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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】水素化反応用触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/06 20060101AFI20230221BHJP
   C07C 5/03 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 5/08 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 5/09 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 9/06 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20230221BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
B01J31/06 Z
C07C5/03
C07C5/08
C07C5/09
C07C9/06
C07C11/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021547204
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 KR2020009185
(87)【国際公開番号】W WO2021066298
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120808
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー、ミュンジ
(72)【発明者】
【氏名】コ、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ミンキー
(72)【発明者】
【氏名】リー、ソンヒュン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-280495(JP,A)
【文献】特開2006-198491(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0041033(KR,A)
【文献】ACS Catalysis,2016年,vol. 6, no. 4,2435-2442,DOI: 10.1021/acscatal.5b02613
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 5/03
C07C 5/08
C07C 5/09
C07C 9/06
C07C 11/04
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子支持体;及び
前記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、
前記高分子支持体は、下記化学式1で表される繰り返し単位からなるものである、水素化反応用触媒:
[化1]
【化1】
前記化学式1において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であるか、互いに隣接した基は、互いに結合して炭化水素環を形成することができる。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式2~9のうちいずれか一つで表されるものである、請求項1に記載の水素化反応用触媒:
[化2]
【化2】
[化3]
【化3】
[化4]
【化4】
[化5]
【化5】
[化6]
【化6】
[化7]
【化7】
[化8]
【化8】
[化9]
【化9】
【請求項3】
前記触媒成分は、白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、チタン、ガリウム、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びランタンのうち1種以上を含むものである、請求項1または2に記載の水素化反応用触媒。
【請求項4】
前記水素化反応用触媒の総重量を基準に、前記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水素化反応用触媒。
【請求項5】
前記水素化反応用触媒は、アルキンからアルケンへの水素化反応用触媒である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水素化反応用触媒。
【請求項6】
下記化学式1で表される繰り返し単位からなる高分子支持体を準備するステップ;及び
前記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップ
を含む水素化反応用触媒の製造方法:
[化1]
【化10】
前記化学式1において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であるか、互いに隣接した基は、互いに結合して炭化水素環を形成することができる。
【請求項7】
前記化学式1は、下記化学式2~9のうちいずれか一つで表されるものである、請求項6に記載の水素化反応用触媒の製造方法:
[化2]
【化11】
[化3]
【化12】
[化4]
【化13】
[化5]
【化14】
[化6]
【化15】
[化7]
【化16】
[化8]
【化17】
[化9]
【化18】
【請求項8】
前記触媒成分は、白金、パラジウム、ルテニウム、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、金、銀、銅、チタン、ガリウム、セリウム、アルミニウム、亜鉛及びランタンのうち1種以上を含むものである、請求項6または7に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【請求項9】
前記水素化反応用触媒の総重量を基準に、前記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%である、請求項6から8のいずれか一項に記載の水素化反応用触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年9月30日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0120808号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、水素化反応用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石油精製及び石油化学工場では多量の炭化水素が生産され、これは、その後の工程段階や貯蔵期間の過程で問題を起こす多量の不飽和炭化水素を含んでいる。かかる不飽和炭化水素は、例えば、アセチレン、プロピン(propyne)、プロパジエン、ブタジエン、ビニルアセチレン、ブチン、フェニルアセチレン、スチレンなどを含む。
【0004】
例えば、アセチレンは、エチレン重合工程で触媒の活性を減少させ、重合体の品質を低下させるものと知られている。そのため、エチレンからポリエチレンを合成する工程で、エチレン原料に含有されているアセチレンの濃度は最低限に抑えなければならない。
【0005】
このような不所望の不飽和化合物は、主に選択的水素添加反応によって数PPM以下程度に除去する。このように不飽和化合物を選択的に水素化する反応で、所望の化合物への選択性を高め、反応活性を低下させるコーク形成を避けるのが非常に重要である。
【0006】
従来は、ニッケル硫酸塩、タングステン/ニッケル硫酸塩又は銅含有触媒が選択的水素添加反応に使用されていた。しかしながら、高い温度でも触媒活性が低くて、重合体形成を低下させる。また、アルミナやシリカに支持されたパラジウム(Pd)又はPd及び銀(Ag)含有触媒も、選択的水素添加工程に使用されるが、選択性が満足ではないか、活性が低い。
【0007】
したがって、当技術分野では、水素化反応の生成物の選択性に優れ、触媒活性に優れた水素化反応用触媒の開発が必要であるというのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、水素化反応用触媒及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の一実施態様は、
高分子支持体;及び
上記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、
上記高分子支持体は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含むものである、水素化反応用触媒を提供する:
[化1]
【化1】
【0010】
上記化学式1において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であるか、互いに隣接した基は、互いに結合して炭化水素環を形成することができる。
【0011】
また、本願の別の実施態様は、
上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を準備するステップ;及び
上記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップ
を含む水素化反応用触媒の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本願の一実施態様によれば、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を水素化反応用触媒の支持体として適用することができる。
【0013】
また、本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体を含む触媒は、水素化反応の反応温度の範囲で安定性に優れ、水素化反応で生成物の選択度を向上させることができるという特徴がある。
【0014】
また、本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体と水素活性金属クラスターとの強い結合によって、金属表面上で反応が起こる従来のアルミナ又はシリカベースの金属担持触媒とは区別される反応特性を有する。本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、水素化反応の反応温度の範囲で安定性に優れ、アルキン(alkyne)の水素化反応性はそのまま維持しながら、アルケン(alkene)の水素化反応性は抑制することにより、アルキン(alkyne)の水素化反応でアルケン(alkene)の選択度を向上させることができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願の一実施態様として、高分子支持体に還元された金属を担持して製造された高分子支持体ベースの触媒を概略的に示す図である。
図2】本願の一実施態様として、合成例1に係る高分子支持体の交差分極-マジック角回転13C核磁気共鳴(cross polarization magic-angle spinning 13C nuclear magnetic resonance, CP/MAS 13C NMR)の分析結果を示す図である。
図3】本願の一実施態様として、合成例1に係る高分子支持体の示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)の分析結果を示す図である。
図4】本願の一実施態様として、実施例1に係る触媒の透過電子顕微鏡(transmission electron microscope, TEM)像を示す図である。
図5】本願の一実施態様として、実施例1に係る触媒のH雰囲気熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の結果を示す図である。
図6】本願の一実施態様として、実施例1及び比較例1に係る触媒のアセチレン水素化反応の結果を示す図である。
図7】本願の一実施態様として、実施例1及び比較例1に係るアセチレン水素化触媒の長時間反応安定性測定の反応結果を示す図である。
図8】本願の一実施態様として、実施例2~6に係る触媒のH雰囲気熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0017】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた別の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるのを意味する。
【0019】
上述のように、従来は、水素化反応用触媒としてアルミナ又はシリカ支持体にPdを担持した触媒を使用するのが一般的であった。しかしながら、かかる触媒は、触媒の速い非活性化によって触媒の交換周期が早いという問題点があり、これによって工程コストが上昇し得るという問題点がある。また、従来は、水素化反応の生成物の選択度を向上させるために改質剤を投入していたが、これは工程コストが上昇するおそれがあり、追加の分離工程が必要であるという問題点がある。
【0020】
そこで、本願では、水素化反応の生成物の選択性に優れ、触媒活性に優れた水素化反応用触媒を開発しようとした。特に、本発明者らは、水素化反応用触媒に適用される支持体として高分子支持体を含む触媒を研究して、本願を完成するに至った。
【0021】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、高分子支持体;及び上記高分子支持体に担持された触媒成分を含み、上記高分子支持体は、下記化学式1で表される繰り返し単位を含む。
[化1]
【化2】
【0022】
上記化学式1において、
R1~R4は、互いに同一であるか異なっており、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であるか、互いに隣接した基は、互いに結合して炭化水素環を形成することができる。
【0023】
本願の一実施態様において、化学式の
【化3】
は、繰り返し単位が連結される地点を意味する。
【0024】
本願の一実施態様において、上記化学式1のアルキル基は、直鎖又は分枝鎖であってもよく、炭素数は、特に限定されないが、1~10であることが好ましい。上記アルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルブチル基などがあるが、これにのみ限定されるものではない。
【0025】
本願の一実施態様において、上記化学式1のアリール基の具体的な例としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クアテルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本願の一実施態様において、上記化学式1のR1~R4は、いずれも水素であってもよい。
【0027】
本願の一実施態様において、上記炭化水素環は、芳香族炭化水素環であってもよく、具体的な例として、ベンゼン環などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本願の一実施態様において、上記化学式1は、下記化学式2~9のうちいずれか一つで表されることができる。
[化2]
【化4】
[化3]
【化5】
[化4]
【化6】
[化5]
【化7】
[化6]
【化8】
[化7]
【化9】
[化8]
【化10】
[化9]
【化11】
【0029】
本願の一実施態様において、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体の重量平均分子量は、25,000g/mol~50,000g/molであってもよい。
【0030】
本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体に水素活性金属(水素分子との接触によって活性化された水素を形成することができる金属)を担持することにより、アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化などのような選択的水素化反応において、従来のアルミナ又はシリカ支持体を用いた水素化触媒に比べて高い選択度を示すことができる。一例として、アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化反応において、従来のアルミナ又はシリカベースの金属担持触媒の場合には、アルキン(alkyne)とアルケン(alkene)がいずれも金属表面に容易に吸着するので、アルキン(alkyne)のアルケン(alkene)への水素化とアルケン(alkene)のアルカン(alkane)への水素化とが非選択的になされる。しかしながら、本願の一実施態様のように上記高分子支持体を用いる場合には、上記高分子支持体と活性金属の間の強い結合力によって、活性金属の表面が高分子で取り囲まれるようになる。よって、活性金属を基準に、アルキン(alkyne)のように活性金属と高分子支持体の間の結合力よりも相対的に強い結合力を示す反応物は、活性金属に吸着するが、アルケン(alkene)のように相対的に弱い結合力を示す反応物は、活性金属に吸着できなくなる反応特性を有する。かかる特性によって、高分子支持体に活性金属を担持した触媒は、アルキン(alkyne)の水素化反応性はそのまま維持しながら、アルケン(alkene)の水素化反応性は抑制して、アルキン(alkyne)の水素化反応でアルケン(alkene)への高い選択性を示すことができる。
【0031】
本願の一実施態様において、上記触媒成分は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、 金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)及びランタン(La)のうち1種以上を含むことができる。
【0032】
本願の一実施態様において、上記水素化反応用触媒の総重量を基準に、上記触媒成分の含量は、0.01重量%~10重量%であってもよく、0.05重量%~5重量%であってもよい。上記水素化反応用触媒の総重量を基準に、上記触媒成分の含量が、0.01重量%未満の場合には、触媒の反応性が低下するおそれがあって、好ましくない。また、上記触媒成分の含量が10重量%を超過する場合には、上記高分子支持体に比べて相対的に多量の活性金属を含有するようになって、活性金属と高分子支持体との結合が容易でないおそれがあり、これによって水素化反応によるアルケン(alkene)の選択度が低くなって、重量増加による水素化反応の実益が少なくなるおそれがある。
【0033】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒の製造方法は、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を準備するステップ;及び上記高分子支持体に触媒成分を担持させるステップを含む。
【0034】
本願の一実施態様において、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体は、ジハロゲン化芳香族化合物と硫黄供給源とをN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone, NMP)溶媒で縮合重合して合成することができる。上記ジハロゲン化芳香族化合物は、多様な種類が選択されることができ、一例として、p-ジクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、1,4-ジクロロ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼンなどが挙げられる。また、上記硫黄供給源は、固体硫黄供給源であれば、特に制限されず、NaS、KSなどが挙げられる。上記ジハロゲン化芳香族化合物と硫黄供給源の硫黄とのモル比は、0.5~1.5であってもよい。
【0035】
より具体的に、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体の製造方法は、 硫黄供給源と有機溶媒とを含む混合物を加熱して水を蒸発させるステップ;上記混合物にジハロゲン化芳香族化合物及び有機溶媒を投入して縮合重合反応させて重合反応物を得るステップ;及び重合反応物を水で洗浄後に乾燥するステップを含むことができる。上記硫黄供給源と有機溶媒とを含む混合物を加熱して水を蒸発させるステップにおいては、180℃~220℃で1時間~3時間加熱及び撹拌して水を蒸発させることができる。上記混合物にジハロゲン化芳香族化合物及び有機溶媒を投入して縮合重合反応させて重合反応物を得るステップにおいては、225℃~265℃で3時間~5時間加熱及び撹拌して重合することができる。重合反応物を水で洗浄後に乾燥するステップは、70℃~90℃の水で洗浄して、80℃~100℃で6時間~12時間乾燥することができる。
【0036】
本願の一実施態様において、上記高分子支持体に触媒成分を担持する方法は、上記触媒成分の前駆体としての化合物を含有する水溶液又は有機溶液(担持液)を準備し、上記高分子支持体を担持液に浸してから乾燥した後、水素気体で還元させる過程を経て担持する浸漬法を用いるか、あらかじめ還元をした金属ナノ粒子とともに撹拌して合成することができる。上記触媒成分の前駆体は、Pd(acac)、Pd(NO・4NH、Pt(acac)、Pt(NO・4NHのような有機金属化合物を用いることができるが、これにのみ限定されるものではない。
【0037】
上記浸漬法で担持する場合には、触媒成分の前駆体としての化合物を高分子支持体の空隙体積分の水や有機溶媒に溶解させて準備して、この溶液に高分子支持体を浸漬させ、溶媒を全部蒸発させてから乾燥後、高分子が損傷しない温度(<250℃)内で水素を流しながら還元させることができる。また、あらかじめ還元をした金属ナノ粒子は、有機溶媒に分散させた後、その溶液に高分子支持体を入れて溶液の色が全部消えるまで撹拌及び超音波処理をした後、濾過後に乾燥させて得ることができる。
【0038】
本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒の製造方法において、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体、上記触媒成分などの具体的な内容は、上述した通りである。
【0039】
本願の一実施態様に係る触媒は、水素化反応に適用されることができる。例えば、上記触媒は、アルキン(alkyne)からアルケン(alkene)への水素化反応に適用されることができる。本願の一実施態様に係る触媒は、アセチレン(acetylene)だけでなく、三重結合を持つ炭化水素化合物に同様に適用されることができる。例えば、プロピン(propyne)、ブチン(butyne)、ペンチン(pentyne)、ヘキサイン(hexayne)、へプチン(heptyne)、オクチン(octyne)などを含む。また、三重結合以外の他の作用基や二重結合を含む化合物、例えば、フェニルアセチレンのようなベンゼン環を有する化合物、カルボニル基を有するアルキン化合物、アルコール基を有するアルキン化合物、アミン基を有するアルキン化合物などで、水素化分解反応は抑制し、アルキン基のみアルケン基への選択的水素化反応に適用することができる。
【実施例
【0040】
以下、本願を具体的に説明するために、実施例を挙げて詳細に説明する。ところが、本願に係る実施例は、種々の異なる形態に変形されることができ、本願の範囲が、以下に詳述する実施例に限定されるものとは解釈されない。本願の実施例は、当業界における通常の知識を有する者に本願をより完全に説明するために提供されるものである。
【0041】
<実施例>
<合成例1> 上記化学式2で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
127.2gの硫化ナトリウム水和物(sodium sulfide hydrate、61.3重量%のNaS)、326.7gのNMPを混合した後、205℃に加熱して脱水させた後、146.9gのp-ジクロロベンゼンを混合して、245℃で3時間撹拌下で重合した。その後、重合反応物を濾過して、80℃の水で洗浄後、100℃で12時間乾燥した。上記製造された高分子は、「PH」と表す。
【0042】
<合成例2> 上記化学式3で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
上記p-ジクロロベンゼンの代りに161.0gの2,5-ジクロロトルエン(2,5-dichlorotoluene)を用いたこと以外には、上記合成例1と同様に行った。
【0043】
<合成例3> 上記化学式4で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
上記p-ジクロロベンゼンの代りに286.0gの1,4-ジブロモナフタレン(1,4-dibromonaphthalene)を用いたこと以外には、上記合成例1と同様に行った。
【0044】
<合成例4> 上記化学式5で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
上記p-ジクロロベンゼンの代りに175.1gの2,5-ジクロロ-p-キシレン(2,5-dichloro-p-xylene)を用いたこと以外には、上記合成例1と同様に行った。
【0045】
<合成例5> 上記化学式6で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
上記p-ジクロロベンゼンの代りに203.1gの1,4-ジクロロ-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン(1,4-dichloro-2,3,5,6-tetramethylbenzene)を用いたこと以外には、上記合成例1と同様に行った。
【0046】
<合成例6> 上記化学式7で表される繰り返し単位を含む高分子の合成
上記p-ジクロロベンゼンの代りに554.3gの1,4-ジヨード-2,5-ジオクチルベンゼン(1,4-diiodo-2,5-dioctylbenzene)を用いたこと以外には、上記合成例1と同様に行った。
【0047】
<実験例1> 合成した高分子支持体の構造及び特性の分析
上記合成例1で製造した高分子支持体の構造を確認するために、13C NMR分析を実施した後、その結果を図2に示す。図2の結果のように、合成された高分子支持体は、上記化学式2と同じ構造で存在するものと把握された。
【0048】
上記合成例1で製造した高分子支持体の物性分析のために、示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)分析を実施した後、その結果を図3に示す。その結果、合成した高分子支持体(PH)のTmは、296℃、Tcは、251℃であることを把握した。
【0049】
<実施例1> 高分子支持体ベースの水素化触媒の製造
1)パラジウムクラスターの合成
アルゴン雰囲気で15mlのオレイルアミン(oleylamine)と75mgのPd(acac)とを混合して、60℃で1時間撹拌した。その後、300mgのボランtert-ブチルアミン複合体(borane tert-butylamine complex)と3mlのオレイルアミン(oleylamine)との混合物を上記混合物に入れた後、90℃に加熱して1時間撹拌した。その後、上記混合物に30mlのエタノールを入れた後、遠心分離を通じてパラジウムクラスターを得、得られたパラジウムクラスターを20mlのヘキサンに分散してパラジウム-ヘキサン溶液として保管した。
【0050】
2)高分子支持体へのパラジウムクラスターの担持
50mlのヘキサン溶液に上記合成例1で製造された高分子支持体1gを入れて撹拌した(混合物A)。上記合成したパラジウム-ヘキサン溶液0.76mlと50mlのヘキサン溶液とを混合した(混合物B)。撹拌中の混合物Aに混合物Bをゆっくり滴下した後、2時間撹拌した。撹拌した混合物を2時間超音波処理後に濾過して、常温で乾燥した。30mlの酢酸(acetic acid)に乾燥した生成物を入れて、40℃で12時間撹拌後に濾過し、300mlのエタノールで洗浄後、常温で12時間乾燥した。上記製造された触媒は、「Pd/PH」と表す。
【0051】
<実施例2> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例2で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0052】
<実施例3> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例3で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0053】
<実施例4> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例4で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0054】
<実施例5> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例5で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0055】
<実施例6> パラジウムを担持した高分子支持体触媒の合成
上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに合成例6で製造された高分子支持体を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。
【0056】
<比較例1> パラジウムを担持したシリカ支持体触媒の合成
実施例1において、上記合成例1で製造された高分子支持体の代りに常用シリカ(Aldrich, 236772)を用いたこと以外には、上記実施例1と同様に行った。上記製造された触媒は、「Pd/SiO」と表す。
【0057】
<実験例2> 金属を担持した高分子支持体触媒の構造及び特性の分析
実施例1の高分子支持体に担持された活性金属の状態を確認するために、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope, TEM)分析を実施し、その結果を図4に示す。図4の結果のように、Pd/PHサンプルの場合、約4nm直径のパラジウムクラスターが均一に分散して存在するものと把握された。
【0058】
実施例1~6の高分子支持体ベースの水素化触媒の熱的安定性を確認するために、製造された触媒を水素雰囲気で熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)を実施した後、その結果を図5及び図8に示す。より具体的に、図5及び図8は、熱重量分析装置を用いて反応条件での高分子支持体の温度による重さの変化を示したものであって、水素条件で温度の増加による高分子の重さの変化を示したスペクトルである。図5及び図8の結果のように、水素活性金属が担持されている状態であるにもかかわらず、水素雰囲気で約240℃まで高分子支持体が分解されないことを確認した。
【0059】
<実験例3> 担持触媒を用いたアセチレンの選択的水素化反応
上記実施例及び比較例で製造された担持触媒の活性は、下記の方法で確認した。
【0060】
アセチレンの水素化反応は、0.6kPaのアセチレン、49.3kPaのエチレン、0.9kPaの水素、窒素ベースの気体を供給して、1気圧、100℃、0.10gC2H2 cat -1-1の重量空間速度(weight hourly space velocity, WHSV)の条件で行われた。
【0061】
上記水素化反応での生成物の成分を分析するために、ガスクロマトグラフィーを使用して分析した。反応物(アセチレン)の転換率と生成物(エチレン、エタンなど)の選択度は、下記数式1及び2によって計算された。
[数1]
転換率(%)=(反応したアセチレンのモル数)/(供給されたアセチレンのモル数) ×100
[数2]
選択度(%)=(生成された生成物のモル数)/(反応したアセチレンのモル数)×100
【0062】
上記実施例1及び比較例1で製造した触媒を使用したアセチレン水素化反応の結果を下記表1、図6及び図7に示す。より具体的に、図6は、水素化触媒のアセチレン水素化反応の結果を示す図であり、図7は、アセチレン水素化触媒の長時間反応安定性の反応結果を示す図である。
【0063】
本願で適用した分析装置及び分析条件は、以下の通りである。
1)交差分極-マジック角回転13C核磁気共鳴(cross polarization magic-angle spinning 13C nuclear magnetic resonance, CP/MAS 13C NMR)
使用装備:Avance III HD(400 MHz)with wide bore 9.4 T magnet(Bruker)
分析方法:Larmor frequency of 100.66 MHz, repetition delay time of 3 seconds. Chemical shifts were reported in ppm relative to tetramethyl silane(0 ppm)
2)示差走査熱量(differential scanning calorimetry, DSC)
使用装備:DSC131 evo(Setaram)
分析方法:アルミナパンにサンプルを載置した後、323Kから593Kまで5K/minの速度で温度を調節しながら測定
3)透過電子顕微鏡(transmission electron microscope, TEM)
使用装備:JEM-2100F(JEOL)at 200 kV
4)熱重量分析(thermal gravimetric analysis, TGA)
使用装備:TGA N-1000(Scinco)
分析方法:313Kから1,073Kまで5K/minの速度で昇温しながら測定
5)ガスクロマトグラフィー(gas chromatography, GC)
使用装備:YL6500(Youngin)
分析方法:on-line GC, equipped with FID(flame ionized detector、水素炎イオン化検出器)、GS-GasPro(Agilent)columnを利用
【0064】
【表1】
【0065】
上記結果のように、本願の一実施態様に係る水素化反応用触媒は、従来のシリカを支持体として使用したPd/SiO触媒に比べて高いエチレン選択度を長期間維持して、非活性の程度が非常に遅いということを確認することができる。
【0066】
上記化学式2~7のうちいずれか一つで表される繰り返し単位を含む高分子支持体を用いた実験結果から、化学式1で表される繰り返し単位に、その作用原理が類似した他のアルキル基、アリール基などの作用基が追加で結合される場合にも、類似した効果を得ることができる。
【0067】
したがって、本願の一実施態様によれば、上記化学式1で表される繰り返し単位を含む高分子支持体を水素化反応用触媒の支持体として適用することができる。
【0068】
また、本願の一実施態様によれば、上記高分子支持体を含む触媒は、水素化反応の反応温度の範囲で安定性に優れ、水素化反応で生成物の選択度を向上させることができるという特徴がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8