IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SUMCOの特許一覧

特許7230746単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法
<>
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図1
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図2
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図3
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図4
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図5
  • 特許-単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20230221BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20230221BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H01L21/66 N
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019159627
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021040006
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】石澤 純一
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-118902(JP,A)
【文献】特開2018-093086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
C30B 29/06
C30B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンインゴットを径方向に切断してサンプルウェーハを切り出す工程と、
前記サンプルウェーハからサンプル片を切り出す工程と、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程と、
前記研削加工後の前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程とを備え、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
前記サンプル片の光沢度が500以上850以下となるように研削する工程であることを特徴とする単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項2】
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
前記サンプル片の平坦度TTVが6.0μm以下となるように研削する工程である、請求項1に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項3】
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
#500以上#3000以下の低番手の砥石を用いた粗研削と、#6000以上の高番手の砥石を用いた仕上げ研削とを順に行う二段階の研削加工である、請求項1又は2に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項4】
前記サンプル片の酸素濃度を測定する前に、前記サンプル片にドナーキラー熱処理を行う工程をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項5】
前記サンプル片の表面を研削加工した後に前記ドナーキラー熱処理を行う、請求項4に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項6】
前記サンプルウェーハを切り出す工程は、
バンドソー、内周刃又は外周刃を用いて前記単結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す工程と、
前記シリコンブロックの端部から前記サンプルウェーハを切り出す工程とを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項7】
前記サンプル片を切り出す工程は、
ダイシングにより前記サンプルウェーハを分割する工程を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項8】
前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程は、前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度をFTIR法により測定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項9】
単結晶シリコンインゴットを径方向に切断してサンプルウェーハを切り出す工程と、
前記サンプルウェーハからサンプル片を切り出す工程と、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程と、
前記研削加工後の前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程とを備え、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
前記サンプル片の平坦度TTVが6.0μm以下となるように研削する工程であることを特徴とする単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項10】
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
#500以上#3000以下の低番手の砥石を用いた粗研削と、#6000以上の高番手の砥石を用いた仕上げ研削とを順に行う二段階の研削加工である、請求項9に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項11】
前記サンプル片の酸素濃度を測定する前に、前記サンプル片にドナーキラー熱処理を行う工程をさらに備える、請求項9又は10に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項12】
前記サンプル片の表面を研削加工した後に前記ドナーキラー熱処理を行う、請求項11に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項13】
前記サンプルウェーハを切り出す工程は、
バンドソー、内周刃又は外周刃を用いて前記単結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す工程と、
前記シリコンブロックの端部から前記サンプルウェーハを切り出す工程とを含む、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項14】
前記サンプル片を切り出す工程は、
ダイシングにより前記サンプルウェーハを分割する工程を含む、請求項9乃至13のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項15】
前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程は、前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度をFTIR法により測定する、請求項9乃至14のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項16】
単結晶シリコンインゴットを径方向に切断してサンプルウェーハを切り出す工程と、
前記サンプルウェーハからサンプル片を切り出す工程と、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程と、
前記研削加工後の前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程とを備え、
前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、
#500以上#3000以下の低番手の砥石を用いた粗研削と、#6000以上の高番手の砥石を用いた仕上げ研削とを順に行う二段階の研削加工であることを特徴とする単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項17】
前記サンプル片の酸素濃度を測定する前に、前記サンプル片にドナーキラー熱処理を行う工程をさらに備える、請求項16に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項18】
前記サンプル片の表面を研削加工した後に前記ドナーキラー熱処理を行う、請求項17に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項19】
前記サンプルウェーハを切り出す工程は、
バンドソー、内周刃又は外周刃を用いて前記単結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す工程と、
前記シリコンブロックの端部から前記サンプルウェーハを切り出す工程とを含む、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項20】
前記サンプル片を切り出す工程は、
ダイシングにより前記サンプルウェーハを分割する工程を含む、請求項16乃至19のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【請求項21】
前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程は、前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度をFTIR法により測定する、請求項16乃至20のいずれか一項に記載の単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法に関し、特にチョクラルスキー法(CZ法)により育成された単結晶シリコンインゴットから切り出したサンプルウェーハの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの基板材料としてシリコンウェーハが広く用いられている。シリコンウェーハの製造では、CZ法により育成した単結晶シリコンインゴットを外周研削して直径を整えた後、トップ部とテイル部を切り落とし、さらに円柱状のインゴットを一定間隔で切り出して所定の長さのシリコンブロックに加工する。このとき、シリコンブロックの両端から品質検査用サンプルウェーハ(スラグ)も同時に切りされ、酸素濃度、抵抗率、キャリアの再結合ライフタイム、結晶欠陥の有無等の品質を検査することによって、シリコンブロックの合否判定が行われる。
【0003】
シリコンブロックの品質検査が合格であった場合、シリコンブロックの製品加工が進められる。シリコンブロックの加工では、ワイヤソーを用いてシリコンブロックをスライスすることにより複数枚のシリコンウェーハが一度に切り出される。その後、エッチング、表面研磨、洗浄などの工程を得てウェーハ製品が完成する。
【0004】
単結晶シリコンインゴットの評価技術に関し、例えば特許文献1には、単結晶シリコンインゴットをバンドソーなどでブロック状に切断し、シリコンブロックの両端からサンプルウェーハを切り出して、酸素濃度、抵抗率、結晶欠陥等を評価することによりシリコンブロックの合否判定を行うことが記載されている。
【0005】
また特許文献2には、円柱状のインゴットの外周を、ウェーハ製造用のインゴットブロックの径寸法よりも大きな径寸法に研削する第1外周研削工程と、第1研削工程の後の円柱状のインゴットを複数のインゴットブロックに切断するブロック切断工程と、複数のインゴットブロックからシリコン検査用サンプルを切り出すサンプル切り出し工程と、切り出された検査用サンプルを用いて品質評価を行う品質評価工程と、インゴットブロックの外周をウェーハ製造工程用の径寸法に研削する第2外周研削工程と、第2外周研削工程の後のインゴットブロックの外周にノッチを形成するノッチ形成工程と、ノッチを形成した前記インゴットブロックからシリコンウェーハを切り出すウェーハ製造工程とを備えたシリコンウェーハの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-201458号公報
【文献】特許第6332422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、単結晶シリコンインゴットからのシリコンブロックやサンプルウェーハの切り出しには、バンドソー、内周刃または外周刃を用いた切断機が使用される。これらの切断機には、ダイヤモンド砥粒などを刃先に電着させた単一のブレードが用いられ、このブレードを単結晶シリコンインゴットの径方向の上端から下端に向かって送り出すことによってインゴットが切断される。
【0008】
バンドソーなどのブレードを用いて切断されるサンプルウェーハは、ワイヤソーで切断される製品用ウェーハよりもその表面の加工傷が深く、また厚み分布も不均一である。そのため、従来は品質検査用サンプルをエッチング液に浸漬して表面をエッチングにより除去した後、各種検査を行っていた。
【0009】
しかしながら、バンドソーなどのブレードを用いて切断されたウェーハに対してエッチング処理を行った場合、ウェーハ表面の加工歪みは除去できるものの、表面のうねり形状まで修正することはできない。またエッチング処理では、ウェーハの外周部のエッチングの進行が速いため、ウェーハの外周部の形状にダレが生じてしまい、外周部の厚さが薄くなる。このようなウェーハの外周部の酸素濃度や炭素濃度をFTIR法で測定する場合、格子間原子に吸収されるべき赤外光が外周部をそのまま透過したり、あるいは光路外へ反射したりすることで測定誤差が大きくなり、繰り返し測定精度が悪化する。なおウェーハの外周部のダレの問題は研磨布を用いてウェーハを研磨する場合にも発生する。
【0010】
エッチングによるウェーハの外周部のダレの影響を抑える方法として、単結晶シリコンインゴットの引き上げ直径を製品ウェーハよりも十分に大きくし、このインゴットから切り出したより大きな直径のサンプルウェーハを用いて品質評価を行う方法がある(特許文献2参照)。しかし、この方法ではシリコンブロックを製品ウェーハの直径に加工するための外周研削の取り代が大きくなり、原料の無駄や結晶引き上げ時間の増加の問題がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、バンドソー等を用いて単結晶シリコンインゴットから切り出した検査用サンプルウェーハの酸素濃度又は炭素濃度の繰り返し測定精度を高めることが可能な測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、エッチング処理によらないウェーハの平坦化処理について鋭意研究を重ねた結果、研削加工によるウェーハの平坦化処理が有効であり、鏡面化が十分でない適度な表面粗さとすることにより、酸素濃度又は炭素濃度の測定精度が向上することを見出した。さらにバンドソー等で切り出したサンプルウェーハを小サイズに分割した後に平面研削した場合には、研削加工中のウェーハの割れを防止できることを見出した。
【0013】
本発明はこのような技術的知見に基づくものであり、本発明による単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法は、単結晶シリコンインゴットを径方向に切断してサンプルウェーハを切り出す工程と、前記サンプルウェーハからサンプル片を切り出す工程と、前記サンプル片の表面を研削加工する工程と、前記研削加工後の前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、インゴットから切り出したサンプル片をそのまま平面研削することで表面の反りやうねりをできるだけ小さくすることができ、サンプル中心から最外周までフラットな形状を維持することができる。したがって、単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の繰返し測定精度を高めることができる。またサンプルウェーハをサンプル片に切断加工した後に研削加工を行うので、研削加工中のウェーハの割れを防止することができる。
【0015】
本発明において、前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、前記サンプル片の光沢度が500以上850以下となるように研削する工程であることが好ましい。サンプル片の光沢度を500以上850以下とすることで、酸素濃度又は炭素濃度の測定精度の低下を防止することができる。
【0016】
本発明において、前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、前記サンプル片の平坦度TTVが6.0μm以下、或いは平坦度Waが0.1μm以下となるように研削する工程であることが好ましい。これにより、サンプル片の反り、うねり、外周部のダレ等を抑えることができ、抵抗率の繰り返し測定精度の向上と研削加工時のサンプル片の割れを防止することができる。
【0017】
本発明において、前記サンプル片の表面を研削加工する工程は、#500以上#3000以下の低番手の砥石を用いた粗研削と、#6000以上の高番手の砥石を用いた仕上げ研削とを順に行う二段階の研削加工であることが好ましい。これにより、サンプル片の表面を所望の平坦度及び光沢度を短時間で仕上げることができる。
【0018】
本発明による単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法は、前記サンプル片の酸素濃度を測定する前に、前記サンプル片にドナーキラー熱処理を行う工程をさらに備えることが好ましい。これにより、酸素ドナーの影響による酸素濃度の測定精度の低下を防止することができる。
【0019】
本発明による単結晶シリコンの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法は、前記サンプル片の表面を研削加工した後に前記ドナーキラー熱処理を行うことが好ましい。サンプル片の研削工程後にドナーキラー熱処理を行うことにより、サンプル片の表面に付着する金属不純物を研削加工によって除去することができ、金属不純物を除去するためのエッチング処理や洗浄を省略することができる。これにより、ドナーキラー熱処理に伴うサンプル片の不純物汚染を防止することができる。
【0020】
本発明において、前記サンプルウェーハを切り出す工程は、バンドソー、内周刃又は外周刃を用いて前記単結晶シリコンインゴットからシリコンブロックを切り出す工程と、前記シリコンブロックの端部から前記サンプルウェーハを切り出す工程とを含むことが好ましい。この場合において、前記サンプル片を切り出す工程は、ダイシングにより前記サンプルウェーハを分割する工程を含むことが好ましく、特に1/4に等分割することが好ましい。バンドソー等のブレードを用いてサンプルウェーハを切り出した後、サンプルウェーハの表面の加工傷等をエッチングにより除去する場合、サンプルウェーハの反りやうねりが除去されずに残るだけでなく、ウェーハ外周部のダレが発生するため、酸素濃度又は炭素濃度の測定精度が低下する。しかし、上記のようにサンプルウェーハの表面の加工傷等を研削加工した場合には、ウェーハ外周部のダレを抑えて酸素濃度又は炭素濃度の測定精度の低下を防止することができる。
【0021】
本発明において、前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度を測定する工程は、前記サンプル片の酸素濃度又は炭素濃度をFTIR法により測定することが好ましい。FITR法による酸素濃度又は炭素濃度の測定では、サンプル片の厚みばらつき、特に外周部のダレが測定結果に大きな影響を与え、酸素濃度又は炭素濃度の繰り返し測定精度が低下する。しかし、サンプル片を研削加工した後に酸素濃度又は炭素濃度を測定する場合には、厚みばらつきや外周部のダレを抑えて酸素濃度又は炭素濃度の繰り返し測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、バンドソー等を用いて単結晶シリコンインゴットから切り出した検査用サンプルウェーハの酸素濃度又は炭素濃度の測定方法においてその繰り返し測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施の形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法を示すフローチャートである。
図2図2は、本発明の実施の形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法を説明するための模式図である。
図3図3は、本発明の他の実施の形態による単結晶シリコンの炭素濃度の測定方法を示すフローチャートである。
図4図4は、実施例(本発明)及び比較例(従来技術)によるサンプル片の酸素濃度のCV値を示すグラフである。
図5図5は、サンプル片の光沢度と酸素濃度のCV値との関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例(本発明)及び比較例(従来技術)によるサンプル片の酸素濃度の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施の形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法を示すフローチャートである。また図2は、本発明の実施の形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法を説明するための模式図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法は、単結晶シリコンインゴット10からサンプル片13を切り出し、このサンプル片13に平坦化加工を施した後、サンプル片13の酸素濃度及び酸素濃度を測定することを特徴とする。
【0027】
そのため、まず単結晶シリコンインゴット10を用意する(ステップS11)。単結晶シリコンインゴット10はCZ法により育成されたものであり、結晶直径が徐々に大きくなるトップ部10aと、結晶直径が略一定の直胴部10bと、結晶直径が徐々に小さくなるテイル部10cとを有している。直径300mmのシリコンウェーハ(製品ウェーハ)を製造する場合、インゴットの直胴部10bの直径は306mm以上であることが好ましく、308mm以上であることが特に好ましい。
【0028】
単結晶シリコンインゴット10の加工では、まずインゴットの直胴部10bを径方向に切断してサンプルウェーハ12を切り出す(ステップS12)。具体的には、インゴットのトップ部10aとテイル部10cを切り落して円柱状に加工した後、外周研削を行って製品ウェーハよりも十分に大きな直径(例えば304mm)に整える。次いで、円柱状のインゴットからシリコンブロック11を切り出すブロック切り出し工程とサンプルウェーハ12を切り出すウェーハ切り出し工程とを交互に行うことにより、インゴットから複数のシリコンブロック11を切り出すと共に、各シリコンブロック11の両端からサンプルウェーハ12を切り出す。シリコンブロック11及びサンプルウェーハ12の切り出しにはバンドソー、内周刃、外周刃等を用いた切断機が用いられる。ウェーハ切り出し工程ではサンプルウェーハを2枚以上連続して切り出してもよい。
【0029】
次に、各サンプルウェーハ12をダイシングして1/4サイズのサンプル片13を作製する(ステップS13)。本実施形態ではサンプルウェーハ12を4分割しているが、分割数は特に限定されず、2分割以上であれば何分割であってもよい。こうして作製された扇状のサンプル片13の一つは、シリコンウェーハの品質指標である酸素濃度及び炭素濃度を測定するためのサンプルとして用いられる。他のサンプル片は、抵抗率、キャリアの再結合ライフタイム、結晶欠陥等を評価するためのサンプルとして用いられる。
【0030】
次に、酸素濃度の測定に用いるサンプル片13の表面を研削加工する(ステップS14)。研削加工は、高速回転する砥石を被加工面に押し当てて表層部を除去すると共に、平滑な面を得るための機械加工の一種である。研削加工は、片面ずつ研削する片面平面研削加工であることが好ましいが、サンプル片の表面を平坦化できる機械加工である限りにおいて特に限定されず、両面を同時に研削する両頭平面研削加工であってもよい。
【0031】
バンドソーで切り出したウェーハの表面は、切り口が粗い切断面になっており、深い加工傷や凹凸が存在している。そのため、サンプル片の酸素濃度及び炭素濃度を例えばFTIR法により測定する場合には、表面形状が悪いことによって測定値にばらつきが生じる。しかし、サンプル片を研削加工により平坦化した場合には、表面の加工傷や凹凸(うねり)を除去することができるので、酸素濃度及び炭素濃度の測定精度を高めることができる。
【0032】
サンプル片13の研削加工はその両面に対して行うことが望ましい。これにより、FTIR法による酸素濃度の測定精度の低下を防止することができる。また、ウェーハの切断加工時に付着した金属不純物を除去することができ、後述するドナーキラー熱処理で特に問題となるサンプル片13の金属汚染による抵抗率の変動を防止することができる。ただし、予めエッチング処理を行って表面の汚染物を除去する場合には、測定対象の片面のみを研削とすることも可能である。
【0033】
サンプル片13を研削加工する場合、サンプル片の光沢度が500以上800以下となるように研削することが望ましい。光沢度が500よりも小さい場合には加工傷等を十分に除去できないからであり、光沢度が800よりも大きい場合には表面粗さが小さすぎて抵抗率の測定精度が低下するからである。光沢度は、JIS Z 8741に規定されているように、可視波長範囲の全域にわたって屈折率が一定値1.567のガラス表面を基準面とし、その基準面の規定された入射角での鏡面光沢度を100(%)として表す。
【0034】
サンプル片13を研削加工する場合、#500以上#3000以下の低番手の砥石を用いた粗研削を行った後、#6000以上の高番手の砥石を用いた仕上げ研削(正研削)を行うことが好ましい。このような二段階の研削加工により、十分な光沢度を有するサンプル片に加工することができる。
【0035】
サンプル片13を研削加工する場合、サンプル片の被加工面の平坦度Wa(算術平均うねり)が0.1μm以下、あるいは平坦度TTV(Total Thickness Variation)が6.0μm以下となるように研削することが好ましい。平坦度TTVは、GBIR(Global Backside Ideal Range)とも呼ばれる平坦度指標の一つであり、ウェーハを吸着固定した際の平坦度適用領域の厚さ(裏面基準平面からの距離)の最大値と最小値の差として定義される。このように、一定以上の平坦度を確保することにより、サンプル片の反りやうねりを除去して酸素濃度及び炭素濃度の測定精度を高めることができる。また、サンプル片の反りやうねりを取り除くことで後述するサンプル片の割れを防止することができる。
【0036】
研削工程は、円形のサンプルウェーハ12をダイシングした後の扇状のサンプル片13に対して行われる。上記のようにバンドソーで切り出したサンプルウェーハ12の表面には加工傷や凹凸(うねり)があるため、面積が大きな円形のサンプルウェーハ12の状態で研削加工を実施する場合には、加工傷等への応力集中によりウェーハの割れが発生しやすい。しかし、サンプルウェーハ12を予め小サイズに加工した上で研削加工する場合には、ウェーハの割れを防止することができる。
【0037】
研削工程では、1/4サイズにカットされたシリコンウェーハのサンプル片13を例えば片面平面研削盤20の吸着ステージ21上にセットした後、サンプル片13の上面に研削ヘッド22の砥石22aを押し当てながら回転させて研削する。サンプル片13の両面を研削する場合には、一方の面を研削した後にサンプル片13をひっくり返して反対の面を研削すればよい。表面の加工傷や凹凸を除去するため、サンプル片13の研削量は片面につき50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることが特に好ましい。
【0038】
次に、研削後のサンプル片13を洗浄する(ステップS15)。洗浄方法としては、超音波洗浄やフッ酸洗浄を用いることができる。これによりサンプル片13の表面に付着する金属不純物を除去することができ、不純物汚染の影響による酸素濃度の変動を防止することができる。
【0039】
次に、サンプル片13のドナーキラー熱処理(ステップS16)を実施する。CZ法により育成される単結晶シリコンには酸素が過飽和に含まれており、450℃前後の低温で熱処理すると数個の酸素原子が凝集して酸素クラスターを形成し、電子を放出するサーマルドナーとなるため、酸素濃度の測定精度を低下させる原因となる。しかし、ドナーキラー熱処理によってサーマルドナーを消滅させることにより、サーマルドナーの影響による酸素濃度の変動を抑制することができ、酸素濃度の測定精度を高めることができる。
【0040】
ドナーキラー熱処理は、酸素ドナーを消滅させるために600℃~700℃の不活性ガス雰囲気中で行う短時間の熱処理であり、熱処理時間は10分以上240分以下であることが好ましい。ただしランプ加熱の場合には熱処理時間を1秒とすることも可能である。窒素がドープされたシリコンウェーハにはNOドナーも発生する。このNOドナーを消滅させるためのドナーキラー熱処理は、1000℃~1200℃の温度で行う30分以上240分以下の熱処理であることが好ましい。
【0041】
サンプル片13の酸素濃度を測定する前であれば、本実施形態のようにドナーキラー熱処理をサンプル片の研削加工後に行ってもよく、あるいはサンプル片の研削加工前に行ってもよい。ただし、サンプル片の研削加工前にドナーキラー熱処理を実施する場合には、取り代の多いハードエッチングにより加工傷や金属不純物を予め除去する必要がある。ウェーハ表面に加工傷や反りがあるとドナーキラー熱処理時にウェーハが割れるおそれがあり、さらにサンプル切り出し時に付着した金属不純物がドナーキラー熱処理によってウェーハ内部に拡散するおそれがあるからである。
【0042】
一方、本実施形態のように研削後にドナーキラー熱処理を行う場合、上記のようなハードエッチングを行う必要がなく、ドナーキラー熱処理前に研削後のサンプル片を薬液洗浄して表面を正常化しておけば足りる。すなわち、研削後にドナーキラー熱処理を行う場合には工程の短縮化とコストの低減を図ることができる。
【0043】
上記のように、ドナーキラー熱処理時のサンプル片の汚染を防止する観点から、研削加工はサンプル片の両面に対して行われることが好ましい。しかし、ドナーキラー熱処理の前に予めエッチング処理を行う場合には、抵抗率の測定対象となる片面だけを研削加工することも可能である。サンプル片の表面に付着する金属不純物はエッチングによって除去されるので、金属不純物の除去だけを目的とする研削工程を省略にすることができる。
【0044】
その後、サンプル片の酸素濃度及び炭素濃度を測定する(ステップS17)。本実施形態では酸素濃度と炭素濃度の両方を同時に測定しているが、どちらか一方のみを測定しても構わない。サンプル片の酸素濃度及び/又は炭素濃度はFTIR法により測定することが好ましく、サンプル片の酸素濃度はASTM F121,1979、ASTM F121,1983、ASTM F1188,1993などにより測定することができ、サンプル片の炭素濃度はASTM F123,1981により測定することができる。
【0045】
サンプル片の酸素濃度及び炭素濃度を測定する場合、サンプル片の表面の自然酸化膜を予め除去することが望ましい。サンプル片の表面の自然酸化膜は、例えばフッ酸と硝酸の混酸洗浄により除去することができ、これにより酸素濃度及び酸素濃度の測定精度を高めることができる。
【0046】
サンプル片の表面のうねりや外周部のダレが大きい場合、酸素濃度及び炭素濃度の測定誤差が大きくなる。しかし、本実施形態においてはサンプル片の表面を研削加工により平坦化しているので、サンプル中心から最外周までフラットな形状を維持することができる。したがって、酸素濃度及び炭素濃度の測定誤差を小さくすることができ、酸素濃度及び炭素濃度の繰り返し測定精度を高めることができる。
【0047】
研削加工によって平坦化処理されたサンプル片13は、従来のエッチング処理されたサンプル片と比べて外周部のダレが非常に小さいので、ウェーハの中心から最外周まで酸素濃度を正確に測定することが可能である。従来のサンプルウェーハの酸素濃度測定方法は、エッチング処理によって外周ダレが大きくなることを見込んで十分に大きな直径のウェーハを用意する必要があった。しかし、本実施形態のように外周ダレが非常に小さい場合には、直径が十分に大きなウェーハを用意しなくてもウェーハの外周部の抵抗率を正確に測定することができる。したがって、シリコンブロックの外周研削時の取り代を小さくすることができ、原料の無駄や結晶引き上げ時間の増加を防止することができる。
【0048】
サンプル片13の酸素濃度及び炭素濃度を測定した結果、酸素濃度及び炭素濃度が所定の条件を満たしている場合には、当該サンプル片は酸素濃度及び炭素濃度に関して合格品とされる。抵抗率などの他の品質項目についてもそれぞれ検査が行われ、すべての品質項目が合格となった場合、当該サンプルウェーハ12の切り出し元のシリコンブロック11も合格品と認定され、後工程に払い出される。後工程では、シリコンブロック11が製品ウェーハの直径となるように外周研削され、さらにノッチ又はオリエンテーションフラットが形成された後、ワイヤソーを用いたスライス加工が行われ、シリコンブロックから複数枚のシリコンウェーハが同時に切り出される。その後、各シリコンウェーハに対して平面研削、ラッピング、エッチング、両面研磨、片面研磨、洗浄等の工程が行われ、シリコンウェーハが完成する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態による単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法は、単結晶シリコンインゴット10からバンドソー等で切り出したサンプルウェーハ12の表面を研削加工した後、研削面に対してFTIR測定を行うので、酸素濃度及び炭素濃度の測定精度を高めることができる。また単結晶シリコンインゴット10から切り出したサンプルウェーハ12を小サイズに分割した後に研削加工を行うので、研削加工中のサンプルの割れを防止することができる。
【0050】
図3は、本発明の他の実施の形態による単結晶シリコンの炭素濃度の測定方法を示すフローチャートである。
【0051】
図3に示すように、本実施形態による単結晶シリコンの炭素濃度の測定方法の特徴は、上述した単結晶シリコンの酸素濃度及び炭素濃度の測定方法と比べてドナーキラー熱処理(ステップS16)を省略した点にある。その他の工程(ステップS11~S15,S17)は、図1に示した酸素濃度及び炭素濃度の測定方法と同様である。
【0052】
単結晶シリコンの炭素濃度を測定する場合、ドナーキラー熱処理は不要である。酸素ドナーはFTIR法による炭素濃度の測定に影響を与えないからである。FTIR法では、サンプルに赤外光を透過させたときの吸収波長から酸素や炭素を同定するが、酸素ドナーの吸収波長は酸素の吸収波長に近いので、酸素ドナーは酸素濃度の測定値に影響を与える。しかし、炭素の吸収波長は酸素や酸素ドナーの吸収波長と異なるので、酸素ドナーがあっても炭素濃度の測定値に影響を与えることはなく、炭素濃度を正確に測定することが可能である。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例
【0054】
シリコンウェーハの表面の研削加工が酸素濃度の測定精度に与える影響を評価した。始めに、酸素濃度を3×1017~16×1017atoms/cmの範囲で変動させた単結晶シリコンインゴットを用意し、このインゴットから複数枚のサンプルウェーハをバンドソーで切り出した、さらに各サンプルウェーハを1/4にダイシングした。
【0055】
1枚のサンプルウェーハを分割して得られた4つのサンプル片のうちの2つについては、従来のエッチング(エッチング液:HFとHNOの混酸、エッチング取り代:片面150μm)による表面加工を施した。また、残りの2つのサンプル片については、本発明の平面研削(砥石番手:#6000、研削代:片面75μm)による表面加工を施した。
【0056】
その後、これらのサンプル片に対してドナーキラー熱処理及び酸化膜除去のための混酸洗浄を予め行った後、各サンプル片の酸素濃度をFTIR法(ASTM 121,1979)により測定した。FTIR法では赤外ビーム径を4mmとし、ウェーハの最外周から3mm内側の位置(R-3mm、但しRはウェーハ直径)の酸素濃度を3回連続で測定し、さらにこのような連続測定を3日間続けて実施した。すなわち、全9回の酸素濃度測定を行った。以上の測定結果から酸素濃度の測定値の平均値及び標準偏差を求め、さらに酸素濃度の繰り返し測定精度の指標となる変動係数CV(標準偏差/平均値×100)算出した。
【0057】
図4は、実施例(本発明)及び比較例(従来技術)によるサンプル片の酸素濃度のCV値を示すグラフであり、横軸は酸素濃度Oi(×1017atoms/cm)、縦軸は酸素濃度のCV値(%)をそれぞれ示している。
【0058】
図4に示すように、平面研削を行った実施例のサンプルは、CV値が低く安定しており、繰り返し測定精度が大幅に改善されていることが確認できた。一方、エッチングを行った比較例のサンプルは、CV値のばらつきが大きく、繰り返し測定精度が悪かった。
【0059】
なお、最外周から3mm内側の位置よりもさらに外側の位置を測定する場合、直径の大きな単結晶シリコンインゴット(φ大単結晶)を引き上げ、これより切り出された直径の大きなサンプルウェーハに対して表面研削を施し測定することで、最外周近傍においてもFTIRの赤外ビームがサンプルからはみ出すことなく、ウェーハ最外周部が持つ真の酸素濃度及び炭素濃度を測定することができる。
【0060】
次に、平面研削を施したサンプルウェーハの表面の光沢度が酸素濃度の測定精度に与える影響を評価した。この評価では、シリコンウェーハの表面の光沢度が異なる5つのサンプルを準備し、それぞれについてウェーハの最外周から3mm内側の位置(R-3mm)の酸素濃度をFTIR法(ASTM 121,1979)により3回連続で測定し、さらにこのような連続測定を3日間続けて実施した。すなわち、全9回の酸素濃度測定を行った。そしてその測定結果から酸素濃度の繰り返し測定精度(CV値)を評価した。FTIR法による繰り返し測定精度(CV値)は1%以下であることが望ましく、そのためCV値が1%以下の場合に合格、1%を超える場合に不合格と評価した。ウェーハ表面の光沢度の測定にはJIS Z 8741に準拠した日本電色工業社製の光沢計(PG-IIM)を用い、グロス20°で測定した。
【0061】
図5は、サンプル片の光沢度と酸素濃度のCV値との関係を示すグラフであり、横軸は光沢度、縦軸は酸素濃度のCV値(%)をそれぞれ示している。
【0062】
図5に示すように、光沢度が458であるサンプル#1の酸素濃度のCV値は約2.4%となり、1%を超える結果となった。しかし、光沢度が500であるサンプル#2の酸素濃度のCV値は約0.95%となり、1%を下回る結果となった。さらに、光沢度が730であるサンプル#3の酸素濃度のCV値は約0.23、光沢度が801であるサンプル#4の酸素濃度のCV値は約0.06、光沢度が860であるサンプル#5の酸素濃度のCV値は約0.07となり、いずれも1%を下回る結果となった。
【0063】
以上のように、光沢度が500を下回るサンプルでは酸素濃度のCV値が1%を超える結果となり、計測器の分解能を超えるばらつきが見られた。またCV値が1%を下回るものに関しては、CV値の悪化は見られないが改善も見られず飽和していた。光沢度を850以上にする表面加工は高コストの加工が必要で生産性も悪化することから、光沢度を850以上にする必要はなく、光沢度を500以上850以下にすればよいことが分かった。
【0064】
次に、シリコンウェーハの表面の研削加工が酸素濃度の面内分布に与える影響を評価した。始めに、同一の単結晶シリコンインゴットの同一部位から切り出された複数枚のサンプルウェーハを用意し、各サンプルウェーハを1/4に分割し、そのうちの2つのサンプル片については従来のエッチング(エッチング液:HFとHNOの混酸、エッチング取り代:片面150μm)による表面加工を施した。また残りの2つのサンプル片については本発明の平面研削(砥石番手:#6000、研削代:片面75μm)による表面加工を施した。
【0065】
次に、各サンプル片の酸素濃度をFTIR法(ASTM 121,1979)により測定した。FTIR法では赤外ビーム径を4mmとし、(1)ウェーハ中心付近、(2)ウェーハの径方向中間位置(R/2)、(3)ウェーハの最外周から3mm内側の位置(R-3mm)の3点の酸素濃度を測定した。
【0066】
図6は、実施例(本発明)及び比較例(従来技術)によるサンプル片の酸素濃度の測定結果を示すグラフであり、横軸はウェーハ中心からの距離(mm)、縦軸は酸素濃度Oi(×1017atoms/cm)をそれぞれ示している。
【0067】
図6に示すように、エッチングを行った比較例のサンプルでは、ウェーハ外周部において酸素濃度の低下が見られた。これに対し、平面研削を行った実施例のサンプルでは、ウェーハ外周部において酸素濃度の低下が見られず、ウェーハ外周部での酸素濃度の低下が抑制されることが確認できた。
【符号の説明】
【0068】
10 単結晶シリコンインゴット
10a トップ部
10b 直胴部
10c テイル部
11 シリコンブロック
12 サンプルウェーハ
13 サンプル片
20 片面平面研削盤
21 吸着ステージ
22 研削ヘッド
22a 砥石
図1
図2
図3
図4
図5
図6