(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】異なる線熱膨張係数を有する基材を構造的に接合する方法
(51)【国際特許分類】
C09J 5/06 20060101AFI20230220BHJP
C08G 18/80 20060101ALI20230220BHJP
C08G 59/46 20060101ALI20230220BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230220BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20230220BHJP
【FI】
C09J5/06
C08G18/80
C08G59/46
C09J11/06
C09J163/00
(21)【出願番号】P 2020531687
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085495
(87)【国際公開番号】W WO2019121682
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ウルス レイネッガー
(72)【発明者】
【氏名】エリス イェンドービ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ガロ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン クリューガー
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517001(JP,A)
【文献】特表2002-518579(JP,A)
【文献】特表2018-510933(JP,A)
【文献】特開2016-138273(JP,A)
【文献】特表2008-542484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C08G 18/80
C08G 59/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、熱安定性基材の接着結合法:
(i)一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、熱安定性基材S
1の表面に適用すること;
(ii)適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、さらなる熱安定性基材S
2の表面と接触させること、ここで、工程(ii)後の、適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さが、≧0.8m
mである;
(iii)100~220
℃の温度まで、前記組成物を加熱すること;
ここで、
前記一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、
(a)1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種のエポキシ樹脂Aと;
(b)エポキシ樹脂のための少なくとも一種の潜在的硬化剤Bと
;
(c)少なくとも一種の強靭性向上剤Dと
を含み、
少なくとも一種の
前記強靭性向上剤Dに対する、1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種の前記エポキシ樹脂Aの重量比が、0.3~2.2であり、且つ
前記強靭性向上剤Dが、下記の式(I)の末端がブロックされたポリウレタンプレポリマーであり:
【化1】
[式中、R
1は、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価の基であり;
pは2~8の値を有し;且つ
R
2は、100℃より高い温度において脱離する保護基であり、R
2は、下記からなる群から選択される
置換基ではない:
【化2】
(式中、
R
12は、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン
基であり;且つ
R
19は、ヒドロキシル基の除去後の、ビスフェノー
ルを表す)]、且つ
前記一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、加熱硬化したラップ剪断試験片の冷却の間にラップ剪断試験において決定する≧1.65mmの最大線膨張(最大伸び)を有し、
前記最大線膨張(最大伸び)を、0.40mm/分のひずみ速度V
stで、ラップ剪断試験において測定し、且つ
前記ラップ剪断試験における前記ラップ剪断試験片の温度が、前記測定の開始時に180
℃であり、且つ前記ラップ剪断試験片を、前記測定の開始時に40℃/分の冷却速度で25℃の温度まで冷却し、次いでその温度に保持する。
【請求項2】
R
2が、独立して、下記からなる群から選択される置換基である、請求項1に記載の方法:
【化3】
(式中、
R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基であるか、或いはR
5はR
6と一緒に、又はR
7はR
8と一緒に、4~7員の任意選択的に置換された環の一部を形成し;
R
9、R
9’及びR
10は、それぞれ独立して、アルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基又はアルキルオキシ又はアリールオキシ又はアラルキルオキシ基であり;
R
11はアルキル基であり、
R
13及びR
14は、それぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基であり;
R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり;且つ
R
18は、アラルキル基であるか、又は任意選択的に芳香族ヒドロキシル基を有する単環式若しくは多環式置換又は未置換芳香族基であり;
R
4は、ヒドロキシル及びエポキシ基除去後の、1級又は2級ヒドロキシル基を含有する脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族エポキシドの基であり;
且つmは、1、2又は3の値を有する)。
【請求項3】
R
2が、独立して、下記からなる群から選択される置換基である、請求項1又は2に記載の方法:
【化4】
(式中、
R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基であるか、或いはR
5はR
6と一緒に、又はR
7はR
8と一緒に、4~7員の任意選択的に置換された環の一部を形成し;
R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり;且つ
R
18は、アラルキル基であるか、又は任意選択的に芳香族ヒドロキシル基を有する単環式若しくは多環式置換又は未置換芳香族基で
ある)。
【請求項4】
少なくとも一種の前記強靭性向上剤Dに対する、1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種の前記エポキシ樹脂Aの重量比が、0.4~2.
0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
1が、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価の基であり、且つ前記ポリウレタンプレポリマーが、少なくとも一種のジイソシアネート又はトリイソシアネートから、及び末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有するポリマーQ
PMから調製される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有する前記ポリマーQ
PMが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー及びそ
れらの混合
物からなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有する前記ポリマーQ
PMが、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒドロキシル末端ポリブタジエンからなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールを含み、ヒドロキシル末端ポリブタジエンに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比は、100/0~70/3
0の範
囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(ii)後の、適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さが、≧1.0m
mである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記最大線膨張(最大伸び)を
、0.52mm/
分のひずみ速度V
stで、ラップ剪断試験において測定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
100~220
℃の温度まで前記組成物を加熱する工程(iii)において、前記組成物を、10分間~6時間
、前記温度に保持する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ラップ剪断試験が、下記の特徴を有するラップ剪断試験の試験片を有するラップ剪断試験である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法:
- 25mm×100mm×1.5mmの寸法を有する鋼シート、
- 1.5m
mの厚さで、10mm×25mmの寸法を有する前記硬化した一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物の結合領域。
【請求項12】
前記最大線膨張(最大伸び)が、≧1.8m
mである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ラップ剪断試験において測定された最大力が、≦6000
Nである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
≧1.8m
mの前記最大線膨張(最大伸び)の到達時の測定された力が、≦4000
Nである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
自動車車両構造及びサンドイッチパネル構造のための方法である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に輸送機又は白物家電の様式のシェル構造における、特に異なる熱膨張係数を有する基材を結合させるための熱硬化性エポキシ樹脂組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物はこれまでも既知であった。熱硬化性エポキシ樹脂組成物の使用の重要な分野は、自動車車両構造において、特に輸送機又は白物家電の様式のシェル構造における結合におけるものである。両ケースにおいて、エポキシ樹脂組成物の適用後、結合された物品はオーブン中で加熱され、それによって熱硬化性エポキシ樹脂組成物は硬化される。
【0003】
異なる線熱膨張係数を有する2つの基材を構造結合によって互いに結合させる場合、120~220℃の温度でのオーブン中での硬化ステップによって、2つの基材が異なる長さまで膨張するという結果になる。したがって、その後の冷却によって、硬化されたエポキシ樹脂組成物において高い張力がもたらされ、これによって、接着結合の破損、基材の変形、又は接着結合における張力の「凍結」が導かれる。そのような「凍結」の結果として、接着結合は、その寿命の間、接着結合の弱化を導く可能性のある静的、動的及びショック応力に対して有意に影響を受け易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、第1に構造結合のための適切な機械的特性を保証し、そして第2に構造結合の破損を生じることなく熱硬化において生じる高い応力に耐える複合材料を導く、熱硬化性エポキシ樹脂組成物による異なる熱線膨張係数を有する基材の構造結合方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、第1に構造結合のための適切な機械的特性を保証し、そして第2に構造結合の破損を生じることなく熱硬化において生じる高い応力に耐える複合材料を導く、熱硬化性エポキシ樹脂組成物による異なる線熱膨張係数を有する基材の構造結合方法を提供することが本発明の目的である。
【0006】
この目的は、驚くべきことに、請求項1による本発明の方法によって達成された。
【0007】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の対象である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】熱対流炉中での標準温度進行に従う、試料の加熱及び冷却に関して定義された温度プロフィールを示す。
【
図2】衝撃調整剤の割合の関数としての最大線膨張を示す。
【
図3】衝撃調整剤の割合の関数としての最大線膨張を示す。
【
図4】衝撃調整剤の割合の関数としての最大線膨張を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記を含む、熱安定性基材の接着結合法に関する:
(i)一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を熱安定性基材S1、特に金属の表面に適用すること;
(ii)適用した熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、さらなる熱安定性基材S2、特に金属の表面と接触させること、ここで、工程(ii)後の、適用した熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さが、≧0.8mm、特に≧1mmである;
(iii)100~220℃、特に120~200℃、好ましくは130~150℃、より好ましくは130~140℃の温度まで、組成物を加熱すること。
【0010】
一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、
(a)1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種のエポキシ樹脂Aと;
(b)エポキシ樹脂のための少なくとも一種の潜在的硬化剤Bと
を含み、
少なくとも一種の強靭性向上剤Dに対する、1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種のエポキシ樹脂Aの重量比が、0.3~2.2であり、且つ
強靭性向上剤Dは、下記の式(I)の末端がブロックされたポリウレタンプレポリマーである:
【化1】
[式中、R
1は、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価の基であり;
pは2~8の値を有し;且つ
R
2は、100℃より高い温度において脱離する保護基であり、R
2は、下記からなる群から選択される置換基ではない:
【化2】
(式中、
R
12は、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基、特にNHプロトンの除去後のε-カプロラクタムであり;且つ
R
19は、ヒドロキシル基の除去後の、ビスフェノール、特にビスフェノールA、ビスフェノールF及び2,2’-ジアリルビスフェノールAを表す)]。
【0011】
一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、加熱硬化したラップ剪断試験片の冷却の間にラップ剪断試験において決定する、≧1.65mmの最大線膨張[最大伸び(Max.伸び(Max.elongation))]を有する。
【0012】
最大線膨張(最大伸び(Max.伸び))は、0.40mm/分のひずみ速度Vstで、ラップ剪断試験において測定される。
【0013】
ラップ剪断試験におけるラップ剪断試験片の温度は、測定の開示時に180℃、特に190℃であり、そしてラップ剪断試験片は、測定開始時に40℃/分の冷却速度で25℃の温度まで冷却され、次いでその温度にされる。
【0014】
本明細書中、置換基、ラジカル又は基に関連する「独立して」という用語の使用は、同一分子中に同一記号を有する置換基、ラジカル又は基が同時に異なる意味を有し得るものとして解釈されるべきである。
【0015】
本明細書中、「強靭性向上剤」は、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、≧5重量%、特に≧10重量%の少量添加に関しても強靭性の明白な増加をもたらし、したがって、マトリックスが亀裂を生じるか、又は破壊する前に、より高い曲げ、引張、衝撃又はショック応力を吸収することができる、エポキシ樹脂マトリックスへの添加を意味するものとして理解される。
【0016】
本明細書中、「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「ポリエーテル」又は「ポリアミン」などの物質名の接頭辞「ポリ」は、それぞれの物質が正式に1分子あたりその名称に存在する官能基を2個以上含有することを示す。
【0017】
本明細書中、「分子量」は、分子のモル質量(1モルあたりのグラム)を意味するものとして理解される。「平均分子量」は、分子のオリゴマー又はポリマー混合物の数平均分子量Mnを意味するものとして理解される。これは、典型的に、ポリスチレン基準に対してGPCを使用して決定される。
【0018】
「1級ヒドロキシル基」は、2個の水素を有する炭素原子に結合したOH基を意味する。
【0019】
本明細書中、「1級アミノ基」という用語は、1個の有機ラジカルに結合したNH2基を意味するが、他方、「2級アミノ基」という用語は、一緒になって環の一部であってもよい2個の有機ラジカルに結合したNH基を意味する。したがって、1個の1級アミノ基を有するアミンを「1級アミン」と呼び、2級アミノ基を有するものを「2級アミン」、そして3級アミノ基を有するものを「3級アミン」とそれぞれ呼ぶ。
【0020】
本明細書中、「室温」は23℃の温度を意味する。
【0021】
最大線膨張(最大伸び(Max.伸び))及び最大力(Max.力)の試験方法の説明
異なる線熱膨張係数(Δα)を有する2つの基材、例えば金属又は繊維強化プラスチックを、特にボディシェル構造において構造結合によって互いに結合させる場合、例えば熱対流炉を通過する120~220℃の温度でのオーブン中での硬化ステップによって、2つの基材が異なる長さまで膨張するという結果になる。したがって、例えば冷却ゾーンを通過する、その後の冷却によって、硬化されたエポキシ樹脂組成物において高い張力がもたらされ、これによって、接着結合の破損、基材の変形、又は接着結合における張力の「凍結」が導かれる。
【0022】
硬化されたエポキシ樹脂組成物の特徴をより良好に調査することができるように、「Δαによって誘導された」応力に対するそれらの耐性を評価するための研究所法が開発された。
【0023】
線熱膨張によって張力を誘導する場合、試験片が実際の車体修理要素に類似の寸法を有する必要があるが、研究所法の「Δα張力」は、引張試験機によってラップ剪断試験片に適用された。定義された加熱及び冷却速度を有する結合表面の領域においてラップ剪断試験片の温度制御を可能にする2つの熱電対によって、熱対流炉中の温度プロフィールをシミュレートした。冷却段階が最も重要であるため、張力は、この試験の冷却の間のみ引張試験機によって適用された。したがって、引張試験機におけるひずみ速度の設定に従って、異なる基材組合せで生じるだろう可変的な張力シナリオをシミュレートすることが可能である。
【0024】
使用される試験片及びその調製
「Δαによって誘導された」張力のシミュレーションのために、次のように亜鉛めっき鋼シート(厚さ1.5mm、降伏点420MPa)から製造したラップ剪断試験片を使用した。
【0025】
調製:
1.)ヘプタンを用いて鋼シート(25mm×100mm×1.5mm)をクリーニングし、次いで3g/m2のAnticorit PL3802-39S(深絞り油、FUCHS Schmierstoffe GmbH)を用いて定義された様式で塗油する。
2.)(厚さ0.5mm、1.0mm又は1.5mmの)Teflonスペーサーを用いて、結合領域(10mm×25mm)に境界を引き、そしてエポキシ樹脂組成物を適用する。
3.)シートを接合し、そして各側面上で1つのクランプを用いて結合領域を横方向に固定する。
4.)ラップ剪断試験片を35分間(滞留時間)、180℃で加熱し、エポキシ樹脂組成物を硬化する。
5.)試料を冷却後、Teflonスペーサーを除去する。
【0026】
パラメーターの決定
上記の通り、ラップ剪断試験片が受けるひずみ速度の設定によって種々のΔαによって誘導された張力シナリオをシミュレートすることは、本試験法によって可能である。鋼上のアルミニウムからなる材料の組合せの例を使用して(Δα=13*10-6K-1)、必要とされるひずみ速度は方程式(1)及び(2)から算出される。
【0027】
線形近似における固体の熱膨張
方程式(1) ΔL=L0*α*ΔT
方程式(2) ΔT=T2-T1
【0028】
2つの接合対の開始長さL
0は1000mmである。熱対流炉中での標準温度進行に従って、試料の加熱及び冷却に関して
図1に示す温度プロフィールが定義された。これによって、開始温度及び最終温度T
1/T
2並びに温度差ΔTがもたらされる。加熱及び冷却速度も同様に、40℃/分の自動車工業において典型的な値として選択された。
【0029】
L0=1000mm
αStahl=10.8*10-6[K-1]
αAlu=23.8*10-6[K-1]
ΔT=165[K]
T2=190[℃]
T1=25[℃]
方程式(4)
ΔLStahl=1000mm*10.8*10-6K-1*165K=1.782mm
方程式(5)
ΔLAlu=1000mm*23.8*10-6K-1*165K=3.927mm
【0030】
鋼αStahl及びアルミニウムαAluの熱膨張率は文献から得られた。定義された値が方程式1及び2に挿入される場合、鋼及びアルミニウムに対する熱膨張ΔLは、方程式4及び5に従って得られる。加熱段階の間、2.145mmの線膨張差がもたらされ、これによって、アルミニウムは鋼より有意に膨張する。相応して、接着結合を形成する硬化されたエポキシ樹脂組成物は、冷却段階の間に同様に2.145mmの収縮差を埋め合わせなければならない。したがって、40℃/分の冷却速度VAによって、方程式6及び7に従って、0.52mm/分のひずみ速度VZugが見出される。
【0031】
【0032】
測定の実施:
1.)上記調製の説明に従って調製されたラップ剪断試験片を引張試験機にクランプ固定する。しかしながら、最初は、より低いクランプジョーのみが固定される。固定長さは100mmである。
2.)それらが結合表面と接触するように、両熱電対を試料上に押し付ける。
3.)制御ユニット上の開始及び最終温度を25℃及び180℃、特に190℃に設定する。加熱及び冷却速度に関する入力は40℃/分である。
4.)加熱段階を開始する。
5.)180℃、特に190℃の最終温度に到達したら、結合表面の均一な加熱を保証するために、2分間のカウントダウンを使用して、この温度を維持する。
6.)カウントダウンが経過する30秒前、ラップ剪断試験片を、より上のクランプジョーによって固定する。
7.)カウントダウンが経過した時、冷却段階を自動的に開始する。同時に、引張試験機制御ソフトウェアを使用して、0.52mm/分のひずみ速度によるラップ剪断試験を手作業で開始する。
【0033】
測定結果及び評価
測定された測定結果は、180℃、特に190℃から25℃まで冷却される間にそれが破損するまでの、ラップ剪断試験片を変形させるために必要とされる力である。それぞれのエポキシ樹脂組成物に対して三重決定を実行する。線膨張Max.伸びは、横断された距離から決定される。測定は、測定プロトコルから、最大力(σM2)における最大線膨張Max.伸び(εM2)の平均を取ることによって評価された。
【0034】
より高い最大線膨張Max.伸びに達するほど、より「“Δα”耐性の」エポキシ樹脂組成物を考慮することができる。消費される最大力が小さい必要がある場合、「“Δα”耐性の」エポキシ樹脂組成物に関してさらに有利である。より好ましくは、そのようなエポキシ樹脂組成物は、高い最大線膨張Max.伸びを有し、且つ低い最大力が消費される。
【0035】
さらに興味深い点は、破損の連接である。これが冷却段階の終了前に生じる場合、すなわち、例えば0.40mm/分のひずみ速度VZugにおいて1.65mmの線膨張の到達前、又は0.52mm/分のひずみ速度VZugにおいて2.145mmの線膨張の到達前に破損が生じる場合、そのようなエポキシ樹脂組成物は実際の用途において成分破損を導くであろうため、エポキシ樹脂組成物の「Δα耐性」は不利であると見なされる。それとは対照的に、破砕が≧1.65mm又は≧2.145mmの伸びにおいて生じる場合、これは好ましい「Δα耐性」であると考えられる。線膨張が高いほど、「Δα耐性」が良好となる。
【0036】
興味深いさらなるパラメーターは、冷却段階の終了時、すなわち1.65mm又は2.145mmの線膨張の到達時の力のレベルである。この場合、力のレベルが高いほど、より多くの凍結された張力がエポキシ樹脂組成物において予想され、基材の逆転不可能な変形が予想される。相応して、力のレベルが可能な限り低いことがここでは有利な結果である。
【0037】
最大線膨張Max.伸びは、加熱硬化されたラップ剪断試験片の冷却の間にラップ剪断試験において決定される。
【0038】
好ましくは、最大線膨張Max.伸びは、ラップ剪断試験において、0.52mm/分、好ましくは0.68mm/分のひずみ速度Vstにおいて測定される。
【0039】
好ましくは、最大線膨張Max.伸びは、ラップ剪断試験において測定された最大力における線膨張として決定される。
【0040】
好ましくは、ラップ剪断試験における最大線膨張Max.伸びは、横断された距離から決定される。
【0041】
好ましくは、ラップ剪断試験におけるラップ剪断試験片の温度は、測定の開示時に180℃、特に190℃であり、そしてラップ剪断試験片は、測定開始時に40℃/分の冷却速度で25℃の温度まで冷却され、次いでその温度にされる。好ましくは、ラップ剪断試験片は、測定開始前に40℃/分の加熱速度で180℃、特に190℃まで加熱される。
【0042】
好ましくは、ラップ剪断試験は、DIN EN 1465によるラップ剪断強度を決定するためのラップ剪断試験である。
【0043】
好ましくは、ラップ剪断試験は次の特徴:
- 25mm×100mm×1.5mmの寸法を有する鋼シート、
- 1.5mm、好ましくは1.0mmの厚さで、10mm×25mmの寸法を有する硬化された1成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物の結合領域
を有するラップ剪断試験試験片を有するラップ剪断試験である。
【0044】
使用された鋼シートは、好ましくは溶融亜鉛めっき鋼から製造される。これらは、好ましくは、基材変形の影響を最小化するために、少なくとも420MPaの降伏点をさらに有する。
【0045】
最大線膨張Max.伸びは、好ましくは、横断された距離から決定される。
【0046】
好ましくは、1成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を適用する前に、鋼シートをヘプタンでクリーニングし、次いで3g/m2の深絞り油、特にAnticorit PL3802-39Sを用いて定義された様式で塗油する。
【0047】
好ましくは、1成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を35分間、180℃において硬化する。
【0048】
ステップii)の後の適用された熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さは≧0.8mmである。
【0049】
好ましくは、この厚さは、≧1mm、≧1.2mm、好ましくは≧1.5mm、より好ましくは1.5~2.5mmである。
【0050】
この厚さは、好ましくは、熱硬化性エポキシ樹脂組成物との接触領域における2つの熱安定性基材S1及びS2の間の平均距離に相当する。
【0051】
厚さが0.8mm未満である場合、最大線膨張に関して不適切な値が得られる。例えば、厚さが0.5mmである場合、0.52mm/分のひずみ速度Vstにおける最大線膨張に関して非常に低い値が得られることは表10において明らかである。これは、例えば、0.5mmの厚さを有する試験片と1mm又は1.5mmの厚さを有する試験片との比較において明らかである。
【0052】
さらに、0.52mm/分のひずみ速度Vstにおいて、少なくとも1種の強靭性向上剤Dに対する1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂Aの重量比が2.2より大きい場合、最大線膨張に関して低い値が得られることは表9から明らかである。
【0053】
ひずみ速度Vstが0.68mm/分である場合、≧2.8mmの最大線膨張Max.伸びの値を達成するためには、0.3~0.6の少なくとも1種の強靭性向上剤Dに対する1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂Aの重量比が必要である。
【0054】
好ましくは、最大線膨張Max.伸びは、≧1.8mm、好ましくは≧2.0mm、≧2.145mm、好ましくは≧2.2mm、好ましくは≧2.5mm、好ましくは≧2.8mm、好ましくは≧3.0mm、好ましくは≧3.5mm、好ましくは≧4.0mmである。
【0055】
好ましくは、測定された最大力は、≦6000N、好ましくは≦5000N、好ましくは≦4500N、好ましくは≦4000N、好ましくは≦3500N、好ましくは≦3000N、好ましくは≦2500N、好ましくは≦2000Nである。
【0056】
好ましくは、≧1.8mm、好ましくは≧2.0mm、好ましくは≧2.145mmの最大線膨張Max.伸びの到達時の測定された力は、≦4000N、好ましくは≦3000N、好ましくは≦2500N、好ましくは≦2000N、好ましくは≦1500N、好ましくは≦1000N、好ましくは≦800N、好ましくは≦700Nである。
【0057】
熱安定性材料S1及びS2は、少なくとも100~220℃、好ましくは120~200℃の硬化温度における硬化時間に寸法的に安定している材料を意味するものとして理解される。より特には、これらは、ABS、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ガラス繊維強化プラスチック及び炭素繊維強化プラスチックなどの繊維強化プラスチックなどの金属及びプラスチックである。特に好ましいプラスチックは、繊維強化プラスチックである。少なくとも1種の材料は好ましくは金属である。
【0058】
特に好ましい方法は、特に自動車産業におけるボディシェル構造における、異なる線熱膨張係数(Δα)を有する熱安定性基材、特に金属の結合及び/又は繊維強化プラスチックへの金属の結合であると考えられる。好ましい金属は、特に鋼、特に電解亜鉛めっき、溶融亜鉛めっき又は塗油鋼、Bonazinc被覆鋼及びポストリン酸処理鋼、並びにアルミニウム、特に典型的に自動車構造中で生じる変異形である。
【0059】
より好ましくは、熱安定性材料S1及び熱安定性材料S2の間の線熱膨張係数(Δα)における差は、10-25*10-6[K-1]、特に10-15*10-6[K-1]である。
【0060】
好ましくは、100~220℃、特に120~200℃、好ましくは140~200℃、より好ましくは150~190℃の温度まで組成物を加熱するステップiii)において、組成物は5分間~6時間、10分間~2時間、10分間~60分間、10分間~30分間、より好ましくは10分間~20分間、上記温度に保持される。
【0061】
1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有するエポキシ樹脂Aは、好ましくはエポキシ液体樹脂又は固体エポキシ樹脂である。「固体エポキシ樹脂」という用語は、エポキシ技術における知識を有する者に非常によく知られており、且つ「液体エポキシ樹脂」とは対照的に使用される。固体樹脂のガラス転移温度は室温より高く、これは、それらが流動性粉末を生じるように室温において粉砕されることが可能であることを意味する。
【0062】
好ましいエポキシ樹脂は、式(II)
【化3】
を有する。
【0063】
本明細書中、置換基R’及びR’’は、独立して、H又はCH3である。
【0064】
固体エポキシ樹脂において、指数sは、>1.5、特に2~12の値を有する。
【0065】
そのような固体エポキシ樹脂は、例えばDow又はHuntsman又はHexionから商業的に入手可能である。
【0066】
1~1.5の指数sを有する式(II)の化合物は、当該技術分野において知識を有する者からは半固体エポキシ樹脂と呼ばれる。本発明に関して、それらも同様に固体樹脂であると考えられる。しかしながら、好ましい固体エポキシ樹脂は、より狭義の意味におけるエポキシ樹脂であり、すなわち、指数sが>1.5の値を有する。
【0067】
液体エポキシ樹脂において、指数sは1未満の値を有する。好ましくは、sは0.2未満の値を有する。
【0068】
したがって、ビスフェノールA(DGEBA)、ビスフェノールF及びビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルが好ましい。そのような液体樹脂は、例えばAraldite(登録商標)GY 250、Araldite(登録商標)PY 304、Araldite(登録商標)GY 282(Huntsman)又はD.E.R.(商標)331若しくはD.E.R.(商標)330(Dow)又はEpikote 828(Hexion)として入手可能である。
【0069】
さらなる適切なエポキシ樹脂Aは、エポキシノボラックと呼ばれるものである。これらは特に次の式:
【化4】
(式中、R2は
【化5】
又はCH
2と等しく、R1はH又はメチルと等しく、且つzは0~7である)を有する。
【0070】
より特に、これらはフェノール又はクレゾールエポキシノボラック(R2=CH2)である。
【0071】
そのようなエポキシ樹脂は、HuntsmanからEPN又はECN及びTactix(登録商標)の商標名で、或いはDow ChemicalからのD.E.N.(商標)製品シリーズから商業的に入手可能である。
【0072】
好ましくは、エポキシ樹脂Aは式(II)の液体エポキシ樹脂である。
【0073】
特に好ましい実施形態において、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、s<1、特に0.2未満の式(II)の少なくとも1種の液体エポキシ樹脂及びs>1.5、特に2~12の式(II)の少なくとも1種の固体エポキシ樹脂の両方を含有する。
【0074】
エポキシ樹脂Aの割合は、好ましくは、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、10~60重量%、特に30~50重量%である。
【0075】
エポキシ樹脂Aの60~100重量%、特に60~80重量%が上記液体エポキシ樹脂である場合、さらに有利である。
【0076】
エポキシ樹脂Aの0~40重量%、特に20~40重量%が上記固体エポキシ樹脂である場合、さらに有利である。
【0077】
熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂のための少なくとも1種の潜在的硬化剤Bを含有する。これは、高温によって、好ましくは70℃以上の温度において活性化される。
【0078】
好ましくは、ジシアンジアミド;グアニジン;多塩基性カルボン酸の無水物;ジヒドラジド及びアミノグアニジンからなる群から選択される硬化剤に関する。
【0079】
より好ましくは、硬化剤Bはジシアンジアミドである。
【0080】
エポキシ樹脂のための潜在的硬化剤Bの量は、有利には、エポキシ樹脂Aの重量に基づき、0.1~30重量%、特に0.2~10重量%、好ましくは1~10重量%、特に好ましくは5~10重量%である。
【0081】
好ましくは、熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂のための少なくとも1つの促進剤Cを追加的に含有する。そのような硬化促進剤は、好ましくは、置換ウレア、例えば、3(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチルウレア(クロルトルロン)又はフェニルジメチルウレア、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(モヌロン)、3-フェニル-1,1-ジメチルウレア(フェヌロン)又は3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチルウレア(ジウロン)である。加えて、2-イソプロピルイミダゾール又は2-ヒドロキシ-N-(2-(2-(2-ヒドロキシフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾル-1-イル)エチル)ベンズアミド、イミダゾリン及びアミン錯体などのイミダゾールの分類からの化合物を使用することも可能である。
【0082】
好ましくは、エポキシ樹脂のための促進剤Cは、置換ウレア、イミダゾール、イミダゾリン及びアミン錯体からなるリストから選択される。
【0083】
より好ましくは、特に潜在的硬化剤Bがグアニジン、特にジシアンジアミドである場合、エポキシ樹脂のための促進剤Cは置換ウレア及びアミン錯体からなるリストから選択される。
【0084】
1成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、少なくとも1種の強靭性向上剤Dを含む。強靭性向上剤Dは、液体又は固体であり得る。
【0085】
強靭性向上剤Dは、式(I)の末端がブロックされたポリウレタンポリマーである。
【化6】
【0086】
ここで、R1は、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価ラジカルであり、且つpは2~8の値を有する。
【0087】
さらにR
2は、100℃より高い温度において脱離する保護基(ブロッキング基)であり、R
2は、
【化7】
(式中、
R
12は、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基、特にNHプロトンの除去後のε-カプロラクタムであり;且つ
R
19は、ヒドロキシル基の除去後の、ビスフェノール、特にビスフェノールA、ビスフェノールF及び2,2’-ジアリルビスフェノールA、より好ましくはビスフェノールA及びビスフェノールFを表す)からなる群から選択される置換基ではない。これに関連して、「ビスフェノール」という用語は、好ましくは、それらの共通の構造特徴として、炭素原子によって連結した2個のフェノール環を有する化合物を意味するものとして理解される。
【0088】
驚くべきことに、上記置換基
【化8】
によって、最大線膨張Max.伸びに関して不適切な値が得られることが見出された。これは、例えば表4の実施例8及び9と表3の実施例との比較において明らかである。
【0089】
好ましくは、R
2は、独立して、
【化9】
(式中、
R
5、R
6、R
7及びR
8は、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基であるか、或いはR
5はR
6と一緒に、又はR
7はR
8と一緒に、4~7員の任意選択的に置換された環の一部を形成し;
R
9、R
9’及びR
10は、それぞれ独立して、アルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基又はアルキルオキシ又はアリールオキシ又はアラルキルオキシ基であり;
R
11はアルキル基であり、
R
13及びR
14は、それぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基であり;
R
15、R
16及びR
17は、それぞれ独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり;且つ
R
18は、置換又は未置換芳香族基を有するアラルキル基であるか、或いは任意選択的に芳香族ヒドロキシル基を有する単環式置換又は未置換芳香族基であり;
R
4は、ヒドロキシル及びエポキシ基除去後の、1級又は2級ヒドロキシル基を含有する脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族エポキシドのラジカルであり;
且つmは、1、2又は3の値を有する)からなる群から選択される置換基である。
【0090】
より好ましくは、R
2は、独立して、
【化10】
特に
【化11】
好ましくは
【化12】
より好ましくは
【化13】
最も好ましくは
【化14】
からなる群から選択される置換基である。
【0091】
驚くべきことに、結果として、弾性率、引張強度、破断点伸び、ラップ剪断強度、T剥離強度及び衝撃剥離強度のより高い値が得られることが分かった。これは、例えば、表3中、実施例1~7の比較によって明らかである。
【0092】
R18は、特にヒドロキシル基除去後のフェノールであると考えられる。そのようなフェノールの好ましい例は、特にフェノール、クレゾール、4-メトキシフェノール(HQMME)、レゾルシノール、カテコール、カルダノール(3-ペンタデセニルフェノール(カシューナットシェル油由来))及びノニルフェノールからなるリストから選択される。
【0093】
R18は、第2に、特にヒドロキシル基の除去後の、ヒドロキシベンジルアルコール及びベンジルアルコールであると考えられる。
【0094】
式
【化15】
の好ましい置換基は、フェノール水素原子の除去後のモノフェノールである。そのようなR
2ラジカルの特に好ましい例は、
【化16】
好ましくは
【化17】
からなる群から選択されるラジカルである。
【0095】
ここで、Yラジカルは、1~20個の炭素原子、特に1~15個の炭素原子を有する飽和芳香族又はオレフィン系不飽和ヒドロカルビルラジカルである。好ましいYは、特にアリル、メチル、ノニル、ドデシル、フェニル、アルキルエーテル、特にメチルエーテル、カルボン酸エステル又は1~3個の二重結合を有する不飽和C15-アルキルラジカルである。最も好ましくは、Yは、アルキルエーテル、特にメチルエーテル及び1~3個の二重結合を有する不飽和C15-アルキルラジカルからなる群から選択される。
【0096】
より好ましくは、R18は1個のヒドロキシル基の除去後のフェノールを含み;そのようなフェノールの特に好ましい例は、4-メトキシフェノール(HQMME)及びカルダノール(3-ペンタデセニルフェノール(カシューナットシェル油由来))からなるリストから選択される。
【0097】
R5、R6、R7、R8、R9、R9’、R10、R11、R15、R16又はR17がアルキル基である場合、それは特に線形又は分岐C1~C20-アルキル基である。
【0098】
R5、R6、R7、R8、R9、R9’、R10、R15、R16又はR17がアラルキル基である場合、この部分は、特にメチレン結合芳香族基、特にベンジル基である。
【0099】
R5、R6、R7、R8、R9、R9’又はR10がアルキルアリール基である場合、これは特にフェニレン結合C1~C20アルキル基、例えばトリル又はキシリルである。
【0100】
式(I)の末端がブロックされたポリウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーと、1種又はそれ以上のイソシアネート反応性化合物R2Hとから調製される。2種以上のそのようなイソシアネート反応性化合物が使用される場合、反応は連続的に、又はこれらの化合物の混合物を用いて実行可能である。
【0101】
R1がそれに基づくイソシアネート末端基を有するポリウレタンプレポリマーは、特に少なくとも1種のジイソシアネート又はトリイソシアネートから、及び末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMから調製可能である。
【0102】
適切なジイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネート、特にメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,5-又は2,6-ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネート(H12MDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などの市販の製品及びその二量体である。HDI、IPDI、MDI又はTDIが好ましい。
【0103】
適切なトリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族ジイソシアネートの三量体又はビウレット、特に前項において記載されたジイソシアネートのイソシアヌレート及びビウレットである。ジ又はトリイソシアネートの適切な混合物を使用することも可能である。
【0104】
末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有する特に適切なポリマーQPMは、2個又は3個の末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMである。
【0105】
ポリマーQPMは、有利には、NCO反応基の当量に対して300~6000、特に600~4000、好ましくは700~2200gの当量重量を有する。
【0106】
好ましいポリマーQPMは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールであり;ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒドロキシル末端ポリブタジエンが特に好ましい。
【0107】
1種又はそれ以上のポリテトラメチレンエーテルグリコールを使用することも可能である。ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、ポリテトラヒドロフラン又はPTMEGとも呼ばれる。PTMEGは、例えば酸性触媒作用によるテトラヒドロフランの重合によって調製することができる。ポリテトラメチレンエーテルグリコールは特にジオールである。
【0108】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは商業的に入手可能であり、例えば、PolyTHF(登録商標)2000、PolyTHF(登録商標)2500 CO又はPolyTHF(登録商標)3000 COなどのBASFからのPolyTHF(登録商標)製品、Invista B.VからのTerathane(登録商標)製品、或いはLyondellBasellからのPolymeg(登録商標)製品である。
【0109】
使用されたポリテトラメチレンエーテルグリコールのOH官能性は、好ましくは約2の領域、例えば1.9~2.1の範囲である。これは、開始テトラヒドロフランモノマーのカチオン重合から得られる。
【0110】
有利なポリテトラメチレンエーテルグリコールは、170mg/KOH g~35mg KOH/g、好ましくは100mg KOH/g~40mg KOH/g、最も好ましくは70~50mg KOH/gの範囲のOH価を有するものである。他に記載がない限り、本出願において、OH価は、DIN 53240による滴定分析によって決定される。ここで、ヒドロキシル価は、無水酢酸によるアセチル化と、その後のアルコール水酸化カリウム溶液による過剰量の無水酢酸の滴定によって決定される。
【0111】
二官能性に関する知識によって、使用されたポリテトラメチレンエーテルグリコールのOH当量重量又は平均分子量を確認するために滴定分析によって確認されたヒドロキシル価を使用することは可能である。
【0112】
本発明において有利に使用されるポリテトラメチレンエーテルグリコールは、好ましくは600~5000g/モル、より好ましくは1000~3000g/モル、特に好ましくは1500~2500g/モルの範囲、特に約2000g/モルの平均分子量を有する。
【0113】
1種又はそれ以上のヒドロキシル末端ポリブタジエンを使用することも可能である。2種又はそれ以上のヒドロキシル末端ポリブタジエンの混合物を使用することも可能である。
【0114】
適切なヒドロキシル末端ポリブタジエンは、特に、例えば、開始剤としてアゾニトリル又は過酸化水素を使用する1,3-ブタジエンのフリーラジカル重合によって調製されるものである。ヒドロキシル末端ポリブタジエンは商業的に入手可能であり、例えば、Poly bd(登録商標)R45VなどのCray ValleyからのPoly bd(登録商標)製品、EvonikからのPolyvest(登録商標)HT、及びEmerald Performance Materials LLCからのHypro(登録商標)2800X95HTBである。
【0115】
ヒドロキシル末端ポリブタジエンは、好ましくは、5000未満、好ましくは2000~4000g/モルの範囲の平均分子量を有する。ヒドロキシル末端ポリブタジエンのOH官能性は、好ましくは1.7~2.8、好ましくは2.4~2.8の範囲である。
【0116】
15%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満、特に好ましくは0.1%未満のアクリロニトリル含有量を有するヒドロキシル末端ポリブタジエンがさらに好ましい。アクリロニトリルを含まないヒドロキシル末端ポリブタジエンが最も好ましい。
【0117】
イソシアネート末端ポリマーの調製のために使用されたポリオールの全重量に基づき、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒドロキシル末端ポリブタジエンの全割合は、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%である。好ましい実施形態において、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び/又はヒドロキシル末端ポリブタジエンが単独でポリオールとして使用される。
【0118】
ヒドロキシル末端ポリブタジエンに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比は、好ましくは100/0~70/30、より好ましくは100/0~60/40、より好ましくは100/0~90/10の範囲、最も好ましくは100/0である。
【0119】
これは、結果として、弾性率、引張強度、破断点伸び、ラップ剪断強度、T剥離強度及び衝撃剥離強度のより高い値が得られるという点で有利である。これは、例えば、表3中、実施例2及び3の比較によって明らかである。
【0120】
好ましい実施形態において、ポリウレタンプレポリマーは、少なくとも1種のジイソシアネート又はトリイソシアネートから、及び末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有するポリマーQPMから調製される。ポリウレタンプレポリマーは、ポリウレタン技術における知識を有する者に知られている様式で、特にポリマーQPMのアミノ、チオール又はヒドロキシル基に対して化学量論的過剰量でジイソシアネート又はトリイソシアネートを使用することによって調製される。
【0121】
イソシアネート末端基を有するポリウレタンポリマーは、好ましくは弾性特徴を有する。それは、好ましくは0℃未満のガラス転移温度Tgを示す。
【0122】
少なくとも1種の強靭性向上剤Dに対する1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂Aの重量比は0.3~2.2である。
【0123】
0.3未満の重量比は、結果として、仮にあるとしても組成物が非常にゆっくりと硬化するという点で不利である。さらに、特に弾性率、引張強度及びT剥離強度において低い値が得られる。
【0124】
2.2より高い重量比は、結果として、低いT剥離強度及び最大線伸び値を有する組成物が得られるという点で不利である。
【0125】
これは、例えば表6において明らかである。
【0126】
好ましくは、少なくとも1種の強靭性向上剤Dに対する1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂Aの重量比は0.4~2.0、より好ましくは0.5~1.8、最も好ましくは0.6~1.4である。これは、結果として、組成物が高いT剥離強度及び衝撃剥離強度の値を有するという点で有利である。
【0127】
重量比が0.3~2.2、特に0.4~2.2、0.6~2.2、1.0~2.2、1.4~2.2、好ましくは1.8~2.2である場合、さらに有利であり得る。これは、結果として、組成物が高い弾性率及び引張強度の値を有するという点で有利である。
【0128】
重量比が0.4~2.0、特に0.4~1.8、好ましくは0.4~1.4、より好ましくは0.4~1.0である場合、これは、結果として、R
2が、
【化18】
最も好ましくは
【化19】
からなる群から選択される場合、組成物が-30℃において高い衝撃剥離強度の値を有するという点で有利である。
【0129】
重量比が0.3~2.0、特に0.3~1.8、0.3~1.4、0.3~1.0、0.3~0.6、好ましくは0.3~0.4である場合、さらに有利であり得る。これによって、高い最大線膨張Max.伸び及び最大力の値を有する組成物が得られる。
【0130】
さらなる好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種の充てん剤Fをさらに含む。ここでは、雲母、タルク、カオリン、ウォラストナイト、チョウ石、閃長岩、クロライト、ベントナイト、モンモリロナイト、(沈降又は重質)炭酸カルシウム、ドロマイト、石英、(ヒュームド又は沈降)シリカ、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空セラミックビーズ、中空ガラスビーズ、中空有機ビーズ、ガラスビーズ、着色顔料が好ましい。
【0131】
有利には、全充てん剤Fの全割合は、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、5~40重量%、好ましくは10~30重量%である。
【0132】
さらなる実施形態において、組成物は、例えば、Akzo NobelからExpancel(商標)の商標名、又はChemturaからCelogen(商標)、又はLehmann & VossからLuvopor(商標)の商標名で入手可能である物理的又は化学的発泡剤を含み得る。発泡剤の割合は、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、典型的に0.1~3重量%である。組成物は、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の物理的又は化学的発泡剤を含む。
【0133】
さらなる好ましい実施形態において、組成物は、少なくとも1種のエポキシ含有反応性希釈剤Gをさらに含む。そのような反応性希釈剤は、当該技術分野における知識を有する者に知られている。エポキシ含有反応性希釈剤の好ましい例は、次の通りである。
-一官能、飽和又は不飽和、分岐又は未分岐、環式又は開鎖C4~C30アルコールのグリシジルエーテル、例えばブタノールグリシジルエーテル、ヘキサノールグリシジルエーテル、2-エチルヘキサノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリル及びフルフリルグリシジルエーテル、トリメトキシシリルグリシジルエーテルなど;
-二官能、飽和又は不飽和、分岐又は未分岐、環式又は開鎖C2~C30アルコールのグリシジルエーテル、例えばエチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、オクタンジオールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルなど;
-三又は多官能、飽和又は不飽和、分岐又は未分岐、環式又は開鎖アルコールのグリシジルエーテル、例えばエポキシ化ヒマシ油、エポキシ化トリメチロールプロパン、エポキシ化ペンタエリトリトール、又は脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、例えばソルビトール、グリセロール、トリメチロールプロパンなど;
-フェノール化合物及びアニリン化合物のグリシジルエーテル、例えばフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェノールグリシジルエーテル、3-n-ペンタデセニルグリシジルエーテル(カシューナットシェル油由来)、N,N-ジグリシジルアニリンなど;
-エポキシ化アミン、例えばN,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミンなど;
-エポキシ化モノ又はジカルボン酸、例えば、グリシジルネオデカノエート、グリシジルメタクリレート、グリシジルベンゾエート、ジグリシジルフタレート、テトラヒドロフタレート及びヘキサヒドロフタレート、二量体脂肪酸のジグリシジルエステルなど;
-エポキシ化二又は三官能、低分子量から高分子量までのポリエーテルポリオール、例えばポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど。
【0134】
ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0135】
有利には、エポキシ含有反応性希釈剤Gの全割合は、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、0.1~15重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%である。
【0136】
組成物は、さらなる成分、特に触媒、安定剤、特に熱及び/又は光安定剤、チキソトロピー剤、可塑剤、溶媒、鉱物又は有機充てん剤、発泡剤、染料及び顔料、錆止め剤、界面活性剤、脱泡剤及び接着促進剤を含んでもよい。
【0137】
適切な可塑剤は、特にBayerからMesamoll(登録商標)又はDellatol BBSとして商業的に入手可能なフェノールアルキルスルホネート又はn-ブチルベンゼンスルホンアミドである。
【0138】
適切な安定剤は、特に任意選択的に置換されたフェノール、例えばBHT又はWingstay(登録商標)T(Elikem)、立体障害型アミン又はN-オキシル化合物、例えばTEMPO(Evonik)である。
【0139】
特に好ましい1成分エポキシ樹脂組成物は、
-エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、10~60重量%、特に20~40重量%の1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有するエポキシ樹脂A;好ましくは、エポキシ樹脂Aの60~100重量%、特に60~80重量%が液体エポキシ樹脂であり、且つエポキシ樹脂Aの0~40重量%、特に20~40重量%が固体エポキシ樹脂である;
-好ましくは、ジシアンジアミド、グアニジン、多塩基性カルボン酸の無水物、ジヒドラジド及びアミノグアニジン及びその誘導体から選択され、好ましくはジシアンジアミドである、エポキシ樹脂のための少なくとも1種の潜在的硬化剤B;
-好ましくは、置換ウレア、イミダゾール、イミダゾリン及びアミン錯体からなるリストから選択され、特に置換ウレア及びアミン錯体からなるリスト、特に好ましくは置換ウレアから選択される少なくとも1種の促進剤C;
-少なくとも1種の上記強靭性向上剤D、好ましくは、好ましい強靭性向上剤Dとして上記された強靭性向上剤D;強靭性向上剤Dの量は、好ましくは、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、20~60重量%、25~55重量%、30~50重量%、より好ましくは30~40重量%である;
-エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、好ましくは5~40重量%、好ましくは10~30重量%の、好ましくはウォラストナイト、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、着色顔料、特にカーボンブラック及びヒュームドシリカ、特に炭酸カルシウム、酸化カルシウム及びヒュームドシリカからなる群から選択される充てん剤F;
-エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、0.1~15重量%、好ましくは0.1~5重量%、特に好ましくは0.1~2重量%、より好ましくは0.2~1重量%のエポキシ含有反応性希釈剤G;
を含み、
少なくとも1種の強靭性向上剤Dに対する1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂Aの重量比は0.3~2.2、0.4~2.0、より好ましくは1.0~1.8である。
【0140】
好ましい1成分エポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂組成物の全重量に基づき、80重量%より多い、好ましくは90重量%より多い、特に95重量%より多い、特に好ましくは98重量%より多い、最も好ましくは99重量%より多い範囲まで上記成分からなる場合、さらに有利であり得る。
【0141】
特に好ましい組成物の一例は、例えば表5中の実施例13である。
【0142】
本発明のエポキシ樹脂組成物が、25℃において100~10000Pa*s、特に500~5000Pa*s、好ましくは1000~3000Pa*sの粘度を有する場合、有利である。これは、良好な適用性を保証するという点で有利である。好ましくは、粘度は実施例で説明されるように測定される。
【0143】
硬化された状態で、以下を有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物が特に好ましい。
-特にDIN EN 1465によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、10MPaより高い、15MPaより高い、20MPaより高いラップ剪断強度;及び/又は
-特にDIN EN ISO 527によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、10MPaより高い、15MPaより高い、20MPaより高い引張強度;及び/又は
-特にDIN EN ISO 527によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、10%より高い、20%より高い、30%より高い、特に30~200%、より好ましくは30~150%の破断点伸び;及び/又は
-特にDIN EN ISO 527によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、300~1000MPa、特に500~800MPaの弾性率;
-特にISO 11343によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、23℃において30N/mmより高い、40N/mmより高い、60N/mmより高い衝撃剥離強度、及び/又は
-特にDIN 53281によって、より好ましくは実施例に記載される通り測定される、5N/mmより高い、8N/mmより高い、10N/mmより高いT-剥離強度。
【0144】
記載された熱硬化エポキシ樹脂組成物は、特に1成分熱硬化接着剤として、特に自動車車両構造及びサンドイッチパネル構造中の熱硬化1成分接着剤としての使用に特に適切であることが見出された。そのような1成分接着剤は広範囲の使用可能性を示す。より特には、それによって、より高い温度及び低温においても高い耐衝撃性を特徴とする熱硬化1成分接着剤が達成可能である。そのような接着剤は、熱安定性材料の接着結合のために必要とされる。
【0145】
そのような接着剤を、特に最初に10℃~80℃、特に10℃~60℃の温度で、結合させる材料と接触させ、その後、典型的に130~220℃、好ましくは130~200℃、より好ましくは140~190℃の温度で硬化させる。
【0146】
そのような上記の方法によって、結合物品が得られる。そのような物品は、好ましくは自動車、又は自動車の一部分である。
【0147】
したがって、本発明のさらなる態様は、上記方法から得られる接着結合された物品に関する。熱硬化接着剤のみならず、シーリングコンパウンドを実現するためにも上記組成物を使用することは、もちろん可能である。さらに、本発明の方法は、自動車構造用のみならず、他の使用分野にも適切である。船、トラック、バス又はレール車両などの輸送手段の構造において、或いは例えば洗濯機などの消費者製品の構造においての関連用途も特に記載されるべきである。
【0148】
上記組成物を使用して接着結合された材料は、典型的に120℃~-40℃、好ましくは100℃~-40℃、特に80℃~-40℃の温度において使用される。
【実施例】
【0149】
いくつかの実施例を以下に記載する。これらは、さらに本発明を例証するが、いずれかの様式で本発明の範囲を制限するようには意図されない。
【0150】
イソシアネート含有量の決定
イソシアネート含有量は、過剰量で使用されるジ-n-ブチルアミン及び0.1M塩酸による逆滴定によって重量%で決定した。全ての決定は、自動電位差終点決定によるMettler-Toledo DL50 Graphix滴定装置上で半手動様式で行なわれた。この目的に関して、各ケースで600~800mgの決定される試料を、加熱しながら10mlのイソプロパノール及び40mlのキシレンの混合物中に溶解し、次いでキシレン中のジブチルアミンの溶液と反応させた。過剰量のジ-n-ブチルアミンを0.1M塩酸によって滴定し、それからイソシアネート含有量を算出した。
【0151】
最大線膨張(Max.伸び)及び最大力(Max.力)
最大線膨張(Max.伸び)及び最大力(Max.力)は、「最大線膨張(最大伸び(Max.伸び))及び最大力(Max.力)の試験方法の説明」において上記された通りに決定された。エポキシ樹脂組成物に対して三重決定を行った。最大線膨張Max.伸びは、横断された距離から決定された。測定は、測定プロトコルから、最大力(σM2)における最大線膨張Max.伸び(εM2)の平均を取ることによって評価された。
【0152】
組成物1~24に関して、1.5mmの結合領域の厚さを使用した。0.52mm/分のひずみ速度Vst及び190℃(ΔT=165[K])の測定開示時の温度を使用した。
【0153】
組成物25~27に関して使用された結合領域の厚さ及びひずみ速度Vstを表9及び10に示す。さらに、組成物25~27のラップ剪断試験における測定の開始において、測定の開始時に使用された温度は190℃ではなく180℃であり;したがって、ΔT=165[K]ではなくΔT=155[K]が使用され;全ての他の測定パラメーターは、「最大線膨張(Max.伸び)及び最大力の試験方法の説明」において上記された測定パラメーターに相当する。組成物25はその成分に関して組成物10に相当し、組成物26はその成分に関して組成物13に相当し、且つ組成物27はその成分に関して組成物14に相当する。
【0154】
引張強度、破断点伸び及び弾性率(DIN EN ISO 527)
接着性試料を2mmの層厚になるまで2枚のTeflon紙の間で押圧した。175℃で35分間の硬化後、Teflon紙を取り外し、そして試験片をDIN標準状態へとダイカットした。試験片を2mm/分のひずみ速度において標準気候条件下で調査した。DIN EN ISO 527によって、引張強度、破断点伸び及び0.05~0.25%の弾性率を測定した。
【0155】
ラップ剪断強度(LSS)(DIN EN 1465)
Anticorit PL 3802-39Sで再塗油されたH420+Z鋼(厚さ1.2mm)のクリーニングされた試験シートを、1.5mmの層厚でスペーサーとしてガラスビーズを用いて25×10mmの結合領域上で接着剤によって結合させ、そして明示された硬化条件下で硬化した。
【0156】
硬化条件:a)オーブン温度175℃において35分。
【0157】
ラップ剪断強度は、DIN EN 1465による三重決定において10mm/分のひずみ速度で引張試験機上で決定された。
【0158】
T剥離強度(DIN 53281)
DC-04+ZE鋼(厚さ0.8mm)の130×25mmの試験シートを調製した。適切なダイカット機を用いて30mmの高さで試験シートを処理した(90°)。Anticorit PL 3802-39Sで再塗油されたクリーニングされた100×25mm表面を、0.3mmの層厚でスペーサーとしてガラスビーズを用いて接着剤によって結合させ、そしてオーブン温度175℃の到達から35分の滞留時間の間、硬化した。T剥離強度は、カバーされた距離の1/6~5/6の横断距離範囲におけるN/mmでの剥離力として二重決定で100mm/分のひずみ速度において引張試験機で決定された。
【0159】
(ISO 11343による)衝撃剥離強度
接着剤及び90×20×0.8mmの寸法を有するDC04+ZE鋼を用いて試験片を製造した。ここで、結合領域は、スペーサーとしてガラスビーズを用いて、0.3mmの層厚で20×30mmであった。衝撃剥離強度は、各ケースにおいて、2m/秒におけるZwick450衝撃振り子上で三重決定として明示された温度(RT=23℃、-30℃)において測定された。報告された衝撃剥離強度は、ISO11343による25%~90%の測定曲線下のN/mmでの平均力である。
【0160】
接着剤は、オーブン温度175℃において35分間硬化された。
【0161】
粘度
接着剤の粘度測定は、次のパラメーターを用いて、25℃又は50℃の温度においてプレート-プレート幾何構造を使用する振動によってAnton Paar MCR 101レオメーター上で製造の1日後に実行した:5Hz、1mm間隙、プレート-プレート距離25mm、1%変形。
【0162】
衝撃調整剤1~9の製造のために、次の市販製品が使用された:
【0163】
【0164】
実施例1:衝撃調整剤SM1(ブロッキング剤としてフェノール[1.2当量]、PolyTHF2000/Poly BD R45HTLO主鎖)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、225gのPolyTHF 2000、225gのPoly bd R45V及び安定剤として2.25gのBHTを脱水させた。その後、90.83gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.059gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.05%。
【0165】
得られたNCO末端ポリマーに0.117gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び44.35gのフェノールを添加し、そして5時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:(調製の直後)0.53%、(調製の1日後)0.24%。
【0166】
実施例2:衝撃調整剤SM2(ブロッキング剤として4-メトキシフェノール[1.2当量]、主鎖としてPolyTHF2000/PolyBD R45V)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、200gのPolyTHF 2000、200gのPoly bd R45V及び安定剤として2.00gのBHTを脱水させた。その後、80.64gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.053gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:2.81%。
【0167】
得られたNCO末端ポリマーに0.106gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び47.93gの4-メトキシフェノール(HQMME)を添加し、そして5時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:(調製の直後)2.82%、(調製の1日後)0.09%。
【0168】
実施例3:衝撃調整剤SM3(ブロッキング剤として4-メトキシフェノール[1.2当量]、主鎖としてPolyTHF2000)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、350gのPolyTHF 2000及び安定剤として3.50gのBHTを脱水させた。その後、77.82gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.048gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.35%。
【0169】
得られたNCO末端ポリマーに0.096gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び50.76gの4-メトキシフェノール(HQMME)を添加し、そして5時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:(調製の直後)0.48%、(調製の1日後)0.23%。
【0170】
粘度(調製の1日後):25℃において422Pa*s、50℃において82Pa*s。
【0171】
実施例4:衝撃調整剤SM4(ブロッキング剤として2-ベンゾキサゾリノン[1.2当量]、主鎖としてPolyTHF2000)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、400gのPolyTHF 2000及び安定剤として4.50gのBHTを脱水させた。その後、88.62gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.055gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.61%。
【0172】
得られたNCO末端ポリマーに0.110gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び59.64gのベンゾキサゾリノンを添加し、そして3時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:0.24%。
【0173】
実施例5:衝撃調整剤SM5(ブロッキング剤として3,5-ジメチルピラゾール[1.2当量]、主鎖としてPolyTHF2000、Poly bd R45)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、225gのPolyTHF 2000、225gのPoly bd R45V及び安定剤として2.25gのBHTを脱水させた。その後、77.82gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.058gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.08%。
【0174】
得られたNCO末端ポリマーに0.116gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び38.11gの3,5-ジメチルピラゾールを添加し、そして2時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:0.0%。
【0175】
実施例6:衝撃調整剤SM6(ブロッキング剤としてジブチルアミン[1.0当量]、主鎖としてPolyTHF2000、Poly bd R45)
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、175gのPolyTHF 2000、175gのPoly bd R45V及び安定剤として1.75gのBHTを脱水させた。その後、70.56gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.046gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:2.90%。
【0176】
得られたNCO末端ポリマーに0.92gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び37.52gのジブチルアミンを添加し、そして3時間、減圧下70℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:0.0%。
【0177】
実施例7:衝撃調整剤SM7(ブロッキング剤としてMEKO[1.2当量])
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、200gのPolyTHF 2000、200gのPoly BD R45V及び安定剤として2.00gのBHTを脱水させた。その後、80.74gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.052gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:2.91%。
【0178】
得られたNCO末端ポリマーに0.104gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び34.82gの2-ブタンオキシム(MEKO)を添加し、そして1時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:0.00%。
【0179】
実施例8:衝撃調整剤SM8(ブロッキング剤として2,2-ジアリルビスフェノールA[1.2当量])
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、290gのPolyTHF 2000及び安定剤として2.90gのBHTを脱水させた。その後、64.25gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.046gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.36%。
【0180】
得られたNCO末端ポリマーに0.092gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び104.76gの2,2-ジアリルビスフェノールを添加し、そして5時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。5時間後に測定された遊離NCO含有量:0.74%。
【0181】
室温で翌日に測定された遊離NCO含有量:0.36%。
【0182】
実施例9:衝撃調整剤SM9(ブロッキング剤としてカプロラクタム[1.2当量])
最小の撹拌を用いて1時間、減圧下90℃で、200gのPolyTHF 2000、200gのPoly bd R45V及び安定剤として2.00gのBHTを脱水させた。その後、80.74gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)及び0.053gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を添加した。イソシアネート末端ポリマーを得るために、減圧下で2時間、90℃での中程度の撹拌下で反応を実行した:測定された遊離NCO含有量:3.026%。
【0183】
得られたNCO末端ポリマーに0.106gのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)及び47.01gのカプロラクタムを添加し、そして3時間、減圧下110℃での反応によってイソシアネート基を使い果たした。測定された遊離NCO含有量:0.00%。
【0184】
実施例接着剤1~9
表2によるエポキシ樹脂組成物を製造するために、実施例1~9において調製された衝撃調整剤SM1~SM9をそれぞれ使用した。
【0185】
衝撃調整剤1~9の1種を含有するエポキシ樹脂組成物の組成及び割合を表2に要約する。SM-Xは、上記で調製された衝撃調整剤SM1、SM2などに関連する。
【0186】
【0187】
350gのバッチサイズの遊星形混合機中で、それぞれのエポキシ樹脂組成物を混合した。この目的のために、混合容器に液体成分、それに続いて固体成分を装填し、そしてそれらを減圧下70℃において混合した。混合操作(約45分)の間、減圧を数回中断し、そして混合ツールをクリーニングした。均質な混合物が得られたら、エポキシ樹脂組成物をカートリッジ中に分配し、そして室温で貯蔵した。
【0188】
表3及び4は、衝撃調整剤SM1-9によって得られるエポキシ樹脂組成物の評価の結果を示す。
【0189】
【0190】
【0191】
組成物10~24
表5に従って、衝撃調整剤SM2、SM3及びSM4を異なる濃度で使用して接着剤を製造した。使用されたエポキシ樹脂「ビスフェノールAエポキシ樹脂」は、ビスフェノールAをベースとする2部の液体エポキシ樹脂と、ビスフェノールAをベースとする1部の固体エポキシ樹脂との混合物である。
【0192】
表6~8は、衝撃調整剤SM2、SM3及びSM4によって得られる接着剤10~25の評価の結果を示す。
【0193】
衝撃調整剤の割合の関数としての最大線膨張を
図2~4に示す。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【表10】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]以下の工程を含む、熱安定性基材の接着結合法:
(i)一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、熱安定性基材S1、特に金属の表面に適用すること;
(ii)適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物を、さらなる熱安定性基材S2、特に金属の表面と接触させること、ここで、工程(ii)後の、適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さが、≧0.8mm、特に≧1mmである;
(iii)100~220℃、特に120~200℃、好ましくは130~150℃、より好ましくは130~140℃の温度まで、前記組成物を加熱すること;
ここで、
前記一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、
(a)1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種のエポキシ樹脂Aと;
(b)エポキシ樹脂のための少なくとも一種の潜在的硬化剤Bと
を含み、
少なくとも一種の強靭性向上剤Dに対する、1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種の前記エポキシ樹脂Aの重量比が、0.3~2.2であり、且つ
前記強靭性向上剤Dが、下記の式(I)の末端がブロックされたポリウレタンプレポリマーであり:
【化20】
[式中、R
1
は、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価の基であり;
pは2~8の値を有し;且つ
R
2
は、100℃より高い温度において脱離する保護基であり、R
2
は、下記からなる群から選択される置換基ではない:
【化21】
(式中、
R
12
は、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基、特にNHプロトンの除去後のε-カプロラクタムであり;且つ
R
19
は、ヒドロキシル基の除去後の、ビスフェノール、特にビスフェノールA、ビスフェノールF及び2,2’-ジアリルビスフェノールAを表す)]、且つ
前記一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物が、加熱硬化したラップ剪断試験片の冷却の間にラップ剪断試験において決定する≧1.65mmの最大線膨張(最大伸び)を有し、
前記最大線膨張(最大伸び)を、0.40mm/分のひずみ速度V
st
で、ラップ剪断試験において測定し、且つ
前記ラップ剪断試験における前記ラップ剪断試験片の温度が、前記測定の開始時に180℃、特に190℃であり、且つ前記ラップ剪断試験片を、前記測定の開始時に40℃/分の冷却速度で25℃の温度まで冷却し、次いでその温度に保持する。
[2]R
2
が、独立して、下記からなる群から選択される置換基である、上記[1]に記載の方法:
【化22】
(式中、
R
5
、R
6
、R
7
及びR
8
は、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基であるか、或いはR
5
はR
6
と一緒に、又はR
7
はR
8
と一緒に、4~7員の任意選択的に置換された環の一部を形成し;
R
9
、R
9’
及びR
10
は、それぞれ独立して、アルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基又はアルキルオキシ又はアリールオキシ又はアラルキルオキシ基であり;
R
11
はアルキル基であり、
R
13
及びR
14
は、それぞれ独立して、2~5個の炭素原子を有し、且つ任意選択的に二重結合を有するか、又は置換されているアルキレン基であるか、或いはフェニレン基又は水素化フェニレン基であり;
R
15
、R
16
及びR
17
は、それぞれ独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり;且つ
R
18
は、アラルキル基であるか、又は任意選択的に芳香族ヒドロキシル基を有する単環式若しくは多環式置換又は未置換芳香族基であり;
R
4
は、ヒドロキシル及びエポキシ基除去後の、1級又は2級ヒドロキシル基を含有する脂肪族、脂環式、芳香族又は芳香脂肪族エポキシドの基であり;
且つmは、1、2又は3の値を有する)。
[3]R
2
が、独立して、下記からなる群から選択される置換基である、上記[1]又は[2]に記載の方法:
【化23】
(式中、
R
5
、R
6
、R
7
及びR
8
は、それぞれ独立して、アルキル又はシクロアルキル又はアラルキル又はアリールアルキル基であるか、或いはR
5
はR
6
と一緒に、又はR
7
はR
8
と一緒に、4~7員の任意選択的に置換された環の一部を形成し;
R
15
、R
16
及びR
17
は、それぞれ独立して、H又はアルキル基又はアリール基又はアラルキル基であり;且つ
R
18
は、アラルキル基であるか、又は任意選択的に芳香族ヒドロキシル基を有する単環式若しくは多環式置換又は未置換芳香族基であり;
R
2
は、好ましくは、
【化24】
からなる群から選択され、
R
2
は、特に、
【化25】
からなる群から選択され、
R
2
は、より好ましくは、
【化26】
からなる群から選択され、
R
2
は、最も好ましくは、
【化27】
である)。
[4]少なくとも一種の前記強靭性向上剤Dに対する、1分子あたり平均1個を超えるエポキシ基を有する少なくとも一種の前記エポキシ樹脂Aの重量比が、0.4~2.0、より好ましくは0.5~1.8である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5]R
1
が、末端イソシアネート基の除去後の、イソシアネート基を末端とする線形又は分岐ポリウレタンプレポリマーのp価の基であり、且つ前記ポリウレタンプレポリマーが、少なくとも一種のジイソシアネート又はトリイソシアネートから、及び末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有するポリマーQ
PM
から調製される、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6]末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有する前記ポリマーQ
PM
が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ブタジエン-アクリロニトリルコポリマー及びそれらの混合物、特に好ましくはポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒドロキシル末端ポリブタジエンからなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールを含む、上記[5]に記載の方法。
[7]末端アミノ、チオール又はヒドロキシル基を有する前記ポリマーQ
PM
が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びヒドロキシル末端ポリブタジエンからなる群から選択される600~6000ダルトンの平均分子量を有するポリオールを含み、ヒドロキシル末端ポリブタジエンに対するポリテトラメチレンエーテルグリコールの重量比は、100/0~70/30、より好ましくは100/0~60/40、より好ましくは100/0~90/10の範囲、最も好ましくは100/0である、上記[6]に記載の方法。
[8]工程(ii)後の、適用した前記熱硬化性エポキシ樹脂組成物の厚さが、≧1.0mm、特に≧1.2mm、好ましくは≧1.5mmである、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の方法。
[9]前記最大線膨張(最大伸び)を、0.40mm/分、特に0.52mm/分、好ましくは0.68mm/分のひずみ速度V
st
で、ラップ剪断試験において測定する、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載の方法。
[10]100~220℃、特に120~200℃、好ましくは140~200℃、より好ましくは150~190℃の温度まで前記組成物を加熱する工程(iii)において、前記組成物を、10分間~6時間、10分間~2時間、10分間~60分間、10分間~30分間、より好ましくは10分間~20分間、前記温度に保持する、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載の方法。
[11]前記ラップ剪断試験が、下記の特徴を有するラップ剪断試験の試験片を有するラップ剪断試験である、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載の方法:
- 25mm×100mm×1.5mmの寸法を有する鋼シート、
- 1.5mm、好ましくは1.0mmの厚さで、10mm×25mmの寸法を有する前記硬化した一成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物の結合領域。
[12]前記最大線膨張(最大伸び)が、≧1.8mm、好ましくは≧2.0mm、好ましくは≧2.145mm、好ましくは≧2.2mm、好ましくは≧2.5mm、好ましくは≧2.8mm、好ましくは≧3.0mm、好ましくは≧3.5mm、好ましくは≧4.0mmである、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載の方法。
[13]測定された最大力が、≦6000N、好ましくは≦5000N、好ましくは≦4500N、好ましくは≦4000N、好ましくは≦3500N、好ましくは≦3000N、好ましくは≦2500N、好ましくは≦2000Nである、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14]≧1.8mm、好ましくは≧2.0mm、好ましくは2.145mmの前記最大線膨張(最大伸び)の到達時の測定された力が、≦4000N、好ましくは≦3000N、好ましくは≦2500N、好ましくは≦2000N、好ましくは≦1500N、好ましくは≦1000N、好ましくは≦800N、好ましくは≦700Nである、上記[1]~[13]のいずれか一つに記載の方法。
[15]自動車車両構造及びサンドイッチパネル構造のための方法である、上記[1]~[14]のいずれか一つに記載の方法。