(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】近赤外線吸収色素、光学フィルタおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
C09B 57/00 20060101AFI20230221BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20230221BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20230221BHJP
C09B 23/01 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
C09B57/00 X
C09K3/00 105
G02B5/22
C09B23/01
(21)【出願番号】P 2020522185
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020931
(87)【国際公開番号】W WO2019230660
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018103772
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 翔太
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104283(WO,A1)
【文献】特開2002-80764(JP,A)
【文献】KEIL, D et al.,Synthesis Characterization of 1,3-Bis-(2-dialkylamino-5-thienyl)-substituted Squaraines - A Novel Cl,Dyes and Pigments,1991年,Vol. 17,pp. 19-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/00
C09K 3/00
G02B 5/00-5/32
C09B 23/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)で示される化合物からなる近赤外線吸収色素。
【化1】
式(A)中、
R
11~R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。R
11とR
12、R
12とR
13、および、R
13とR
14は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
R
15およびR
16は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子もしくは窒素原子を含んでよいアルキル基、またはアルアリール基である。または、R
15およびR
16は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【請求項2】
前記化合物が式(Aa)で示される化合物である請求項1記載の近赤外線吸収色素。
【化2】
式(Aa)中、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子もしくは窒素原子を含んでよいアルキル基、またはアルアリール基である。または、R
5およびR
6は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【請求項3】
前記R
1は水素原子である請求項2記載の近赤外線吸収色素。
【請求項4】
前記化合物が式(Ab)で示される化合物である請求項1記載の近赤外線吸収色素。
【化3】
式(Ab)中、
R
21~R
24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。R
21とR
22、および、R
23とR
24は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。R
22とR
23は、互いに連結することはない。
R
25およびR
26は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子もしくは窒素原子を含んでよいアルキル基、またはアルアリール基である。または、R
25およびR
26は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【請求項5】
前記R
22は、水素原子、水酸基、または、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基である請求項4記載の近赤外線吸収色素。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収色素と樹脂とを含有する吸収層を備えたことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項7】
さらに誘電体多層膜を含む反射層を有する請求項6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
さらに透明基板を有し、前記透明基板上に前記吸収層を備えた請求項6または7に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記透明基板は、ガラスにより構成される請求項8に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記ガラスは、近赤外線吸収ガラスである請求項9に記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記透明基板は、樹脂により構成される請求項8に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
固体撮像素子と、撮像レンズと、請求項6~11のいずれか1項に記載の光学フィルタとを備えたことを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視波長領域の光を透過し、近赤外波長領域の光を遮断する近赤外線吸収色素、光学フィルタおよび該光学フィルタを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し近赤外域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮断する光学フィルタが用いられる。該光学フィルタとしては、近赤外吸収剤を含む吸収層と、近赤外光を遮断する誘電体多層膜からなる反射層とを備えた近赤外カットフィルタが知られている。つまり、誘電体多層膜そのものは、入射角によって分光透過率曲線が変化するため、反射層と吸収層の両方を含む近赤外カットフィルタは、吸収層の吸収特性により入射角依存性が抑制された分光透過率曲線が得られる。
【0003】
近年、このような撮像装置を搭載した各種機器において、長波長の近赤外光、例えば、波長850~1100nmのレーザ光を用いる光学部品がともに搭載されることが多くなっている。そのため、近赤外カットフィルタにおいて、可視光の透過率の低下を抑制しつつ、長波長の近赤外光を十分にカットする特性が求められるようになった。
【0004】
近赤外カットフィルタにおいては、従来から、比較的長波長域に吸収を示す吸収剤を用いる技術が多く知られている。具体的には、スクアリリウム色素を用いる(例えば、特許文献1を参照)、スクアリリウム色素とシアニン色素、フタロシアニン色素等を組み合わせる(例えば、特許文献2、3を参照)、ジインモニウム色素、金属ジチオラート錯体、無機微粒子等を用いる(例えば、特許文献4、5、6を参照)等の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/104283号
【文献】国際公開第2013/054864号
【文献】国際公開第2016/158461号
【文献】国際公開第2017/094672号
【文献】国際公開第2014/168189号
【文献】国際公開第2014/168190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記いずれの近赤外カットフィルタにおいても、可視光の高い透過性と長波長の近赤外光に対して高い遮蔽性を両立できるものはない。
【0007】
本発明は、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れるとともに、高い可視光透過性を有する近赤外線吸収色素、光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、式(A)で示される化合物からなる近赤外線吸収色素(以下、近赤外線吸収色素(A)ともいう)を提供する。
【0009】
【0010】
式(A)中、
R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。R11とR12、R12とR13、および、R13とR14は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0011】
R15およびR16は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子もしくは窒素原子を含んでよいアルキル基、またはアルアリール基である。または、R15およびR16は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る光学フィルタは、上記近赤外線吸収色素(A)と樹脂とを含有する吸収層を備えたことを特徴とする。
また、本発明に係る撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、上記光学フィルタを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れるとともに、高い可視光透過性を有する近赤外線吸収色素を提供できる。さらに、本発明によれば、該色素を用いた光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態の光学フィルタの別の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
本明細書において、式(A)で示される化合物を化合物(A)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(A)からなるNIR色素をNIR色素(A)ともいい、他の色素についても同様である。また、例えば、式(1a)で表される基を基(1a)とも記し、他の式で表される基も同様である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0016】
<NIR色素(A)>
本発明のNIR色素(A)は、式(A)に示されるとおり、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有し、スクアリリウム骨格の左右にそれぞれ、2個のチオフェン環が連結した基であって、スクアリリウム骨格に遠い側のチオフェン環がアミノ基(ただし、窒素原子に芳香環が直接結合する構成を有しない)を有する基が結合して構成される。
【0017】
【0018】
R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アリール基またはアルアリール基である。
アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、置換基を有してもよい。
また、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよい。
さらに、アルキル基、アリール基またはアルアリール基は、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよい。
【0019】
なお、置換基を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基とは、アルキル基、アリール基またはアルアリール基における、炭素原子に結合する水素原子が置換基に置換されていてもよいことをいう。また、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を含んでよい、アリール基またはアルアリール基とは、アリール基もしくはアルアリール基が有するアルキル基が、炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を含んでよいことをいう。
【0020】
エステル結合はチオフェン環に近い側から-O-C(=O)-であっても、-C(=O)-O-であってもよい。アミド結合は-NR-C(=O)-であっても、-C(=O)-NR-であってもよい。チオアミド結合は、チオフェン環に近い側から-NR-C(=S)-であっても、-C(=S)-NR-であってもよい。ここで、アミド結合およびチオアミド結合におけるRは水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。
【0021】
式(A)中の2つのR11は、スクアリリウム骨格の左右で異なってもよいが、製造容易性の観点から左右が同じであることが好ましい。R12~R14および後述のR15およびR16についても同様である。
【0022】
ここで、本明細書において、特に断りのない限り、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。アルキル基が炭素-炭素原子間に不飽和結合を有するのは、直鎖状または分岐鎖状の場合、もしくは環状であって芳香環を形成しない場合である。アルキル基が環状であって炭素-炭素原子間に不飽和結合を有するが芳香環を形成しない例としてはシクロアルケンが挙げられる。
【0023】
アルキル基が炭素-炭素原子間に酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を有するのは、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれの場合でもよい。アルコキシ基が有するアルキル基についても同様である。さらに、以下のアリール基がアルキル基を有する場合のアルキル基、アルアリール基のアルキル基についても同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0024】
本明細書において、特に断りのない限り、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル、フラン環、チオフェン環、ピロール環等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。アリール基は該結合に寄与する炭素原子以外の環構成原子に結合する水素原子がアルキル基置換されている構造、例えば、トリル基、キシリル基を含む。
【0025】
本明細書において、特に断りのない限り、アルアリール基は、芳香環にアルキル基が結合し、該アルキル基を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。アルアリール基は、該結合に寄与するアルキル基が結合する原子以外の環構成原子に結合する水素原子がアルキル基置換されている構造を含む。
【0026】
R11~R14における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~10のアルコキシ基が挙げられる。R11~R14がアリール基またはアルアリール基の場合、置換基は、芳香環に結合する水素原子またはこれらが有するアルキル基の水素原子を置換する基であり、上記置換基の他にさらにアリール基を含む。
【0027】
R11~R14がアルキル基の場合、炭素数は1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~12がさらに好ましい。R11~R14がアリール基の場合、炭素数は4~20が好ましく、4~17がより好ましく、4~14がさらに好ましい。R11~R14がアルアリール基の場合、炭素数は5~20が好ましく、5~18がより好ましく、5~15がさらに好ましい。
R11~R14が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
【0028】
R11~R14には、アルキル基、アリール基、またはアルアリール基が、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を有する構成も含まれる。チオフェン環と結合する末端に酸素原子を有する基は、例えば、-OXで示され、Xがアルキル基、アリール基、またはアルアリール基である。チオフェン環と結合する末端にエステル結合を有する基は、例えば、-O-C(=O)-X、または-C(=O)-O-Xで示され、Xがアルキル基、アリール基、またはアルアリール基である。
【0029】
チオフェン環と結合する末端にアミド結合を有する基は、例えば、-NR-C(=O)-Xまたは、-C(=O)-NR-Xで示され、Xがアルキル基、アリール基、またはアルアリール基である。チオフェン環と結合する末端にチオアミド結合を有する基は、例えば、-NR-C(=S)-X、-C(=S)-NR-Xで示され、Xがアルキル基、アリール基、またはアルアリール基である。ここで、アミド結合およびチオアミド結合におけるRは水素原子または炭素数1~12のアルキル基である。
【0030】
これらの場合であっても、アルキル基、アリール基、またはアルアリール基は、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を含んでいてもよい。
【0031】
R11とR12、R12とR13、および、R13とR14は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0032】
R11とR12、および、R13とR14が連結して形成される環は脂環であっても芳香環であってもよく、炭化水素環であってもヘテロ環であってもよい。好ましくは芳香環である。単環としては、ベンゼン環が挙げられ、多環としてはナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環等が挙げられる。R11とR12、および、R13とR14が連結して形成される環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0033】
R12とR13が連結した場合、NIR色素(A)は、2個のチオフェン環の間に環が形成されて少なくとも3つの環が縮環した構造を含む。R12とR13が連結して形成される環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0034】
これらの環に結合する水素原子を置換する置換基としては、R11~R14における置換基と同様の基、および、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基が有する置換基としてはR11~R14における置換基と同様の基が挙げられる。また、環に炭化水素基が結合する場合、これらと、環を形成していないR11~R14が結合して環を形成してもよい。例えば、R12とR13が連結して2価の基-CRaRb-となった場合、RaおよびRbがそれぞれR14やR11と環を形成してもよい。
【0035】
R15およびR16は、それぞれ独立して、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子もしくは窒素原子を含んでよいアルキル基、またはアルアリール基である。または、R15およびR16は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。
【0036】
R15およびR16における置換基としては、R11~R14における置換基と同様の置換基、すなわち、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、シアノ基、アミノ基、N-置換アミノ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、イミド基、炭素数1~10のアルコキシ基等が挙げられる。R15およびR16がアルアリール基の場合、これらが有するアルキル基はさらにアリール基で置換されていてもよい。
【0037】
R15およびR16は、シクロヘテロ環を形成しない場合、それぞれ、窒素原子に芳香環が直接結合する構造を有しない基である。その場合、R15およびR16は、窒素原子に直接結合しない芳香環を有する基であってもよく、芳香環を有しない基であってもよい。R15およびR16が、芳香環を有する場合、耐熱性や、NIR吸収波長の長波長化の点で好ましい。R15およびR16が、芳香環を有しない場合、耐光性や、製造容易性や、樹脂および溶媒への溶解性の点で好ましい。
【0038】
R15およびR16が、アルキル基の場合、炭素数は1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~10がさらに好ましい。R15およびR16は、可視光透過性や、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数3~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、3~12がより好ましく、分岐鎖状の場合、3~10がより好ましく、環状の場合、5~10がより好ましい。R15およびR16が置換基を有する場合、上記炭素数には置換基の炭素数が含まれる。
R15およびR16は、例えば、基(1a)~(15a)から選ばれる基がさらに好ましく、基(1a)が特に好ましい。
【0039】
【0040】
R15およびR16は、互いに連結して窒素原子とともに員数が5~10のシクロヘテロ環を形成していてもよい。シクロヘテロ環は環構成元素として窒素原子以外に酸素原子を含んでいてもよい。シクロヘテロ環の員数は5または6が好ましく、5が特に好ましい。シクロヘテロ環に結合する水素原子が置換されている場合、水素原子を置換する置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~10のアルキル基、またはアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数7~20のアルアリール基が挙げられる。
【0041】
R15およびR16が結合した2価の基を-Q-で示した場合、-Q-として具体的には以下の基(11)~(14)が挙げられる。
【0042】
-(CH2)4- …(11)
-(CH2)5- …(12)
-C(CH3)2(CH2)2C(CH3)2- …(13)
-C(CH3)2(CH2)3C(CH3)2- …(14)
【0043】
NIR色素(A)は、中央のスクアリリウム骨格から両端のアミノ基まで炭素-炭素原子の単結合と4つ以上の二重結合が交互に繋がった構造であり、式(A)中、R11~R16の置換基を除いて、スクアリリウム骨格から両端のアミノ基までを繋ぐ炭素-炭素鎖にはベンゼン環を含まない構造である。
【0044】
NIR色素(A)は、上述の中央のスクアリリウム骨格から両端のアミノ基まで炭素-炭素原子の二重結合が4つ以上あることにより、π共役構造が大きくなるので、近赤外光の長波長側に高い吸収特性を有する。そして、上述の余計なベンゼン環を含まないので、可視光、とくに可視光の中でも短波長側の青色透過率が高い。さらに、NIR色素(A)は、式(A)中、R15とR16が結合する窒素原子に芳香環が直接結合する構成ではないことにより、R15とR16が直結するアミノ基からチオフェン環への電子供与性が強くなり、短波長側の可視光透過率が高くなり、かつ、より長波長側の近赤外光に高い吸収特性を発現する。
【0045】
NIR色素(A)は、例えば、以下の式(Aa)で示される化合物(NIR色素(Aa))または、後述の式(Ab)で示される化合物(NIR色素(Ab))であるのが好ましい。NIR色素(Aa)は、NIR色素(A)において、R12とR13が連結してシクロペンタジチオフェン環を形成してなる化合物である。NIR色素(Ab)は、NIR色素(A)において、R12とR13が連結せず、2個のチオフェン環が結合した構造を含む化合物である。
【0046】
(NIR色素(Aa))
NIR色素(Aa)は、分子構造の中央にスクアリリウム骨格を有し、スクアリリウム骨格の左右に各1個のシクロペンタジチオフェン環が結合し、該シクロペンタジチオフェン環はスクアリリウム骨格とは反対側のチオフェン環が、アミノ基(ただし、窒素原子に芳香環が直接結合する構成を有しない)を有する構造である。
【0047】
【0048】
式(Aa)中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。R5およびR6は、式(A)におけるR15およびR16と同じ意味である。
【0049】
式(Aa)中のR1は式(A)におけるR11に相当し、R11と同様の原子または基となりうる。NIR色素(Aa)において、R1は、光安定性の観点から、水素原子または炭素数1~12のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0050】
R2およびR3は、可視光透過性や、耐光性や、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、1~12がより好ましく、分岐鎖状の場合、3~10がより好ましく、環状の場合、5~10がより好ましい。R2およびR3は、例えば、基(1a)~(15a)から選ばれる基がさらに好ましく、基(1a)または、基(3a)または、基(9a)が特に好ましい。
【0051】
R2およびR3は、耐熱性や、耐光性や、NIR吸収波長の長波長化の観点からは、1~5個の置換基を有してもよいフェニル基または、1~7個の置換基を有してもよいナフチル基または、炭素数5~10の環状アルキル基が好ましい。フェニル基およびナフチル基の置換基としては、炭素-炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を含んでよい炭素数1~12のアルキル基、もしくはアルコキシ基、またはアルキルアミノ基(アルキル基の炭素数は1~12)が挙げられ、特に、メチル基、ターシャリーブチル基、ジメチルアミノ基、メトキシ基等が好ましい。フェニル基およびナフチル基は、非置換または、水素原子が1~3個置換されているのが好ましい。
【0052】
1~5個の置換基を有してもよいフェニル基として、具体的には、基(P1)~(P9)が挙げられる。
【0053】
【0054】
1~7個の置換基を有してもよいナフチル基として、具体的には、基(N1)~(N9)が挙げられる。
【0055】
【0056】
R2およびR3は、具体的には、メチル基、フェニル基、ナフチル基、トルイル基、3,5-ジ-ターシャリーブチルフェニル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基、2-エチルヘキシル基等が好ましく、フェニル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基が特に好ましい。
【0057】
式(Aa)中のR4は、式(A)におけるR14に相当し、R14と同様の原子または基となりうる。NIR色素(Aa)において、R4は、可視光透過性や、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、R2およびR3と同様に、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、1~12がより好ましく、分岐鎖状の場合、3~10がより好ましく、環状の場合、5~10がより好ましい。R4は、例えば、基(1a)~(15a)から選ばれる基がさらに好ましく、基(1a)が特に好ましい。
【0058】
R4は、製造容易性の観点から、水素原子または炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0059】
式(Aa)中のR5およびR6は、式(A)におけるR15およびR16と、好ましい態様を含めて同様である。
【0060】
NIR色素(Aa)において、R1~R6のうち、R2、R3、R5およびR6から選ばれる2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4つの全てが、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数3~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基であるのが好ましい。それにより、可視光透過性や、樹脂および溶媒への溶解性が高いNIR色素(Aa)とすることができる。
【0061】
NIR色素(Aa)としては、より具体的には、R1~R6が、以下の表1に示される化合物(表1には、NIR色素(Aa)の略号を併せて示す。)が挙げられる。表1において、R1~R6は、上に式が示された基である場合、式の記号を示した。表1に示す全ての化合物において、R1~R6は式の左右で全て同一である。表1中、-CnH2n+1(nは3以上の整数)で示されるアルキル基は、直鎖のアルキル基を示す。
【0062】
【0063】
(NIR色素(Ab))
NIR色素(Ab)は、NIR色素(A)において、R12とR13が連結していない化合物である。
【0064】
【0065】
式(Ab)中、R21~R24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、あるいは、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、もしくはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基である。R21とR22、および、R23とR24は、それぞれ互いに連結して単環または2~4の環が縮環した多環を形成してもよく、その場合、該環に結合する水素原子は置換基で置換されていてもよい。R22とR23は、互いに連結することはない。R25およびR26は、式(A)におけるR15およびR16と同じ意味である。
【0066】
式(Ab)中のR21は式(A)におけるR11に相当し、R11と同様の原子または基となりうる。式(Ab)中のR22は式(A)におけるR12に相当し、R12と同様の原子または基となりうる。NIR色素(Ab)において、R21およびR22は、製造容易性の観点からは、水素原子または炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0067】
NIR色素(Ab)において、R21およびR22は、それぞれ独立して、水酸基または、置換基を有してもよく炭素-炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を含んでよく、チオフェン環と結合する末端に酸素原子、エステル結合、アミド結合、またはチオアミド結合を有してもよいアルキル基、アリール基またはアルアリール基であるのも好ましい。
【0068】
R21およびR22が、それぞれ独立して、チオフェン環と結合する末端に酸素原子またはチオアミド結合を有するアルキル基、アリール基またはアルアリール基である場合、NIR色素(Ab)は、より長波長側に最大吸収波長を有する光学特性を獲得できる。その場合のアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましい。アリール基の炭素数は4~16が好ましく、4~10がより好ましい。アルアリール基の炭素数は5~36が好ましく、5~20がより好ましい。
【0069】
R21およびR22は、例えば、水素原子、-NH-C(=S)-CH3、メチル基、エチル基、メトキシ基から選ばれる基がさらに好ましい。
【0070】
式(Ab)中のR23およびR24はそれぞれ、式(A)におけるR13およびR14に相当し、R13およびR14と同様の原子または基となりうる。NIR色素(Ab)において、R23およびR24は、可視光透過性や、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、それぞれ独立して、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、直鎖状の場合、1~12がより好ましく、分岐鎖状の場合、3~10がより好ましく、環状の場合、5~10がより好ましい。R24は、例えば、基(1a)~(15a)から選ばれる基がさらに好ましく、基(1a)が特に好ましい。
【0071】
R23およびR24は、それぞれ独立して、製造容易性の観点から、水素原子または炭素数1~8のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0072】
式(Ab)中のR25およびR26は、式(A)におけるR15およびR16と、好ましい態様を含めて同様である。
【0073】
NIR色素(Ab)において、R21~R26のうち、R23、R24、R25およびR26から選ばれる2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4つの全てが、炭素-炭素原子間に酸素原子を含んでよい炭素数3~20の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましい。それにより、NIR色素(Ab)は、可視光透過性や、樹脂および溶媒への溶解性が高い。
【0074】
NIR色素(Ab)としては、より具体的には、R21~R26が、以下の表2に示される化合物(表2には、NIR色素(Ab)の略号を併せて示す。)が挙げられる。表2において、R21~R26は、上に式が示された基である場合、式の記号を示した。表2に示す全ての化合物において、R21~R26は式の左右で全て同一である。
【0075】
【0076】
以上、NIR色素(A)の化学構造について説明した。このような化学構造を有するNIR色素(A)は、ジクロロメタン溶液中で最大吸収波長λmax(A)の光における透過率が10%となるように濃度調整をしたときの、波長400~500nmの光の平均透過率は、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましく、94%以上がさらに好ましい。
【0077】
また、NIR色素(A)は、ジクロロメタン溶液中で最大吸収波長λmax(A)の光における透過率が10%となるように濃度調整をしたときの、波長500~600nmの光の平均透過率は、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0078】
さらに、NIR色素(A)は、ジクロロメタン溶液中で最大吸収波長λmax(A)の光における透過率が10%となるように濃度調整をしたときの、波長600~700nmの光の平均透過率は、90%以上が好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
【0079】
NIR色素(Aa)においては、表1に示すNIR色素(Aa)のうちでも、耐光性を高く維持できる観点からは、NIR色素(A3)、NIR色素(A7)、NIR色素(A9)、NIR色素(A12)、NIR色素(A13)、NIR色素(A14)等が好ましい。また、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、NIR色素(A1)、NIR色素(A2)、NIR色素(A3)、NIR色素(A5)、NIR色素(A6)、NIR色素(A7)、NIR色素(A9)、NIR色素(A11)、NIR色素(A12)、NIR色素(A16)等が好ましい。また、製造容易性の観点からは、NIR色素(A1)、NIR色素(A5)、NIR色素(A8)、NIR色素(A15)等が好ましい。
【0080】
NIR色素(Ab)においては、表2に示すNIR色素(Ab)のうちでも、樹脂および溶媒への溶解性の観点からは、NIR色素(A22)、NIR色素(A23)、NIR色素(A24)等が好ましい。また、製造容易性の観点からは、NIR色素(A21)、NIR色素(A22)、NIR色素(A23)等が好ましい。
【0081】
NIR色素(A)によれば、例えば、ジクロロメタンに溶解して測定される波長400~1200nmの吸収スペクトルにおいて、最大吸収波長λmax(A)を800~1000nmとする吸収特性が得られる。また、範囲を限定して、最大吸収波長λmax(A)を850~980nmとする吸収特性も得られる。このような吸収特性は、例えば、850~1050nmに吸収極大が求められる近赤外光の環境光センサーに用いられる吸収層として好適な特性である。
【0082】
NIR色素(A)は、有機溶媒に対する溶解性が良好であり、透明樹脂への相溶性も良好である。その結果、吸収層を薄くしても優れた分光透過率特性を有し、光学フィルタを薄型化できるため、加熱による吸収層の熱膨張を抑制できる。そのため、例えば、該吸収層上に積層する反射層や、反射防止層等の機能層を形成する際の熱処理時において、それらの層の割れ等の発生を抑制できる。
【0083】
NIR色素(A)は、例えば、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(スクアリン酸)と、スクアリン酸と結合して式(A)に示す構造を形成可能なアミノ基末端を有するチオフェン誘導体とを反応させて製造できる。例えば、NIR色素(A)が左右対称の構造である場合、スクアリン酸1当量に対して上記範囲で所望の構造のチオフェン誘導体2当量を反応させればよい。
【0084】
以下に、具体例として、NIR色素(Aa)を得る際の反応経路を示す。下記スキーム(F1)においてスクアリン酸を(s)で示す。スキーム(F1)において、R1~R6は、式(Aa)におけるのと同様の意味である。
【0085】
スキーム(F1)によれば、所望の置換基(R1、R2、R3、R4)を有するシクロペンタジチオフェン誘導体のアミノ基導入位置に、ターシャリーブチルリチウムの存在下、ヨウ素を導入して中間体A-1を得る。なお、上述のアミノ基導入位置に導入するハロゲン基は、臭素などでも構わない。
【0086】
中間体A-1に所望の置換基(R5、R6)を有する3級アミンを反応させ中間体A-2として、所望の置換基(R1、R2、R3、R4、NR5R6)を有するシクロペンタジチオフェン誘導体を得る。なお、中間体A-1に3級アミンを導入する方法は、上述の方法に限らない。スクアリン酸(s)の1当量に対し、中間体A-2の2当量を反応させて、NIR色素(Aa)を得る。
【0087】
【0088】
以下に、具体例として、NIR色素(Ab)を得る際の反応経路を示す。下記スキーム(F2)においてスクアリン酸を(s)で示す。スキーム(F2)において、R21~R26は、式(Ab)におけるのと同様の意味である。
【0089】
スキーム(F2)によれば、所望の置換基(R21、R22、R23、R24)を有するチオフェン誘導体A2-aに対し、置換基(R25、R26)を有する3級アミンを縮合剤存在下で作用させることで所望の置換基(R21、R22、R23、R24、R25、R26)を有するチオフェン誘導体A2-bを得る。なお、A2-aに3級アミンを導入する手法は前述の方法に限らない。A2-bにローソン試薬を作用させることでビチオフェン誘導体A2-cを得る。A2-cをスクアリン酸と反応させることでNIR色素(Ab)を得る。
【0090】
【0091】
本発明のNIR色素(A)の用途は特に限定されない。例えば、近赤外光、特に比較的長波長側の近赤外光を遮蔽する光学フィルタに適用可能である。また上記のように環境光センサーに用いられる吸収層としても適用可能である。
【0092】
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう)は、本発明のNIR色素(A)と樹脂とを含有する吸収層を備える。
【0093】
本フィルタは、上記吸収層に加えて、誘電体多層膜からなる反射層をさらに有してもよい。以下の、説明において「反射層」は、誘電体多層膜からなる反射層を指す。
【0094】
本フィルタは、透明基板をさらに有してもよい。この場合、吸収層は透明基板の主面上に設けられる。本フィルタが透明基板と吸収層および反射層を有する場合、吸収層および反射層は、透明基板の主面上に設けられる。本フィルタは、吸収層と反射層を、透明基板の同一主面上に有してもよく、異なる主面上に有してもよい。吸収層と反射層を同一主面上に有する場合、これらの積層順は特に限定されない。
【0095】
本フィルタは、また他の機能層を有してもよい。他の機能層としては、例えば可視光の透過率損失を抑制する反射防止層が挙げられる。特に、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層と空気との界面で反射による可視光透過率損失が発生するため、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。
【0096】
次に、図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。
図1は、吸収層11からなる光学フィルタ10Aを示す断面図である。吸収層11は、NIR色素(A)と樹脂とを含有する層で構成できる。光学フィルタ10Aにおいて、吸収層11はフィルムや基板の形態を取り得る。
【0097】
図2は、吸収層11の一方の主面上に反射層12を備えた光学フィルタ10Bの構成例である。光学フィルタ10Bにおいて、吸収層11は、NIR色素(A)と樹脂とを含有する層で構成できる。なお、「吸収層11の一方の主面(上)に、反射層12を備える」とは、吸収層11に接触して反射層12が備わる場合に限らず、吸収層11と反射層12との間に、別の機能層が備わる場合も含み、以下の構成も同様である。
【0098】
図3は、透明基板と吸収層を有する実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
図4は、透明基板と吸収層と反射層を有する実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。光学フィルタ10Cは、透明基板13と透明基板13の一方の主面上に配置された吸収層11を有する。光学フィルタ10Dは、透明基板13と透明基板13の一方の主面上に配置された吸収層11と透明基板13の他方の主面上に設けられた反射層12を有する。光学フィルタ10C、10Dにおいて、吸収層11は、NIR色素(A)と樹脂とを含有する層で構成できる。
【0099】
図5は、透明基板13の一方の主面に吸収層11を備え、透明基板13の他方の主面上および吸収層11の主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Eの構成例である。
図6は、透明基板13の両主面に吸収層11aおよび11bを備え、さらに吸収層11aおよび11bの主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Fの構成例である。
【0100】
図5および
図6において、組み合わせる2層の反射層12a、12bは、同一でも異なってもよい。例えば、反射層12a、12bは、紫外光および近赤外光を反射し、可視光を透過する特性を有し、反射層12aが、紫外光と第1の近赤外域の光を反射し、反射層12bが、紫外光と第2の近赤外域の光を反射する構成でもよい。
【0101】
また、
図6において、2層の吸収層11aと11bは、同一でも異なってもよい。吸収層11aと11bが異なる場合、例えば、吸収層11aと11bが、各々、近赤外線吸収層と紫外線吸収層の組合せでもよく、紫外線吸収層と近赤外線吸収層の組合せでもよい。該近赤外線吸収層は、NIR色素(A)と樹脂とを含有する層で構成できる。
【0102】
図7は、
図4に示す光学フィルタ10Dの吸収層11の主面上に反射防止層14を備えた光学フィルタ10Gの構成例である。反射防止層14は、吸収層11の最表面だけでなく、吸収層11の側面全体も覆う構成でもよい。その場合、吸収層11の防湿の効果を高められる。
【0103】
以下、吸収層、反射層、透明基板および反射防止層について説明する。
(吸収層)
吸収層はNIR色素(A)の1種または2種以上を含有する。吸収層は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、さらにNIR色素(A)以外のNIR色素(以下、その他のNIR色素という。)を含有してよい。
【0104】
吸収層中におけるNIR色素(A)の含有量は、NIR色素(A)とその他のNIR色素との合計量で樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましい。0.1質量部以上で所望の近赤外線吸収能が得られ、30質量部以下で、近赤外線吸収能の低下やヘイズ値の上昇等が抑制される。また、NIR色素(A)とその他のNIR色素の合計の含有量は、0.5~25質量部がより好ましく、1~20質量部がさらに好ましい。
【0105】
その他のNIR色素としては、例えば、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)より短波長側に最大吸収波長を有するNIR色素、具体的には、660nm以上、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)-30nm以下に最大吸収波長λmax(AII)を有するNIR色素(AII)が挙げられる。なお、2種以上のNIR色素により広い吸収幅を得る場合、NIR色素(AII)の最大吸収波長λmax(AII)は、λmax(A)-50nm以下が好ましく、λmax(A)-80nm以下がより好ましく、λmax(A)-100nm以下がさらに好ましい。
【0106】
さらに、その他のNIR色素としては、例えば、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)より長波長側に最大吸収波長を有するNIR色素、具体的には、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)+30nm以上、1100nm以下に最大吸収波長λmax(AIII)を有するNIR色素(AIII)が挙げられる。なお、2種以上のNIR色素により広い吸収幅を得る場合、NIR色素(AIII)の最大吸収波長λmax(AIII)は、λmax(A)+50nm以上が好ましく、λmax(A)+80nm以上がより好ましく、λmax(A)+100nm以上がさらに好ましい。
【0107】
なお、上記において各NIR色素の最大吸収波長は、ジクロロメタン溶液中で測定される最大吸収波長とする。
【0108】
NIR色素(AII)としては、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物、およびスクアリリウム系化合物のうち、上記範囲に最大吸収波長λmax(AII)を有する色素が挙げられる。
【0109】
NIR色素(AIII)としては、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物、ジイモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、フタリド化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、インドフェノール系化合物、およびスクアリリウム系化合物のうち、上記範囲に最大吸収波長λmax(AIII)を有する色素が挙げられる。NIR色素(AII)、NIR色素(AIII)はそれぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
吸収層は、NIR色素(A)と樹脂を含有し、典型的には、樹脂中にNIR色素(A)が均一に溶解または分散した層または(樹脂)基板である。樹脂は、通常、透明樹脂であり、吸収層は、NIR色素(A)以外にその他のNIR色素を含有してもよい。さらに、吸収層は、NIR色素以外の色素、特にはUV色素を含有してもよい。
【0111】
UV色素は、具体例に、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、メロシアニン系の色素が好ましい。また、UV色素は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
透明樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0113】
上記透明樹脂は、透明性、NIR色素(A)の溶解性、ならびに耐熱性の観点からは、ガラス転移点(Tg)の高い樹脂が好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、およびエポキシ樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0114】
吸収層は、さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を有してもよい。
【0115】
吸収層は、例えば、NIR色素(A)を含む色素と、樹脂または樹脂の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに任意に含まれる透明基板でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0116】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が樹脂の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0117】
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、本フィルタが透明基板を含む場合、このフィルムを透明基板上に貼着してもよい。
【0118】
本フィルタは、吸収層を2層以上有してもよい。吸収層が2層以上で構成される場合、各層は同じでも異なってもよい。吸収層が2層以上の構成の場合、一方の層が、NIR色素を含む樹脂からなる近赤外線吸収層、もう一方の層が、UV色素を含む樹脂からなる紫外線吸収層とする例が挙げられる。また、吸収層は、それそのものが基板(樹脂基板)であってもよい。
【0119】
本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい。
【0120】
(透明基板)
本フィルタにおいて透明基板は任意の構成要素である。本フィルタが透明基板を備える場合、該透明基板の厚さは、0.03~5mmが好ましく、薄型化の点から、0.05~1mmがより好ましい。透明基板の材料としては、可視光を透過するものであれば、ガラスや(複屈折性)結晶、樹脂が利用できる。
【0121】
透明基板用のガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス基材)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩ガラス」には、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含むものとする。
【0122】
透明基板がフツリン酸塩系ガラスの場合、具体的にカチオン%表示で、P5+:20~45%、Al3+:1~25%、R+:1~30%(但し、R+は、Li+、Na+、K+のうち少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)、Cu2+:1~20%、R2+:1~50%(但し、R2+は、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+のうち少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)を含有するとともに、アニオン%表示で、F-:10~65%、O2-:35~90%を含有していることが好ましい。
【0123】
また、透明基板がリン酸塩系ガラスの場合、質量%表示で、P2O5:30~80%、Al2O3:1~20%、R2O:0.5~30%、(但し、R2Oは、Li2O、Na2O、K2Oのうちの少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である。)、CuO:1~12%、RO:0.5~40%(但し、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOのうちの少なくとも1つであって、左記の値は、それぞれの含有割合を合計した値である)を含有することが好ましい。
【0124】
市販品を例示すると、NF-50E、NF-50EX、NF-50T、NF-50TX(AGC(株)製、商品名)等、BG-60、BG-61(以上、ショット社製、商品名)等、CD5000(HOYA(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0125】
上記したCuO含有ガラスは、金属酸化物をさらに含有してもよい。金属酸化物として、例えば、Fe2O3、MoO3、WO3、CeO2、Sb2O3、V2O5等の1種または2種以上を含有すると、CuO含有ガラスは紫外線吸収特性を有する。これらの金属酸化物の含有量は、上記CuO含有ガラス100質量部に対して、Fe2O3、MoO3、WO3およびCeO2からなる群から選択される少なくとも1種を、Fe2O3:0.6~5質量部、MoO3:0.5~5質量部、WO3:1~6質量部、CeO2:2.5~6質量部、またはFe2O3とSb2O3の2種をFe2O3:0.6~5質量部+Sb2O3:0.1~5質量部、もしくはV2O5とCeO2の2種をV2O5:0.01~0.5質量部+CeO2:1~6質量部とすることが好ましい。
【0126】
透明基板用の透明樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0127】
(反射層)
本フィルタにおいて反射層は任意の構成要素である。反射層は、誘電体多層膜からなり、特定の波長域の光を遮蔽する機能を有する。反射層としては、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するものが挙げられる。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。反射層は、上記特性に限らず、所定の波長域の光を遮断する仕様に合わせて適宜設計してよい。
【0128】
本フィルタにおいて反射層を備える場合、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)の光における透過率が1%以下の反射特性を有するとよい。これにより、本フィルタは、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)において、相乗的に、高い遮光性(高OD値)が得られる。
【0129】
本フィルタは反射層を1層有してもよく、2層以上有してもよい。反射層が2層以上で構成される場合、各層は同じでも異なってもよい。反射層が2層以上の構成の場合、一方の層が、少なくとも近赤外光を遮蔽する、特には、上記反射特性を有する近赤外線遮蔽層、もう一方の層が、少なくとも紫外光を遮蔽する紫外線遮蔽層とする組合せでもよい。
【0130】
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜の材料としては、Ta2O5、TiO2、Nb2O5が挙げられる。このうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiO2が好ましい。低屈折率膜の材料としては、SiO2、SiOxNy等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiO2が好ましい。また、反射層の膜厚は、2~10μmが好ましい。
【0131】
(反射防止層)
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造等が挙げられる。中でも高い光利用効率、生産性の観点から誘電体多層膜の使用が好ましい。
【0132】
本フィルタは、NIR色素(A)を含有する吸収層を有することで、近赤外光の長波長域において優れた遮光性を実現できるとともに、高い可視光透過性を実現できる。本フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置や環境光センサー等に使用できる。
【0133】
本フィルタを用いた撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本フィルタとを備える。本フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【実施例】
【0134】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。まず、例1~例7において、NIR色素(Aa)である、表1に構造を示すNIR色素(A1)~(A7)を以下のとおり製造した。さらに、例8において、NIR色素(A)と構造の異なる比較例のNIR色素(Acf)を製造した。また、例9~例15において、NIR色素(Ab)である、表2に構造を示すNIR色素(A21)~(A27)を以下のとおり製造した。得られたNIR色素の光学特性を測定し評価した。
【0135】
また、得られたNIR色素を含有する吸収層を有する光学フィルタの実施例(例16)について説明する。
【0136】
なお、以下の各例において、製造したNIR色素の構造は1H NMRにより確認した。また、NIR色素、これを含む吸収層の光学特性の評価には、紫外可視分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ社製、U-4150形)を用いた。
【0137】
[例1]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A1)を合成した。
【0138】
【0139】
<ステップA1-1>
フラスコに4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェン(4.50g、11.2mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジエチルエーテル(23ml)に溶解した。上記溶液を0℃に冷やし、1.6Mのターシャリーブチルリチウムのヘキサン溶液(7.34ml、11.2mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。上記混合液を0℃に冷やし、ヨウ素(2.98g、11.2mmol)を溶かした無水ジエチルエーテル溶液(40ml)を滴下して、室温で1時間撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A1-1(5.55g、収率94%)を得た。
【0140】
<ステップA1-2>
フラスコにステップA1-1で得られた中間体A1-1(2.00g、3.78mmol)、リン酸カリウム(1.60g、7.56mmol)、銅粉(0.0240g、0.378mmol)、ピロリジン(0.402g、5.65mmol)を入れ、デアノール(3.78ml)に窒素雰囲気下で溶解して、60℃で一昼夜撹拌した。反応終了後、水(4ml)に注いで、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層の溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A1-2(1.69g、収率95%)を得た。
【0141】
<ステップA1-3>
フラスコにステップA1-2で得られた中間体A1-2(1.69g、3.59mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.205g、1.80mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(9ml)とトルエン(9ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、NH2-シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)によりNIR色素(A1)(0.311g、収率17%)を得た。
【0142】
[例2]
例1におけるNIR色素(A1)の製造において、ステップA1-2でピロリジンの代わりに、ジプロピルアミンを用いたこと以外は、例1と同様にしてNIR色素(A2)を得た。
【0143】
【0144】
[例3]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A3)を合成した。
【0145】
【0146】
<ステップA3-1>
フラスコに4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[1,2-b:5,4-b’]ジチオフェン(3.00g、7.45mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジメチルホルムアミド(7.5ml)に溶解した。上記溶液を-15℃に冷やし、N-ブロモスクシンイミド(1.32g、7.45mmol)を溶かした無水ジメチルホルムアミド溶液(7.45ml)を滴下した。上記混合液を室温で30分間撹拌し、その後60℃で5時間撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A3-1(3.69g、収率100%)を得た。
【0147】
<ステップA3-2>
フラスコにステップA3-1で得られた中間体A3-1(1.5g、4.15mmol)、削り状マグネシウム(0.202g、8.30mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(6ml)に溶解した。上記溶液を3時間還流して、-40℃に冷やした。別フラスコにN-クロロスクシンイミド(0.554g、4.15mmol)を窒素雰囲気下で無水トルエン(20ml)に溶解し、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン(1.00g、4.15mmol)を加えて、20分間撹拌した。
【0148】
-40℃に冷やした混合溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル(0.554g、4.15mmol)を滴下し、5分間撹拌した後、続いてN-クロロスクシンイミドとビス-(2-エチルヘキシル)アミンの混合溶液を滴下した。室温で3時間撹拌し、反応終了後、飽和炭酸カリウム水溶液(8ml)を加えた。続いて酢酸エチルで希釈して濾過して、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A3-2(0.187g、収率7.02%)を得た。
【0149】
<ステップA3-3>
フラスコにステップA3-2で得られた中間体A3-2(0.18g、0.28mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.016g、0.14mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(1ml)とトルエン(1ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、NH2-シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=3:1)でNIR色素(A3)(0.022g、収率12%)を得た。
【0150】
[例4]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A4)を合成した。
【0151】
【0152】
<ステップA4-1>
フラスコに2,3-ジブロモチオフェン(5.01g、20.7mmol)、4-ドデシル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボラン-2-イル)チオフェン(8.59g、22.7mmol)を入れ、窒素雰囲気下でジオキサン(250ml)に溶解して、炭酸ナトリウム(8.69g、82mmol)を溶かした水溶液(41ml)を入れ、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(0.340g、0.414mmol)を入れて、100℃で4時間撹拌した。反応終了後、250mlの水を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A4-1(3.04g、収率36%)を得た。
【0153】
<ステップA4-2>
フラスコにステップA4-1で得られた中間体A4-1(3.00g、7.26mmol)を入れ、窒素雰囲気下でジエチルエーテル(58ml)に溶解した。上記溶液を-78℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(4.7ml、7.26mmol)を滴下して、1時間撹拌した。続いて9-ヘプタデカノン(1.85g、7.26mmol)を溶かしたテトラヒドロフラン溶液(15ml)を滴下した。上記混合溶液を室温で1昼夜撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(47ml)を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)により中間体A4-2(3.69g、収率86%)を得た。
【0154】
<ステップA4-3>
フラスコにステップA4-2で得られた中間体A4-2(3.69g、6.26mmol)を入れ、窒素雰囲気下でヘキサン(81ml)に溶解した。濃硫酸(4.1ml)を滴下し、室温で1昼夜撹拌した。反応終了後、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A4-3(1.66g、収率46%)を得た。
【0155】
<ステップA4-4>
フラスコにステップA4-3で得られた中間体A4-3(1.66g、2.9mmol)を入れ、窒素雰囲気下でジエチルエーテル(6ml)に溶解した。上記溶液を0℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウム(2.1ml、3.2mmol)を滴下し、室温で1時間撹拌した。続いて、0℃に再び冷やし、ヨウ素(0.81g、)のジエチルエーテル溶液(24ml)を滴下して、室温で1時間撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を硫酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗い、飽和食塩水で洗って、溶剤を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A4-4(1.85g、収率92%)を得た。
【0156】
<ステップA4-5>
フラスコにステップA4-4で得られた中間体A4-4(1.85g、2.65mmol)、リン酸カリウム(1.12g、5.3mmol)、銅粉(0.0168g、0.265mmol)、ピロリジン(0.283g、3.98mmol)を入れ、デアノール(2.65ml)に窒素雰囲気下で溶解して、60℃で一昼夜撹拌した。反応終了後、水(3ml)に注いで、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層の溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A4-5(1.01g、収率60%)を得た。
【0157】
<ステップA4-6>
フラスコにステップA4-5で得られた中間体A4-5(1.01g、1.58mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.0901g、0.79mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(8ml)とトルエン(8ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、NH2-シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=4:1)によりNIR色素(A4)(0.0185g、収率1.7%)を得た。
【0158】
[例5]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A5)を合成した。
【0159】
【0160】
<ステップA5-1>
フラスコに2-ブロモチオフェン(9.00g、55.2mmmol)、マグネシウム(4.03g、165mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(55ml)に溶解した。上記混合溶液を80℃で1時間撹拌した。別フラスコに[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド(1.20g、2.21mmol)、2,3-ジブロモチオフェン(12.7g、52.5mmol)を入れ、無水ジエチルエーテル(110ml)に溶解した。上記ジエチルエーテル混合溶液を0℃に冷やし、上記テトラヒドロフラン混合溶液を滴下して、室温で3時間撹拌した。反応終了後、上記混合溶液に水(55ml)を加え、酢酸エチルで抽出して、有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A5-1(8.93g、収率66%)を得た。
【0161】
<ステップA5-2>
フラスコにステップA5-1で得られた中間体A5-1(8.09g、33mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジエチルエーテル(230ml)に溶解した。上記溶液を-78℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(20ml、32.0mmol)を滴下して、1時間撹拌した。続いてベンゾフェノン(6.56g、36.0mmol)を溶かした無水ジエチルエーテル溶液(120ml)を滴下した。上記混合溶液を室温で1昼夜撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(200ml)を加え、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)により中間体A5-2(8.81g、収率77%)を得た。
【0162】
<ステップA5-3>
フラスコにステップA5-2で得られた中間体A5-2(4.94g、14.4mmol)、アンバーリスト15(2.3g)を入れ、窒素雰囲気下で無水トルエン(300ml)に溶解した。上記混合溶液を7時間還流撹拌した。反応終了後、濾過して濾液を得て、溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)で中間体A5-3(4.29g、91%)を得た。
【0163】
<ステップA5-4>
フラスコにステップA5-3で得られた中間体A5-3(4.00g、12.1mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジメチルホルムアミド(120ml)に溶解した。上記溶液に、N-ブロモスクシンイミド(2.16g、12.1mmol)を溶かした無水ジメチルホルムアミド溶液(30ml)を滴下した。上記混合液を室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)により中間体A5-4(3.67g、収率74%)を得た。
【0164】
<ステップA5-5>
フラスコにステップA5-4で得られた中間体A5-4(3.50g、8.55mmol)、削り状マグネシウム(0.416g、17.1mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(20ml)に溶解した。上記溶液を3時間還流して、-40℃に冷やした。別フラスコにN-クロロスクシンイミド(1.03g、7.70mmol)を窒素雰囲気下で無水トルエン(20ml)に溶解し、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン(1.86g、7.70mmol)を加えて、20分間撹拌した。
【0165】
-40℃に冷やした混合溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル(2.43g、8.55mmol)を滴下し、5分間撹拌した後、続いてN-クロロスクシンイミドとビス-(2-エチルヘキシル)アミンの混合溶液を滴下した。室温で3時間撹拌し、反応終了後、飽和炭酸カリウム水溶液(17ml)を加えた。続いて酢酸エチルで希釈して濾過して、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A5-5(1.34g、収率27.5%)を得た。
【0166】
<ステップA5-6>
フラスコにステップA5-5で得られた中間体A5-5(1.30g、2.28mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.130g、1.14mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(6ml)とトルエン(6ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=100:1:3)によりNIR色素(A5)(0.445g、収率32%)を得た。
【0167】
[例6]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A6)を合成した。
【0168】
【0169】
<ステップA6-1>
フラスコに3-チオフェンカルボン酸(15.0g、117mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(230ml)に溶解した。上記溶液を-78℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(90ml、234mmol)を滴下し、30分間撹拌した後、臭素(20.6g、129mmol)を加えて、室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、1Mの塩酸水溶液を入れ、酢酸エチルで抽出して、飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、中間体A6-1(13.9g、57%)を得た。
【0170】
<ステップA6-2>
フラスコにステップA6-1で得られた中間体A6-1(13.9g、67.1mmol)を入れ、窒素雰囲気下でエタノール(336ml)に溶解した。上記溶液に1.28Mの硫酸水溶液(3.36ml)を滴下して、12時間還流撹拌した。反応終了後、1Mの水酸化ナトリウム水溶液で中和して、酢酸エチルで抽出し、有機層を得た。上記有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、中間体A6-2(13.8g、87%)を得た。
【0171】
<ステップA6-3>
フラスコにステップA6-2で得られた中間体A6-2(10.6g、45.0mmol)、2-チオフェンボロン酸(17.3g、135mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリドジクロロメタン付加物(1.87g、2.25mmol)を入れ、窒素雰囲気下で1,4-ジオキサン(45ml)に溶解した。上記混合溶液に17Mの炭酸カリウム水溶液(5.2ml)を滴下し、一昼夜還流撹拌した。反応終了後、濾過して、濾液を得て、酢酸エチルで抽出して、有機層を得た。上記有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=7:1)により中間体A6-3(10.5g、98%)を得た。
【0172】
<ステップA6-4>
フラスコに1-ブロモ-3,5-ジターシャリーブチルベンゼン(24.6g、90.4mmol)、削り状マグネシウム(3.29g、136mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(34ml)に溶解した。上記混合溶液を1時間還流撹拌した。別フラスコに中間体A6-3(5.38g、22.6mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(34ml)に溶解した。-15℃に冷却し、上記中間体A6-3を溶解した溶液に、上記1-ブロモ-3,5-ジターシャリーブチルベンゼンを含む溶液を滴下して、4時間還流撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を入れて、酢酸エチルで抽出して、有機層を得た。上記有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)により中間体A6-4(11.3g、94%)を得た。
【0173】
<ステップA6-5>
フラスコにステップA6-4で得られた中間体A6-4(9.69g、17.5mmol)、アンバーリスト15(2.79g)を入れ、窒素雰囲気下で無水トルエン(524ml)に溶解した。上記混合溶液を7時間還流撹拌した。反応終了後、濾過して濾液を得て、溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=10:1)により中間体A6-5(6.62g、68%)を得た。
【0174】
<ステップA6-6>
フラスコにステップA6-5で得られた中間体A6-5(6.00g、10.8mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジメチルホルムアミド(107ml)に溶解した。上記溶液に、N-ブロモスクシンイミド(1.92g、10.8mmol)を溶かした無水ジメチルホルムアミド溶液(27ml)を滴下した。上記混合液を室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)により中間体A6-6(6.29g、収率92%)を得た。
【0175】
<ステップA6-7>
フラスコにステップA6-6で得られた中間体A6-6(6.00g、9.47mmol)、削り状マグネシウム(0.460g、18.9mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(14ml)に溶解した。上記溶液を3時間還流して、-40℃に冷やした。別フラスコにN-クロロスクシンイミド(1.14g、8.53mmol)を窒素雰囲気下で無水トルエン(21ml)に溶解し、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン(2.06g、8.53mmol)を加えて、20分間撹拌した。-40℃に冷やした混合溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル(2.69g、9.47mmol)を滴下し、5分間撹拌した後、続いてN-クロロスクシンイミドとビス-(2-エチルヘキシル)アミンの混合溶液を滴下した。室温で3時間撹拌し、反応終了後、飽和炭酸カリウム水溶液(19ml)を加えた。続いて酢酸エチルで希釈して濾過して、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A6-7(0.303g、収率4.0%)を得た。
【0176】
<ステップA6-8>
フラスコにステップA6-7で得られた中間体A6-7(0.300g、0.378mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.0215g、0.189mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(1ml)とトルエン(1ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=100:1:3)によりNIR色素(A6)(0.161g、収率51%)を得た。
【0177】
[例7]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(A7)を合成した。
【0178】
【0179】
<ステップA7-1>
例5のステップA5-1と同様にして、中間体A5-1を得た。
【0180】
<ステップA7-2>
フラスコにステップA7-1で得られた中間体A5-1(9.00g、36.7mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジエチルエーテル(250ml)に溶解した。上記溶液を-78℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(21.8ml、34.9mmol)を滴下して、1時間撹拌した。続いて2,6-ジメチル-4-ヘプタノン(5.74g、40.4mmol)を溶かした無水ジエチルエーテル溶液(100ml)を滴下した。上記混合溶液を室温で1昼夜撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(220ml)を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)により中間体A7-2(6.83g、収率60%)を得た。
【0181】
<ステップA7-3>
フラスコにステップA7-2で得られた中間体A7-2(6.63g、21.5mmol)を入れ、ノルマルオクタン(200ml)に溶解した。上記溶液に濃硫酸(14.0ml)を滴下し、室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、水とジクロロメタンを入れて、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗い、飽和食塩水で洗って、溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A7-3(3.57g、収率57%)を得た。
【0182】
<ステップA7-4>
フラスコにステップA7-3で得られた中間体A7-3(3.57g、12.3mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジメチルホルムアミド(120ml)に溶解した。上記溶液に、N-ブロモスクシンイミド(2.19g、12.3mmol)を溶かした無水ジメチルホルムアミド溶液(30ml)を滴下した。上記混合液を室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体A7-4(4.39g、収率97%)を得た。
【0183】
<ステップA7-5>
フラスコにステップA7-4で得られた中間体A7-4(4.31g、11.7mmol)、削り状マグネシウム(0.85g、35.0mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(17ml)に溶解した。上記溶液を3時間還流して、-40℃に冷やした。別フラスコにN-クロロスクシンイミド(1.40g、10.5mmol)を窒素雰囲気下で無水トルエン(28ml)に溶解し、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン(2.53g、10.5mmol)を加えて、20分間撹拌した。
【0184】
-40℃に冷やした混合溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル(3.32g、11.7mmol)を滴下し、5分間撹拌した後、続いてN-クロロスクシンイミドとビス-(2-エチルヘキシル)アミンの混合溶液を滴下した。室温で3時間撹拌し、反応終了後、飽和炭酸カリウム水溶液(24ml)を加えた。続いて酢酸エチルで希釈して濾過して、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)により中間体A7-5(0.76g、収率12%)を得た。
【0185】
<ステップA7-6>
フラスコにステップA7-5で得られた中間体A7-5(0.76g、1.43mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.082g、0.717mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(3.5ml)とトルエン(3.5ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、シリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=100:1:3)によりNIR色素(A7)(0.338g、収率41%)を得た。
【0186】
[例8]
以下に示す反応経路にしたがい、NIR色素(Acf)を合成した。
【0187】
【0188】
<ステップAcf-1>
例3のステップA3-1と同様にして、中間体A3-1を得た。
【0189】
<ステップAcf-2>
フラスコに酢酸パラジウム(II)(0.0276g、0.123mmol)、ナトリウムターシャリーブトキシド(0.477g、4.96mmol)、トリターシャリーブチルホスフィン(0.0498g、0.246mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水トルエン(3ml)に溶解した。上記混合溶液を60℃で10分間撹拌して、室温に戻し、4、4’-ジメチルジフェニルアミン(0.539g、2.73mmol)とステップAcf-1で得られた中間体A3-1(1.19g、2.48mmol)をトルエン(2ml)で溶解した混合溶液を滴下して、3時間還流撹拌した。反応終了後、濾過して、濾液を得て、溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)により中間体Acf-2(0.966g、65%)を得た。
【0190】
<ステップAcf-3>
フラスコにステップAcf-2で得られた中間体Acf-2(0.966g、1.62mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.0924g、0.810mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(2ml)とトルエン(6ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、NH2-シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)によりNIR色素(Acf)(0.0273g、収率2.6%)を得た。
【0191】
[例9]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A21)を得た。
【0192】
【0193】
[A2-1-1の合成」
チオフェン(9.20g、109mmol)および4-クロロ-4-オキソ酪酸エチル(18.0g、109mmol)のジクロロメタン溶液(150mL)に対し、氷冷下、塩化スズ(IV)(12.9mL、109mmol)を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した後、氷水に入れジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮することでA2-1-1を得た(21.6g、102mmol、93%収率)
【0194】
[A2-1-2の合成]
A2-1-1(21.6g、102mmol)の水/エタノール混合溶液(60mL/150mL)に水酸化ナトリウム(6.5g、160mmol)を加え、撹拌しながら2時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、氷冷下、塩酸(3N)を用いて中和した。析出した固体をろ過によって集め、真空乾燥することでA2-1-2を得た(15.4g、83.3mmol、82%収率)。
【0195】
[A2-1-3の合成]
A2-1-2(15.4g、83.3mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(19.2g、100mmol)のジクロロメタン溶液(350mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(13.5g、100mmol)のテトラヒドロフラン溶液(190mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(15.1mL、108mmol)およびビス(2-エチルヘキシル)アミン(25.0mL、83.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(150mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮することでA2-1-3を粗精製物として得た(34.8g、85.4mmol、103%収率)。粗精製物は精製せずに次の反応に用いた。
【0196】
[A2-1-4の合成]
A2-1-3(16.2g、39.7mmol)およびローソン試薬(19.3g、47.7mmol)にトルエン(150mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ90分加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣にジクロロメタン/ヘキサン(10mL/100mL)を加えて析出した沈殿を吸引ろ過で除去した後、溶液を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチル(98:2)の混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-1-4を得た(14.6g、36.0mmol、91%収率)。
【0197】
[NIR色素(A21)の合成]
A2-1-4(7.00g、17.3mmol)およびスクアリン酸(1.01g、8.85mmol)に1-プロパノール(940mL)、オルトギ酸トリメチル(10mL、91mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で2時間30分加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン(15mL)を加えた。析出した沈殿をろ過で集めヘキサンで洗浄した。ろ液は濃縮後、ヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、濃縮した。ろ取した固体とあわせることでNIR色素(A21)を得た(1.44g、1.62mmol、19%収率)。
【0198】
[例10]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A22)を得た。
【0199】
【0200】
[A2-2-1の合成」
3-メチルチオフェン(5.00g、50.9mmol)および4-クロロ-4-オキソ酪酸エチル(8.38g、50.9mmol)のジクロロメタン溶液(150mL)に対し、氷冷下、塩化スズ(IV)(6.0mL、51mmol)を滴下した。反応液を氷冷下で2時間撹拌した後、氷水に入れジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでA2-2-1を得た(8.28g、36.6mmol、72%収率)
【0201】
[A2-2-2の合成]
A2-2-1(8.28g、36.6mmol)の水/エタノール混合溶液(60mL/150mL)に水酸化ナトリウム(3.84g、96.0mmol)を加え、撹拌しながら2時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、氷冷下、塩酸(3N)を用いて中和した。析出した固体をろ過によって集め、真空乾燥することでA2-2-2を得た(6.79g、34.3mmol、94%収率)。
【0202】
[A2-2-3の合成]
A2-2-2(2.69g、13.6mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(3.10g、16.2mmol)のジクロロメタン溶液(60mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(2.48g、16.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(50mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(2.44mL、17.5mmol)およびビス(2-エチルヘキシル)アミン(4.04mL、13.5mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(50mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮することでA2-2-3を粗精製物として得た(5.88g、13.9mmol、103%収率)。粗精製物は精製せずに次の反応に用いた。
【0203】
[A2-2-4の合成]
A2-2-3(5.88g、13.9mmol)およびローソン試薬(6.77g、16.7mmol)にトルエン(100mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ2時間加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(98:2)の混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-2-4を得た(2.85g、6.79mmol、49%収率)。
【0204】
[NIR色素(A22)の合成]
A2-2-4(6.00g、14.3mmol)およびスクアリン酸(907mg、7.86mmol)に1-プロパノール(772mL)、オルトギ酸トリメチル(9.0mL、82mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で2時間30分加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣を、ジクロロメタン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸エチルをそれぞれ溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって2度精製することでNIR色素(A22)を得た(549mg、598μmol、8.4%収率)。
【0205】
[例11]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A23)を得た。
【0206】
【0207】
[A2-3-1の合成」
3-エチルチオフェン(5.03g、44.8mmol)および4-クロロ-4-オキソ酪酸エチル(7.37g、44.8mmol)のジクロロメタン溶液(150mL)に対し、氷冷下、塩化スズ(IV)(5.4mL、46mmol)を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した後、氷水に入れジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでA2-3-1を得た(6.28g、26.1mmol、59%収率)
【0208】
[A2-3-2の合成]
A2-3-1(17.4g、72.3mmol)の水/エタノール混合溶液(50mL/150mL)に水酸化ナトリウム(7.4g、190mmol)を加え、撹拌しながら2時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、氷冷下、塩酸(3N)を用いて中和した。析出した固体をろ過によって集め、真空乾燥することでA2-3-2を得た(14.0g、66.1mmol、91%収率)。
【0209】
[A2-3-3の合成]
A2-3-2(8.00g、37.7mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(8.72g、45.5mmol)のジクロロメタン溶液(200mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(6.94g、45.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(130mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(7.0mL、50mmol)およびビス(2-エチルヘキシル)アミン(11.5mL、38.3mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(100mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮することでA2-3-3を粗精製物として得た(17.33g、39.8mmol、106%収率)。粗精製物は精製せずに次の反応に用いた。
【0210】
[A2-3-4の合成]
A2-3-3(17.33g、39.8mmol)およびローソン試薬(19.3g、47.73mmol)にトルエン(250mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ2時間加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(98:2)の混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-3-4を得た(12.8g、29.5mmol、74%収率)。
【0211】
[NIR色素(A23)の合成]
A2-3-4(12.8g、29.5mmol)およびスクアリン酸(1.87g、16.4mmol)に1-プロパノール(1.6L)、オルトギ酸トリメチル(16mL、150mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で2時間30分加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣を、ジクロロメタン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸エチルをそれぞれ溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって2度精製することでNIR色素(A23)を得た(830mg、878μmol、6.0%収率)。
【0212】
[例12]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A24)を得た。
【0213】
【0214】
[A2-4-1の合成」
3-メトキシチオフェン(25.1g、220mmol)および4-クロロ-4-オキソ酪酸エチル(31.0mL、220mmol)のジクロロメタン溶液(300mL)に対し、塩化スズ(IV)(26.0mL、221mmol)を滴下した。反応液を室温で2時間撹拌した後、氷水に入れジクロロメタンで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下で濃縮することでA2-4-1を得た(43.9g、181mmol、83%収率)
【0215】
[A2-4-2の合成]
A2-4-1(10.9g、45.0mmol)の水/エタノール混合溶液(50mL/150mL)に水酸化ナトリウム(4.40g、110mmol)を加え、撹拌しながら2時間、加熱還流した。室温まで冷却した後、氷冷下、塩酸(3N)を用いて中和した。析出した固体をろ過によって集め、真空乾燥することでA2-4-2を得た(8.96g、41.8mmol、93%収率)。
【0216】
[A2-4-3の合成]
A2-4-2(8.96g、41.8mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(9.8g、51mmol)のジクロロメタン溶液(200mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(7.8g、51mmol)のテトラヒドロフラン溶液(190mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(7.6mL、55mmol)およびビス(2-エチルヘキシル)アミン(12.6mL、42.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(150mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮することでA2-4-3を粗精製物として得た(18.9g、43.3mmol、103%収率)。粗精製物は精製せずに次の反応に用いた。
【0217】
[A2-4-4の合成]
A2-4-3(18.9g、43.3mmol)およびローソン試薬(21.8g、53.9mmol)にトルエン(200mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ2時間加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(98:2)の混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-4-4を得た(12.1g、27.7mmol、64%収率)。
【0218】
[NIR色素(A24)の合成]
A2-4-4(81.7mg、18.8μmol)およびスクアリン酸(11.8mg、10.3μmol)に1-プロパノール(10mL)、オルトギ酸トリメチル(100μL、0.9mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で1時間30分加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣を、ジクロロメタン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸エチルをそれぞれ溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって2度精製することでNIR色素(A24)を得た(6.4mg、6.7μmol、7.2%収率)。
【0219】
[例13]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A25)を得た。
【0220】
【0221】
[A2-5-1の合成」
A2-3-2(5.0g、23mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(5.37g、28.0mmol)のジクロロメタン溶液(100mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(4.4g、29mmol)のテトラヒドロフラン溶液(40mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(4.5mL、32mmol)およびジイソプロピルアミン(4.1mL、29mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(50mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮しヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-5-1を得た(1.52g、5.11mmol、22%収率)。
【0222】
[A2-5-2の合成]
A2-5-1(1.79g、6.06mmol)およびローソン試薬(2.98g、7.37mmol)にトルエン(100mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ2時間加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-5-2を得た(751mg、2.56mmol、42%収率)。
【0223】
[NIR色素(A25)の合成]
A2-5-2(1.5g、5.1mmol)およびスクアリン酸(320mg、2.8mmol)に1-プロパノール(150mL)、オルトギ酸トリメチル(60μL、0.5mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で1時間加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣をジクロロメタン/酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、得られた固体をヘキサンで洗浄することでNIR色素(A25)を得た(98mg、147μmol、5.8%収率)。
【0224】
[例14]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A26)を得た。
【0225】
【0226】
[A2-6-1の合成」
A2-4-2(10.0g、46.7mmol)および1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(11.0g、57.3mmol)のジクロロメタン溶液(200mL)に1-ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物(8.61g、56.2mmol)のテトラヒドロフラン溶液(90mL)を加えた。さらにトリエチルアミン(9.0mL、65mmol)およびジイソプロピルアミン(8.0mL、57mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10mL)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液を減圧下、濃縮した後、ジクロロメタン(100mL)を加え炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮しヘキサン/酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-6-1を得た(3.33g、11.2mmol、24%収率)。
【0227】
[A2-6-2の合成]
A2-6-1(3.33g、11.2mmol)およびローソン試薬(5.78g、14.3mmol)にトルエン(100mL)を加えた懸濁液を撹拌しつつ1時間30分加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-6-2を得た(630mg、2.1mmol、19%収率)。
【0228】
[NIR色素(A26)の合成]
A2-6-2(800mg、2.71mmol)およびスクアリン酸(178mg、1.56mmol)に1-プロパノール(100mL)、オルトギ酸トリメチル(1.5mL、14mmol)を加えた懸濁液を撹拌しつつ、80℃で3時間加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣を、ジクロロメタン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸エチルをそれぞれ溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって2度精製することでNIR色素(A26)を得た(140mg、209μmol、15%収率)。
【0229】
[例15]
以下に示すスキームおよび中間体を経てNIR色素(A27)を得た。
【0230】
【0231】
[A2-7-1の合成」
A2-1-3(10.1g、24.8mmol)および塩化アルミニウム(III)(9.81g、73.6mmol)のクロロホルム懸濁液(150mL)に臭素(1.30mL、25.3mmol)を滴下した後、反応液を40℃で4日間攪拌した。氷冷下、3M塩酸を用いて反応を停止させ、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下、濃縮しヘキサン/酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-7-1を得た(4.55g、9.35mmol、38%収率)。
【0232】
[A2-7-2の合成]
ヨウ化銅(I)(25.2mg、132μmol)、アセトアミド(77mg、1.30mmol)および炭酸カリウム(295mg、2.13mmol)を加えたシュレンク管を窒素置換した後、A2-7-1(505mg、1.04mmol)、トランスー12-ジアミノシクロヘキサン(ラセミ体)(15μL、120μmol)の1,4-ジオキサン溶液(1.0mL)を加えた。この懸濁液を窒素下で1日加熱還流した後、室温まで冷却し、セライトを用いて固体をジクロロメタンで洗浄しながらろ過した。ろ液を、減圧下、濃縮しヘキサン/酢酸エチルを溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-7-1を得た(200mg、43.0μmol、41%収率)。
【0233】
[A2-7-3の合成]
A2-7-2(1.38g、2.97mmol)およびローソン試薬(2.40g、6.08mmol)にトルエン(70mL)を加えた懸濁液を攪拌しつつ2時間加熱還流した。室温まで放冷し、減圧下、溶媒を留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでA2-7-3を得た(269mg、562μmol、19%収率)。
【0234】
[NIR色素(A27]の合成]
A2-7-3(99.8mg、208μmol)およびスクアリン酸(15.3mg、134μmol)に1-プロパノール(12mL)、オルトギ酸トリメチル(0.15mL、1.4mmol)を加えた懸濁液を攪拌しつつ、80℃で25分加熱した。室温まで放冷後、溶媒を減圧留去した。残渣をジクロロメタンに溶解した後ヘキサンを用いて再沈殿させた。得られた固体をヘキサン/酢酸エチルを溶離液としてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製することでNIR色素(A27)を得た(16.8mg、16.2μmol、16%収率)。
【0235】
[評価]
(ジクロロメタン中の透過率測定)
上記で得られたNIR色素(A1)~(A7)および、NIR色素(Acf)をそれぞれジクロロメタンに溶解して、波長400~1200nmの光吸収スペクトルを測定して、吸光度曲線から、最大吸収波長λmax(A)DCMを求めた。さらに、ジクロロメタン中の色素濃度を、最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率が10%になるように調整した吸光度曲線から、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)DCM、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)DCM、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)DCMを求めた。結果を表3に示す。
【0236】
【0237】
表3の結果から明らかなように、例1~7のNIR色素(A1)~(A7)は、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)DCM、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)DCM、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)DCMのいずれの場合においても90%以上の高い透過率を示す。これに対し、比較例である例8のNIR色素(Acf)は、いずれの場合においても80%台の低い透過率となった。上記の結果は、例1~7のNIR色素(A1)~(A7)の可視光領域の透過率が高く、近赤外光領域に光吸収がある優れた近赤外光吸収色素であることを示している。
【0238】
同様にして、上記で得られたNIR色素(A21)~(A27)をそれぞれジクロロメタンに溶解して、波長400~1200nmの光吸収スペクトルを測定して、吸光度曲線から、最大吸収波長λmax(A)DCMを求めた。さらに、ジクロロメタン中の色素濃度を、最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率が10%になるように調整した吸光度曲線から、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)DCM、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)DCM、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)DCMを求めた。結果を表4に示す。
【0239】
【0240】
表4の結果から明らかなように、例9~15のNIR色素(A21)~(A27)は、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)DCM、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)DCM、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)DCMのいずれの場合においても90%以上の高い透過率を示す。上記の結果は、例9~15のNIR色素(A21)~(A27)の可視光領域の透過率が高く、近赤外光領域に光吸収がある優れた近赤外光吸収色素であることを示している。
【0241】
(吸収層とした場合の透過率測定)
上記で得られたNIR色素のうち、代表例として最も可視光透過率の高かったNIR色素(A5)と比較例のNIR色素(Acf)をそれぞれ用い、透明樹脂と混合して吸収層を作製し光学特性を評価した。
【0242】
NIR色素と透明樹脂(ネオプリム(登録商標)C3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名、ポリイミド樹脂)、シクロヘキサノンを十分に撹拌し、均一に溶解した。得られた溶液をガラス板(D263;SCHOTT製、商品名)上に塗布し、乾燥して膜厚1μmの吸収層を得た。色素の添加量(色素濃度)は、膜厚1μmにおいて最大吸収波長λmax(A)TRでの光の透過率が10%になるように調整した。波長350~1200nmの吸収層付きガラス板の吸光度曲線とガラス板の吸光度曲線を用いて、吸収層の吸光度曲線を得た。吸収層の吸光度曲線から最大吸収波長λmax(A)TR、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)TR、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)TR、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)TRを求めた。結果を表5に示す。
【0243】
【0244】
表5の結果から明らかなように、実施例である例5のNIR色素(A5)を用いた吸収層は、波長400~500nmの平均透過率T400-500(A)DCM、波長500~600nmの平均透過率T500-600(A)DCM、および波長600~700nmの平均透過率T600-700(A)DCMのいずれの場合においても90%以上の高い透過率を示す。これに対し、比較例である例8のNIR色素(Acf)を用いた吸収層は、いずれの場合においても60~80%台の低い透過率となった。上記の結果は、実施例の色素(A)の可視光領域の透過率が高く、近赤外光領域に光吸収がある優れた近赤外光吸収色素であることを示している。
【0245】
[例16]
図7に示す構成の光学フィルタを以下の方法で製造する。
透明基板として、CuO含有フツリン酸ガラス(旭硝子社製、商品名:NF-50GX)からなる厚さ0.21mmのガラス基板または、厚さ0.2mmのガラス基板(D263;SCHOTT製、商品名)を用いる。
【0246】
反射層としては、以下のとおり形成した誘電体多層膜を用いる。誘電体多層膜は、ガラス基板の一方の主面に、蒸着法により、例えばTiO2膜とSiO2膜を交互に合計42層積層して形成する。反射層の構成は、誘電体多層膜の積層数、TiO2膜の膜厚およびSiO2膜の膜厚をパラメータとしてシミュレーションし、入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.03%となるように設計する。
【0247】
また、ガラス基板の反射層が形成されたのと反対側の主面上に、透明樹脂とNIR色素(A)の1種類または2種類以上を組み合わせて、厚さ約1.0μmの吸収層を形成する。この後、吸収層の表面に、蒸着法により、TiO2膜とSiO2膜を交互に7層積層して反射防止層を形成し、光学フィルタ(NIRフィルタ)を得る。
【0248】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2018年5月30日出願の日本特許出願(特願2018-103772)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の光学フィルタは、可視光の透過性が良好であり、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。したがって、撮像装置とレーザ光を用いる光学部品をともに有する機器における撮像装置用の光学フィルタの用途に有用である。
【符号の説明】
【0250】
10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G…光学フィルタ、11,11a,11b…吸収層、12,12a,12b…反射層、13…透明基板、14…反射防止層。