熱後寸法変化率;-0.01%
また、塩化第二鉄水溶液を用いて片面金属張積層板1の銅箔1をエッチング除去して調製したポリイミドフィルム1(厚み;25μm)におけるCTEは20.0ppm/Kであり、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、3.40、0.0029であった。
【0141】
[実施例1]
接着層用の樹脂溶液Aを乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板1の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、さらに120℃で15分乾燥を行うことで、接着層付片面金属張積層板1を調製した。また、接着層付片面金属張積層板1について、接着層硬化後の物性を評価するため120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。加熱後の接着層付片面金属張積層板1の評価結果は、次のとおりである。
MD方向のエッチング後寸法変化率;-0.05%
TD方向のエッチング後寸法変化率;-0.02%
MD方向の加熱後寸法変化率;-0.01%
TD方向の加熱後寸法変化率;-0.03%
加熱後の接着層付片面金属張積層板1の寸法変化は問題がなかった。また、加熱後の接着層付片面金属張積層板1における銅箔1をエッチング除去して調製した樹脂積層体1(厚み;75μm)におけるCTEは26.2ppm/Kであった。
【0142】
[実施例2]
接着層用の樹脂溶液Bを乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板1の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥し、さらに120℃で15分乾燥を行うことで、接着層付片面金属張積層板2を調製した。また、接着層付片面金属張積層板2について、接着層硬化後の物性を評価するため120℃のオーブンで2時間、170℃で3時間加熱した。加熱後の接着層付片面金属張積層板2の評価結果は、次のとおりである。
MD方向のエッチング後寸法変化率;-0.08%
TD方向のエッチング後寸法変化率;-0.06%
MD方向の加熱後寸法変化率;-0.03%
TD方向の加熱後寸法変化率;-0.06%
加熱後の接着層付片面金属張積層板2の寸法変化は問題がなかった。また、加熱後の接着層付片面金属張積層板2における銅箔1をエッチング除去して調製した樹脂積層体2(厚み;75μm)におけるCTEは25.0ppm/Kであった。
【0143】
[実施例3]
ポリイミドワニス1を乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板1の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥することで、接着層付片面金属張積層板3を調製した。また、接着層付片面金属張積層板3について、180℃のオーブンで1分間、150℃で30分間加熱した後、評価した結果は、次のとおりである。
MD方向のエッチング後寸法変化率;-0.05%
TD方向のエッチング後寸法変化率;-0.04%
MD方向の加熱後寸法変化率;0.05%
TD方向の加熱後寸法変化率;0.01%
加熱後の接着層付片面金属張積層板3の寸法変化は問題がなかった。また、加熱後の接着層付片面金属張積層板3における銅箔1をエッチング除去して調製した樹脂積層体3(厚み;75μm)におけるCTEは25.6ppm/Kであり、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.92、0.0028であった。
【0144】
[実施例4]
接着層用の樹脂溶液Dを乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板1の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥することで、接着層付片面金属張積層板4を調製した。また、接着層付片面金属張積層板4について、180℃のオーブンで1分間、150℃で30分間加熱した後に評価したところ、寸法変化は問題がなく、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、3.00、0.0027であった。
【0145】
[実施例5]
液晶ポリマーフィルム(クラレ社製、商品名;CT-Z、厚さ;25μm、CTE;18ppm/K、熱変形温度;300℃、Dk;3.40、Df;0.0022)を絶縁基材とし、その両面に銅箔1が設けられた両面金属張積層板1を準備した。両面金属張積層板1の片面の銅箔1をエッチング除去し、片面金属張積層板2を調製した。
【0146】
ポリイミドワニス1を乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板2の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥することで、接着層付片面金属張積層板5を調製した。また、接着層付片面金属張積層板5について、180℃のオーブンで1分間、150℃で30分間加熱した後に評価したところ、寸法変化は問題がなく、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、2.92、0.0026であった。
【0147】
[実施例6]
接着層用の樹脂溶液Dを乾燥後の厚みが50μmとなるように片面金属張積層板2の樹脂面に塗工した後、80℃で15分間加熱乾燥することで、接着層付片面金属張積層板6を調製した。また、接着層付片面金属張積層板6について、180℃のオーブンで1分間、150℃で30分間加熱した後に評価したところ、寸法変化は問題がなく、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)はそれぞれ、3.00、0.0025であった。
【0148】
[実施例7]
片面金属張積層板1の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された片面配線基板1を調製した。併せて、2枚の接着層付片面金属張積層板3の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された2枚の接着層付片面配線基板1を調製した。
【0149】
片面配線基板1の導体回路層と一つの接着層付片面配線基板1の接着層、一つの接着層付片面配線基板1の導体回路層ともう一つの接着層付片面配線基板1の接着層がそれぞれ対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、多層回路基板1を調製した。多層回路基板1の圧着面では、導体回路層に接着剤が十分に充填されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0150】
[実施例8]
2枚の接着層付片面配線基板1を準備し、一つの接着層付片面配線基板1の接着層ともう一つの接着層付片面配線基板1の接着層が対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、両面回路基板1を調製した。両面回路基板1の圧着面では、接着層同士が十分に接着されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0151】
[実施例9]
2枚の接着層付片面金属張積層板4の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された2枚の接着層付片面配線基板2を調製した。
【0152】
片面配線基板1の導体回路層と一つの接着層付片面配線基板2の接着層、一つの接着層付片面配線基板2の導体回路層ともう一つの接着層付片面配線基板2の接着層がそれぞれ対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、多層回路基板2を調製した。多層回路基板2の圧着面では、導体回路層に接着剤が十分に充填されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0153】
[実施例10]
2枚の接着層付片面配線基板2を準備し、一つの接着層付片面配線基板2の接着層ともう一つの接着層付片面配線基板2の接着層が対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、両面回路基板2を調製した。両面回路基板2の圧着面では、接着層同士が十分に接着されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0154】
[実施例11]
片面金属張積層板2の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された片面配線基板2を調製した。併せて、2枚の接着層付片面金属張積層板5の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された2枚の接着層付片面配線基板3を調製した。
【0155】
片面配線基板2の導体回路層と一つの接着層付片面配線基板3の接着層、一つの接着層付片面配線基板3の導体回路層ともう一つの接着層付片面配線基板3の接着層がそれぞれ対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、多層回路基板3を調製した。多層回路基板3の圧着面では、導体回路層に接着剤が十分に充填されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0156】
[実施例12]
2枚の接着層付片面配線基板3を準備し、一つの接着層付片面配線基板3の接着層ともう一つの接着層付片面配線基板3の接着層が対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、両面回路基板3を調製した。両面回路基板3の圧着面では、接着層同士が十分に接着されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0157】
[実施例13]
2枚の接着層付片面金属張積層板6の銅箔1に、サブトラクティブ法による回路加工を施し、導体回路層が形成された2枚の接着層付片面配線基板4を調製した。
【0158】
片面配線基板2の導体回路層と一つの接着層付片面配線基板4の接着層、一つの接着層付片面配線基板4の導体回路層ともう一つの接着層付片面配線基板4の接着層がそれぞれ対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、多層回路基板4を調製した。多層回路基板4の圧着面では、導体回路層に接着剤が十分に充填されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0159】
[実施例14]
2枚の接着層付片面配線基板4を準備し、一つの接着層付片面配線基板4の接着層ともう一つの接着層付片面配線基板4の接着層が対向するように重ね合わせた後、160℃、4MPaの条件で、60分間熱圧着する事で、両面回路基板4を調製した。両面回路基板4の圧着面では、接着層同士が十分に接着されており、熱圧着工程に起因する導体回路の乱れも生じていなかった。
【0160】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0161】
10…絶縁樹脂層、20…金属層、30…接着層、40…片面金属張積層板、50…導体回路層、100…金属張積層板、101…回路基板、102…回路基板ユニット、110…任意の回路基板、200,201…多層回路基板